説明

外科手術間の使用のための粘弾性剤の組み合わせ

【課題】医師に、単一の外科手術の間に複数の製品/注射器を使用することに付随する費用および不利益を伴わない、複数の薬剤システムの機能的利点を与える、単一の粘弾性剤を提供する。
【解決手段】眼科の外科処置および特に白内障の処置の実施において有用な、改善した粘弾性組成物を開示する。この組成物は、ヒアルロン酸ナトリウムおよびコンドロイチン硫酸を含み、改善した流体力学的性質を示す。ヒアルロン酸または眼科的に受容可能な塩は、1,500,00〜1,900,000ダルトンの分子量を有し、そして1.0%〜2.0%(w/v)の濃度で存在し、そしてコンドロイチン硫酸および眼科的に受容可能なその塩は、20,000,00〜100,000ダルトンの分子量を有し、そして3%〜5%(w/v)の濃度で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本明細書中に記載される発明は粘弾性外科手術(viscosurgery)の分野に関連し、そして特定の型の外科手術(特に、眼科手術)のための改善された流体力学的性質を示す、粘弾性剤の新しい組み合わせに関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
眼科手術に使用される、多くの公知の粘性剤または粘弾性剤(本明細書中以下、「薬剤」または「粘弾性剤」)(例えば、VISCOAT(登録商標)(Alcon Laboratories,Inc.)(ヒアルロン酸ナトリウムおよびコンドロイチン硫酸を含有する);Provisc(登録商標)(Alcon)、Healon(登録商標)、Healon(登録商標)GVおよびHealon(登録商標)5(Pharmacia&Upjohn)、Amvisc(登録商標)およびAmvisc Plus(登録商標)(Bausch&Lomb)、およびVitrax(登録商標)(Allergan)(これらの全ては基本的に純粋なヒアルロン酸ナトリウム(HA)を含有する);そして最後にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の製品(例えば、Cellugel(登録商標)(Alcon)))がある。これら全ての高精製製品は、特定の眼科の外科的処置(例えば、白内障手術)において有用である。これらの製品は、熟練した眼科外科医により、眼内の空間の維持、眼組織(特に角膜内皮細胞)の保護を含むいくつかの外科手術の目的のために、そして眼組織の処置における補助として使用される。これらの薬剤は一般的に、熟練した外科医が意図した手術の目的のためにこれらの薬剤を使用することを可能にするために十分な粘性ではあるが、受容可能な口径サイズのカニューレを通じたこの薬剤の圧出を困難にするほど粘性ではない。
【0003】
しかし、多くの市販の製品によって示唆されるように、どの粘弾性剤も、すべての外科手術の目的を最善に満たすわけではない。これらの特定の物理的特性に起因して、特定の粘弾性剤は、外科的処置の特定の局面により良く適応される。例えば、白内障手術において、VISCOAT(登録商標)製品において見られる比較的低分子量のヒアルロン酸ナトリウムおよびコンドロイチン硫酸の組み合わせは、嚢切開術の間、または白内障処置のいかなる時の前眼房の維持において、および組織(特に角膜内皮)への接着または保護においてよく機能する。しかし、その接着特性およびコーティング特性に起因して、VISCOAT(登録商標)製品は、他の薬剤よりも眼の前眼房から除去されにくくなる。加えて、VISCOAT(登録商標)製品は、眼に眼内レンズ(IOL)を挿入するための組織の処置に使用され得るが、他の特定の薬剤の方がこの機能を行うためにより適している。
【0004】
機能的に望ましい粘性を有する、比較的高分子量のヒアルロン酸ナトリウムの粘弾性溶液(例えば、Healon(登録商標)製品またはPROVISC(登録商標)製品(Alcon Laboratories,Inc.))は、高い粘着性であるが、手術中接触し得る組織に関しては、比較的非接着性である。これらの特性は、このような粘弾性溶液を、手術の間、繊細な組織を穏やかに処置するための柔らかい道具としての使用に非常に適したものにする。例えば、これらの粘弾性剤は、カプセルバッグを膨らませるため、そしてIOLの挿入を促進するために使用され得る。これらの粘着性および接着性の欠如は、これらを外科手術の最後に眼から除去することを容易にする。しかし、ヒアルロン酸ナトリウムは、眼組織を保護する際、特に水晶体超音波吸引術の間、他の薬剤と同じ程効果的ではない。
