外用組成物
【課題】精油のIGF−1の分泌促進作用を増強することが可能であり、肌の角層水分量を増加させ、且つ、経表皮水分喪失量を適切な状態に保ち、更に、色素沈着の軽減(メラニン量低下)、皮膚明度増加(くすみ防止)、ターンオーバー促進等の効果と、柔軟性増加等の効果を併せ持ち、皮膚の老化防止効果に優れた外用組成物を提供する。
【解決手段】(A)ダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油、テレビン油、ジンジャー油、シナモン油またはオイゲノールなどから選ばれる精油;(B)アデノシンのリン酸エステル又はその塩などの、プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む外用組成物。
【解決手段】(A)ダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油、テレビン油、ジンジャー油、シナモン油またはオイゲノールなどから選ばれる精油;(B)アデノシンのリン酸エステル又はその塩などの、プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精油と、プリン塩基及び/又はその塩を含む外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、加齢、日光(紫外線)暴露、食習慣、ストレス等の影響を受けて、種々の老化現象が引き起こされる。皮膚の老化現象としては、例えば、シミ、そばかす、肝班等の色素沈着をはじめ、くすみ、乾燥、シワ等が挙げられる。このような皮膚の老化を防止することは、特に女性にとって健康上、美容上の大きな関心事となっている。
【0003】
精油は、植物に含まれる揮発性の芳香物質を含む有機化合物として知られている。精油には、香料としての使用の他、抗菌及び抗真菌作用、歯周病予防効果(特許文献1参照)等が知られている。しかしながら、精油を皮膚に適用した際の効果に関してはほとんど知られていなかった。
【0004】
これまでに、皮膚の老化を改善する手段として、アデニン等を含有するO/W型組成物が知られている(特許文献2、3参照)。プリン塩基は、細胞内ATPレベルを上昇させることによって皮膚のターンオーバーを促進し、シミ、肝班等の色素沈着を防ぐ効果を示すことが知られている。
【0005】
その他、肌の老化防止には、柔軟性、弾力性、保水力等が関連する。これらは、老化、ストレス等に加え、種々の外的要因によって低下する。その一方、柔軟性、弾力性、保水力の維持または向上に寄与する防御要因として、IGF−1(インスリン様成長因子−1)が知られている。しかしながら、プリン塩基においては、IGF−1の分泌促進作用は知られていない。
【0006】
今日のように、外用組成物に求められる生理作用が多様化・高度化する中においては、より一層、皮膚に対して多面的な効果を発揮する外用組成物の開発が望まれている。
【0007】
加えて、このような外用組成物に対しては、瑞々しい肌を実現することも期待されている。皮膚は、表面にある表皮と、深層にある真皮、及び皮下組織からなり、表皮の最も外側には角層が存在する。表皮細胞によって作られる角層は、外部環境と体の中とを隔てるバリアであり、この角層の質こそが肌の瑞々しさを決定づける極めて大きな要因となっている。角層には細胞間脂質、天然保湿因子(NMF:natural moisturizing factor)等が存在して皮膚内部からの水分蒸散を防ぐのみならず、角層自身が適度な水分を保持することで、皮膚表面の柔らかさや滑らかさを保っている。この重要な角層の質を評価するには、角層の水分保持能を表す「角層水分量」や、角層表面から蒸発する水分量である「経表皮水分喪失量(TEWL:Transepidermal Water Loss)」が用いられる。
【0008】
皮膚は、加齢に伴って、表皮の萎縮、角層の肥厚、及び角層の下に存在する顆粒層の消失等の特徴が見られるようになる。このような特徴を呈する加齢皮膚では、若い皮膚に比べて角層水分量が低く、TEWLも低下傾向にある。このような加齢皮膚では、外気の乾燥とともに皮膚表面をザラザラとさせ、浅いひび割れや、かゆみを伴うことが知られている。従来のスキンクリームでは、角層表面を保護することによって皮膚蒸散量を抑制し、一時的な角層水分量の高まりは期待できるが、使用を中止するとその効果は直ちに失われてしまっていた。これは、内側から角層への水分の供給量、即ち水分の透過量が低いことに原因するものである。そのため、瑞々しく、健全な肌の状態を保持するためには、角層機能を正常化させることによって、角層水分量を高めるとともに、TEWLを適切に保つことが必要であり、TEWLと角層水分量の両方をケアできる組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−255031号公報
【特許文献2】特開2002−234830号公報
【特許文献3】特開2006−182746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、IGF−1の分泌促進作用を増強させ得る外用組成物を提供することを主な目的とする。また、肌の角層水分量を増加させ、且つ、経表皮水分喪失量を適切な状態に保つことができる外用組成物をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油、テレビン油、ジンジャー油、シナモン油またはオイゲノールから選ばれる精油にIGF−1分泌作用があることが認められた。さらに、その知見をもとに、精油とプリン塩基及び/又はその塩を組み合わせて用いることにより、より優れたIGF−1分泌促進作用を発現し得ることを見出した。特に、ダイウイキョウ、セイヨウアカマツ、ラバンデュラハイブリダから得られる精油と組み合わせた場合に顕著なIGF−1分泌促進作用が確認された。さらに、本発明者らは、このような組成物は、皮膚の角層水分量を増加し、かつ経表皮水分喪失量を適切な状態に保つことができることを見出した。本発明は、このような知見に基づいてさらに研究を重ねた結果完成されたものである。
【0012】
本発明は、以下の外用組成物、外用組成物の製造方法及び皮膚におけるIGF-1分泌促進方法を提供する。
項1.以下の(A)成分及び(B)成分を含有する外用組成物:
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種。
項2.(A)成分が、ダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油からなる群より選択される少なくとも1種の精油である、項1に記載の外用組成物。
項3.(A)成分が、ダイウイキョウ油、セイヨウアカマツ油及びラバンデュラハイブリダ油からなる群より選択される少なくとも1種の精油である、項1又は2に記載の外用組成物。
項4.(A)成分が、ダイウイキョウ油、セイヨウアカマツ油及びラバンデュラハイブリダ油の混合物を含む精油である、項1〜3のいずれかに記載の外用組成物。
項5.(A)成分が、ダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油の混合物を含む精油である項1〜4のいずれかに記載の外用組成物。
項6.(B)成分が、アデノシンのリン酸エステル又はその塩である、項1〜5のいずれかに記載の外用組成物。
項7.(B)成分が、アデノシン5'−一リン酸又はその塩である、項1〜6のいずれかに記載の外用組成物。
項8.(A)成分の配合割合が、0.00001〜40重量%である、項1〜7のいずれかに記載の外用組成物。
項9.(B)成分の配合割合が、0.01〜20重量%である、項1〜8のいずれかに記載の外用組成物。
項10.(B)成分1重量部に対する(A)成分の配合比率が、0.0000005〜1000重量部である、項1〜9のいずれかに記載の外用組成物。
項11.皮膚におけるIGF-1分泌促進用である、項1〜10のいずれかに記載の外用組成物。
項12.皮膚における角層水分量増加用である、項1〜10のいずれかに記載の外用組成物。
項13.皮膚における経表皮水分喪失量(TEWL)調節用である、項1〜10のいずれかに記載の外用組成物。
項14.化粧料または医薬部外品の形態である、項1〜13のいずれかに記載の外用組成物。
項15.下記(A)成分及び(B)成分
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種
を配合することを特徴とする、IGF-1分泌促進用外用組成物の製造方法。
項16.皮膚におけるIGF-1分泌促進用組成物の製造ための下記(A)成分及び(B)成分の使用:
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種。
項17.下記(A)成分及び(B)成分
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種
を皮膚に塗布することを特徴とする、皮膚におけるIGF-1分泌促進方法。
項18.下記(A)成分及び(B)成分
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種
を皮膚に塗布することを特徴とする、老人性乾皮症の予防/治療方法。
項19.カプサイシン類と、プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含有する外用組成物。
項20.カプサイシン類が、カプサイシン((6E)-N-[(4-Hydroxy-3-methoxyphenyl)methyl]-8-methylnon-6-enamide)、ノニル酸ワニリルアミド(N-Vanillylnonanamide)及びジヒドロカプシエイトからなる群より選択される少なくとも1種である、項19に記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の外用組成物は、精油とプリン塩基及び/又はその塩を組み合わせて用いることによって、精油の持つIGF−1産生促進作用を相乗的に増強し、皮膚におけるIGF−1分泌を顕著に促進させることができる。本発明の外用組成物は、色素沈着の軽減(メラニン量低下)、皮膚明度増加(くすみ防止)、ターンオーバー促進等の効果と、肌の水分保持、柔軟性増加等の効果を併せ持ち、皮膚の老化防止効果を有効且つ多面的に発揮することができる。
【0014】
さらに、本発明の外用組成物は、角層の水分量を増加し、肌の柔軟性及び弾力性を高める作用を有する。また、本発明の外用組成物は、経表皮水分喪失量(TEWL)を適切に保つ作用をも有するものである。例えば、加齢皮膚の場合、加齢により経表皮水分喪失量が低下すると肌が乾燥し、かゆみ等を生じさせることが知られている。このような症状を呈する疾患として、具体的には、老人性乾皮症が挙げられる。本発明の組成物によれば、角層水分量を高めるとともに、低下したTEWLを高めて、肌の水分量を適切な状態に保つことによって、肌機能を改善する効果が期待でき、瑞々しい肌を維持することができる。従って、本発明の外用組成物を、老人性乾皮症の予防/治療用として用いることもできる。
【0015】
また、経表皮水分喪失量が高いにもかかわらず、角層水分量が低下すると、かゆみ、湿疹、吹き出物を生じることがある。本発明の外用組成物によれば、皮膚の乾燥を抑制するとともに、経表皮水分喪失量(TEWL)を適切に保つことによって、かゆみ、湿疹、吹き出物等を防ぐことができる。このように、本発明の外用組成物によれば、角層水分量と経表皮水分喪失量のバランスを適切な状態に調節することができ、皮膚の状態を正常に保ち、さらには瑞々しい肌を保つことができる。ここでいう調節とは、肌のTEWLが低下した状態を改善し、適当な状態にある場合にはそれを維持することで、健康な皮膚状態に導くことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1a】皮膚IGF−1量に対する精油(ダイウイキョウ油)及びAMPの作用を示すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図1b】皮膚IGF−1量に対する精油(セイヨウアカマツ油)及びAMPの作用を示すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図1c】皮膚IGF−1量に対する精油(ラバンデュラハイブリダ油)及びAMPの作用を示すグラフである。
