説明

外科手術用移植物

【課題】移植前に巻かれ得るかまたは折り畳まれ得、そしてインサイチュでの配置のために移植の際に巻きを解かれ得るかまたは広がり得る、ヘルニア修復のための移植物を提供する。
【解決手段】ポリジオキサノン、ポリラクチド、ポリ(トリメチレンカーボネート)およびこれらのコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの形状記憶フィラメント120を含む複数のフィラメントであって、形状記憶フィラメントが、外科手術用メッシュ110を第一の構成から第二の構成へと変形させる、複数のフィラメントを備える、外科手術用メッシュ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2010年5月14日に出願された米国仮出願番号61/334,664の利益および優先権を主張する。この米国仮出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、外科手術用移植物に関し、そしてより特定すると、ヘルニア修復のために有用な、形状記憶材料を含有するメッシュを備える外科手術用移植物に関する。ある実施形態において、この形状記憶材料は、このメッシュを第一の構成と第二の構成との間で変形させ得る。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
ヘルニアとは、組織または器官を通常は収容している筋肉組織または膜の損傷部を通しての、この組織または器官の一部分の突出である。ヘルニアは、原理的には、脱出した組織を押し戻し、すなわち、「適正部位へ戻し」、次いで、損傷した筋肉組織における欠損部を、例えば、ヘルニアパッチなどの移植物によって補強することによって、修復される。この移植物は、欠損部を覆って配置されても(前修復)、欠損部の下側に配置されても(後修復)、いずれでもよい。
【0004】
腹腔鏡手順において使用される場合、この移植物自体が、カニューレを通しての送達のために巻かれ得るか、折り畳まれ得るか、またはつぶされ得、これによって、絡まったり、移植部位で巻きを解くことが困難になったりし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移植前に巻かれ得るかまたは折り畳まれ得、そしてインサイチュでの配置のために移植の際に巻きを解かれ得るかまたは広がり得る、ヘルニア修復のための移植物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
ポリジオキサノン、ポリラクチド、ポリ(トリメチレンカーボネート)およびこれらのコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの形状記憶フィラメントを含む複数のフィラメントであって、該形状記憶フィラメントが、外科手術用メッシュを第一の構成から第二の構成へと変形させる、複数のフィラメント、
を備える、外科手術用メッシュ。
(項目2)
上記形状記憶フィラメントが、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを含む、上記項目に記載の外科手術用メッシュ。
(項目3)
上記ポリジオキサノンが、上記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして上記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用メッシュ。
(項目4)
上記形状記憶フィラメントが、ポリ(トリメチレンカーボネート)とポリラクチドとのブロックコポリマーを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用メッシュ。
(項目5)
上記ポリ(トリメチレンカーボネート)が、上記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして上記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用メッシュ。
(項目6)
グリップ部材をさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用メッシュ。
(項目7)
上記形状記憶フィラメントが、上記メッシュを上記第一の構成から上記第二の構成へと、約37℃で変形させる、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用メッシュ。
(項目8)
上記第一の構成が、巻かれた構成、折り畳まれた構成、つぶされた構成、丸まった構成、畳まれた構成、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用メッシュ。
(項目9)
上記第二の構成が、巻きを解かれた構成、丸まりを解かれた構成、折り畳みを解かれた構成、畳みを解かれた構成、つぶれを解かれた構成、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用メッシュ。
(項目10)
上記第二の構成がほぼ平坦である、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用メッシュ。
(項目11)
上記複数のフィラメントが、編成されるか、編組されるか、製織されない(不織)か、または製織される、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用メッシュ。
(項目12)
生物活性剤をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用メッシュ。
(項目13)
上記メッシュがモノフィラメントメッシュまたはマルチフィラメントメッシュを備える、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術用メッシュ。
(項目14)
外科手術用メッシュを作製する方法であって、該方法は、
少なくとも1つの形状記憶フィラメントを複数の糸に組み込む工程;
該形状記憶フィラメントを含有する該複数の糸を外科手術用メッシュに組み込む工程;および
該メッシュを第一の構成と第二の構成との間で変形させるように、該少なくとも1つの形状記憶フィラメントを条件付けする工程、
を包含する、方法。
(項目15)
上記条件付けする工程が、上記メッシュを第一の構成で鋳型に挿入する工程、および該メッシュを約20℃〜約55℃の永続温度に加熱する工程をさらに包含する、上記項目に記載の方法。
(項目16)
上記第一の構成が、一般に巻かれた構成、つぶされた構成、丸まった構成、折り畳まれた構成、または畳まれた構成を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目17)
上記第一の構成から上記第二の構成へ上記メッシュがインサイチュで変形する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目18)
上記第二の構成が、一般に巻きを解かれた構成、つぶれを解かれた構成、丸まりを解かれた構成、折り畳みを解かれた構成、畳みを解かれた構成、または平坦な構成を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目19)
上記少なくとも1つの形状記憶フィラメントが、上記第二の構成において永続的形状を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目20)
上記メッシュが、二次元構成または三次元構成の複数の糸を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0007】
(摘要)
外科手術用移植物は、外科手術用メッシュを第一の構成と第二の構成との間で変形させ得る少なくとも1つの形状記憶ポリマーを含有する、外科手術用メッシュを備える。
【0008】
(要旨)
