説明

外用組成物及びそれを含有する外用剤

【課題】 温感効果に優れ、かつ、皮膚刺激の少ない外用剤組成物及びそれを含有する外用剤を得る。
【解決手段】 温感成分を含む基剤中に温感効果促進能を有する薬剤として紫雲膏を含有する外用組成物及びそれを含有する外用剤。温感成分としてノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス及びトウガラシチンキから選ばれる1種又は2種以上であり、パップ剤又はプラスター剤等の外用剤に含有されて用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温感成分と紫雲膏からなる外用組成物及びそれを含有する外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
慢性の、肩こりや腰痛、筋肉痛等に悩んでいる人は多い。これらの慢性疾患を和らげるには、一連の悪循環、即ち筋肉収縮に起因する局所血管の圧迫による循環不全、それに伴う筋肉内での老廃物の蓄積、神経の圧迫、痛みの発生、中枢伝達による筋肉収縮という悪循環を改善することが重要と考えられている。そしてそれを改善するために、種々の経口投与用製剤や外用剤が開発されている。
【0003】
上記経口投与製剤としては、例えば、痛みの刺激をブロックする消炎鎮痛剤や、筋肉の緊張を和らげる筋弛緩剤が開発されている。しかしながら、それらの経口投与製剤は急性疾患には適しているものの、原因療法でなく対症療法であることから必ずしも慢性疾患には適しているとは言えない。
【0004】
一方、前記外用剤としては、例えば、消炎鎮痛剤配合の外用剤や、血液の循環を改善する目的として局所刺激作用を有するプラスター剤やパップ剤などの外用剤などが開発されている。そしてそれらは冷感タイプと温感タイプに大別される。
【0005】
冷感タイプの外用剤は、打撲や捻挫などの急性疾患には有効であるものの、肩こりなど慢性疾患には十分な効果が得られないこともある。
【0006】
一方、温感タイプの外用剤は、皮膚に使用すると温感成分によって局所に温熱感を生じ、毛細血管を拡張することから血行を促進し、組織の新陳代謝を高めて消炎・鎮痛効果を発揮するので、慢性疾患には効果的と考えられている。
【0007】
特に極度の慢性疾患の場合には、ツボなどの局所部分に強い温感を与えることが効果的であると考えられている。
【0008】
しかし、温感を持続的に得ようとすると多量の温感成分を配合する必要があり、また慢性疾患以外の部位の血行が促進されると逆にかぶれなどによる発赤等の皮膚刺激が発生するという問題点があった。また年齢、性差、貼付部位や個体差等により、温感と皮膚刺激の程度が大きく異なることも問題点の一つとされていた。
【0009】
かかる問題を解決するため、種々の方法が検討されてきた。例えば、温感成分にトウキ、シコンを配合したプラスター剤が開発され市販されている。しかし、上記プラスター剤の場合にはかぶれなどによる発赤等は抑えられるものの、温感効果が弱く感じられるという問題点が残っていた。
【0010】
さらに上記以外にも、例えば、モノステアリン酸グリセリンやトリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)を加えることによりトウガラシエキス中の刺激成分であるカプサイシンの放出速度を調整した水性温感プラスター剤(例えば、特許文献1)、オランダカラシ溶媒抽出物とトウガラシ末、トウガラシエキス、トウガラシチンキ、ノニル酸ワニリルアミド等の温感成分を組み合わせることによる刺激感を低減させた外用製剤(例えば、特許文献2)、バニリルアルコールとアルキルエーテルとトウガラシエキス等の温感成分とを併用した皮膚外用剤(例えば、特許文献3)、カプサイシノイド及びノニル酸ワニリルアミドを併用して配合することにより、皮膚刺激の少ない低用量であっても十分な温感が得られる低刺激性製剤(例えば、特許文献4)等が提案されてきた。
【0011】
しかしながら、上記方法では、温感効果や皮膚刺激の点で未だ十分満足できるものとは言えず、更なる改良品の開発が求められていた。
【特許文献1】特開平7−228537公報
【特許文献2】特開平11−35475号公報
【特許文献3】特開2000−26267公報
【特許文献4】特開2002−29993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明においては、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、温感成分と紫雲膏とを組み合わせて配合することによって、意外にも温感効果に極めて優れていること、また温感成分を少なくしても十分な温感効果が得られるため、結果として皮膚刺激をさらに低減できる外用組成物であること、またその外用組成物を含有させることにより上記特徴を有する外用剤を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明は、温感効果に優れ、かつ、皮膚刺激の少ない外用組成物及びそれを含有する外用剤を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載された発明に係る外用組成物は、基剤中に温感成分と温感効果促進能を有する薬剤と含有する外用組成物であって、
