説明

外装材メンテナンスシステム

【課題】地域毎に異なる日射量に従って変化する建物の方位面毎の劣化度を考慮した塗料の仕様を求める外装材メンテナンスシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】各地域の地域名称(図2の建築地欄の「A県a市」等)と、前記各地域における方位面毎の日射量(図2の「日射量」)と、前記各地域の地域名称と対応付けて方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様を特定する塗料特定データ(図2の「耐用年数」、「塗料仕様」、「メーカー」等)を記憶した記憶手段20と、任意の地域名称を入力させる入力手段30と、表示手段40と、前記入力された地域名称に従って、前記記憶手段20から前記方位面毎の日射量に応じた塗料特定データを読出し、方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様を前記表示手段に表示させる制御手段10を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装材メンテナンスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁のリフォーム塗装にあたって、具体的にどのような下塗り塗料を選定し、あるいは下地調整が必要であるか否か等に関して、熟練した技術者が個々の案件毎に決定しなければならず、時間がかかると共に、技術者の能力についての個人差による不適切な下塗り塗料を選定する等といった問題があった。特許文献1では、これらの問題を解決するために、建物の外壁の外観が各外観診断項目毎にどの劣化段階であるかという入力情報に基づいて、適した下塗り塗料を自動的に求めることができ、また、下地調整が必要であるか否か、下地調整が必要であるとしたらどのような下地調整が必要であるかといったことも自動的に求めることができるリフォーム塗装システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−9405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、外壁、屋根等の塗料の劣化状況は、地域毎の日射量や建物の方位面毎に異なる。ところが、外壁、屋根等のメンテナンスについて、地域毎に異なる日射量に従って変化する建物の方位面毎の劣化度を考慮して、メンテナンスプログラムを提供するものは見あたらない。
【0005】
本発明は、地域毎に異なる日射量に従って変化する建物の方位面毎の劣化度を考慮した塗料の仕様を求める外装材メンテナンスシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一つを解決するために、請求項1に記載の外装材メンテナンスシステム100は、例えば、図1、図2に示すように、
各地域の地域名称(図2の建築地欄の「A県a市」等)と、前記各地域における方位面毎の日射量(図2の「日射量」)と、前記各地域の地域名称と対応付けて方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様を特定する塗料特定データ(図2の「耐用年数」、「塗料仕様」、「メーカー」等)を記憶した記憶手段20と、
任意の地域名称を入力させる入力手段30と、
表示手段40と、
前記入力された地域名称に従って、前記記憶手段20から前記方位面毎の日射量に応じた塗料特定データを読出し、方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様を前記表示手段に表示させる制御手段10
とを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、入力された任意の地域名称に従って、前記記憶手段20から前記方位面毎の日射量に応じた塗料特定データを読出すことにより、方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様を前記表示手段に表示させることができるため、地域毎に異なる日射量に従った方位面毎の塗料の仕様を求めることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば、図2、図6、図8に示すように、
請求項1に記載の外装材メンテナンスシステム100において、
前記記憶手段20は、所定期間後の前記塗料の劣化度(図6)を塗料特定データ(図2の「耐用年数」、「塗料仕様」、「メーカー」等)に対応付けて予め記憶し、
