説明

外観部品および構造部品を備える自動車のスライディングルーフ

本発明は、ポリオレフィンの外側スキン12から成る外観部品およびその膨張係数がスキンの膨張係数より小さい構造部品14を備え、前記2つの部品が、2つの部品の1つの表面に他方の部品の表面に対向して貼り付けられた接着片によって結合される自動車のスライディングルーフに関する。前記接着剤は、破断伸びが20から800%の範囲であり、その破断伸びの一部が純粋な弾性伸びであること、およびヤング率が0.5から300MPaの範囲であることを示している。貼付け片の呼び厚さは、接着後で0.8から3mmの範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック材料でできており、外観部品および構造部品を組み立てることによって構成される自動車のオープニングパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
オープニングパネル、特にテールゲートは、中間金属フレーム、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタル酸(PCPBT)プラスチック材料(供給者ジェネラルエレクトリックプラスチックスによりXenoy(登録商標)の下に販売されている)の外側パネルまたは外側スキン、および筐体の形態の例えば熱硬化性バルクモールディングコンパウンド(BMC)の構造部品を形成する内側パネルの組立体で構成され、その2つのパネルが、1ミリメートル(mm)を超えない厚さの接着剤のビードで結合されるものが知られている。
【0003】
プラスチック材料の2つのパネルは、非常に異なる線形熱膨張係数(LCTE)を有し、外側スキンの係数が構造部品のそれよりも4から10倍大きく、したがって特に日光および熱に曝すテストの最中で特にオープニングパネルの温度が上昇するときに接着剤のビードに高いレベルの張力がもたらされることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その結果接着剤のビードは、熱膨張によって生成された幾何学的オフセットを吸収するのに十分な程には変形せず、それにより、剛体性の劣る部品上に、つまり小さなヤング率を有する部品上に痕跡を形成する。その反対に、残留分(remanence)とも呼ばれる接着剤のビードの弾性は、冷却後、接着剤のビードをその最初の姿に戻せる程には十分ではなく、したがって2つのパネルの組立体の外観が、冷却の結果発生する膨張からの復帰によって劣化する。剛体性の劣る部品で、つまり外側スキンで接着剤のビードに合った位置に、直線状のマークを観察することができる。
【0005】
本発明の狙いは、ポリオレフィンの外側パネルおよび構造用パネルを備え、それらが接着剤によって結合された(ただし外側パネルに現れる目視可能な欠陥へ導く接着剤を用いることはない)オープニングパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、部材が、ポリオレフィンの外側スキンで構成されている外観部品およびスキンの膨張係数より小さな膨張係数を有する構造部品を備え、その2つの部品が、その2つの部品の一方の表面で他方の部品の表面に面している表面上に配設された接着剤のビードによって結合され、接着剤が、
20%から800%の範囲にある破断伸び、
その破断伸びの一部にわたる純粋な弾性伸び、および
0.5メガパスカル(MPa)から300MPaの範囲にあるヤング率
を与え、接着剤のビードが、接着後、0.8mmから3mmの範囲にある呼び厚さを与えるオープニングパネルを提供する。
【0007】
接着剤のためのこれら様々の特性の組合せゆえにポリオレフィンパネルをより剛体の材料でできているパネルに、接着されたポリオレフィンの伸びがその表面に痕跡をもたらすことなく接着することが可能である。
【0008】
構造部品は、樹脂および添加剤を含む複合材料でできていることが好ましい。材料は、熱硬化可能であり、さらには、特にモータリングの分野に適合したポリエステル、バルクモールディングコンパウンド(BMC)またはシートモールディングコンパウンド(SMC)とすることができる。構造部品は、強化熱可塑性プラスチック、特に長いグラスファイバの充填物をもつポリプロピレン(PPGFL)によって構成することもできる。このような状況の下では、熱可塑性部品もシートメタルのインサートによって補強されることが好ましい。
【0009】
ポリオレフィンのスキンは、ポリプロピレンまたはその他のポリエチレンでできていることが好ましい。それは一般的に重量で10%から50%、好ましくは20%から40%のタルクを含む。
【0010】
本発明のオープニングパネルは、下記特性の1つまたは複数をさらに含むことができる。
接着剤は、その破断伸びの少なくとも50%にわたって純粋な弾性伸びを与える。
接着剤のビードは、25mmより小さな呼び幅を与える。
