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外科的に不安定化された椎間関節を安定化するための非毒性架橋試薬の直接的利用
説明

外科的に不安定化された椎間関節を安定化するための非毒性架橋試薬の直接的利用

残存したコラーゲン組織の少なくとも一部を有効量の架橋試薬と接触させることを有する、組織除去外科的減圧術の結果で起こるコラーゲン組織の圧力上昇にさらされたコラーゲン組織の抵抗を改善する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン組織又は周辺組織の外科的な切除又は除去によって、組織の劣化の一因となる有害な力学的負荷環境が生じた、例えばコラーゲン組織などの組織の治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有害な力学的負荷環境は、様々なかたちでコラーゲン組織の劣化の一因となる。例えば、疲労は、反復的に付与された圧力による、材料の弱体化である。疲労損傷は、単に、元々の極限応力水準を下回るまで反復的圧力が材料を弱体化した損傷である。組織切除により上昇した圧力水準は、残存した関節組織の疲労劣化を促進し得る。骨及び他の可動関節では、2つの行程−生物的な修復及び疲労−が対立し、通常、修復が優勢である。椎間板では、疲労が支配的プロセスであることを、線維輪後部の力学的劣化の疾患(Osti 1992)が示唆している。大きくて大抵は血管がなく身体の荷重支持組織である椎間板は、継続する疲労劣化に対するこの性質において幾分かユニークである。積極的な組織応答(適応、修復)は、成熟した椎間板材料についていえば重要な役割を担わない。椎間板は、3つの部分からなる:髄核(NP)又は核、線維輪(AF)又は輪、及び、軟骨終板である。線維輪の内方側及び髄核の外方側の特性は、継続する劣化と調和し、髄核がより線維状となり水分量が減少する。同様に、髄核の外方側と線維輪の内方側との間の境界が消え、継続する劣化に伴い不明瞭になることが知られている。基本的に血管のない構造であることから、椎間板は、その限られた生存細胞の栄養分を、拡散及び負荷で誘発される伝送に頼る。加齢に伴う変化は、おそらく細胞活性及び生合成機能の低下の一因となって拡散を妨げる(Buckwalter ら. 1993, Buckwalter 1995)。加齢に伴う細胞数及び細胞機能の低下は、基質への力学的損傷を修復する、細胞の能力を低下させる。酵素分解の後に起こる髄核における基質の再生のいくつかは、一貫性はないが成し遂げられる(Deutman 1992)。機能的な線維輪材料の再生は、未だ実現されていない。
【0003】
修復及び再生の限られたこの潜在性と相まって、椎間板後部組織は、非外傷性の生理的周期的な負荷にさらされると、劣化及び疲労損傷しやすいことが研究によって示されている。中程度の生理的な周期的負荷にさらされた椎間板後部組織における、弾塑性(Hedman 99)及び粘弾性(Hedman 02)材料特性の低下が従前の研究で示されている。最大抗張力の30%の周期的負荷強さは、わずか2000サイクルで材料特性の大幅な低下を生じさせた。Green(1993)は、左右一対の外側線維輪試料の最大抗張力及び疲労寿命を調べた。彼らは、垂直張力の周期的ピークが、左右一対のコントロール試料における最大抗張力の45%を超えると、疲労損傷が10,000サイクル未満で起こりうることを見出した。加えて、Panjabi ら(1996)は、膝の前十字靱帯へ損傷させない単周期の歪みを与えると、靱帯の弾性特性(負荷歪み)が変わることを見出した。Osti(1992)は、線維輪の断裂及び亀裂が主に椎間板の後側部で発見されることを見出した。Adams(1982)は、過度屈曲時にわずかに変性した椎間板が後方に脱出する傾向があることを示し、線維輪後側部が屈曲下で強く負荷をかけられつつ垂直方向に過度に伸ばされると疲労損傷が椎間板で生じることを示した。分析的な研究では、層間剥離を生じる層間のせん断応力が、椎間板の後側部で最も高くなることが見出された(Goel 1995)。これら従前の情報は、1)椎間板後部及び縦靱帯後部は、変性変化の危機にあり、2)変性の機構は屈曲疲労とかかわっている、ことを示唆している。
【0004】
組織切除による応力増大は、関節組織における疲労抵抗を低下させ劣化促進を導くものと予測される。このタイプの関節組織劣化促進の例は、脊髄徐圧術の後におこるコラーゲン組織の力学的劣化である。進行性の脊髄劣化は、椎間板切除術でなされる椎間板の一部の切除があってもなくとも、外科的な骨の除去の後に起こる。骨、椎間板及び他の結合組織の外科的な除去によって、脊髄断片は、通常の生理的な負荷が原因で組織応力の上昇を受ける。特に、椎間板切除術は、脊柱関節の不安定さの程度を数量化することに用いる一般的なパラメータである中立帯を増加させることが示されている(Chuang 及び Hedman 2007)。脊柱関節の不安定さは、組織劣化の促進及び臨床症状を導くと考えられている。
【0005】
