説明

外用組成物

【課題】抗酸化剤を含有する外用組成物であって、抗酸化剤の細胞毒性が軽減された組成物を提供する。
【解決手段】ビタミンA類、ヘパリン類似物質、及び抗酸化剤を含む外用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手指などの肌荒れ;ひじ、ひざ、かかと、くるぶしの角化症;手足のひび、あかぎれ;乾皮症;小児の乾燥性皮膚;しもやけ;きず、やけどの後の皮膚のしこり、つっぱり;打身、ねんざ後の腫れ、筋肉痛、関節痛などを予防、治療、又は改善できる外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗酸化剤は、医薬、医薬部外品、化粧品、食品などの添加剤として広く使用されている。抗酸化剤は、組成物中の各成分を安定に保ち、組成物の組成や剤型を長期間にわたり保持するのに寄与する。また、組成物の臭気の発生や変色を防止する。
医薬、医薬部外品、化粧品の外用組成物の酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(以下、「BHT」ということがある)、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸またはその塩、トコフェロール又はその塩、エリソルビン酸塩、亜硫酸塩、二酸化硫黄、フィチン酸、アセチルシステイン、システイン、グルコン酸マンガン、アルブチン、チオジプロピオン酸ジラウリルなどの抗酸化剤が用いられている。
酸化防止剤は、濃度によっては皮膚刺激や細胞毒性を有することがある。例えば、非特許文献1には、BHTは皮膚発赤を誘発するため保護手袋を装着する必要があることが記載されている。また、BHTの細胞毒性を、トリパンブルー染色法及びLDH(死細胞から放出される酵素)活性測定法で評価した結果、低濃度では細胞の生残率に著しい変化は与えなかったが、高濃度で細胞生残率を減少させた報告も見られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】国立医薬品食品衛生研究所 国際化学物質安全性カード(ICSC)番号:0841
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、抗酸化剤を含有する外用組成物であって、抗酸化剤の細胞毒性が軽減された組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、抗酸化剤と、ビタミンA類及びヘパリン類似物質とを併用することにより、抗酸化剤の細胞毒性が効果的に軽減されることを見出した。
【0006】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の外用組成物を提供する。
項1. ビタミンA類、ヘパリン類似物質、及び抗酸化剤を含む外用組成物。
項2. 抗酸化剤が、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロ亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、並びにアスコルビン酸、その塩、及びその配糖体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である項1に記載の外用組成物。
項3. 抗酸化剤の含有量が、組成物の全量に対して、0.001〜1重量%である項1又は2に記載の外用組成物。
項4. ビタミンA類が、レチノールエステル、及びレチノイン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である項1〜3のいずれかに記載の外用組成物。
項5. ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.0001〜2重量%である項1〜4のいずれかに記載の外用組成物。
項6. 抗酸化剤の含有量に対するビタミンA類の含有量が、重量比で、1:0.03〜50である項1〜5のいずれかに記載の外用組成物。
項7. ヘパリン類似物質の含有量が、組成物の全量に対して、0.005〜10重量%である項1〜6のいずれかに記載の外用組成物
項8. 抗酸化剤の含有量に対するヘパリン類似物質の含有量が、重量比で、1:0.01〜50である項1〜7のいずれかに記載の外用組成物。
項9. ビタミンA類の含有量に対するヘパリン類似物質の含有量が、重量比で、1:0.01〜10である項1〜8のいずれかに記載の外用組成物。
項10. 抗酸化剤を含む組成物に、ビタミンA類、及びヘパリン類似物質を添加する、抗酸化剤の細胞毒性の軽減方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の外用組成物は、抗酸化剤、ビタミンA類、及びヘパリン類似物質を含有することにより、抗酸化剤が有する細胞毒性が減少又は消失している。抗酸化剤単独での細胞毒性に対して、皮膚保湿作用を有するヘパリン類似物質を添加しても細胞毒性を軽減する作用は全く有しないが、ヘパリン類似物質と脂溶性であるビタミンA類を組合わせると、抗酸化剤の細胞毒性を相乗効果的に軽減する。
その結果、本発明の外用組成物は、ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含む組成物が有する本来の作用を効果的に発揮することができ、手指などの肌の荒れ;ひじ、ひざ、かかと、くるぶしの角化症;手足のひび、あかぎれ;乾皮症;小児の乾燥性皮膚;しもやけ;きず、やけどの後の皮膚のしこり、つっぱり;打身、ねんざ後の腫れ、筋肉痛、関節痛などの改善に有用な組成物となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】正常ヒト表皮細胞の生存率に及ぼす、BHT、パルミチン酸レチノール、及びヘパリン類似物質の影響を示す図である。
【図2】正常ヒト表皮細胞の生存率に及ぼす、ピロ亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸レチノール、及びヘパリン類似物質の影響を示す図である。