【図2】皮膚IGF−1量に対する増加作用に対するノニル酸ワリニルアミド及びAMPの作用を示すグラフである。
【図3a】試験例4における角層水分量の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図3b】試験例4における経表皮水分喪失量の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図3c】試験例4における肌の柔軟性の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図3d】試験例4における肌の弾力性の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図3e】試験例4における皮膚のきめの細かさの変化を表す写真である。
【図4a】試験例5における角層水分量の変化を表すグラフである。(図中、#はP<0.05を表す)。
【図4b】試験例5における経表皮水分喪失量の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図4c】試験例5における試験液の塗布の有無による8週後の踵の拡大写真である。
【図5a】試験例6における角層水分量の変化を表すグラフである。
【図5b】試験例6における経表皮水分喪失量の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.外用組成物
本発明の皮膚外用組成物は、下記精油(以下(A)成分と表記することがある)及びプリン塩基及び/又はその塩(以下(B)成分と表記することがある)を含有する。以下、本発明の構成について詳述する。
【0018】
(A)精油
本発明において(A)成分として使用される精油(エッセンシャル・オイル)とは、植物の花、葉、果実、根、樹皮等から得られる揮発性、親油性の芳香物質を含有する抽出液を指し、好ましくは植物の葉、果実、根、樹皮等から得られる揮発性、親油性の芳香物質を含有する抽出液を指す。
【0019】
本発明の(A)成分として使用され得る精油としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、各植物原料から得られる精油を用いることができるが、例えば、ダイウイキョウ(Illicium verum)油、ウイキョウ(Foeniculum vulgare)油、アニス(Pimpinella anisum)油、ニオイヒバ(Thuja occidentalis Linn.)油、アトラスシーダ(Cedrus atlantica Manetti)油、ラバンデュラハイブリダ(Labandula Hybirda)油、ライム(Citrus aurantifolia)油、ハッカ(Mentha arvensis var. piperascens)油、セイヨウアカマツ(Pinus sylvestris)油、ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)油、ショウガ(Zingiber officinale)油、シナモン(Cinnamomum zeylanicum)油、チョウジ(Syzygium aromaticum)油、テレビン油等が挙げられる。これらの精油のうち、より好ましくはダイウイキョウ油、ウイキョウ油、アニス油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油であり、さらに好ましくはダイウイキョウ油、ウイキョウ油、アニス油、セイヨウアカマツ油、ラバンデュラハイブリダ油であり、特に好ましくはダイウイキョウ油、セイヨウアカマツ油、ラバンデュラハイブリダ油である。
【0020】
本発明の外用組成物には、上記精油の中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を任意に選択して使用しても良い。精油を2種以上組み合わせて用いる場合、その組み合わせの態様も、本発明の効果を損ねない限り特に限定されない。2種以上の精油を混合して用いる場合、好ましい組み合わせとしては、効果及び香気性の点から、例えばダイウイキョウ油、ウイキョウ油、アニス油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油の混合物、より好ましくはダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油の混合物が挙げられる。
【0021】
本発明においては、(A)成分として、このような精油の混合物又は混合物を含む精油を用いることによって、本発明の効果がより一層顕著に奏される。
【0022】
本発明の精油を採取する際に使用される各種植物原料の部位は、所望の精油が採取され得る部位であれば特に限定されず、植物の種類に応じて従来使用されている部位を用いることができる。好ましくは各種植物の花、茎、葉、樹枝、果実、根等の植物部位、及び植物の地上部等が挙げられ、さらに好ましくは各植物の茎、葉、樹枝、果実、根等の植物部位、及び植物の地上部等が挙げられる。また、植物の各部位を適宜組み合わせて用いることができる。より具体的には、ダイウイキョウ油、ウイキョウ油及びアニス油であれば果実(もしくは乾燥果実)から抽出された精油であることが好ましい。ニオイヒバ油であれば枝葉から抽出された精油であることが好ましい。アトラスシーダ油であれば樹皮から抽出された精油であることが好ましい。ラバンデュラハイブリダ油であれば全草から抽出された精油であることが好ましい。ライム油であれば果実・果皮から抽出された精油であることが好ましい。ハッカ油であれば全草から抽出された精油であることが好ましい。セイヨウアカマツ油であれば葉から抽出された精油であることが好ましい。ローズマリー油であれば葉から抽出された精油であることが好ましい。テレビン油であればマツ科(Pinaceae)の樹木から抽出された精油であることが好ましい。
【0023】
本発明において使用される精油は従来公知の方法に従って採取することができ、採取方法としては、例えば水蒸気蒸留法、油脂吸着法、溶剤抽出法、圧搾法等が挙げられる。これらの精油採取方法は、使用される植物原料の種類や抽出部位、得られる精油の性質に基づいて適宜選択することができる。また、より簡便には、商品として販売されている各種精油を商業的に入手して用いることも可能であり、例えば小城製薬株式会社、司生堂製薬株式会社、株式会社永廣堂本店等から入手できる。
【0024】
本発明の外用組成物における(A)成分の配合割合としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、(A)成分の総量で0.00001重量%以上、好ましくは0.00001〜40重量%、より好ましくは0.0001〜30重量%、さらに好ましくは0.0001〜25重量%を挙げることができる。
【0025】
(B)プリン塩基及びその塩
本発明において使用される(B)成分としては、プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。本発明においてプリン塩基とは、プリン又はプリン核を骨格とする各種の誘導体(以下、プリン塩基という)を指す。
【0026】
本発明に用いられるプリン塩基としては特に限定されるものでなく、例えばアデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、アデノシン、グアノシン、イノシン、アデノシンのリン酸エステル[アデノシン2'−一リン酸、アデノシン3'−一リン酸、アデノシン5'−一リン酸(AMP)、サイクリックアデノシン3',5'−一リン酸(cAMP)、アデノシン5'−二リン酸(ADP)、アデノシン5'−三リン酸(ATP)]、グアノシンのリン酸エステル(グアノシン3'−一リン酸、グアノシン5'−一リン酸、グアノシン5'−二リン酸、グアノシン5'−三リン酸)、アデニロコハク酸、キサンチン酸、イノシン酸、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を例示することができる。これらの中で、好ましくはアデノシン一リン酸(アデノシン2'−一リン酸、アデノシン3'−一リン酸、AMP、cAMP)を挙げることができる。特に、AMPは前記(A)成分と併用することでIGF−1分泌促進作用がより一層顕著に奏され、角層水分量を高め、さらに経表皮喪失水分量を適切に保つことができることから、本発明の(B)成分として好ましい。
【0027】
また、本発明に用いるプリン塩基の塩については、特に制限されるものではない。プリン塩基の塩の一例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩;アンモニウム、トリシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンとの塩;アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノヒドロキシメチルプロパンジオール等の脂肪族二価アルコール誘導体等を挙げることができる。これらの中で、好ましくはアルカリ金属塩を挙げることができる。
【0028】
本発明に使用される(B)成分として、好ましくはアデノシン一リン酸一ナトリウム、アデノシン一リン酸二ナトリウムを挙げることができる。
【0029】
本発明の外用組成物には、上記(B)成分の中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を任意に選択して使用しても良い。2種以上組み合わせて用いる場合、その組み合わせの態様も、本発明の効果を損ねない限り特に限定されない。
【0030】
本発明の外用組成物の総量に対する(B)成分の配合割合としては、例えば、(B)成分が総量で0.01重量%以上、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%を挙げることができる。ここで、(B)成分がプリン塩基の塩であるときは、前記配合割合はプリン塩基の重量に換算した値である。
【0031】
本発明の外用組成物は、上記(A)成分及び(B)成分を含有するものであればよく、それらの組み合わせの態様について制限はないが、本発明の外用組成物中の好適な(A)成分:精油と、(B)成分:プリン塩基及び/又はその塩の組み合わせとしては、例えば(A)成分:ダイウイキョウ油、ウイキョウ油、アニス油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ(樹皮)油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ(葉)油、ローズマリー油及びテレビン油の混合物と(B)成分:アデノシンリン酸エステル又はその塩の組み合わせ;(A)成分:ダイウイキョウ油、ウイキョウ油、アニス油、セイヨウアカマツ油及びラバンデュラハイブリダ油からなる群より選択される少なくとも1種から得られる精油と(B)成分:AMP又はその塩の組み合わせ;(A)成分:ダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油と(B)成分:AMP又はその塩の組み合わせ等が挙げられる。この様な(A)成分と(B)成分の組み合わせを採用することによって、本発明の優れた効果がより一層顕著に奏され得る。
【0032】
本発明の外用組成物中の(A)成分及び(B)成分の配合比率としては、特に制限されず、前述する(A)成分及び(B)成分の配合割合、該組成物の形態、期待される効果等に応じて、適宜設定することができる。一例として、配合される(B)成分1重量部に対して、(A)成分が総量で0.0000005〜1000重量部、好ましくは0.000005〜100重量部、より好ましくは0.000001〜100重量部、さらに好ましくは0.0001〜100重量部となる範囲を挙げることができる。ここで、(B)成分がプリン塩基の塩であるときは、前記配合比率はプリン塩基の重量に換算した値である。
【0033】
(C)その他の成分