自然に発生するコラーゲン架橋は、コラーゲン組織、特に椎間板の安定化において重要な役割を担う。還元性の(新しく形成された)架橋が、脊柱側湾症の椎間板において凹側より凸側で非常に多く発見された(Duance, ら 1998)。同様に、Greveら(1988)は、湾曲が増すと同時に、脊柱側湾症の鳥において還元性架橋量の有意な増加を見出した。これは、脊柱側湾症の椎間板の凸側で張力環境の高まりに反応して起こる、自然発生的で細胞媒介的な架橋の増加にいくらかの形式があることを示唆している。Greveは、脊柱側湾症の鳥の軟骨において発達の非常に早い段階で還元性架橋がほとんどないことをも見出した。彼らは、コラーゲン架橋における差異は、発達における後の段階で架橋の数が少なくないことから、原因になるようではないと結論付けている。実際、あとで、脊柱側湾症の湾曲が進んだときに、統計的に有意に多いコラーゲンの架橋が、おそらく湾曲に応答してある。Greveの結論ではないが、これは、通常水準より高い架橋を生み出す細胞反応によって後に修復される脊柱湾曲症の湾曲促進における十分長い持続を伴う発達過程での、架橋の十分な減少であると解釈される。これら研究が示唆することは、コラーゲン架橋増加の機構が、進行性劣化を抑制すること、脊柱側湾における椎間板の力学的安定性、及び引張応力の上昇時に重要な意味をもつということである。
【0006】
内因性の(自然に生じる−酵素によって誘発される、加齢による非酵素的な)及び外因性の(歴史的には移植に適用)コラーゲン架橋は、荷重支持組織であるコラーゲンの強靭性及び剛性を増加させる(Chachra 1996, Wang 1998, Sung 1999a, Zeeman 1999, Chen 2001)。Sung(1999b)は、自然に分泌される架橋剤であるゲニピンが、他の架橋剤に比べて最終的により大きな抗張力及び強靭性を与えることを見出した。ゲニピンは、他の一般的に用いられる架橋剤と比べてかなり細胞毒性が低いことも示された。粘弾性特性に関しては、Lee(1989)が、アルデヒト固定により牛心膜における応力緩和及びクリープが減ることを見出した。最近、自然に分泌されるコラーゲン架橋剤は、組織保護及びエネルギー浪費の両方をする‘犠牲結合’を提供するものとして示された(Thompson ら 2001)。外科的に不安定化された椎間関節を再安定化するための外因性コラーゲン架橋の増大に直接適用することに関わる公知の参考文献はない。関節の安定性は、一般的に、関節に含まれる全ての組織の弾塑性的及び粘弾性的な力学的特性による複雑な現象であると考えられている。例えば、関節炎における劣化は、関節の過度の剛性又は不十分な剛性に続いて起こる。同様に、関節組織の粘弾性、経時的材料特性における変化は、組織劣化に至る組織における応力の型に影響し得る。正常で健全な関節構造の折り曲げは、通常、関節安定性の目安と考えられる。このため、関節の力学的特性の好ましい範囲は、通常、実験値を用いて決定されるべきである。関節の力学的特性の変化は、関節の傷、組織の疲労、又は外科的介入によって引き起こされ得る。劣化変化の影響は、無血管で栄養学的に障害のある椎間板又は膝半月版といった生物学的修復能に制限のある組織で高められる。脊髄の椎間板切除の全般的な成功率は、特に迅速な疼痛の軽減や仕事復帰に関して満足できるものではあるが、生体力学的研究(Goel, 1985, 1986)及び長期間の臨床結果(Kotilainen, 1993, 1994, 1998)は、脊髄不安定の潜在性を含め、髄核材料及び椎間板高さのかなりの損失に関連する腰椎に対する運動学的挙動変化及び変性変化を示唆している。現段階で、椎間板手術の後におこる不安定及び劣化の抑制において有効に補助する治療はない。それゆえ、外科的減圧術の後における椎間関節の固有安定性をいくらか修復することによって脊髄変性を防ぐ治療の存在が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、組織除去の外科的減圧術の後における椎間関節の固有安定性をいくらか修復することによって脊髄変性を防ぐための、コラーゲン架橋の増加を含む生化学的方法の提供における従来技術の欠陥を克服するものである。
【0008】
本発明の目的の1つは、一方で処理組織の特性を本来のまま維持しつつ、もともと本来備わっている水準を超えてコラーゲン組織における架橋を増加させることで、組織除去外科的減圧術の後におこる椎間板組織の進行性力学的劣化を抑制する方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、ヒト生体における組織への試薬の直接的接触を促進すべく、通常のアルデヒド固定剤と比較して十分毒性の低い架橋試薬を用いる方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、ゲニピン(ゲニポシド)又はプロアントシアニジン(バイオフラボノイド)又はメチルグリオキサール、又はトレオース、又はEDC、又はトランスグルタミナーゼ、又はリシルオキシダーゼのような非毒性架橋試薬(又は架橋試薬混合物)を適切な濃度でヒト生体椎間板組織に直接接触させることにより椎間板の線維輪組織の架橋を増加させることにある。
【0011】
本発明の他の目的は、針を用いて選択組織、例えば椎間板切除後の残存椎間板へ、直接注射すること、又はゲル若しくは軟膏といった持続放出型の伝達システムを設置すること、又は標的組織の中若しくは上に直接的に処理膜若しくはパッチを設置することによって、非毒性架橋試薬の低侵襲伝達のための治療法で架橋を増加させることにある。
【0012】
本発明によれば、効果的な疲労抑制剤及び椎間関節安定剤である非毒性架橋組成物を用いて、疲労抵抗及び関節安定性を改良すべく、組織除去外科的減圧術の後又はこれと組み合わせて適用される治療方法の提供がある。
【0013】