【0005】
HPMCは、眼組織によく接着し、従って眼組織を保護するが、前眼房の維持における例えばVISCOAT(登録商標)製品と同様に、または組織の処置におけるヒアルロン酸ナトリウムと同様に機能しない。しかし、HPMCは、IOL移植後の除去のために容易に洗浄液で希釈され得る。外科手術の終わりでの粘性剤または粘弾性剤の除去は、外科手術後の眼内圧力スパイクの重大さを妨げるかまたは減少することに一般的に影響する。
【0006】
一般的に、比較的高分子量の薬剤(高分子量のヒアルロン酸ナトリウム)を含有する粘性溶液は、眼内空間の維持において、比較的低分子量の薬剤を含有するあまり粘性ではない溶液より効果的である;しかし、高分子量の薬剤は高い粘着性となる傾向にあり、そして外科手術部位から早くに吸引され得る。例えば、粘性溶液が水晶体超音波吸引術の手順の間に水晶体超音波吸引チップの吸引ポートと接触するようになる場合、この早い吸引は生じ得る。比較的低分子量の製品(組織に接着するおよび組織を保護するそれらの粘着性の特徴に起因する)は、外科手術部位から除去することをより困難にする。
【0007】
与えられた外科的処置に対し、前述の薬剤の各々が特定の長所および短所を有するという事実の認識において、単一の外科的処置における複数の粘弾性剤の使用が示唆される。米国特許第5,273,056号参照のこと。複数の粘弾性アプローチは、いくつかの商業的成功を有している。例えば、PharmaciaのHealon(登録商標)シリーズ(各製品は、ヒアルロン酸ナトリウムの異なる分子量画分を含有する)、またはAlconのDuo Visc(登録商標)製品(Provisc(登録商標)およびViscoat(登録商標)の両方を含む)を考慮する。従って、与えられた外科的処置に関連した各機能を十分に果たし得る単一の粘弾性剤に対する必要性が残る。本発明の組成物は、この必要性に応ずると思われる。
【0008】
同一人に譲渡された米国特許出願番号09/857,543は、耳の外科手術における使用のために設計された粘弾性剤を開示する。その中で開示された組成物は、1.6%の高分子量のヒアルロン酸ナトリウムおよび4%のコンドロイチン硫酸を含有する処方物である。しかし、本発明の特定の分子量範囲は、その出願の中に開示も示唆もされておらず、この出願の内容は、本明細書の参考として明細書中に援用される。眼科の外科手術において、本発明により認識される予期せず改善された性能を、その出願は示唆しない。
【0009】
特許文献1は、眼科手術における使用のためのHAとコンドロイチン硫酸の組み合わせ開示する。その特許の商業的実施形態は、Viscoat(商標登録)製品において見出され、ここでパッケージの挿入物に従って、約22,500ダルトンの分子量を有する4重量%のコンドロイチン硫酸および500,000ダルトン以上の分子量を有する3重量%のヒアルロン酸ナトリウムを含有する。上記のように、市販の製品は、代表的な白内障の外科的処置の特定の段階における最適な性能より少ない性能を提供する。全く予期せずに、本発明者らはViscoat(登録商標)における分子量およびポリマー成分の濃度を変更することによって、市販されている任意の製品と比較して顕著に改善された全ての性能を提供する粘弾性剤を造ることが可能であるということを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,051,560号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、ヒアルロン酸ナトリウムおよびコンドロイチン硫酸の特定の組み合わせに関連し、ここでこの組み合わせは、眼科の外科的処置(特に白内障の処置)における粘弾性剤の全ての機能を実行するための著しく改善された流体力学を示す。このような処置の間、本発明の粘弾性剤における成分の独自の配合が、十分な眼内空間維持および眼組織保護を達成し、そして同時に眼組織の処置および手順の最後での除去の容易さを可能にする。本発明の目的は、医師に、単一の外科手術の間に複数の製品/注射器を使用することに付随する費用および不利益を伴わない、複数の薬剤システムの機能的利点を与える、単一の粘弾性剤を提供することである。