本発明の外用組成物は、通常弱酸性〜中性の範囲内のpHを備えていればよいが、皮膚に対する低刺激性、及び色素沈着改善効果の点からは、好ましくはpH5〜7、更に好ましくはpH5.5〜7である。本発明の外用組成物のpHを上記範囲に調整するために、該皮膚外用剤にpH調整剤を配合することができる。このように配合されるpH調整剤としては、弱アルカリ性〜アルカリ性であって薬学的或いは香粧的に許容されるものであれば特に制限されない。一例として、水酸化ナトリウム、L−アルギニン、アミノメチルプロパンジオール、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。
【0034】
本発明の外用組成物には、上記成分に加えて、必要に応じて通常外用剤に配合される各種成分或いは添加剤、例えば界面活性剤、可溶化成分、油脂類、多価アルコール、増粘剤、防腐剤、殺菌剤、保湿剤、着色剤、分散剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、皮膚収斂剤、美白剤、顔料、防臭剤及び香料等を配合することができる。尚、これらの成分は1種単独で、または2種以上を任意に組み合わせて配合することができる。
【0035】
本発明の外用組成物は、皮膚に外用形態で適用される組成物として調製される限り、その形態については特に制限されない。例えば、本発明の外用組成物は、必要に応じて上記の各任意成分が配合され、さらに必要に応じてその他の溶媒や通常使用される外用剤の基剤又は担体を配合されることによって、ペースト状、ムース状、ジェル状、液状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、シート状、スティック状、エアゾール状、スプレー状、リニメント剤などの各種所望の形態の外用剤として調製することができる。これらは当業界の通常の方法に従って調製される。
【0036】
また、本発明の外用組成物の用途についても、特に制限されない。例えば、本発明の外用組成物は、皮膚外用医薬品;皮膚外用医薬部外品;ファンデーション、頬紅、リップ、マスカラ、アイシャドウ、アイライナー、白粉、日焼け止め等のメーキャップ化粧料や、乳液、クリーム、ローション、オイル及びパック等の基礎化粧料等の化粧料;洗顔料、クレンジング、ボディ洗浄料等の洗浄料;清拭剤;清浄剤;浴用剤等の各種外用剤に調製することができる。
【0037】
本発明の外用組成物は、ヒト皮膚に適用することによって使用される。本発明の外用組成物を適用する量並びに回数については、特に制限されない。例えば、有効成分の種類・濃度、使用者の年齢、性別、症状の程度、適用形態、期待される程度等に応じて、一日に一回若しくは数回の頻度で適当量を、全身の皮膚(特には色素沈着(シミ)部位;シワが気になる部位;皮膚の乾燥が気になる部位(例えば肘、膝、踵等);かゆみ、湿疹、吹き出物が気になる部位等)に適用すればよい。本発明の外用組成物は、皮膚に適用するのであれば、特に適用部分は限定されず、全身に適用することができる。
【0038】
本発明の外用組成物は、以下記載する試験例に示すように、皮膚におけるIGF−1分泌促進作用を有している。IGF−1(インスリン様成長因子)は、インスリンと配列が高度に類似したポリペプチドである。IGF−1は、インスリン様効果(血糖降下作用)に加えて、細胞成長作用を有し、細胞DNA合成を調節する。従って、皮膚におけるIGF−1の分泌が促進されることによって、皮膚細胞の成長が促進され、皮膚上皮層の疾患、症状が改善され、皮膚の健全な状態の保持が図られる。
【0039】
このように、本発明の外用組成物は、IGF−1分泌促進用外用組成物又はIGF−1産生促進用組成物として用いることができる。また、IGF−1分泌促進の機能に基づいて、肌の水分保持、柔軟性増加、色素沈着の軽減(メラニン量低下)、肝班の改善、皮膚明度増加(くすみ防止)、ターンオーバー促進作用を一層有効に発揮し得るものである。従って、本発明の外用組成物は、皮膚老化防止用組成物、保湿用組成物、色素沈着改善用組成物又は美白用組成物として使用することもできる。
【0040】
また、本発明の外用組成物は、角層の水分量を増加し、角層を柔軟にする作用を有する。従って、本発明の外用組成物は、皮膚における角層水分量増加用の外用組成物として使用することができる。角層水分量の増加は、従来公知の方法に従って測定することが可能であり、例えばSKICON-200(アイ・ビイ・エス株式会社製)等の測定器を用いることができる。このような測定器によれば、電気伝導度(μS)を指標として角層水分量の変化を評価することができる。
【0041】
さらに、本発明の外用組成物は、経表皮水分喪失量を適切に保持する作用をも有するものである。経表皮水分喪失量とは、皮膚内部から体外への水分の移行量を表し、これを適度に保つことによって皮膚の乾燥を抑制するとともに、かゆみ、湿疹、吹き出物等を防ぐことができる。本発明の外用組成物によれば、角層水分量を高める作用に加え、経表皮喪失水分量を適切に保持する作用を有することから、皮膚の状態を正常に保ち、さらには瑞々しい肌を実現することができる。すなわち、本発明の外用組成物は、経表皮水分喪失量(TEWL)が低下している皮膚に適用するとTEWLを増加させて適切な状態に保つことができる。また、TEWLが適当な状態にある場合にはそれを維持することで、健康な皮膚状態に導くことができる。従って、本発明の外用組成物を、経表皮水分喪失量増加用の外用組成物、又は経表皮水分喪失量調節用の外用組成物として使用することもできる。なお、経表皮水分喪失量は、従来公知の方法に従って測定することができ、例えばDermaLab(Cortex Technology社製)等の測定器を用いることができる。
【0042】
このように、本発明の外用組成物は、高い角層水分量を保持しながら、適度な経表皮水分喪失量を備えさせるための外用組成物としても使用することができる。また、本発明の外用組成物は、このような機能に基づいて角層の機能向上に有用であり、角層を健全に保つことができる。さらに、本発明の外用組成物は、角層水分量及び経表皮水分喪失量が低下した加齢皮膚の症状(具体的には、皮膚表面のザラザラ感、浅いひび割れ、かゆみ等)の改善に有用であり、特に水分保持能やバリア機能の低下した角層に起因する疾患(例えば老人性乾皮症)の予防/治療に有効にも適用され得るものである。
【0043】
さらに、本発明は、上記(A)成分及び(B)成分を皮膚に塗布することを特徴とする、皮膚におけるIGF-1分泌促進方法を提供する。さらに、本発明は、IGF-1分泌促進による皮膚の水分保持機能の改善効果に基づいて、老人性乾皮症の予防/治療方法を提供する。これらの方法における各成分の適用量は、症状の程度や、範囲等により適宜設定され得るが、例えば、上記(B)成分として1〜5000mg/日であり、1日に2〜3回に分けて適用することが好ましい。
【0044】
本発明は、上記(A)成分及び(B)成分と、必要に応じてその他の成分を配合することによって、簡便にIGF-1分泌促進作用を有する外用組成を製造する方法をも提供する。本発明の製造方法において、各成分の具体例、配合量等については上述の通りである。
【0045】
2.他の態様の組成物
さらに本発明者らは、下記実施例において示されるように、カプサイシン類とプリン塩基及び/又はその塩((B)成分)とを併用することによってIGF−1の分泌が促進されることを見出した。従って、本発明は、上記(B)成分とカプサイシン類を含有する外用組成物をも提供する。ただし、ここで記すカプサイシン類とは、精油の特徴である香りや揮発性を有しないことから、精油には含まれず、区別されるものである。
【0046】
カプサイシン類は、唐辛子の辛み成分として知られており、カプサイシノイド(バニリルアミンに脂肪酸が酸アミド結合した化合物の総称)、カプシノイド(バニリルアルコールに脂肪酸がエステル結合した化合物の総称)が挙げられる。例えばカプサイシノイドとしては、カプサイシン((6E)-N-[(4-Hydroxy-3-methoxyphenyl)methyl]-8-methylnon-6-enamide)、合成カプサイシノイドであるノニル酸ワニリルアミド(N-Vanillylnonanamide)等が挙げられる。カプシノイドとしてはジヒドロカプシエイト等が挙げられる。本発明においては、カプサイシン、合成カプサイシノイドが好ましい。カプサイシンは、唐辛子を原料に公知の方法に従って抽出して用いることもできるが、より簡便には東京化成工業株式会社等から商業的に入手することも可能である。
【0047】
本発明の外用組成物の総量に対するカプサイシン類の配合割合としては、例えば0.000001重量%以上、好ましくは0.000001〜0.01重量%、更に好ましくは0.000001〜0.005重量%を挙げることができる。
【0048】
(B)成分としては、上記のプリン塩基及び/又はその塩を用いることができる。
【0049】
本発明の外用組成物における(B)成分とカプサイシン類の配合比率は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば(B)成分1重量部に対して、カプサイシン類が0.00000005〜1重量部、好ましくは0.00000005〜0.1重量部、更に好ましくは0.0000001〜0.1重量部となる範囲を挙げることができる。ここで、(B)成分がプリン塩基の塩であるときは、前記配合比率はプリン塩基の重量に換算した値である。
【0050】
さらに、(B)成分とカプサイシン類を含む場合の外用組成物についても、当該組成物の形態、適用方法については、上記『1.外用組成物』の欄に記載される通りである。
【0051】
カプサイシン類は、IGF-1分泌促進剤として既に知られているが、本発明はカプサイシン類及びプリン塩基を組み合わせて使用することにより、カプサイシン類を単独で用いるよりも高いIGF-1分泌促進を達成し得るものである。また、カプサイシン類とプリン塩基を組み合わせて使用することにより、カプサイシン類の使用濃度の低減をも可能とするものである。
【実施例】
【0052】
以下、試験例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、下記実施例、比較例及び参考例においては、特に規定されない限り、%は重量%を表す。
【0053】
実施例1〜3、比較例1〜5
皮膚におけるIGF−1分泌量に及ぼす精油の作用がAMPによりどのように影響されるかを検討するため、精油とAMPを含有する下記組成物(実施例1〜3及び比較例1〜5)を常法により調製した。各組成物のpHは、pH6.5〜7.0になるようにNaOHで調整した。
【0054】
【表1】
【0055】
試験例1:精油とAMPの組み合わせによるIGF−1分泌促進効果(1)
[試験1−1]
ヘアレスマウス(Hos:HR-1,日本エスエルシー(株), 雌, 6〜8週令)の背部皮膚(3 cm × 5 cm)に被験液を400μL塗布した。塗布30分後に皮膚を採取、凍結破砕した後、皮膚中IGF−1濃度を測定した。IGF−1濃度の測定にはQuantikine(登録商標) Mouse IGF-1 Immunoassay(R&D Systems, Inc.)を使用した。
【0056】
試験群は下記表2の通りとし、被験液には表1に示す組成物を用いた。結果を図1aに示す(平均値±標準誤差)。
【0057】
【表2】
【0058】
[試験1−2]
試験1−1に記載の方法に従って、分泌されたIGF−1濃度を測定した。試験群は下記表3の通りとし、被験液には上記表1に示す組成物を用いた。結果を図1bに示す(平均値±標準誤差)。
【0059】
【表3】
【0060】
[試験1−3]
試験1−1に記載の方法に従って、分泌されたIGF−1濃度を測定した。試験群は下記表4の通りとし、被験液には表1に示す組成物を用いた。結果を図1cに示す(平均値±標準誤差)。
【0061】
【表4】
【0062】
図1a(ダイウイキョウ油+AMP)の結果より、ダイウイキョウ油自身も皮膚におけるIGF−1分泌促進作用を有していることが示されたが、単独ではIGF−1分泌促進作用がないAMPと併用することによってその効果が有意に増強されることが示された(P=0.0002, 1-Way ANOVA)。
【0063】
図1b(セイヨウアカマツ油+AMP)の結果より、AMP単独及びセイヨウアカマツ葉油単独ではIGF−1分泌の促進は見られなかったが、AMPとセイヨウアカマツ油を併用することによってIGF−1分泌が顕著に促進されることが示された(P=0.0175,1-Way ANOVA)。
【0064】