本発明の方法は、組織除去外科的減圧術の後又はこれと組み合わせて、残存したコラーゲン組織の少なくとも一部に架橋試薬の有効量を接触させる工程を有する。架橋試薬としては、ゲニピン、及び/又はプロアントシアニジン、及び/又はEDC、及び/又はリボースやトレオースといった糖類、及び/又はグリオキサールやメチルグリオキシルといった代謝副産物及び糖化最終産物(AGEs)、及び/又はリシルオキシザーゼ(LO)酵素(精製体若しくは組み換え体)又はトランスグルタミナーゼ(Tgase)、及び/又はLO若しくはTgaseプロモータ、及び/又はエポキシ若しくはカルボジイミドなどの架橋試薬が挙げられる。好ましくは、架橋試薬は、少なくとも100mMメチルグリオキサール及び/又は少なくとも0.25%ゲニピンを含む。より好ましくは、400mM濃度のメチルグリオキサール及び/又は0.33%濃度のゲニピンを含む架橋試薬である。さらに、架橋試薬は、担体媒体中に架橋剤を含み得る。好ましくは、架橋試薬は、次の試薬濃度範囲の1つ又は試薬濃度の組み合わせを有する:少なくとも0.001%(.01mg/ml)のヒト組み換えトランスグルタミナーゼ、少なくとも0.01%(0.1mg/ml)の精製動物肝臓トランスグルタミナーゼ、少なくとも0.25%のゲニピン、少なくとも0.1%のプロアントシアニジン、少なくとも100mMのEDC、少なくとも100mMのリボース、少なくとも100mMのL−トレオース、少なくとも50mMのメチルグリオキサール、少なくとも50mMのグリオキサール、0.1M尿素溶液における少なくとも0.001%のリシルオキシザーゼ。さらに、架橋試薬は、担体媒体中に架橋剤を含み得る。
【0014】
架橋試薬と接触するコラーゲン組織は、組織除去外科的減圧術後に残存した椎間板の一部である。組織と架橋試薬との間の接触は、針を用いた選択組織への直接的な注射によって達成される。又は、組織と架橋試薬との間の接触は、ゲル若しくは軟膏といった持続放出型の伝達システムの採用、又は標的組織の中若しくは上に直接的に処理膜若しくはパッチを設置することによって達成される。接触は、例えば、浸すこと又はスプレーによっても達成され得る。
【0015】
本発明の他の目的は、コラーゲン架橋を増加させることにより組織除去外科的減圧術の後の脊椎椎間板を安定化させるべく、身体自体の活動を高める生化学的方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、曲げヒステリシス(負荷−非負荷の全サイクルにおけるエネルギー損失)を減らすこと、及び、中立帯サイズ(屈曲カーブの低剛性の回転領域)を減らすこと、可動域を通常又は手術前水準に減らすこと、及び、曲げ歪みエネルギー(貯蔵又は返送曲げエネルギー)を増やすこと、及び、非毒性架橋試薬を病変の椎間板に注射することにより負荷曲げモーメントからの“はね返り”特性を増加させることで、組織切除外科的減圧術の後の椎間関節における低剛性領域の剛性を通常又は手術前水準に上げること、によってこの安定性増大を引き起こすことにある。
【0017】
本発明の他の目的は、組織切除外科的減圧術によって外科的に変えられた椎間板へ非毒性の架橋試薬を注射することにより、治療介入前の本来の水準にまで、曲げヒステリシス、及び、中立帯サイズ、及び、可動域、及び、曲げ歪みエネルギー、及び、低剛性領域の剛性を戻すように安定性を高めることにある。
【0018】
注射に適した部位は、従来技術によって可能であるような患部組織の3次元再構築を用いることにより、また、不安定及び組織劣化に対する最も大きな防御をなし得るように、これら再構築とこれら試薬の最適な配置を推奨する演算手順とを組み合わせることにより決定され得るものである。架橋剤投与のための好ましい部位の3次元描写は、外科的に切除され又は変えられた組織を表示し又は目立たせ、また、応対する患者の医学的画像の型を具現化するカスタムコンピュータソフトウェアで最も良好に創作され、ラップトップコンピュータ又は専用装置のようなコンピュータ接続表示装置において最も良好に映し出され得る。加えて、ガイドできる関節鏡型装置が用いられ、又は改良され、又は改善され、椎間板又は近接する軟骨、骨、皮膜、又は靱帯の組織の適当な領域に試薬を投与することを手助けする。
【0019】
本発明のさらなる利点及び優れた特徴は、その後の記述で一部記載されており、続く詳述の実験において当業者にとって一部明らかになり得るものであり、本発明の実験により認識され得る。本発明の利点は、とりわけ添付の請求項に示された計器、化合物、組成物、方法、装置、及び適用トレイによって達せられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、二元配置ANOVA分析の応力緩和試験結果のグラフである。
【図2】図2は、G2架橋処理によってなされた硬度試験結果のグラフである。
【図3】図3は、無傷、椎間板切除にさらされたもの、非酵素(メチルグリオキシル)試薬で架橋されたものにおける脊髄コラーゲン組織の不安定パラメータを比較したチャートである。
【図4】図4は、無傷、椎間板切除にさらされたもの、有機(ゲニピン)試薬で架橋されたものにおける脊髄コラーゲン組織の不安定パラメータを比較したチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ヒト身体におけるコラーゲン組織の抵抗を改善する方法及び装置を提供するものであり、その方法及び装置では、コラーゲン組織又は近接した組織の外科的な切除又は除去が、組織の劣化の一因となる有害な力学的負荷環境を生むところにおける、架橋試薬の有効量を少なくともコラーゲン組織の一部と接触させる工程が含まれている。本発明の一実施形態では、本発明の方法は、外科的に影響を与えられた椎間板組織の進行性力学的劣化を抑制し、コラーゲン架橋を増やすことで力学的不安定組織を安定化すべく体自身の活動を高めることにより疲労抵抗及び関節安定性を改良する方法をも提供する。この実施形態では、ヒト生体における組織に試薬を直接接触させることを助けるべく、通常のアルデヒド固化剤と比べて十分毒性の低い架橋試薬の特定の構成をも提供する。
【0022】