【0012】
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
眼科の外科的処置中の使用のための無菌で、水溶性の粘弾性組成物であって、その組成物は、眼科的に受容可能なビヒクル中にヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸の組み合わせ、または眼科的に受容可能なそれらの塩を含有し、ここで、そのヒアルロン酸またはその眼科的に受容可能なその塩は、1,500,000〜1,900,000ダルトンの分子量を有し、そして1.0%〜2.0%(w/v)の濃度で存在し;そしてそのコンドロイチン硫酸またはその眼科的に受容可能なその塩は、20,000〜100,000ダルトンの分子量を有し、そして3%〜5%(w/v)の濃度で存在する、組成物。
(項目2)
上記組成物が、ヒアルロン酸ナトリウムを1.5%〜1.8%(w/v)の濃度で含有する、項目1に記載の組成物。
(項目3)
上記ヒアルロン酸ナトリウムが、1,600,000〜1,700,000ダルトンの分子量を有する、項目2に記載の組成物。
(項目4)
上記ヒアルロン酸ナトリウムが1.6%(w/v)の濃度で存在し、そして上記コンドロイチン硫酸または上記眼科的に受容可能なその塩が、50,000〜90,000ダルトンの分子量を有し、そして4%(w/v)の濃度で存在する、項目3に記載の組成物。
(項目5)
上記組成物が、以下;
0.045%(w/v)で一塩基リン酸ナトリウム;
0.2%(w/v)で二塩基リン酸ナトリウム;および
0.31%(w/v)でNaCl
をさらに含有する、項目4に記載の組成物。
(項目6)
眼で白内障手術を行う方法であって、その方法は、項目1〜5いずれかの組成物の組織安定化有効量を眼に投与する工程を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態の流体力学的性質を、他の粘弾性処方物の流体力学的性質といっしょに示したグラフである。
【図2】図2は、粘着−分散を決定する好ましい方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
上記のようなViscoat(登録商標)(Alcon)は、商業上何年間も市販されている。Viscoat(登録商標)処方物、およびその製造方法は、一般的に米国特許第6,051,560号に記載されており、その全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。現在市販されている他の全ての独立型の粘弾性製品の様に、Viscoat(登録商標)材料の流体力学的性質は、様々な外科的処置(例えば、白内障の手術)の全ての工程に、理想的には適していない。本発明は、顕著に変化した流体力学的性質を有する新規の粘弾性処方物に関連し、この流体力学的性質は、眼科手術において(特に、白内障の外科的除去の従来の工程または段階において)より優れた性能を可能にする。
【0015】
本発明の組成物は、眼科の外科手術に適した水溶液中に中程度の分子量のヒアルロン酸塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウムを、約1.0%〜約2.0%(w/v)の濃度範囲で、約3%〜約5%(w/v)の濃度でコンドロイチン硫酸とともに含む。ヒアルロン酸/ヒアルロネート(HA)成分に対し、好ましい分子量範囲は、約1,500,000〜約1,900,000ダルトンであり、そして好ましくは約1,700,000ダルトンである。好ましい濃度範囲は、約1.5%〜約1.8%(w/v)であり、そして好ましくは約1.6%(w/v)である。