説明

外装仕上げ方法

【課題】複数枚のフィルム材を貼り付けて外装面を覆っても意匠性が損なわれない外装仕上げ方法を提供する。
【解決手段】目地を有する外装部に複数枚のフィルム材を貼り付ける外装仕上げ方法であって、隣接して貼り付けられる2枚のフィルム材のうちの一方のフィルム材を、当該一方のフィルム材の端部を前記目地内に配置して貼り付ける第1貼付工程と、前記2枚のフィルム材のうちの他方のフィルム材を、当該他方のフィルム材の端部を前記一方のフィルム材の端部と重ねるとともに、前記2枚のフィルム材の重なり代を前記目地内に配置して貼り付ける第2貼付工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装部にフィルム材を貼り付ける外装仕上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外に設けられる構造物の表面に外装材としてフィルム材を貼り付けて外装面を仕上げる外装仕上げ方法は一般的に知られている。例えば、屋外に設けられる構造物としての建物の外壁表面は、貼り付けられるフィルム材より面積が広いため、複数枚のフィルム材を並べるように配置して外装面を覆うようにフィルム材が貼り付けられる。このとき、隣接するフィルム材間に隙間ができないように、隣接するフィルム材は、端部同士を重ね合わせて貼り付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した外装仕上げ方法では、隣接するフィルム材の端部同士が重ね合わされているので、フィルム材が重なった部位と、重なっていない部位との厚みが相違する。このような厚みが相違する部位が外装面に露出すると、重なった部位と重なっていない部位との色に差が生じたり、重なった部位と重なっていない部位との境界部に影ができるなど意匠性が損なわれる虞があるという課題がある。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数枚のフィルム材を貼り付けて外装面を覆っても意匠性が損なわれない外装仕上げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の外装仕上げ方法は、目地を有する外装部に複数枚のフィルム材を貼り付ける外装仕上げ方法であって、隣接して貼り付けられる2枚の前記フィルム材のうちの一方の前記フィルム材を、当該一方のフィルム材の端部を前記目地内に配置して貼り付ける第1貼付工程と、前記2枚のフィルム材のうちの他方の前記フィルム材を、当該他方のフィルム材の端部を前記一方のフィルム材の端部と重ねるとともに、前記2枚のフィルム材の重なり代を前記目地内に配置して貼り付ける第2貼付工程と、を有することを特徴とする外装仕上げ方法である。
【0006】
このような外装仕上げ方法によれば、第1貼付工程にて貼り付けられる一方のフィルム材の端部と第2貼付工程にて貼り付けられる他方のフィルム材の端部との重なり代が目地内に配置されるので、2枚のフィルム材が重なって厚くなった部位が目立つことを防止することが可能である。このとき、一方のフィルム材の端部も他方のフィルム材の端部も目地内に配置されるので、端部による影も外装材の表面には現れない。このため、複数枚のフィルム材を貼り付けて外装面を覆っても意匠性が損なわれない。よって、意匠性に優れた外装部を仕上げることが可能な外装仕上げ方法を提供することが可能である。
【0007】
また、段差部を有する外装部に複数枚のフィルム材を貼り付ける外装仕上げ方法であって、隣接して貼り付けられる2枚の前記フィルム材のうちの一方の前記フィルム材を、当該一方のフィルム材の端部を前記段差部に配置して貼り付ける第1貼付工程と、前記2枚のフィルム材のうちの他方の前記フィルム材を、当該他方のフィルム材の端部を前記一方のフィルム材の端部と重ねるとともに、前記2枚のフィルム材の重なり代を前記段差部に配置して貼り付ける第2貼付工程と、を有することを特徴とする外装仕上げ方法である。
【0008】
このような外装仕上げ方法によれば、第1貼付工程にて貼り付けられる一方のフィルム材の端部と第2貼付工程にて貼り付けられる他方のフィルム材の端部との重なり代が段差部に配置されるので、2枚のフィルム材が重なって厚くなった部位が目立ちにくい。このとき、一方のフィルム材の端部も他方のフィルム材の端部も段差部に配置されるので、端部による影も外装材の表面には現れない。このため、複数枚のフィルム材を貼り付けて外装面を覆っても意匠性が損なわれない。よって、意匠性に優れた外装部を仕上げることが可能な外装仕上げ方法を提供することが可能である。
【0009】
かかる外装材仕上げ方法であって、前記重なり代を、前記段差部を構成する奥行き方向に沿う面に配置することが望ましい。
このような外装仕上げ方法によれば、重なり代が、段差部を構成する奥行き方向に沿う面に配置されるので、重なり代およびフィルム材の端部が、外装面に沿う面とは異なる面に配置される。このため、外部からは、重なり代およびフィルム材の端部がより目立ちにくいため、外装部の意匠性が損なわれることを防止することが可能である。
【0010】
かかる外装材仕上げ方法であって、前記フィルム材は、赤外線を選択的に反射する高反射率フィルムであることが望ましい。