本開示は、複数のフィラメントを含有する外科手術用メッシュを含み、これらの複数のフィラメントは、ポリジオキサノン、ポリラクチド、ポリ(トリメチレンカーボネート)およびこれらのコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの形状記憶フィラメントを含有し、この形状記憶フィラメントは、このメッシュを第一の構成から第二の構成へと変形させる。ある実施形態において、この形状記憶フィラメントは、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有し、このポリジオキサノンは、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し得、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在し得る。他の実施形態において、この形状記憶フィラメントは、ポリ(トリメチレンカーボネート)とポリラクチドとのブロックコポリマーを含有し、このポリ(トリメチレンカーボネート)は、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し得、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在し得る。
【0009】
このメッシュの第一の構成は、巻かれた構成、折り畳まれた構成、つぶされた構成、丸まった構成および/または畳まれた構成からなる群より選択され得る。第二の構成は、巻きを解かれた構成、丸まりを解かれた構成、折り畳みを解かれた構成、畳みを解かれた構成、および/またはつぶれを解かれた構成からなる群より選択され得る。ある実施形態において、この第二の構成は、ほぼ平坦であり得る。この形状記憶フィラメントは、このメッシュをこの第一の構成からこの第二の構成へと、インサイチュで、そしていくつかの実施形態においては、約37℃で、変形させる。
【0010】
ある実施形態において、このメッシュは、一緒に編組され得るか、編成され得るか、不織であり得るか、または製織され得る、複数のフィラメントを備え得る。このメッシュはさらに、グリップ部材または生物活性剤を備え得る。さらに、このメッシュは、モノフィラメントメッシュであってもマルチフィラメントメッシュであってもよい。
【0011】
さらに、外科手術用メッシュを作製する方法が、本明細書中に開示される。この方法は、少なくとも1つの形状記憶フィラメントを複数の糸に組み込む工程;この形状記憶フィラメントを含有する複数の糸を外科手術用メッシュに組み込む工程;およびこのメッシュを第一の構成と第二の構成との間で変形させるように、この少なくとも1つの形状記憶フィラメントを条件付けする工程を包含する。この条件付けする工程は、このメッシュを第一の構成で鋳型に挿入する工程、およびこのメッシュを約20℃〜約40℃の永続温度に加熱する工程をさらに包含し得る。この第一の構成は、一般に巻かれた構成、つぶされた構成、丸まった構成、折り畳まれた構成または畳まれた構成であり得、そしてこの第二の構成は、一般に巻きを解かれた構成、つぶれを解かれた構成、丸まりを解かれた構成、折り畳みを解かれた構成、畳みを解かれた構成、または平坦な構成であり得る。
【0012】
さらに、本開示のメッシュは、二次元構成または三次元構成の複数の糸を含み得る。
【0013】
本開示の種々の実施形態が、選択された実施形態および添付の図面に関連して、以下でより詳細に議論される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、移植前に巻かれ得るかまたは折り畳まれ得、そしてインサイチュでの配置のために移植の際に巻きを解かれ得るかまたは広がり得る、ヘルニア修復のための移植物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、本開示の原理に従う、第一の構成の外科手術用メッシュの1つの実施形態の斜視図を示す。
【図1B】図1Bは、第二の構成の、図1Aの外科手術用メッシュの斜視図を示す。
【図2A】図2Aは、本開示の原理に従う外科手術用メッシュの別の実施形態の斜視図を図示する。
【図2B】図2Bは、第一の構成の、図2Aの外科手術用メッシュの側面図を示す。
【図2C】図2Cは、第二の構成の、図2Aの外科手術用メッシュの側面図を示す。
【図3A】図3Aは、本開示の原理に従う外科手術用メッシュの別の実施形態の斜視図を示す。
【図3B】図3Bは、グリップ部材が基材に対して実質的に平行に位置している、図3Aの外科手術用メッシュの側面図を示す。
【図3C】図3Cは、グリップ部材が基材から外向きに延びている、図3Aの外科手術用メッシュの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示に従う移植物は、第一の構成と第二の構成との間で変形し得る少なくとも1つの形状記憶材料を有する、生体適合性メッシュを備える。ある実施形態において、この形状記憶材料は、メッシュと織り混ぜられ得る。具体的には、この形状記憶材料は、このメッシュを、第一の、巻かれた、つぶされた、丸まった、畳まれた、そして/または折り畳まれた構成から、第二の、巻きを解かれた、畳みを解かれた、ほぼ平坦な構成へと変形させる。
【0017】
この生体適合性メッシュは、組織の欠損部を補強するために充分な強度を有する任意の形状であり得る。いくつかの非限定的な例としては、編成繊維構造体、編組繊維構造体、製織繊維構造体、または不織繊維構造体が挙げられる。これらの種々の形態は、単独で使用されても、互いに組み合わせて使用されてもよい。さらに、このメッシュは、多孔性または非多孔性の、フィルム、発泡体、またはゲルシートと合わせられ得る。組織欠損部の一時的な支持(すなわち、堅さ)が必要とされる場合、生体吸収性材料が、このメッシュの全体または一部分を形成するために使用され得る。組織欠損部の永続的な支持が必要とされる場合、このメッシュは、その全体または一部分が、非生体吸収性材料から作製され得る。生体吸収性材料と非生体吸収性材料との組み合わせもまた、このメッシュを形成するために使用され得る。
【0018】
本明細書中に記載される移植物は、任意の生体適合性材料、生体吸収性材料、または非生体吸収性材料から製造され得る。本明細書中で使用される場合、用語「生分解性」は、生体吸収性材料と生体再吸収性材料との両方を包含する。生分解性とは、その物質が身体条件下で分解するかまたは構造的一体性を失うか(例えば、酵素分解、加水分解)あるいは身体内の生理学的条件下で(物理的もしくは化学的に)分解(例えば、溶解)し、その結果、その分解生成物が身体により排出可能または吸収可能になることを意味する。
【0019】
メッシュを形成するために使用され得る生体吸収性材料のいくつかの非限定的な例としては、ポリマー(例えば、脂肪族ポリエステル;ポリアミド;ポリアミン;ポリアルキレンオキサレート;ポリ(酸無水物);ポリアミドエステル;コポリ(エーテル−エステル);ポリ(カーボネート)(チロシン由来のカーボネートが挙げられる);ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、およびポリ(ヒドロキシブチレート));ポリイミドカーボネート;ポリ(イミノカーボネート)(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)など);ポリオルトエステル;ポリオキサエステル(アミノ基を含むものが挙げられる);ポリホスファゼン;ポリ(プロピレンフマレート);ポリウレタン;ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニソール、ポリアスピリン、およびタンパク質治療剤);生物学的に修飾された(例えば、タンパク質、ペプチド)生体吸収性ポリマー);およびこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、ならびに組み合わせが挙げられる。
【0020】
より具体的には、脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドが挙げられる);グリコリド(グリコール酸が挙げられる);ε−カプロラクトン;p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体;δ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシブチレート;ヒドロキシバレレート;1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体である1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンが挙げられる);1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;エチレンカーボネート;エチレンオキサレート;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,8−ジオキサビシクロオクタン(dioxabicycloctane)−7−オンのホモポリマーおよびコポリマー;ならびにこれらのポリマーブレンドおよびコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