前記入力手段30により前記所定期間後の塗料の劣化度(図5)が前記方位面毎に入力されたとき、前記制御手段10は、前記記憶手段20に記憶した劣化度(図6)と前記入力された劣化度(図5)を前記方位面毎に比較し、比較結果に応じて前記表示手段40に前記方位面毎に使用されるべき塗料の仕様(図2、図8)を前記表示手段40に表示させることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、前記記憶手段20に記憶した劣化度(図6)と前記入力された劣化度(図5)を前記方位面毎に比較することより、比較結果に応じて前記表示手段40に前記方位面毎に使用されるべき塗料の仕様(図2、図8)を前記表示手段40に表示させることができるため、前記所定期間後の建物の劣化状態に合わせた塗料の仕様を求めることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば、図4、図8に示すように、
請求項1または2に記載の外装材メンテナンスシステム100において、
前記制御手段10は、前記入力された劣化度(図5)が前記記憶手段20に記憶した劣化度(図6)より小さいと判断した場合、現在使用している塗料の耐久性より低い耐久性の塗料の仕様を前記表示手段40に表示させることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、現在使用している塗料の耐久性より低い耐久性の塗料の仕様を前記表示手段40に表示させることにより、ある方位面において劣化の進行が遅い場合に、より適した塗料の仕様を求めることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば、図4、図8に示すように、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の外装材メンテナンスシステム100において、
前記制御手段10は、前記入力された劣化度(図5)が前記記憶手段20に記憶した劣化度(図6)より大きいと判断した場合、現在使用している塗料の耐久性より高い耐久性の塗料の仕様を前記表示手段40に表示させることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、現在使用している塗料の耐久性より高い耐久性の塗料の仕様を前記表示手段40に表示させることにより、ある方位面において劣化の進行が早い場合に、より適した塗料の仕様を求めることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば、図4に示すように、
請求項2〜4のいずれか一項に記載の外装材メンテナンスシステム100において、
前記制御手段10は、前記入力された劣化度が前記記憶手段20に記憶した劣化度と異なると判断した場合、所定期間後に使用される方位面毎の塗料の仕様(図8)を更新するために前記記憶手段20に記憶させることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、所定期間後に使用される方位面毎の塗料の仕様(図8)を前記記憶手段20に記憶させることにより、塗料の仕様(図8)を更新(図4)することができるため、方位面毎に適切なメンテナンスプログラムを提供できる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、例えば、図4に示すように、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の外装材メンテナンスシステム100において、
前記記憶手段20は、前記各地域の地域名称と対応付けて方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様(図2)および前記所定期間後に使用される方位面毎の塗料の仕様(図8)を物件毎(図4)に記憶することを特徴とする外装材メンテナンスシステム。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、塗料の仕様(図2、図8)を物件毎(図4)に記憶することにより、各物件の現状に応じた塗料の仕様を記憶することができるため、物件毎に適切なメンテナンスプログラムを提供できる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、例えば、図9に示すように、
請求項2〜6のいずれか一項に記載の外装材メンテナンスシステムにおいて、
前記劣化度は複数の項目(「色差(ΔE)」、「光沢保持率」、「白亜化」)から構成され、基準方位面(南面)の劣化度(図5の色差「6」、光沢保持率20%)を基準値「1.0」として求められる方位面毎に複数の異なる項目の劣化指数(例えば、図5の東面・西面の色差の劣化指数が「2/3」と東面・西面の光沢保持率の劣化指数は、「南面の2倍」)を評価して、方位面毎の塗料の仕様を決定し、前記表示手段40に表示させる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、方位面毎の劣化度の複数の項目を評価することにより、より適切な塗料の仕様を求めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地域毎に異なる日射量に従って変化する建物の方位面毎の劣化度を考慮した塗料の仕様を求める外装材メンテナンスシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る外壁材メンテナンスシステムを示す機能ブロック図である。
