説明

外用製剤

本発明は、ヒト及び動物の皮膚に対する外用製剤に関し、該外用剤は、流体ナノ相体系の態様の組成物a)を含み、該組成物は、成分a1)リットル当たり4g未満の水溶解度を有する少なくとも1種の水難溶性物質、成分a2)界面活性剤構造を有さず、自身で構造を形成せず、水又は油への溶解度がリットル当たり4gと1000gとの間であり、優先的には油−水界面に蓄積しない少なくとも1種の両親媒性物質(NP−MCA)、成分a3)少なくとも1種のアニオン性、カチオン性、両性、及び/又は、非イオン性界面活性剤、成分a4)具体的にはヒドロキシル基を有する少なくとも1種の極性プロトン性溶媒、成分a5)必要に応じて1種又はそれ以上の添加剤、を含み、百分率は、いずれも組成物の全重量に対するものであり、さらに、外用剤は、b)治療上、美容上、又は診断上の有効成分を治療上、美容上、又は診断上有効な量で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト及び動物(獣類)の皮膚に対する外用製剤に関する。詳しくは、本発明は、治療上又は非治療上又は美容上の処置の目的で、有効成分をヒト及び動物の皮膚内へ(皮内的)又は皮膚を経由して(経皮的)移送させることに適した製剤に関する。より詳しくは、本発明は、薬学上、美容上に又は診断上有効な物質を皮膚に吸収、浸透、又は透過させることを改善するための製剤、又は、薬学上、美容上又は診断上有効な物質の皮膚を経由した移送に関する。さらには、本発明は、そのような製剤の使用、該製剤の製造方法、該方法の利用及び該方法のための装置に関し、さらに、全身に及ばない皮膚内の効果、又は全身に及ぶ経皮的な効果を達成するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
動物(獣類)及びヒトの皮膚は、体の内側と外界との間の境界層として機械的な機能を有するだけでなく、具体的には、有害物質の浸透に対抗して障壁を形成すること、及び、該浸透に対抗して体を密封することによって、保護機能をも果たす。
【0003】
治療又は非治療の目的で、経口、注射、又は点滴によってヒト又は動物の体に有効成分を投与することに加えて、仮にそのような物質が局所利用のために皮膚内に移送されるか、又は全身を巡るべく皮膚を経由して移送されると、これらの塗布経路が、有効成分の副作用をほとんどなくした投与方法となり得る。これは、多くの有効成分が不活性化され代謝される消化管経路又は肝臓を経由する経路が回避されるか、又は有効成分が高濃度で過剰になることが避けられるということである。有効成分を塗布するそのような経路による利点は、十分に研究され、そして長い間知られている。
【0004】
有効成分の皮膚における局所使用の場合、及び有効成分の皮膚を経由させた全身投与の場合の両方において、皮膚に入る有効成分又は皮膚を経由して移送される有効成分の吸収又は浸透は、基本的に、上述した天然の障壁によって妨害されるという問題があり、該妨害は、具体的には表皮の最上層である角質層によって引き起こされる。
【0005】
皮膚が親油性であるという特徴により、水溶性の有効成分の大部分は、皮膚に全く吸収されないか、又は、困難ながらわずかに吸収される。
【0006】
薬学上、美容上又は診断上の有効成分を外界から皮膚内へ又は皮膚を経由して効率的に移送させるためには、有効成分が皮膚の中へ又は皮膚を経由して移送されることを容易にし、これを最初の段階で実際に可能にすべく、この保護障壁を乗り越え皮膚の吸収性や浸透性を変える浸透改良剤又は透過改良剤として機能する物質が有効である。
【0007】
先行技術
使用する有効成分を特に経皮的に移送させるための様々な絆創膏が開発されてきた。しかしながら、これら技術の主な欠点は、皮膚刺激を生じさせること、又は、表面接触を増加させようとしてもそのような絆創膏の大きさに実用上の制限及び使用に関連した制限があることである。
【0008】
有効成分が皮膚へ浸透することを改善するために、従来の有効成分と、浸透改良剤又は透過改良剤とを組み合わせることも知られている。
【0009】
これらの目的のため、オイルの使用(特許文献1)、プロテアーゼ類の使用(特許文献2)、脂肪アルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、並びに、水、C1−C4アルコール及び多価アルコールからなる担体の組み合わせ(特許文献3)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、及びオレイン酸の組み合わせ(特許文献4)、モルホリン又はピペラジンの誘導体(特許文献5)、又は、高級n−アルカンカルボン酸(特許文献6)が提案されている。
【0010】
しかしながら、これら提案の全ては、欠点を有し、即ち、コストが高く、専門用語でいう皮膚科学的又はアレルギー学的に問題があるか、又は、特定の有効成分のためにのみ用いられるシステムや材料を使用するという欠点を有する。
【0011】
さらには、局所的に、皮内的又は経皮的に使用される医薬品の処方の効果が、全ての有効成分について予測できず、非常に異なるものであるという事実があり、これは、かなり各種様々の生理学的、物理的、及び化学的な条件や特性に影響を受けるものであり、具体的には例えば、皮膚の状態、浸透改良剤又は透過改良剤として作用する物質を含有する有効成分と組織と間の相互作用、又は、有効成分の化学的な性質に影響を受ける。
【0012】
皮膚内へ又は皮膚を経由させて移送させるべく皮膚に塗布され、全ての有効成分のために広く使用される局所的な製剤は、先行技術において知られていない。
【0013】
これに関連し、斯かる点に関して、参照事項が特許文献7の段落〔0002〕、〔0023〕において記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第93/12744 A1号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/087255号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/011768 A1号パンフレット
【特許文献4】国際公開第87/03490号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願公開第0268222 A1号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0305726 A1号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1323430 A2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
それゆえ、皮膚における浸透を高める物質や製剤、又は、皮膚透過性を高める物質や製剤の需要が依然としてあり、該物質や製剤は、皮膚内へ又は皮膚を経由して有効成分を効率的に移送でき、且つ望ましくない副作用なく移送できるものである。
【0016】
概して、本発明の課題は、従来技術にある欠点を取り除くことにある。
【0017】
従来技術を基にして、本発明の課題は、具体的には、従来技術の欠点を有さず、皮膚を経由して有効成分を経皮的に移送させることが可能な製剤又は組成物を提供することにある。
【0018】
本発明のさらなる課題は、有効成分を皮膚中で完全に透過させることなく、しかも従来技術の欠点を有することなく、皮内的に移送させることを可能にする製剤又は組成物の提供にある。
【0019】
本発明の課題は、製剤の使用、必要であれば医薬品又は化粧品用の物質の製造のための製剤の使用、ヒト又は動物の皮膚内へ又は皮膚を経由させて治療上又は美容上の有効成分を移送させるための製剤の使用にも関する。
【0020】
さらには、本発明の課題は、ヒト又は動物における治療上又は非治療上、即ち美容上の応用体系の製造方法を提供することにある。
【0021】
加えて、本発明の課題は、外用される製剤の使用によって組織に対して美容上又は治療上の効果をもたらすための方法の提供にある。
【0022】
そして本発明のさらなる課題は、ヒト及び動物の皮膚の最外層、具体的には表皮を経由して、医薬的に作用する又は非医薬的、即ち美容的に作用する物質の浸透又は透過を改良又は向上させるための方法を提供することにある。
【0023】
さらには、本発明の課題は、ヒト又は動物の体に対して局所的であり非経皮的に、又は皮内的若しくは経皮的に塗布するための製剤を製造する方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】a)水、b)本発明の組成物の(浸透改良剤又は透過改良剤として作用する)流体ナノ相体系における液体システムにおいてナノ構造を検出するための緑色レーザービーム(Conrad Electronic社製、ドイツ、モデルNo.GLP-101、530-545 nm)の散乱であり、前記組成物は、下記の通り(全組成物に対して重量%で示される)、水相/水(35.70重量%); 油相/セチオールOE(20.03重量%); 界面活性剤/ルテンゾールTO3(11.14重量%)、ツイーン80(6.86重量%); ココイルイセチオン酸ナトリウム(0.42重量%); NP−MCA/トリエチルクエン酸(6.89重量%)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(17.87重量%); 有効成分/テトラカイン塩酸塩(1.09重量%)である。
【図2】図2は、凍結割断電子顕微鏡法の写真によって、本発明の流体ナノ相体系のナノ構造を示しており、組成物は、水相/水(55.28重量%); 油相/オレンジテルペン(11.35重量%); 界面活性剤/ドデシル硫酸ナトリウム(8.80重量%)、C9−C11アルコールエトキシレート(4)(8.82重量%); NP−MCA/ジアセトンアルコール(3.47重量%)、アセト酢酸エチル(12.28重量%)(全組成物に対する重量%で表示)である。比較的小さい球状の構造物は、約20〜50nmの大きさの水相のミセルであり、小さな油相の構造体内に分布している。
【図3】図3は、本発明の流体ナノ相体系における単相及び2相、及びラメラの存在範囲の経路を示す相図(魚図又はクジラ図)であり、界面活性剤の濃度と温度との関数として示されている。a)においては、組成物(水/オレンジテルペンPEG−7グリセリルココエート/Berol 260における水−オレンジテルペンの比が1であり、PEG−7グリセリルココエート/Berol 260界面活性剤混合物においてBerol 260が20重量%である)がマイクロエマルションとして示され、b)においては、さらに4重量%(全組成物に対する重量%で示されている)のNP−MCA(アセト酢酸エチル(EAA))を含む同様の組成物が流体ナノ相体系として示されている。洗浄剤が単相にて存在する範囲の温度範囲、ΔTが示されており、ΔTは、魚図において求められ、Lα領域に接し温度軸に平行な接線の長さによって決定されたものであり、該接線と洗浄剤の単相及び2相の存在範囲を分割する上側及び下側の線との交点によって限定されている。図3にて把握されるように、NP−MCAの存在によって、温度範囲ΔTが広がることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
用語の定義
“製剤”との用語は、別途明確に用いられない限り、治療上又は美容上の使用に好適であり生理学的に適合する、ヒト及び動物の外用のための製剤を包含しており、該製剤は、本明細書に記載された成分を含有する本発明の組成物を含み、必要に応じて一般的な添加剤及び担体を含み、また、治療上、美容上、又は診断上有効な成分を治療上又は美容上又は診断上有効な量で含み、既知の方法によって外部から塗布されるものである。
【0026】
“組成物”との用語は、別途明確に用いられない限り、外部から塗布される有効成分又は有効成分の混合物の皮膚における浸透又は透過の改良又は向上を引き起こす様々な成分の組み合わせを包含するものであり、前記組成物には、1種以上の治療上、美容上、又は診断上の有効な成分又は物質が皮内的塗布又は経皮的塗布のために組み込まれている。
【0027】
“皮膚”によって、別途示されない限り、ヒト及び動物を覆う身体における外側の被覆物が指し示され、該被覆物は、具体的には、外胚葉性の表皮及び中胚葉性の結合組織で構成され、外部からの影響に対して保護するものであり、脊椎動物に特有の真皮を含んでいる。
【0028】
“有効成分”との用語によって、以下の材料、化合物、又は物質が指し示され、これらは、i)ヒト又は動物の身体内又は身体上における生理状態の変化を生み、また、ヒト又は動物の身体内又は身体上における疾患を治したり、和らげたり、防いだり、又は認識したりすることに役立ち、また、薬理学的に有効な成分、医薬的に有効な成分、治療的に又は診断学的に有効な成分と同義であり、薬剤学的に有効な材料、化合物、又は物質として個々に又は組み合わせられて当業者に知られているか、又は、ii)薬剤のような作用を生じ“薬用化粧品”(例えば、ビタミン類、酵素類、精油類、抗酸化物質類)として知られているか、又は、iii)i)及びii)で示した薬剤のような又は医薬のような公知の作用を示さず、化粧料用物質、又は化粧料、又は美容上の有効成分として知られ、また、身体の生理的状態、即ち身体の構造及び機能を変化させたりこれらに影響を及ぼしたりすることなく、具体的には身体の外観を改善する目的(例えば、着色、UVフィルター、美白)のために利用されるものである。
【0029】
“治療処置”によって、不快症状を治したり和らげたりする目的のために生理的状態を変化させるための有効な成分や薬剤をヒト又は動物に処置することが指し示される。従って、“治療上効果的”の使用又は斯かる表現と類似する使用によって、有効成分が関連組織に十分な量存在し所望の治療的な作用を起こすことを意味することになる。
【0030】
“非治療的”処置によって、本発明の概念においては、ヒト又は動物における美容上の物質又は化粧料を利用することが指し示され、これらは、治癒目的を果たさず、例えば、皮膚における視覚的な変化を達成し、具体的には色の変化又は太陽光に対する保護を達成する。それゆえ、“美容上効果的”の使用又は斯かる表現と類似する使用によって、有効成分が関連組織上又は関連組織中に十分な量存在し所望の治療的な作用を起こすことを意味することになる。
