説明

外観に優れたメタリック調ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品。

【構成】ポリカーボネート樹脂(A)、メタリック顔料(B)およびそれ以外の着色剤(C)を必須成分として含有する樹脂組成物であって、当該樹脂組成物を射出成形して得られる厚み1.0mmの成形品の光線透過率(測定方法はASTM D−1003に準拠)が3〜50%であることを特徴とする外観に優れたメタリック調ポリカーボネート樹脂組成物、およびそれからなる成形品。
【効果】本発明にて得られた成形品は、ポリカーボネート樹脂が本来有する優れた衝撃強度、耐熱性、熱安定性等性能を維持したまま、深みのあるメタリック外観を有し、かつ、ウェルド部のメタリック外観のムラの少なく、意匠性に優れている。更に、高価なメタリック顔料の添加量を低減できることからコスト的にも有利であり工業的利用価値が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観に優れたメタリック調ポリカーボネート樹脂組成物およびそれから成形されてなる外観に優れたメタリック調成形品に関する。更に詳しくは、ポリカーボネート樹脂の特徴である耐衝撃性、耐熱性、熱安定性等を保持したまま、優れたメタリック外観を有し、更にウェルド部のメタリック外観ムラを改善したポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、熱安定性等に優れた熱可塑性樹脂であり、電気、電子、ITE、機械、自動車などの分野で広く用いられている。一方、当該樹脂が有するこれらの優れた性能を活かして、前述の各分野では、意匠面やデザイン上からメタリック外観を備えた材料が求められている場合もある。
【0003】
ポリカーボネート樹脂組成物にメタリック外観を付与させる手法として、従来から金属微粉(特許文献1)や金属被膜されたガラスフレーク(特許文献2)またはマイカ(特許文献3)あるいはアルミニウム粉とパールマイカとを併用(特許文献4)して添加することが提案されてきた。
【0004】
しかしながら、これらの手法を用いることにより、メタリック外観は得られるものの、意匠性は未だ満足のいくものではなかった。具体的には、従来手法では、メタリック外観を得るために比較的多量のメタリック顔料が添加されており、そのため得られたメタリック調成形品の透明性が低下し、とりわけ射出成形時に製品金型内で分流した溶融樹脂材料の2つ以上の流れが合流する部分(ウェルド部)においてメタリック外観の不良が発生したり、また深みのあるメタリック外観が得らないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−17169号公報
【特許文献2】特開平4−359937号公報
【特許文献3】特開平10−158540号公報
【特許文献4】特開平5−93091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術における問題点、すなわち、ウェルド部のメタリック外観のムラおよび深みのあるメタリック外観が得られないことに起因する製品価値の著しい低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題に鑑み鋭意研究を行った結果、透明性を有した着色ポリカーボネート樹脂にメタリック顔料を配合し、かつ当該着色メタリック樹脂組成物を射出成形して得られる厚み1.0mmの成形品の光線透過率を特定の範囲に調節することにより、驚くべきことにウェルド部のメタリック外観のムラが改善され、さらに深みのあるメタリック外観も得られる事を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)、メタリック顔料(B)およびそれ以外の着色剤(C)を必須成分として含有する樹脂組成物であって、当該樹脂組成物を射出成形して得られる厚み1.0mmの成形品の光線透過率(測定方法はASTM D−1003に準拠)が3〜50%であることを特徴とする外観に優れたメタリック調ポリカーボネート樹脂組成物、およびそれからなる成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外観に優れたメタリック調ポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形品は、ポリカーボネート樹脂が本来有する優れた衝撃強度、耐熱性、熱安定性等性能を維持したまま、深みのあるメタリック外観を有し、かつ、ウェルド部のメタリック外観のムラの少なく、意匠性に優れている。更に、高価なメタリック顔料の添加量を低減できることからコスト的にも有利であり工業的利用価値が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0011】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0012】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0013】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0014】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、より好ましくは14000〜30000、さらに好ましくは16000〜26000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂(A)を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じ使用することができる。
【0015】
本発明にて使用されるメタリック顔料(B)としては、金属被膜を備えたガラスフレーク、平均粒径が100μm以下のアルミニウム粉末等が挙げられる。とりわけ、金属被膜を備えたガラスフレークが好適に使用される。
【0016】
本発明にて使用されるメタリック顔料(B)以外の着色剤(C)としては、特に限定されないが、着色、造粒加工を行なうことでポリカーボネート樹脂(A)を劣化させる(例えば分子量低下)等の不具合を起こさせない染料および顔料が好適に使用できる。好ましいメタリック調の外観を得るには、カーボンブラック等のダーク系の着色剤の使用が好適である。
【0017】
本発明の外観に優れたメタリック調ポリカーボネート樹脂組成物は、これを射出成形して得られる厚み1.0mmの成形品の光線透過率が3〜50%であることを要件とする。当該光線透過率は、ASTM D−1003に準拠して測定される。
【0018】
前記の光線透過率が3%未満である場合は、深みのあるメタリック外観を得る事が困難になり、またウェルド部のメタリック外観のムラが発生し、外観に劣るので好ましくない。一方、前記の光線透過率が50%を超える場合は、成形品が透けて見えることから深みのあるメタリック外観を得る事が困難になり、意匠性に劣るので好ましくない。好ましい光線透過率の範囲は3〜40%、より好ましくは5〜30%である。
【0019】
前記の光線透過率の値は、使用されるメタリック顔料(B)およびそれ以外の着色剤(C)の配合量をそれぞれ加減することで最適範囲に調整することができる。
【0020】
また、メタリック顔料(B)の配合量としては、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.003重量部以上0.01重量部未満が好ましい。より好ましくは0.005〜0.009重量部、さらに好ましくは0.006〜0.008重量部の範囲である。
【0021】
本発明の各種配合成分(A)、(B)および(C)の配合方法は、特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等によりこれらを混合し、通常の単軸または二軸押出機等で溶融混練する方法があげられる。また、これら配合成分の配合順序、あるいは一括混合、分割混合を採用することについても特に制限はない。
【0022】
また、混合時、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系熱安定剤、展着剤(エポキシ大豆油、流動パラフィン等)等を配合することができる。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、部や%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
【0024】
使用した配合成分の詳細は、以下のとおりである。
ポリカーボネート樹脂:
住友ダウ社製 カリバー200−20(粘度平均分子量:19000)
(以下、PCと略記)
メタリック顔料:
日本板硝子社製 メタシャインMC5090PS(以下、Mと略記)
(平均粒径150μm、平均厚さ5μmのガラスフレークに銀をコーティングした
メタリック顔料)
着色剤:
三菱カーボン社製 カーボン850(以下、CBと略記)
【0025】
前述の各種配合成分を表1に示す配合比率にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(神戸製鋼所製KTX37)を用いて、溶融温度280℃にて混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0026】
(成形品の外観評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ125℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100SAII)を用いて設定温度280℃、射出圧力1600kg/cmにて外観評価用試験片(150x90x3.0mm)を作成した。尚、試験片の中央にウェルドが発生するように、当該試験片作成のための金型には長手方向両側にゲートを設けた。ウェルド部の外観、メタリック感及び深みのあるメタリック外観を目視にて観察し、以下の基準に基づき外観の判定を行った。結果を表1に示す。
ウェルド部のメタリック外観:
外観良好(○):ウェルド部でも、一様なメタリック外観を得る事が出来る。
外観不良(×):ウェルド部を境にメタリック外観が大幅に異なる。
メタリック感:
外観良好(○):メタリック顔料の輝きが見られ意匠性に優れる。
外観不良(×):メタリック顔料の輝きが見られず意匠性に劣る。
深みのあるメタリック外観:
外観良好(○):深みのあるメタリック外観を有し意匠性に優れる
外観不良(×):深みのあるメタリック外観が見られず意匠性に劣る。
【0027】
(光線透過率の評価)
得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ125℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100SAII)を用いて設定温度280℃、射出圧力1600kg/cmにて外観評価用試験片(90x50x3、2、1mmの3段プレート)を作成した。このプレートの1mm厚みの部分を村上色彩技術研究所製分光光度計(CMS−35SP、光源D65、光学条件S.C.I)を用いてASTM D−1003に準拠して光線透過率を測定した。
【0028】
【表1】

