説明

外装コンクリート管

【課題】コンクリート外装の表面仕上げには非常に多くの労力を投入することが必要であり、そのため管の生産効率を大幅に下げる要因となっている。そこで、外装コンクリート管のコンクリート外装の表面を手直しすることを不要として、その生産効率を向上させる。
【解決手段】外装コンクリート管であって、管体1の外周に形成されたコンクリート外装7の周囲にシート11が巻き付けられている。前記のシートは不織布にて構成されているとともに塗料或いはコンクリート、モルタル、樹脂モルタル等のセメント系の材料が含浸されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外装コンクリート管に関する。
【背景技術】
【0002】
推進工法によって地中に埋設される鋳鉄管として、一端に受口を有するとともに他端に挿口を有し、受口および挿口以外の管胴部の外周に、この管胴部の外径を受口の外径に等しくして推進抵抗を軽減させるためのコンクリート外装が形成されたものがある(特許文献1)。このような管は外装コンクリート管と称されている。
【0003】
図5は、このような外装コンクリート管の一例の断面構造を示す。ここで1はダクタイル鋳鉄管であり、その一端に大径の受口2が形成されるとともに、その他端に挿口3が形成されている。受口2と挿口3との間の管胴部4は、挿口3と同径に形成されている。挿口3の外面には、フランジ5と、このフランジ5をバックアップするためのリブ6とが形成されている。管胴部4の外周には、この管胴部4の外径を受口2の最大外径に等しくするためのコンクリート外装7が形成されている。コンクリート外装7の内部には、鉄筋8が埋設されている。
【0004】
このような構成の外装コンクリート管を製造する際には、鋳鉄管1の外周にコンクリート外装7を打設するのであるが、打設後にコンクリート外装7の表面にヘアクラックやえくぼ状の微小凹部が発生しやすい。これらは、管の性能上の問題にはならないが、管外面の美観を害するものであり、商品価値を低めることになるものであるため、手直しを行うことが望ましい。
【0005】
そこで、従来においては、コンクリート外装7の打設後にその表面の欠陥の修復すなわち表面仕上げを行っている。
【特許文献1】実開平7−20393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、コンクリート外装の表面仕上げには非常に多くの労力を投入することが必要であり、そのため管の生産効率を大幅に下げる要因となっている。
【0007】
そこで本発明は、このような課題を解決し、外装コンクリート管のコンクリート外装の表面を手直しすることを不要として、その生産効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の外装コンクリート管は、管体の外周に形成されたコンクリート外装の周囲にシートが巻き付けられているようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、外装コンクリート管のコンクリート外装の周囲にシートを巻き付けることで、このコンクリート外装の表面を覆い隠すことができるため、手直しによるコンクリート外装の表面仕上げを行う必要が無く、シートの巻き付けを行うだけで済むため、あるいは必要に応じてさらに塗装を行うだけで済むため、外装コンクリート管の生産効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照しながら、本発明の実施の形態の外装コンクリート管の断面構造を、図5に示したものと同一の部材には同一の参照番号を付して、詳細に説明する。図示のように、ダクタイル鋳鉄管1のコンクリート外装7の周囲には、帯状のシート11がらせん状に巻き付けられている。このシート11は、一般的な塗料や;コンクリート、モルタル、樹脂モルタル等のセメント系の材料などを含浸させることが可能な、含浸性にすぐれた布帛などの材料にて形成されている。なお、ここにいう樹脂モルタルとは、セメントモルタルと合成樹脂とを混合させたものを意味する。シート11を構成する材料として、具体的には、合成樹脂繊維にて構成された不織布などを挙げることができる。たとえば、ポリプロピレン製の不織布であって、厚さ48μm、目付け14g/mで、作業者がコンクリート外装7の外周に巻き付けるときの作業性が良好であるように幅200mm程度に形成されているものを、好適に用いることができる。
【0011】
このような不織布は、破断強度がたとえば25N/50mmと小さい。このため、推進工法によって地中に管路を敷設する際に障害物などがある場合に、シート11におけるその障害物と接触する部分のみが切れて、薄手の塗膜片状の粉末として敷設路に堆積するだけである。図2はこのときの状態の一例を示す。14は本発明の外装コンクリート管、15は管14を推進させるために設けられたシールド、16はシールド15の内部で管14を支えるための架台である。この架台16が上述の障害物に相当し、シート11は架台16に接触した部分が切れて、それにより塗膜片状の粉末17がシールド15の底部に堆積している。シート11が切れた部分では、管14のコンクリート外装7がわずかに露出している。図示のように、シート11における架台16に接触しなかった部分は管14の外面から剥がれ落ちることがなく、広範囲の剥がれ落ちが発生することがないため、好都合である。
【0012】
反対にシート11が破断強度のある素材にて形成されている場合であって、その破断強度がたとえば100N/50mm程度に達するときには、図3に示すように架台16に接触したときにシート11が切れずにめくり上がる状態となり、図示のような広範囲の剥がれ落ち18が生じて、多量のゴミが発生する可能性が高くなる。
【0013】
シート11は、図1に示すように、幅方向の一端部11aが受口側に位置するとともに、その他端部11bが挿口側に位置する状態でコンクリート外装7の外周に巻き付けられ、隣り合う端部11a、11bどうしが互いに重ね合わされた状態とされる。このとき、図示のように、挿口側の他端部11bの上に、隣り合う受口側の一端部11aが重なるようにして巻き付けられる。たとえば、幅寸法の1/2ずつが重なるようにして巻き付けられる。すなわち、シート11は、このように隣り合う端部どうしを重ね合わせながら、受口2から挿口3に向かう方向にらせん状に巻き付けられる。このように巻き付けられると、挿口3を前側とし受口2を後側として推進する通常の推進工法の際において、推進時にシート11にめくれが発生することを良好に防止できる。なお、シート11が上述した破断強度のある材料にて形成されていると、シート11の強度が、コンクリート外装7とシート11との密着力を上回るため、上記のような受口2から挿口3に向かう方向へのらせん状の巻き付け状態であっても、図3に示すように、めくれが発生しやすくなる。
