説明

外装タイル

【課題】 裏面にタイル剥落防止具を取り付けた場合に、タイル剥落防止具に対して外装タイルから離反方向に力が加わったとしてもタイル剥落防止具が外装タイルの裏足から外れることを抑制することができる裏足形状を有する外装タイルを提供する。
【解決手段】 外装タイル1は、躯体コンクリート4の表面に固着され、裏面に係止溝6を有する外装タイル1であって、前記裏面から凹んで形成された底面61と、該底面61の両側縁からそれぞれ立ち上がる底側壁面62と、該底側壁面62の前記底面61と反対側の端縁から互いに接近する方向に所定距離だけ前記底面61と略平行にそれぞれ延びる天井面66と、該天井面66の互いに接近する端縁から裏面方向に延びる開口側壁面67とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物のコンクリート外壁の化粧材として用いられる外装タイルに関し、特にその裏面に外装タイルの剥落を防止するアンカー材を取付けることができる外装タイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外装タイルの裏面には、裏あしと呼ばれる凹凸又はリブが設けられており、特にセメントモルタルの接着性を高めるために先端が幅広で根元が先端よりも幅の狭い断面台形に形成されたあり足、または、開口部が狭い台形の溝が形成されたあり溝と呼ばれる裏あしが知られている(非特許文献1)。しかし、このようなあり足、又はあり溝を有したタイルを用いても経年劣化により剥落する虞があり、特に高層建築物の外壁に用いられる外装タイルの剥落は極めて危険であるので問題であった。
【0003】
そこで、外装タイルにさらにアンカー材を取付けて、このアンカー材を躯体コンクリート内に埋設することにより、外装タイルと躯体コンクリートとの接合強度を高める技術が種々提案されている(特許文献1)。ところで図8に示すように、躯体コンクリート100に埋設されるアンカー材の一種として、両端があり溝102に挿入される一対の挿入部103を構成し、中央部分104を円環状に撓ませた状態で、挿入部103をあり溝102に挿入することで、一対の挿入部103が離反方向に広がることによりあり溝102に押し付けられて固定されるタイル保持部材101が提案されている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本工業規格 JISA5209:2008
【特許文献1】特開平6−240768
【特許文献2】実開平6−17298
【特許文献3】特開平9−78793
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のようなタイル保持部材101をあり溝102に係止する場合は、例えばコンクリートの打設の際などに、タイル保持部材101又は外装タイルに圧力が加わった場合には、あり溝102の側壁105が傾斜しているため、十分にその圧力を受けることができずタイル保持部材101の挿入部103が滑って、あり溝102から挿入部103が外れる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、裏面にタイル剥落防止具を取り付けた場合に、タイル剥落防止具に対して外装タイルから離反方向に力が加わったとしてもタイル剥落防止具が外装タイルの裏足から外れることを抑制することができる裏足形状を有する外装タイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の外装タイルは、躯体コンクリートの表面に固着され、裏面に係止溝を有する外装タイルであって、前記裏面から凹んで形成された底面と、該底面の両側縁からそれぞれ立ち上がる底側壁面と、該底側壁面の前記底面と反対側の端縁から互いに接近する方向に所定距離だけ前記底面と略平行にそれぞれ延びる天井面と、該天井面の互いに接近する端縁から裏面方向に延びる開口側壁面とを具備することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の外装タイルは、前記係止溝の底面の両側にそれぞれ形成されている前記開口側壁面の間に底面から突出する中間突条が形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の外装タイルは、前記開口側壁面が、前記天井面となす角度が鋭角となるように、傾斜して形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の外装タイルによると、外装タイルの裏面から凹んで形成された底面と、該底面の両側縁からそれぞれ立ち上がる底側壁面と、該底側壁面の前記底面と反対側の端縁から互いに接近する方向に所定距離だけ前記底面と略平行にそれぞれ延びる天井面と、該天井面の互いに接近する端縁から裏面方向に延びる開口側壁面とを具備する係止溝を有しているので、底面と天井面との間に挿入可能な互いに離反方向に付勢された爪部を有するアンカー材としてのタイル剥落防止具を用いると、外装タイル又はタイル剥落防止具が毀損するほどの力が加わらない限りは、外装タイルからタイル剥落防止具が外れる虞がない。
【0011】
請求項2に記載の外装タイルによると、外装タイルの係止溝の底面から立ち上がる中間突条が形成されているので、外装タイルの裏面側に打設されるコンクリートへの付着強度を高めることができる。
【0012】
