説明

外部に露出される絵の変質を防止する保護装置およびその方法

【課題】外部に展示される絵画美術品において、紫外線を遮断する効果を向上可能な保護方法を提供する。
【解決手段】外部に露出される絵の変質を防止する保護装置において、一定の大きさを有し、一側に配される内部ガラス10と、内部ガラスの前面に付着される接合フィルム20と、接合フィルムの前面に固定される絵30と、絵の前面を保護するワニスコーティング31と、ワニスコーティングの前面に付着される紫外線遮断フィルム40と、紫外線遮断フィルムの前面に固定される少なくとも厚さ5mm以上の強化ガラス50と、強化ガラスの前面に接着される安全フィルム60と、内部ガラスの背面と安全フィルムの前面とを圧着固定する固定フレームと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部に展示される美術品の中、例えば、塗料または染料などの画材で彩られる絵の変質を防止する保護装置およびその方法に関する。より詳細には、外部に露出される絵の彩色が空気、紫外線などにより変質しないように、紫外線遮断フィルムおよび安全フィルムを付着した強化ガラスと、接合フィルムを付着した内部ガラスとを圧着し、絵に対する空気の接触を抑制して、外部に露出される絵の変質を防止する保護装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部に展示される美術品は、その大部分が彫刻および造形物などで占められるが、例えば、塗料、染料(絵具、ペイントとも称する。)などを含む画材で描かれている絵が外部に展示される場合、外部に露出されることによって、紫外線を含む直射光線に長時間露されると、その本来の彩色が変質して美術作品が毀損してしまうという問題があった。
【0003】
従って、外部に展示される目的で描かれる絵画美術品は、紫外線遮断剤を混合した画材を用いることで、紫外線を含む直射光線が遮断されるように描かれる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、紫外線遮断剤が混合された画材なども、彩色が変質するまでの期間を、例えば、6ケ月〜2年程度に亘って延長するに過ぎず、いずれ彩色が変質して、絵画美術品に再び彩色したり、除去したりしなければならなくなるという問題が生じる。
【0005】
また、彫刻および造形作品は、重量および寸法が大きく、大部分が固定設置されているので、盗難され難いが、絵画美術品は、多くの場合、展示用の枠を利用して展示されているので、盗難され易く、展示場以外に設置される場合には、盗難防止のために監視を要するという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、外部に展示される絵画美術品において、紫外線遮断効果を向上可能な保護方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、絵画美術品に対する空気の接触を抑制して、絵画美術品の変質を防止するとともに、絵画の前背面を強化ガラスおよび接合フィルムが付着されたガラスを用いて保護して、絵画美術品の毀損を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、外部に露出される絵の変質を防止する保護方法が提供される。本保護方法は、所定の大きさを有する内部ガラスの前面に接合フィルムを付着する第1段階と、接合フィルムの前面に、前面がワニスにより保護コーティングされた絵の背面を付着する第2段階と、ワニスの前面に紫外線を遮断するための紫外線遮断フィルムを付着する第3段階と、紫外線遮断フィルムの前面に少なくとも厚さ5mm以上の強化ガラスを固定する第4段階と、強化ガラスの前面に安全フィルムを接着する第5段階と、内部ガラスの背面と安全フィルムの前面とを、固定フレームを用いて一つに圧着固定する第6段階と、を含む。
【0009】
また、上記絵は、紫外線遮断剤を混合した塗料および/または染料を用いて描かれてもよい。
【0010】