コンドロイチン硫酸(CS)成分に対し、好ましい分子量は、約20,000または25,000〜約100,000ダルトンであり、より好ましくは約50,000〜約90,000であり、最も好ましくは約80,000ダルトンである。本発明の組成物のコンドロイチン硫酸成分は、望ましい分子量範囲でSeikagaku(Tokyo、Japan)より入手され得る。ヒアルロン酸ナトリウム成分は、例えばGenzyme Corp.(Cambridge,MA)のような商業的供給源より入手され得るか、または当業者に公知な方法で調製され得る。本発明の組成物のHA成分の分子量決定は、ゲル透過HPLCにより決定されるような平均分子量である。本発明の組成物は、米国特許第6,051,560号(以前に参考として援用された)に記載された方法および以下の実施例1に記載された方法で調製され得る。
【0016】
HAおよびCSを含有する様々な粘弾性処方物が、以下の実施例1に従って調整された。そして、これらの処方物は、熟練した外科医による主観的な評価および以下に記載されるような流体力学的評価に供された。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
(粘弾性調製物)
A.HA原料(ヒアルロン酸ナトリウム)を無菌で得た。
【0018】
B.CS原料(コンドロイチン硫酸ナトリウム)を非無菌で得た。
【0019】
CSを緩衝液中で完全に水和し、0.2μフィルターで無菌フィルター処理をした。C.Luer−Lokコネクターにより結合された2つの注射器中で混合する間の無菌プロセスの後に、無菌HA原料を無菌CS/緩衝液溶液中で水和した。
【0020】
D.適切な混合そして一晩の水和後、無菌で透明な粘性溶液を得、これを冷蔵庫で完全な脱気のために保存した。
【0021】
E.次いで粘性溶液を4.5μフィルターで、50psi圧力下でフィルター処理し、本質的に無微粒子の透明溶液を得た。
【0022】
(実施例2)
【0023】
【表2】

【0024】
1つの好ましい実施形態(処方物F)および市販されている粘弾性製品を含む、試験した他の処方物の流体力学的性質を、図1に示す。図1より、処方物Fの粘性は、低い剪断速度で、Proviscの粘性およびHealon GVの粘性の間に独自に低下するが、意外なことに高い剪断速度で、Viscoatの粘性およびProviscの粘性の間に低下することが示される。
【0025】
(実施例3)
表3は、市販の粘弾性製品と比較した処方物Fおよび他の処方物のゼロ剪断粘性データを示す。
【0026】
【表3】

【0027】
図1に示されるデータと一致して、本発明の中程度分子量HA処方物(DおよびF)のゼロ剪断粘度は、ViscoatおよびProviscのゼロ剪断粘度より高かったが、Healon−GVのゼロ剪断粘度より顕著に低かった。
【0028】
(実施例4)
粘弾性物質のいくつかの物理的パラメータを測定し、十分に立証した。粘度、擬塑性(pseudoplasticity)(剪断減粘)、および分子量が挙げられる。これらの粘着性を測定するための方法は、Poyerら,Quantitative method to determine the cohesion of viscoelastic agents,by dynamic aspiration,J.Cataract Refract.Surg.,24:1130−1135(1998)により記載され、この内容は本明細書の参考として本明細書中に援用される。Poyerらは、粘弾性剤の粘着−分散指数(CDI)を記載する。このCDIは、一般的に図2で示した方法において、そして以下の材料および方法を用いて決定される。
【0029】
(材料および方法)
(材料および装置)
ポリプロピレン試験チューブ(丸底(found bottom)、14mL)をBecton Dickinson Labwareより得、そしてポリプロピレンピペットチップ(モデルRT−20)をRainin Instrument Co.より得た。細胞培養クラスター(24ウェル)をCostarより購入した。Sartoriusモデル1612天秤を重量測定決定に使用し、そして容積式ピペット(RaininモデルM1000)を粘弾性サンプルの移動に使用した。減圧をGast真空ポンプで適用した。
【0030】