図1c(ラバンデュラハイブリダ油+AMP)の結果より、ラバンデュラハイブリダ油とAMPを併用することによってIGF−1の分泌が顕著に増強される傾向が示された。
【0065】
以上より、AMP単独では、十分なIGF−1分泌促進効果が得られないが、実施例1、2及び3、とりわけ実施例1及び2の組成物においては、顕著なIGF−1の分泌促進作用を奏することが示された。
【0066】
また、ダイウイキョウ油は、主な成分としてアネトール(anethole)を含有することが知られている。アネトールは、ウイキョウ油、アニス油等にも含有されることから、ウイキョウ油及びアニス油とAMPを組み合わせた場合にも、ダイウイキョウ油を用いた場合と同様に優れたIGF−1の分泌促進効果が期待される。
【0067】
試験例2:ノニル酸ワリニルアミドとAMPの組み合わせによるIGF−1分泌促進効果
上記表1に示される実施例1において精油の代わりに、ノニル酸ワニリルアミド((東京化成工業株式会社製);濃度0.001%)を用い、試験例1と同様に被験液を調製し、これを参考例1とした。また、参考例1においてノニル酸ワリニルアミドを含有しない被験液(比較例6)、参考例1においてAMPを含有しない被験液(比較例7)をそれぞれ対照として用いた。
【0068】
ヘアレスマウス(Hos:HR-1,日本エスエルシー(株), 雌, 6〜8週令)の背部皮膚(3 cm × 5 cm)に被験液を400μL塗布した。塗布60分後に皮膚を採取、凍結破砕した後、皮膚中IGF−1濃度を測定した。IGF−1濃度の測定にはQuantikine(登録商標) Mouse IGF-1 Immunoassay(R&D Systems, Inc.)を使用した。試験群は下記表5の通りとした。結果を図2に示す。IGF−1濃度の値は平均値を表す(n=3)。
【0069】
【表5】
【0070】
図2より、ノニル酸ワリニルアミドとAMPを組み合わせて用いた場合にもIGF−1の分泌促進効果が確認された。
【0071】
試験例3:精油とAMPの組み合わせによるIGF−1分泌促進効果(2)
ヘアレスマウス(Hos:HR-1,日本エスエルシー(株), 雌, 7週令)の背部皮膚(3 cm × 5 cm)に被験液を300μL塗布した。塗布30分後に皮膚を採取、凍結破砕した後、皮膚中IGF−1濃度を測定した。IGF−1濃度の測定にはQuantikine(登録商標) Mouse IGF-1 Immunoassay(R&D Systems, Inc.)を使用した。
【0072】
試験は塗布、無塗布の2群間比較とした。被験液には試験例1においてIGF−1分泌促進効果が確認されたダイウイキョウ油、セイヨウアカマツ油、ラバンデュラハイブリダ油の他、製剤として好ましい香気性を有するようにその他の精油(アトラスシーダ油、ニオイヒバ油、ライム油、ハッカ油、ローズマリー油及びテレビン油)を組合せた精油混合物0・03%とAMPを1%、さらに適当な一般基材を加えたミルク製剤を用いた。結果を表6に示す(平均値±標準誤差)。
【0073】
【表6】
【0074】
表6より、精油混合物とAMPを組み合わせた製剤とした場合においても、同様に有意なIGF−1の分泌促進効果が確認された(P<0.05)。
【0075】
また、先に記した通り、ダイウイキョウ油、セイヨウアカマツ油、ラバンデュラハイブリダ油と上記の精油の計9種を混合した場合、香気性の面から、特に優れていることが示された。
【0076】
試験例4:角層水分量及び経表皮水分喪失量への影響(1)
本試験例は、健常男性9名、年齢30〜55歳(平均45歳)を被験者として行われた。被験者の左右の大腿部正面に設置した5×8cmの領域を試験部位とした。左右一方の試験部位に試験液を塗布し、他方の試験部位は無塗布とした。塗布量は、1回につき約0.1g(使用した容器の2滴分)を、1日2回(午前・午後)とし、塗布時間帯は午前塗布を6:00から12:00までの間、午後塗布を18:00から24:00までの入浴後とした。試験液として、下記表7に示される組成のスキンミルクを用いた。
【0077】
【表7】
【0078】
被験者は測定前に、指定された石鹸(花王ホワイト;花王株式会社製)を用いて測定部位(大腿部)を洗浄した後、測定部位を油性ペンにてマーキングし、温度20℃、相対湿度50%RHにコントロールした部屋でベッド上に仰向けの状態で20分間安静にした。その後、角層水分量、経表皮水分喪失量を測定した。このとき、無塗布部分を対照とした。測定は塗布開始前、塗布4週後及び8週後に行った。結果を図3a及び3bに示す。
【0079】
角層水分量の測定、経表皮水分喪失量の測定及びデータ解析は下記の方法に従った。
【0080】
<角層水分量>
SKICON-200(アイ・ビイ・エス株式会社)を用いて電気伝導度(μS)を測定し角層水分量の指標とした。測定は7回実施し、中央の5データの平均値を測定値とした。
【0081】
<経表皮水分喪失量(TEWL)>
DermaLab(Cortex Technology)を用いて経表皮水分喪失量(g/ h・m2)を測定する。測定は5回実施し、その平均値を測定値とした。
【0082】
<データ解析>
有意差検定として、無塗布群に対する塗布群の差について、各測定日(塗布4週後、塗布8週後)での比較として対応のあるt検定を用いた。図中、#はP<0.05で有意差があったことを示す。
【0083】
図3aに示される結果より、試験液の塗布4週間及び8週間において、角層水分量が有意に増加していることが示された。また、図3bより、本発明の外用組成物の塗布8週後において無塗布に比べ有意なTEWLの上昇が示された。
【0084】
すなわち、試験液を塗布した場合は、高い角層水分量を保持しつつ、経表皮水分喪失量も同時に高い値に保つことができ、皮膚が健全な状態に保たれることが示された。
【0085】
さらに、本試験例4において、その効果を一般的な皮膚効能の指標である柔軟性と弾力性の面から評価した結果を図3c、図3dに示す。
【0086】
柔軟性、弾力性の測定及びデータ解析は下記の方法に従った。
【0087】
<柔軟性・弾力性>
柔軟性及び弾力性はCutometer MPA580(CK electronic GmbH)を用いて測定する。測定は、機器に付属の説明書に記載される標準的な方法で実施した。測定は5回実施し、その平均値を測定値とした。
【0088】
<データ解析>
有意差検定として、無塗布群に対する塗布群の差について、各測定日(塗布4週後、塗布8週後)での比較として対応のあるt検定を用いた。図中、#はP<0.05で有意差があったことを示す。
【0089】
図3cに示される結果より、試験液の塗布により、肌の柔軟性の低下が有意に抑制されることが示された。また、図3dより、肌の弾力性の上昇が認められた。
【0090】
さらに、試験液の塗布による皮膚表面のきめの変化を確認するために、塗布前後における皮膚検体サンプルの画像撮影を行った。
【0091】
<皮膚表面きめの評価>
皮膚表面きめの評価は、皮膚検体サンプルを作製して行った。皮膚検体サンプルは、反射用レプリカ解析システムASA-03R(アサヒバイオメッド)を用い、付属の説明書に記載される方法で皮膚表面形態のレプリカを作成し、画像撮影して評価した。
【0092】
図3eに示される結果より、試験液の8週間塗布により、明らかに皮膚きめが細かくなっていることが認められた。
【0093】
試験例4の結果より、上記9種類の精油の混合物と、AMPを組み合わせて皮膚に適用することによって、皮膚の水分量を正常に保ち、さらには柔軟性や弾力性をも向上させることが示された。加えて、本発明の外用組成物を皮膚に塗布することによって、皮膚表面のきめが細かくなり、瑞々しく健全な肌が得られた。
【0094】
試験例5:角層水分量及び経表皮水分喪失量への影響(2)
これらの効果が全身で示されることを確認する目的で、下記試験を実施した。本試験例は、健常男性7名、年齢39〜57歳(平均49.0歳)を被験者として行われた。被験者の左右一方の踵部に4×4 cmの領域を設置し、これを試験部位とした。左右一方の試験部位に試験液(AMP0.5%と精油混合物0.03%を含むクリーム製剤)を塗布し、他方の試験部位は無塗布とした。塗布量は、1回につき約0.2gを、1日2回(午前・午後)とし、塗布時間帯は午前塗布を6:00から12:00までの間、午後塗布を18:00から24:00までの入浴後とした。
【0095】
その後、試験例4と同様の方法で、被験者の角層水分量、経表皮水分喪失量の測定及び写真撮影を実施した。測定は塗布開始前、塗布4週後及び8週後に行った。結果を図4に示す。
【0096】
図4a及び図4bより、試験液塗布により無塗布と比べて明らかな角層水分量の増加と、TEWLの有意な上昇が認められた。
【0097】
さらに、試験液塗布による皮膚に及ぼす効果を確認する目的で、試験開始から8週間後の評価部位を撮影し、拡大したものを画像化した。その画像を図4cに示す。
【0098】
図4cの結果より、試験液の塗布により、皮膚表面の状態が改善されていることが明らかである。
【0099】
本試験例より、一般に、体表のなかでも特に乾燥しやすく、ひび割れ等を生じやすいことが知られている踵部分において、角層水分量の増加及び経表皮水分喪失量の上昇が確認され、皮膚表面状体の明らかな改善が認められた。
【0100】
試験例6:角層水分量及び経表皮水分喪失量への影響(3)
本試験例は、健常男性5名、年齢47〜57歳(平均53.2歳)を被験者として行われた。被験者の左右の前腕内側部に4×4 cmの領域をそれぞれ2カ所ずつ(肘側と手首側)設置し、これを試験部位とした。左右一方の肘側塗布部位に試験液(上記試験例3で用いたスキンミルク)を塗布、他方の肘側塗布部にアデノシン一リン酸及び精油を含有しない市販の一般的なスキンミルク(一般製剤)を塗布した。塗布回数は1日2回(午前・午後)とし、塗布時間帯は午前塗布を6:00から12:00までの間、午後塗布を18:00から24:00までの入浴後とした。塗布量は1回につき約0.05g(使用した容器の1滴分)とした。
【0101】
被験者は測定前に、指定された石鹸(花王ホワイト;花王株式会社製)を用いて測定部位(前腕内側部)を洗浄した後、測定部位を油性ペンにてマーキングし、温度20℃、相対湿度50%RHにコントロールした部屋でベッド上に仰向けの状態で20分間安静にした。その後、角層水分量、経表皮水分喪失量(TEWL)を測定した。測定は塗布開始前及び塗布4週に行った。
【0102】
角層水分量の測定、経表皮水分喪失量の測定及びデータ解析は試験例4と同様の方法に従った。結果を図5a及び5bに示す。
【0103】
図5a及び5bより、角層水分量の変化に関しては、試験液と一般製剤のいずれを塗布した場合にも角層水分量が増加した。一方、試験液塗布では4週後、一般製剤塗布に比べて有意なTEWLの上昇が見られた。
【0104】
すなわち、試験液を塗布した場合は、高い角層水分量と経表水分喪失量を同時に実現することができ、皮膚を瑞々しく、健全な状態に保つことができた。一方、一般的なスキンミルクを塗布した場合は、角層水分量を高く保つのみにとどまり、経表皮水分喪失量を向上させることはできなかった。
【0105】
また、試験液(スキンローション)についても同様に試験を行い、一般製剤(スキンローション)と比較したところ、いずれの場合も角層水分量が上昇していたが、TEWLについては試験液(スキンローション)を用いた場合に上昇する傾向が見られた。試験液として用いたスキンローションの組成は以下の通りである。
【0106】
【表8】
【0107】
*1 精油混合物としては、表7と同じ物を使用した。
【0108】
<処方例>
以下に本発明の外用組成物の処方例を示すが、本発明はこれらに限定されない。ローション、乳液及び美容液は、各処方例に示される組成に基づいて常法により調製することができる。なお、各処方例の合計量を100重量%として記載する。
【0109】
【表9】
【0110】
【表10】
【0111】
*1 精油混合物としては、表7と同じ物を使用した。
【0112】
【表11】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精油と、プリン塩基及び/又はその塩を含む外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、加齢、日光(紫外線)暴露、食習慣、ストレス等の影響を受けて、種々の老化現象が引き起こされる。皮膚の老化現象としては、例えば、シミ、そばかす、肝班等の色素沈着をはじめ、くすみ、乾燥、シワ等が挙げられる。このような皮膚の老化を防止することは、特に女性にとって健康上、美容上の大きな関心事となっている。