請求項3に記載の外装タイルによると、前記開口側壁面が、前記天井面となす角度が鋭角となるように、傾斜して形成されているので、タイル剥落防止具の脚部が尖った部分にのみ接することになるので、タイル剥落防止具の脚部又は爪部が開口側壁面に引っ掛かる虞がなく、確実に爪部を天井面と底面との間に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】外装タイルの裏面の外観構成を説明する全体斜視図及び側面図。
【図2】外装タイルの別の実施形態として六角形状の外装タイルの裏面の外観構成を例示する全体斜視図及び側面図。
【図3】外装タイルの別の実施形態として係止溝の間に底面から突出する中間突条が設けられた状態を示す側面図。
【図4】外装タイルの別の実施形態として2本の係止溝が設けられた外装タイルを説明する斜視図。
【図5】外装タイルにタイル剥落防止具を係止する工程を説明する斜視図であって、(a)は、タイル剥落防止具の脚部の先端及び爪部を外装タイルの係止溝に挿入した図、(b)は、タイル剥落防止具を回転させて爪部をスリット空間に挿入した図。
【図6】外装タイルにタイル剥落防止具を別の方法で係止する工程を説明する斜視図であって、(a)は、脚部が互いに接近する方向に付勢した状態でタイル剥落防止具の脚部の先端及び爪部を外装タイルの係止溝に挿入する前の状態を示す図、(b)は、タイル剥落防止具の脚部の先端及び爪部を外装タイルの係止溝に挿入した状態を示す図、(c)は、脚部への付勢を解除した状態し、スリット空間に爪部を挿入した状態を示す図。
【図7】コンクリートを打設して外壁を完成させた状態を説明する省略断面図。
【図8】(a)は、従来のタイル保持部材及び外装タイルを説明する図であり、(b)はその部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の外装タイル1の最良の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。外装タイル1は、その裏面に形成された係止溝6にアンカー材としてのタイル剥落防止具3を係止し、このタイル剥落防止具3を躯体コンクリート内に埋設することで躯体コンクリート4に接着するタイルであり、このようなタイル剥落防止具3に固定されていることによって躯体コンクリート4から剥離することを効果的に防止できるものである。
【0015】
外装タイル1は、粘土その他の無機質材料を押出成形した後、乾燥させて高温で焼成した陶磁器質タイルである。この外装タイル1は、図1に示すように、長方形の平板状に形成されており、その裏面には、当該裏面から凹んで形成された底面61と、この底面61の両側縁からそれぞれ立ち上がる底側壁面62と、この底側壁面62の底面61と反対側の端縁から互いに接近する方向に所定距離だけ前記底面と略平行にそれぞれ延びる天井面66と、天井面66の互いに接近する端縁から裏面方向に延びる開口側壁面67とを具備する係止溝6が設けられている。開口側壁面67は対向する開口側壁面67との間は離間しており、図4以下に示すタイル剥落防止具3の脚部31を挿入可能に開口している。また、係止溝6の両側には、天井面66、開口側壁面67、及び裏面により形成される鍔部63が底側壁面62の上端より内側へ突出して設けられている。また、開口側壁面67は、天井面66となす角が鋭角になるように傾斜して形成されている。前記天井面66と底面61との間には内側が開口し奥に底側壁面62を有する細いスリット空間64が形成されている。
【0016】
なお、外装タイル1の形状は長方形の平板に限定されるものではなく、正方形、その他の多角形、円形などのタイルであってもよい。例えば図2に示すように、六角形のタイルを使用する場合であっても、その裏面から凹んで形成された底面61と、この底面61の両側縁からそれぞれ立ち上がる底側壁面62と、この底側壁面62の底面61と反対側の端縁から互いに接近する方向に所定距離だけ前記底面と略平行にそれぞれ延びる天井面66と、天井面66の互いに接近する端縁から裏面方向に延びる開口側壁面67とを具備する係止溝6が設けられていればよい。また、外装タイル1の成形は押出成形に限定されるものではなく、外装タイル1の形状に応じて例えば高圧プレス成形などの適切な成形方法を選択できる。さらに、外装タイル2の材料は無機質材料に限定されるものではなく、例えば合成樹脂などの有機高分子材料を用いたものであってもよい。
【0017】
外装タイル1の裏面に設けられた係止溝6の底面61は平坦に形成されていてもよいが、例えば躯体コンクリート4への外装タイル2の付着性を高めるために、図3に示すように、底面61から離れる方向に向かって広がって形成された断面台形のあり状の中間突条65が、係止溝6の長手方向に沿って、両側の開口側壁面67からそれぞれ距離を開けて形成されていてもよい。また、裏面の幅が広い外装タイル1を用いる場合には2以上の中間突条65が形成されていても良く、あり状以外の形状の中間突条65が形成されていてもよい。
【0018】
また、外装タイル1の寸法によっては、係止溝6を2本以上形成してもよい。例えば図4に示すように、2本の係止溝6を互いに平行に外装タイル1の裏面に形成し、それぞれの係止溝6にタイル剥落防止具3を取り付けることにより、コンクリートを打設して外壁2を形成した時に、より強固に外装タイル1を躯体コンクリート4に固定することができ、外装タイル1の重量が重い場合にも本外装タイル剥落防止構造1を用いることができる。
【0019】
このような外装タイル1に係止するタイル剥落防止具3は、図5等に示されるように、係止溝6に挿入可能な寸法であり、係止溝6の天井面66と底面61との間のスリット空間64に挿入できる爪部33を両端に有し、この爪部33から屋内方向に向かって一対の脚部31が延びており、この脚部31同士をつなぐ湾曲した折曲部32が弾性変形することにより爪部33同士を接近方向に移動させ、又、弾性応力により爪部33に対して離反方向に付勢するものである。なお、外装タイル1の係止溝6に係止されるアンカー材の構成はこれに限定されるものではなく、離反方向に付勢された一対の爪部33が係止溝6の天井面66と底面61との間に挿入可能な形状であれば如何なる形状であってもよい。