【図3】正常ヒト表皮細胞の生存率に及ぼす、亜硫酸水素ナトリウム、パルミチン酸レチノール、及びヘパリン類似物質の影響を示す図である。
【図4】正常ヒト表皮細胞の生存率に及ぼす、ブチルヒドロキシアニソール、パルミチン酸レチノール、及びヘパリン類似物質の影響を示す図である。
【図5】正常ヒト表皮細胞の生存率に及ぼす、アスコルビン酸2−アニソール、パルミチン酸レチノール、及びヘパリン類似物質の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の外用組成物は、ビタミンA類、ヘパリン類似物質、及び抗酸化剤を含む組成物である。
【0010】
ビタミンA類
本発明におけるビタミンA類には、レチノール、レチナール、レチノイン酸、これらのデヒドロ体、これらのエステル、及びプロビタミンAが含まれる。
エステルとしては、酢酸レチノール、プロピオン酸レチノール、酪酸レチノール、オクチル酸レチノール、ラウリル酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ステアリン酸レチノール、ミリスチン酸レチノール、オレイン酸レチノール、リノレン酸レチノール、リノール酸レチノール、パルミチン酸レチナール、酢酸レチナール、プロピオン酸レチナール、レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、レチノイン酸トコフェロール(α、β、γ、δのいずれの異性体であってもよい。)などが挙げられる。プロビタミンAとしては、α-カロチン、β-カロチン、γ-カロチン、δ−カロチン、リコピン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、エキネノン等が挙げられる。
中でも、レチノール又はレチノイン酸のエステルが好ましく、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、δ−レチノイン酸トコフェロールがより好ましい。
ビタミンA類は1種を単独で、又は2種以上を組合わせて使用できる。
ビタミンA類は、動物材料などの天然物から単離したもの、化学合成したものの何れであってもよい。また、ビタミンA類は、ビタミンA油の形態で用いることもできる。ビタミンA油は、動物から抽出、精製した天然油でもよく、また、ビタミンA類を植物油などに溶解させたものでもよい。後者の代表例として、日本薬局方記載のビタミンA油(1gにつき30000ビタミンA単位(IU)以上を含む)が挙げられる。
【0011】
本発明の外用組成物中のビタミンA類の含有量は、組成物の全量に対して、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上とすればよい。また、通常2重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下とすればよい。
上記範囲であれば、ビタミンA類の有する角化抑制作用や抗酸化作用などの生理作用を発揮でき、また、抗酸化剤の細胞毒性が効果的に抑制される。また、上記範囲であれば、ビタミンA類の過剰使用による副作用(重篤な紅斑などの炎症やスティンギングなど)が生じない。
また、抗酸化剤の含有量に対するビタミンA類の含有量の比率(抗酸化剤:ビタミンA類)は、重量比で、約1:0.001〜50が好ましく、約1:0.01〜30がより好ましく、約1:0.1〜20がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、ビタミンA類の有する角化抑制作用や抗酸化作用などの生理作用を発揮でき、また、抗酸化剤の細胞毒性が効果的に抑制される。また、上記範囲であれば、ビタミンA類の過剰使用による副作用(重篤な紅斑などの炎症やスティンギングなど)が生じない。
上記のビタミンA類の含有量及び比率は、ビタミンA類がビタミンA油の形態で組成物に含まれる場合は、ビタミンA類を植物油などに溶解させたビタミンA油の重量に基づいて計算した値である。
【0012】
ヘパリン類似物質
ヘパリン類似物質は、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖である。ムコ多糖を構成する単糖1分子当たり平均0.5〜5分子、中でも平均0.6〜3分子の硫酸基を有するのが好ましい。ヘパリン類似物質には、例えば、ヘパリン;コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸Eのようなコンドロイチン多硫酸などが含まれる。中でも、日本薬局方外医薬品規格に収戴されているヘパリン類似物質を好適に使用できる。
ヘパリン類似物質は、ムコ多糖を硫酸化することにより得ることができる。また、ウシ、ブタ等の動物の気管支を含む内臓より水性担体を用いて抽出、精製したり、さらに必要に応じて硫酸化することによっても得ることができる。ヘパリン類似物質は、医薬や化粧品の原料として市販されているので、市販品を利用することもできる。
【0013】
本発明の外用組成物中のヘパリン類似物質の含有量は、組成物の全量に対して、通常0.005重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、さらにより好ましくは0.1重量%以上とすればよい。また、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらにより好ましくは0.5重量%以下とすればよい。
上記範囲であれば、ヘパリン類似物質の有する保湿作用や血行促進作用などの生理作用を発揮でき、また、抗酸化剤の細胞毒性が効果的に抑制される。
また、抗酸化剤の含有量に対するヘパリン類似物質の含有量の比率(抗酸化剤:ヘパリン類似物質)は、重量比で、約1:0.0001〜50が好ましく、約1:0.001〜40がより好ましく、約1:0.01〜35がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、ヘパリン類似物質の有する保湿作用や血行促進作用などの生理作用を発揮でき、また、抗酸化剤の細胞毒性が効果的に抑制される。