【0029】
ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足する場合(実施例1〜3)にあっては、全ての評価項目にわたり良好な結果を示した。
【0030】
一方、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
比較例1は、メタリック顔料の配合量が少なく、かつ、光線透過率が本発明の定める範囲よりも低い例であり、ウェルド部のメタリック外観、メタリック感および深みのあるメタリック外観に劣っていた。
比較例2は、メタリック顔料の配合量が比較例1よりも多く、かつ、光線透過率が本発明の定める範囲よりも低い例であり、メタリック感は改善されるものの、ウェルド部のメタリック外観および深みのあるメタリック外観に劣っていた。
比較例3は、光線透過率が本発明の定める範囲より高い例であり、ウェルド部のメタリック外観および深みのあるメタリック外観に劣っていた

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)、メタリック顔料(B)およびそれ以外の着色剤(C)を必須成分として含有する樹脂組成物であって、当該樹脂組成物を射出成形して得られる厚み1.0mmの成形品の光線透過率(測定方法はASTM D−1003に準拠)が3〜50%であることを特徴とする外観に優れたメタリック調ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
メタリック顔料(B)が、金属皮膜を備えたガラスフレークまたは平均粒子径が100μm以下のアルミニウム粉末であることを特徴とする請求項1記載の外観に優れたメタリック調ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
メタリック顔料(B)の配合量が、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.003重量部以上0.01重量部未満であることを特徴とする請求項1記載の外観に優れたメタリック調ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
メタリック顔料(B)の配合量が、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.006〜0.008重量部であることを特徴とする請求項1記載の外観に優れたメタリック調ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の外観に優れたメタリック調ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる外観に優れたメタリック調成形品。