このような外装仕上げ方法によれば、フィルム材が高反射率フィルムなので、フィルム材より内側、すなわち、フィルム材が貼り付けられている外装部の内側に進入する赤外線が低減される。このため、外装部を有する構造物の温度上昇を抑えることが可能である。このとき、外装部を有する構造物が建物の場合には、建物が有する室内の温度上昇が抑えられることにより、空調装置等への負担が軽減され、エネルギーの消費を抑えることが可能である。
【0011】
また、フィルム材が目地を覆う場合には、目地が加熱されないので、たとえ目地材が有機物を含む部材であっても、目地材から有機物等が溶出することを防止することが可能である。このため、フィルム材の、目地に貼り付けられている部位が変色すること、また、剥がれることを防止することが可能である。さらに、紫外線や赤外線による劣化を防ぐことが可能となるため、耐候性を1ランク落とした目地材料を選択することが可能となる。
【0012】
かかる外装材仕上げ方法であって、前記フィルム材はフッ素系樹脂にて形成されていることが望ましい。
このような外装仕上げ方法によれば、フッ素系樹脂は耐候性を備えているので、フッ素系樹脂にて形成されているフィルム材を外装部に貼り付けることにより高い耐候性を備えた外装部を形成することが可能である。
【0013】
かかる外装材仕上げ方法であって、前記フィルム材の表面には低汚染化剤が処理されていることが望ましい。
このような外装仕上げ方法によれば、フィルム材の表面には低汚染化剤が処理されているので、フィルム材の表面が汚染されにくい。このため、優れた意匠性を備えた外装部を綺麗な状態で維持することが可能である。また、高反射率フィルムの場合には、汚れによる反射率の低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数枚のフィルム材を貼り付けて外装面を覆っても意匠性が損なわれない外装仕上げ方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかる外装仕上げ方法を説明するための外装部の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる外装仕上げ方法を説明するための外装部横断面の拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる外装仕上げ方法を説明するための外装部縦断面の拡大図である。
【図4】本発明の他の実施形態にかかる外装仕上げ方法を説明するための外装部縦断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる外装仕上げ方法を説明するための外装部の斜視図である。図2は、本発明の一実施形態にかかる外装仕上げ方法を説明するための外装部横断面の拡大図である。図3は、本発明の一実施形態にかかる外装仕上げ方法を説明するための外装部縦断面の拡大図である。
【0017】
本実施形態においては、図1に示すように、外装部として、例えば建物の外壁1の表面にフィルム材として高反射率フィルム20を貼り付ける外装仕上げ方法を例に挙げて説明する。
【0018】
高反射率フィルム20が貼り付けられる外壁1は、図1に示すように、例えば複数の外壁材12が貼り付けられており、外壁材12間に目地14が形成されている。矩形状のパネル状をなす複数の外壁材12は、コンクリート躯体3の表面に塗られた下地モルタル4上に接着剤にて貼り付けられ、外壁材12間にエラストマー系材料でなるシーリング材15が充填されて目地14が形成されている。
【0019】
高反射率フィルム20は、赤外線を選択的に反射する金属無機酸化物顔料(以下、複合顔料という)を練り込んで押し出し成形することにより製造した樹脂フィルムである。この高反射率フィルム20は、カーボンブラックを樹脂に練り込んだフィルム材に比べ、JIS R3106「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」に定められた日射透過率が低く、日射反射率が優れており、日射熱取得率が低い。また、酸化物顔料の添加によりフィルム材の温度上昇が抑えられており、JIS K7350−4に準拠したオープンフレームカーボンアークランプを使用した耐候性試験により光学的特性(日射透過率、日射反射率、日射熱取得率など)を長期にわたって維持でき、耐候性に優れている。さらに、本高反射率フィルム20は、クロムを含有していないので環境性に優れている。
【0020】
具体的には、例えば、フィルム基材のみ、または、フィルム基材樹脂層と、フィルム基材樹脂層上に成層した1又は2以上のラミネート樹脂層とを有し、裏面に、既存の接着剤が塗布された接着層を有している。ここで、既存の接着剤としては、例えば、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、エマルジョン系粘着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリウレタン系接着剤などが挙げられる。
【0021】
フィルム基材樹脂としては、フィルム基材として使用される既存の樹脂であれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂などのプラスチックを用いることができるが、ここではフィルム材の耐候性を向上させるためにフッ素系樹脂等の耐候性樹脂を用いている。
【0022】