また、ビタミンA類の含有量に対するヘパリン類似物質の含有量の比率(ビタミンA類:ヘパリン類似物質)は、重量比で、約1:0.01〜10が好ましく、約1:0.05〜5がより好ましく、約1:0.1〜2がさらにより好ましい。
ビタミンA類の含有量に対するヘパリン類似物質の含有量が上記範囲であれば、手指などの肌荒れ;ひじ、ひざ、かかと、くるぶしの角化症;手足のひび、あかぎれ;乾皮症;小児の乾燥性皮膚;しもやけ;きず、やけどの後の皮膚のしこり、つっぱり;打身、ねんざ後の腫れ、筋肉痛、関節痛などを予防、治療、又は改善でき、また、抗酸化剤の細胞毒性を効果的に低減することができる。
【0014】
抗酸化剤
抗酸化剤としては、BHT、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸、その塩(ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩など)又はその配糖体(アスコルビン酸2−グルコシドなど)、トコフェロール又はその塩(酢酸塩、ニコチン酸塩、コハク酸塩)、亜硫酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、ピロ亜硫酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、亜硫酸水素塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)などが挙げられる。
本発明の外用組成物中の抗酸化剤の含有量は、組成物の全量に対して、通常0.001重量%以上、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上とすればよい。また、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下とすればよい。
上記範囲であれば、抗酸化作用が十分に得られると共に、本来の薬効が得られるだけのビタミンA類及びヘパリン類似物質の使用量で、抗酸化剤の細胞毒性を効果的に抑制することができる。
【0015】
好ましい組み合わせ
ビタミンA類、ヘパリン類似物質、及び抗酸化剤の好ましい組み合わせを以下の表1に例示する。
【0016】
【表1】

【0017】
製剤
本発明の外用組成物は、ビタミンA類、ヘパリン類似物質、及び抗酸化剤を、医薬品、医薬部外品、又は化粧品に通常使用される基剤又は担体、及び必要に応じて添加剤と共に混合して、医薬品、医薬部外品、又は化粧品用の外用組成物とすることができる。
【0018】
<形態>
医薬品用の外用組成物の形態は特に限定されず、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤又はパップ剤などが挙げられる。これらの製剤は、第15改正日本薬局方製剤総則に記載の方法等に従い製造することができる。
医薬部外品又は化粧品用の外用組成物の形態は特に限定されず、例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め用化粧料、パック、ハンドクリーム、ボディローション、ボディークリームのような基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし、ボディーシャンプーのような洗浄用化粧料;ファンデーション、化粧下地、リップクリーム、口紅、チークカラーのようなメークアップ化粧料;入浴剤などが挙げられる。
【0019】
<基剤又は担体>
基剤又は担体としては、流動パラフィン、スクワラン、ゲル化炭化水素(プラスチベースなど)、オゾケライト、α−オレフィンオリゴマー、軽質流動パラフィンのような炭化水素;メチルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、架橋型アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性分岐シリコーン、ポリグリセリン変性分岐シリコーン、アクリルシリコン、フェニル変性シリコーン、シリコーンレジンのようなシリコーン油;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;カラギーナン;ポリビニルブチラート;ポリエチレングリコール;ジオキサン;ブチレングリコールアジピン酸ポリエステル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリットのようなエステル類;デキストリン、マルトデキストリンのような多糖類;エタノール、イソプロパノールのような低級アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルのようなグリコールエーテル;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、イソプレングリコールなどの多価アルコール;水などの水系基剤などが挙げられる。
【0020】
基剤又は担体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
<添加剤>
本発明の外用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品、医薬部外品、又は化粧品に添加される公知の添加剤、例えば、界面活性剤、増粘剤、保存剤、pH調整剤、キレート剤、安定化剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、香料、パール光沢付与剤等を添加することができる。