前記温感効果促進能を有する薬剤が、紫雲膏であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2に記載された発明に係る外用組成物は、請求項1に記載の温感成分がノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス及びトウガラシチンキから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3に記載された発明に係る外用剤は、請求項1又は2に記載の外用組成物を含有することを特徴とするものである。
【0017】
請求項4に記載された発明に係る外用剤は、請求項3に記載の外用剤がパップ剤又はプラスター剤から選ばれたものであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5に記載された発明に係る外用剤は、請求項4に記載の外用剤がプラスター剤であり、
前記プラスター剤が長方形の形態であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項6に記載された発明に係る外用剤は、請求項5に記載の長方形の一辺が20〜30mmであることを特徴とするものである。
【0020】
請求項7に記載された発明に係る外用剤は、請求項3〜6の何れかに記載のノニル酸ワニリルアミドの配合量が0.05〜0.07g/m で、かつ紫雲膏の配合量が15〜35g/m であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は以上説明した通り、温感効果に優れ、かつ、皮膚刺激の少ない外用組成物及びそれを含有する外用剤を得ることができるという効果がある。
本発明の外用組成物及びそれを含有する外用剤は、紫雲膏を配合することにより温感成分を減量しても十分満足し得る温感効果が得られることから慢性の肩こり、腰痛、関節痛、筋肉疲労等の治療に有用である。また、本発明は皮膚刺激性及びその他の副作用がないので安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の皮膚外用剤に用いる温感成分としては、皮膚に適用したときに温感を感じさせ得る成分であれば特に限定されるものではない。このような成分として、例えばカプサイシノイド(例えば、N−バニリル−9−オクタデセンアミド等)、カプサイシン(例えば、8−メチル−N−バニリル−6E−ノネンアミド、N−バニリルノナンアミド等)、ジヒドロキシカプサイシン、カプサンチン等のカプサイシン類似体(例えば、N−バニリル−アルカジエンアミド、N−バニリル−アルカンジエンニル、N−バニリル−cis−モノ不飽和アルケンアミド等)、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス、トウガラシチンキ、トウガラシ末、ニコチン酸ベンジル、ベラルゴン酸等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。中でも、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス及びトウガラシチンキが好ましい。
【0023】
上記ノニル酸ワニリルアミドは、例えば、医薬部外品原料規格(薬事日報社発行、1991年)564頁に記載のものが挙げられる。前記トウガラシエキスは、例えば、日本薬局方(以下、日局という。)のトウガラシの粗末を日局中の製剤総則エキス剤の製法に従って製造することにより得ることができ、市販品としては、例えば、アルプス薬品工業社製のトウガラシエキスが入手できる。前記トウガラシチンキは、日局トウガラシの粗末を日局中の製剤総則チンキ剤の製法に従って製造することにより得ることができ、市販品としては、例えば、松浦薬業社製のトウガラシチンキが入手できる。
【0024】
一方、本発明に用いられる紫雲膏は汎用される漢方外用薬であり、江戸時代の華岡青州が創案した軟膏で、「外科正宗」に収載され、漢方薬の中でも代表的な外用薬である。特に肉芽形成を促進するので、患部の治癒を早め、皮膚をなめらかにし、低刺激性の軟膏剤として、やけどや外傷に効果があるとされている。紫雲膏は多数市販されており、容易に入手可能である。
【0025】