ラミネート樹脂としては、フィルム基材樹脂層をラミネートするために使用されている既存の樹脂であれば特に制限されるものではなく、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのプラスチックを用いることができるが、フィルム材の耐候性を向上させるためにフッ素系樹脂等の耐候性樹脂を用いることが好ましい。なお、2層以上のラミネート樹脂層が存在する場合には、最も表面に近いラミネート樹脂層の樹脂として、フィルム材の耐候性を向上させるためにフッ素系樹脂等の耐候性樹脂を用いている。
【0023】
本実施形態において、フッ素系樹脂の具体例としては、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、ETFEという。)、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、FEPという。)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)−テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、PFAという。)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン系共重合体(以下、THVという。)、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFという。)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、ポリフッ化ビニル等を挙げることができる。中でも、ETFE、PVDF、THV等が好ましく、ETFEとPVDFが特に好ましい。
【0024】
また、本実施形態において、ETFEとしては、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)とエチレン(以下、Eという。)との共重合体及びTFEとEとその他のモノマーとの共重合体が好ましい。その他のモノマーとしては、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン等のフルオロオレフィン、CH2=CHRf(ただし、Rfは炭素数1〜8のポリフルオロアルキル基を表す。以下においても同じ。)やCH2=CFRf等のポリフルオロアルキルエチレン類、CF2=CFOCH2Rf等のポリフルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル類等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を併用してもよい。その他のモノマーとしてはCH2=CHRfが好ましく、Rfが炭素数3〜6のパーフルオロアルキル基であるCH2=CHRfがより好ましく、CH2=CHC4F9が最も好ましい。
【0025】
前記ETFEの組成としては、TFEに基づく繰返し単位/Eに基づく繰返し単位のモル比が、70/30〜30/70であることが好ましく、65/35〜40/60であることがより好ましく、60/40〜45/55であることが最も好ましい。その他のコモノマーに基づく繰返し単位を含有する場合、その含有量は、TFEに基づく繰返し単位とエチレンに基づく繰返し単位の合計モル数に対して0.01〜30モル%であることが好ましく、0.05〜15モル%であることがより好ましく、0.1〜10モル%であることが最も好ましい。
【0026】
本実施形態において、前記フッ素系樹脂には、柔軟性を付与するためにフッ素ゴムを含有してもよい。フッ素ゴムとしては、例えば、テトラフルオロエチレン−プロピレン系弾性共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−プロピレン系弾性共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン系弾性共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン系弾性共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系弾性共重合体等を用いることができ、これらは単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0027】
フッ素ゴムの含有量は、フッ素系樹脂100質量部に対して、40質量部以下、特に20質量部以下であることが好ましい。
なお、本実施形態に係るフィルム材の厚さは特に制限はないが、通常6〜500μmであり、好ましくは10〜200μmである。
また、本実施形態において、フッ素系樹脂フィルムは、その片面をコロナ放電処理等の表面処理を行い、シリカ系の親水コート剤等を塗工したり、あるいはアナターゼ酸化チタンに代表される光触媒コート層を設けたりして、耐汚染性を更に向上させてもよい。
【0028】
本実施形態に用いる複合顔料は、Biおよび/またはYの酸化物とMnの酸化物とを含有する。この複合顔料は、特定の平均粒子径の微粒子として樹脂に散在しており、300〜1000nmの可視光線〜近赤外線を吸収して遮断するが、1000〜2500nmの近赤外線〜中赤外線は反射して遮蔽する特性を有する。そして、特に、複合顔料は、太陽光から発生する近赤外線中で最も強いとされる1000〜1100nm付近に最大反射波長を有する。
【0029】
複合顔料の微粒子の平均粒子径としては、0.005〜0.40μmが好ましく、0.