本発明の第二実施形態では、方法及び装置は、コラーゲン架橋を増やすことにより、椎弓切除、椎弓切開、脊椎関節突起切除、椎間板切除のような神経系の減圧術といった外科的不安定化処置の後に起こる又はこれに伴って起こる、椎間板及びその周辺組織における疲労抵抗の改善、及び、進行性劣化の抑制という安定化のために提供される。後者の例は、進行性劣化、及び、椎間板切除や経皮的椎間板切除に伴う骨後部減圧術の後、付随して起こる疼痛である。正しくなされたときのこれらの処置は、通常、迅速な症状の軽減に有効であるが、外科的に変えられた椎間関節への不安定化影響は、十分に立証されている。筋骨格組織の外科的切除によって引き起こされる不安定化は、多くの場合、関節変性及び関連した関節及び関節組織の長期間にわたる劣化を導き、続いて疼痛、神経根障害、及び他の臨床症状の兆候を導く。本発明は、外科的に影響を受けた関節のコラーゲン組織におけるコラーゲン架橋を増加させることによって、組織の応力、変形、動きを適当な生理的水準に確保し、関節安定性を適当な水準に再構築することによって関節及び関節組織の関節変性を防ぐために用いられ得る。
【0023】
本発明の架橋試薬は、特に限定されない。実質非毒性でコラーゲン材料の有効な架橋剤として知られているものであれば、用いられ得る。架橋試薬は、架橋剤がヒト生体の組織に直接接触することを手助けすべく、実質非毒性であることを要する。好ましくは、架橋試薬は、通常のアルデヒド固定化剤と比べ実質毒性が低いことを示す。より好ましくは、非毒性の架橋試薬が用いられる。
【0024】
適当な細胞毒性試験が、ヒトでの使用に先立ち対象架橋試薬の最小細胞毒性を検証すべく用いられ得る。マウス結合組織に適用される標準形式(F895-84(2001)el Standard Test Method for Agar Diffusion Cell Culture Screening for Cytotoxicity)の、又は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(ASTM E 1262-88(1996) Standard Guide for Performance of the Chinese Hamster Ovary Cell/Hypoxanthine Guanine Phosphoribosyl Transferase Gene Mutation Assay)の、細胞毒性における組織特異性のインビトロ試験、好ましくは、椎間板の線維組織及び膠様組織が近接している組織からの細胞株を用いる試験が、最小細胞毒性を有すると知られている架橋試薬の特定の組み合わせにおける毒性の水準を評価するためにおこなわれるべきである。これらインビトロ試験の後は、同様に、ヒトでの使用前にインビボの動物試験をおこなうべきである。
【0025】
架橋試薬は、少なくとも1種の架橋剤を含む。本発明に従って選ばれた架橋剤は、効果的なコラーゲン材料の架橋剤である。架橋試薬で用いられた場合に有効な架橋剤は、架橋剤がコラーゲン組織の一部と接触するようにされたときにコラーゲン組織の架橋数を増加させるものである。組織切除による応力水準の上昇は、残存した関節組織の疲労劣化を促進する。椎間板切除のような脊椎後部減圧処置におけるように外科的な組織切除は、影響を受けた関節の力学的な不安定性を生み、関節組織の劣化促進及び臨床症状につながる。それゆえ、有効な架橋剤は、治療された組織の疲労抵抗を改善し、反復的な生理的負荷によって起こる材料特性の劣化を弱め、又は、影響を受けた関節及び関節組織を安定化する。同様に、有効な架橋剤は、治療された組織の疲労負荷による弾塑性特性における低下を弱める。本発明の一実施形態では、架橋剤は、実質的に非毒性で本質的に架橋剤になるゲニピンである。ゲニピンは、親化合物である、クチナシの果実から単離され得るゲニポシドから得られる。ゲニピンは、商業的には、Challenge Bioproducts Co., Ltd., 7 Alley 25, Lane 63, TzuChiang St. 404 Taichung Taiwan R.O.C., Tel 886-4-3600852から得られる。本発明の他の実施形態では、架橋剤はバイオフラボノイドであり、より具体的には、バイオフラボノイドはプロアントシアニジンである。プロアントシアニジンを含む混合物は、「MegaNatural.TM. Gold」として、Polyphenol ics, Inc, 22004 Rd. 24, Medera, Calif. 93638, Tel 559-637-5961から得ることができる。1種以上の架橋剤が用いられ得る。適当な架橋剤としては、リボースやトレオースといった糖類、又はグリオキサールやメチルグリオキシルといった代謝副産物及び糖化最終産物(AGEs)、又はリシルオキシザーゼ(LO)酵素のような酵素(精製体若しくは組み換え体)、又はトランスグルタミナーゼ(Tgase)、又はLO若しくはTgaseプロモータ、又はエポキシ、カルボジイミドが挙げられる。好ましくは、架橋試薬は、次の試薬濃度範囲の1つ又は試薬濃度の組み合わせを有する:少なくとも0.001%(.01mg/ml)のヒト組み換えトランスグルタミナーゼ、少なくとも0.01%(0.1mg/ml)の精製動物肝臓トランスグルタミナーゼ、少なくとも0.25%のゲニピン、少なくとも0.1%のプロアントシアニジン、少なくとも100mMのEDC、少なくとも100mMのリボース、少なくとも100mMのL−トレオース、少なくとも50mMのメチルグリオキサール、少なくとも50mMのグリオキサール、0.1M尿素溶液における少なくとも0.001%のリシルオキシザーゼ。1種以上の架橋剤が用いられ得る。
【0026】
