説明

外科処置されるべき対象を照明するシステムと方法

【課題】目視と画像処理とに対する光源の影響を最適化し、かつ照明された対象を撮像するため、鏡面反射光が広範囲散乱光と比較して特有の偏光特性を有するということを利用したシステムを提供する。
【解決手段】システムは、偏光ビームで対象を照明するための偏光光源と、非偏光ビームで対象を照明するための偏光されていない光を放出する非偏光光源とを含む。検出器が、対象から反射されたビームからの光を受けるように配置される。偏光子が、対象からの鏡面反射を実質的に除去するように、かつ対象からの拡散反射の少なくとも一部分が通過することを可能にするように方向づけられる。偏光光源と非偏光光源と偏光子は、実行される処置の部分に応じて選択された偏光特性を有する光で対象を選択的に照明し、かつ該光を検出するように制御可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科処置されるべき対象を照明するシステムと方法に関し、特に、レーザ眼科手術処置中に照明特性を調整するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に反射が画像の重要部分をマスクする場合には、反射が画像処理に対して悪影響を与える可能性がある。例えば、眼科用装置では、瞳孔のような眼の特徴を検出して位置を突き止めることが必要である。十分な画像の鮮明さを得るためには典型的には1つまたは複数の照明源が必要とされる。こうした照明源が眼の画像の中に見えてしまう可能性があり、所望の特徴を突き止める際に問題を生じさせる可能性がある。例えば、レーザ屈折外科システムは、カメラの光軸の付近に照明源を配置する照明構成とすることができる。このことが、瞳孔の境界の付近の角膜からの反射を生じさせ、それゆえこの境界は検出が困難となり得る。照明源の反射のサイズが角膜表面の粗さのせいで増大するので、この問題は、眼上で角膜フラップが切断される場合に悪化する。しかし、照明源が光軸から遠く離れている場合には、患者に対する近づきやすさが低減し、ユーザの作業範囲も縮小する。
【0003】
レーザ手術システムの格別の目的は最大限の患者アクセスを実現することにあるので、予め決められた体積の中に照明源を配置することが望ましいと考えられており、この場合、反射が画像に影響を及ぼす可能性がある。しかし、屈折手術の別の目的は、拡張していない眼に対して手術を行うことであるが、この場合には瞳孔が小さい。スモールスポット屈折手術システムの場合には、眼を安定化させることが最良の結果を得るために重要である。拡張していない眼球を追跡するためには瞳孔サイズの測定が要求され、この場合には瞳孔の周囲の区域には邪魔があってはならない。大きな瞳孔の場合には、一部分だけが隠蔽される場合に、その瞳孔の大きな周囲長さが正確なサイズ化を可能にするので、多少の隠蔽が許容できる。しかし、小さい瞳孔は隠蔽される可能性があり、このことが邪魔の存在下における小さい瞳孔の追跡をさらに困難なものにする。本発明の目的のために、「小さい」から「大きい」への推移が約4mmで生じる。したがって、瞳孔の中心の4mm以内の画像において反射が生じないことが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、例えば、この処置の重要な部分の最中にユーザの視野に影響せずに、こうした反射の強度を減少させることによって、画像に対する反射の影響を減少させるシステムおよび方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、目視と画像処理とに対する光源の効果を最適化するための、および、照明された対象を撮像するためのシステムおよび方法に関する。このシステムは、鏡面反射光(輝き(glint))が広範囲散乱光に比較して特有の偏光属性を有するということを利用する。このシステムは、偏光ビームで対象を照明するために偏光された光を放出する偏光放出手段と、非偏光ビームで対象を照明するために偏光されていない光を放出する非偏光放出手段とを備えることが可能である。検出器が、対象から反射された偏光ビームと非偏光ビームとから光を受けるように配置されている。偏光子がこの検出器の上流にかつ対象の下流に配置可能であり、かつ、対象からの鏡面反射を実質的に除去するように、かつ、対象からの拡散反射の少なくとも一部分が偏光子を通過することを可能にするように方向づけられている。処置が行われる部分に応じて選択された偏光特性を有する光で対象を選択的に照明し、かつ、この光を検出するために、偏光放出手段と非偏光放出手段と偏光子とを制御するための手段が設けられている。
【0006】