また、上記絵は、ビニール樹脂に描かれてもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、外部に露出される絵の変質を防止する保護装置が提供される。本保護装置は、所定の大きさを有し、一側に配される内部ガラスと、内部ガラスの前面に付着される接合フィルムと、接合フィルムの前面に固定される絵と、絵の前面を保護するワニスコーティングと、ワニスコーティングの前面に付着される紫外線遮断フィルムと、紫外線遮断フィルムの前面に固定される少なくとも厚さ5mm以上の強化ガラスと、強化ガラスの前面に接着される安全フィルムと、内部ガラスの背面と安全フィルムの前面とを圧着固定する固定フレームと、を備える。
【0012】
また、上記固定フレームは、左右に所定の長さを有し、前面に所定の幅を有する段掛け部が形成された上下側フレームと、上下側フレームの間に挿入され、前背面方向に移動される圧着枠と、を含み、圧着枠は、上下側フレームの上下の側面を貫通する固定部材が上下方向に貫通挿入されて固定されるように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外部に展示される絵画美術品において、紫外線遮断効果を向上することができる。
【0014】
また、本発明によれば、絵画美術品の寿命を延長でき、また、絵画美術品に対する空気の接触を抑制して、前背面側を強化ガラスおよび接合フィルムが付着されたガラスを用いて保護でき、絵画美術品の毀損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、添付した図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る外部に露出される絵の変質を防止する保護装置の一例として、固定フレーム70に対して順に積層される、内部ガラス10、接合フィルム20、ワニス31によりコーティングされた絵30、紫外線遮断フィルム40、強化ガラス50、および安全フィルム60の断面図を示した図である。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係る外部に露出される絵の変質を防止する保護装置の固定フレームの一例を示した側面図である。
【0018】
本発明は、外部に露出される絵の変質を防止する保護方法において、一定の大きさを有する内部ガラス10の前面に接合フィルム20を付着させ、絵の背面に配置される下板を用意して、展示される絵30の表面にワニス31を、例えば、噴霧または塗布などによりコーティングした後、絵30の背面を接合フィルム20の前面に付着固定させる。
【0019】
一方、絵30は、紫外線遮断剤を混合した塗料、染料などの画材を用いて彩色されたり、ビニール樹脂に彩色されたりする。
【0020】
また、絵30の前面にコーティングされたワニス31の前面に紫外線を遮断するための紫外線遮断フィルム40を付着させ、紫外線遮断フィルム40の前面に少なくとも厚さ5mm以上の強化ガラス50を固定し、強化ガラス50の前面に安全フィルム60を付着させた後、背面の内部ガラス10と前面の安全フィルム60とを、各々に固定フレーム70を用いて圧着固定する。
【0021】
一方、外部に露出される絵の変質を防止する保護装置は、一定の大きさを有し、一側に配される内部ガラス10と、内部ガラスの前面に付着される接合フィルム20と、接合フィルム20の前面に固定される絵30と、含む。また、絵30の前面には、例えば、噴霧または塗布などによりコーティングされるワニス31と、ワニス31でコーティングされた絵30の前面に付着される紫外線遮断フィルム40と、紫外線遮断フィルム40の前面に固定される少なくとも厚さ5mm以上の強化ガラス50とを含む。
【0022】
また、強化ガラス50の前面に接着される安全フィルム60と、内部ガラス10の背面と安全フィルム60の前面とを固定する固定フレーム70とを含む。
【0023】
固定フレーム70をより詳細に説明すると、左右に一定の長さを有し、前面に一定の幅を有する段掛け部71が形成された上下側フレーム70A、70Bと、上下側フレーム70A、70Bの間に挿入され、前背面方向に移動される圧着枠72と、を含み、圧着枠72は、上下側フレーム70A、70Bの上下の側面を貫通する固定部材73が圧着枠72の上下方向に貫通挿入される。
【0024】
符号「L」は、固定フレーム70の上下側フレーム70A、70Bの各々に設けられ、壁面などに固定される固定クリップである。
【0025】
上記のように構成される本実施形態の外部に露出される絵の変質を防止する保護装置は、図1に示したように、一側に順次に積層された形態を有する。以下では、かかる保護装置の施工順に従って詳細に説明する。