【図2】本発明に係る基本メンテナンスプログラムの一例を示す図である。
【図3】本発明に係る基本メンテナンスプログラムの作成に係わる方位面毎の日射量の具体例を示す図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ個別の物件毎のメンテナンスプログラムを示す図であり、(a)は更新前のメンテナンスプログラムを示し,(b)は更新後のメンテナンスプログラムを示す。
【図5】新築後10年目の点検時において測定された方位面毎の劣化度の一例を示す図である。
【図6】促進試験により得たデータにより構築された材料選定データベースの一例を示す図である。
【図7】促進試験により得られる、経過時間に対する劣化度の一例を示す図である。
【図8】(a)は基本メンテナンスプログラムから変更された新築後10年目および20年目のメンテナンスプログラム、(b)は25年目のメンテナンスプログラム一例を示す図である。
【図9】本発明に係る外装材メンテナンスシステムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
<実施の形態>
図1は、本実施の形態に係る外装メンテナンスシステム100と色差測定手段200を示す。色差測定手段200としては、色差を測定可能な既存の簡易型分光色差計を用いることができる。
【0024】
外装メンテナンスシステム100は、制御手段10と、記憶手段20と、入力手段30と、印刷手段40と、表示手段50を備える。
【0025】
制御手段10は、記憶媒体20等に記憶されたオペレーティングシステム(OS)に基づいて動作し、入力手段30から入力されたデータ、記憶手段20に記憶されたデータ等の各種データをアプリケーションプログラムに従って演算処理を行い、表示処理、印刷処理、記憶手段のデータの更新等の各種処理を行うための制御信号等を入出力する。
【0026】
記憶手段20は、OS等のプログラム、表示手段40に表示する図2に示す基本メンテナンスプログラム、図4に示す物件毎のメンテナンスプログラム、図6に示す選定材料データベース等の各種データを記憶する。
【0027】
入力手段30は、地域名称、物件名(A氏等)、色差測定手段により得られた色差(ΔE)、光沢保持率、白亜化、カビ・藻等の劣化度に関するデータ等の各種データを入力するためのキーボードやマウス等から構成され、ユーザの操作に応じた操作信号を制御手段10に出力する。
【0028】
表示手段40は、例えば、液晶画面で構成される。表示手段40は、制御手段10からの表示信号に応じた画像を画面に表示する。具体的には、表示手段40は、制御手段10からの制御信号に従って、記憶手段20に記憶されたデータをテーブル(表)として画面内に表示する。
【0029】
印刷手段50は、例えば、プリンターであり、制御手段10からの印刷制御信号に基づき動作し、印刷処理を実行する。
【0030】
図2に示すように、外装材メンテナンスシステム100において、記憶手段20は、各地域の地域名称と、部位(外壁、屋根、シーリング材等)と、方位と、前記各地域における方位面毎の日射量と、塗料仕様と、色と、メーカーとからなる基本メンテナンスプログラムA0000を記憶している。ここで、記憶手段20は、前記各地域の地域名称(例えば、建築地欄の「A県a市」等)と対応付けて方位面毎の日射量(1,0.6)に対応する塗料の仕様を特定する塗料特定データ(「耐用年数」、「塗料仕様(アクリルシリコン系、ウレタン系)」、「メーカー」等)を記憶している。
【0031】
制御手段10は、前記入力手段30により入力された地域名称が入力されると、前記入力された地域名称に従って、前記記憶手段20から前記方位面毎の日射量に応じた塗料特定データを読出し、方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様を前記表示手段40に表示させる。例えば、表示手段に表示された建築地の地域名称の入力欄に「A県a市」と入力すると、制御手段10は、タイトル行と共に、基本メンテナンスプログラム「A0000」から「A県a市」のデータに相当する行部分(A部)を抽出し、表示手段40に表示させる。
【0032】