他の適切な生分解性ポリマーとしては、ポリ(アミノ酸)(コラーゲン(I、IIおよびIII)、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、およびアルブミンなどのタンパク質が挙げられる);ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド(RGD);多糖類(例えば、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、およびセルロース);グリコサミノグリカン;ガット;ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コラーゲンは、本明細書中で使用される場合、天然コラーゲン(例えば、動物由来のコラーゲン、ゼラチン化コラーゲン)、または合成コラーゲン(例えば、ヒト組換えコラーゲンもしくは細菌組換えコラーゲン)を包含する。
【0022】
さらに、合成により修飾された天然ポリマー(例えば、セルロース誘導体および多糖類誘導体(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサンが挙げられる))が利用され得る。適切なセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。これらは本明細書中でまとめて、ある実施形態において、「セルロース」と称され得る。
【0023】
適切な非生体吸収性材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン(アタクチック、アイソタクチック、シンジオタクチック、およびこれらのブレンドが挙げられる));ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;超高分子量ポリエチレン;ポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマー;ポリイソブチレンとエチレン−αオレフィンとのコポリマー;フッ素化ポリオレフィン(例えば、ポリフルオロエチレン、ポリフルオロプロピレン、フルオロPEG、およびポリテトラフルオロエチレン);ポリアミド(例えば、ナイロン、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12、およびポリカプロラクタム);ポリアミン;ポリイミン;ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレート);ポリエーテル;ポリブタエステル;ポリテトラメチレンエーテルグリコール;1,4−ブタンジオール;ポリウレタン;アクリルポリマー;メタクリル類;ハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル);ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテル);ポリハロゲン化ビニリデン(例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデン);ポリクロロフルオロエチレン;ポリアクリロニトリル;ポリアリールエーテルケトン;ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族(例えば、ポリスチレン);ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル);ビニルモノマー同士のコポリマーおよびビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー(例えば、エチレン−メタクリル酸メチルコポリマー);アクリロニトリル−スチレンコポリマー;ABS樹脂;エチレン−酢酸ビニルコポリマー;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリホスファジン;ポリイミド;エポキシ樹脂;アラミド;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;スパンデックス;シリコーン;ならびにこれらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられる。さらに、非生分解性のポリマーおよびモノマーが、互いに組み合わせられて、フィラメントのコアを作製し得る(例えば、コア−シース構成を有するフィラメント)。このような生体適合性ポリマー材料または生体適合性コポリマー材料のコポリマー(ブロックコポリマーまたはランダムコポリマー)、ならびに混合物およびブレンドもまた有用であり得る。
【0024】
本明細書中に記載されるメッシュは、絡み合わされたフィラメントから作製された多孔性布を含み得る。これらのフィラメントは、これらのフィラメントが互いに交差し合って共通の交差点を作製する部分を作製する様式で、水平方向および垂直方向に延び得る。いくつかの実施形態において、これらのフィラメントは、編成されて二次元メッシュまたは三次元メッシュを形成し得る。これらのフィラメントは、モノフィラメントであってもマルチフィラメントであってもよく、そしていくつかの実施形態においては、複数のマルチフィラメントが合わせられて、糸を形成し得る。このメッシュ基材は、ヘルニア修復に適した任意のサイズおよび/または形状に構成され得ることが想定される。これらのフィラメントは、コア/シース構成を有してもよい。
【0025】
本開示において使用するのに適したメッシュとしては、例えば、コラーゲン複合メッシュ(例えば、PARIETEXTM Composite Mesh(Covidienとして事業実施中のTyco Healthcare Group LGから市販されている))が挙げられる。PARIETEXTM Composite Meshは、再吸収性コラーゲンフィルムが片面に結合した、三次元ポリエステル織物である。別の適切なメッシュとしては、Parietex ProgripTM自己固定メッシュ(これもまた、Covidienから市販されている)が挙げられる。Parietex ProgripTMは、ポリ乳酸(PLA)微小グリップを備えるポリエステルメッシュである。他の適切なメッシュとしては、PARIETENE(登録商標)、PERMACOLTM、PARIETEXTM、SURGIPROTM(全て、Covidienから市販されている);PROLENETM(Ethicon,Inc.から市販されている);MARLEX(登録商標)、DULEX(登録商標)、3D MAX(登録商標)メッシュ、PERFIX(登録商標)栓、VENTRALEX(登録商標)、およびKUGEL(登録商標)パッチ(全て、C.R.Bard,Inc.から市販されている);PROLITETM、PROLITE ULTRATM(全て、Atrium Medicalから市販されている);COMPOSIX(登録商標)、SEPRAMESH(登録商標)、およびVISILEX(登録商標)(全て、Davol,Inc.から市販されている);ならびにDUALMESH(登録商標)、MYCROMESH(登録商標)、およびINFINIT(登録商標)メッシュ(全て、W.L.Goreから市販されている)の名称で販売されているものが挙げられる。さらに、本開示の範囲内および文脈内のメッシュは、生物学的材料(例えば、同種移植片、自家移植片、および異種移植片)を含み得る。
【0026】
本開示の1つの実施形態によれば、Parietex Pro−gripTM自己固定メッシュが使用され得る。Pro−gripTMメッシュは、モノフィラメントシートを有する編物を備え、この編物の片面に、このシートに対して垂直に突出するスパイク付き/棘付きのグリップ部材を形成する。これらのグリップ部材の各々は、実質的に直線状の本体を有し、そしてこの本体の自由端に、この本体の幅より大きい幅のヘッドを有する。これらのグリップ部材は、フックとして機能し、これらのフックは、別のプロテーゼ布(同じプロテーゼに属するかまたは属さない)に、あるいは生物学的組織に直接のいずれかで、固定されることが可能である。特定の実施形態において、この布またはメッシュは、このメッシュの少なくとも1つの表面に、グリップ部材を備え得る。