動作の機構と方法との両方に関する本発明を特徴付ける特徴が、本発明のさらに別の目的と利点と共に、添付図面に関連付けて使用される以下の説明から、より適切に理解されるだろう。添付図面は例示と説明のためのものであって、本発明の範囲を定義することは意図されていないということが、明確に理解されるべきである。後述の説明が添付図面に関連付けて理解される時に、本発明によって実現されるこれらの目的と他の目的および本発明によって提供される利点とが、より完全に明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
これから、本発明の好ましい実施形態の詳細な説明を、図1と図2を参照しながら論じることにする。本発明のシステム10が、対象を照明するように配置されている第1および第2の光源11、12を備えることが可能である。この典型的な実施形態では、第1の光源11と第2の光源12は、少なくとも眼14の角膜13と、典型的には角膜13の周囲の区域とを照明するためのものである。図1と図2に概略的に示すように、システム10は、さらに、第1の光源11および第2の光源12と通信しているコントローラ15も含む。常駐している画像処理ソフトウェア17を有するプロセッサ16のような信号処理手段が検出器18と通信しており、この検出器18は眼14から反射された光を受け取るように配置されている。
【0008】
一実施形態では、第1の光源11は偏光ビーム19を放出するようになっており、このために、第1の偏光子20が第1の光源11の下流に配置されており、かつ、第2の偏光子21が検出器18の上流、かつ眼14の下流に配置されている。第2の偏光子21は、眼14からの鏡面反射を実質的に除去するように、かつ、眼14からの拡散反射の少なくとも一部分がその偏光子を通過することを可能にするように、方向づけられている。特定の実施形態における第1の偏光子20と第2の偏光子21は、1対の交差直線偏光子と、1対の円偏光子とから成るグループから選択されることが可能であるが、これらはこれに限定されるものではない。
【0009】
一実施形態では、第1の偏光子21と第2の偏光子22は、検出器18における非偏光の検出を可能にするように着脱自在に配置されている。このシステム10では、第1の光源11と第2の光源12は単体の装置(図1)を備えることが可能である。別の実施形態10′では、第1の光源11と第2の光源12は互いに別個の装置であり、かつ、第1の偏光子21と第2の偏光子22は実質的に据え置き型とすることが可能である(図2)。
【0010】
第1の光源11と第2の光源12のどちらか一方または両方は、これらの光源を起動するために、これらの光源の輝度を調整するために、または、眼14に対してこれらの光源を相対的に移動させるために、コントローラ15によって操作することができる。これに加えて、第1の光源11と第2の光源12は、可変的な分光組成または予め決められた分光組成を有することができる。
【0011】
本発明の方法の特別な実施形態は、角膜13上でのレーザ屈折手術を含む。この処置は典型的には複数の段階で行われ、異なる照明特性が各段階で最適となるだろう。例えば、当該技術分野で公知であるように、角膜フラップが、下にある基質(stroma)を露出させるために最初に切断される場合には、非偏光がそのフラップとヒンジとから反射し、眼追跡および画像処理システムに対して有害である可能性がある「輝き」の原因となる。しかし、この輝きは、フラップとヒンジとの位置を発見するために有用である。
【0012】
こうして、ハイブリッド型システム10、10′が、処置の異なる部分のために、および、さらには、ビーム19、23を受け取る異なるエンティティのために、偏光ビーム19と非偏光ビーム23の一方または両方を提供するように適合できる。拡大装置(ビューア)24を介して眼14を目視するユーザが、ヒンジを目視するために最初に非偏光ビーム23で照明された画像を目視し、次に輝きを減らすために偏光ビーム19に切り換えることを好むだろう。しかし、非偏光ビーム23で生成された画像から送られたデータにノイズが多いことがあり、したがって、画像処理ソフトウェア17のためには最適であるとは言えず、したがって、その処置中には偏光光源11からの照明を使用することが好ましいことがある。典型的には、画像処理ソフトウェア17は、さらに、ユーザによる目視のための表示装置25に画像を送ることも可能である。
【0013】
追加の制御が、検出器18に対する反射の配置を最適化するために、処置中に光源11、12が移動させられることを可能にすることによってさらに提供できる。
【0014】
別の可変的なパラメータが、ビーム19、23の一方または両方の波長組成のような他の照明特性を調整する能力を有することが可能である。このような制御は、例えば、処置の特定の部分の最中における緑色光を用いた血管の目視の増強を可能にし、一方、処置の他の部分の最中にはそうしないだろう。例えば、血管が2つの眼画像のアラインメントの際に使用されるが、フラップ切断の最中は増強された形で目視することは重要ではないだろう。別の例では、位置決めマーク(registration mark)が眼の上に形成される場合に、マーキングインクが、その視覚化を向上させるために照明ビーム19、23に対して最適化されることが可能な特定の予め決められた反射特性を有することが可能である。さらに別の例では、両方のタイプの照明19、23が、例えば、偏光反射に比較してより低い度合いではあるが、依然として輝きを目視するために、一方の輝度が他方の輝度とは異なる形で同時に使用されるだろう。