【0031】
この点で、“美容上の有効成分”又は同義語として用いられる用語は、主観的及び客観的に確実に皮膚の外観を変化させるべく皮膚への塗布に適した成分を包含しており、前記外観は、例えば、皮膚の色、皮膚の日焼け、皮膚の美白、色素過剰や角質化やにきびや蜂巣炎の低減又は消失における変化において反映される。
【0032】
本明細書において用いられる“浸透改良剤”又は“透過改良剤”との用語は、本発明の基盤となる組成物の機能の性質に関連しており、即ち、該当有効成分の皮膚内への又は皮膚を経由させたより迅速でより効果的な移送の目的のため、有効成分の皮膚への透過の増大又は改善に関連する。この効果は、例えば、適当な装置及び測定器によって、例えばWO02/011768A1に記載されているようにin vitro又はin vivoにて実証することができる。
【0033】
“皮膚内へ”という用語の使用は、実質的に関連する有効成分が完全に透過することなく皮膚に入ることを指し示し、その結果、該当する有効成分は、皮膚内で移送される。即ち、皮膚を経由して経皮的には移送されないが皮膚に大部分残存する。また、ほとんど局所的な作用が塗布した部分において生じるが、全身性でないか又は実質的に全身性でない非治療的な量、即ち該当有効量又は別の有効量しか、血流に届かない。“皮内的”という用語も、これに関連して解釈される。
【0034】
“皮膚を経由して”との用語によって、該当する有効成分が皮膚に入り実質的に完全に皮膚を透過することが指し示され、その結果、該当する有効成分が経皮的に移送され、そして治療上実質的に所望の量が又は大部分が血流に入り、全身性の作用が、血流への有効成分の吸収によって達成される。“経皮的な”との用語は、これに沿って解釈される。
【0035】
“添加剤及び担体”との用語は、本発明の製剤に必須でなく、外部から塗布された有効成分又は有効成分の混合物の本発明における皮膚での浸透又は透過の改良又は向上に 寄与しないか又は実質的に寄与しない物質のために用いられる。
【0036】
“外部から塗布”又は“外用する”との言及は、有効成分を皮膚へ皮内的に、又は皮膚を通って経皮的に移送させるべく、ヒト及び動物の皮膚へ本発明の製剤を塗布することを意味するように製剤と関連して解釈される。
【0037】
別途明確に言及していない限り、%で示された量的なデータ又は百分率データは、いずれの場合でも組成物又は製剤の全重量に対するものである。
【0038】
本発明の概要
本発明は、請求項において規定した製剤を提供することによって上述した課題を解決するものであり、これによって薬学上又は美容上の多量の有効成分は、皮内的に、即ち、皮膚組織を完全に通り抜けることなく皮膚内にて移送されるか、又は、皮膚を通って経皮的に、即ち、皮膚組織を完全に通り抜けて移送される。
【0039】
しかしながら、診断上の有効成分も、後述するように、本発明の製剤によって皮膚内にて又は皮膚を通って有効に移送される。
【0040】
本発明は、主に下記に述べる先行技術に対して、多くの利点を有する。
【0041】
本発明の製剤を製造する方法、又は、本発明の組成物を製造する方法は、技術的に複雑な装置や機器又は故障しやすい装置や機器を必要とせず、単純な撹拌器を用いて行うことができ、例えば、当業者によく知られている「Unguator」技術によって、又は、工業規模における製造において大きな利点をも有する磁気性撹拌器によって行うことができる。
【0042】
特別な物理的処理や前処理(例えば、溶融)、又は、化学的反応(例えば、高分子化や架橋)も必要としない。
【0043】
さらには、本発明が提供する利点は、皮内的な又は経皮的な塗布のために提供される有効成分を事前に変化(例えば、可溶化又は誘導体化)させることなく直接的に組み込ませることにあり、その結果、該当する有効成分(極性、両親媒性、両性イオン、親油性の有効成分)の物理化学的な条件は、皮内的又は経皮的な移送にとって実質的に重要なものではない。
【0044】
さらには、本発明の組成物を保管温度にもよるが長期間保管することができるという利点があり、その結果、継続的に利用する場合、最初の組成物が塗布され、そして時間が経った後に有効成分が塗布されても、組成物と有効成分との間における不都合な相互作用又は配合禁忌を懸念する必要がなく、組成物の有効成分において化学的又は生物的に測定される分解又は劣化の進行を懸念する必要がない。
【0045】
さらには、本発明が提供する利点は、本発明の組成物又は本発明の製剤のナノ相構造が、身体において破壊されるということであり、その結果、ナノ粒子が身体に残存せず蓄積しない。
【0046】
加えて、本発明が有する利点は、本発明の製剤又は組成物の塗布後すぐにナノ相構造が破壊することによって、長く続く意図しない長期間の作用又は副作用の危険性がなく、塗布部分において毒性物質の吸収がないということである。
【0047】
仮に、関連する個々の物質が、例えばアレルギー性といった不適合なものであれば、個々のナノ相成分の群である油相、水相、NP−MCA類、界面活性剤類、及び有効成分を交換することができるという本発明の利点もある。
【0048】
驚くべきことに見い出されたことは、成分a1)リットル当たり4g未満の水溶解度を有する少なくとも1種の難水溶性物質、成分a2)界面活性剤構造を有さずそれ自体で構造を形成せず水又は油における溶解度がリットル当たり4g及び1000gの間であり優先的には油−水界面において蓄積しない少なくとも1種の両親媒性物質(NP−MCA)、成分a3)少なくとも1種のアニオン性、カチオン性、両性、非イオン性の界面活性剤、成分a4)具体的にはヒドロキシル基を有する少なくとも1種のプロトン性極性溶媒、成分a5)必要に応じて1種又はそれ以上の添加剤、を含み、流体ナノ相体系の態様で存在する組成物a)は、治療上、美容上、又は診断上の有効成分が皮内的及び経皮的に移送されることに特に適しているということである。
【0049】
かなり意外なことに、また、従来知られていなかったように、前記組成物が有効成分の浸透又は透過を増大又は改善し皮内的に皮膚内で又は経皮的に皮膚を経由して移送されるということが見い出された。この点で、本発明の流体ナノ相体系は、有効成分が皮膚内にて又は皮膚を経由して移送されるための浸透改良剤又は透過改良剤として作用する。
【0050】
このように、本発明の目的物は、ヒト及び動物における外用製剤であり、該外用製剤は、a)及びB)を組み合わせて含み、
a)流体ナノ相体系の態様である組成物、該組成物は、
a1)0.1〜90重量%の量であり、リットル当たり4g未満の水溶解度を有する少なくとも1種の難水溶性物質、
a2)0.1〜80重量%の量であり、界面活性剤構造を有さずそれ自体で構造を形成せず水又は油における溶解度がリットル当たり4g及び1000gの間であり優先的には油−水界面に蓄積しない少なくとも1種の両親媒性物質(NP−MCA)、
a3)0.1〜45重量%の量であり、アニオン性、カチオン性、両性、及び/又は、非イオン性の少なくとも1種の界面活性剤、
a4)1.0〜90重量%の量であり、特にヒドロキシル基を有する少なくとも1種のプロトン性極性溶媒、
a5)必要に応じて0.01〜10重量%の量であり、1種又はそれ以上の添加剤、を含み、ただし、示された百分率はいずれの場合でも全組成物重量に対するものであり、また、
B)治療上、美容上、又は診断上有効な量において少なくとも1種の治療上、美容上、又は診断上の有効成分、を含むものである。
【0051】
この種の組成物は、治療上、美容上、又は診断上の有効成分の皮内的及び経皮的な投与のために特に適している。
【0052】
本発明のさらなる内容は、下記の発明の詳細な記述において示されている。
【0053】
本発明の組成物(流体ナノ相体系)
本発明の課題は、ヒト又は動物において外用するための製剤の提供によって解決され、該製剤は、必須成分として組成物a)を流体ナノ相体系の態様で含み、組成物a)は、ナノ構造液体とも称され、下記の成分を含む。
a1)0.1〜90重量%の量であり、リットル当たり4g未満の水溶解度を有する少なくとも1種の難水溶性物質、
a2)0.1〜80重量%の量であり、界面活性剤構造を有さずそれ自体で構造を形成せず水又は油における溶解度がリットル当たり4g及び1000gの間であり優先的には油−水界面に蓄積しない少なくとも1種の両親媒性物質(NP−MCA)、
a3)0.1〜45重量%の量であり、アニオン性、カチオン性、両性、及び/又は、非イオン性の少なくとも1種の界面活性剤、
a4)1.0〜90重量%の量であり、特にヒドロキシル基を有する少なくとも1種のプロトン性極性溶媒、
a5)必要に応じて、0.01〜10重量%の量であり、1種又はそれ以上の添加剤、
ただし、示された百分率はいずれの場合でも全組成物重量に対するものである。
【0054】
本発明の流体ナノ相体系は、外部から塗布された有効成分や有効成分の混合物が皮膚内にて又は皮膚を経由して皮膚に浸透又は透過することを有利に促進又は補助し、その結果、該当する有効成分がより効果的となる。
【0055】
好ましい実施形態においては、本発明の流体ナノ相体系は、例えば分子における親水性−親油性の釣り合いを有する界面活性補助剤のような、界面活性剤構造を有する少なくとも1種のさらなる両親媒性物質を含み得る。
【0056】
水、水に難溶性の物質(油)、界面活性剤、及び、必要に応じて界面活性補助剤を含み、多成分体系として自然発生的に形成され出現する多成分体系は、マイクロエマルションとして知られている。マイクロエマルションは、熱力学的に安定であり、少なくとも水又は水様液体(例えばグリコール)、油、及び界面活性剤で構成されたナノ構造流体である。マイクロエマルションは、界面活性補助剤を含むこともあり、(イオン性界面活性剤が用いられる場合は)必要に応じて塩をも含む。大抵のマイクロエマルション構造の大きさは、多くの場合、10及び200nmの間にある。動力学的に安定なエマルション又はナノエマルションと異なり、熱力学的に安定なマイクロエマルションは、粒子の合体によってクリーム状になりにくい。マイクロエマルションにおいては、一時的に形成された比較的大きい構造物が、その後しばしばより小さなミセルへ再び分解される。その結果、徹底的な混合をしなくとも、熱力学的な安定性によって自ずとマイクロエマルションが形成される。エマルションと異なり、マイクロエマルションにおいては、球状のミセルが生じるだけでなく、細長い形状のミセル(蠕虫状のミセル)や網状様構造の様々な形態も生じる。最も好ましい事例では、マイクロエマルションにおいて両連続構造がある。ここで、水相及び油相は、界面活性剤と必要に応じて界面活性補助剤とを含むスポンジ様界面を介して広がっている。
【0057】
いわゆるNP−MCA(ナノ相形成性混合鎖構造両親媒性物質)であり、親水−疎水構造と異なるか界面活性剤又は界面活性補助剤と一致しない少なくとも1種の本発明の両親媒性物質を添加することによって、マイクロエマルションにおいて単相のコロイド分散領域を広げることが有利に可能となり、図1〜3に示されているように、また、下記により詳細に記載されているように、流体ナノ相体系の特性を改良させることが可能となる。
【0058】
驚くことに、NP−MCA類を添加することにより、熱力学的に安定であり単相のナノ構造体系の存在範囲が広がるということがさらに確認された。このことは、なおさら驚くべきことであった。専門家らは、以前には、それぞれ相対する相において溶解性の点で親油性部分及び親水性部分が異なるほど、マイクロエマルションがより容易に形成されるとの仮説をしていたからである。
【0059】
それゆえ、いわゆるマイクロエマルションを調製するために、当業者は、主に、互いにほとんど溶解しない油及び親水性成分を用いていた。それゆえ、構造形成せず混合分子鎖構造を有する本発明の両親媒性物質(NP−MCA類)と同様に、界面活性を有さず油相及び親水性相の両方にとどまる物質は、従来技術においては、マイクロエマルションを調製するためには用いられなかった。
【0060】
この点において、本発明は、専門家らの間に根深く存在する先入観を打開をもする。
【0061】
さらに驚くべきことに、油/水/界面活性剤の混合物にNP−MCA類を添加することにより、形成された一般的なマイクロエマルションと比較して、ナノ相流体の単相範囲が明確に広がり、ラメラ相(Lα)は、魚図又は“クジラ図”と称される相図においてかなり狭くなり、結果として、油及び水の領域が相中に不都合にも存在している高粘性のラメラ相の出現は、妨げられるか、又は、少なくとも低減される(図3を参照)。
【0062】
さらに驚くべきことに、例えばアセト酢酸エチルといった本発明のNP−MCAの添加によって、温度窓を低減することとなり、そして従来のマイクロエマルション(図3参照)と比較してより広い有効な温度領域を得ることができる。
【0063】
本発明の範囲において、これらの体系は、ナノ相体系(略してナノ相流体)と称される。ナノ相流体は、具体的には、水又は水様物質、油、油−水界面に吸着する構造形成性の少なくとも1種の両親媒性物質、及び、―マイクロエマルションを広げるべく―界面活性剤構造を有さない非構造形成性の少なくとも1種の両親媒性物質(NP−MCA)を含む。構造形成性の両親媒性物質は、界面活性剤、界面活性補助剤、及び界面活性剤様のオリゴマー又はポリマーからなる群より選択される。
【0064】
NP−MCAは、流体ナノ相における熱力学的に安定な存在領域を広げるために、それゆえ、マイクロエマルションのさらなる限界基準のために重要である。NP−MCA類を添加することにより、有利に単相領域の温度窓を確実に広げることができ、場合によっては単相領域の温度窓を低減することができる。
【0065】
さらに、NP−MCA類は、高粘度ラメラ相の出現を防止又は低減できるという利点を有する。加えて、NP−MCA類は、必要とされる界面活性剤濃度を低減させることができる。
【0066】
また、NP−MCA類は、治療上又は美容上の有効成分を移送させるためのナノ相流体における特性及び用途の可能性をかなり広げることができるという利点を有する。
【0067】