【0003】
精油は、植物に含まれる揮発性の芳香物質を含む有機化合物として知られている。精油には、香料としての使用の他、抗菌及び抗真菌作用、歯周病予防効果(特許文献1参照)等が知られている。しかしながら、精油を皮膚に適用した際の効果に関してはほとんど知られていなかった。
【0004】
これまでに、皮膚の老化を改善する手段として、アデニン等を含有するO/W型組成物が知られている(特許文献2、3参照)。プリン塩基は、細胞内ATPレベルを上昇させることによって皮膚のターンオーバーを促進し、シミ、肝班等の色素沈着を防ぐ効果を示すことが知られている。
【0005】
その他、肌の老化防止には、柔軟性、弾力性、保水力等が関連する。これらは、老化、ストレス等に加え、種々の外的要因によって低下する。その一方、柔軟性、弾力性、保水力の維持または向上に寄与する防御要因として、IGF−1(インスリン様成長因子−1)が知られている。しかしながら、プリン塩基においては、IGF−1の分泌促進作用は知られていない。
【0006】
今日のように、外用組成物に求められる生理作用が多様化・高度化する中においては、より一層、皮膚に対して多面的な効果を発揮する外用組成物の開発が望まれている。
【0007】
加えて、このような外用組成物に対しては、瑞々しい肌を実現することも期待されている。皮膚は、表面にある表皮と、深層にある真皮、及び皮下組織からなり、表皮の最も外側には角層が存在する。表皮細胞によって作られる角層は、外部環境と体の中とを隔てるバリアであり、この角層の質こそが肌の瑞々しさを決定づける極めて大きな要因となっている。角層には細胞間脂質、天然保湿因子(NMF:natural moisturizing factor)等が存在して皮膚内部からの水分蒸散を防ぐのみならず、角層自身が適度な水分を保持することで、皮膚表面の柔らかさや滑らかさを保っている。この重要な角層の質を評価するには、角層の水分保持能を表す「角層水分量」や、角層表面から蒸発する水分量である「経表皮水分喪失量(TEWL:Transepidermal Water Loss)」が用いられる。
【0008】
皮膚は、加齢に伴って、表皮の萎縮、角層の肥厚、及び角層の下に存在する顆粒層の消失等の特徴が見られるようになる。このような特徴を呈する加齢皮膚では、若い皮膚に比べて角層水分量が低く、TEWLも低下傾向にある。このような加齢皮膚では、外気の乾燥とともに皮膚表面をザラザラとさせ、浅いひび割れや、かゆみを伴うことが知られている。従来のスキンクリームでは、角層表面を保護することによって皮膚蒸散量を抑制し、一時的な角層水分量の高まりは期待できるが、使用を中止するとその効果は直ちに失われてしまっていた。これは、内側から角層への水分の供給量、即ち水分の透過量が低いことに原因するものである。そのため、瑞々しく、健全な肌の状態を保持するためには、角層機能を正常化させることによって、角層水分量を高めるとともに、TEWLを適切に保つことが必要であり、TEWLと角層水分量の両方をケアできる組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−255031号公報
【特許文献2】特開2002−234830号公報
【特許文献3】特開2006−182746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、IGF−1の分泌促進作用を増強させ得る外用組成物を提供することを主な目的とする。また、肌の角層水分量を増加させ、且つ、経表皮水分喪失量を適切な状態に保つことができる外用組成物をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油、テレビン油、ジンジャー油、シナモン油またはオイゲノールから選ばれる精油にIGF−1分泌作用があることが認められた。さらに、その知見をもとに、精油とプリン塩基及び/又はその塩を組み合わせて用いることにより、より優れたIGF−1分泌促進作用を発現し得ることを見出した。特に、ダイウイキョウ、セイヨウアカマツ、ラバンデュラハイブリダから得られる精油と組み合わせた場合に顕著なIGF−1分泌促進作用が確認された。さらに、本発明者らは、このような組成物は、皮膚の角層水分量を増加し、かつ経表皮水分喪失量を適切な状態に保つことができることを見出した。本発明は、このような知見に基づいてさらに研究を重ねた結果完成されたものである。
【0012】
本発明は、以下の外用組成物、外用組成物の製造方法及び皮膚におけるIGF-1分泌促進方法を提供する。
項1.以下の(A)成分及び(B)成分を含有する外用組成物:
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種。
項2.(A)成分が、ダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油からなる群より選択される少なくとも1種の精油である、項1に記載の外用組成物。
項3.(A)成分が、ダイウイキョウ油、セイヨウアカマツ油及びラバンデュラハイブリダ油からなる群より選択される少なくとも1種の精油である、項1又は2に記載の外用組成物。
項4.(A)成分が、ダイウイキョウ油、セイヨウアカマツ油及びラバンデュラハイブリダ油の混合物を含む精油である、項1〜3のいずれかに記載の外用組成物。
項5.(A)成分が、ダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油の混合物を含む精油である項1〜4のいずれかに記載の外用組成物。
項6.(B)成分が、アデノシンのリン酸エステル又はその塩である、項1〜5のいずれかに記載の外用組成物。
項7.(B)成分が、アデノシン5'−一リン酸又はその塩である、項1〜6のいずれかに記載の外用組成物。
項8.(A)成分の配合割合が、0.00001〜40重量%である、項1〜7のいずれかに記載の外用組成物。
項9.(B)成分の配合割合が、0.01〜20重量%である、項1〜8のいずれかに記載の外用組成物。
項10.(B)成分1重量部に対する(A)成分の配合比率が、0.0000005〜1000重量部である、項1〜9のいずれかに記載の外用組成物。
項11.皮膚におけるIGF-1分泌促進用である、項1〜10のいずれかに記載の外用組成物。
項12.皮膚における角層水分量増加用である、項1〜10のいずれかに記載の外用組成物。
項13.皮膚における経表皮水分喪失量(TEWL)調節用である、項1〜10のいずれかに記載の外用組成物。
項14.化粧料または医薬部外品の形態である、項1〜13のいずれかに記載の外用組成物。
項15.下記(A)成分及び(B)成分
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種
を配合することを特徴とする、IGF-1分泌促進用外用組成物の製造方法。
項16.皮膚におけるIGF-1分泌促進用組成物の製造ための下記(A)成分及び(B)成分の使用:
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種。
項17.下記(A)成分及び(B)成分
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種
を皮膚に塗布することを特徴とする、皮膚におけるIGF-1分泌促進方法。
項18.下記(A)成分及び(B)成分
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種
を皮膚に塗布することを特徴とする、老人性乾皮症の予防/治療方法。
項19.カプサイシン類と、プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含有する外用組成物。
項20.カプサイシン類が、カプサイシン((6E)-N-[(4-Hydroxy-3-methoxyphenyl)methyl]-8-methylnon-6-enamide)、ノニル酸ワニリルアミド(N-Vanillylnonanamide)及びジヒドロカプシエイトからなる群より選択される少なくとも1種である、項19に記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の外用組成物は、精油とプリン塩基及び/又はその塩を組み合わせて用いることによって、精油の持つIGF−1産生促進作用を相乗的に増強し、皮膚におけるIGF−1分泌を顕著に促進させることができる。本発明の外用組成物は、色素沈着の軽減(メラニン量低下)、皮膚明度増加(くすみ防止)、ターンオーバー促進等の効果と、肌の水分保持、柔軟性増加等の効果を併せ持ち、皮膚の老化防止効果を有効且つ多面的に発揮することができる。
【0014】
さらに、本発明の外用組成物は、角層の水分量を増加し、肌の柔軟性及び弾力性を高める作用を有する。また、本発明の外用組成物は、経表皮水分喪失量(TEWL)を適切に保つ作用をも有するものである。例えば、加齢皮膚の場合、加齢により経表皮水分喪失量が低下すると肌が乾燥し、かゆみ等を生じさせることが知られている。このような症状を呈する疾患として、具体的には、老人性乾皮症が挙げられる。本発明の組成物によれば、角層水分量を高めるとともに、低下したTEWLを高めて、肌の水分量を適切な状態に保つことによって、肌機能を改善する効果が期待でき、瑞々しい肌を維持することができる。従って、本発明の外用組成物を、老人性乾皮症の予防/治療用として用いることもできる。
【0015】
また、経表皮水分喪失量が高いにもかかわらず、角層水分量が低下すると、かゆみ、湿疹、吹き出物を生じることがある。本発明の外用組成物によれば、皮膚の乾燥を抑制するとともに、経表皮水分喪失量(TEWL)を適切に保つことによって、かゆみ、湿疹、吹き出物等を防ぐことができる。このように、本発明の外用組成物によれば、角層水分量と経表皮水分喪失量のバランスを適切な状態に調節することができ、皮膚の状態を正常に保ち、さらには瑞々しい肌を保つことができる。ここでいう調節とは、肌のTEWLが低下した状態を改善し、適当な状態にある場合にはそれを維持することで、健康な皮膚状態に導くことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1a】皮膚IGF−1量に対する精油(ダイウイキョウ油)及びAMPの作用を示すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図1b】皮膚IGF−1量に対する精油(セイヨウアカマツ油)及びAMPの作用を示すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図1c】皮膚IGF−1量に対する精油(ラバンデュラハイブリダ油)及びAMPの作用を示すグラフである。
【図2】皮膚IGF−1量に対する増加作用に対するノニル酸ワリニルアミド及びAMPの作用を示すグラフである。
【図3a】試験例4における角層水分量の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図3b】試験例4における経表皮水分喪失量の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図3c】試験例4における肌の柔軟性の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図3d】試験例4における肌の弾力性の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図3e】試験例4における皮膚のきめの細かさの変化を表す写真である。
【図4a】試験例5における角層水分量の変化を表すグラフである。(図中、#はP<0.05を表す)。
【図4b】試験例5における経表皮水分喪失量の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【図4c】試験例5における試験液の塗布の有無による8週後の踵の拡大写真である。
【図5a】試験例6における角層水分量の変化を表すグラフである。
【図5b】試験例6における経表皮水分喪失量の変化を表すグラフである(図中、#はP<0.05を表す)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.外用組成物