【0027】
メッシュは、繊維性構造体を形成するのに適切な任意の方法(編成、製織、ボビンレース、タッチング、不織技術、湿式スピニング、電子スピニング、ゲルスピニング、押出し、および共押出しなどが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して、形成され得る。メッシュを作製するための適切な技術は、当業者の知識の範囲内である。
【0028】
ある実施形態において、二次元メッシュ基材は、米国特許第7,331,199号(その全内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように形成され得る。他の実施形態において、メッシュ基材は、三次元の布を編むことにより形成され得る。ある実施形態において、三次元メッシュ基材は、米国特許第7,021,086号、米国特許第6,596,002号、および米国特許第7,331,199号(これらの全内容は、本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
【0029】
本開示のメッシュは、形状記憶ポリマーを含有する複数のフィラメントを含む。形状記憶ポリマーとは、フィラメントなどの物体に形成されると、機械的な力によって一時的に変形し得、次いで、エネルギーにより刺激されると元の形状に戻らされ得る、ポリマーのクラスである。形状記憶ポリマーは、その微小構造において、少なくとも2つの相分離した微小ドメインによって、形状記憶特性を示す。第一のドメインは、硬い、共有結合したかまたは他の様式で鎖の動きが制限された構造体からなり、このドメインは、この物体の元の形状を保持するためのアンカーとして働く。第二のドメインは、変更可能な柔らかい構造体であり、このドメインは、変形し得、次いで固定されて、二次形状または一時的形状を得ることができる。
【0030】
熱で刺激される形状記憶ポリマーの場合、転移温度(TTrans)が存在し、この温度において、加熱中に形状変化が起こる。従って、これらの形状記憶ポリマーは、分子レベルで材料特性を変更すること、および加工パラメータを変化させることによって、誂えられ得る。
【0031】
ポリマーフィラメントは、メッシュの存在下または非存在下で、形状記憶ポリマーとして条件付けされ得ることが想定される。ある実施形態において、これらの形状記憶フィラメントは、メッシュに組み込まれる前に条件付けされ得る。他の実施形態において、これらの形状記憶フィラメントは、メッシュに組み込まれた後に条件付けされ得る。なお他の実施形態において、これらの形状記憶フィラメントは、別の布(例えば、フラップメッシュ基材)に取り付けられ得、そしてこの形状記憶フィラメントを備える別の布が、任意の適切な方法(接着剤および縫い付けが挙げられるが、これらに限定されない)によって、生体適合性基材に取り付けられ得る。
【0032】
より具体的には、これらの形状記憶ポリマーは、一般に畳みを解かれた構成、巻きを解かれた構成、または折り畳みを解かれた構成に製造されたフィラメントを含み得る。すなわち、この形状記憶モノフィラメントの永続的形状は、生体適合性基材(例えば、メッシュ)が、組織に対して実質的に平坦に重なることを可能にするように構成される。これらの巻きを解かれたポリマーフィラメントは、このポリマーのガラス転移温度(T)より高い温度まで加熱され得、この加熱により、このポリマーは柔軟に、可撓性になり、そして成形がより容易になる。Tより高温である間に、これらの巻きを解かれたポリマーフィラメントは、巻かれた構成または折り畳まれた構成に再構成され得る。これらの再構成された、巻かれたかまたは折り畳まれたポリマーフィラメントは、次いで、このポリマーのTより低い温度まで冷却されて、これらのフィラメントを巻かれた/折り畳まれた構成(すなわち、一時的形状)に維持し得る。このような実施形態において、これらの巻かれた/折り畳まれたポリマーフィラメントは、適切な外部刺激(例えば、所定のポリマーのTより高い温度への温度変化)に曝露されるとその永続的形状(すなわち、巻きを解かれた/折り畳みを解かれた構成)に戻るように、条件付けされ得る。このフィラメントは、一時的形状でメッシュに組み込まれ得ることが想定される。例えば、この形状記憶ポリマーは、二次元または三次元のアーキテクチャのメッシュに、編成、製織、または編組され得る。
【0033】
あるいは、成形プロセスが、本開示のフィラメントを製造するために利用され得る。プラスチック成形方法としては、溶融成形、溶液成形、射出成形、押出し成形、および圧縮成形が挙げられるが、これらに限定されない。フィラメントは、メッシュを作製するために組み合わせられ得、これらのフィラメントにはまだ、形状記憶特性が付与されていない。このメッシュは、第一の構成で鋳型に挿入され得、この第一の構成は、巻かれ得るか、つぶされ得るか、畳まれ得るか、折り畳まれ得るか、または他の様式で絡まされ得る。一旦、適切な寸法を有する鋳型に入れられると、メッシュを形成するために使用されるポリマー材料は、特定の温度(永続温度(Tperm)と称され、この温度は、ある実施形態において、フィラメントを形成するために利用される形状記憶ポリマー材料のTより高くともよい)まで加熱され得る。このメッシュの加熱は、例えば、約40℃〜約180℃、ある実施形態において、約20℃〜約55℃が挙げられる適切な温度で、約2分間〜約60分間、ある実施形態において、約15分間〜約20分間であり得、一時的な形状および寸法を与える。次いで、このメッシュは、この鋳型から取り出され得、形状記憶特性がこれらのフィラメントに付与された状態で、第一の構成に硬化させられ得る。体温に達すると、このメッシュは巻きを解かれるかまたは折り畳みを解かれて第二の構成になり、組織表面に対して実質的に平坦に重なる。
【0034】
予め記憶された形状で成形されたメッシュの変形処理のための温度は、亀裂を生じさせることなく容易な変形を可能にする温度であり、形状記憶のために採用される温度(例えば、Tperm)を超えるべきではない。永続的形状記憶のための温度を超える温度での変形処理は、この物体に、新たな変形後の形状を記憶/プログラムさせ得る。
【0035】
所望の形状を有するフィラメントが形成された後に、このフィラメントは、Ttransより高い温度で変形させられて、代替の一時的形状を得ることができる。変形に適した温度は、利用される形状記憶ポリマーに依存して変わるが、一般に、そのポリマーの転移温度(Ttrans)より高温であり得るが、Tpermより低温であり得る。ある実施形態において、形状記憶ポリマーは、そのTpermから、より低い温度(Ttransより高温なままである)まで冷却され得、そしてある実施形態においては手でおよび/または機械的手段によって、変形させられ得る。他の実施形態において、このフィラメントは、室温(約20℃〜約25℃)で変形させられて、その一時的形状を得ることができるが、この温度は、使用される特定のポリマーに依存して異なり得る。次いで、このフィラメントは、このフィラメントを形成するために利用される材料のTtrans未満の温度まで冷却され得、この時点で、本開示のフィラメントは、メッシュに組み込まれ得る。Ttransは通常、室温より高温であるので、室温まで冷却することは、一時的形状でロックするのに充分であり得る。このフィラメントの形状をその一時的形状に維持する目的で、本開示の形状記憶メッシュは、この一次形状への変形を引き起こさない温度で保存されるべきである。
【0036】
一旦、この物体がTTransより高温であるTまで加熱されると、そのソフトセグメントが軟化し、そして弛緩してその元の構成に戻り、そしてその物体は、この形状記憶材料がTpermに達すると、その一次形状または元の形状(本明細書中で時々、その永続的形状と称される)まで戻る。
【0037】