ナノ相形成性の混合分子鎖構造の両親媒性物質(MP−MCA)中の基は、混合分子鎖構造の両親媒性部分を含み、該部分は、空間的に互いに近接する親水性及び疎水性の分子領域を有するが界面活性剤様の構造を有さないように混在している。このように、これらは、2つの領域が方向性をもって分離されていること(頭尾構造)により作用を発揮する界面活性剤や界面活性補助剤とは異なる。その結果、NP−MCA類は、自然に超格子を形成することができず、優先的には油−水界面に蓄積しない。それゆえ、油相又は水性相の他に、ナノ相流体を形成するためにさらに他の界面活性剤が必要である。しかしながら、NP−MCA類は、水性相又は油相において溶解度がかなり大きく、後者においては平衡に達するまで分散する。水又は油におけるNP−MCAの溶解度は、場合によっては塩の態様においても、通常、リットル当たり4グラムと1000グラムとの間である。
【0068】
本発明のNP−MCAは、方向性をもった親水性−疎水性の界面活性剤構造を有さない両親媒性物質を含有し、構造形成性ではない。即ち、それ自体がミセルを形成するものではない。また、水又は油における溶解度は、リットル当たり4g及び1000gの間であり、優先的には油−水界面において蓄積しない。
【0069】
マイクロエマルションにおいては、温度及び界面活性剤濃度の関数としての相図中に、三角形が広がっており、三角形は、Lα領域が始まるところのY軸に平行な接線と、単相及び2相の間の境界領域との交点、並びに、X点の間に広がっている。界面活性剤濃度−温度相図(魚図又はクジラ図)を作図するための測定方法は、従来技術により当業者に知られている。NP−MCAは、予想外にも、また有利に、単相面積の存在領域を広げることができ、また、この三角形の表面積を大きくすることができ、また、これによって特徴付けられる。油−水−界面活性剤体系に4%加えられた場合に、界面活性剤体系を変化させることなく、この三角形の表面積を少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも20%広げる結果となる全ての両親媒性物質が、好ましくはNP−MCA類として用いられる。具体的な実施形態においては、三角形の表面積は、界面活性剤体系を変化させることなく、5%〜2000%の範囲で、好ましくは10%〜1000%、特に好ましくは15%〜500%の範囲で広げられる。
【0070】
特に好ましくは、下記で特徴付けられるNP−MCA類であり、該NP−MCA類が、油成分a1)、界面活性剤a3)、及び、プロトン性溶媒a4)、及び、必要に応じて添加剤a5)を含む油―水−界面活性剤体系に、系の全重量に対して4重量%添加されることにより、下記の端点によって決められ相図に含まれる三角形の表面積を少なくとも5%広げる結果となる。
i)X点、
ii)単相領域と2相領域との間における境界領域にあり、温度Y軸に平行でLα区域に接する接線との上側の交点、及び、
iii)単相領域と2相領域との間における境界領域にあり、温度Y軸に平行でLα区域に接する接線との下側の交点。
【0071】
そのような三角形の位置は、図3に示されている。
【0072】
このような相図を作図する方法は、例えば、- M. Kahlweit, R. Strey, D. Haase, H. Kunieda, T. Schmeling, B. Faulhaber, M. Borkovec, H. F. Eicke, G. Busse, F. Eggers, T. Funck, H. Richmann, L. Magid, O. Soderman, P. Stilbs, J. Winkler, A. Dittrich, and W. Jahn: "How to Study Microemulsions", J. Colloid Interf. Sci., 118 (2), 436 (1987) - Microemulsions, T. Sottmann and R. Strey in Fundamentals of Interface and Colloid Science, Volume V, edited by J. Lyklema, Academic Press (2005)に記載されている。
【0073】
相図(クジラ図)を作るために、非界面活性剤成分と界面活性剤とが一定割合である試験サンプルが調製され、0%から所望の界面活性剤割合まで(必要であれば100%まで)段階的に界面活性剤割合が増やされる。段階的に増加させることは、要求される測定精度に応じたものであり、大抵の場合2%の刻み幅で十分である。これらの試験サンプルは、相平衡に達するまで−30℃から+100℃の温度において恒温の媒体(好ましくは水、可能であれば凝固点降下添加剤を含む)中に置かれ、その後、相状態は、光分散によって視覚的に評価される。温度の刻み幅は、所望の測定精度によって決められ、1℃の刻み幅が多くの場合技術的応用のために十分である。相の境界は、ある相状態から次の相状態への転移を基にして求められ、誤差は、温度測定の刻み幅によって予めわかる。このように得られた測定点は、相図において示されそしてつながれ、温度が界面活性剤割合に対して示される。多くの場合、試験サンプルの測定範囲における相の状態を十分に見つけ出すことができ、分かれた隔たりによって相の境界を十分に決定することができる。ナノ構造流体組成物における相の拡大のための数値は、図3の相図において三角形を示すことにより測定される。そのような方法においては、平均温度より高い相状態を特徴付ける曲線(2の上の線)へX点から引くことにより第1の直線a)を形成するようにし、Lαにおける絞り角のところに対して正接方向に接するように、また、平均温度より高い曲線によって特徴付けられる曲線(2の上の線)に対して第1の直線a)が正接方向にて接触した点の部分にて交差するように、第2の直線b)を形成するようにし、2つの直線a)及びb)を分断するように、平均温度より低い相状態によって特徴付けられる曲線(2の下の線)上に第3の直線c)を引くようにする。数値A1は、図3における3つの直線の合計長さから求められ、これは、従来のマイクロエマルションに相当する。本発明(ナノ相流体)の相図における相似の全直線長さにより、数値A2が求められる。本発明によって有利に広げられた相の数値は、A2/A1比によって、即ちA2をA1で除することによって確認される。本発明のナノ相流体の組成物にとっては、斯かる数値が1.0以上であり、好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.15以上であり、特に好ましくは1.2以上であり、最も好ましくは1.22以上である。さらに、又は三角形の面積の拡大の代わりに、三角形の大きさが影響される。好ましくはNP−MCAが特徴付けられるのは、本発明の組成物a)の全重量に対して4重量%が、成分a1)、a3)、及びa4)を含む水−油界面活性剤体系に加えられることにより、本発明の組成物a)の単相存在範囲の温度範囲ΔTが少なくとも5%広がる結果となる点である。これは、相図において温度及び界面活性剤濃度の関数として確認され、接線の長さによって決定され、該接線は、Lα領域にて温度軸に平行であり、本発明の組成物a)における単相及び2相の存在領域の間にある上側及び下側の各線を分割する接線の交点によって限定されている(図3参照)。NP−MCA類によって、温度範囲ΔTが10%〜1000%拡大することが好ましく、20%〜500%拡大することがより好ましい。温度範囲ΔTは、三角形の表面積及び/又は三角形の大きさにおける拡大に影響される。
【0074】
NP−MCA類によって、具体的には、炭素、水素、及び少なくとも1種の以下の原子(ヘテロ原子)で構成された分子が指し示される。ケイ素、酸素、窒素、硫黄、リン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素。極性の炭素原子が好ましくはヘテロ原子の隣に位置する。極性の炭素原子は、アルキル鎖にも非極性分子鎖にも含まれていない。
【0075】
好ましくは、NP−MCA類は、本発明の範囲内において、アルコール類、ケトン類、エステル類、環当たり5〜7の原子を有する複素環化合物、エーテル類、アミド類、アミン類、N−アシル化アミノ酸、及び、界面活性剤様構造を有さず方向性のある頭尾構造を有さないアルデヒド類からなる群より選択されたものを含む。具体的には、界面活性剤様構造を有さないアルコール類(モノアルコール類、ジアルコール類、トリアルコール類等)が挙げられる。
【0076】
それゆえ、以下のように分子中において親水性領域と疎水性領域とが混在しているNP−MCA分子が好ましい。
i)第1級又は第2級炭素原子の状態にあり非極性の末端でない分子鎖が、4又はそれ以上の炭素原子を有する。分子鎖は、長くても分子量の20%を超えることはない。
ii)分子の途中にあるか又は第3級炭素原子の状態にある非極性の分子鎖が、7つの炭素原子より長いものでなく(言い換えると例えば1,9−ノナンジオールより大きくなく)分子量の20%を超えるものである。分子の極性部分が親水性領域に存在したうえで、より長い鎖が非極性領域に存在していてもよい。
iii)単環式のアルコール類において、i)及びii)の点の後に鎖長を決定すべく環中の最も短い経路が鎖長として選択される。
iv)多環式のアルコール類において、i)及びii)の点の後に鎖長を決定すべく完全に非極性の環のみが考慮され、炭素原子の最も小さい数が鎖長として数えられる。
【0077】
極性が同様であることから、アルコール類に関して言及したことが同様にアミン類やアルコールアミン類にも適用される。同じことが、フッ化物類、塩化物類、及び、そのような類で構成された分子類に同様に適用される。
【0078】
そのように非構造形成性であり、アルコール類、アミン類及びアルコールアミン類の官能基で構成された混合鎖構造の両親媒性物質も、本発明の目的物である。
【0079】
具体的には、ケトン類、酸類、並びにそれらの弱塩基塩類及びアミド類も、また、有機硫酸塩、有機リン酸塩も、本発明の範囲において好ましいNP−MCAである。アルコール類と比べてわずかにこれらの極性が高いことから、鎖長を1つ延ばすことが末端の鎖及び分子内の鎖に適用される。それゆえ、非構造形成性であり、ケトン類、酸類、並びにそれらの弱塩基塩類及びアミド類も、また、有機硫酸塩、有機リン酸塩の官能基で構成されたそのような混合鎖構造の両親媒性物質も、本発明の目的物である。
【0080】
さらに、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールの硫化物類やリン化物類、及びシリコーン類/シロキサン類は、本発明の範囲内においてさらに好ましいNP−MCA類として挙げられる。より極性が低いことから、アルコール類と比べて鎖長が1短いことが適用される。結果として、非構造形成性であり、アルキル、アルケニル、アルキニル残基を有するそのような混合鎖構造の両親媒性物質、又は、アリールの硫化物類、リン化物類、及びシリコーン類/シロキサン類の群からのそのような混合鎖構造の両親媒性物質も、本発明の目的物である。
【0081】
さらに、特に、上述した官能基のいくつかを含むNP−MCA類が本発明において好ましく、該NP−MCAは、分子中に異なる官能基をも含み得る。官能基の大部分がケトン類、酸類、並びにそれらの弱塩基塩類及びアミド類、又は、有機硫酸塩、有機リン酸塩でないのであれば、アルコール類における鎖長は、一般的な界面活性剤様の分子と区別するための鎖長となる。
【0082】
アルコール類、アミン類、アルコールアミン類、ケトン類、酸類及びその弱塩基塩類、アミド類、有機硫酸塩類、有機リン酸塩類、アルキル残基、アルケニル残基、アルキニル残基、アリール硫化物類、アリールリン化物類、並びに、シリコーン類/シロキサン類からなる群より選択された両親媒性物質(NP−MCA)を含む製剤は、本発明における好ましい目的物である。
【0083】
特に好ましいNP−MCA類は、式(I)のジオールから選択される。
R1R2COH -(CH2n - COHR1R2 ・・・式(I)
nは、0,1,2,3又は4であり、
1及びR2は、いずれの場合でも互いに独立して、水素、分岐していない又は分岐したC1〜C3アルキルである。
【0084】
具体的には、斯かる群からの特に好ましいNP−MCA類は、下記のジオール類から選択される。1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−(n−ブチル)−2−エチル−1,3−プロパンジオール、又は、1,2−ジオール類。
【0085】
上記のジオール類は、本発明の製剤を提供するために特に適している。
【0086】
特に好ましいNP−MCA類は、式(II)のアセトアセテート、又は、式(III)のアセトアセテートからも選択される。
C(R33 - CO - CH2 - CO - O - R4 ・・・式(II)
ただし、R3は、いずれの場合も互いに独立して水素、又は、C1〜C2のアルキルであり、R4は、分岐した又は分岐していないC1〜C4アルキルである。
CH3- CO - CH2 - CO - O - R5 ・・・式(III)
ただし、R5は、C1〜C4アルキルである。
【0087】
具体的には、斯かる群からの特に好ましいNP−MCA類は、下記のアセトアセテート類から選択される。アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸n−プロピル、又はアセト酢酸tert−ブチル。
【0088】
上記のアセトアセテート類は、本発明の製剤を提供するために特に適している。
【0089】
さらには、好ましいNP−MCA類は、式(IV)のジオン類から選択される。
CH3 - (CH2)p -CO - (CH2)q - CO - (CH2)r - CH3 ・・・式(IV)
ただし、p,q,rは、いずれの場合でも互いに独立して、0,1又は2であり、p,q,rの合計が2である場合には式(IV)の化合物が環状(シクロヘキサンジオン)であるという条件にある。
【0090】
具体的には、斯かる群からの特に好ましいNP−MCA類は、下記のジオン類から選択される。2,3−ブタンジオン(ジアセチル)、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトン)、3,4−ヘキサンジオン、2,5−ヘキサンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、1,4−シクロヘキサンジオン、又は、1,3−シクロヘキサンジオン。