界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタンのようなソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコールのようなプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO−40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO−50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO−60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80などの硬化ヒマシ油誘導体;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル;グリセリンアルキルエーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレンセチルエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ステアリルアミン、オレイルアミンのようなアミン類;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンのようなシリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
【0022】
増粘剤としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、ベントナイト、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーなどが挙げられる。
【0023】
保存剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0024】
pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸など)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウムなど)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)などが挙げられる。
キレート剤としては、EDTA・2ナトリウム塩、EDTA・カルシウム・2ナトリウム塩などが挙げられる。
【0025】
安定化剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
刺激低減剤としては、甘草エキス、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
防腐剤としては、安息香酸塩、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンゼトニウム、フェノキシエタノール、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。
【0026】
添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0027】
<その他の有効成分>
本発明の外用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の有効成分を含むことができる。有効成分の具体例としては、例えば、保湿成分、抗炎症成分、抗菌成分、ビタミン類、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、細胞賦活化成分、老化防止成分、血行促進成分などが挙げられる。
【0028】
保湿成分としては、グリセリン、1,3−ブチレングルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジグリセリントレハロースのような多価アルコール;ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサンのような高分子化合物;グリシン、アスパラギン酸、アルギニンのようなアミノ酸;乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウムのような天然保湿因子;セラミド、コレステロール、リン脂質のような脂質;カミツレエキス、ハマメリスエキス、チャエキス、シソエキスのような植物抽出エキスなどが挙げられる。
抗炎症成分としては、植物(例えば、コンフリー)に由来する成分、アラントイン、グリチルリチン酸又はその誘導体、酸化亜鉛、塩酸ピリドキシン、酢酸トコフェロール、サリチル酸又はその誘導体、ε-アミノカプロン酸などが挙げられる。
【0029】
抗菌成分としては、クロルヘキシジン、サリチル酸、塩化ベンザルコニウム、アクリノール、エタノール、塩化ベンゼトニウム、クレゾール、グルコン酸及びその誘導体、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、イソプロピルメチルフェノール、トリクロカルバン、トリクロサン、感光素101号、感光素201号、パラベン、フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール、塩酸アルキルジアミノグリシン等が挙げられる。
【0030】
ビタミン類としては、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム等のビタミンE類;リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル等のビタミンB2類;ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸β−ブトキシエチル、ニコチン酸1−(4−メチルフェニル)エチル等のニコチン酸類;アスコルビゲン−A、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L−アスコルビルなどのビタミンC類;メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなどのビタミンD類;フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類、γ−オリザノール、