本発明の皮膚外用組成物は、下記精油(以下(A)成分と表記することがある)及びプリン塩基及び/又はその塩(以下(B)成分と表記することがある)を含有する。以下、本発明の構成について詳述する。
【0018】
(A)精油
本発明において(A)成分として使用される精油(エッセンシャル・オイル)とは、植物の花、葉、果実、根、樹皮等から得られる揮発性、親油性の芳香物質を含有する抽出液を指し、好ましくは植物の葉、果実、根、樹皮等から得られる揮発性、親油性の芳香物質を含有する抽出液を指す。
【0019】
本発明の(A)成分として使用され得る精油としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、各植物原料から得られる精油を用いることができるが、例えば、ダイウイキョウ(Illicium verum)油、ウイキョウ(Foeniculum vulgare)油、アニス(Pimpinella anisum)油、ニオイヒバ(Thuja occidentalis Linn.)油、アトラスシーダ(Cedrus atlantica Manetti)油、ラバンデュラハイブリダ(Labandula Hybirda)油、ライム(Citrus aurantifolia)油、ハッカ(Mentha arvensis var. piperascens)油、セイヨウアカマツ(Pinus sylvestris)油、ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)油、ショウガ(Zingiber officinale)油、シナモン(Cinnamomum zeylanicum)油、チョウジ(Syzygium aromaticum)油、テレビン油等が挙げられる。これらの精油のうち、より好ましくはダイウイキョウ油、ウイキョウ油、アニス油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油であり、さらに好ましくはダイウイキョウ油、ウイキョウ油、アニス油、セイヨウアカマツ油、ラバンデュラハイブリダ油であり、特に好ましくはダイウイキョウ油、セイヨウアカマツ油、ラバンデュラハイブリダ油である。
【0020】
本発明の外用組成物には、上記精油の中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を任意に選択して使用しても良い。精油を2種以上組み合わせて用いる場合、その組み合わせの態様も、本発明の効果を損ねない限り特に限定されない。2種以上の精油を混合して用いる場合、好ましい組み合わせとしては、効果及び香気性の点から、例えばダイウイキョウ油、ウイキョウ油、アニス油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油の混合物、より好ましくはダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油の混合物が挙げられる。
【0021】
本発明においては、(A)成分として、このような精油の混合物又は混合物を含む精油を用いることによって、本発明の効果がより一層顕著に奏される。
【0022】
本発明の精油を採取する際に使用される各種植物原料の部位は、所望の精油が採取され得る部位であれば特に限定されず、植物の種類に応じて従来使用されている部位を用いることができる。好ましくは各種植物の花、茎、葉、樹枝、果実、根等の植物部位、及び植物の地上部等が挙げられ、さらに好ましくは各植物の茎、葉、樹枝、果実、根等の植物部位、及び植物の地上部等が挙げられる。また、植物の各部位を適宜組み合わせて用いることができる。より具体的には、ダイウイキョウ油、ウイキョウ油及びアニス油であれば果実(もしくは乾燥果実)から抽出された精油であることが好ましい。ニオイヒバ油であれば枝葉から抽出された精油であることが好ましい。アトラスシーダ油であれば樹皮から抽出された精油であることが好ましい。ラバンデュラハイブリダ油であれば全草から抽出された精油であることが好ましい。ライム油であれば果実・果皮から抽出された精油であることが好ましい。ハッカ油であれば全草から抽出された精油であることが好ましい。セイヨウアカマツ油であれば葉から抽出された精油であることが好ましい。ローズマリー油であれば葉から抽出された精油であることが好ましい。テレビン油であればマツ科(Pinaceae)の樹木から抽出された精油であることが好ましい。
【0023】
本発明において使用される精油は従来公知の方法に従って採取することができ、採取方法としては、例えば水蒸気蒸留法、油脂吸着法、溶剤抽出法、圧搾法等が挙げられる。これらの精油採取方法は、使用される植物原料の種類や抽出部位、得られる精油の性質に基づいて適宜選択することができる。また、より簡便には、商品として販売されている各種精油を商業的に入手して用いることも可能であり、例えば小城製薬株式会社、司生堂製薬株式会社、株式会社永廣堂本店等から入手できる。
【0024】
本発明の外用組成物における(A)成分の配合割合としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、(A)成分の総量で0.00001重量%以上、好ましくは0.00001〜40重量%、より好ましくは0.0001〜30重量%、さらに好ましくは0.0001〜25重量%を挙げることができる。
【0025】
(B)プリン塩基及びその塩
本発明において使用される(B)成分としては、プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。本発明においてプリン塩基とは、プリン又はプリン核を骨格とする各種の誘導体(以下、プリン塩基という)を指す。
【0026】
本発明に用いられるプリン塩基としては特に限定されるものでなく、例えばアデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、アデノシン、グアノシン、イノシン、アデノシンのリン酸エステル[アデノシン2'−一リン酸、アデノシン3'−一リン酸、アデノシン5'−一リン酸(AMP)、サイクリックアデノシン3',5'−一リン酸(cAMP)、アデノシン5'−二リン酸(ADP)、アデノシン5'−三リン酸(ATP)]、グアノシンのリン酸エステル(グアノシン3'−一リン酸、グアノシン5'−一リン酸、グアノシン5'−二リン酸、グアノシン5'−三リン酸)、アデニロコハク酸、キサンチン酸、イノシン酸、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を例示することができる。これらの中で、好ましくはアデノシン一リン酸(アデノシン2'−一リン酸、アデノシン3'−一リン酸、AMP、cAMP)を挙げることができる。特に、AMPは前記(A)成分と併用することでIGF−1分泌促進作用がより一層顕著に奏され、角層水分量を高め、さらに経表皮喪失水分量を適切に保つことができることから、本発明の(B)成分として好ましい。
【0027】
また、本発明に用いるプリン塩基の塩については、特に制限されるものではない。プリン塩基の塩の一例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩;アンモニウム、トリシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンとの塩;アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノヒドロキシメチルプロパンジオール等の脂肪族二価アルコール誘導体等を挙げることができる。これらの中で、好ましくはアルカリ金属塩を挙げることができる。
【0028】
本発明に使用される(B)成分として、好ましくはアデノシン一リン酸一ナトリウム、アデノシン一リン酸二ナトリウムを挙げることができる。
【0029】
本発明の外用組成物には、上記(B)成分の中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を任意に選択して使用しても良い。2種以上組み合わせて用いる場合、その組み合わせの態様も、本発明の効果を損ねない限り特に限定されない。
【0030】
本発明の外用組成物の総量に対する(B)成分の配合割合としては、例えば、(B)成分が総量で0.01重量%以上、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%を挙げることができる。ここで、(B)成分がプリン塩基の塩であるときは、前記配合割合はプリン塩基の重量に換算した値である。
【0031】
本発明の外用組成物は、上記(A)成分及び(B)成分を含有するものであればよく、それらの組み合わせの態様について制限はないが、本発明の外用組成物中の好適な(A)成分:精油と、(B)成分:プリン塩基及び/又はその塩の組み合わせとしては、例えば(A)成分:ダイウイキョウ油、ウイキョウ油、アニス油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ(樹皮)油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ(葉)油、ローズマリー油及びテレビン油の混合物と(B)成分:アデノシンリン酸エステル又はその塩の組み合わせ;(A)成分:ダイウイキョウ油、ウイキョウ油、アニス油、セイヨウアカマツ油及びラバンデュラハイブリダ油からなる群より選択される少なくとも1種から得られる精油と(B)成分:AMP又はその塩の組み合わせ;(A)成分:ダイウイキョウ油、ニオイヒバ油、アトラスシーダ油、ラバンデュラハイブリダ油、ライム油、ハッカ油、セイヨウアカマツ油、ローズマリー油及びテレビン油と(B)成分:AMP又はその塩の組み合わせ等が挙げられる。この様な(A)成分と(B)成分の組み合わせを採用することによって、本発明の優れた効果がより一層顕著に奏され得る。
【0032】
本発明の外用組成物中の(A)成分及び(B)成分の配合比率としては、特に制限されず、前述する(A)成分及び(B)成分の配合割合、該組成物の形態、期待される効果等に応じて、適宜設定することができる。一例として、配合される(B)成分1重量部に対して、(A)成分が総量で0.0000005〜1000重量部、好ましくは0.000005〜100重量部、より好ましくは0.000001〜100重量部、さらに好ましくは0.0001〜100重量部となる範囲を挙げることができる。ここで、(B)成分がプリン塩基の塩であるときは、前記配合比率はプリン塩基の重量に換算した値である。
【0033】
(C)その他の成分
本発明の外用組成物は、通常弱酸性〜中性の範囲内のpHを備えていればよいが、皮膚に対する低刺激性、及び色素沈着改善効果の点からは、好ましくはpH5〜7、更に好ましくはpH5.5〜7である。本発明の外用組成物のpHを上記範囲に調整するために、該皮膚外用剤にpH調整剤を配合することができる。このように配合されるpH調整剤としては、弱アルカリ性〜アルカリ性であって薬学的或いは香粧的に許容されるものであれば特に制限されない。一例として、水酸化ナトリウム、L−アルギニン、アミノメチルプロパンジオール、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。
【0034】
本発明の外用組成物には、上記成分に加えて、必要に応じて通常外用剤に配合される各種成分或いは添加剤、例えば界面活性剤、可溶化成分、油脂類、多価アルコール、増粘剤、防腐剤、殺菌剤、保湿剤、着色剤、分散剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、皮膚収斂剤、美白剤、顔料、防臭剤及び香料等を配合することができる。尚、これらの成分は1種単独で、または2種以上を任意に組み合わせて配合することができる。
【0035】
本発明の外用組成物は、皮膚に外用形態で適用される組成物として調製される限り、その形態については特に制限されない。例えば、本発明の外用組成物は、必要に応じて上記の各任意成分が配合され、さらに必要に応じてその他の溶媒や通常使用される外用剤の基剤又は担体を配合されることによって、ペースト状、ムース状、ジェル状、液状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、シート状、スティック状、エアゾール状、スプレー状、リニメント剤などの各種所望の形態の外用剤として調製することができる。これらは当業界の通常の方法に従って調製される。