【0091】
上記のジオン類は、本発明の製剤を提供するために特に適している。
【0092】
同様に、好ましいNP−MCA類は、式(V)のエステル類から選択される。
R6 - CO - O - R7 ・・・式(V)
ただし、R6は、R7への環状結合、CH3、又はCOCH3であり、
7は、R6への(CH22-O-環状結合、(CH22-O-(CH23-CH3、CH2-CH3、又は、R6へのCH2-CH(CH3)-O-環状結合である。
【0093】
具体的には、斯かる群からの特に好ましいNP−MCA類は、下記のエステル類から選択される。(1−メトキシ−2−プロピル)−アセテート、(2−ブトキシエチル)−アセテート、エチレンカーボネート、ピルビン酸エチル(2−オキソプロパン酸エチルエステル)、又は、プロピレンカーボネート。
【0094】
上記のエステル類は、本発明の製剤を提供するために特に適している。
【0095】
さらに、好ましいNP−MCA類は、式(VI)のアミド類から選択される。
R8- HN - CO - C = C - CO - O - R9 ・・・式(VI)
ただし、R8は、水素、分岐した若しくは分岐していないC1〜C4アルキル、又は、分岐した若しくは分岐していない直鎖状若しくは環状のC1〜C6アルキルであり、C1〜C6アルキルは、OH, NH2, COOH, CO, SO3H,OP(OH)2から選択された1種又はそれ以上の基によって置換されており、R9は、水素、又は、分岐した若しくは分岐していないC1〜C4アルキルである。
【0096】
具体的には、斯かる群からの特に好ましいNP−MCA類は、下記のマレイン酸アミド類、そのメチル、エチル、プロピル、及びブチルエステル類から選択される。N−メチルマレアミド、N−エチルマレアミド、N−(n−プロピル)マレアミド、N−(i−プロピル)マレアミド、N−(n−ブチル)マレアミド、N−(i−ブチル)マレアミド、N−(tert−ブチル)マレアミド、また、同様のフマル酸アミド類、そのメチル、エチル、プロピル、及びブチルエステル類。
【0097】
さらに、好ましいNP−MCA類は、2,2−ジメトキシプロパン、ピルビンアルデヒド−1,1−ジメチルアセタール、ジアセトンアルコール(2−メチル−2−ペンタノール−4−オン)、2−ブタノール、2−アセチル−γ−ブチロラクトン、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、γ−ブチロラクトン、ニコチン酸アミド、アスコルビン酸、N−アセチルアミノ酸、特に、N−アセチルグリシン、アラニン、システイン、バリン、又は、アルギニン、リン酸トリエチル、酢酸n−ブチル、ジメチルスルホキシド、又は、2,2,2−トリフルオロエタノールから選択される。
【0098】
本発明においては、下記のNP−MCA類が特に好ましく、該NP−MCA類は、
アセト酢酸エチル;アセト酢酸i−プロピル;アセト酢酸メチル;イソブチリル酢酸メチル(4−メチル−3−オキソペンタン酸メチル);アセト酢酸n−ブチル;アセト酢酸n−プロピル;アセト酢酸tertブチル;アセト酢酸アリール;マレイン酸アミド(マレアミド酸、マレアミド);下記のマレアミド並びにそのメチル、エチル、プロピル、及びブチルエステル;N−メチルマレアミド、N−エチルマレアミド、N−(n−プロピル)マレアミド、N−(i−プロピル)マレアミド、N−(n−ブチル)マレアミド、N−(i−ブチルマレアミド)、N−(tert−ブチルマレアミド);また、同様のフマル酸アミド類、そのメチル、エチル、プロピル、及びブチルエステル類;2,2−ジメトキシプロパン;ジアセトンアルコール(2−メチル−2−ペンタノール−4−オン);1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2−エチル−1,3−ヘキサンジオール;2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−(n−ブチル)−2−エチル−1,3−プロパンジオール;1,3−プロパンジオール;2,3−ブタンジオール;2,4−ペンタンジオール;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール;(1−メトキシ−2−プロピル)アセテート、(2−ブトキシエチル)アセテート;1,3−シクロヘキサンジオン;1,4−シクロヘキサンジオン;2,3−ヘキサンジオン;2,3−ペンタンジオン;2,5−ヘキサンジオン;3,4−ヘキサンジオン;アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン、ACAC);ジアセチル(2,3−ブタンジオン);エチレンカーボネート;プロピレンカーボネート;2−アセチル−γ−ブチロラクトン;N−アセチルシステインとメチル、エチル、プロピル、ブチルエステル;N−アセチルグルタミン酸とメチル、エチル、プロピル、ブチルエステル;N−アセチルグリシンとメチル、エチル、プロピル、ブチルエステル;N−アセチルチロシンとメチル、エチル、プロピル、ブチルエステル;N−アセチルバリンとメチル、エチル、プロピル、ブチルエステル;ピルビン酸エチル(2−オキソプロパン酸エチルエステル);ピルビンアルデヒドジメチルアセタール;3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール;3−オキソグルタル酸ジエチル;ジエチレングリコールジエチルエーテル;ジイソプロピルエーテル;エチレングリコールジエチルエーテル;カルバミン酸メチル;tert-ブチルメチルエーテル;酢酸ビニル;キニーネ(塩酸塩としての遊離塩基);アジピン酸ジアミド;コハク酸イミド;N−メチルカプロラクタム;酢酸ジエチルアミド;尿素;チオアセトアミド;1,2−フェニレンジアミン;1,3−フェニレンジアミン;1,4−ジアミノブタン;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン;1,4−フェニレンジアミン;1,6−ジアミノヘキサン;2−(4−メトキシフェニル)−エチルアミン;2−アミノベンズアミド;2−アミノフェノール;ジプロピルアミン;トリエチルアミン;チラミン;アントラニル酸;DL−2−アミノ酪酸;セリン;スレオニン;チロシン;アジピン酸;メチレンコハク酸;トランス−プロペン−1,2,3−トリカルボン酸;シクロヘキサノール;シクロヘキサノン;ジメドン(5,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン);N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン;トランス−1,2−シクロヘキサンジオール;(4−ヒドロキシフェニル)酢酸;1,3,5−トリヒドロキシベンゼン;2−エチルピリジン;2−メトキシ安息香酸;2−メトキシフェノール;2−メチルヒドロキノン;2−メチルレゾルシノール;2,4−ジヒドロキシ安息香酸;2,6−ジヒドロキシ安息香酸;3−アミノフェノール;3,4−ジヒドロキシ安息香酸;3,5−ジヒドロキシ安息香酸;4−アミノ−3−ニトロフェノール;4−アミノフェノール;4−ヒドロキシベンズアルデヒド;4−ヒドロキシ安息香酸;5−メチルレゾルシノール;アセチルサリチル酸;ブチルヒドロキシトルエン;N−フェニル−2,2’−イミノジエタノール;N−フェニル尿素;メチル−、エチル−、プロピル−4−ヒドロキシ安息香酸エステル;スルファニル酸;バニリン;酢酸(2−エトキシエチル);(2−エトキシエチル)メタクリレート;(2−ヒドロキシプロピル)メタクリレート;酢酸[2−(2−ブトキシエトキシ)−エチル];二酢酸1,2−プロピレングリコール;マロン酸ジエチル;アセチルコハク酸ジメチル;炭酸ジメチル;フマル酸ジメチル;グルタル酸ジメチル;マロン酸ジメチル;酢酸エチル;エチレングリコールジアセタート;ギ酸エチル;乳酸エチル;トリアセチルグリセロール;酢酸イソプロペニル;ギ酸メチル;乳酸メチル;プロピオン酸メチル;ギ酸プロピル;プロピオン酸プロピル;オルト炭酸テトラエチル;クエン酸トリエチル;1−ベンジルピペリジン−4−オン;1−シクロヘキシル−2−ピロリドン;1H−ベンゾトリアゾール;2−アミノチアゾール;2−エトキシ−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン;2−エチルピペリジン;2−メルカプト−1−メチルイミダゾール;2−メチルテトラヒドロフラン;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール;アスコルビン酸;カフェイン;テオブロミン;テオフィリン及びこれに類似したエチルキサンチン;クマリン−3−カルボン酸;エクトイン;ヒドロキシプロリン;イミダゾール;インドール;インドール−3−酢酸及びその塩;メラミン(2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン);ニコチン酸メチル;ニコチン酸エチル;ニコチンアミド;ニコチン酸;ピリジン−2−カルボン酸;ピリジン−2,3−カルボン酸;ピリジン−4−カルボン酸;トロピン(3−トロパノール);トリプタミン;ニトロエタン;ニトロメタン;2−メチル−1−ブタノール;イソブタノール(2−メチル−1−プロパノール);tert−アミルアルコール;1,3−シクロペンタンジオン;2,6−ジヒドロキシアセトフェノン;3−メチル−3−ペンテン−2−オン;アセトフェノン;ジエチルケトン;ジヒドロキシケトン;エチルメチルケトン;イソブチルメチルケトン(メチルイソブチルケトン、MIBK);イソプロピルメチルケトン;メチルプロピルケトン;プロピオフェノン;2−ブタンオキシム;スルファニルアミド;1,2,6−ヘキサントリオール;2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−エタンスルホン酸;2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AEPD、アンメジオール)の誘導体を含む単独物、又は混合物、
からなる群より選択される。
【0099】
NP−MCA類は、好ましくは、組成物の全重量に対して1〜80重量%、より好ましくは2〜25重量%、さらに好ましくは10〜24重量%の度合いで本発明の組成物中に含まれている。
【0100】
本発明の目的のために、水中においてリットル当たり4g未満の溶解度を有する水難溶性物質の少なくとも1種によって油類が指し示されている。油という用語は、水又は水様の液体に均一に溶解せず分離相を形成する疎水性の物質の全てを示す。ある種の油類は、水に多量に溶解することから、リットル当たり4g未満の水溶解度という定義がここではさらに加えられている。好ましくは、水難溶性の物質は、リットル当たり2g未満の水溶解度を有するものである。これらとしては、例えば、アルカン類(ベンジン類)及びシクロアルカン類(好ましくはシクロヘキサン)が挙げられる。トルエン、キシレン、又は他のアルキルベンゼンなどの芳香族化合物や、ナルタレン類も考慮に入れられる。
【0101】
脂肪油及び脂肪酸のアルキルエステルといった長鎖のアルカン酸エステル又は脂肪アルコールエーテルが好ましい。本発明においては、酢酸ベンジルも、用いられる水難溶性物質に属する。しかしながら、テルペン類、具体的にはシクロヘキサン構造を有する単環式モノテルペン類も用いられ得る。レモン及び/又はオレンジなどの柑橘系植物由来のテルペン類、又はそれに含まれるリモネン類が特に好ましい。水難溶性物質a1)は、本発明の組成物a)の全重量に対して、好ましくは0.1〜90重量%、より好ましくは0.5〜75重量%、さらに好ましくは1.0〜50重量%、特に好ましくは1.5〜30重量%の度合いで、本発明の組成物a)中に含まれている。
【0102】
さらに、例えば、高級アルコールが、界面活性剤構造を有する両親媒性物質として用いられ得る。特に好ましくは、例えば、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、及びドデカノールのn−及びi−異性体のように親水性−親油性の分子比率を有する上記の全ての界面活性助剤である。
【0103】
例えばシクロヘキサノールなどのシクロアルカノール類、又は、好ましくは例えばフェニルメタノール(ベンジルアルコール)、2−フェニルエタノール、及び3−フェニル−1−プロパノールなどのフェニルアルコール類も望ましい。ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸などの短鎖脂肪酸並びにそのアルカリ塩又はアンモニウム塩も好適に用いられる。それらのエタノールアミン塩が特に好ましい。
【0104】
さらに、界面活性剤構造を有する両親媒性物質は、本発明の組成物a)の全重量に対して好ましくは2〜45重量%、より好ましくは2〜40重量%の度合いで本発明の組成物に含まれている。
【0105】
さらに、界面活性剤構造を有する両親媒性物質は、好ましくはリットル当たり2g〜128gの水溶解度を有し、C4〜C12アルコール類、シクロアルカノール類、フェニルアルコール類、短鎖脂肪酸又はそのアルカリ塩若しくはアンモニウム塩からなる群より選択される。
【0106】
さらに本発明の組成物a)は、アニオン性、カチオン性、両性、及び/又は、非イオン性の界面活性剤を成分a3)として含む。好適な界面活性剤のいくつかは、下記の一覧に挙げられている。
【0107】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、長鎖脂肪酸のアルカリ若しくはアンモニウム塩、アルカリ(ベンゼン)スルホン酸塩、炭化水素スルホン酸塩、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸エステル塩、とりわけドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩が用いられ、また、例えば腐食防止などの特別な用途のために、リン酸アルキル(例えば、製品名「Phospholan PE 65」Akzo Nobel社製)もしばしば用いられる。