【0015】
上述の説明では、幾つかの用語が簡潔さと明瞭さと理解とのために使用されているが、こうした用語は本明細書で説明のために使用されており、かつ、広範囲に解釈されることが意図されているので、不必要な限定が従来技術の要件を越えてこれらの用語から含意されることはない。さらに、本明細書に例示されており説明されているシステムおよび方法の実施形態は例示のためのものであって、本発明の範囲はその構造および使用の厳密な詳細事項に限定されない。
【0016】
本発明と、本発明の好ましい実施形態の構成と動作と使用と、これによって得られる有利で新規かつ有用な結果とを説明してきたが、当業者には明らかな本発明の新規かつ有用な構成と、その妥当な機構的均等物とが、添付されている特許請求項で説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の典型的なシステムを示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態の典型的なシステムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科処置されるべき対象を照明するシステムであって、
偏光ビームによって対象を照明するために偏光された光を放出する偏光放出手段と、
非偏光ビームによって前記対象を照明するために偏光されていない光を放出する非偏光放出手段と、
前記対象から反射された前記偏光ビームと前記非偏光ビームとから光を受けるように配置された検出器と、
前記対象からの鏡面反射を実質的に除去するように、かつ、前記対象からの拡散反射の少なくとも一部分が通過することを可能にするように方向づけられる、前記検出器の上流にかつ前記対象の下流に配置可能な偏光子と、
実行される処置の一部分に応じて選択された偏光特性を有する光で前記対象を選択的に照明するため、および、該光を検出するための、前記偏光放出手段、前記非偏光放出手段および前記偏光子とを制御する手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記偏光放出手段と前記偏光子は、1対の交差直線偏光子と1対の円偏光子とから成るグループから選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記反射された偏光ビームが前記検出器に到達することを防止する手段を備え、かつ、前記偏光子は、前記検出器における非偏光の光の検出を可能にするために着脱自在に配置される請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記検出器から検出されたビームデータを受けるために前記検出器と通信し、かつ、前記対象に対し所望の位置に前記偏光ビームと前記非偏光ビームのそれぞれを保持するように前記偏光放出手段と前記非偏光放出手段の少なくとも一方を制御するために前記制御手段と通信する、信号処理手段をさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記偏光放出手段と前記非偏光放出手段の少なくとも一方は、予め決められた分光組成を有する前記対象の一部分の撮像を選択的に増強するために、前記偏光ビームと前記非偏光ビームのそれぞれの分光組成を選択する手段を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記偏光放出手段と前記非偏光放出手段の少なくとも一方は、前記偏光ビームと前記非偏光ビームのそれぞれの輝度を調整する手段を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記偏光放出手段と前記非偏光放出手段の少なくとも一方は、前記偏光ビームと前記非偏光ビームのそれぞれの配置を調整する手段を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