【0026】
第1に、内部ガラス10の強度を増加させ、万一の破損に際してもガラス破片の飛散を防止することで、絵30の損傷および/または人への被害などの2次的被害を防止するために、絵30の背面側に配される内部ガラス10の前面に接合フィルム20を付着する。また、内部ガラス10が絵30の背面側に配されることで、絵30が観覧者に露出されず、また内部ガラス10を厚く形成することで、ガラスの強度を増加させて破損を防止することができる。一方、ガラスが厚く形成されると、製作費用および重量が増加するので、内部ガラス10の厚さは、当業者が容易に実施可能なように任意に選択される。
【0027】
第2に、接合フィルム20の前面に絵30の背面を固定する時に、絵30の表面は、ワニス31を用いて保護コーティングされる。
【0028】
ワニス(Varnish)は、透明または半透明の膜を形成するための塗料であり、例えば、噴射器を利用して噴霧するタイプ、筆などを用いて塗布するタイプなど、その使用方法に応じて区分され、または、例えば、光沢を失わせるマットワニス(Matte Varnish)、光沢を加えるグロスワニス(Gloss Varnish)など、その性質に応じても区分される。
【0029】
また、ワニス31は、絵30の表面をコーティングすることで、例えば、防水、防アルコールなどの保護膜としての役割と、絵30の表面をカーバすることで、彩られた塗料、染料などが空気中に露出されないように保護する空気遮断膜としての役割とを果たす。
【0030】
一方、絵30は、例えば、一般の紙、繊維など、多様な材質に描かれてもよいが、空気遮断効果を増大させるために、ビニール樹脂に描かれたり、紫外線遮断剤を混合した塗料または染料などの画材により描かれてもよい。
【0031】
第3に、紫外線遮断剤を混合した塗料、染料などの画材を用いて描かれた絵30をワニス31によりコーティングするのみでも、変質をある程度防止できるが、効果をさらに増大させるために、ワニス31によりコーティングされた絵30の前面に紫外線遮断フィルム40を付着する。
【0032】
紫外線遮断フィルム40は、例えば、一般の市販製品でもよい。紫外線遮断フィルム40と紫外線遮断剤を混合した、例えば、塗料、染料など(ペイント、絵具などとも称する。)の画材とによって、70〜75%の紫外線遮断効果を得ることができる。
【0033】
第4に、絵30が外部に露出されて直接損傷されることを防止するために、紫外線遮断フィルム40の上に強化ガラス50が設けられる。強化ガラス50は、その厚さが5mm以下の場合には、強度が不十分となり破損され易いので、5mm以上であることが望ましい。
【0034】
第5に、強化ガラス50の前面に安全フィルム60が接着される。安全フィルム60は、例えば、一般の市販製品でもよい。安全フィルム60として、強化ガラス50の強度増加だけではなく、紫外線遮断効果を有する製品を選択すると、95〜98%の紫外線遮断効果を得ることができる。
【0035】
第6に、安全フィルム60を接着された前面側の強化ガラス50と、背面側の内部ガラス10との間が、固定フレーム70を用いて圧着固定される。そして、固定フレーム70が壁面などの設置場所にボルトなどの固定部材を用いて固定設置されるが、この時、固定フレーム70としては、絵30に対して空気が接触しないように圧着固定できるようなフレームが選択される。
【0036】
固定フレーム70の一例として、図2に示したように、上下側フレーム70A、70Bを用いて安全フィルム60の前面と内部ガラス10の背面とを固定し、内部ガラス10側に配される圧着枠72を圧着させることで、内部ガラス10の前面を前面側に密着させた後、上下側フレーム70A、70Bの間に貫通形成された固定部材73、即ち、貫通ボルトなどを利用して圧着枠72を固定する。この時、強化ガラス50および安全フィルム60は、上下側フレーム70A、70Bの前面に形成された段掛け部71に固定されることで、内部ガラス10を前方に圧着させても、それ以上に移動せずに圧着できる。
【0037】