【0108】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、製品名「Berol タイプ」(Akzo Nobel社製)や製品名「Hoesch T タイプ」(Julius Hoesch社製)のようなポリアルキレンオキシド変性脂肪アルコール、また、類似したオクチルフェノール類(Triton タイプ)若しくはノニルフェノール類も用いられる。液体の噴霧特性を大きく改善するための物質、又は、界面張力を大幅に低下させるための物質としてのヘプタメチルトリシロキサン(例えば、製品名「Silwet タイプ」GE Silicones社製)によって、特定領域で使用することが可能になる。
【0109】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油ビス(2−ヒドロキシエチル−)メチルアンモニウム塩酸塩、ポリオキシエチレン変性タルクメチルアンモニウム塩酸塩が用いられ得る。さらには、適当な両性界面活性剤の使用が可能であり、ベタイン類(コカミドプロピルベタイン)又はスルホベタイン類又はスルタイン類(アミドプロピルヒドロキシスルタイン類)は、多数の既知例から挙げられる。さらに、pH領域について話題に挙げるとすれば、ヤシ油ジメチルアミンオキシド(製品名「Aromox MCD」Akzo Nobel社製)が好ましいことがわかっている。
【0110】
前記界面活性剤は、本発明の組成物a)の全重量に対して0.1〜45重量%、好ましくは1.0〜30重量%、より好ましくは9.0〜16.0重量%の度合いで本発明の組成物a)に含まれている。
【0111】
加えて、本発明は、本発明の組成物a)を製造する方法に関する。本発明の組成物a)を製造するための本発明の方法は、具体的にはヒドロキシル基を有する少なくとも1種の極性溶媒を、好ましくは全組成物に対して1.0〜90重量%の量で取り入れて、そして、全組成物に対して好ましくは0.1〜45重量%の量でアニオン性、カチオン性、両性、及び/又は非イオン性の界面活性剤を撹拌しつつ10〜90℃にて溶かし、界面活性剤の添加と同時又はその後に、全組成物に対して好ましくは0.1〜90重量%の量で水難溶性物質を加え、NP−MCA及び界面活性剤構造を有する両親媒性物質を好ましくは全組成物に対して0.1〜80重量%の量で加えることにより、光学的に透明度が増したマイクロエマルション又はナノ相体系へとエマルションを変え、そして、必要であれば混合する手順の最後に添加剤を加えることにより、実施することができる。
【0112】
本発明の組成物a)は、具体的には、まず、水又はヒドロキシル基を有する溶媒を適当な容器に取り入れ、次に、撹拌しつつ界面活性剤を溶解させることによって製造する。工程中において注意すべきことは、界面活性剤のなかには供給時に既に水を含んでいるものがあるということであり、その結果、事前に組成計算される水の量は、必要に応じて調整されなければならない。界面活性剤を溶かすとき、ひどい泡立ちを防ぐべく、溶液中に空気が入り込むことができるだけ少なく保たれることを確実に行わなければならない。工業的な規模で遂行するためには、泡立ちを大きく抑制するための様々な撹拌装置や撹拌機が既にある。撹拌速度は、プロペラミキサーを用い撹拌直径及び容器直径の理想比率を採用する場合には、通常、分当たり200回転を超えないようにすべきである。さらに注意すべきことは、(高濃度の)界面活性剤のなかには、水が加えられるとゲル化するものがあり、撹拌及びさらなる分散が困難になるということである。そのような場合には、必要であれば、水難溶性物質(油相)が、最初に加えられるか、又は、界面活性剤の添加と同時に加えられる。泡立ちは、その後油相を加えることによっても抑制され、油相は、いくらかの泡立ち抑制作用をしばしば有する。油相を添加した後、濁った乳白色のエマルションが形成され、該エマルションは、界面活性剤構造を有するさらなる両親媒性物質(例えばアルカノール)を添加することによって、また、遅くとも成分a2)としての界面活性剤構造を有さない両親媒性物質(例えばアセトアセテート化合物)を添加した後に透明になり、そして、最終的に、光学的に透明度が増したマイクロエマルション又はナノ相体系へと移行する。最後に、例えば増粘剤(例えば、製品名「Aerosil」のシリーズ)などの添加剤や賦形剤も加えられ得る。
【0113】
本発明の目的は、本発明の組成物a)を製造する方法にも関し、該方法においては、i)具体的にはヒドロキシル基を有する少なくとも1種の極性溶媒を取り入れ、ii)アニオン性、カチオン性、両性、及び/又は、非イオン性界面活性剤を撹拌しつつ10〜90℃にて溶かし、iii)水難溶性物質を界面活性剤の添加の後又は添加と同時に加え、iv)生成したエマルションを、少なくとも1種のNP−MCAを加えることにより光学的に透明なマイクロエマルション又はナノ相体系へと変え、そして、v)上記の混合する手順の最後に必要に応じて添加剤を加える。
【0114】
好ましくは、さらに、界面活性剤構造を有する少なくとも1種の両親媒性物質、例えば親水性−親油性分子比率を有する界面活性助剤をこの混合物に加えることができ、具体的には、前記方法におけるステップi)及びiv)、好ましくは前記方法におけるステップii)及びiv)において加えることができる。
【0115】
関連成分の混合中又は混合後に、治療上、美容上、又は診断上の有効成分を、調製中の組成物の各相へ、又は、できあがった組成物へ加えることができる。有効成分は、好ましくは前記方法におけるステップii)、iii)及びiv)において加える。
【0116】
皮膚内へ又は皮膚を経由して有効成分が浸透又は透過することを高める又は改善する役割を果たす本発明の組成物a)の量は、製剤の態様によって変化し、また、使用できる製剤の全重量に対して0.01〜100重量%の量になる。一般的に、当業者は、単純な試行錯誤によって本発明の組成物のどれくらいの量が、塗布されるできあがった製剤や製品中に存在するかを突き止めることができる。
【0117】
しかしながら、皮膚内に行く又は皮膚を経由する有効成分は、組成物の全重量に対して0.5〜90重量%、好ましくは1.0〜80重量%、特に1.0〜50重量%の範囲にて、透過及び浸透における改善が保証されるということが指針値として推測されている。
【0118】
本発明の目的は、上述した方法の1つによって製造される製剤にも関する。
【0119】
本発明の目的は、ヒト及び動物における皮内的及び経皮的な治療上及び美容上の製剤を製造するための本発明の製剤の使用にも関する。
【0120】
本発明の組成物の利用
本発明の組成物中に取り込まれる有効成分の量に関しては、該量は、特に有効成分の性質に依存し、それゆえ大幅に変わり得る。それゆえ、特に、薬理学、薬物動態学、皮膚科学、又は化粧品の分野における当業者は、皮内的な又は経皮的な用途で用いられる有効成分の最適量を見出すべく投与量を見つけ出すための所定の試験を実施する。当業者は、この場合、所定の血中濃度に達し且つ該濃度を維持するように考え、試験や方法によって容易に確認することができる。
【0121】
できあがった製剤の全重量に対して0.001〜99.99重量%の度合いで本発明の組成物中に有効成分の量が含まれ得ることが一般的に想定される。
【0122】
例えばテトラカインなどの治療上活性な有効成分の場合には、使用できる製剤に対して、0.001%〜10.0重量%、好ましくは0.01〜5.0重量%、より好ましくは0.05〜3.0重量%、特に好ましくは0.1〜2.0重量%の量が想定される。
【0123】
薬理学的に活性な又は循環系において活性な物質 インジゴカルミン(J Tarnow et al., Klin. Wschr. 52: 506-508, 1974)の場合には、使用できる製剤に対して、0.001重量%〜5.0重量%、好ましくは0.005重量%〜1.0重量%、特に好ましくは0.01重量%〜0.1重量%の量が想定される。
【0124】
例えば染料、具体的には入れ墨染料などの美容上活性な成分の場合には、使用できる製剤に対して、0.001重量%〜5.0重量%、好ましくは0.005重量%〜2.5重量%、特に好ましくは0.01重量%〜1.0重量%の量が想定される。
【0125】
セルフタンニング用化粧料物質、例えばN−デカノイル−チロシン塩(例えば、Sinerga S.p.a.社の製品名「Tyrostan」)などのいわゆる“セルフタンニング物質”の場合には、0.1重量%〜50重量%、好ましくは0.5重量%〜25重量%、特に好ましくは1.0重量%〜20.0重量%の量が指針となり得る。
【0126】
例えば、コウジ酸、又はヒドロキノン、又はアゼロイルグリシン(Sinerga S.p.a.社製 製品名「Azeloglicina」)などの例えば皮膚美白物質に関しては、使用できる製剤に対して、0.1〜2.0重量%、又は1.0〜5.0重量%の量が想定される。
【0127】
それゆえ、本発明の他の目的は、製剤を製造する方法であり、その方法のステップにおいては、i)具体的にはヒドロキシル基を有する少なくとも1種の極性プロトン性溶媒を、できあがった製剤に対して好ましくは1.0〜90重量%の量となるように取り入れ、ii)次に、アニオン性、カチオン性、両性、及び/又は、非イオン性下面活性剤を、できあがった製剤に対して好ましくは0.1〜45重量%となるように、i)のなかで撹拌しつつ10〜90℃にて溶かし、iii)できあがった製剤に対して好ましくは0.1〜90重量%となるように、水難溶性物質をステップii)、iv)のエマルションに、界面活性剤の添加と同時又は添加の後に加え、iv)少なくとも1種の両親媒性物質NP−MCAを、できあがった製剤に対して好ましくは0.1〜80重量%となるように加えることにより、生成したエマルションを光学的に透明なナノ相体系へ変え、v)ステップi)〜iv)を含む混合の手順の最後に必要に応じて添加剤を加え、vi)成分i)〜v)を混合中又は混合した後に少なくとも1種の治療上、美容上、又は診断上有効な成分を加えて混合する。
【0128】
製剤中における有効成分のpH、及び場合によっては製剤自体のpHが、一方では有効成分や有効成分の安定性に不都合でない範囲にあり、他方では生理学的な環境及び皮膚の状態と同質な範囲にあるか若しくはそれに近い範囲にある場合には、皮膚における不適合又は他の皮膚刺激が起こらないという利点がある。それゆえ、有効成分又は使用できる製剤のpHがわずかに酸性であって中性領域へと変化するならば好都合である。
【0129】
本発明の組成物中へ該当有効成分を取り込むことは、本発明の組成物へ機械的に混合すること又は撹拌することにより、それ自体既知の方法によって行うことができる。混合は、好ましくは均質な若しくは単相の状態に達するまで続けられる。混合方法において観察される温度は、有効成分の安定性に影響される。混合方法における温度は、0℃(氷浴)及び室温(20℃〜25℃、例えば22℃)の間にあることが想定される。
【0130】
しかしながら、以下のようにすることも好ましくは可能であり、即ち、本発明の組成物をまず皮膚に塗布し、その後、時間的及び位置的に離れて、所望の有効成分を、そのように予め準備した又は予め処理した皮膚の領域に塗布することが可能である。組成物の塗布と有効成分の塗布との間の時間間隔は、皮膚の該当領域において組成物が有効な量にて存在する否かに依存し、これは、皮膚タイプ、周囲の温度に影響を受ける。また、時間間隔は、組成物が塗布された皮膚領域が服製品によって機械的なストレスを受けているか否かに依存する。
【0131】
本発明の組成物を皮膚に予め塗布した直後又は数時間後に有効成分を塗布することが、通常、想定される。組成物を塗布した直後に有効成分を塗布することが特に有利で望ましいのは、20℃以上(例えば、25℃〜40℃)の比較的高い温度のとき、及び/又は、例えば50%未満(例えば5〜30%の相対湿度)の大気の低い相対湿度のとき、及び/又は、服、かつら、義肢などの製品又は身体を覆う同様の物品によって身体の関連する部分が機械的なストレスを受ける場合である。
【0132】
しかしながら、想定されることは、治療上又は美容上の有効成分が本発明の組成物の事前塗布のすぐ後に塗布され、該塗布が約1〜60秒の時間にて行われ、有効成分が、5時間まで、好ましくは2時間まで、より好ましくは30分まで、特に好ましくは10分以内に塗布されることである。
【0133】
診断上の有効成分の場合には、斯かる時間は、数日にもなり得るものであり、斯かる時間は、所望の反応、例えば免疫学的に測定される反応が診断上安全な方法でどのように、また、どれくらい起こるかということに影響される。
【0134】
本発明の組成物と、皮内的又は経皮的な塗布のために提供される治療上、美容上、診断上の該当有効成分とを連続して塗布するというこのような方法も、それゆえ、本発明の目的である。
【0135】
本発明の目的は、治療上、美容上、又は診断上の有効成分を皮内的又は経皮的に続けて塗布するための、本発明の組成物の使用でもある。
【0136】
それゆえ、治療上、美容上、又は診断上の有効成分と組み合わされた本発明の組成物は、空間的に分離された容器単位、具体的にはキットオブパーツ(統合する要素)で提供され、特定の治療上又は非治療上の所望の使用のために事前に計量され治療上、美容上、又は診断上の有効量で好適に提供される。
【0137】
キットオブパーツからなり、治療上、美容上、又は診断上の有効成分との機能的な組み合わせにおいて空間的又は物理的に分離された本発明の組成物を含む物質又は梱包物も、本発明の目的物である。
【0138】
本発明の目的は、ヒト及び動物の身体における非治療的な処置のための方法でもあり、該方法において、本発明の組成物は、美容上の有効成分と混合され、そして有効成分とともにヒト又は動物の関連する身体の皮膚に塗布されるか、又は、美容上の有効成分と混合されず、ヒト又は動物における該当する身体の皮膚に別々に且つ引き続いて塗布される。
【0139】
本発明の記載に基づいて、本発明の製剤を治療的に塗布することが有利に行うことができ、本発明の製剤が該当薬剤を必要とするヒト又は動物の皮膚に外部から塗布されるということは、当然のごとく明らかである。
【0140】