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩;チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等のビタミンB1類;塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’−リン酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン等のビタミンB6類;シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン等のビタミンB12類;葉酸、プテロイルグルタミン酸等の葉酸類;ニコチン酸、ニコチン酸アミドなどのニコチン酸類;パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(パンテノール)、D−パンテサイン、D−パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類;ビオチン、ビオチシン等のビオチン類;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム等のアスコルビン酸誘導体であるビタミンC類;カルニチン、フェルラ酸、α−リポ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子などが挙げられる。
【0031】
ペプチド又はその誘導体としては、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、コラーゲン、魚由来コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン分解ペプチド、コラーゲン分解ペプチド、加水分解コラーゲン、塩化ヒドロキシプロピルアンモニウム加水分解コラーゲン、エラスチン分解ペプチド、コンキオリン分解ペプチド、加水分解コンキオリン、シルク蛋白分解ペプチド、加水分解シルク、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、大豆蛋白分解ペプチド、加水分解大豆蛋白、小麦蛋白、小麦蛋白分解ペプチド、加水分解小麦蛋白、カゼイン分解ペプチド、アシル化ペプチド(パルミトイルオリゴペプチド、パルミトイルペンタペプチド、パルミトイルテトラペプチド等)などが挙げられる。
【0032】
アミノ酸又はその誘導体としては、ベタイン(トリメチルグリシン)、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、β−アラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、タウリン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシン、クレアチン等が挙げられる。
【0033】
細胞賦活化成分としては、γ-アミノ酪酸、ε-アミノプロン酸などのアミノ酸類;レチノール、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類などのビタミン類;グリコール酸、乳酸などのα-ヒドロキシ酸類;タンニン、フラボノイド、サポニン、アラントイン、感光素301号などが挙げられる。
老化防止成分としては、パンガミン酸、カイネチン、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、ケイ素、ケイ酸、N−メチル−L−セリン、メバロノラクトン等が挙げられる。
【0034】
血行促進作用成分としては、植物(例えば、オタネニンジン、アシタバ、アルニカ、イチョウ、ウイキョウ、エンメイソウ、オランダカシ、カミツレ、ローマカミツレ、カロット、ゲンチアナ、ゴボウ、コメ、サンザシ、シイタケ、セイヨウサンザシ、セイヨウネズ、センキュウ、センブリ、タイム、チョウジ、チンピ、トウキ、トウニン、トウヒ、ニンジン、ニンニク、ブッチャーブルーム、ブドウ、ボタン、マロニエ、メリッサ、ユズ、ヨクイニン、ローズマリー、ローズヒップ、チンピ、トウキ、トウヒ、モモ、アンズ、クルミ、トウモロコシ)に由来する成分;グルコシルヘスペリジンなどが挙げられる。
【0035】
pH
本発明の外用組成物のpHは、約4〜9が好ましく、約5〜8がより好ましい。上記pH範囲であれば、安定な製剤を調製でき、また抗酸化剤の細胞毒性を効果的に抑制することができる。
【0036】
使用方法
本発明の外用組成物は、使用対象の皮膚の状態、年齢、性別などによって異なるが、例えば以下の方法とすればよい。
即ち、1日数回(例えば、約1〜5回、好ましくは1〜3回)、適量(例えば、約0.05〜5g)を皮膚に塗布すればよい。また、ビタミンA類の1日使用量が、好ましくは約0.1〜200mg、より好ましくは約1〜100mgとなるように組成物を塗布すればよく、ヘパリン類似物質の1日使用量が、好ましくは約0.01〜100mg、より好ましくは約0.3〜75mgとなるように組成物を塗布すればよく、抗酸化剤の1日使用量が、好ましくは約0.01〜30mg、より好ましくは約0.2〜20mgとなるように組成物を塗布すればよい。塗布期間は、例えば約1〜14日間、好ましくは約3〜14日間とすればよい。
本発明の外用組成物は、手指などの肌荒れ;ひじ、ひざ、かかと、くるぶしの角化症;手足のひび、あかぎれ;乾皮症;小児の乾燥性皮膚;しもやけ;きず、やけどの後の皮膚のしこり、つっぱり;打身、ねんざ後の腫れ、筋肉痛、関節痛などの予防、治療、又は改善のために好適に使用できる。従って、健常人の他、これらの皮膚症状を有する人が好適な使用対象となる。
【0037】
その他
本発明は、抗酸化剤を含有する組成物に、ビタミンA類及びヘパリン類似物質を添加する、抗酸化剤の細胞毒性の軽減方法を包含する。抗酸化剤、ビタミンA類、及びヘパリン類似物質の種類、使用量、及び組成物に含まれていてよいその他の成分は、本発明の外用組成物について説明した通りである。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)正常ヒト表皮細胞に対する細胞毒性
