説明

外観検査装置

【課題】複数の微小な吸引孔を備えた部品吸着面に吸着したチップ部品の撮像画像から、煩雑な画像処理を必要とすることなくチップ部品の輪郭を検出して、簡易に、しかも短時間にその良否を判定することのできる外観検査装置を提供する。
【解決手段】負圧吸引される複数の吸引孔が設けられた部品吸着面にチップ部品を吸着して搬送する部品搬送機構を、前記部品吸着面とその裏面側との間を貫通する複数の吸引孔を設けた吸着体と、この吸着体の裏面側に前記複数の吸引孔の開口端を覆って設けられると共に、前記吸着体の裏面側から前記吸引孔内に光を導入する透明板とにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ部品を吸着して搬送しながら、カメラにより上記チップ部品を撮像した画像から前記チップ部品の良否を判定する外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板に実装される抵抗やコンデンサ、インダクタ等の、例えば0.3mm(h)×0.3mm(w)×0.6mm(d)程度の略直方体形状をなす微小なチップ部品は、通常、1個ずつ整列させて搬送しながら自動実装機等に供給される。またチップ部品を、その正面(前端面)、背面(後端面)、右側面、左側面、上面、および底面の6面においてそれぞれカメラを用いて撮像し、これらの各撮像画像から上記チップ部品の外観を検査して、予め不良品を排除することも行われる(例えば特許文献1,2を参照)。
【0003】
ちなみにチップ部品の搬送は、例えば搬送テーブル上にチップ部品を載置して、或いは吸着ノズルを備えた真空チャックを用いてチップ部品を吸着して行われる。この際、搬送テーブル上へのチップ部品の載置姿勢を変えることによって、或いは真空チャックによるチップ部品の吸着面を変えることによってチップ部品の上述した各面のカメラによる撮像が行われる。
【特許文献1】特開2000−266521号公報
【特許文献2】特開2004−345859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで円盤状または円筒状の部品吸着面を備え、その吸着面に複数の微小な吸引孔を配列形成した搬送機構を用いてチップ部品を吸着して搬送する場合、カメラを用いて上記吸着面に吸着されたチップ部品を撮像すると、上記吸着面のチップ部品を吸着した部位の周囲に存在する吸着孔までがカメラに暗く写り込むことがある。このとき、チップ部品の画像と吸着孔の画像とが部分的に重なり合っていると、その撮像画像中からチップ部品の輪郭を正確に検出することが困難となり易い。このような不具合についてはフィルタリング等の画像処理を施すことによって対処可能であるが、画像処理負担が増える上、輪郭検出に基づくチップ部品の良否判定に時間が掛かる等の新たな問題が生じる。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、複数の微小な吸引孔を備えた吸着面に吸着されたチップ部品を撮像した画像から、煩雑な画像処理を必要とすることなくチップ部品の輪郭を検出して、簡易に、しかも短時間にその良否を判定することのできる外観検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するべく本発明に係る外観検査装置は、負圧吸引される複数の吸引孔が設けられた部品吸着面にチップ部品を吸着して搬送する部品搬送機構と、この部品搬送機構に吸着されたチップ部品を撮像するカメラと、このカメラによる前記チップ部品の撮像画像から該チップ部品の良否を判定する画像処理装置とを備えたものであって、
特に前記部品搬送機構を、前記部品吸着面とその裏面側との間を貫通する複数の吸引孔を設けた吸着体と、この吸着体の裏面側に前記複数の吸引孔の開口端を覆って設けられると共に、前記吸着体の裏面側から前記吸引孔内に光を導入する透明板とを備えたものとして実現したことを特徴としている。
【0007】
好ましくは前記吸着板については、例えば複数の微細な吸引孔を周方向に一定の配列ピッチで形成した円板体と、この円板体の裏面に同軸に設けられて前記複数の微細な吸引孔にそれぞれ連通する円環状の溝を形成した内外一対のリング体とを備えたものとして実現し、これらの内外一対のリング体が形成した前記円環状の溝の開口端を覆って前記透明板を設けるようにすれば良い。
【0008】
また本発明の好ましい態様は、前記吸着板の裏面側に設けた前記透明板側から前記吸引孔に向けて光を照射する光源を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の外観検査装置によればチップ部品を吸着する吸着体の裏面側に設けられて、該吸着体を貫通して設けられた複数の吸引孔の開口端を覆う部材が透明体なので、この透明体を介して前記吸着体の裏面側に入射する光が前記吸引孔内に導入される。この結果、吸引孔自体が明るく照明されるので、吸引孔が陰のような暗い画像としてカメラに写り込むことがなくなる。換言すれば吸引孔の内側まで光が回り込むので、カメラ側から見た吸引孔の明るさは吸着体における吸着面と略同程度な明るさとなる。