また、本発明の組成物が、まずヒト又は動物の皮膚に外部から塗布され、そして、治療上の成分が、該当薬剤を必要とするヒト又は動物の皮膚における予め処理された又は準備された範囲に塗布されるという点も利点になり得る。
【0141】
さらに、本発明は、皮膚に塗布された有効成分の皮内的又は経皮的な効果、好ましくは治療上、具体的には全身的な治療上の効果を改善すること、即ち高めることを達成するための方法に関し、該方法は、本発明の製剤又は組成物を製造することと、選択された皮膚の範囲に製剤又は組成物を塗布し必要に応じて続けて、即ち連続的に塗布することと、既知の方法及び処理によって皮膚に吸収される有効成分の量を決定することとを含んでいる。
【0142】
上記の方法においては、具体的には局所的な、望まれていない皮膚の状態又は病的な皮膚の状態が含まれているところ、皮膚科学的に適した有効成分を含む本発明の製剤は、例えば、にきび、角化症、上皮細胞癌、アトピー性皮膚炎、乾癬、微生物による感染症や腫瘍(例えば高等菌類による水虫、白癬菌による感染症、例えばウイルスによるいぼや乳頭種)、及び医薬品による炎症反応や過敏症反応若しくはアレルギー反応を処置すべく、処置が必要な皮膚の範囲に塗布され得る。
【0143】
加えて、本発明に関連する本質的な用途及び本質的な方法は、局所的又は全身的に有効な鎮痛剤又は麻酔剤を皮膚に塗布することでもある。これにより、適当な鎮痛剤又は例えばテトラカインのような麻酔剤が本発明の組成物と混合されて塗布されるか、又は、本発明の組成物が最初に皮膚に塗布され次に有効成分が続いて塗布されるという、上述した詳細のような連続的な方法で塗布される。
【0144】
例えば5−アミノレブリン酸のような、皮膚を容易に透過する治療上適当な有効成分を用いて行われる、いわゆる腫瘍の光線力学的療法も、本発明の範囲内において適当な使用方法及び処置方法である。
【0145】
治療上又は美容上の有効成分の使用に加えて、例えばアレルゲン物質若しくは標識物質などの診断上適当な有効成分も、皮膚内における又は皮膚を経由した移送を改善するための上記と同様な方法において有利に用いられる。例えば、皮膚アレルギー試験や感作試験(例えば、プリック試験、皮内試験、剥離試験、経皮試験、反復開放塗布試験)に関連して、所望の免疫反応を引き起こすべく、1種又はそれ以上の抗原が、本発明の組成物とともに塗布されるか、又は、既に述べたように続けて塗布される。従来の方法でされていたように皮膚を傷付ける必要はない。
【0146】
塗布される診断上の成分の量は、本質的に、斯かる成分の性質に依存し、所定の試験において当業者によって決定される。しかしながら、これら成分が少量で作用すると一般的には想定されることから、できあがった製剤に対して0.0001重量%〜5.0重量%、好ましくは0.0005重量%〜1.0重量%、より好ましくは0.001重量%〜0.1重量%の量における塗布が指針として示される。
【0147】
この点で、本発明の目的は、本発明の製剤の使用でもあり、また、ヒト及び動物における診断法のために製剤を製造するための組成物の使用でもある。
【0148】
このように同様の診断上の方法も、治療上又は美容上の処理とかなり類似した方法で利用できる。
【0149】
従って、ヒト及び動物に対する診断上の処理のための方法は、有利に行うことができ、該方法は、適当な診断上の有効成分を含む本発明の製剤を製造すること、及び、製剤を選択された皮膚の範囲に塗布することを含んでいる。
【0150】
別の方法は、本発明の組成物を製造すること、皮膚の選択された範囲に組成物を塗布し、その後、即ち続けて、このように準備された皮膚の範囲に診断上の成分を塗布すること、そして、既知の方法や手順により、用いた診断上の成分によって引き起こされた皮膚反応を測定し評価すること、を含んでいる。
【0151】
それゆえ、目的は、本明細書の記載に沿った製剤、又は請求の範囲にて規定した製剤であり、該製剤は、該当する組成物a)に加えて、少なくとも1種の治療上、美容上、又は診断上の有効成分b)を治療上、美容上、又は診断上有効な量で含む。
【0152】
本発明の製剤は、治療上、美容上、又は診断上該当する有効成分を皮内的又は経皮的に移送し、さらなる特別な添加剤を必要としない。しかしながら、保護作用を有するか、又は有効成分の放出を遅らせることにより投薬量を調整するための手段として作用する被覆層を用いることも有利に可能であり、該被覆層は、例えば、本発明の製剤が中に取り込まれているフィルム、絆創膏、包帯の態様であり、又は、既に塗布された製剤を覆うように取り付けられる。のり又は粘着性材料を備えたそのような絆創膏は、当業者に知られており、好ましくは、例えば、織布、ポリエチレン又はゴムで構成されている。このような被覆層の使用は、塗布された製剤が、蒸発又は例えば服製品による機械的ストレスに対して保護されるならば好都合であり、又は、有効成分が例えば数日間といった長期間にわたって作用するならば好都合である。
【0153】
本発明の製剤に適した利用態様及び処方に関しては、態様及び処方が作用様式に悪影響を与えないか、又は塗布される有効成分のうちの1種と不適合でないのであれば、当業者に知られている全ての様式や態様が考えられる。
【0154】
皮膚に塗布するために適していると当業者によって知られ、ヒト及び動物において使用される低刺激の既知の処方、例えば、クリーム、ローション、ガス式スプレー、ポンプ式スプレー、エアゾール、ゲル、軟膏、座薬、又はカプセル剤などが、広く用いられ得る。
【0155】
治療上の有効成分
経皮的に投与される治療上の有効成分又は物質の場合には、全身的に有効な医薬品であると当業者が知っているものであり、また、悪影響なく主に血流に吸収されると当業者が想定するもののみが選択されるということは、当業者にとって明確である。
【0156】
皮内的に投与される治療上の有効成分又は物質の場合には、非全身的(局所的)に有効な医薬品であると当業者が知っているものであり、また、悪影響なく塗布された場所において主に作用を示すもののみが選択されるということも、当業者は知っている。
【0157】
それゆえ、当業者は、皮膚への塗布に適し、異なる適応症や使用分野にとって幅広く十分な治療上の潜在力を有する治療上の有効成分を選択し、具体的には、斯かる有効成分としては、抗生物質、抗ウイルス薬、駆虫剤、抗炎症剤、解熱剤、抗アレルギー剤及び抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤、免疫治療剤、抗リウマチ剤及び抗関節炎剤、抗喘息剤、抗うつ剤、抗精神病薬、例えばむずむず脚症候群、パーキンソン氏病、アルツハイマー病又は痙攣などの神経学的要因に関わる疾患の治療薬、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン剤、偏頭痛などの疼痛の治療薬、悪性腫瘍及び良性腫瘍の治療薬、乾癬の治療薬、抗不整脈剤などの心臓血管に作用する物質、カルシウム拮抗剤、β遮断薬、子宮収縮抑制剤や筋弛緩剤などのベータ受容体刺激薬、ホルモン、血圧降下剤、抗利尿剤、血管拡張剤、血液希釈剤、鎮静剤、精神安定剤、麻酔薬、具体的には局所麻酔薬(例えばテトラカイン)、睡眠薬錠剤などの催眠薬、具体的にはモルヒネ、フェンタニル、又はメタドン化合物に基づくオピオイド様鎮痛剤、ニコチン性鎮痛剤又は、例えばNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)のような非オピオイド鎮痛剤、及び、具体的には皮膚アレルギー試験又は感作試験などの診断用薬などが挙げられる。
【0158】
具体的には、本発明の製剤のために、本発明の使用のために、又は本発明の方法のために、下記の有効成分が考慮される。コカイン;例えばベンゾカイン、オキシブプロカイン、プロカイン、テトラカインなどのアミノエステル類や例えばジブカイン、エチドカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ブピバカイン、アルチカイン、ロピバカインなどのアミノアミド類といった局所麻酔薬;例えばモルヒネ様、フェンタニル様、又はメタドン様のオピオイド鎮痛薬などの鎮痛薬、及び、例えばエピバチジンのようなニコチン性鎮痛薬などの非オピオイド鎮痛薬;例えばアセチルサリチル酸、メチルサリチル酸、ジフルニサル、例えばジクロフェナクなどのフェニル酢酸誘導体といったサリチル酸誘導体、例えばイブプロフェンやナプロキセンなどの2−フェニルプロピオン酸誘導体、例えばメロキシカムやピロキシカムなどのオキシカム、といったNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの酸性鎮痛薬;例えばパラセタモールなどの4−アミノフェノール誘導体、例えばメタミゾールやフェナゾンなどのピラゾロンといった非酸性鎮痛薬;例えば酢酸ヒドロコルチゾンなどの消炎剤;例えば5−アミノレブリン酸などの腫瘍治療薬;例えばテルビナフィンやクロトリマゾールなどの抗真菌剤;例えばエチレンジアミンなどの抗ヒスタミン剤、例えばメピラミン(ピリラミン)、トリペレナミン(ピリベンザミン)、アンタゾリン、ジメチンデン、マレイン酸バミピン、又は、例えばジフェンヒドラミンなどのエタノールアミン、カルビノキサミン、ドキシラミン、クレマスチン、又は、例えばフェニラミン、クロルフェナミン(クロルフェニラミン)、デキシクロルフェナミン、ブロムフェニラミン、トリプロリジンなどのアルキルアミン、又は、例えばヒドロキシジンやメクロジンなどのピペラジン、又は、例えばプロメタジン、アリメマジン(トリメプラジン)、シプロヘプタジンおよびアザタジンなどの三環系抗ヒスタミン薬、ここで、抗ヒスタミン薬としてのアクリバスチン、アステミゾール、セチリジン、エバスチン、フェキソフェナジン、ロラタジン、ミゾラスチン、テルフェナジン若しくはルパタジンは、特に全身的に経皮的に使用するために推奨され、抗ヒスタミン薬としてのアゼラスチン、レボカバスチン、オロパタジン若しくはエピナスチンは、特に局所的に皮内的に塗布するために推奨され;本発明の目的に適すると考えられるさらなる有効成分は、例えば米国特許5853751号、米国特許6113921号、に記載され、該成分としては、下記のものが挙げられる。アセブトロール、アセトアミノフェン、アセトヒドロキサム酸、アセトフェナジン、アシクロビル、アドレノコルチコイド、アロプリノール、アルプラゾラム、水酸化アルミニウム、アマンタジン、アンベノニウム、アミロライド、アンホテリシン−B、カリウムアミノ安息香酸、アモバルビタール、アモキシシリン、アンフェタミン、アンピシリン、アンドロゲン、抗凝固剤、ジオン型抗痙攣薬、抗甲状腺物質、食欲抑制剤、アスピリン、アテノロール、アトロピン、アザタジン、バカンピシリン、バクロフェン、ベクロメタゾン、ベラドンナ、ベンドロフルメサイアザイド、過酸化ベンゾイル、ベンズチアジド、ベンズトロピン、ベタメタゾン、ベタネコール、ビフォナゾール、ビペリデン、ビサコジル、ブロモクリプチン、ブロモジフェンヒドラミン、ブロムフェニラミン、ブクリジン、ブメタニド、ブスルファン、ブタバルビタール、ブタペラジン、カフェイン、炭酸カルシウム、カプトプリル、カルバマゼピン、カルベニシリン、カルビドパ及びレボドパ、カルビノキサミン阻害剤、カーボン脱水酵素、カリソプロドール、カルフェナジン、カスカラ、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セフラジン、クロフェジアノール、抱水クロラール、クロラムブシル、クロラムフェニコール、クロルジアゼポキシド、クロロキン、クロロチアジド、クロロトリアニセン、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、クロルプロパミド、クロルプロチキセン、クロルタリドン、クロルゾキサゾン、コレスチラミン、シメチジン、シノキサシン、クレマスチン、クリジニウム、クリンダマイシン、クロフィブラート、クロミフェン、クロニジン、クロラゼプ酸、クロキサシリン、コルヒチン、コレスチポール、結合型エストロゲン、避妊薬、コルチゾン、クロモリン、シクラシリン、シクランデレート、シクリジン、シクロベンザプリン、シクロホスファミド、シクロチアジド、シクリミン、シプロヘプタジン、ダナゾール、ダントロン、ダントロレン、ダプソン、デキストロアンフェタミン、デキサメタゾン、デキスクロルフェニルアミン、デキストロメトルファン、ジアゼパン、ジクロキサシリン、ジサイクロミン、ジエチルスチルベストロール、ジフルニサル、ジギタリス、ジルチアゼム、ジメンヒドリナート、ジメチンデン、ジフェンヒドラミン、ジフェニドール、ジフェノキシレート及びアトロフィブ、ジフェニロピラリン、ジピリダモール、ジソピラミド、ジスルフィラム、ジバルプロエクス、ドキュセートカルシウム、ドキュセートカリウム、ドキュセートナトリウム、ドキシラミン、ドロナビノールエフェドリン、エピネフリン、メシル酸エルゴロイド、エルゴノビン、エルゴタミン、エリスロマイシン、エステル化エストロゲン、エストラジオール、エストロゲン、エストロン、エストロピペート、エタクリン酸、エスクロルビノール、エチニルエストラジオール、エトプロパジン、エトスクシミド、エトトイン、フェノプロフェン、鉄フマル酸塩、鉄グルコン酸塩、硫酸鉄、フラボキサート、フレカイニド、フルフェナジン、フルプレドニソロン、フルラゼパム、葉酸、フロセミド、ゲムフィブロジル、ゲンタマイシン、グリピジド、グリブリド、グリコピロレート、金化合物、グリセオフルビン、グアイフェネシン、グアナベンズ、グアナドレル、グアネチジン、ハラゼパム、ハロペリドール、ヘタシリン、ヘキソバルビタール、ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)、ヒドロフルメチアジド、ヒドロキシクロロキン、ヒドロキシジン、ヒヨスチアミン、イブプロフェン、インダパミド、インドメタシン、インシュリン、イオフォキノール、鉄多糖類、イソエタリン、イソニアジド、イソプロパミド、イソプロテレノール、イソトレチノイン、イソクスプリン、イドクスウリジン、カオリン及びペクチン、ケトコナゾール、ラクツロース、レボドパ、リンコマイシン、リオチロニン、リオトリックス、リチウム、ロペラミド、ロラゼパム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