10%牛胎児血清を添加したDulbecco's Modified Eagle Medium(D-MEM FBS)で75cm2フラスコに前培養した正常ヒト表皮細胞を96穴プレートに1穴あたり10000個を添加する。37℃、5%CO2条件下で24時間培養後、培地を除去し、D-MEM FBSを90μlずつプレートに添加し、水またはエタノールに溶解した被験物質を10μlずつ添加し、コントロールはD-MEM FBSを10μl添加した。24時間培養後に生存細胞数を計測した。生細胞数の計測にはCell Counting Kit((株)同仁化学研究所)を用いた。
細胞生存率(%)は、以下の式に従い算出した。
細胞生存率(%)=(被験物質の吸光度/コントロールの吸光度)×100
【0039】
(1-1) ジブチルヒドロキシトルエン
抗酸化剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含む被験液中の成分の種類と培養液中の最終濃度を以下の表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
結果を図1に示す。図1中、「ヘパリン」はヘパリン類似物質を示し、「レチノール」はパルミチン酸レチノールを示し、「BHT」はジブチルヒドロキシトルエンを示す。
0.01w/w%濃度のBHTは、正常ヒト表皮細胞の生存率を約30%にまで大きく減少させた。BHTとヘパリン類似物質とを併用しても、正常ヒト表皮細胞の生存率は殆ど回復しなかったが、BHTとヘパリン類似物質とパルミチン酸レチノールとを併用すると、正常ヒト表皮細胞の生存率は大幅に回復し、約100%になった。BHTの細胞毒性の軽減について、ヘパリン類似物質とパルミチン酸レチノールとの相乗作用が認められた。
【0042】
(1-2)ピロ亜硫酸ナトリウム
抗酸化剤としてピロ亜硫酸ナトリウムを含む被験液中の成分の種類と培養液中の最終濃度を以下の表3に示す。
【表3】

結果を図2に示す。図2中、「ヘパリン」はヘパリン類似物質を示し、「レチノール」はパルミチン酸レチノールを示す。
0.3w/w%濃度のピロ亜硫酸ナトリウムは正常ヒト表皮細胞の生存率を約30%にまで減少させた。これに、ヘパリン類似物質とパルミチン酸レチノールを添加すると、正常ヒト表皮細胞の生存率は約60%にまで回復した。
【0043】
(1-3)亜硫酸水素ナトリウム
抗酸化剤として亜硫酸水素ナトリウムを含む被験液中の成分の種類と培養液中の最終濃度を以下の表4に示す。
【表4】

結果を図3に示す。図3中、「ヘパリン」はヘパリン類似物質を示し、「レチノール」はパルミチン酸レチノールを示す。
0.03w/w%濃度の亜硫酸水素ナトリウムは正常ヒト表皮細胞の生存率を減少させたが、これに、ヘパリン類似物質とパルミチン酸レチノールを添加すると、正常ヒト表皮細胞の生存率は回復した。
【0044】
(1-4)ブチルヒドロキシアニソール
抗酸化剤としてブチルヒドロキシアニソールを含む被験液中の成分の種類と培養液中の最終濃度を以下の表5に示す。
【表5】

結果を図4に示す。図4中、「ヘパリン」はヘパリン類似物質を示し、「レチノール」はパルミチン酸レチノールを示し、「BHA」はブチルヒドロキシアニソールを示す。
0.0075w/w%濃度のブチルヒドロキシアニソールは正常ヒト表皮細胞をほぼ完全に死滅させたが(生存率:約0%)、これに、ヘパリン類似物質とパルミチン酸レチノールを添加すると、正常ヒト表皮細胞の生存率は約60%にまで回復した。
【0045】
(1-5)アスコルビン酸2−グルコシド
抗酸化剤としてアスコルビン酸2−グルコシドを含む被験液中の成分の種類と培養液中の最終濃度を以下の表6に示す。
【表6】

結果を図5に示す。図5中、「ヘパリン」はヘパリン類似物質を示し、「レチノール」はパルミチン酸レチノールを示す。
1.2w/w%濃度のアスコルビン酸2−グルコシドは正常ヒト表皮細胞の生存率を約30%にまで減少させたが、これに、ヘパリン類似物質とパルミチン酸レチノールを添加すると、正常ヒト表皮細胞の生存率は約60%にまで回復した。
【0046】
処方例
本発明の外用組成物の処方例を以下の表7、表8に示す。処方例中の数値の単位は「重量%」である。
【0047】
【表7】

【0048】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の外用組成物は、手指などの肌荒れ;ひじ、ひざ、かかと、くるぶしの角化症;手足のひび、あかぎれ;乾皮症;小児の乾燥性皮膚;しもやけ;きず、やけどの後の皮膚のしこり、つっぱり;打身、ねんざ後の腫れ、筋肉痛、関節痛などの予防、治療、又は改善剤として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンA類、ヘパリン類似物質、及び抗酸化剤を含む外用組成物。
【請求項2】
抗酸化剤が、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロ亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、並びにアスコルビン酸、その塩、及びその配糖体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
ビタミンA類が、レチノールエステル、及びレチノイン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
抗酸化剤を含む組成物に、ビタミンA類、及びヘパリン類似物質を添加する、抗酸化剤の細胞毒性の軽減方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−36174(P2012−36174A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153543(P2011−153543)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】