【0020】
このような外装タイル1を用いて建築物の外壁2を形成する際には、まず、図示しない作業者がタイル剥落防止具3の一対の脚部31を挟持して、一方の脚部31の先端から他方の脚部31の先端までの距離が、係止溝6の溝両側の開口側壁面67の天井面66側の端縁間の距離よりも短くなるように折曲部32を弾性変形させる。そして、弾性変形した状態を保持したまま、図5(a)に示すように、一対の爪部33の突出方向が外装タイル2の係止溝6の長手方向と略平行になるように、外装タイル2の係止溝6にタイル剥落防止具3の脚部31の先端及び爪部33を挿入する。そして図5(b)に示すように、タイル剥落防止具3を約90度回転させて、一対の爪部33を外装タイル2の天井面66と底面61との間に形成されたスリット空間64に挿入する。このときタイル剥落防止具3の爪部33は互いに離反する方向に付勢されているので、互いにスリット空間64の奥行き方向へ付勢され、外装タイル1の係止溝6の天井面66と底面61との間で確実に固定できる。
【0021】
なお、タイル剥落防止具3を外装タイル1に係止する場合に、上述のように、タイル剥落防止具3を約90度回転させるものでなくてもよい。例えば図6に示すように、一方の爪部33の先端から他方の爪部33の先端までの距離を、開口側壁面67の天井面66側端縁間の距離である30mmよりも短くなるように折曲部32を弾性変形させて、そのままタイル剥落防止具3の爪部33及び脚部31の先端を、外装タイル2の係止溝6に挿入してもよい。このようにした後、作業者が脚部31を開放すると、弾性応力により、脚部31の先端の間の距離が広がって、爪部33が係止溝6の天井面66と底面61の間のスリット空間64に挿入され、タイル剥落防止具3に外装タイル2が係止される。
【0022】
以上のようにしてタイル剥落防止具3を外装タイル1に係止した後、図示しない片枠内に外装タイル1を目地材7を挟んで並べておき、所定の鉄筋5を敷設した後、コンクリートを打設する。そして、養生した後、型枠から取り外して、図7に示すように、外壁2を完成させる。このようにコンクリートを打設する際には、外装タイル1及びタイル剥落防止具3に対して互いに離反する方向に圧力が加わるが、外装タイル1には鍔部63が形成されているので、タイル剥落防止具3の爪部33が天井面66に確実に引っ掛かり、タイル剥落防止具3が外れることを防止することができる。したがって、このような外装タイル1を用いた外壁2は、その内部にタイル剥落防止具3が確実に固定されているので、外装タイル2の剥落を極めて効果的に抑制することができる。この場合、開口側壁面67が、天井面66となす角度が鋭角となるように、傾斜して形成されているので、タイル剥落防止具3の脚部31が尖った部分にのみ接することになるので、タイル剥落防止具3の脚部31又は爪部33が開口側壁面67に引っ掛かる虞がなく、確実に爪部33を天井面66と底面61との間のスリット空間64に挿入することができる。
【0023】
なお、外装タイル1を用いた外壁の工法としては予め工場などでコンクリートを打設養生するプレキャスト工法や建築現場でコンクリートを打設養生する現場打ち工法などの工法を用いることができる。
【0024】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る外装タイル1は、外装材としてタイルを使用する建築物に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 外装タイル
6 係止溝
61 底面
62 側壁
63 鍔部
64 スリット空間
65 中間突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体コンクリートの表面に固着され、裏面に係止溝を有する外装タイルであって、
前記係止溝は、前記裏面から凹んで形成された底面と、該底面の両側縁からそれぞれ立ち上がる底側壁面と、該底側壁面の前記底面と反対側の端縁から互いに接近する方向に所定距離だけ前記底面と略平行にそれぞれ延びる天井面と、該天井面の互いに接近する端縁から裏面方向に延びる開口側壁面とを具備することを特徴とする外装タイル。
【請求項2】
前記係止溝の底面の両側にそれぞれ形成されている前記開口側壁面の間に底面から突出する中間突条が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の外装タイル。
【請求項3】
前記開口側壁面が、前記天井面となす角度が鋭角となるように、傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外装タイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−49996(P2013−49996A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189081(P2011−189081)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(598164511)不二窯業株式会社 (4)
【出願人】(511212354)株式会社デイコム (3)
【出願人】(511212365)株式会社サムシング・ファイン (3)
【Fターム(参考)】