これによって、前背面側に各々に配された強化ガラス50および内部ガラス10により圧着されると同時に、前面にコーティングされたワニス31によって空気流入が遮断されて、空気中に長時間露出されることによる絵30の変色を防止することができる。また、紫外線遮断フィルム40および安全フィルム60の紫外線遮断力およびワニス31のコーティングなどのような、絵30の前面を保護するための複合的な構造を有するので、絵30の変色/変質を防止することができる。
【0038】
なお、固定フレーム70は、本発明の一実施形態として、当業者が容易に実施可能なように、前背面側に各々に配される強化ガラス50および内部ガラス10を圧着して、空気流入を遮断するための多様な形態のフレームとしても実施できる。従って、本発明は、外部に露出される絵の変質を防止するために、塗料、染料などの画材で彩られた絵30の前面をワニス31でコーティングし、ワニス31の前面に紫外線遮断フィルム40を付着し、絵30の前背面側に各々に強化ガラス50および内部ガラス10を配し、内部ガラス10の前面に接合フィルム20を付着し、強化ガラス50の前面に安全フィルム60を接着し、これを一つに圧着固定するので、紫外線遮断効果、および絵30に対する空気の接触を抑制することによって、彩色の変質を防止することができるという技術的特徴を有する。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る外部に露出される絵の変質を防止する保護装置の一例を示した断面図である。
【図2】本実施形態に係る外部に露出される絵の変質を防止する保護装置の一例を示した側面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 内部ガラス
20 接合フィルム
30 絵
31 ワニス
40 紫外線遮断フィルム
50 強化ガラス
60 安全フィルム
70 固定フレーム
70A 上側フレーム
70B 下側フレーム
71 段掛け部
72 圧着枠
73 固定部材
L 固定クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に露出される絵の変質を防止する保護方法において、
一定の大きさを有する内部ガラスの前面に接合フィルムを付着する第1段階と、
前記接合フィルムの前面に、前面がワニスにより保護コーティングされた絵の背面を付着する第2段階と、
前記ワニスの前面に紫外線を遮断するための紫外線遮断フィルムを付着する第3段階と、
前記紫外線遮断フィルムの前面に少なくとも厚さ5mm以上の強化ガラスを固定する第4段階と、
前記強化ガラスの前面に安全フィルムを接着する第5段階と、
前記内部ガラスの背面と前記安全フィルムの前面とを、固定フレームを用いて一つに圧着固定する第6段階と、
を含むことを特徴とする、外部に露出される絵の変質を防止する保護方法。
【請求項2】
前記絵は、紫外線遮断剤を混合した画材を用いて描かれることを特徴とする、請求項1に記載の外部に露出される絵の変質を防止する保護方法。
【請求項3】
前記絵は、ビニール樹脂に描かれることを特徴とする、請求項1に記載の外部に露出される絵の変質を防止する保護方法。
【請求項4】
外部に露出される絵の変質を防止する保護装置において、
一定の大きさを有し、一側に配される内部ガラスと、
前記内部ガラスの前面に付着される接合フィルムと、
前記接合フィルムの前面に固定される絵と、
前記絵の前面を保護するワニスコーティングと、
前記ワニスコーティングの前面に付着される紫外線遮断フィルムと、
前記紫外線遮断フィルムの前面に固定される少なくとも厚さ5mm以上の強化ガラスと、
前記強化ガラスの前面に接着される安全フィルムと、
前記内部ガラスの背面と前記安全フィルムの前面とを圧着固定する固定フレームと、
を備えることを特徴とする、外部に露出される絵の変質を防止する保護装置。
【請求項5】
前記固定フレームは、
左右に一定の長さを有し、前面に一定の幅を有する段掛け部が形成された上下側フレームと、
前記上下側フレームの間に挿入され、前背面方向に移動される圧着枠と、を含み、
前記圧着枠は、前記上下側フレームの上下の側面を貫通する固定部材が上下方向に貫通挿入されて固定されるように構成されたことを特徴とする、請求項4に記載の外部に露出される絵の変質を防止する保護装置。

【図1】
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【図2】
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