本発明の外用組成物としては、温感成分と紫雲膏を混ぜたものであれば特に限定されるものではなく、その混合物に外用剤として一般的に用いられる薬剤や、後述する外用剤に用いる基剤などと混合して用いることもできる。特に本発明では紫雲膏を温感効果促進能を有する薬剤として含有する。即ち、これにより、同等の温感効果を奏する温感成分の含有量を低減することができる。従って、皮膚刺激を低減することができ、肌荒れの低減等の効果を奏することができる。
【0026】
前記外用剤として一般的に用いられる薬剤としては、外用剤に通常配合される薬剤が好適に用いられる。
【0027】
具体的には、鎮痛作用を有する薬剤として、例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、インドメタシン、フェルビナク、ピロキシカム、ケトプロフェン等の他、非ステロイド性消炎鎮痛剤として、例えば、アズレン、アセトアミノフェン、アセメタシン、アルクロフエナク、アルミノプロフェン、アンピロキシカム、アンフェナク、イソキシカム、イソキセバク、イブフェナク、イブプロフェン、インドシン、インドプロフェン、インドメタシン、エトドラク、エモルファゾン、オキサプロジン、オキサブロフェン、オキシカム、オキセビナク、オルセノン、オルトフェナミン酸、カルプロフェン、クリダナク、クリプロフェン、ケトチフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、アスピリン、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール等のサリチル酸系薬剤、ザルトプロフェン、ジクロフェナク、シクロプロフェン、ジドメタシン、ジフルニサル、硝酸イソソルビド、スドキシカム、スプロフェン、スリンダク、ゾメビラク、チアプロフェン、チオキサプロフェン、トラマドール、トルメチン、トルフェナム酸、ナプロキセン、ニフルミン酸、ビルプロフェン、ピロキシカム、フェニドン、フェノプロフェン、フェルビナク、フェンクロフェナク、フェンチアザク、フェンブフェン、ブクロキシ酸、ブフェキサマク、プラノプロフェン、フルプロフェン、フルフェナミン酸、フルフェニサル、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、フロクタフェニン、プロチジン酸、フロフェナク、ベノキサプロフェン、ベノリレート、ベンダザク、ミロプロフェン、メクロフェナミン酸、メピリゾール、メフェナム酸、リシブフェン、ロキソプロフェン及びこれらの塩等が挙げられる。
【0028】
血行促進作用のある薬剤としては、例えば、酢酸トコフェロール、トコフェロール等のビタミンE類、鎮痛・消炎作用を有するグリチルリチン、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸等が挙げられる。
【0029】
局所刺激作用を有する薬剤としては、例えば、dl−カンフル、l−メントール等を配合することもできる。
【0030】
抗アレルギー作用を有する薬剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等が挙げられる。
【0031】
生薬成分としては、例えば、トウキ、シコン、サンシシ、サンショウ、ショウキョウ、オウバク等が挙げられる。精油成分として、例えば、ハッカ油、ユーカリ油、テレビン油等が挙げられる。殺菌消毒剤として、例えば、チモール等が挙げられる。収れん・保護成分を有する薬剤として、例えば、酸化亜鉛が挙げられる。血行促進剤として、例えば、ニコチン酸ベンジル、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
本発明の外用剤には、上記外用組成物を含有する外用剤であれば剤形は特に制限されるものではない。具体的には、プラスター剤、パップ剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤等が挙げられる。中でも、プラスター剤、パップ剤が好適に用いられる。
【0033】
プラスター剤やパップ剤のような貼付タイプの外用剤の形態としては、特に限定されるものではないが、長方形や円形、楕円形の形態が好ましい。より好ましくはツボなどの局所部分にのみ貼付でき、それ以外の部分には直接作用しない大きさ、即ち一片が30mm以下の長方形の形態を有するプラスター剤である。より好ましくは一片が20mm〜30mmの長方形の形態を有するプラスター剤である。
【0034】
本発明の外用剤を製造する際には、通常の医薬品や医薬部外品に用いられる基剤を使用することができる。
【0035】