架橋試薬は、架橋剤に加え担体媒体を含み得る。架橋剤は、架橋試薬を調製するために担体媒体に溶解又は懸濁され得る。一実施形態では、架橋剤は、非毒性で生体適合性のある担体媒体に溶解される。担体媒体は、ヒト生体において組織又は周辺組織に実質損傷を与えることなく、組織に架橋剤を接触させることを仲介させるべく、実質的に非毒性であることを要する。好ましくは、選ばれる担体媒体は、水であり、より好ましくは、食塩水である。好ましくは、担体媒体のpHは、組織環境と同じ又は近似するように調整される。さらに好ましくは、担体媒体は、緩衝化されている。本発明の一実施形態では、担体媒体は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0027】
架橋剤が担体媒体に溶解された際、架橋剤の担体媒体における濃度は特に限定されるものではない。濃度は、実質的に非毒性を同時に保ちつつ、組織の架橋を増加させる有効な量であり得る。
【0028】
本発明に基づいて、架橋試薬は、非変性の体内のコラーゲン組織の一部に接触される。ここで、コラーゲン組織は、十分量のコラーゲンを有する身体において構造的な又は荷重支持的な組織として特徴付けられる。試料としては、椎間板、関節軟骨、線維軟骨、靱帯、腱、骨、及び皮膚が挙げられる。一般的に、架橋試薬に接触するコラーゲン組織部分は、荷重を受ける組織部分である。さらに、少なくとも組織の外科的な切除があったところでは、架橋試薬と接触する組織部分は、少なくとも切除された組織に隣接する組織部分である。好ましくは、外科的に変えられた関節において完全な状態で残存した組織又は外科的に変えられた組織は、架橋試薬と接触する。さらに、外科的に変えられた関節組織に隣接する組織も、架橋試薬と接触する。骨後部減圧外科術及び椎間板切除にさらされた椎間関節組織の場合、架橋試薬と接触する組織としては、少なくとも残存した椎間板がある。
【0029】
本発明に基づいた使用を特にすることができるコラーゲン組織としては、椎間板、及び膝半月板のような線維軟骨が挙げられる。コラーゲン組織が椎間板である場合には、好ましくは架橋試薬に接触する椎間板の部分は、残存した線維輪の全てである。椎間板切除において作られた又は使われた椎間板の穴を塞ぐためにコラーゲン組織パッチが用いられる際、好ましく架橋試薬と接触する椎間板の部分は、残存した線維輪の全てであり、パッチ組織又は代替組織、及びパッチ周辺の組織である。部分的な半月板切除の場合、又は断裂した半月板の一部が外科的に取り除かれたとき、架橋試薬と好ましく接触する半月板の部分は、残存した半月板組織の全てである。
【0030】
コラーゲン組織の選択部分は、有効量の非毒性架橋試薬と接触されるべきである。“有効量”とは、処理された組織部分に十分な力学的影響を及ぼす架橋試薬の量である。具体的には、架橋試薬の“有効量”は、治療された組織の疲労抵抗を改善し、反復的な生理的負荷によって起こる材料特性の低下を弱め、又は、疲労負荷による処理組織の粘弾性特性の上昇を弱め、又は疲労負荷による処理組織の弾塑性特性における低下を弱め、関節安定性特性を改良又は修復し、通常又は組織切除前の水準にまで曲げヒステリシスを回復させ、通常又は組織切除前の水準にまで関節可動域を減らし、通常又は組織切除前の水準にまで中立帯サイズを減らし、通常又は組織切除前の水準にまで曲げ弾性エネルギー貯蔵を増やすために十分な量である。有効量は、実施例1において記載された疲労及び劣化抵抗試験に従って決定され、実施例2において記載された安定性試験に従って決定される。
【0031】
本発明の方法としては、少なくともコラーゲン組織の一部を有効量の架橋試薬に接触させるものが挙げられる。接触は、様々な方法でなされる。好ましくは、コラーゲン組織の接触は、非毒性架橋試薬の低侵襲伝達によって達成される。好ましくは、組織と架橋薬剤との接触は、針を使って選択組織へ直接注射することによりなされる。好ましくは、組織と架橋薬剤との接触は、単一又は最小数の注射箇所での注射によってなされる。好ましくは、架橋溶液の量は、針及びシリンジを用いて標的とする組織に直接注射することによってなされる。好ましくは、コラーゲン組織部分が完全に網羅された処理が達成されるように、十分な数の注射が、処理されるべき組織に沿っておこなわれる。
【0032】
また、組織及び架橋試薬の間の接触は、標的とする組織の中又は上に直接、持続放出型システムを採用することにより達成される。用いられる持続放出型システムは、処理膜又はパッチである。試薬含有パッチは、巻かれてシリンダーに入れられ、管を通して経皮的に組織へ挿入され、広げられて、生物接着製剤又は吸収性の固定道具(縫合又は連結)を用いて標的とする組織の周辺に貼り付けられる。
【0033】
用いられ得る他の持続放出型システムは、ゲル又は軟膏である。ゲル又は軟膏は、分解可能なものであり、標的とする組織の外側に塗布され得る粘性の担体である。
【0034】
接触は、架橋溶液量がカプセル若しくは滑膜袋へ注入されている、嚢内浸漬又はスプレーのような、浸漬又はスプレーによってなされ得る。
【0035】
留意すべき点としては、ここで処理される方法及び組成物は、関節安定性、又は外科手術後の不安定の後の修復、また、力学的劣化に対するヒト生体におけるコラーゲン組織抵抗を永久に改良することを要するものではないことが挙げられる。ヒトが1日あたり、直立と前方への屈曲とを2〜20回おこなうと仮定すると、コラーゲン組織と架橋試薬との接触に付随する安定性の改良や疲労抵抗の増加は、時間とともに減っていく。しかしながら、安定性の改良や疲労抵抗の増加は、生理的力学的劣化をすることなく、数ヶ月から数年の期間続くことが好ましい。このような環境下で、上述した治療処理は、関節安定性や疲労抵抗に対する高まった抵抗を維持するのに十分な時間周期で繰り返される。上記した仮定を採用して、接触は、関節安定性の改良や疲労抵抗に対する高まった抵抗を維持すべく定期的に繰り返され得る。ある治療では、接触の間の期間は、ある個人には約1年に相当すると見積もられる。それゆえ、1回の処理又は反復注射/処理のいずれでも、本発明の方法は、長期間にわたって関節安定性を改善し、またコラーゲン組織の力学的劣化を小さくするものである。