グリップ部材を形作るために利用され得る適切な形状記憶ポリマー材料としては、ポリウレタン;ポリ(スチレン−ブタジエン)ブロックコポリマー;ポリノルボルネン;カプロラクトン;ジオキサノン;ジオールエステル(オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオールが挙げられる);乳酸;ラクチド;グリコール酸;グリコリド;エーテル−エステルジオール(オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールが挙げられる);カーボネート(トリメチレンカーボネートが挙げられる);およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。ある実施形態において、形状記憶ポリマーは、異なる熱的特性を有する2つの成分のコポリマー(オリゴ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレートとアクリル酸ブチル(ポリ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート−ポリ(アクリル酸n−ブチル)が挙げられる)、またはジオールエステルとエーテル−エステルジオール(例えば、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマー)が挙げられる)であり得る。これらのマルチブロックオリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマーは、線状の鎖に一緒に連結された2つのブロックセグメント(すなわち、「ハード」セグメントおよび「スイッチ」セグメント)を有する。このような材料は、例えば、Lendlein,「Shape Memory Polymers−Biodegradable Sutures」,Materials World,第10巻,第7号,29−30頁(2002年7月)に開示されており、その全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0038】
他の実施形態において、材料のブレンドが形状記憶ポリマー材料として利用され得、これらの形状記憶ポリマー材料としては、乳酸および/またはグリコール酸、これらのホモポリマーまたはこれらのコポリマーとブレンドされたウレタン、ならびにカプロラクトンとブレンドされたアクリレート(例えば、ポリカプロラクトンジメタクリレートポリ(アクリル酸ブチル)ブレンド)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
これらの形状記憶ポリマーならびにこれらを用いて永続的形状および一時的形状を形成するための方法の他の例は、Lendleinら,「Shape Memory Polymers as Stimuli−Sensitive Implant Materials」,Clinical Hemorheology and Microcirculation 32(2005)105−116、およびLendleinら,「Biodegradable,Elastic Shape−Memory Polymers for Potential Biomedical Applications」,Science,第269巻(2002)1673−1676に記載されており、これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0040】
以下の表1は、形状記憶効果を示す組成物をさらに説明する。各組成物のブロックコポリマーは、アニーリングされたワイヤの形式であり、示されるソフトセグメントおよびハードセグメントを有し、ガラス転移温度(T)は、示差走査熱量分析により、TTransに等しいと測定された。
【0041】
【表1】

表1のコポリマーは、Tに近付く場合に部分的なシフトを起こし得、そしてTTransは、これらの材料が水溶液中にある場合に低下し得る。これらのポリマーは水の吸収およびバルク加水分解により分解するので、ポリマーマトリックスに浸入する水分子が可塑剤として働き得、乾燥空気中においてよりも低温で、ソフトセグメントを軟化させ得る。従って、水溶液中でTTrans低下を示すポリマーは、(例えば、輸送中および保存中の)乾燥状態での温度変化(excursion)の間一時的形状を維持し得、そして移植の際に、体温でその永続的形状に形状シフトし得る。
【0042】
従って、ある実施形態において、この形状記憶ポリマーは、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有し得、このポリジオキサノンは、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約15mol%〜約19mol%の量で存在し、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約81mol%〜約85mol%の量で存在する。他の実施形態において、この形状記憶ポリマーは、トリメチレンカーボネートとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有し得、このトリメチレンカーボネートは、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約15mol%〜約19mol%の量で存在し、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約81mol%〜約85mol%の量で存在し得る。
【0043】
Transは、ブロックセグメントのモル比、ポリマーの分子量、およびハードセグメントを形成させる時間を変化させることによって、誂えられ得ることが想定される。ある実施形態において、TTransは、種々の量の、ソフトセグメントドメインの低分子量オリゴマーを、コポリマーにブレンドすることにより誂えられ得る。このようなオリゴマーは、ソフトドメインに分離し得、そして、TTransの下方シフトを起こすための可塑剤として働き得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、グリップ部材は、形状記憶材料から作製され得る。適切な形状記憶材料としては、形状記憶ポリマーおよび形状記憶合金が挙げられる。本発明の移植物のグリップ部材として有用なフィラメントに形成され得る、種々の形状記憶ポリマーおよび形状記憶合金としては、本明細書中に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
同様に、他の実施形態において、電気的に活性なポリマー(電気活性ポリマーとしてもまた公知であり、電気の印加の際にその構成を変更し得る)が、体内にメッシュを固定するようにグリップ部材を形作るために利用され得る。電気活性ポリマーの適切な例としては、ポリ(アニリン)、置換ポリ(アニリン)、ポリカルバゾール、置換ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリ(ピロール)、置換ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、置換ポリ(チオフェン)、ポリ(アセチレン)、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(エチレンジオキシピロール)、ポリ(p−フェニレンビニレン)など、または上記電気活性ポリマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。上記電気活性ポリマーのブレンドまたはコポリマーまたは複合体もまた、使用され得る。
【0046】
エネルギー(例えば、熱)を与える際に形状記憶材料が起こし得る形状の変化と同様に、ある実施形態において、電気活性ポリマーは、低電圧電源(例えば、バッテリ)からの電気の印加の際に、形状変化を起こし得る。電気はまた、ある実施形態において、ニチノールなどの形状記憶合金の形状の変化を促進するために利用され得る。このような変化を起こすために印加され得る電気の適切な量は、利用される電気活性ポリマーまたは形状記憶合金と共に変わるが、約5ボルト〜約30ボルト、ある実施形態において、約10ボルト〜約20ボルトであり得る。印加の結果として、電気活性ポリマーから構成されたグリップ部材の形状が、メッシュを切開の部位で組織にグリップし得るグリップ構造へと変化する。
【0047】
形状記憶合金は、生体適合性メッシュ基材を形成するために使用され得るフィラメントに紡糸され得る。適切な材料としては、ニチノール(NiTi)、CuZnAl、CuAlNi、およびFeNiAlが挙げられるが、これらに限定されない。形状記憶合金からフィラメントを形成するための方法は、当業者の知識の範囲内である。
【0048】
電気活性ポリマーは、永続的形状および一時的形状との用語が形状記憶ポリマーに関連して上に記載された場合と同様の永続的形状および一時的形状を有さないが、本明細書中で使用される場合、用語「永続的形状」は、電気活性ポリマーに適用される場合、ある実施形態において、電気活性ポリマーが電気の印加の際に採用する形状をいい得、そして用語「一時的形状」は、電気活性ポリマーに適用される場合、ある実施形態において、電気活性ポリマーが電気の非存在下で採用する形状をいい得る。