上記基剤としては、例えば、水溶性又は非水溶性の天然及び合成高分子化合物若しくはこれらの混合物の他、軟膏剤とする場合あるいはローション剤等の液剤とする場合は、例えば、基剤としての溶媒、油成分、グリコール類、界面活性剤、水溶性高分子化合物などを配合することができ、具体的には、溶媒として、例えば水、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンジルアルコール等、油成分として、例えばラノリン、硬化油、レシチン、プラスチベース、流動パラフィン、オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ミツロウ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、セバスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、スクワラン、スクワレン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、へキサデシルアルコール、シリコン油等、グリコール類として、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、界面活性剤として、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等、水溶性高分子化合物として、例えばカルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸等を配合することができる。
【0036】
プラスターを調製する場合、生ゴム、ポリイソブチレン、酸化チタン、炭酸カルシウム等のゴム基剤に、ポリブテン、エステルガム、アクリル酸メチル・アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、天然ゴムラテックス、テルペン樹脂等の粘着付与剤を加熱混合してプラスター基剤を作成し、これにノニル酸ワニリルアミド、紫雲膏、及び他の薬剤を添加して、圧延(カレンダー)ロールによる圧延塗布し、剥離紙を重ねて裁断することにより、プラスター剤を製造する。
【0037】
具体的には、ニーダーに生ゴム、ポリイソブチレン、酸化チタン、炭酸カルシウムからなるゴム基剤を投入して混練した後、ポリブテン、エステルガム、アクリル酸メチル・アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、天然ゴムラテックス、テルペン樹脂からなる粘着付与剤を投入して混練した。
【0038】
得られた硬膏基剤にL−メントール、サリチル酸メチル、ノニル酸ワニリルアミド、及び、紫雲膏(又は、トウキ軟エキス、シコン軟エキス)の有効成分を投入して混練し、硬膏基剤を完成させた。その後、圧延(カレンダー)ロールによる圧延塗布により支持体上に均一に塗布し、剥離紙を重ねて、所望の形状に裁断することにより、貼付剤を得た。尚、硬膏基剤は耐熱性の剥離紙上に圧延塗布した後、支持体を重ねて、所望の形状に裁断してもよい。
【0039】
パップ剤を調製する場合、剥離ライナーと膏体層と支持体とを貼り合わせる。膏体層には、薬効成分以外に、必要に応じてアクリル酸澱粉等の吸水性樹脂、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の保形剤やスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー系等の粘着剤等が添加される。また、プロピレングリコール等の保湿剤も添加される。
【0040】
クリーム剤を調製する場合、一般に精製水に水溶性成分例えば、プロピレングリコール、トリエタノールアミン等を添加して加熱調製し、水相とする。一方、油性成分、例えば、ステアリン酸、セタノール、酢酸トコフェロール、ノニル酸ワニリルアミド、ハッカ油等を加熱攪拌溶解し、同様に油相とする。調製した油相を攪拌しながら、水相を徐々に添加し、乳化処理を行い、均一にすることによって調製することが出来る。
【0041】
軟膏剤として調製する場合、親水ワセリン、ラノリン、マイクロスタリンワックス等の固形基剤を加温溶解した後、マクロゴール、プロピレングリコール等の水溶性基剤、保存剤、保湿剤等を精製水に加温溶解して加え、かき混ぜて均等とし、調製することができる。これに他薬を配合するときは、基剤の種類に応じて基剤の一部と混和した後、残りの基剤を加えて全質均等になるまでかき混ぜ練り合わせることで調製できる。
【0042】
ローション剤を調製する場合、精製水にヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子を均一に溶解し、加熱調製する。油相にサリチル酸メチル、チモール、ハッカ油、酢酸トコフェロール等の油溶性成分、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール等の界面活性剤等を加え、加熱溶解し、先に調製した水相を攪拌しながら、油相を徐々に加えていく。乳化粒子を均一にすることでローション剤を得ることができる。