【0036】
本発明の他の特徴は、椎間板の安定性を改善するため、外科的に不安定化された椎間板の再安定化のため、進行性関節劣化の抑制のため、力学的劣化に対するコラーゲン組織の抵抗を改善するために、装置又は“試薬適用トレイ”として前述の架橋試薬を用いることに関する。
【0037】
“試薬適用トレイ”は、滅菌されており、滅菌された包装内で含まれている。必要とされ適当であり予め計量された試薬、溶媒、及び使い切り伝達道具の全てが、滅菌され包装された適当な“試薬適用トレイ”を含む外包材の中に共に包装されている。試薬、溶媒、及び伝達道具を含むこの滅菌トレイは、滅菌されプラスチック筺体の内側表面に接した状態で含まれている。このトレイは、適当な適用位置を示すために必要なコンピュータハーウェア及びソフトウェアパッケージから離間して作られ得る。
【実施例】
【0038】
(実施例1及び1A)
33の腰部椎間関節を4ヶ月齢の仔牛の脊柱から採取した。椎間関節を適宜3つのグループに分けた:無処理のコントロール12試料サンプル、ゲニピン処理1(G1)の6試料サンプル、ゲニピン処理2の(G2)13試料サンプル。G1処理では、試料全体を0.033%のゲニピン濃度のPBSに72時間浸漬した。同様に、G2処理では、試料全体を0.033%のゲニピン濃度のPBSに72時間浸漬した。PBS中の0.33%ゲニピンは、50mlを10倍希釈することで作製される。1.65グラムのゲニピンを、蒸留水を用いたPBS(リン酸緩衝生理食塩水)と混合して、10倍にして、500ml(500g)の0.33%(重量%、g/g)溶液を作る。心膜及び腱組織試料での前試験が、組織架橋に起因する組織膨張(組織への水の浸透圧侵入)の減少を実証した。いくつかのコントロールは、疲労試験の前に浸漬されなかった。他の試料は、生理食塩水に72時間浸漬された。水質量損失試験が、浸漬用ゲニピンと浸漬用0.9%生理食塩水コントロールとの間における線維輪外方部の水和の同等さを確認するためにおこなわれた。処理の選択は、脊髄の段階でランダムにおこなわれた。試料の脊柱端は、力学的試験を容易にするためにポリウレタンに埋め込まれた。
【0039】
押込試験及び圧縮/曲げ疲労サイクルを表1に示す順でおこなった。
【0040】
【表1】

【0041】
負荷計画における上述した点において、押込試験は、後に述べる粘弾性特性を見出すために用いた。応力緩和値は、応力の減少結果を応力緩和として記録しつつ、直径3mmの半球形押込体を10Nでランプ負荷し、その後移動させて60秒間置くことにより収集した。押込試験は、ランプ負荷値からの硬さ指標(押込への抵抗)を計算することにより弾塑性特性を決定するためにも用いられた。硬さ測定の記録に先立ち、組織は10回押し込みをされた(初期10N負荷で移動、60秒/サイクル)。
【0042】
この試験の手順は、2つの原理に基づいている。第1に、粘弾性性質が反復負荷により漸近的に減少する。第2に、硬さ測定が組織の負荷履歴に敏感である。しかしながら、この影響は、10回の負荷サイクルでわずかなものとなる。これらの影響を最小限にすべく、粘弾性値(応力緩和)は、予め押し込みされていない組織から収集した。また、弾塑性値(硬さ)は、反復して負荷をかけられた(前調整された)組織から収集された。この場合、反復押込は、硬さ測定において、粘弾性特性変化の望ましくない影響を減らすこと、即ち、反復の欠落を減らすことを目的としている。これら試験処置は、様々な負荷履歴や負荷位置を繰り返し測定したいくつかの予備実験にから導き出された。
【0043】
最初の押込試験に続き、試料は、0.25Hzの速さで3000サイクル、200Nの曲げ圧縮での負荷を繰り返し受けた。負荷は、椎間板面に対して垂直に、試料横断面の中央から40mm前方側にかけられた。押込試験値の2セットが、疲労サイクルの後に収集された。この処置に続いて2サイクルの疲労負荷がおこなわれた。全ての試験中、試料は、湿分量を維持すべく生理食塩水で湿潤したガーゼでくるまれていた。疲労サイクル及び非破壊押込試験は、MTS 858.022 2軸卓上、10kN能のサーボ水圧材料試験機(MTS, Eden Prairie, Minn.)、MTS Test Starデータ取得システムでおこなわれた。いくつかの統計的測定が、結果の優位性を評価すべく計算された。ネスト二元配置分散分析(ANOVA)が、処理及び疲労サイクル数による影響を確認すべく用いられた。試験値のノンパラメトッリック性質のため、帰無仮説を決定すべくマンホイットニーの非パラメトリック順位和検定が採用された:1)組織のサイクル前力学的パラメータ、又は2)疲労負荷による弾塑性及び粘弾性の力学的パラメータにおける変化(劣化)の量。統計的有意性の信頼水準は、p<0.05に設定した。
【0044】
ネストANOVA分析は、粘弾性(応力緩和)及び弾塑性(硬さ)の力学的パラメータの両方が疲労サイクル及び処理タイプによって独立に作用することを決定付けた。これらの統計的結果を表2に示す。
【0045】
応力緩和試験結果を図1にグラフとして示す。架橋処理によって引き起こされる応力緩和曲線において初期の下方移動がある。これは、より高い応力緩和がより大きな組織の劣化に関係しているという有益な結果を示している(Lee 1989)。G1及びG2処理グループにおける初期の疲労前応力緩和は、それぞれ26%及び19%(p=0.009、及び、p=0.026)であり、コントロールの疲労前応力緩和より低かった。6000回の非破壊負荷サイクルの後、応力緩和の変化によって示されるように、疲労抵抗における劇的な改善もある。G2処理の椎間板における6000回疲労サイクルによる応力緩和の変化は、コントロールにおける変化の3分の1より小さい(p=0.044)。しかしながら、ゲニピン濃度がより低くなると疲労抵抗において同じような改善がみられない。