05〜0.2μmがより好ましい。平均粒子径がこの範囲にあると、複合顔料を含有したフィルム材の平滑性が維持され、比表面積が小さくなり、フッ素樹脂中に微量発生するフッ酸(HF)との反応が起こりにくくなる。
【0030】
複合顔料は、Biおよび/またはYの酸化物とMnの酸化物とを含有する。複合顔料中
のマンガンの含有量は、5〜65質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。マンガンの含有量が少ないと、熱線反射効果が充分得られない恐れがある。
また、Mn:Bi、Mn:Yの質量比は、10:90〜99:1であることが好ましい。
複合顔料は、Biおよび/またはYと、Mnとの混合物を、700℃以上の焼成温度で焼成したものを使用するのが好ましい。
この比率は任意に変えることが可能であり、Mn含有率が増大するに伴い、緑〜黒に色目が変化する。本実施例では、黒色の赤外線反射フィルムを作製することが目的であるため、Mn:Bi及びMn:Yの質量比は、20:80〜90:10のMn含有量が多い組成が好ましい。
【0031】
複合顔料Mの平均粒子径としては、0.1μm〜30μmであることが好ましい。平均粒子径が30μmより大きいと、光沢が低下する恐れがある。これらの好ましい条件を満たす市販品としては、アサヒ化成工業社製 ブラック6303、ブラック6301等が挙げられる。
【0032】
本実施形態において、複合顔料の含有量は特に制限されるものではないが、練り込む樹脂の100質量部に対して、0.02〜4質量部であることが好ましく、0.2〜2質量部であることがより好ましい。この範囲にあると、フィルム材を貼り付ける外装材の意匠性を損なわないようにすることができる。
【0033】
なお、本実施形態におけるフィルム材における層は、複合顔料に加えて、日射反射率や色調を調整するために着色顔料を上述の樹脂にさらに練り込ませたものであってもよい。着色顔料としては、白色の酸化チタンや黄色のチタンイエロー、その他、べんがら、黄土、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ホワイトカーボン、微粉ケイ酸等の無機系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ジオキサジン等の有機系顔料等を用いることができる。これらの配合により日射反射率は、10%〜95%に制御することが可能である。また、酸化鉄、酸化コバルト等の無機系顔料を含有させ、可視光線透過率を制御してもよい。また、複合顔料に加えて、酸化セリウム及び/又は酸化亜鉛を、例えば、複合顔料1質量部に対して総量で1〜10質量部含有させ、360nm以下の紫外線透過を遮断してもよい。
【0034】
本実施形態に用いる中空粒子は、熱線を遮断できるものであれば特に制限されるものではないが、例えば、中が真空あるいは空洞の無機質バルーン、樹脂バルーンなどを用いることができる。具体的には、セラミックバルーン、ガラスバルーン、シラスバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン、アルミノシリケートバルーンなどを例示することができる。
【0035】
本実施形態に係るフィルム材において、複合顔料および/または中空粒子を練り込んだ樹脂からなるフィルム基材樹脂層を表層に配置する場合には、光触媒を樹脂に含有させてもよいし、中空粒子として光触媒を担持させた中空粒子を練り込んでもよい。前記光触媒としては、例えば、酸化チタン、あるいは、その含有物(例えば、酸化チタンと、チタン以外の金属若しくは金属酸化物又はシリカゲルとを含むもの)など既存のものを用いることができる。このように、光触媒を複合顔料および/または中空粒子とともに樹脂に練り込ませることにより、フィルム基材樹脂層の親水性を向上させ、セルフクリーニング効果によって汚れを防止することができ、意匠性の向上や美観性の維持、複合顔料による熱線反射性能(遮熱性能)の低下防止などを図ることができるようになる。
【0036】
また、本実施形態に係るフィルム材は、複合顔料および/または中空粒子を練り込んだ樹脂からなるフィルム基材樹脂層上、あるいは、ラミネート樹脂層上に、光触媒を含有する光触媒層を設けてもよい。このように光触媒層を設けることにより、上述のように樹脂やラミネート樹脂に光触媒を練り込ませる場合と同様の効果を得ることができるようになる。