【0043】
さらに、その他にも本発明の外用剤として液剤、乳液剤、エアゾール剤等その種類に応じた成分を用いて常法により製造することができる。
【0044】
本発明の温感成分と紫雲膏を含有することを特徴とする外用組成物における、各成分の配合割合は用いられる種類によって若干異なるが、例えば、温感成分としてノニル酸ワニリルアミドを用いる場合、その配合量は紫雲膏100質量部あたり0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部、より好ましくは0.03〜0.3質量部である。トウガラシエキスを用いる場合、その配合量は紫雲膏100質量部あたり、0.01〜25質量部、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.2〜5質量部である。トウガラシチンキを用いる場合、その配合量は紫雲膏100質量部あたり、0.1〜500質量部、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは2〜50質量部である。
【0045】
外用剤とした場合の単位面積あたりの温感成分及び紫雲膏の配合量は、例えばプラスター剤又はパップ剤の剤形で温感成分としてノニル酸ワニリルアミドを用いた場合には、ノニル酸ワニリルアミドが0.05〜0.07g/m 、紫雲膏が15〜35g/m である。
【実施例】
【0046】
1.製剤
以下に実施例1〜9を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0047】
実施例1(外用組成物)
紫雲膏30gを加熱溶解し、それにノニル酸ワニリルアミド0.075g、サリチル酸メチル1.5g、l−メントール4.5g、ハッカ油0.9g、酢酸トコフェロール0.45g、dl−カンフル1.8gを加え攪拌溶解し、均等に混和したのち徐々に放冷し、実施例1の外用組成物39.225gを得た。
【0048】
実施例2(外用組成物)
紫雲膏30gを加熱溶解し、それにトウガラシエキス0.075g、サリチル酸グリコール3.9g、ユーカリ油0.6gを加え攪拌溶解し、均等に混和したのち徐々に放冷し、実施例2の外用組成物34.575gを得た。
【0049】
実施例3(外用組成物)
紫雲膏30gを加熱溶解し、それにトウガラシチンキ0.075g、インドメタシン0.36g、l−メントール4.5g、チモール1.5gを加え攪拌溶解し、均等に混和したのち徐々に放冷し、実施例3の外用組成物36.435gを得た。
【0050】
実施例4(プラスター剤1)
ニーダーに生ゴム30.1質量部、ポリイソブチレン30.1質量部、酸化チタン3.2質量部、炭酸カルシウム15.1質量部からなるゴム基剤を投入して混練した後、ポリブテン45.5質量部、エステルガム34.2質量部、アクリル酸メチル・アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン13.0質量部、天然ゴムラテックス7.3質量部、テルペン樹脂21.5質量部からなる粘着付与剤を投入して混練し、硬膏基剤組成物を得た。
【0051】
得られた硬膏基剤組成物110.775gに、実施例1で得られた外用組成物39.225gを投入して混練し、硬膏基剤150.0gを完成させた。その後、圧延(カレンダー)ロールによる圧延塗布により支持体上に均一に塗布し、剥離紙を重ねて、所望の形状に裁断することにより、プラスター剤1を得た。
【0052】
実施例5(プラスター剤2,3)
実施例4と同様に、実施例4の硬膏基剤組成物115.425gに、実施例2で得られた外用組成物34.575gを投入して混練し、硬膏基剤150.0gを完成させた。その後、圧延(カレンダー)ロールによる圧延塗布により支持体上に均一に塗布し、剥離紙を重ねて、所望の形状に裁断することにより、プラスター剤2を得た。
【0053】
また、実施例4の硬膏基剤組成物113.565gに、実施例3で得られた外用組成物36.435gを投入して混練し、硬膏基剤150.0gを完成させた。その後、圧延(カレンダー)ロールによる圧延塗布により支持体上に均一に塗布し、剥離紙を重ねて、所望の形状に裁断することにより、プラスター剤3を得た。
【0054】
実施例6(パップ剤)
(処方)
成分 (質量%)
1. ノニル酸ワニリルアミド 0.075
2. サリチル酸メチル 1.500
3. l−メントール 4.500
4. ハッカ油 1.120
5. 酢酸トコフェロール 0.500
6. dl−カンフル 1.800
7. 紫雲膏 30.000
8. 水酸化アルミニウム 0.100
9. ポリアクリル酸ナトリウム 7.000
10.カルボキシメチルセルロースナトリウム 2.500
11.カルボキシビニルポリマー 1.000
12.グリセリン 12.000
13.酸化チタン 1.000