、マプロチリン、メクリジン、メクロフェナメート、メドロキシプロゲステロン、メフェナム酸、メルファラン、メフェニトイン、メフォバルビタール、メプロバメート、メルカプトプリン、メソリダジン、メタプロテレノール、メタキサロン、メタンフェタミン、メタカロン、メタルビタール、メテナミン、メチシリン、メトカルバモール、メトトレキサート、メトスクシミド、メチクロチンジド、メチルセルロース、メチルドパ、メチルエルゴノヴィン、メチルフェニデート、メチルプレドニゾロン、メチセルジド、メトクロプラミド、メトラゾン、メトプロロール、メトロニダゾール、ミコナゾール、ミノキシジル、ミトタン、モノアミン酸化酵素阻害剤、ナドロール、ナフシリン、ナリジクス酸、ナプロキセン、麻薬性鎮痛薬、ネオマイシン、ネオスチグミン、ナイアシン、ニコチン、ニフェジピン、硝酸塩、ニトログリセリン、ニトロフラントイン、ノミフェンシン、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルゲストレル、ニリドリン、ナイスタチン、オルフェナドリン、オキサシリン、オキサゼパム、オクスプレノロール、オキシメタゾリン、オキシフェンブタゾン、パンクレリパーゼ、パントテン酸、パパベリン、パラアミノサリチル酸、パラメサゾン、鎮痛剤(“アヘン樟脳チンキ剤”として知られている“アヘン安息香チンキ剤”)、ペモリン、ペニシラミン、ペニシリン、ペニシリン−V、ペントバルビタール、ペルフェナジン、フェナセチン、フェナゾピリジン、フェニラミン、フェノバルビタール、フェノールフタレイン、フェンプロクモン、フェンスクシミド、フェニルブタゾン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、フェニルトロキサミン、フェニトイン、ピロカルピン、ピンドロール、ピペラセタジン、ピロキシカム、ポロキサマー、カルシウムポリカルボフィル、ポリチアジド、カリウムサプリメント、プラゼパム、プラゾシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プリミドン、プロベネシド、プロブコール、プロカインアミド、プロカルバジン、プロクロルペラジン、プロシクリジン、プロマジン、プロメタジン、プロパンテリン、プロプラノロール、プソイドエフェドリン、プソラレン、オオバコ、ピリドスチグミン、ピリドキシン、ピリラミン、ピルビニウム、キネストロール(17A−エチニル−1,3,5(10)−エストラトリエン−3,17B−ジオール−3−シクロペンチルメチルエーテル)、キネタゾン(製品名 Hydromox)、キニジン、キニーネ、ラニチジン、ジャボクアルカロイド、リボフラビン、リファンピシン、リトドリン、サリチル酸塩、スコポラミン、セコバルビタール、センナ、センノシドA及びB、シメチコン、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、スピロノラクトン、スクラルファート、スルファシチン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルフィンピラゾン、スルフィソキサゾール、スリンダク、タルブタール、テマゼパム、テルブタリン、テルフェナジン、テルピン水和物、テトラサイクリン、チアベンダゾール、チアミン、チオリダジン、チオチキセン、サイログロブリン、甲状腺粉末、チロキシン、チカルシリン、チモロール、トカイニド、トラザミド、トルブタミド、トルメチン、トラゾドン、トレチノイン、トリアムシノロン、トリアムテレン、トリアゾラム、トリクロルメチアジド、三環系抗うつ薬、トリジヘキセチル、トリフルオペラジン、トリフルプロマジン、トリヘキシフェニジル、トリメプラジン、トリメトベンズアミド、トリメトプリム、トリペレナミン、トリプロリジン、例えばメラニン又はL−ドーパ(L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン)などのチロシン誘導体、バルプロ酸、ベラパミル、ビタミンA、ビタミンB−12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、キサンチン、アムホテリシンB、バルビツール酸、ジフェノキシレート、プロスタグランジン、レチノイド又はカロテン。
【0159】
ここで例示したこれらの有効成分は、適切なものであり、当業者に知られた適切な治療上の物質の全一覧として扱われるものでは全くなく、本発明において、医学的適応に応じて単独で又は組み合わされて使用される。
【0160】
美容上の有効成分
美容上の有効成分又は皮膚若しくは皮内に投与される物質の場合には、全身的には有効でなく医薬品と同様には作用せず医薬品と同じ性質を持たないと当業者が知っているもの、また、悪影響なく塗布された場所において主に美容上の作用を示すもののみが選択されるということを、当業者は知っている。
【0161】
美容上の有効成分の使用に関連して、“皮内的”又は“経皮的”との用語は、より具体的には、美容上の物質の作用部位を意味していると理解される。従って、美容上の物質の皮内移送は、例えば美白、入れ墨、又はニキビの美容的処置などのように、好ましくは角質層より下側の皮膚層における美容上の作用を発揮させることを対象にしている。美容上の有効成分の経皮的な移送の場合には、例えばセルライトの美容的処置のように、好ましくはより深い皮膚層が影響を受ける。
【0162】
それゆえ、当業者は、該当する塗布に適した美容上の有効成分であり、異なる塗布範囲において広い範囲で十分な美容上の潜在力を有する成分を選択し、該成分としては、具体的には、例えば入れ墨用染料や皮膚濃色化剤などの皮膚着色剤、UVフィルター、色素沈着やシミに有効な物質を含む美白剤、抗老化物質、抗セルライト物質、抗ニキビ物質、フケやサメ肌、乾燥肌に有効な物質が挙げられる。
【0163】
具体的には、本発明の製剤、本発明の使用、又は本発明の方法のためには、下記の美容上の有効成分が考慮される。例えば、ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、チロシン、アファメラノタイド(製品名 melanotan I)、コウジ酸、コウジアミノプロピルリン酸、例えばメラニン又はL−ドーパ(L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン)などのチロシン誘導体、ヒドロキノン、製品名「tyrostan」、例えばチアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ニコチン酸及びニコチン酸アミド(ビタミンB3)、パントテン酸及びパンテノール(ビタミンB5)、具体的にはそれらのエステル及びエーテルといったそれらの誘導体、パンテノールのカチオン化誘導体、パントラクトン、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン(ビタミンB6)などのビタミンB群;L−アスコルビン酸(ビタミンC)、L−アスコルビン酸リン酸、L−アスコルビン酸グルコシド、ビタミンE、例えばリノール酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、アラキドン酸などの必須脂肪酸又はビタミンF群;ビオチン若しくは(3aS、4S、6aR)−2−オキソヘキサヒドロチエノール[3,4−d]−イミダゾール−4−吉草酸(ビタミンH)、緑茶、オークの樹皮、イラクサ、ウィッチヘーゼル、ホップ、カモミール、ゴボウの根、スギナ、セイヨウサンザシ、ライムの花、アーモンド、アロエベラ、トウヒの針、トチノキ、サンダルウッド、杉、ココナッツ、マンゴー、アプリコット、ライム、小麦、キウイ、メロン、オレンジ、グレープフルーツ、セージ、ローズマリー、シラカバ、タチアオイ、カッコウの花、ヒースヒメハギ、ノコギリソウ、タイム、レモンバーム、ハリモクシュク、フキタンポポ、マシュマロウ、分裂組織、人参、ショウガ茎由来の植物抽出物及び蒸留物(水、又は低級アルコール、一価若しくは多価アルコール(エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールまたはプロピレングリコール)を用いた抽出により該当植物の花弁又は葉から公知の方法で得ることができる)、アルブチン、[桂皮酸]、ボツリヌス毒素、又は、尿素。
【0164】
例示されたこれらの有効成分は、適切なものであり、当業者に知られた適切な美容上の物質の全一覧として扱われるものでは全くなく、本発明において、必要に応じて単独で又は組み合わされて使用される。
【0165】
本発明の組成物a)を含まない有効成分含有処方と比べて本発明の製剤の作用を試験すべく、それ自体既知の方法によって、単離されたヒトの皮膚、又は、例えば単離された豚の皮膚などの動物の皮膚において、インビトロ試験が行われる。斯かる試験は、好ましくは、本発明の製剤を同時に塗布し、それ自体既知の方法により又は標準化された条件において、比較サンプルを1つの同じ皮膚調製物において隣接した範囲に直接塗布し、速度及び/又は移送量に関して、透過を計測することによって実施することができる。
【0166】
下記の実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものであり、決して本発明をこれと同じものに限定するものではない。
【実施例】
【0167】
実施例1:テトラカインを含み経皮的な移送に適した製剤
【0168】
【表1】

【0169】
室温(22℃)にて水を取り入れ、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、クエン酸トリエチル、セチオールOE、ルテンゾールTO3、及びココイルイセチオン酸ナトリウムの各成分を直ちに順に加え、撹拌した。次に、単一の均一な相が生成するまで、緩やかに撹拌しつつツイーン80をこの溶液に加えた。続いて、テトラカイン塩酸塩を単一相混合物に加え、単相状態が再び生じるまで撹拌した。単相流体ナノ相体系が形成された。テトラカイン含有ナノ相流体を脇の内側に塗布した後、ナノ相流体がなければ生じない経皮的な麻酔作用が、塗布された部位において確認された。
【0170】
実施例2:経皮的移送に適した組成物
【0171】
【表2】

【0172】
室温(22℃)にて水を取り入れ、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、クエン酸トリエチル、セチオールOE、ルテンゾールTO3、及びココイルイセチオン酸ナトリウムの各成分を直ちに順に加え、撹拌した。次に、単一の均一な相が生成するまで、緩やかに撹拌しつつツイーン80をこの溶液に加えた。
このような組成物は、斯かる組成物を塗布した後に、このように前処理された皮膚の範囲に続いて有効成分を塗布するという、連続的な塗布にも適している。
【0173】
実施例3:テトラカインを含み経皮的な移送に適した製剤
【0174】
【表3】

【0175】
室温(22℃)にて水を取り入れ、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、セチオールOE、ルテンゾールTO3、及びココイルイセチオン酸ナトリウムの各成分を直ちに順に加え、単一の均一な相が生成するまで撹拌した。次に、テトラカイン塩酸塩を単一相混合物に加え、単相状態が再び生じるまで撹拌した。単相流体ナノ相体系が形成された。
テトラカイン含有ナノ相流体を脇の内側に塗布した後、ナノ相流体がなければ生じない経皮的な麻酔作用が、塗布された部位において確認された。
【0176】
実施例4:経皮的移送に適した組成物
【0177】
【表4】

【0178】
室温(22℃)にて水を取り入れ、アセト酢酸エチル、セチオールOE、ルテンゾールTO3、及びココイルイセチオン酸ナトリウムの各成分を直ちに順に加え、撹拌した。単相流体ナノ相体系が形成された。
このような組成物は、斯かる組成物を塗布した後に、このように前処理された皮膚の範囲に続いて有効成分を塗布するという、連続的な塗布にも適している。
【0179】
実施例5:製品名「Tyrostan」を含み皮膚を濃色化すべく皮内的移送に適した組成物
【0180】
【表5】

【0181】
室温(22℃)にて水を取り入れ、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、クエン酸トリエチル、セチオールOE、ルテンゾールTO3の各成分を直ちに順に加え、撹拌した。単一の均一な相が生成するまで、緩やかに撹拌しつつツイーン80をこの溶液に加えた。続いて、Tyrostanを単一相混合物に加え、単相状態が再び生じるまで撹拌した。単相流体ナノ相体系が形成された。
【0182】
Tyrostan含有ナノ相流体を脇の内側に塗布した後、ナノ相流体がなければ生じない皮内的な濃色化作用が、塗布された部位において確認された。
【0183】
実施例6:インジゴカルミンを含み皮内的な移送に適した組成物
【0184】
【表6】

【0185】
室温(22℃)にて水を取り入れ、アセト酢酸エチル、3−メトキシ−1−ブタノール、セチオールOE、ルテンゾールTO3の各成分を直ちに順に加え、撹拌した。単一の均一な相が生成するまで、緩やかに撹拌しつつツイーン80をこの溶液に加えた。続いて、インジゴカルミンを単一相混合物に加え、単相状態が再び生じるまで撹拌した。単相流体ナノ相体系が形成された。
【0186】
インジゴカルミン含有ナノ相流体を脇の内側に塗布した後、ナノ相流体がなければ生じない皮内的な青色化作用が、塗布された部位において確認された。
【0187】
実施例7:皮内的移送に適した組成物
【0188】
【表7】

【0189】
室温(22℃)にて水を取り入れ、アセト酢酸エチル、3−メトキシ−1−ブタノール、セチオールOE、ルテンゾールTO3の各成分を直ちに順に加え、撹拌した。単一の均一な相が生成するまで、緩やかに撹拌しつつツイーン80をこの溶液に加えた。単相流体ナノ相体系が形成された。
このような組成物は、斯かる組成物を塗布した後に、このように前処理された皮膚の範囲に続いて有効成分を塗布するという、連続的な塗布にも適している。
【0190】
実施例8:染料含有流体ナノ相体系の塗布