【0037】
なお、層上に光触媒層を形成する方法としては、例えば、複合顔料および/または中空粒子を練り込んだ樹脂からなるフィルム基材樹脂層上、あるいは、ラミネート樹脂層上に、光触媒塗料を常乾塗装あるいは焼付け塗装する方法であってもよいし、光触媒を含有する樹脂組成物を押出成形することにより得られたフィルム材を接着剤を介してラミネートして一体化させたり、熱融着させて一体化させたりする方法であってもよい。
【0038】
前記光触媒塗料としては、例えば、フッ素系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコーン樹脂などの塗料に使用される既存の樹脂と上述の光触媒とを含むものであれば特に制限されるものではないが、フッ素系樹脂、アクリル樹脂、又はウレタン樹脂と光触媒とを含む光触媒クリア塗料を用いることが意匠性の観点から好ましい。
【0039】
また、本実施形態に係るフィルム材の表面には、低汚染化剤が処理されている。低汚染化剤は、一般式Si(OR)(式中、Rは互いに同一でも異なってもよく、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す)で表されるシリケート化合物である。または、シリカ系微粒子である。
【0040】
上述した高反射率フィルム20は、適宜の大きさの矩形状に切断されて貼り付けられる。本実施形態の高反射率フィルム20は、例えば4枚の外壁材12を覆い、四辺をなす各端部20aが隣接する外壁材12間の目地14内に位置するサイズに切断されている。
【0041】
上記外壁1に上記高反射率フィルム20を貼り付ける外装仕上げ方法は、まず、高反射率フィルム20を貼り付ける外壁1に、表面の油分を落とす脱脂処理と、汚れを落とす洗浄処理(例えば、水拭き)を施す。
【0042】
そして、切断された高反射率フィルム20を、外壁1の端に位置する外壁材12から4枚ずつ覆うように、外壁1の下側から順次貼り付けていく。このため、まず、図1示すように、外壁1の最も下に位置する外壁材12を含む4枚の外壁材12に高反射率フィルム20を貼り付ける。このとき、高反射率フィルム20の端部20a、すなわち、矩形状の高反射率フィルム20の四辺となる各端部20aが、4枚の外壁材12の外側に位置する目地14の表面に貼り付ける。高反射率フィルム20が貼り付けられた状態で、目地14の表面に配置された高反射率フィルム20の端縁は、図2に示すように、目地14の幅方向における中央より、隣接して未だ高反射率フィルム20が貼り付けられていない外壁材12側に位置している。また、外壁1の最端に位置する外壁材12における外壁1の周縁側では、高反射率フィルム20の端部を外壁材12の端面及び下地モルタル4又はコンクリート躯体3に沿わせて貼り付けておく。
【0043】
次に、既に高反射率フィルム20が貼り付けられた4枚の外壁材12と左右方向に隣接する外壁材12に、4枚ずつ覆うように順次高反射率フィルム20を貼り付けていく。このときも、高反射率フィルム20の端部20a、すなわち、矩形状の高反射率フィルム20の四辺となる各端部20aが、4枚の外壁材12の外側に位置する目地14内に位置するように貼り付ける。このとき、例えば、図1に示すように、既に高反射率フィルム20が貼り付けられた4枚の外壁材12の左側に隣接する4枚の外壁材12に高反射率フィルム20を貼り付ける場合には、図2に示すように先に貼り付けた高反射率フィルム20の左側の端部20aと、後から貼り付ける高反射率フィルム20の右側の端部20aとが重なり合うように貼り付ける。すなわち、先に貼り付けた高反射率フィルム20の左側の端部20aと、後から貼り付ける高反射率フィルム20の右側の端部20aとの重なり代20bは目地14内に配置される。このとき、重なり代20bが目地14内に配置されていれば、目地14内における重なり代20bの位置及び幅はこれに限らない。
【0044】
このようにして、外壁1の下側2段の外壁材12に高反射率フィルム20を貼り付ける。
【0045】