14.ソルビトール 15.000
15.精製水 適量
【0055】
カルボキシビニルポリマーを精製水に膨潤し、ソルビトールを加えて攪拌する。これにポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウムをグリセリンに分散させた混合物を投入して混練し、パップ剤基剤組成物を得た。次に紫雲膏を加熱溶解し、それにノニル酸ワニリルアミド以下dl−カンフルまでを加え攪拌溶解し、パップ剤基剤組成物に投入して混練し、パップ剤基剤を得た。得られたパップ剤基剤を展延機により支持体上に均一に展延塗布し、剥離ライナーを重ねて所定の形状に裁断することにより、実施例6のパップ剤を得る。
【0056】
実施例7(クリーム剤)
(処方)
成分 (質量%)
1. ノニル酸ワニリルアミド 0.075
2. サリチル酸メチル 1.500
3. l−メントール 4.500
4. ハッカ油 1.120
5. 酢酸トコフェロール 0.500
6. dl−カンフル 1.800
7. 紫雲膏 30.000
8. ステアリン酸 17.000
9. セタノール 2.400
10.プロピレングリコール 5.000
11.トリエタノールアミン 2.800
12.エデト酸二ナトリウム 0.300
13.ヘキサデシルイソステアレート 12.000
10.精製水 適量
合計 100.0
【0057】
(製造方法)
ステアリン酸、セタノール、ヘキサデシルイソステアレートとノニル酸ワニリルアミド以下紫雲膏までを加熱溶解して油相を調製し、それを80℃から85℃に保つ。一方、精製水にプロピレングリコール、トリエタノールアミン及びエデト酸二ナトリウムを加えて、それを加温溶解して水相を調製する。次に油相を攪拌しながら、それに85℃から90℃に保った水相を徐々に加えて乳化させる。乳化後徐々に冷却し、均等に混和して実施例7のクリーム剤を得る。
【0058】
実施例8(軟膏剤)
(処方)
成分 (質量%)
1. トウガラシエキス 0.075
2. サリチル酸グリコール 4.000
3. l−メントール 4.500
4. ユーカリ油 0.600
5. 酢酸トコフェロール 0.500
6. 紫雲膏 30.000
7. サラシミツロウ 5.000
8. マイクロクリスタリンワックス 10.000
9. 白色ワセリン 適量
合計 100.0
【0059】
(製造方法)
紫雲膏及び白色ワセリンを75℃に加温溶解して、それにサラシミツロウ、マイクロクリスタンワックスを加え十分に攪拌溶解する。これにトウガラシエキス以下酢酸トコフェロールまでを投入し、均一になるまで攪拌して実施例8の軟膏剤を得る。
【0060】
実施例9(ローション剤)
(処方)
成分 (質量%)
1. トウガラシチンキ 0.075
2. サリチル酸メチル 1.500
3. l−メントール 4.500
4. ハッカ油 1.120
5. グリチルレチン酸 0.500
6. チモール 0.500
7. 紫雲膏 20.000
8. ヒドロキシプロピルセルロース 0.500
9. 濃グリセリン 5.000
10.ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール 0.300
11.エタノール 50.000
12.精製水 適量
合計 100.0
(製造方法)
トウガラシチンキ、ハッカ油、グリチルレチン酸、紫雲膏、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、濃グリセリンを70℃で攪拌溶解する。この液にヒドロキシプロピルセルロースを精製水に膨潤した液を加え、攪拌する。さらにこの液にサリチル酸メチル、l−メントール、dl−カンフルをエタノールに溶解した液を徐々に加え、均一になるまで攪拌して実施例9のローション剤を得る。
【0061】
2.試験
以下に試験例を挙げて本発明を詳細に説明する。
試験には、本発明の外用剤の一つであるプラスター剤を使用した。
実施例4に示した硬膏基剤組成物と、表1に示した薬剤組成物とを混練して150.0gの硬膏基剤を完成させ、これを圧延(カレンダー)ロールによる圧延塗布により支持体上に均一に塗布し、剥離紙を重ねて、所望の形状に裁断することにより、プラスター剤3,4,及び比較プラスター剤を得た。
【0062】
【表1】

【0063】
試験例1(皮膚表面温度測定試験)
プラスター剤4又はプラスター剤5を一方の肩甲上部に貼付し、比較プラスター剤をもう一方の肩甲上部に貼付し、サーモグラフ(TH9100MV、NEC三栄株式会社)を用いて、皮膚表面温度を一定時間毎に測定した。評価は、貼付部位皮膚表面温度と未貼付部位皮膚表面温度の温度差(△T)で行った。
【0064】