【0036】
また、本発明の外用組成物の用途についても、特に制限されない。例えば、本発明の外用組成物は、皮膚外用医薬品;皮膚外用医薬部外品;ファンデーション、頬紅、リップ、マスカラ、アイシャドウ、アイライナー、白粉、日焼け止め等のメーキャップ化粧料や、乳液、クリーム、ローション、オイル及びパック等の基礎化粧料等の化粧料;洗顔料、クレンジング、ボディ洗浄料等の洗浄料;清拭剤;清浄剤;浴用剤等の各種外用剤に調製することができる。
【0037】
本発明の外用組成物は、ヒト皮膚に適用することによって使用される。本発明の外用組成物を適用する量並びに回数については、特に制限されない。例えば、有効成分の種類・濃度、使用者の年齢、性別、症状の程度、適用形態、期待される程度等に応じて、一日に一回若しくは数回の頻度で適当量を、全身の皮膚(特には色素沈着(シミ)部位;シワが気になる部位;皮膚の乾燥が気になる部位(例えば肘、膝、踵等);かゆみ、湿疹、吹き出物が気になる部位等)に適用すればよい。本発明の外用組成物は、皮膚に適用するのであれば、特に適用部分は限定されず、全身に適用することができる。
【0038】
本発明の外用組成物は、以下記載する試験例に示すように、皮膚におけるIGF−1分泌促進作用を有している。IGF−1(インスリン様成長因子)は、インスリンと配列が高度に類似したポリペプチドである。IGF−1は、インスリン様効果(血糖降下作用)に加えて、細胞成長作用を有し、細胞DNA合成を調節する。従って、皮膚におけるIGF−1の分泌が促進されることによって、皮膚細胞の成長が促進され、皮膚上皮層の疾患、症状が改善され、皮膚の健全な状態の保持が図られる。
【0039】
このように、本発明の外用組成物は、IGF−1分泌促進用外用組成物又はIGF−1産生促進用組成物として用いることができる。また、IGF−1分泌促進の機能に基づいて、肌の水分保持、柔軟性増加、色素沈着の軽減(メラニン量低下)、肝班の改善、皮膚明度増加(くすみ防止)、ターンオーバー促進作用を一層有効に発揮し得るものである。従って、本発明の外用組成物は、皮膚老化防止用組成物、保湿用組成物、色素沈着改善用組成物又は美白用組成物として使用することもできる。
【0040】
また、本発明の外用組成物は、角層の水分量を増加し、角層を柔軟にする作用を有する。従って、本発明の外用組成物は、皮膚における角層水分量増加用の外用組成物として使用することができる。角層水分量の増加は、従来公知の方法に従って測定することが可能であり、例えばSKICON-200(アイ・ビイ・エス株式会社製)等の測定器を用いることができる。このような測定器によれば、電気伝導度(μS)を指標として角層水分量の変化を評価することができる。
【0041】
さらに、本発明の外用組成物は、経表皮水分喪失量を適切に保持する作用をも有するものである。経表皮水分喪失量とは、皮膚内部から体外への水分の移行量を表し、これを適度に保つことによって皮膚の乾燥を抑制するとともに、かゆみ、湿疹、吹き出物等を防ぐことができる。本発明の外用組成物によれば、角層水分量を高める作用に加え、経表皮喪失水分量を適切に保持する作用を有することから、皮膚の状態を正常に保ち、さらには瑞々しい肌を実現することができる。すなわち、本発明の外用組成物は、経表皮水分喪失量(TEWL)が低下している皮膚に適用するとTEWLを増加させて適切な状態に保つことができる。また、TEWLが適当な状態にある場合にはそれを維持することで、健康な皮膚状態に導くことができる。従って、本発明の外用組成物を、経表皮水分喪失量増加用の外用組成物、又は経表皮水分喪失量調節用の外用組成物として使用することもできる。なお、経表皮水分喪失量は、従来公知の方法に従って測定することができ、例えばDermaLab(Cortex Technology社製)等の測定器を用いることができる。
【0042】
このように、本発明の外用組成物は、高い角層水分量を保持しながら、適度な経表皮水分喪失量を備えさせるための外用組成物としても使用することができる。また、本発明の外用組成物は、このような機能に基づいて角層の機能向上に有用であり、角層を健全に保つことができる。さらに、本発明の外用組成物は、角層水分量及び経表皮水分喪失量が低下した加齢皮膚の症状(具体的には、皮膚表面のザラザラ感、浅いひび割れ、かゆみ等)の改善に有用であり、特に水分保持能やバリア機能の低下した角層に起因する疾患(例えば老人性乾皮症)の予防/治療に有効にも適用され得るものである。
【0043】
さらに、本発明は、上記(A)成分及び(B)成分を皮膚に塗布することを特徴とする、皮膚におけるIGF-1分泌促進方法を提供する。さらに、本発明は、IGF-1分泌促進による皮膚の水分保持機能の改善効果に基づいて、老人性乾皮症の予防/治療方法を提供する。これらの方法における各成分の適用量は、症状の程度や、範囲等により適宜設定され得るが、例えば、上記(B)成分として1〜5000mg/日であり、1日に2〜3回に分けて適用することが好ましい。
【0044】
本発明は、上記(A)成分及び(B)成分と、必要に応じてその他の成分を配合することによって、簡便にIGF-1分泌促進作用を有する外用組成を製造する方法をも提供する。本発明の製造方法において、各成分の具体例、配合量等については上述の通りである。
【0045】
2.他の態様の組成物
さらに本発明者らは、下記実施例において示されるように、カプサイシン類とプリン塩基及び/又はその塩((B)成分)とを併用することによってIGF−1の分泌が促進されることを見出した。従って、本発明は、上記(B)成分とカプサイシン類を含有する外用組成物をも提供する。ただし、ここで記すカプサイシン類とは、精油の特徴である香りや揮発性を有しないことから、精油には含まれず、区別されるものである。
【0046】
カプサイシン類は、唐辛子の辛み成分として知られており、カプサイシノイド(バニリルアミンに脂肪酸が酸アミド結合した化合物の総称)、カプシノイド(バニリルアルコールに脂肪酸がエステル結合した化合物の総称)が挙げられる。例えばカプサイシノイドとしては、カプサイシン((6E)-N-[(4-Hydroxy-3-methoxyphenyl)methyl]-8-methylnon-6-enamide)、合成カプサイシノイドであるノニル酸ワニリルアミド(N-Vanillylnonanamide)等が挙げられる。カプシノイドとしてはジヒドロカプシエイト等が挙げられる。本発明においては、カプサイシン、合成カプサイシノイドが好ましい。カプサイシンは、唐辛子を原料に公知の方法に従って抽出して用いることもできるが、より簡便には東京化成工業株式会社等から商業的に入手することも可能である。
【0047】
本発明の外用組成物の総量に対するカプサイシン類の配合割合としては、例えば0.000001重量%以上、好ましくは0.000001〜0.01重量%、更に好ましくは0.000001〜0.005重量%を挙げることができる。
【0048】
(B)成分としては、上記のプリン塩基及び/又はその塩を用いることができる。
【0049】
本発明の外用組成物における(B)成分とカプサイシン類の配合比率は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば(B)成分1重量部に対して、カプサイシン類が0.00000005〜1重量部、好ましくは0.00000005〜0.1重量部、更に好ましくは0.0000001〜0.1重量部となる範囲を挙げることができる。ここで、(B)成分がプリン塩基の塩であるときは、前記配合比率はプリン塩基の重量に換算した値である。
【0050】
さらに、(B)成分とカプサイシン類を含む場合の外用組成物についても、当該組成物の形態、適用方法については、上記『1.外用組成物』の欄に記載される通りである。
【0051】
カプサイシン類は、IGF-1分泌促進剤として既に知られているが、本発明はカプサイシン類及びプリン塩基を組み合わせて使用することにより、カプサイシン類を単独で用いるよりも高いIGF-1分泌促進を達成し得るものである。また、カプサイシン類とプリン塩基を組み合わせて使用することにより、カプサイシン類の使用濃度の低減をも可能とするものである。
【実施例】
【0052】
以下、試験例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、下記実施例、比較例及び参考例においては、特に規定されない限り、%は重量%を表す。
【0053】
実施例1〜3、比較例1〜5
皮膚におけるIGF−1分泌量に及ぼす精油の作用がAMPによりどのように影響されるかを検討するため、精油とAMPを含有する下記組成物(実施例1〜3及び比較例1〜5)を常法により調製した。各組成物のpHは、pH6.5〜7.0になるようにNaOHで調整した。
【0054】
【表1】
【0055】
試験例1:精油とAMPの組み合わせによるIGF−1分泌促進効果(1)
[試験1−1]
ヘアレスマウス(Hos:HR-1,日本エスエルシー(株), 雌, 6〜8週令)の背部皮膚(3 cm × 5 cm)に被験液を400μL塗布した。塗布30分後に皮膚を採取、凍結破砕した後、皮膚中IGF−1濃度を測定した。IGF−1濃度の測定にはQuantikine(登録商標) Mouse IGF-1 Immunoassay(R&D Systems, Inc.)を使用した。
【0056】
試験群は下記表2の通りとし、被験液には表1に示す組成物を用いた。結果を図1aに示す(平均値±標準誤差)。
【0057】
【表2】
【0058】
[試験1−2]
試験1−1に記載の方法に従って、分泌されたIGF−1濃度を測定した。試験群は下記表3の通りとし、被験液には上記表1に示す組成物を用いた。結果を図1bに示す(平均値±標準誤差)。
【0059】
【表3】
【0060】
[試験1−3]
試験1−1に記載の方法に従って、分泌されたIGF−1濃度を測定した。試験群は下記表4の通りとし、被験液には表1に示す組成物を用いた。結果を図1cに示す(平均値±標準誤差)。
【0061】
【表4】
【0062】
図1a(ダイウイキョウ油+AMP)の結果より、ダイウイキョウ油自身も皮膚におけるIGF−1分泌促進作用を有していることが示されたが、単独ではIGF−1分泌促進作用がないAMPと併用することによってその効果が有意に増強されることが示された(P=0.0002, 1-Way ANOVA)。
【0063】
図1b(セイヨウアカマツ油+AMP)の結果より、AMP単独及びセイヨウアカマツ葉油単独ではIGF−1分泌の促進は見られなかったが、AMPとセイヨウアカマツ油を併用することによってIGF−1分泌が顕著に促進されることが示された(P=0.0175,1-Way ANOVA)。
【0064】
図1c(ラバンデュラハイブリダ油+AMP)の結果より、ラバンデュラハイブリダ油とAMPを併用することによってIGF−1の分泌が顕著に増強される傾向が示された。
【0065】
以上より、AMP単独では、十分なIGF−1分泌促進効果が得られないが、実施例1、2及び3、とりわけ実施例1及び2の組成物においては、顕著なIGF−1の分泌促進作用を奏することが示された。
【0066】
また、ダイウイキョウ油は、主な成分としてアネトール(anethole)を含有することが知られている。アネトールは、ウイキョウ油、アニス油等にも含有されることから、ウイキョウ油及びアニス油とAMPを組み合わせた場合にも、ダイウイキョウ油を用いた場合と同様に優れたIGF−1の分泌促進効果が期待される。
【0067】
試験例2:ノニル酸ワリニルアミドとAMPの組み合わせによるIGF−1分泌促進効果
上記表1に示される実施例1において精油の代わりに、ノニル酸ワニリルアミド((東京化成工業株式会社製);濃度0.001%)を用い、試験例1と同様に被験液を調製し、これを参考例1とした。また、参考例1においてノニル酸ワリニルアミドを含有しない被験液(比較例6)、参考例1においてAMPを含有しない被験液(比較例7)をそれぞれ対照として用いた。
【0068】