ポリオレフィンは、20×10−6から60×10−6ミリメートル毎ミリメートル毎ケルビン(mm/mm/K)の範囲にある、好ましくは30×10−6から45×10−6mm/mm/Kの範囲にある係数を有する。
ポリオレフィンは、耐UV添加物をなんら含まない。実際、驚くべきことにポリオレフィンの組成からこのような添加剤を削除すると接着剤の接着性が非常に向上することが見出されている。
ポリオレフィンは、重量で10%から50%の、例えばエチレン−プロピレン−ジエンモノマ(EPDA)タイプのエラストマー充填材を含む。
ポリオレフィンは、1000MPaから2500MPaの範囲にある、好ましくは1500MPaより大きなヤング率を有する。
構造部品のヤング率をスキンのヤング率で除した割合は3から15の範囲にある、つまり構造部品はスキンよりより剛性であることを意味する。
外側スキンの膨張係数は、構造部品の膨張係数の1.5倍より大きい。したがって構造部品に対して相当に膨張するスキンであっても本発明による接着剤のビードの使用が、熱応力の後にスキン上に外部痕跡の生成をもたらすことはない。
接着剤のヤング率は、0.5MPaから10MPaの範囲にある。
接着後の接着剤のビードの呼び厚さは、1.5mmから2mmの範囲にある。
接着後の接着剤のビードの呼び幅は、12mmより小さい。
接着剤のビードを覆うポリオレフィンスキンの呼び厚さは1.5mmから4mmの範囲にある。
構造部品はそれに締結されまたはその中に埋め込まれた補強材を含む。
【0011】
本発明は、特に後部オープニングパネルに関し、さらに言えばテールゲートまたはトランクドアに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、純粋に例証として与えられ、本発明のオープニングパネルの展開図表である唯一の外観図を参考に作成された下記説明を参考に読めばより良く理解することができる。
【0013】
本発明の自動車のテールゲート10は、接着剤のビードで結合されたポリオレフィンの外側スキン12および構造部品14により構成されている。
【0014】
構造部品14は、グラスファイバ入りの、そこにTwintex(登録商標)で販売されているグラスファイバの繊維が付け加えられている(図示せず)、約3mmの厚さを有するポリプロピレン(PP/GF)のパネル16、および補強として動作するシートメタルのインサート18を備える。インサート18は押し出し鋼でできており、パネル16の周りにフレームを形成するように成形されている。それは、パネルの型打ちされた部分(図示せず)に従来方式、例えばねじ締結でしっかりと固定される。或いはインサート18はパネル16内に埋め込まれることもある。それはヒンジの支持体としても働く。繊維が加えられるPP/GFは10、000MPaのヤング率および3.20×10−5mm/mm/Kの膨張係数を有する。
【0015】
外側スキン12は、重量で20%から30%のタルクが入ったポリプロピレンでできており、1800MPaのヤング率および6×10−5mm/mm/Kの膨張係数を有する。それは重量で10%から50%の、例えばEPDMタイプのエラストマー充填材を含み、耐UV添加物を有しない。スキン12の平均厚さは約3.2mmである。
【0016】
パネル16は、スキン12の膨張係数のほぼ半分の膨張係数を有する。そのヤング率はスキン12のヤング率の5倍より大きい。
【0017】
他の実施形態では、スキン12は、供給業者ダウプラスチックからの商品参照DTF3800.00SUを有するポリプロピレンでできている。
【0018】
他の実施形態(図示せず)では、構造部品は、熱硬化性の材料、すなわち、フランスの供給業者MCRによってAMC 3600(適応モールディングコンパウンド)の商標の下に販売されているBMCでできているパネルである。この構造部品は補強を有しないことができる。AMCは13、000MPaのヤング率および1.70×10−5mm/mm/Kの膨張係数を有する。このような状況では、構造部品は、スキンのヤング率の7倍より大きなヤング率およびスキンの膨張係数の3分の1より小さな膨張係数を有する。
【0019】
2つの部品は、一方の部品の表面で他方の部品の表面に面している表面に配置された2つの接着剤のビード(図示せず)によってパネル12、16の1つの周辺部の所でおよび後部窓の周辺部の所でも結合されている。接着剤は、その破断伸びの50%にわたり純粋な弾性伸びをもつ400%の破断伸びを与え、5MPaのヤング率を有する。
【0020】
接着剤のビードの呼び厚さ(接着後)は2mm(1mmから3mmの範囲にある)であり、その呼び幅は10mmである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のオープニングパネルの展開図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンの外側スキン(12)で構成された外観部品およびスキンの膨張係数より小さな膨張係数を有する構造部品(14)を備え、2つの部品が、2つの部品の一方の表面で他方の部品の表面に面している表面に配置された接着剤のビードにより結合される自動車のためのオープニングパネルであって、接着剤が、