常駐している画像処理ソフトウェアを有する、前記検出器と通信しているプロセッサをさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記照明された対象のリアルタイム画像をユーザに伝送するように配置されている拡大装置をさらに備え、かつ、前記制御手段は前記ユーザの制御下の装置を備える請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記画像処理ソフトウェアによって処理された画像をユーザに対して表示するための、前記プロセッサと通信している表示装置をさらに備える請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御手段は、実行される処置部分を示す入力を受け、前記処置部分に最適である照明特性を決定するため、前記最適の照明特性を達成するため前記偏光放出手段と前記非偏光放出手段とを制御する、前記プロセッサ上に常駐しているソフトウェアルーチンを備える請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
外科処置されるべき対象を照明する方法であって、
偏光ビームで対象を照明するために偏光された光を放出する段階と、
非偏光ビームで対象を照明するために偏光されていない光を放出する段階と、
前記対象から反射された前記偏光ビームと前記非偏光ビームとからの光を検出する段階と、
要求に応じて、前記対象からの鏡面反射を実質的に除去するために、かつ、前記対象からの拡散反射の少なくとも一部分が通過することを可能にするために、前記検出された光を偏光する段階と、
実行される処置の一部分に応じて選択された偏光特性を有する光で前記対象を選択的に照明し、かつ、該光を検出するために、前記偏光ビームと前記非偏光ビームと前記偏光段階とを制御する段階と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記偏光放出段階と前記偏光段階は、1対の交差直線偏光子と1対の円偏光子とから成るグループから選択される1対の偏光子を使用して実行される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記制御段階は、前記検出器における非偏光の検出を可能にするために前記1対の偏光子を取り除く段階を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記検出された光からの検出ビームデータを受ける段階と、前記対象に対する所望の位置に前記偏光ビームと前記非偏光ビームのそれぞれを保持するために前記偏光ビームと前記非偏光ビームの少なくとも一方を制御する段階と、をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記偏光放出段階と前記非偏光放出段階の少なくとも一方は、予め決められた分光組成を有する前記対象の一部分の撮像を選択的に増強するために、前記偏光ビームと前記非偏光ビームのそれぞれの分光組成を選択する段階を含む請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記偏光放出段階と前記非偏光放出段階の少なくとも一方は、前記偏光ビームと前記非偏光ビームのそれぞれの輝度を調整する段階を含む請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記偏光放出段階と前記非偏光放出段階の少なくとも一方は、前記偏光ビームと前記非偏光ビームのそれぞれの配置を調整する段階を含む請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記光検出段階からのデータを画像処理ソフトウェアに伝送する段階と、前記データを処理する段階と、前記制御段階のために前記偏光特性を自動的に決定するために前記データを使用する段階と、をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記照明された対象のリアルタイム画像をユーザに伝送する段階をさらに含み、かつ、前記制御段階は少なくとも部分的に前記ユーザによって実行される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記画像処理ソフトウェアによって処理された画像をユーザに対して表示する段階をさらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記制御段階は、実行される処置部分を示す入力をソフトウェアルーチンの中に受ける段階と、前記処置部分に最適である照明特性を自動的に決定する段階と、前記最適の照明特性を達成するために前記偏光放出段階と前記非偏光放出段階とを制御する段階と、を含む請求項19に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−181676(P2007−181676A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−345945(P2006−345945)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(504230051)アルコン リフラクティブホライズンズ,インコーポレイティド (12)