ヘアレスマウス(Hos:HR-1,日本エスエルシー(株), 雌, 6〜8週令)の背部皮膚(3 cm × 5 cm)に被験液を400μL塗布した。塗布60分後に皮膚を採取、凍結破砕した後、皮膚中IGF−1濃度を測定した。IGF−1濃度の測定にはQuantikine(登録商標) Mouse IGF-1 Immunoassay(R&D Systems, Inc.)を使用した。試験群は下記表5の通りとした。結果を図2に示す。IGF−1濃度の値は平均値を表す(n=3)。
【0069】
【表5】
【0070】
図2より、ノニル酸ワリニルアミドとAMPを組み合わせて用いた場合にもIGF−1の分泌促進効果が確認された。
【0071】
試験例3:精油とAMPの組み合わせによるIGF−1分泌促進効果(2)
ヘアレスマウス(Hos:HR-1,日本エスエルシー(株), 雌, 7週令)の背部皮膚(3 cm × 5 cm)に被験液を300μL塗布した。塗布30分後に皮膚を採取、凍結破砕した後、皮膚中IGF−1濃度を測定した。IGF−1濃度の測定にはQuantikine(登録商標) Mouse IGF-1 Immunoassay(R&D Systems, Inc.)を使用した。
【0072】
試験は塗布、無塗布の2群間比較とした。被験液には試験例1においてIGF−1分泌促進効果が確認されたダイウイキョウ油、セイヨウアカマツ油、ラバンデュラハイブリダ油の他、製剤として好ましい香気性を有するようにその他の精油(アトラスシーダ油、ニオイヒバ油、ライム油、ハッカ油、ローズマリー油及びテレビン油)を組合せた精油混合物0・03%とAMPを1%、さらに適当な一般基材を加えたミルク製剤を用いた。結果を表6に示す(平均値±標準誤差)。
【0073】
【表6】
【0074】
表6より、精油混合物とAMPを組み合わせた製剤とした場合においても、同様に有意なIGF−1の分泌促進効果が確認された(P<0.05)。
【0075】
また、先に記した通り、ダイウイキョウ油、セイヨウアカマツ油、ラバンデュラハイブリダ油と上記の精油の計9種を混合した場合、香気性の面から、特に優れていることが示された。
【0076】
試験例4:角層水分量及び経表皮水分喪失量への影響(1)
本試験例は、健常男性9名、年齢30〜55歳(平均45歳)を被験者として行われた。被験者の左右の大腿部正面に設置した5×8cmの領域を試験部位とした。左右一方の試験部位に試験液を塗布し、他方の試験部位は無塗布とした。塗布量は、1回につき約0.1g(使用した容器の2滴分)を、1日2回(午前・午後)とし、塗布時間帯は午前塗布を6:00から12:00までの間、午後塗布を18:00から24:00までの入浴後とした。試験液として、下記表7に示される組成のスキンミルクを用いた。
【0077】
【表7】
【0078】
被験者は測定前に、指定された石鹸(花王ホワイト;花王株式会社製)を用いて測定部位(大腿部)を洗浄した後、測定部位を油性ペンにてマーキングし、温度20℃、相対湿度50%RHにコントロールした部屋でベッド上に仰向けの状態で20分間安静にした。その後、角層水分量、経表皮水分喪失量を測定した。このとき、無塗布部分を対照とした。測定は塗布開始前、塗布4週後及び8週後に行った。結果を図3a及び3bに示す。
【0079】
角層水分量の測定、経表皮水分喪失量の測定及びデータ解析は下記の方法に従った。
【0080】
<角層水分量>
SKICON-200(アイ・ビイ・エス株式会社)を用いて電気伝導度(μS)を測定し角層水分量の指標とした。測定は7回実施し、中央の5データの平均値を測定値とした。
【0081】
<経表皮水分喪失量(TEWL)>
DermaLab(Cortex Technology)を用いて経表皮水分喪失量(g/ h・m2)を測定する。測定は5回実施し、その平均値を測定値とした。
【0082】
<データ解析>
有意差検定として、無塗布群に対する塗布群の差について、各測定日(塗布4週後、塗布8週後)での比較として対応のあるt検定を用いた。図中、#はP<0.05で有意差があったことを示す。
【0083】
図3aに示される結果より、試験液の塗布4週間及び8週間において、角層水分量が有意に増加していることが示された。また、図3bより、本発明の外用組成物の塗布8週後において無塗布に比べ有意なTEWLの上昇が示された。
【0084】
すなわち、試験液を塗布した場合は、高い角層水分量を保持しつつ、経表皮水分喪失量も同時に高い値に保つことができ、皮膚が健全な状態に保たれることが示された。
【0085】
さらに、本試験例4において、その効果を一般的な皮膚効能の指標である柔軟性と弾力性の面から評価した結果を図3c、図3dに示す。
【0086】
柔軟性、弾力性の測定及びデータ解析は下記の方法に従った。
【0087】
<柔軟性・弾力性>
柔軟性及び弾力性はCutometer MPA580(CK electronic GmbH)を用いて測定する。測定は、機器に付属の説明書に記載される標準的な方法で実施した。測定は5回実施し、その平均値を測定値とした。
【0088】
<データ解析>
有意差検定として、無塗布群に対する塗布群の差について、各測定日(塗布4週後、塗布8週後)での比較として対応のあるt検定を用いた。図中、#はP<0.05で有意差があったことを示す。
【0089】
図3cに示される結果より、試験液の塗布により、肌の柔軟性の低下が有意に抑制されることが示された。また、図3dより、肌の弾力性の上昇が認められた。
【0090】
さらに、試験液の塗布による皮膚表面のきめの変化を確認するために、塗布前後における皮膚検体サンプルの画像撮影を行った。
【0091】
<皮膚表面きめの評価>
皮膚表面きめの評価は、皮膚検体サンプルを作製して行った。皮膚検体サンプルは、反射用レプリカ解析システムASA-03R(アサヒバイオメッド)を用い、付属の説明書に記載される方法で皮膚表面形態のレプリカを作成し、画像撮影して評価した。
【0092】
図3eに示される結果より、試験液の8週間塗布により、明らかに皮膚きめが細かくなっていることが認められた。
【0093】
試験例4の結果より、上記9種類の精油の混合物と、AMPを組み合わせて皮膚に適用することによって、皮膚の水分量を正常に保ち、さらには柔軟性や弾力性をも向上させることが示された。加えて、本発明の外用組成物を皮膚に塗布することによって、皮膚表面のきめが細かくなり、瑞々しく健全な肌が得られた。
【0094】
試験例5:角層水分量及び経表皮水分喪失量への影響(2)
これらの効果が全身で示されることを確認する目的で、下記試験を実施した。本試験例は、健常男性7名、年齢39〜57歳(平均49.0歳)を被験者として行われた。被験者の左右一方の踵部に4×4 cmの領域を設置し、これを試験部位とした。左右一方の試験部位に試験液(AMP0.5%と精油混合物0.03%を含むクリーム製剤)を塗布し、他方の試験部位は無塗布とした。塗布量は、1回につき約0.2gを、1日2回(午前・午後)とし、塗布時間帯は午前塗布を6:00から12:00までの間、午後塗布を18:00から24:00までの入浴後とした。
【0095】
その後、試験例4と同様の方法で、被験者の角層水分量、経表皮水分喪失量の測定及び写真撮影を実施した。測定は塗布開始前、塗布4週後及び8週後に行った。結果を図4に示す。
【0096】
図4a及び図4bより、試験液塗布により無塗布と比べて明らかな角層水分量の増加と、TEWLの有意な上昇が認められた。
【0097】
さらに、試験液塗布による皮膚に及ぼす効果を確認する目的で、試験開始から8週間後の評価部位を撮影し、拡大したものを画像化した。その画像を図4cに示す。
【0098】
図4cの結果より、試験液の塗布により、皮膚表面の状態が改善されていることが明らかである。
【0099】
本試験例より、一般に、体表のなかでも特に乾燥しやすく、ひび割れ等を生じやすいことが知られている踵部分において、角層水分量の増加及び経表皮水分喪失量の上昇が確認され、皮膚表面状体の明らかな改善が認められた。
【0100】
試験例6:角層水分量及び経表皮水分喪失量への影響(3)
本試験例は、健常男性5名、年齢47〜57歳(平均53.2歳)を被験者として行われた。被験者の左右の前腕内側部に4×4 cmの領域をそれぞれ2カ所ずつ(肘側と手首側)設置し、これを試験部位とした。左右一方の肘側塗布部位に試験液(上記試験例3で用いたスキンミルク)を塗布、他方の肘側塗布部にアデノシン一リン酸及び精油を含有しない市販の一般的なスキンミルク(一般製剤)を塗布した。塗布回数は1日2回(午前・午後)とし、塗布時間帯は午前塗布を6:00から12:00までの間、午後塗布を18:00から24:00までの入浴後とした。塗布量は1回につき約0.05g(使用した容器の1滴分)とした。
【0101】
被験者は測定前に、指定された石鹸(花王ホワイト;花王株式会社製)を用いて測定部位(前腕内側部)を洗浄した後、測定部位を油性ペンにてマーキングし、温度20℃、相対湿度50%RHにコントロールした部屋でベッド上に仰向けの状態で20分間安静にした。その後、角層水分量、経表皮水分喪失量(TEWL)を測定した。測定は塗布開始前及び塗布4週に行った。
【0102】
角層水分量の測定、経表皮水分喪失量の測定及びデータ解析は試験例4と同様の方法に従った。結果を図5a及び5bに示す。
【0103】
図5a及び5bより、角層水分量の変化に関しては、試験液と一般製剤のいずれを塗布した場合にも角層水分量が増加した。一方、試験液塗布では4週後、一般製剤塗布に比べて有意なTEWLの上昇が見られた。
【0104】
すなわち、試験液を塗布した場合は、高い角層水分量と経表水分喪失量を同時に実現することができ、皮膚を瑞々しく、健全な状態に保つことができた。一方、一般的なスキンミルクを塗布した場合は、角層水分量を高く保つのみにとどまり、経表皮水分喪失量を向上させることはできなかった。
【0105】
また、試験液(スキンローション)についても同様に試験を行い、一般製剤(スキンローション)と比較したところ、いずれの場合も角層水分量が上昇していたが、TEWLについては試験液(スキンローション)を用いた場合に上昇する傾向が見られた。試験液として用いたスキンローションの組成は以下の通りである。
【0106】
【表8】
【0107】
*1 精油混合物としては、表7と同じ物を使用した。
【0108】
<処方例>
以下に本発明の外用組成物の処方例を示すが、本発明はこれらに限定されない。ローション、乳液及び美容液は、各処方例に示される組成に基づいて常法により調製することができる。なお、各処方例の合計量を100重量%として記載する。
【0109】
【表9】
【0110】
【表10】
【0111】
*1 精油混合物としては、表7と同じ物を使用した。
【0112】
【表11】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)成分及び(B)成分を含有する外用組成物:
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種。
【請求項2】
(B)成分が、アデノシンのリン酸エステル又はその塩である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項1】
以下の(A)成分及び(B)成分を含有する外用組成物:
(A)精油;
(B)プリン塩基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種。
【請求項2】
(B)成分が、アデノシンのリン酸エステル又はその塩である、請求項1に記載の外用組成物。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【公開番号】特開2010−77130(P2010−77130A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229984(P2009−229984)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【分割の表示】特願2009−531683(P2009−531683)の分割
【原出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【分割の表示】特願2009−531683(P2009−531683)の分割
【原出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】
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