基本メンテナンスプログラム「A0000」に示す日射量(係数)は、例えば、図3に示すようなグラフとして、建物の方位毎の年間積算日射量(MJ/m2年)を求め、南の鉛直面を「1.0」としたときの方位毎の相対的な日射量として求める。ここで、年間積算日射量(MJ/m2年)は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が提供する計算ソフト(METPV3)を用いて算出できる。図3に示す例では、外壁への日射量は南面「1.0」、東面・西面「0.6」、北面「0.3」と日射量(係数)が設定される。本実施の形態では、10年を基本メンテナンスサイクルとして、この日射量(係数)と実際に使用する塗料の仕様(図2の「耐用年数」、「塗料仕様」、「メーカー」等)の関係が決定される。即ち、日射量(係数)が「1.0」のとき、耐用年数が10年の塗料が選択され、「A社、アクリルシリコン系」が初期値として設定される。また、東面・西面の日射量(係数)が「0.6」のとき、耐用年数が6年の塗料が、選定材料データベースに存在しないため、耐用年数が8年の塗料が選択され、「A社、ウレタン系」が初期値として設定される。また、日射量(係数)が「0.3」のとき、耐用年数が3年の塗料が、選定材料データベースに存在しないため、耐用年数が5年の塗料が選択され、「C社、ウレタン系」が初期値として設定される。なお、これらの初期値設定方法は、ユーザが任意に設定可能である。
【0033】
本実施の形態によれば、入力された任意の地域名称に従って、前記記憶手段20から前記方位面毎の日射量に応じた塗料特定データを読出すことにより、方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様を前記表示手段に表示させることができるため、地域毎に異なる日射量に従った方位面毎の塗料の仕様を求めることができる。
【0034】
次に、図2から図8を参照して、基本メンテナンスプログラムの変更等について説明する。
【0035】
前記記憶手段20は、所定期間後の前記塗料の劣化度(図6)を塗料特定データ(図2の「塗料仕様」、「メーカー」等)に対応付けて予め記憶している。図6においては、「色差(ΔE)」、「光沢保持率」、「白亜化」、「カビ・藻」に関する劣化度が示されている。図6に示す劣化度は、促進試験データにより得ることができる。一例として、図7には、色差(ΔE)についての促進試験により得られたデータを示している。促進試験は、例えば、太陽光の約100倍のUV照射量を有するメタルハライドランプを用いて行うことができる。また、「光沢保持率」は既存の光沢時計、「白亜化」は白亜化測定テープ等を用いて、初期設定(新築時)からの劣化度を測定することができる。
【0036】
そして、図5に示す所定期間(本実施の形態では「10年」)後に、物件名および塗料の劣化度が前記入力手段30により前記方位面毎に入力されたとき、前記制御手段10は、前記記憶手段20に記憶した劣化度(図6)と前記入力された劣化度(図5)を前記方位面毎に比較する。具体的には、図5に示す物件「A氏」の劣化指数が、東面・西面については「南面の2/3」程度、北面については「南面の1/2」程度である。ここで、南面の劣化度を「1」としたときの各方位面の劣化度の割合を劣化指数という。そして、図5の測定された南面の劣化度「6」については、図6の選定材料データベースの劣化度「6」と一致している。そのため、南面については、「A件b市」の基本メンテナンスプログラムと同じ、「A社、アクリルシリコン系」を採用する。東面・西面については、「A件b市」の基本メンテナンスプログラムにおいて「A社、アクリルシリコン系」を使用していたが、劣化指数が「2/3」程度と初期設定より劣化度が小さく、耐用年数が約6.7年以上の塗料(B社、ウレタン系、8年)を採用する。同様に、北面については、劣化指数が「1/2」であるため、耐用年数が約5年以上の塗料(C社、アクリル系、5年)を採用する。
【0037】
このように、物件「A氏」のメンテナンスプログラムは、図4(a)の基本メンテナンスプログラム(A県b市)から、図4(b)に示すように、図8(a)および(b)に示すメンテナンスプログラムA0001、A0002に変更される。ここで、A0001は、10年目と20年目のメンテナンスプログラム(10年毎のメンテナンスプログラム)を示し、A0002は、25年目のメンテナンスプログラム(15年毎のメンテナンスプログラム)を示す。
【0038】
図5には、他の劣化度として、光沢保持率と白亜化が示されている。ここで、南面の光沢保持率(劣化度)を「1」としたとき、東面・西面の光沢保持率の劣化指数は、「南面の2倍」程度、北面は「南面の3倍」である。そして、図5の測定された南面の劣化度「20」については、図6の選定材料データベースの劣化度「20」と一致している。光沢保持率を基本メンテナンスプログラムを変更するための基準とすると、東面・西面の光沢保持率の劣化指数は、「南面の2倍」であるため、耐用年数5年の塗料(例えば、C社、アクリル系)が選択可能である。しかし、本実施の形態においては、各種劣化指数(劣化度)を比較した場合に、耐用年数が長い塗料の仕様が選択される。即ち、劣化度は複数の項目(「色差(ΔE)」、「光沢保持率」、「白亜化」)から構成され、基準方位面(南面)の劣化度(図5の色差「6」、光沢保持率20%)を基準値「1.0」として求められる方位面毎に複数の異なる項目の劣化指数(例えば、図5の東面・西面の色差が「2/3」と東面・西面の光沢保持率の劣化指数は、「南面の2倍」)を評価して、方位面毎の塗料の仕様を決定し、前記表示手段40に表示させる。白亜化にいても、光沢保持率と同じ比較処理が行われる。更に、カビ・藻の発生の有無について判断し、例えば、カビの発生が確認された場合は、防カビ効果を有するピュアアクリル系の塗料に変更するようにメンテナンスプログラムを変更してもよい。