【0014】
シート11を巻き付ける前には、コンクリート外装7の表面を水洗いなどによって洗浄することが好ましい。これにより、コンクリート外装7の表面に付着していた塵埃などが除去されて、コンクリート外装7に対するシート11の密着性を向上させることができる。
【0015】
コンクリート外装7にシート11が巻き付けられたなら、次にこのシート11に化粧塗装を施すことが好ましい。このようにすれば、コンクリート外装7に対するシート11の密着性を確保することができるとともに、管の外観を向上させることができる。なお、コンクリート外装7へのシート11の巻き付け時に、このシート11に塗料を含浸させるようにしてもよい。
【0016】
あるいは、塗料に代えて、コンクリート、モルタル、樹脂モルタルなどのセメント系の材料を含浸させたシート11をコンクリート外装7に巻き付けても良い。セメントを水で溶いただけの一般にノロと称されている材料も使用できる。たとえばモルタルを含浸させる場合は、その後にモルタルが硬化することで、シート11をコンクリート外装7に確実に密着させることができ、またこれによって管の外観を向上させることもできる。
【0017】
図4は、セメント系材料を含浸させたシート11をコンクリート外装7へ巻き付ける工程を例示するものである。ロール21から繰り出したシート11を、セメント系材料22を貯留したバス23に通すことで、シート11に材料22を含浸させ、そのうえでシート11をコンクリート外装7へ巻き付ける。このとき、図示のように管14における受口2側から挿口3側に向けてシート11をらせん状に巻き付けることで、図1に示すように、シート11における挿口側の他端部11bの上に隣り合う受口側の一端部11aが重なるようにして巻き付けることができる。
【0018】
以上のようにすることで、コンクリート外装7の表面仕上げを行うことが不要となり、そのための作業時間を大幅に短縮することができて、管の生産効率を向上させることができる。
【0019】
たとえば、口径250〜350mm、長さ4000mmの管の場合に、従来においては、コンクリート外装7に生じているクラックや凹みの補修に30分程度が必要であり、補修後の塗装に15分程度が必要であり、その後の再チェックに15分程度が必要であった。これにより、コンクリート外装7を打設してから、上記以外の補修工程を含めて、1本の管の外装の処理に3時間以上を要していた。これに対し本発明によれば、上述のようにシート11の巻き付けを行うことによって、クラック・凹みの補修や、補修後の塗装や、その後の再チェックが不要になった。このため、コンクリート外装7の表面の水洗と、シートの巻き付けとのために僅かな追加時間が必要であったものの、合計1時間程度の作業を省略することができた。その結果、コンクリート外装7を打設してから、上記以外の補修工程を含めて、2時間を少し超える程度の時間で1本の管の外装の処理を完結することができた。しかも、従来は補修のための要員が6〜9名必要であったものが、本発明によれば作業の短縮化によって3〜4名の要員で済むことになった。
【0020】
また、たとえば、口径1500〜1650mm、長さ4000mmの管の場合は、従来においては、クラックや凹みの補修に2時間程度が必要であり、補修後の塗装に1時間30分程度が必要であり、その後の再チェックに1時間程度が必要であった。これにより、コンクリート外装7を打設してから、上記以外の補修工程を含めて、1本の管の外装の処理に12時間40分程度を要していた。これに対し本発明によれば、上述のようにシート11の巻き付けを行うことによって、クラック・凹みの補修や、補修後の塗装や、その後の再チェックが不要になった。このため、コンクリート外装7の表面の水洗と、シート11の巻き付けとのために追加時間が必要であったものの、コンクリート外装7を打設してから、上記以外の補修工程を含めて、8時間30分程度で1本の管の外装の処理を完結することができた。しかも、従来は補修のための要員が6〜9名必要であったものが、本発明によれば作業の短縮化によって3〜4名の要員で済むことになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態の外装コンクリート管の断面構造を示す図である。
【図2】破断強度の小さいシートを巻き付けて推進工法でシールド内に管路を敷設する工程を示す図である。
【図3】破断強度の大きいシートを巻き付けて推進工法でシールド内に管路を敷設する工程を示す図である。
【図4】セメント系材料を含浸させたシートをコンクリート外装へ巻き付ける工程を示す図である。
【図5】従来の外装コンクリート管の断面構造を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ダクタイル鋳鉄管
7 コンクリート外装
11 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の外周にコンクリート外装が形成された外装コンクリート管であって、前記コンクリート外装の周囲にシートが巻き付けられていることを特徴とする外装コンクリート管。
【請求項2】
シートが不織布にて構成されていることを特徴とする請求項1記載の外装コンクリート管。
【請求項3】
シートに塗料が含浸されていることを特徴とする請求項1または2記載の外装コンクリート管。
【請求項4】
シートに、コンクリート、モルタル、樹脂モルタルなどのセメント系の材料が含浸されていることを特徴とする請求項1または2記載の外装コンクリート管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−291925(P2008−291925A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138486(P2007−138486)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】