【0049】
他の実施形態において、この形状記憶ポリマーは、光活性化形状記憶ポリマーであり得る。光活性化形状記憶ポリマー(LASMP)は、光架橋および光切断のプロセスを使用して、ガラス転移温度(T)を変化させ得る。光架橋は、1つの波長の光を使用することにより達成され得、一方で、第二の波長光は、この光架橋した結合を可逆的に切断する。達成される効果は、この材料がエラストマーと硬質ポリマーとの間で可逆的に切り替えられ得ることであり得る。光は温度を変化させないかもしれないが、材料内での架橋密度を変化させ得る。例えば、シンナム基(cinnamic group)を含むポリマーは、UV光照射(>260nm)によって所定の形状に固定され得、次いで、異なる波長(<260nm)のUV光に曝露されると、その元の形状を回復する。感光性スイッチの非限定的な例としては、ケイ皮酸およびシンナミリデン酢酸が挙げられる。
【0050】
フィラメントとして具体的に記載されるが、これらの形状記憶ポリマーはまた、複数のモノフィラメント、マルチフィラメント、および複数のマルチフィラメントにより形成された糸から、形成され得ることが想定される。これらの形状記憶フィラメントは、形状記憶メッシュを形成するために、他の任意の種々の生体適合性材料と合わせられ得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、この形状記憶ポリマーは、約20℃〜約40℃の範囲のTを示し得る。このような実施形態において、この形状記憶フィラメントは、この範囲の温度に曝露されると、一時的形状から永続的形状へと変化する。
【0052】
いくつかの実施形態において、形状記憶フィラメントを含有する生体適合性メッシュ基材は、約20℃未満の温度においては第一の、巻かれた/折り畳まれた構成を有し得、そして約20℃〜約40℃の範囲の温度に曝露されると、巻きを解かれた/折り畳みを解かれた構成を呈し得る。特定の実施形態において、この形状記憶材料は、約37℃またはおよそ体温の転移温度を示し得る。これらの形状記憶フィラメントは、主として、巻かれた/折り畳まれた構成から、巻きを解かれた/折り畳みを解かれた構成への変形として開示されるが、巻きを解かれた/折り畳みを解かれた構成から、巻かれた/折り畳まれた構成へと変形し得る形状記憶フィラメントを含有することは、充分に本開示の範囲内である。さらに、生体適合性基材の実際の形状は変わり得、そして任意の可能な寸法および設計を包含することが意図される。巻かれた/折り畳まれた構成、および巻きを解かれた/折り畳みを解かれた構成は、この基材が移植される組織の型により必要であるとみなされると、変えられ得る。一般に、この形状記憶フィラメントは、組織指示を支持するのに適切な任意の形状を呈し得る。
【0053】
組織の支持および組織の内方成長を提供することに加えて、この移植物は、生物活性剤の送達のためにさらに使用され得る。従って、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの生物活性剤が、メッシュ基材、形状記憶フィラメント、またはこれらの両方と合わせられ得る。これらの剤は、基材またはフィラメントを形成するために使用される生体適合性材料と物理的に混合され得るか、基材またはフィラメントにコーティングされ得るか、あるいは基材またはフィラメントを形成するために使用される生体適合性材料に任意の種々の化学結合を介して繋留され得る。これらの実施形態において、本移植物はまた、生物活性剤の送達のためのビヒクルとして働き得る。
【0054】
この移植物は、さらなる生物活性剤でコーティングされ得るか、またはさらなる生物活性剤を含有し得る。用語「生物活性剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質混合物を包含する。従って、生物活性剤は、それ自体で薬理学的活性を有しても有さなくてもよい(例えば、色素)。あるいは、生物活性剤は、治療効果もしくは予防効果を提供する任意の剤;組織成長、細胞増殖、および/もしくは細胞分化に影響を与えるかもしくは関与する化合物;または、接着防止化合物;生物学的作用(例えば、免疫応答)を引き起こし得る化合物であり得るか;あるいは、1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る。この生物活性剤は、物質の任意の適切な形態(例えば、フィルム、粉末、液体、ゲルなど)でこの移植物に付けられ得ることが想定される。
【0055】
基材またはフィラメントが、マルチアームポリエチレングリコール(PEG)またはPEGスター(すなわち、PEG単位を含む多分岐分子)を含む実施形態において、生物活性剤は、PEGのコア、PEGのアーム、またはこれらの組み合わせに組み込まれ得る。ある実施形態において、生物活性剤は、PEG鎖内の反応性基に付着し得る。生物活性剤は、共有結合で結合しても非共有結合(すなわち、静電結合、チオール媒介結合もしくはペプチド媒介結合、またはビオチン−アビジン化学の使用など)で結合してもよい。
【0056】
本開示に従って利用され得る生物活性剤のクラスの例としては、例えば、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝結因子、および酵素が挙げられる。生物活性剤を合わせたものが使用され得ることもまた意図される。
【0057】
いくつかの実施形態において、この生物活性剤は、塩酸ブピバカイン、ブピバカイン、またはカプサイシンを含み得る。
【0058】
接着防止剤は、メッシュと、標的組織に対向する周囲組織との間で接着が形成されることを防止するために利用され得る。さらに、接着防止剤は、移植可能な医療デバイスと、包装材料との間で接着が形成されることを防止するために使用され得る。これらの剤のいくつかの例としては、親水性ポリマー(例えば、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
生物活性剤として含有され得る適切な抗菌剤としては、例えば、トリクロサン(triclosan)(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしてもまた公知);クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンが挙げられる);銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、プロテイン銀、および銀スルファジアジンが挙げられる);ポリミキシン;テトラサイクリン;アミノグリコシド(例えば;トブラマイシンおよびゲンタマイシン);リファンピシン;バシトラシン;ネオマイシン;クロラムフェニコール;ミコナゾール;キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン);ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil));ノンオキシノール9;フシジン酸;セファロスポリン;ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、抗菌タンパク質およびペプチド(例えば、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシン(lactoferricin)B)が、生物活性剤として含有され得る。
【0060】
他の生物活性剤としては、局所麻酔薬;非ステロイド性抗受精剤;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗がん剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性剤;化学療法剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;ならびに免疫学的剤が挙げられる。
【0061】