【0010】
従ってカメラへの吸引孔の写り込みが少なくなるので、仮に前記吸着面に吸着されたチップ部品と吸引孔とが部分的に重なりあっていても、その背景としての吸着面の画像中に吸引孔の画像が溶け込むので、撮像画像における背景領域との識別だけで該チップ部品の輪郭を容易に検出することが可能となる。故にフィルタリング等の煩雑な画像処理が不要となるので、その画像処理負担を軽減し、簡易にしかも短時間にチップ部品の良否を判定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係るチップ部品の外観検査装置について説明する。
この外観検査装置は、概略的には図1に示すように、図示しないホッパから供給される複数のチップ部品Aを整列させて1個ずつ送り出すボールフィーダ1、このボールフィーダ1から送り出されたチップ部品Aを搬送するラインフィーダ(リニアフィーダ)2、ラインフィーダ2から1個ずつ供給されるチップ部品Aを載置して搬送する第1の回転テーブル3、および第1の回転テーブル3に載置されて搬送されたチップ部品Aの上面を吸着して搬送する第2の回転テーブル4を備える。
【0012】
ボールフィーダ1は、すり鉢状の容器を備え、回転振動が与えられる上記容器内に供給されたチップ部品Aを、その遠心力を利用してその周壁に沿って整列させながら順次1個ずつ送り出すものである。またラインフィーダ2は振動が加えられる直線ガイドを備え、前述したボールフィーダ1から供給されたチップ部品Aを上記直線ガイドを沿わせて搬送するものである。
【0013】
一方、前記第1の回転テーブル3は、一定の回転速度(周速度)で回転駆動される円板体の周縁部に円環状の部品載置部を設けたもので、該部品載置部上にチップ部品Aを載置してその周方向に搬送するものからなる。この第1の回転テーブル3によるチップ部品Aの搬送は、該第1の回転テーブル3の回転速度と前記ラインフィーダ2からのチップ部品Aの供給タイミングとにより定まる間隔で、一般的にはその周方向に所定の間隔を隔てて複数のチップ部品Aを順次連続的に載置して行われる。
【0014】
特にこの実施形態においては、第1の回転テーブル3により、例えばその3/4周に亘ってチップ部品Aを搬送するように構成されている。この第1のテーブル3によるチップ部品Aの搬送経路の途中には、その搬送経路に沿って5台のカメラ11,12,13,14,15が設置されており、これらの各カメラ11,12,13,14,15によって第1の回転テーブル3上に載置されたチップ部品Aの正面(前端面)、背面(後端面)、右側面、左側面、および上面がそれぞれ撮像されるようになっている。そしてこれらのカメラ11,12,13,14,15により撮像された前記チップ部品Aの画像は画像処理装置20に与えられて輪郭抽出処理等が行われ、これによってその外観検査が実行されるようになっている。
【0015】
さて第1の回転テーブル3における前記ラインフィーダ12からのチップ部品供給位置から、例えば3/4周回転した位置には、上記第1の回転テーブル3の上述した部品載置部に重なるようにして第2の回転テーブル4が設けられている。この第2の回転テーブル4は、例えば後述するように部品吸着面をなす円板体(吸着体)に複数の吸引孔を、その直径の2〜3程度の配列ピッチで円環状に設けたものからなる。ちなみにこれらの吸引孔は上記円板体の表裏面を貫通する、例えば直径80〜200μm程度の微細径のものからなる。そしてこれらの吸引孔は、前記円板体の裏面側に設けられた後述する空気路を介して吸引ポンプ(図示せず)に連結され、負圧吸引されることで前記円板体の部品吸着面にチップ部品Aを吸着するように構成されている。
【0016】
特にこの第2の回転テーブル4は、上述した吸引孔を円環状に配列した部品吸着領域が前述した第1の回転テーブル3における円環状の部品載置領域と重なるように、好ましくは部品載置領域の中心線がなす円と接してチップ部品Aの受け渡し部を形成するように設けられている。そして第2の回転テーブル4は、上記受け渡し部において前記第1の回転テーブル3の周速度と同じ周速度となるように、その回転速度が同期制御されている。
【0017】