結果を図1、2に示した。図1は比較プラスター剤とプラスター剤4との皮膚表面温度差の経時変化を示す線図である。図2は比較プラスター剤とプラスター剤5との皮膚表面温度差の経時変化を示す線図である。図1から明らかなように、プラスター剤4及び比較プラスター剤を貼付することで皮膚表面温度が上昇すること、また紫雲膏を配合したプラスター剤4のプラスター剤中の温感成分が比較プラスター剤のそれよりも少ないにもかかわらず同等以上の皮膚表面温度上昇効果を有することが判明した。また図2から明らかなように、プラスター剤5及び比較プラスター剤のプラスター剤について同様の試験をした結果、皮膚表面温度の差はさらに大きくなることが判明した。
【0065】
以上のように、紫雲膏は温感成分と同時に配合されることにより、温感効果促進能を有することが判る。これにより、同等の温感効果を奏する温感成分の含有量を低減することができる。従って、皮膚刺激を低減することができ、肌荒れの低減等の効果を奏することができる。
【0066】
試験例2(皮膚刺激性試験)
プラスター剤4、プラスター剤5及び比較プラスター剤を用いて皮膚刺激性試験を行った。試験方法は、健常人パネラー20名(男性10名、女性10名)の両前前腕部に各被験製剤とコントロール製剤(プラスター剤)とをそれぞれ1枚ずつ合計4枚貼付し、12時間後の皮膚刺激性を観察評価した。
【0067】
評価基準を表2に示した4段階に分け、被験者20名の評点から皮膚刺激指数を次式より算出し評価した。
皮膚刺激指数=
Σ〔(各被験製剤の12時間後の評点)−(コントロール製剤の12時間後の評点)〕/症例数×100
【0068】
【表2】

【0069】
試験結果を次の表3に示す。表3から明らかなように、温感効果において比較プラスター剤のプラスター剤同等以上の効果が得られたプラスター剤4又はプラスター剤5のプラスター剤は、紫雲膏未配合の比較プラスター剤のプラスター剤と比較して皮膚刺激が著しく低減されることが判明した。
【0070】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0071】
温感成分と紫雲膏からなることを特徴とする本発明の外用組成物は、皮膚表面温度上昇効果に優れ、快適な温感効果を与えるとともに皮膚刺激発生の低減効果を有する。更に、紫雲膏を温感効果促進能を有する薬剤として含有することにより、同等の温感効果を奏する温感成分の含有量を低減することができる。従って、皮膚刺激を低減することができ、肌荒れの低減等の効果を奏し、皮膚に不快な刺激感を与えることなく快適な温感効果が期待でき、肩こり、腰痛、関節痛、筋肉疲労等に治療効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】比較プラスター剤とプラスター剤4との皮膚表面温度差の経時変化を示す線図である。
【図2】比較プラスター剤とプラスター剤5との皮膚表面温度差の経時変化を示す線図である。
【符号の説明】
【0073】
■…プラスター剤4の皮膚表面温度差(△T)の経時変化
●…プラスター剤5の皮膚表面温度差(△T)の経時変化
△…比較プラスター剤の皮膚表面温度差(△T)の経時変化

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基剤中に温感成分と温感効果促進能を有する薬剤と含有する外用組成物であって、
前記温感効果促進能を有する薬剤が、紫雲膏であることを特徴とする外用組成物。
【請求項2】
前記温感成分がノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス及びトウガラシチンキから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の外用組成物を含有することを特徴とする外用剤。
【請求項4】
前記外用剤がパップ剤又はプラスター剤から選ばれたものであることを特徴とする請求項3に記載の外用剤。
【請求項5】
前記外用剤がプラスター剤であり、
前記プラスター剤が長方形の形態であることを特徴とする請求項4に記載の外用剤。
【請求項6】
前記長方形の一辺が20〜30mmであることを特徴とする請求項5に記載の外用剤。
【請求項7】
ノニル酸ワニリルアミドの配合量が0.05〜0.07g/m で、かつ紫雲膏の配合量が15〜35g/m であることを特徴とする請求項3〜6の何れかに記載の外用剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−232770(P2006−232770A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52579(P2005−52579)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(000204767)大協薬品工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】