基材および/またはフィラメントに含有され得る適切な生物活性剤の他の例としては、例えば、ウイルスおよび細胞;ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにこれらのアナログ、ムテイン、および活性フラグメント;免疫グロブリン;抗体;サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(例えば、β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN);エリスロポイエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF);インスリン;抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子;血液タンパク質(例えば、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン);性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど);ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン);ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原およびウイルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質;TGF−β;タンパク質インヒビター;タンパク質アンタゴニスト;タンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0062】
適切な生物活性剤の他の例としては、Avastin(登録商標)、Herceptin(登録商標)、Rituxan(登録商標)、Tarceva(登録商標)、Xeloda(登録商標)、ACETMRA(登録商標)、Lucentis(登録商標)、Raptiva(登録商標)、Rituxan(登録商標)、Xolair(登録商標)、Boniva(登録商標)、Cathflo(登録商標)Activase(登録商標)、Nutropin(登録商標)、Nutropin AQ(登録商標)、TNKase(登録商標)、Fuzeon(登録商標)、Incirase(登録商標)、Pegasys(登録商標)、Pulmozyme(登録商標)、Tamiflu(登録商標)、Valcyte(登録商標)、Anaprox(登録商標)、Cytovene(登録商標)、EC−Naprosyn(登録商標)、Fansidar(登録商標)、Gantrisin(登録商標)、Klonopin(登録商標)、Kytril(登録商標)、Naprosyn(登録商標)、Rocephin(登録商標)、Roferon(登録商標)−A、Romazicon(登録商標)、Ticlid(登録商標)、Valuim(登録商標)、Vesanoid(登録商標)、Xenical(登録商標)、Zenapax(登録商標)が挙げられ、全て、Genentechから市販されている。
【0063】
ここで図1Aおよび図1Bの例示的な実施形態を参照すると、外科手術用メッシュ110は、数個のフィラメント120を備え、これらのフィラメントは、一緒に編成され得る。フィラメント120は、形状記憶フィラメント120aと、形状記憶特性および/または形状記憶材料を有さないフィラメント120bとを含む。図示されるように、形状記憶フィラメント120aの全てが同じ方向に延び、そして非形状記憶フィラメント120bの全ては、形状記憶フィラメント120aに対して垂直な方向に延びる。メッシュ110の編成構築物は、細孔140または空間を、フィラメント120aと120bとの間に作製する。
【0064】
図1Aに示されるように、メッシュ110は、第一の構成(管状の構成に巻かれている)で図示されている。上記のように、形状記憶フィラメント120aの一時的形状は、メッシュ110を、組織への挿入のための第一の巻かれた構成に維持する。腹腔鏡手順中、メッシュ110は、移植前に巻かれた構成でカニューレ(図示せず)に通され得る。
【0065】
移植後、プログラムされた転移温度(すなわち、体温)に達すると、形状記憶フィラメント120aは、メッシュ110の巻きを解いて、図1Bに図示されるような第二の構成にする。形状記憶フィラメント120aは、その永続的/プログラムされた形状を回復し、そしてメッシュ110は、組織表面(図示せず)に対してほぼ平坦に配置される。これらの形状記憶材料は、特定の温度(例えば、体温(約37℃))で転移するように調整または製造され得ることが理解されるべきである。
【0066】
本開示によるメッシュの別の実施形態が、図2A〜図2Cに図示されている。図2Aは、マルチフィラメント外科手術用メッシュ210の例示的な実施形態を図示する。マルチフィラメントメッシュ210は、第一の複数の糸220aおよび第二の複数の糸220bを備える。第一の複数の糸220aは、数本のフィラメントを平行な構成で含み、一方で、第二の複数の糸220bは、数本のフィラメントを編組構成で含む。第一の複数の糸220aおよび第二の複数の糸220bは、一緒に編成されて、マルチフィラメントメッシュ210を作製する。
【0067】
図2Bは、マルチフィラメントメッシュ210を、第一のつぶされた構成で図示する。第一の複数の糸220aは、形状記憶フィラメント225を、その少なくとも一部分に沿って備える。図示されるように、形状記憶フィラメント225は、複数の糸220aの数箇所の選択された部分に沿って存在する。形状記憶フィラメント225は、他のフィラメント(形状記憶特性を有さない)と絡み合わせられるかまたは製織され、その結果、これらの形状記憶フィラメントは、このメッシュの全長にわたっては延びず、むしろ、メッシュ210の選択された部分にわたって延びる。形状記憶フィラメント225は、メッシュ210の数箇所の部分に広がっているので、形状記憶フィラメント225は、メッシュ210を等しく収縮させ得、メッシュ210をその第一のつぶされた構成に維持し得る。
【0068】
インサイチュで挿入されると、形状記憶フィラメント225は、メッシュ210を、図2Cに図示されるような、第二のほぼ平坦な構成に広げる。形状記憶フィラメント225は、それらの永続的/プログラムされた形状を回復し、そしてメッシュ210は、組織表面に対してほぼ平坦に配置される。
【0069】
代替の実施形態において、本開示に従う移植物は、少なくとも1つのグリップ部材を備え得、このグリップ部材は、第一の非グリップ構成と、第二のグリップ構成との間で変形し得る。この非グリップ構成において、このグリップ部材は、移植の際に、基材または周囲の組織のいずれの部分とも係合し得ない。このグリップ構成にある間、このグリップ部材は、基材の少なくとも一部分を組織に付着させること、および/または基材の第一の部分を基材の第二の部分に付着させることのいずれかを行い得る。
【0070】
このグリップ部材は、少なくとも1つのフィラメントまたは糸から作製され得る。ある実施形態において、複数のグリップ部材が、生体適合性基材の表面全体にわたって配置され得る。他の実施形態において、複数のグリップ部材が、生体適合性基材の表面の一部分のみにわたって配置され得る。なお他の実施形態において、これらのグリップ部材は、生体適合性基材の1つより多くの部分に配置され得る。
【0071】
図3A〜図3Cを参照すると、グリップ部材を有するメッシュが図示されている。外科手術用メッシュ300は、複数のフィラメント320を備え、これらのフィラメントは、一緒に編成され得る。これらの複数のフィラメントは、形状記憶フィラメント320a、ならびに形状記憶特性および/または形状記憶材料を有さないフィラメント320bを含む。メッシュ内での形状記憶フィラメント320aの構成は、第一の構成の結果として変わり得ることもまた、想定される。メッシュ300の編成された構成は、細孔340または空間を、フィラメント320aと320bとの間に作製する。
【0072】
メッシュ300はまた、グリップ部材330を備え、これらのグリップ部材は、図3Aおよび図3Bにおいて、非グリップ位置で図示されている。約20℃より高い温度で転移するように条件付けされた形状記憶材料から作製されたグリップ部材330は、非グリップ構成からグリップ構成(図3C)へと変形する。グリップ部材330は、ほぼ真っ直ぐな様式で、基材300の長手方向軸(A)(図3B)に対して平行に配置される。これらのグリップ部材は、メッシュ300の軸に対してほぼ平行に延びるので、グリップ部材330は、移植の際に周囲組織に貫入することも、メッシュ300の他の部分に貫入することもできない。非グリップ位置において、グリップ部材330は、メッシュ300の他の部分に付着することができず、そしてまた、移植の際に周囲組織に付着することもできない。メッシュ300の長手方向軸(A)に対してほぼ平行であるように示されているが、グリップ部材330は、ほぼ平行である必要はない。ある実施形態において、これらのグリップ部材は、基材の長手方向軸に対して、グリップ部材が組織および/または基材の他の部分に付着することを防止するのに適切であり得る任意の位置にあり得る。