(粘弾性サンプルの吸引)
ポリプロピレンウェル挿入物を14mL試験チューブの底から切断し、重さを計り(W)、そして固定保持のために24ウェル細胞培養クラスターのウェルに挿入した(図2)。ポリプロピレンは、非吸着性の表面を提供し、容器からの潜在的な吸着力による吸引の影響を最小限にする。粘弾性サンプル(0.5mL)を容積式ピペットを用いて挿入物に分配し、そしてこの挿入物(サンプルを含む)の重さを再び計った(W)。
【0031】
調製した減圧を可撓性のあるポリ塩化ビニルチュービングでポリプロピレンピペットチップ(内径0.5mm)に接続した。減圧を、ゲージで表される様々なレベル(5インチHg、10インチHg、15インチHg、20インチHg、24インチHg、および28インチHgは、127mm Hg、254mm Hg、381mm Hg、508mm Hg、610mm Hgおよび711mm Hgと等しい)で、粘弾性サンプルに、新しいサンプル(二連で)を各減圧レベルに使用して、適用した。減圧を蟻形スライドのクランプに固定されたピペットチップを用いて適用した。このチップを接触時間の2秒間、サンプル中に低下した。チップの位置を、サンプルの水平面から80度の角度で固定し、挿入物の底によりチップの障害物を妨げた。各サンプルの吸引を行った後、全ての挿入物の重さを再び計った(W)。
【0032】
(データ分析および統計学的分析)
吸引された粘弾性サンプルの割合は、以下のように計算された:
吸引された割合=(W−W)/(W−W)×100%
データを、減圧に対する吸引された割合としてプロットした。各粘弾性剤の曲線の最も急な部分の勾配(曲線の最も急な2つのポイントに基づく)を、共分散分析を用いて、統計的有意性と比較した(SAS Institute,Inc.)。各勾配の値は、特別な粘弾性剤のCDIを示す(吸引された割合/100mm Hg減圧)。
【0033】
粘弾性剤の分解ポイントは、薬剤のボーラス除去(bolus removal)を始めた時点での減圧レベルを示す。ボーラス除去(分解ポイントの目的のための)を、サンプルの25%より多くが単一の減圧レベルにより除去されるとして定義する。分解ポイントを、減圧曲線に対する吸引曲線の割合を用いて決定した。分散的な粘弾性薬剤は、低い分解ポイントを有し、粘着性組成物は、比較的高い分解ポイント(急なボーラス除去を示す)を有する傾向にある。
【0034】
前述の方法を用いて、粘弾性組成物の粘度およびCDIを決定した。
【0035】
【表4】

【0036】
本発明の中程度分子量HA処方物(表4のSOVDを示す)は、9〜15の範囲に渡るCDIを有する。これらのSOVD処方物中のヒアルロン酸ナトリウムの分子量は、1,600,000〜1,700,000ダルトンの範囲に渡る。SOVD CDI値は、ViscoatのCDIより有意に高く、Provisc、HealonおよびHealon−GVのCDIより有意に低い。
【0037】
(実施例5)
【0038】
【表5】

【0039】
本発明の好ましい組成物は、前区手術における外科用補助として使用する眼球内を意図とした粘弾性ポリマー溶液である。その溶液は、生理学的緩衝液中に溶解したヒアルロン酸ナトリウム(HA)(1.6%の濃度で)およびコンドロイチン硫酸ナトリウム(CS)(4%の濃度で)の中程度分子量画分からなる。その溶液は、眼房水と類似した浸透圧およびpHを有する。HAは、1,600,000〜1,700,000ダルトンの平均分子量を有し、そしてGenzyme(Cambridge,MA)より入手された。好ましい処方物は、少なくとも250〜350Pa.s.(眼房水より250,000〜350,000倍高い)の粘度を有する。免疫原性の徴候がないことがヒトにおいて機能させたHAおよびCSについての以前の研究において報告された。ウサギモデルにおける臨床治療前の研究において、この好ましい実施形態は、水晶体超音波吸引手術間の眼において残存することにより、水晶体超音波吸引術間に前眼房ドームの維持することを見出された。適切なドーム維持は、角膜内皮の効果的な保護に不可欠である。