【0039】
本実施の形態によれば、前記記憶手段20に記憶した劣化度(図6)と前記入力された劣化度(図5)を前記方位面毎に比較することより、比較結果に応じて前記表示手段40に前記方位面毎に使用されるべき塗料の仕様(図2、図8)を前記表示手段40に表示させることができるため、前記所定期間後の建物の劣化状態に合わせた塗料の仕様を求めることができる。更に、劣化度の複数の項目を方位面毎に評価することにより、より適切な塗料の仕様を求めることができる。
【0040】
また、例えば、図4、図8に示すように、前記制御手段10は、図5に示す前記入力された東面・西面の色差の劣化度「4」が、図6に示す前記記憶手段20に記憶した東面・西面の色差の劣化度「6」より小さいと判断した場合、現在使用している塗料(A社、アクリルシリコン系、10年)の耐久性より低い耐久性の塗料(B社、ウレタン系、8年)を東面・西面の塗料の仕様として決定し、前記表示手段40に表示させることを特徴とする。
【0041】
本実施の形態によれば、現在使用している塗料の耐久性より低い耐久性の塗料の仕様を前記表示手段40に表示させることにより、ある方位面において劣化の進行が遅い場合に、より適した塗料の仕様を求めることができる。
【0042】
また、例えば、図4、図8に示すように、前記制御手段10は、入力された劣化度(例えば、B氏について10年目の北面の劣化度(色差)が「10」であった場合)が前記記憶手段20に記憶した劣化度「9」より大きいと判断した場合、現在使用している塗料(C社、ウレタン系、5年)の耐久性より高い耐久性の塗料(B社、ウレタン系、8年)を北面の塗料の仕様として決定し、前記表示手段40に表示させることを特徴とする。
【0043】
本実施の形態によれば、現在使用している塗料の耐久性より高い耐久性の塗料の仕様を前記表示手段40に表示させることにより、ある方位面において劣化の進行が早い場合に、より適した塗料の仕様を求めることができる。
【0044】
更に、図4に示すように、前記制御手段10は、前記入力された劣化度が前記記憶手段20に記憶した劣化度と異なると判断した場合、所定期間(10年目、20年目、25年目)後に使用される方位面毎の塗料の仕様(図8)を更新(図4(a)を図4(b)に更新)するために前記記憶手段20に記憶させることを特徴とする。ここで、図4(a)に示すように、A氏について、基本メンテナンスプログラムA0000が初期設定として、25年目まで登録されている。そのため、上記更新時において、メンテナンスプログラムA0001、A0002に、例えば、A氏のデータが存在しない場合は、図8においてデータを追加して更新することになる。
【0045】
本実施の形態によれば、所定期間後に使用される方位面毎の塗料の仕様(図8)を前記記憶手段20に記憶させることにより、塗料の仕様(図8)を更新(図4)することができるため、方位面毎に適切なメンテナンスプログラムを提供できる。
【0046】
更に、図4に示すように、前記記憶手段20は、前記各地域の地域名称と対応付けて方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様(図2のA0000,図8のA0001,A0002)および前記所定期間後に使用される方位面毎の塗料の仕様(図2のA0000、図8のA0001,A0002)を物件毎(図4の「A氏」、「B氏」、「C氏」、…)に記憶することを特徴とする。
【0047】
本実施の形態によれば、塗料の仕様(図2、図8)を物件毎(図4)に記憶することにより、各物件の現状に応じた塗料の仕様を記憶することができるため、物件毎に適切なメンテナンスプログラムを提供できる。
【0048】
次に、図9を参照して、外装材メンテナンスシステムの動作例を説明する。
【0049】
始めに、制御手段10は、地域名称、物件名、方位面毎の劣化度を入力するための画面データ、「OK」ボタン等のデータを記憶手段20から読み出し表示手段40に表示させる。制御手段10は、入力手段30により、少なくとも地域名称が入力され、「OK」ボタンが押下される状態まで、待機する(ステップS1のNO)。そして、地域名称だけが入力された場合には、制御手段10は、入力された地域名称に対応するメンテナンスプログラムを基本メンテナンスプログラムA0000から抽出し、前記表示手段40に表示させる(ステップS4)。また、物件名および方位面毎の1項目以上の劣化度が入力された場合(ステップS1のYES、S2のYES)には、前記記憶手段20に記憶した劣化度(図6)と前記入力された劣化度(図5)を前記方位面毎に比較し、比較結果に応じて前記表示手段40に前記方位面毎に使用されるべき塗料の仕様(A0001,A0002)を前記表示手段40に表示させる(ステップS4)。
【0050】