実施例6の染料含有ナノ相流体を、同じ染料濃度(0.05重量%インジゴカルミン)の水性溶液と比較した。この目的のため、試験対象の脇の内側の皮膚を、インジゴカルミン(インジゴスルホン酸、Na塩)の水性溶液、及び、インジゴカルミンを含むナノ相流体で処理した。斯かる目的のため、これらの液体は、例えば菱形、点、線の態様といった特定の模様で皮膚に塗布された。皮膚における退色の順序は、写真によって記録された。8時間後、両方の部位は、同様な操作により湿った布を用いて拭かれ、拭き取りの効果を写真により色の退色に基づいて記録した。水性液体系において、早期の段階で皮膚の表面がより迅速に着色され、ナノ相流体と比べてより激しく青色になることが顕著であった。しかしながら、この比較試験において、着色は、表面においてのみ持続し、主に毛穴及び小さいシワに入り、結果として、溶液の乾燥後において、毛穴やシワが皮膚の上側の層よりもより強く着色された。着色が引き起こされたにも関わらず、試験期間の最後において、より深い毛穴におけるいくつかの着色部位は別として、拭き取り後に、染料が皮膚に残存しなかった。
【0191】
一方、ナノ相流体の場合、着色はより均一であり、即ち、皮膚における大ジワや小ジワと平滑領域との間で着色度の差がわずかであった。皮膚の最上層における顕著な着色は、観察されなかった。拭き取り後、目視で確認できる明確な模様が残存していた。顕微鏡による観察は、皮膚若しくはシワや毛穴における着色を直接的に明らかにするものではないが、角質層に隣接する皮膚のより深い層においては、結果として模様が入れ墨と同様のものとなった。着色された模様は、血流にのって染料が取り除かれることにより、48時間以内に消失した。このように、染料の皮内的な移送が引き起こされた。血液中において染料又はその分解物質を見つけることは、調査しなかった。
【0192】
実験例9:流体ナノ相体系の検出
ナノ相体系におけるナノ構造を検出するための緑色レーザー光線散乱法(Conrad Electronic社、ドイツ、形式No.GLP-101、530-545 nm)
結果を図1に示す。
a)水:緑色レーザー光線が液体中で見えない。即ち、散乱がなく、ナノ構造がない。
b)本発明の組成物。下記の構成である。
水相:水(35.70重量%); 油相:セチオールOE(20.03重量%); 界面活性剤:ルテンゾールTO3(11.14重量%)、ツイーン80(6.86重量%)、ココイルイセチオン酸ナトリウム(0.42重量%); NP−MCA:クエン酸トリエチル(6.89重量%)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(17.87重量%); 有効成分:テトラカイン塩酸塩(1.09重量%); 各重量百分率は、できあがった組成物に対するものである。
【0193】
緑色レーザー光線は、散乱によって見えるものであり、換言すれば、液体は、ナノ構造を有することになる。付言すると、赤色レーザー光線は、赤色光の波長が相互作用にとって大きすぎることから、わずかに散乱する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記a)及びb)が組み合わされて含まれているヒト及び動物に対する外用製剤。
a)下記成分を含む流体ナノ相体系の態様の組成物、
a1)0.1〜90重量%の量であり、リットル当たり4g未満の水溶解度を有する少なくとも1種の水難溶性物質、
a2)0.1〜80重量%の量であり、界面活性剤構造を有さず、それ自体で構造を形成せず、水又は油への溶解度がリットル当たり4gと1000gとの間であり、優先的には油−水界面に蓄積しない少なくとも1種の両親媒性物質NP−MCA、
a3)0.1〜45重量%の量であり、アニオン性、カチオン性、両性、及び/又は、非イオン性の少なくとも1種の界面活性剤、
a4)1.0〜90重量%の量であり、特にヒドロキシル基を有する少なくとも1種のプロトン性極性溶媒、
a5)必要に応じて0.01〜10重量%の量であり、1種又はそれ以上の添加剤、
(示された百分率は、いずれの場合でも組成物の全重量に対するものである)
b)治療上、美容上、又は診断上有効な量の、少なくとも1種の治療上、美容上、又は診断上の有効成分。
【請求項2】
前記成分a2)のNP−MCAが、成分a1)、a3)、及びa4)を含む油−水−界面活性剤体系に、体系の全重量に対して4重量%加えられるときに、図3の相図に含まれ下記の3つの端点で決定される三角形の表面積が少なくとも5%拡張することを特徴とする請求項2に記載の製剤。
i)X点、
ii)単相領域と2相領域との間における境界領域にあり、温度Y軸に平行でLα区域に接する接線との上側の交点、及び、
iii)単相領域と2相領域との間における境界領域にあり、温度Y軸に平行でLα区域に接する接線との下側の交点。
【請求項3】
前記組成物a)が、界面活性剤構造を有する少なくとも1種の両親媒性物質をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2記載の製剤。
【請求項4】
前記両親媒性物質(NP−MCA)が、a)、b)、c)、d)、及びe)からなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜3に記載の製剤。
a)式(I)で示されるジオール類、
R1R2COH - (CH2n - COHR1R2 ・・・式(I)
ただし、nは、0,1,2,3又は4であり、
1及びR2は、いずれの場合でも互いに独立して、水素、分岐していない又は分岐したC1〜C3アルキルであり、
前記ジオール類は、
1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−(n−ブチル)−2−エチル−1,3−プロパンジオール、又は、1,2−ジオール類を含む、
b)式(II)又は式(III)で示されるアセトアセテート類、
C(R33 - CO - CH2 - CO - O - R4 ・・・式(II)
ただし、R3は、いずれの場合も互いに独立して水素、又は、C1〜C2のアルキルであり、R4は、分岐した又は分岐していないC1〜C4アルキルであり、
CH3- CO - CH2 - CO - O - R5 ・・・式(III)
ただし、R5は、C1〜C4アルキルであり、
前記アセトアセテート類は、
アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸n−プロピル、又はアセト酢酸tert−ブチルを含む、
c)式(IV)で示されるジオン類、
CH3 - (CH2)p -CO - (CH2)q - CO - (CH2)r - CH3 ・・・式(IV)
ただし、p,q,rは、いずれの場合でも互いに独立して、0,1又は2であり、p,q,rの合計が2である場合には式(IV)の化合物が環状であり、
前記ジオン類は、
2,3−ブタンジオン(ジアセチル)、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトン)、3,4−ヘキサンジオン、2,5−ヘキサンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、1,4−シクロヘキサンジオン、又は、1,3−シクロヘキサンジオンを含む、
d)式(V)で示されるエステル類、
R6 - CO - O - R7 ・・・式(V)
ただし、R6は、R7への環状結合、CH3、又はCOCH3であり、
7は、R6への(CH22-O-環状結合、(CH22-O-(CH23-CH3、CH2-CH3、又は、R6へのCH2-CH(CH3)-O-環状結合であり、
前記エステル類は、
(1−メトキシ−2−プロピル)−アセテート、(2−ブトキシエチル)−アセテート、エチレンカーボネート、ピルビン酸エチル(2−オキソプロパン酸エチルエステル)、又は、プロピレンカーボネートを含む、
e)式(VI)で示されるマレイン酸アミド類又はフマル酸アミド類、
R8- HN - CO - C = C - CO - O - R9 ・・・式(VI)
ただし、R8は、水素、分岐した若しくは分岐していないC1〜C4アルキル、又は、分岐した若しくは分岐していない直鎖状若しくは環状のC1〜C6アルキルであり、C1〜C6アルキルは、OH, NH2, COOH, CO, SO3H,OP(OH)2から選択された1種又はそれ以上の基によって置換されており、R9は、水素、又は、分岐した若しくは分岐していないC1〜C4アルキルであり、
前記マレイン酸アミド類又はフマル酸アミド類は、
マレイン酸アミド類としてのN−メチルマレアミド、N−エチルマレアミド、N−(n−プロピル)マレアミド、N−(i−プロピル)マレアミド、N−(n−ブチル)マレアミド、N−(i−ブチル)マレアミド、N−(tert−ブチル)マレアミド、そのメチル、エチル、プロピル、及びブチルエステル類を含み、
また、同様のフマル酸アミド類、そのメチル、エチル、プロピル、及びブチルエステル類を含み、
2,2−ジメトキシプロパン、ピルビンアルデヒド−1,1−ジメチルアセタール、ジアセトンアルコール(2−メチル−2−ペンタノール−4−オン)、2−ブタノール、2−アセチル−γ−ブチロラクトン、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、γ−ブチロラクトン、ニコチン酸アミド、アスコルビン酸、N−アセチルアミノ酸、N−アセチルグリシン、アラニン、システイン、バリン、又は、アルギニン、リン酸トリエチル、酢酸n−ブチル、ジメチルスルホキシド、又は、2,2,2−トリフルオロエタノールを含む。
【請求項5】
前記両親媒性物質(NP−MCA)が、式(III)に示されるアセトアセテート類から選択されることを特徴とする請求項1〜4に記載の製剤。
CH3- CO - CH2 - CO - O - R5 ・・・式(III)
ただし、R5は、C1〜C4アルキルである。
【請求項6】
アルコール類、アミン類、アルコールアミン類、ケトン類、酸類及びその弱塩基塩類、アミド類、有機硫酸塩類、有機リン酸塩類、アルキル残基、アルケニル残基、アルキニル残基、アリール硫化物類、アリールリン化物類、並びに、シリコーン類/シロキサン類からなる群より選択された両親媒性物質(NP−MCA)を含む請求項1〜5に記載の製剤。
【請求項7】
前記両親媒性物質(NP−MCA)が、組成物の全重量に対して2〜25重量%含まれていることを特徴とする請求項1〜6に記載の製剤。
【請求項8】
下記のステップを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤を製造する方法。
i)全製剤に対して好ましくは1.0〜90重量%の量で、特にヒドロキシル基を有する少なくとも1種のプロトン性極性溶媒を取り入れる、
ii)全組成物に対して好ましくは0.1〜45重量%の量でアニオン性、カチオン性、両性、及び/又は非イオン性の界面活性剤を撹拌しつつ10〜90℃にて溶かし、
iii)ステップii)の界面活性剤の添加と同時又はその後に、全製剤に対して好ましくは0.1〜90重量%の量で水難溶性物質を加え、
iv)少なくとも1種のNP−MCAを好ましくは全製剤に対して0.1〜80重量%の量で加えることにより、生成したエマルションを光学的に透明なナノ相体系へと変え、
v)必要に応じてステップi)〜iv)の混合手順の最後に添加剤を加え、
vi)i)〜v)での成分の混合中又は混合後に、少なくとも1種の治療上、美容上、又は診断上の有効成分を加えて混合する。
【請求項9】
請求項8の方法によって製造された、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
ヒト及び動物に対して治療上、美容上、又は診断上の有効成分を皮内的に又は経皮的に塗布するための、請求項1〜7、及び請求項9のいずれか1項に記載の製剤の使用。
【請求項11】
外部から塗布された有効成分又は有効成分の混合物を皮膚に浸透又は透過させることを改良又は向上させるための、請求項1〜7、及び請求項9のいずれか1項に記載の製剤の使用。
【請求項12】
ヒト又は動物の皮膚内へ有効成分を浸透又は透過させることを促進するための請求項11に記載の使用。
【請求項13】
ヒト又は動物の皮膚を通して有効成分を浸透又は透過させることを促進するための請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物a)、及び、治療上、美容上、又は診断上の前記有効成分b)を連続的に又は同時に塗布することを特徴とする請求項1〜7、及び請求項9のいずれか1項に記載の製剤の使用。
【請求項15】
ヒト及び動物に対して皮内的及び経皮的な塗布をすべく治療上及び美容上の製剤を製造するための請求項1〜7、及び請求項9のいずれか1項に記載の製剤の使用。
【請求項16】
ヒト及び動物に対する診断に適した製剤を製造するための、組成物a)、又は、請求項1〜7、及び請求項9のいずれか1項に記載の製剤の使用。
【請求項17】
治療上、美容上、又は診断上の有効成分b)と機能的に組み合わされ空間的又は物理的に分離された請求項1〜7に記載の組成物a)を含むキットオブパーツを有する物質又は梱包物。
【請求項18】
請求項1〜7にて規定した組成物を美容上の有効成分と混合し、該当するヒト又は動物の身体の皮膚に同時に塗布するか、又は、
前記組成物を美容上の有効成分と混合せず、該当するヒト又は動物の身体の皮膚に別々に続けて塗布する、
ヒト及び動物の身体を非治療的に処置するための方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−520837(P2012−520837A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500151(P2012−500151)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001742
【国際公開番号】WO2010/105842
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(510076155)バブルズ アンド ビヨンド ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】