次に、既に高反射率フィルム20が貼り付けられた下側2段の外壁材12の上側に隣接する2段の外壁材12に高反射率フィルム20を貼り付ける。このときも、高反射率フィルム20の端部20a、すなわち、矩形状の高反射率フィルム20の四辺となる各端部20aが、貼り付けられた4枚の外壁材12の外側に位置する目地14内に位置するように貼り付ける。このとき、例えば、図1に示すように、最初に高反射率フィルム20が貼り付けられた4枚の外壁材12の上側に隣接する4枚の外壁材12に高反射率フィルム20を貼り付ける場合には、図3に示すように後から貼り付ける高反射率フィルム20の下側の端部20aが、先に貼り付けた高反射率フィルム20の上側の端部20aの上に重なるように貼り付ける。すなわち、先に貼り付けた高反射率フィルム20の上側の端部20aと、後から貼り付ける高反射率フィルム20の下側の端部20aとの重なり代20bは目地14内に配置される。
【0046】
このように、外壁1の下側から順次上側に向かって、隣接する高反射率フィルム20の端部20a同士の重ね代20bを目地14内に配置させて高反射率フィルム20を貼り付けていく。ここで、上下、又は、左右に隣接して貼り付けられる2枚の高反射率フィルム20において、先に外壁1に貼り付けられる高反射率フィルム20が一方のフィルム材に相当し、先に高反射率フィルム20を貼り付ける工程が第1貼付工程に相当する。また、上下、又は、左右に隣接して貼り付けられる2枚の高反射率フィルム20において、後から外壁1に貼り付けられる高反射率フィルム20が他方のフィルム材に相当し、後から高反射率フィルム20を貼り付ける工程が第2貼付工程に相当する。
【0047】
上記実施形態の外装仕上げ方法によれば、第1貼付工程にて先に貼り付けられる高反射率フィルム20の端部20aと第2貼付工程にて後から貼り付けられる高反射率フィルム20の端部20aとの重なり代20bが目地14内に配置されるので、2枚の高反射率フィルム20が重なって厚くなった部位が目立つことを防止することが可能である。また、先に貼り付けられる高反射率フィルム20の端部20aも後から貼り付けられる高反射率フィルム20の端部20aも目地14内に配置されるので、端部20aによる影も外壁材12の表面には現れない。このため、複数枚の高反射率フィルム20を貼り付けて外壁1を覆っても意匠性が損なわれない。よって、意匠性に優れた外壁1を仕上げることが可能な外装仕上げ方法を提供することが可能である。
【0048】
また、外壁材12に貼り付けられるのは高反射率フィルム20なので、貼り付けられた高反射率フィルム20より内側、すなわち、高反射率フィルム20より外壁1側に進入する赤外線が低減される。このため、外壁1及び室内側の温度上昇が抑えられることにより、空調装置への負担が軽減され、エネルギーの消費を抑えることが可能である。
【0049】
また、エラストマー系材料でなるシーリング材15が充填された目地14が高反射率フィルム20にて覆われるので、日照等による目地14の加熱が抑えられる。このため、シーリング材15から有機物等が溶出することを防止することが可能である。よって、目地14を覆う高反射率フィルム20が変色すること、また、剥がれることはないので、優れた意匠性を維持することが可能である。特に、先に貼り付けられる高反射率フィルム20の端部20aと後から貼り付けられる高反射率フィルム20の端部20aとの重なり代20bが目地14内に配置されるので、目地14では高反射率フィルム20が二重に設けられて、赤外線がより透過しにくくなる。このため、シーリング材15の加熱をより抑えることが可能である。
【0050】
また、外壁1に貼り付けられる高反射率フィルム20が耐候性を備えたフッ素系樹脂にて形成されているので、高い耐候性を備えた外装部を形成することが可能である。
【0051】
また、高反射率フィルム20の表面には低汚染化剤が施されているので、高反射率フィルム20の表面が汚染されにくい。このため、優れた意匠性を備えた外装部を綺麗な状態で維持することが可能である。
【0052】
上記実施形態においては、先に貼り付けられる高反射率フィルム20の端部20aと後から貼り付けられる高反射率フィルム20の端部20aとの重なり代20bが目地14内に配置される例について説明したが、目地14が設けられないコンクリート壁等の場合には、図4に示すように、コンクリート壁5に形成された段差部5aに重なり代20bを配置しても構わない。
【0053】