20%から800%の範囲にある破断伸び、
破断伸びの一部にわたる純粋に弾性な伸び、および
0.5メガパスカル(MPa)から300MPaの範囲にあるヤング率
を与え、かつ接着剤のビードが、接着後0.8mmから3mmの範囲にある呼び厚さを与えることを特徴とする、オープニングパネル。
【請求項2】
構造部品が、熱硬化性のポリマー、特にBMCでできている、請求項1に記載のオープニングパネル。
【請求項3】
構造部品が、強化熱硬化性ポリマー、特にグラスファイバシートを含む、グラスファイバ入りのポリプロピレンでできている、請求項1に記載のオープニングパネル。
【請求項4】
ポリオレフィンがポリプロピレンである、請求項1から3のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項5】
ポリオレフィンが20×10−6から60×10−6mm/mm/Kの範囲、好ましくは30×10−6から45×10−6mm/mm/Kの範囲にある係数を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項6】
ポリオレフィンが、重量で10%から50%、好ましくは重量で20%から40%のタルクを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項7】
ポリオレフェンが、耐UV添加物をなんら含まない、請求項1から6のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項8】
ポリオレフィンが、重量で10%から50%の、例えばEPDMタイプのエラストマー充填材を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項9】
ポリオレフィンが、1000MPaから2500MPaの範囲にあり、好ましくは1500MPaより大きいヤング率を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項10】
構造部品のヤング率をスキンのヤング率で除した割合が、3から15の範囲にある、請求項1から9のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項11】
外側スキンの膨張係数が、構造部品の膨張係数の1.5倍より大きい、請求項1から10のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項12】
接着剤のヤング率が0.5MPaから10MPaの範囲にある、請求項1から11のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項13】
接着後の接着剤のビードの呼び厚さが1.5mmから2mmの範囲にある、請求項1から12のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項14】
接着後の接着剤のビードの呼び幅が25mmより小さく、好ましくは12mmより小さい、請求項1から13のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項15】
接着剤のビードを覆うポリオレフィンスキンの呼び厚さが、1.5mmから4mmの範囲にある、請求項1から14のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項16】
接着剤が、その破断伸びの少なくとも50%にわたって純粋な弾性伸びを与える、請求項1から15のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項17】
構造部品が、それに締結されまたはその中に埋め込まれた補強材(18)を含む、請求項1から16のいずれか1項に記載のオープニングパネル。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか1項による自動車のリアオープニングパネル、特にテールゲートまたはトランクドア。

【図1】
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【公表番号】特表2008−516833(P2008−516833A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536230(P2007−536230)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002567
【国際公開番号】WO2006/042956
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(504037391)コンパニ・プラステイツク・オムニウム (11)
【Fターム(参考)】