市販の粘弾性製品(Healon−GVおよびHealon−5)との比較において、本発明の組成物は、水晶体処置の間、より深い前眼房を形成かつ維持し、その結果、角膜内皮および他の組織に対する最小限の外傷により、眼内の安全を可能にし、そして調節される処置を可能にした。Viscoatとの比較において、本発明の組成物は、水晶体処置後、洗浄/吸引(I/A)処置の間の除去が容易であり、そして手術の間、きれいな視野を形成かつ維持した。本発明の組成物は、カニューレによって出す場合、粘性がかなり減少するため、注入が容易であが、注入後すぐにその高い粘性状態が戻る。臨床治療前の安全性の予備的結果は、本発明の組成物は、Healonとの比較において、眼内組織に対して非炎症性であり、受容可能なIOPプロフィールを有していることを示す。
【0040】
当業者は、本発明の好ましい組成物はまた、同一人に譲渡された米国特許出願10/082,743(軟骨軟化症および変形性関節症の治療における、ヒアルロン酸ナトリウムおよびコンドロイチン硫酸の混合物の使用に関する)に記載されるような関節内注入法による軟骨軟化症および変形性関節症(特に、グレードI変形性関節症およびグレードII変形性関節症)の処置において、特に有用であることを理解する。前記の出願の内容は、本明細書の参考として、本明細書中に援用される。
【0041】
当業者は、本発明の組成物および方法が、様々な治療(特に、薬物送達、美容外科および再建手術)における有用性を有することを同様に評価する。本発明は、特に抗線維症薬物、抗生物質、ステロイド性および非ステロイド性抗炎症性薬物、麻酔薬、鎮痛薬ならびに他の薬物、あるいはその必要にある病気の組織または損傷した組織の遺伝子治療に最も良く適している。美容的に、これらの組成物を注入し、しわを減らし得、そして拡張蛇行静脈を処置し得る。真皮性線(dermal line)またはしわの処置に対し、これらの組成物を、筋弛緩薬剤(例えば、BOTOX(登録商標)(Allergan,Inc.,Irvine CA,USA)として市販のボツリヌストキシンタイプA、)と組み合わせ得、そして皮下に、従来の方法で注入され得る。現在開示する組成物および方法はまた、組織分離または組織安定化の必要があり、そして合併症(代表的に手術後、組織線維症および/または組織癒着から生じる)の可能性がある任意の環境において、使用され得る。それらは、他の方法ではこのような合併症の傾向がある、鼻の外科処置、脊髄の外科処置、心臓血管の外科処置、整形外科(orthopoedic)の外科処置ならびに歯科矯正の外科処置において特に有用である。当業者は、粘弾性薬剤の好ましい保持特性が、使用されている処置の型に依存するということを理解する。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「眼科的に受容可能」は、記載の塩またはビヒクルに使用した場合、任意の従来の意味として、患者の眼への投与に適した任意の塩またはビヒクルを意味し、そして特に手術の間は、有害な健康影響の重大な危険がないことを意味する。ヒアルロン酸のナトリウム塩およびコンドロイチン硫酸、ならびに水性ビヒクルが、最も好ましい。
【0043】
本発明は、参考として特定の好ましい実施形態に対し記載される;しかし本発明は、他の特定の形態またはその変化において、その精神または中心的な特徴からそれることなく具体化され得ることが理解されるべきである。従って、上記の実施形態は、全ての観点において説明であり、制限するものではないと見なされ、本発明の範囲は、上記の説明よりもむしろ添付の請求の範囲によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−70556(P2010−70556A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283469(P2009−283469)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【分割の表示】特願2003−557545(P2003−557545)の分割
【原出願日】平成14年11月13日(2002.11.13)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】