【0046】
硬さ試験結果を図2にグラフで示す。G2架橋処理によって引き起こされる硬さにおいて初期の上方移動がある。これは、硬さの欠乏が組織における構造的完全性の欠乏の示唆であるという有益な結果を示している。G2処理グループの初期の疲労前硬さは、コントロールグループより大きい17%であった(p=0.026)。しかしながら、この有益な結果は、3000回の疲労サイクルの前になくなり、3000サイクルと6000サイクルと間の硬さにおける変化は、2つのグループ(G2=−0.94、コントロール=−1.01)で本質的に同じであると思われる。
【0047】
【表2】

【0048】
上記実験値は、反復非外傷性負荷による椎間板組織の、弾性及び粘弾性的な力学的劣化を数量化している。これら実験の結果は、非毒性の架橋試薬が、コラーゲン組織、即ち椎間板において疲労に関連した材料特性の低下を弱めることを実証している。粘弾性的な劣化における3倍を超える減少が、仔牛椎間板組織を0.33g/mol濃度のゲニピンに浸漬することによりもたらされた。実験した設計では、弾性的な力学的特性(硬さ)における改善を3000試験サイクルまで維持することができなかった。
【0049】
脊髄椎間板における損傷に匹敵するほどの時間の長さを平均的なヒトにどれだけ与えるかを正確に見積もることは困難である。たしかに、記載した実験によって与えられた力学的劣化に加え、実験環境によってもたらされるこれら死んだ組織の“自然な”劣化の付加がある。非負荷のコントロールは、材料特性のこの“自然な”劣化が有意なものではないことを示した。測定は、この自然な劣化を最小限にするために、実験中に試料を湿潤に保つことにより、また、負荷頻度を上げることによりおこなわれた。同時に、負荷頻度は、組織の過熱を防ぐべく生理的限界の範囲内で維持された。これら測定は死んだ組織のインビトロ力学的試験のために標準的手順を構築したという点に、留意すべきである。ヒトが1日あたり直立状態から前方への屈曲を2〜20回経験すると仮定すると、これら実験値は、およそ生理的な力学的劣化の数ヶ月〜数年に相当する。
【0050】
記載した治療処理は、例えばこの負荷強さにおける3000回の疲労サイクルで説明される期間中繰り返される。上記のように特定した仮定を用いて、このサイクル回数は、ある個人にとって約1年に相当することが見積もられ得る。それゆえ、1回の処理又は反復の注射/処理で、個人は長期間にわたって椎間板の力学的劣化を最小限にすることができる。他の選択肢としては、直接塗布されるパッチ、ゲル、軟膏などの持続放出型の伝達システムが挙げられる。
【0051】
(実施例2)
脊髄の椎間板切除の全般的な成功率は十分なものではあるが、生体力学的研究(Goel, 1985, 1986)及び長期間の臨床結果(Kotilainen, 1993, 1994, 1998)は、脊髄不安定の潜在性を含め、髄核材料及び椎間板高さのかなりの損失に関連する腰椎に対する運動学的挙動変化及び変性変化を示唆している。現段階で、不安定の抑制、及び椎間板手術の後におこる修復において有効に補助する治療はない。しかしながら、コラーゲン架橋は、脊髄変形に抵抗する能力を含め、椎間板組織における好ましい効果を示し、抗張力及び栄養運搬を増加させる。それゆえ、この実験の目的は、後方減圧術のあとの外因性コラーゲン架橋が、関節の再安定化の構成要素である椎間関節の生体力学的特性を高めることを立証することにある。
【0052】
15の冷凍した新鮮な牛脊髄の機能的脊柱単位を、反復測定計画に用いる実験手順のために用いた。8軸材料試験機(EnduraTEC, Minnetonka, MN)を、各試料の柔軟性を測定するために3条件で用いた:傷なし、椎間板切除後、及びコラーゲン架橋材注射後のもの。椎間関節切除の試験に続いて、試料は、架橋剤の型に基づいて2つのグループに分けられた。椎間板は、非酵素架橋剤(400mMメチルグリオキサール 1XPBS、n=7)又は有機架橋剤(0.33%ゲニピン 1XPBS、n=8)で処理された。注射処理は、21−ゲージ針を用いて椎間板を十分網羅するように、20ccより少ない量で切除後の線維輪の4箇所(前部へ直接、後部へ直接、後側部の両側)への注射でなる。椎間板コラーゲンを十分に架橋させるべく、試料は室温で48時間静置し、組織の生分解を防ぐためにEDTA溶液で断続的に水和させた。
【0053】
屈曲/伸長(矢状面)負荷(±4Nm)の連続的サイクルをおこない、結果として起こる運動特性が測定された。各条件の4回目の負荷サイクルが不安定さを決定するために採用された。不安定さは、中立帯(NZ)、%ヒステリシス(HYS)、可動域(ROM)、及び%歪みエネルギー(SE、SE=100−HYS)を計算することによって数値化した。変数は、無傷のときの値に対して標準化された。一対比較が、ウィルコクソン符号順位検定を用いてなされた(有意水準、p<0.05)。
【0054】
図3及び4を参照すると、切除は、NZ(p=0.009)、HYS(p=0.004)、ROM(p=0.003)、及びSE(p=0.004)において無傷のものと比べて大きな変化を誘発し、部分的椎間板切除の不安定作用を実証している。架橋剤に関わらず、全ての試料は、全ての変数(全p値<0.018)に関し、注射処理の後には不安定さの減少を示した。有意差は、どのグループでも無傷及び注射後の間で、存在しなかった。
【0055】