【0073】
図3Aに示されるように、メッシュ300は、第一の折り畳まれた構成で図示されている。上記のように、形状記憶フィラメント320aの一時的形状は、メッシュ300を、組織への挿入のための第一の折り畳まれた構成に維持する。グリップ部材330は、所定の刺激(すなわち、特定のプログラムされた温度)への曝露の前には、非グリップ位置にある。第一の折り畳まれた構成は、腹腔鏡/内視鏡ポートまたはカニューレ(図示せず)を通しての挿入を容易にする。
【0074】
移植後、所定の刺激(すなわち、プログラムされた転移温度(およそ体温/37℃であり得る))に曝露すると、形状記憶フィラメント320aは、メッシュ300の折り畳みを解いて、図3Bに図示されるような、第二の折り畳みを解かれた構成にする。形状記憶フィラメント320aは、その永続的/プログラムされた形状を回復し、そしてメッシュ300は、組織表面に対してほぼ平坦に配置される。さらに、メッシュの挿入の際に、グリップ部材330は、刺激(例えば、約20℃〜約40℃への温度の上昇)への曝露後に、非グリップ構成からグリップ構成に変形する。図3Cに図示されるように、グリップ部材330は、ほぼL字型の構成を形成し得、この構成において、グリップ部材330のベース部材330aは、メッシュ300の一部分の中に位置し、そしてグリップ部材330のアーム部材330bは、基材300の長手方向軸からほぼ垂直に延びて、メッシュ300を組織400に取り付ける。
【0075】
組織接着特性を有する外科手術用移植物を作製する方法が上に開示される。この方法は、生体適合性基材から延びるグリップ部材を、第一の非グリップ構成を呈するように、そして刺激への曝露の際に第二のグリップ構成を呈するように、条件付けする工程をさらに包含し得る。
【0076】
当業者は、本明細書中に具体的に記載され、添付の図面に図示されたデバイスおよび方法が、非限定的な例示的実施形態であることを理解する。1つの例示的実施形態に関連して図示または記載された要素および特徴は、本開示の範囲から逸脱することなく、別の実施形態の要素および特徴と組み合わせられ得ることが想定される。種々の改変が、本明細書中に開示された実施形態に対してなされ得ることが理解される。例えば、ある実施形態において、移植物は、基材の一部分への接着の形成を防止するために、さらなる材料の層(例えば、抗菌コーティング層)またはフィルムを備え得る。従って、当業者は、特許請求の範囲の趣旨および範囲内で、他の改変を予測する。
【符号の説明】
【0077】
110 メッシュ
120 フィラメント
120a 形状記憶フィラメント
120b 非形状記憶フィラメント
140 細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリジオキサノン、ポリラクチド、ポリ(トリメチレンカーボネート)およびこれらのコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの形状記憶フィラメントを含む複数のフィラメントであって、該形状記憶フィラメントが、外科手術用メッシュを第一の構成から第二の構成へと変形させる、複数のフィラメント、
を備える、外科手術用メッシュ。
【請求項2】
前記形状記憶フィラメントが、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項3】
前記ポリジオキサノンが、前記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして前記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する、請求項2に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項4】
前記形状記憶フィラメントが、ポリ(トリメチレンカーボネート)とポリラクチドとのブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項5】
前記ポリ(トリメチレンカーボネート)が、前記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして前記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する、請求項4に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項6】
グリップ部材をさらに備える、請求項1に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項7】
前記形状記憶フィラメントが、前記メッシュを前記第一の構成から前記第二の構成へと、約37℃で変形させる、請求項1に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項8】
前記第一の構成が、巻かれた構成、折り畳まれた構成、つぶされた構成、丸まった構成、畳まれた構成、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項9】
前記第二の構成が、巻きを解かれた構成、丸まりを解かれた構成、折り畳みを解かれた構成、畳みを解かれた構成、つぶれを解かれた構成、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項10】
前記第二の構成がほぼ平坦である、請求項1に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項11】
前記複数のフィラメントが、編成されるか、編組されるか、製織されないか、または製織される、請求項1に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項12】
生物活性剤をさらに含有する、請求項1に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項13】
前記メッシュがモノフィラメントメッシュまたはマルチフィラメントメッシュを備える、請求項1に記載の外科手術用メッシュ。
【請求項14】
外科手術用メッシュを作製する方法であって、該方法は、
少なくとも1つの形状記憶フィラメントを複数の糸に組み込む工程;
該形状記憶フィラメントを含有する該複数の糸を外科手術用メッシュに組み込む工程;および
該メッシュを第一の構成と第二の構成との間で変形させるように、該少なくとも1つの形状記憶フィラメントを条件付けする工程、
を包含する、方法。
【請求項15】
前記条件付けする工程が、前記メッシュを第一の構成で鋳型に挿入する工程、および該メッシュを約20℃〜約55℃の永続温度に加熱する工程をさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第一の構成が、一般に巻かれた構成、つぶされた構成、丸まった構成、折り畳まれた構成、または畳まれた構成を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第一の構成から前記第二の構成へ前記メッシュがインサイチュで変形する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第二の構成が、一般に巻きを解かれた構成、つぶれを解かれた構成、丸まりを解かれた構成、折り畳みを解かれた構成、畳みを解かれた構成、または平坦な構成を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの形状記憶フィラメントが、前記第二の構成において永続的形状を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記メッシュが、二次元構成または三次元構成の複数の糸を含有する、請求項14に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2011−240139(P2011−240139A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108827(P2011−108827)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】