このような第2の回転テーブル4は、第1の回転テーブル3に載置して搬送されるチップ部品Aの外観検査が、前述したようにチップ部品Aの正面(前端面)、背面(後端面)、右側面、左側面、および上面に対してだけ行われ、第1の回転テーブル3に載置したチップ部品Aの下面に対する撮像を行うことができないことから、該チップ部品Aの上面を吸着して搬送することで、その下面を露出(開放)させるものである。このようにして第2の回転テーブル4にその上面が吸着されたチップ部品Aに対して、カメラ16による下面の撮像が行われてその外観検査が実行される。そしてこの下面の外観検査を含むチップ部品Aの6面に亘る外観検査によりその良否が判定される。そしてこの判定結果に従って部品選別装置30が駆動され、前記チップ部品Aの搬送に同期してチップ部品Aの良品と不良品との選別(振り分け)が実行される。
【0018】
さて基本的には上述した如く構成される外観検査装置において本発明が特徴とするところは、例えば図2にその概略構成を示すように、第2の回転テーブル4の部品吸着面をなす円板体(吸着体)の裏面側に設ける部材をアクリル等の透明体にて形成し、この透明体を介して第2の回転テーブル4の裏面側から前述した吸引孔内に光を導入し、吸引孔を明るく照明するようにしたことを特徴としている。
【0019】
即ち、第2の回転テーブル4は、図2に示すようにその一面をチップ部品Aの吸着面とし、その表裏面を貫通する複数の吸引孔41を円環状に設けたた金属製の円板体42を部品吸着体として備える。この円板体(吸着体)42は、例えば厚みが1mm程度の薄板からなり、上述した微小径の吸引孔41は上記円板体42をエッチングすることによって形成される。このような円板体42の上述した吸着面とは反対側の裏面(図2においては上面)側には、円環状に配列された複数の吸引孔41を挟むようにして、該円板体42と同軸に前記各吸引孔41にそれぞれ連通する円環状の溝43を形成する内外一対のリング体44,45が設けられる。これらの一対のリング体44,45によって形成される円環状の溝43は、前記各吸引孔41を前述した吸引ポンプに連結するための空気路をなすものである。
【0020】
また内側のリング体45には上記円環状の溝43と、第2の回転テーブル4の中心部を回転自在に支持する軸受機構(図示せず)側との間を結ぶ複数の空気溝46が設けられている。これらの空気溝46は、第2の回転テーブル4の回転に伴って上記軸受機構に設けられた吸引口の形成位置に合致したときに開放され、それ以外のときには上記軸受機構により閉塞されることで、前記軸受機構に設けられて前述した吸引ポンプに連結された軸受け側の吸引口(図示せず)に選択的に連通するものである。
【0021】
そして前記一対のリング体44,45によって形成される円環状の溝43の開口端は、上記リング体44,45の端部に装着される透明板47により気密に閉塞され、これによって前記各吸引孔41を負圧吸引する空気路が形成している。このような空気溝46と、前記一対のリング体44,45によって形成される円環状の溝43とを介して複数の吸引孔41を負圧吸引することにより、図3に示すように円板体42の吸着面(図においては下面)にチップ部品Aが吸着される。
【0022】
また透明板47は、円環状の溝43の開口端を閉塞する役割を担うことのみならず、図3に示すように第2の回転テーブル4の裏面側から照射される光を溝43を介して前述した吸引孔41内に導入し、これらの吸引孔41の内部を明るく照明する役割を担う。尚、好ましくは第2の回転テーブル4の裏面側に照明光源50を設けておき、この照明光源50にて第2の回転テーブル4の裏面側に光を照射することにより吸引孔41の内部を明るく照明することが望ましい。
【0023】
かくしてこのような構造の第2の回転テーブル4を用いてチップ部品Aの上面を吸着して該チップ部品Aの下面をカメラ16による撮像に供するようにした外観検査装置によれば、第2の回転テーブル4に吸着されたチップ部品Aの周囲にその開口端が露出する吸引孔41の内部が明るく照明されており、その吸着面と同程度の輝度となる。この結果、カメラ16にてチップ部品Aを撮像した画像は、例えば図4(a)に模式的に示すように吸引孔41の画像成分aがその背景である部品吸着面の画像成分bに溶け込むので、チップ部品Aの画像成分cだけを容易に抽出する(切り出す)ことが可能となる。即ち、モノクロ画像においては、第2の回転テーブル4の部品吸着面と吸引孔41との輝度が高くなって白っぽく写り、これに対して第2の回転テーブル4に吸着されたチップ部品Aは一般的にはその輝度が低く黒っぽく写るので、該チップ部品Aの輪郭を容易に識別することが可能となる。
【0024】
ちなみに図4(b)は、従来の裏面側が金属部材で覆われた第2の回転テーブルに吸着されたチップ部品Aのカメラ16による撮像画像を模式的に示している。この図4(b)に示すように従来においては吸引孔41の画像成分aの輝度が低い為に、むしろチップ部品Aの画像成分cに溶け込むことが多いので、チップ部品Aと吸引孔41との境界を識別することが困難であった。この点、上述したようにその裏面側を透明体47にて形成した第2の回転テーブル4を用いた外観検査装置によれば、チップ部品Aの画像成分cだけをその背景から容易に切り出すことができるので、チップ部品Aの外観検査を少ない処理負担で容易に、しかも短時間に実行することができる。