通常の外科的処置の後における椎間板の外因性コラーゲン架橋は、全測定パラメータにおいて椎間関節の再安定化に効果的である。実際、この研究で採用された負荷において、非酵素(メチルグリオキサール)及び有機(ゲニピン)架橋剤は、基本的に各セグメントを無傷の状態(最もは6%内、NZ 18%内)に戻した。現臨床処置として外因性コラーゲン架橋をすることは、脊髄の外科的減圧術に関連して続いて起こる脊髄不安定や変性変化を抑制する又は遅らせることに役立つ。
【0056】
両側の椎弓切除及び切除術を含む後方減圧術を受けた患者には、生理食塩水(0.15M)中の400mM L-トレオース、生理食塩水中の200mMメチルグリオキサール含有溶液、200mMグリオキサール溶液、200mMEDC溶液、0.1M尿素生理食塩水中の50〜100μgリシルオキシダーゼ含有溶液、生理食塩水中に50μg/mlのヒト組み換えトランスグルタミナーゼを含有する溶液、生理食塩水中に200μg/mlの精製動物肝臓トランスグルタミナーゼを含有する溶液といった架橋剤を用いて、残存椎間板(線維輪)を処理することによって、影響を与えるレベルで治療をすることができる。椎間板切除を含む後方減圧術の後ただちに、又は、手術後の数日内に、架橋剤は残存している全椎間板に対して外科的に減圧されるレベルで注射され得る。治療をする医者の選択によって、好ましい非毒性の架橋剤の複数の注射が、1箇所又は複数箇所の注射部位を通じておこなわれ得る。蛍光又は他の撮像手段が、架橋剤を選択した組織へ運搬させるべく用いられ得る。患者は、数日間の間激しい運動をひかえるように指示されるべきである。
【0057】
本発明は、本発明の基本的な概念を遂行する様々な方法のいくつかのみを代表する好ましい又は代替する実施形態に関して記述された。当業者に起こる発明概念の遂行における改良や変化が、添付の請求項で明示されているように、本発明及び均等物の範囲内にある。
【0058】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2007年2月28日に出願された特許出願第11/712,684号の一部継続出願であり、2006年2月2日に出願された特許出願第11/346,464号の一部継続出願であり、2004年2月24日に出願された特許出願第10/786,861号の一部継続出願であり、2002年8月28日に出願された特許出願第60/498,790号の米国仮出願の利益を請求したものであり、2002年8月29日に出願された特許出願第10/230,671号の一部継続出願であり、2001年8月31日に出願された特許出願第60/316,287号の米国仮出願の利益を請求したものである。
【0059】
次の出版物は、本明細書で参照することにより援用される。
【0060】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎間板内に残存したコラーゲン組織の少なくとも一部を有効量の架橋試薬と接触させる工程を含み、組織除去外科的減圧術の結果生じるコラーゲン組織応力上昇に影響される脊髄の椎間関節の安定性を改善する方法。
【請求項2】
(a)曲げヒステリシスを正常な又は組織除去前の水準にまで低下させること、(b)関節可動域を正常な又は組織除去前の水準にまで減少させること、(c)中立帯サイズを正常な又は組織除去前の水準にまで減少させること、(d)曲げ弾性エネルギー貯蔵を正常な又は組織除去前の水準にまで高めること、の1つ以上を含み、椎間関節安定性の回復又は上昇に関連した脊髄の材料特性を改善する請求項1記載の方法。
【請求項3】
架橋試薬を椎間板の少なくとも一部と接触させる請求項1記載の方法。
【請求項4】
架橋試薬が、ゲニピン、プロアントシアニジン、リボース、トレオース、グリオキシル、メチルグリオキサール、リシルオキシダーゼ、トランスグルタミナーゼ、リシルオキシダーゼプロモータ、Tgaseプロモータ、エポキシ、及びカルボジイミドからなる群より選ばれたものである請求項1記載の方法。
【請求項5】
椎間板に隣接した組織内のコラーゲン組織の少なくとも一部を有効量の架橋試薬と接触させることをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
コラーゲン組織と架橋試薬との接触を、持続放出型の伝達システムをコラーゲン組織の一部の中又は上に直接的に設置することによっておこなう請求項1記載の方法。
【請求項7】
架橋試薬をコラーゲン組織に接触させる部位を決定すべくコラーゲン組織の3次元再構築を用いることをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
コラーゲン組織と架橋試薬との接触を、コラーゲン組織の一部へ針で直接注射することによりおこなう請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−522164(P2010−522164A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554525(P2009−554525)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/002919
【国際公開番号】WO2008/118278
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509264006)オーソピューティックス,エル.ピー. (1)
【氏名又は名称原語表記】ORTHOPEUTICS,L.P.
【住所又は居所原語表記】25665 Frost Lane,Stevenson Ranch,CA 91381 (US)
【Fターム(参考)】