このような外装仕上げ方法によれば、第1貼付工程にて貼り付けられる先に貼り付けられた高反射率フィルム20の端部20aと第2貼付工程にて貼り付けられる他方の高反射率フィルム20の端部20aとの重なり代20bは段差部5aに配置されるので、2枚の高反射率フィルム20が重なって厚くなった部位が目立つことを防止することが可能である。また、先に貼り付けられた高反射率フィルム20の端部20aも後からはり付けられる高反射率フィルム20の端部20aも段差部5aに配置されるので、端部20aによる影も外壁1の表面には現れない。このため、複数枚の高反射率フィルム20を貼り付けて外壁1を覆っても意匠性が損なわれない。よって、意匠性に優れた外装部を仕上げることが可能な外装仕上げ方法を提供することが可能である。このとき、重なり代20bを、段差部5aを構成する奥行き方向に沿う面5bに配置すると、重なり代20bおよび高反射率フィルム20の端部20aが外部から見えにくいため、外装部の意匠性が損なわれることを防止することが可能である。
【0054】
上記実施形態においては、フィルム材を高反射率フィルムとしたが、これに限らず、外装材に貼り付けるフィルム材であれば構わない。
【0055】
上記実施形態では、外装部を建物の外壁1として説明したが、屋外に露出し、目地または段差部を有する部位であれば、上記外装仕上げ方法を適用可能である。
【0056】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0057】
1 外壁
3 躯体
4 下地モルタル
5 コンクリート壁
5a 段差部
5b 奥行き方向に沿う面
12 外壁材
14 目地
15 シーリング材
20 高反射率フィルム
20a 端部
20b 重なり代
20c 端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地を有する外装部に複数枚のフィルム材を貼り付ける外装仕上げ方法であって、
隣接して貼り付けられる2枚の前記フィルム材のうちの一方の前記フィルム材を、当該一方のフィルム材の端部を前記目地内に配置して貼り付ける第1貼付工程と、
前記2枚のフィルム材のうちの他方の前記フィルム材を、当該他方のフィルム材の端部を前記一方のフィルム材の端部と重ねるとともに、前記2枚のフィルム材の重なり代を前記目地内に配置して貼り付ける第2貼付工程と、
を有することを特徴とする外装仕上げ方法。
【請求項2】
段差部を有する外装部に複数枚のフィルム材を貼り付ける外装仕上げ方法であって、
隣接して貼り付けられる2枚の前記フィルム材のうちの一方の前記フィルム材を、当該一方のフィルム材の端部を前記段差部に配置して貼り付ける第1貼付工程と、
前記2枚のフィルム材のうちの他方の前記フィルム材を、当該他方のフィルム材の端部を前記一方のフィルム材の端部と重ねるとともに、前記2枚のフィルム材の重なり代を前記段差部に配置して貼り付ける第2貼付工程と、
を有することを特徴とする外装仕上げ方法。
【請求項3】
請求項2に記載の外装材仕上げ方法であって、
前記重なり代を、前記段差部を構成する奥行き方向に沿う面に配置することを特徴とする外装仕上げ方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の外装材仕上げ方法であって、
前記フィルム材は、赤外線を選択的に反射する高反射率フィルムであることを特徴とする外装仕上げ方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の外装材仕上げ方法であって、
前記フィルム材はフッ素系樹脂にて形成されていることを特徴とする外装仕上げ方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の外装材仕上げ方法であって、
前記フィルム材の表面には低汚染化剤が処理されていることを特徴とする外装仕上げ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−226183(P2011−226183A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98139(P2010−98139)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)