本実施の形態によれば、任意の地域名称だけが入力された場合には、前記記憶手段20から前記方位面毎の日射量に応じた塗料特定データを読出すことにより、方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様を前記表示手段に表示させることができるため、地域毎に異なる日射量に従った方位面毎の塗料の仕様を求めることができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、物件名と劣化度が入力された場合には、前記記憶手段20に記憶した劣化度(図6)と前記入力された劣化度(図5)を前記方位面毎に比較することより、比較結果に応じて前記表示手段40に前記方位面毎に使用されるべき塗料の仕様(図2、図8)を前記表示手段40に表示させることができるため、前記所定期間後の建物の劣化状態に合わせた塗料の仕様を求めることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 制御手段
20 記憶手段
30 入力手段
40 表示手段
50 印刷手段
100 外装材メンテナンスシステム
200 色差測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各地域の地域名称と、前記各地域における方位面毎の日射量と、前記各地域の地域名称と対応付けて方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様を特定する塗料特定データを記憶した記憶手段と、
任意の地域名称を入力させる入力手段と、
表示手段と、
前記入力された地域名称に従って、前記記憶手段から前記方位面毎の日射量に応じた塗料特定データを読出し、方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様を前記表示手段に表示させる制御手段
を備える外装材メンテナンスシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の外装材メンテナンスシステムにおいて、
前記記憶手段は、所定期間後の前記塗料の劣化度を塗料特定データに対応付けて予め記憶し、
前記入力手段により前記所定期間後の塗料の劣化度が前記方位面毎に入力されたとき、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶した劣化度と前記入力された劣化度を前記方位面毎に比較し、比較結果に応じて前記表示手段に前記方位面毎に使用されるべき塗料の仕様を前記表示手段に表示させることを特徴とする外装材メンテナンスシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の外装材メンテナンスシステムにおいて、
前記制御手段は、前記入力された劣化度が前記記憶手段に記憶した劣化度より小さいと判断した場合、現在使用している塗料の耐久性より低い耐久性の塗料の仕様を前記表示手段に表示させることを特徴とする外装材メンテナンスシステム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の外装材メンテナンスシステムにおいて、
前記制御手段は、前記入力された劣化度が前記記憶手段に記憶した劣化度より大きいと判断した場合、現在使用している塗料の耐久性より高い耐久性の塗料の仕様を前記表示手段に表示させることを特徴とする外装材メンテナンスシステム。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の外装材メンテナンスシステムにおいて、
前記制御手段は、前記入力された劣化度が前記記憶手段に記憶した劣化度と異なると判断した場合、所定期間後に使用される方位面毎の塗料の仕様を更新するために前記記憶手段に記憶させることを特徴とする外装材メンテナンスシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の外装材メンテナンスシステムにおいて、
前記記憶手段は、前記各地域の地域名称と対応付けて方位面毎の日射量に対応する塗料の仕様および前記所定期間後に使用される方位面毎の塗料の仕様を物件毎に記憶することを特徴とする外装材メンテナンスシステム。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の外装材メンテナンスシステムにおいて、
前記劣化度は複数の項目から構成され、前記制御手段は、基準方位面の劣化度を基準値として求められる方位面毎に複数の異なる項目の劣化指数を評価して、方位面毎の塗料の仕様を決定し、前記表示手段に表示させることを特徴とする外装材メンテナンスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−180715(P2012−180715A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45812(P2011−45812)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】