【0025】
またこの外観検査装置によれば、第2の回転テーブル4の吸着孔41を形成した金属製の円板体42の裏面側に設ける部材をアクリル等の透明板47にて形成するだけなので、その構造が簡単であり、装置価格の高騰化を招来する虞も殆どない。しかも既存の外観検査装置を簡単に改造して実現することも可能なので、その実用的利点が多大である。更には第2の回転テーブル4を挟んで、カメラ16とは反対側に照明光源50を設置することも容易なので、さほどその構成の複雑化を招くこともない等の利点がある。また上述した構成であればチップ部品Aの撮像画像からの外観検査を短時間に行い得るので、その分、チップ部品Aの搬送速度を速くして外観検査処理効率を高めることができる等の効果が奏せられる。
【0026】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば第2の回転テーブル4におけるチップ部品Aの吸引構造は、従来より種々提唱されている構造を適宜採用可能であり、要は吸引孔41の部品吸着面側とは反対側を覆う部品として透明部材を用いる要にすれば十分である。また吸引孔41内を照明する照明光源50としては、照明した吸着孔41の内部の明るさ(輝度)が、その部品吸着面の輝度と同程度になるものを用いれば十分である。更には外観検査対象とするチップ部品Aの色や反射率等に応じて部品吸着面の色を変えたり、また照明光の強度を変えることも勿論可能である。
【0027】
またここでは円板型の回転テーブルを例に説明したが、周側面にチップ部品Aを吸着して搬送する円筒型またはリング型の搬送装置にも同様に適用することができる。この場合には円筒型またはリング型の部品吸着体の内側面を透明体にて構成し、その内側に照明光源50を組み込むようにすれば良い。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】外観検査装置の概略的な構成を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る外観検査装置に組み込まれる部品搬送機構である第2の回転テーブルの概略構成を示す図。
【図3】図2に示す第2の回転テーブルの部分的な断面構造を示す図。
【図4】第2の回転テーブルに吸着したチップ部品のカメラによる撮像画像を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0029】
1 ボールフィーダ
2 ラインフィーダ
3 第1の回転テーブル
4 第2の回転テーブル
11,12,13,14,15,16 カメラ
20 画像処理装置
30 部品選別装置
41 吸引孔
42 部品吸着面をなす円板体
43 溝
44,45 リング体
46 空気溝
47 透明板
50 照明光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧吸引される複数の吸引孔が設けられた部品吸着面にチップ部品を吸着して搬送する部品搬送機構と、この部品搬送機構に吸着されたチップ部品を撮像するカメラと、このカメラによる前記チップ部品の撮像画像から該チップ部品の良否を判定する画像処理装置とを備えた外観検査装置であって、
前記部品搬送機構は、前記部品吸着面とその裏面側との間を貫通する複数の吸引孔を設けた吸着体と、この吸着体の裏面側に前記複数の吸引孔の開口端を覆って設けられると共に、前記吸着体の裏面側から前記吸引孔内に光を導入する透明板とを具備したことを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記吸着板は、複数の微細な吸引孔を周方向に一定の配列ピッチで形成した円板体と、この円板体の裏面に同軸に設けられて前記複数の微細な吸引孔にそれぞれ連通する円環状の溝を形成した内外一対のリング体とからなり、
前記透明板は、前記内外一対のリング体が形成した前記円環状の溝の開口端を覆って設けられるものである請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の外観検査装置において、前記透明板側から前記吸引孔に向けて光を照射する光源を備えたことを特徴とする外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−285844(P2007−285844A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113043(P2006−113043)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000103666)オカノ電機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】