説明

外部寄生生物撲滅の方法および製剤

本発明は、スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を用いる、動物における外部寄生生物の寄生を全身制御するための新規方法および製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を用いる、動物における外部寄生生物の寄生を全身制御するための新規方法および製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
外部寄生生物(例えば、ノミ、シラミ、クロバエ、マダニ類のダニ(ticks)およびダニ(mites))は、ヒト、また動物にとっても問題になっている。このような害虫は、体重増加を減少させ、皮革、羊毛、および、食肉の品質を下げ、また、時には死をもたらすことにより、家畜産業における生産力に深刻な影響を与えている。外部寄生生物はまた、ペットにおける疾患および不快感をもたらしている。外部寄生生物は、ヒトに対して病原性の細菌およびウィルスを運ぶことが知られている。外部寄生生物がもたらす疾患としては、例えば、マラリア、リンパ管フィラリア症、トラコーマ、トリパノソーマ症、および、河川盲目症が挙げられる。
【0003】
外部寄生生物を制御するための試みとしては、殺虫剤および農薬の使用が挙げられる。例えば、スピノシンは、天然由来の発酵産物であり、ペットにおける外部寄生生物撲滅薬として利用されている(Snyder、特許文献1)。
【0004】
スピノシンの誘導体は、農業用途において利用されている(DeAmicisら、特許文献2)。スピネトラムは、25〜90%、好ましくは50〜90%の(2R,3aR,5aR,5bS,9S,13S,14R,16aS,16bR)−2−(6−デオキシ−3−O−エチル−2,4−ジ−O−メチル−アルファ−L−マンノピラノシルオキシ)−13−[(2R,5S,6R)−5−(ジメチルアミノ)テトラヒドロ−6−メチルピラン−2−イルオキシ]−9−エチル−2,3,3a,4,5,5a,5b,6,9,10,11,12,13,14,16a,16b−ヘキサデカヒドロ−14−メチル−1H−as−インダセノ[3,2−d]オキサシクロドデシン−7,15−ジオン(「ジヒドロ−Et−J」として称される、以下式I)と、10〜75%、好ましくは10〜50%の(2R,3aR,5aS,5bS,9S,13S,14R,16aS,16bS)−2−(6−デオキシ−3−O−エチル−2,4−ジ−O−メチル−アルファ−L−マンノピラノシルオキシ)−13−[(2R,5S,6R)−5−(ジメチルアミノ)テトラヒドロ−6−メチルピラン−2−イルオキシ]−9−エチル−2,3,3a,5a,5b,6,9,10,11,12,13,14,16a,16b−テトラデカヒドロ−4,14−ジメチル−1H−as−インダセン[3,2−o]オキサシクロドデシン−7,15−ジオン(「Et−L」として称される、以下式II)との混合物の一般名称である(Podhorezら、特許文献3)。
【0005】
【化1】

【0006】
【化2】

【0007】
スピネトラムは、種々の作物において広範囲の害虫を長期的に制御するといわれている(非特許文献1)。スピネトラムは、ナシ状果の果物市場における殺虫剤としてニュージーランドで登録されていることが報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,664,237号
【特許文献2】米国特許第6,001,981号
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0108800A1号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Dow AgroSciences Spinetoram Technical Bulletin,2006年,11月
【非特許文献2】「Dow AgroSciences Receives First Global Registration for Spinetoram Insecticide」,Dow AgroSciences Newsroom,Corporate News,2007年,8月10日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
スピノシンならびに他の殺虫剤および農薬の使用が有益であったが、代替または改善された製剤および方法が必要とされている。望ましい製剤および方法は、代替療法を提供するだけでなく、現行の治療における制限を少なくともいくらかは克服するものである。このような制限としては、例えば、毒性、安全性、および、有効性(効果および持続性)、ならびに、抵抗性といった問題が挙げられる。また、殺虫剤および農薬の有効利用に影響を与えている要因は、投与の様式および反復を含む投与上の障害である。例えば、有効性を維持しながら投与の頻度を減らすことは望ましいものの、動物への投薬は、しばしば不便および/または困難である。本発明は、外部寄生生物の寄生に対処するための代替オプションを提供する、動物において使用するための外部寄生生物撲滅の方法および製剤を包含する。さらに、本発明は、現行の殺虫剤および農薬の使用における制限を、特に外部寄生生物の長期間有効で安全な全身制御を提供することにより、少なくともいくらかは克服する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、動物に対して有効量のスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を全身投与することにより、動物の外部寄生生物の寄生を制御する方法、ならびに、スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩および医薬的に許容される担体を用いて外部寄生生物の寄生を全身制御するための医薬製剤を提供する。本発明はまた、イヌまたはネコに対して有効量のスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を経口的または非経口的に全身投与することにより、イヌまたはネコのノミの寄生を制御する方法、ならびに、スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩と、錠剤、カプセル剤または液剤から選択される経口投与形態の医薬的に許容される担体とを、イヌまたは猫の体重1kgにつきスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を10〜60mgという用量で用いてイヌまたはネコにおける外部寄生生物の寄生を全身制御するための単回投与またはパルス投与の製剤を提供する。スピネトラムを用いる方法および製剤の別の態様は、外部寄生生物の寄生を長期にわたって全身制御することを提供する能力であるため、動物への投与の反復を(例えば、わずか1週間に1回もしくは2週間に1回、またはわずか1ヶ月に1回もしくは1ヶ月以上に1回まで)減らす。
【発明を実施するための形態】
【0012】
宿主動物は、哺乳動物または非哺乳動物(例えば、鳥類(シチメンチョウ、ニワトリ)もしくは魚類)であってもよい。宿主動物が動物の場合は、ヒトまたは非ヒトの哺乳動物であってもよい。非ヒト動物としては、家畜(domestic animal)、例えば、農業用家畜(livestock animal)およびペットが挙げられる。農業用家畜としては、畜牛、ラクダ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、および、ウマが挙げられる。ペットとしては、イヌ、ウサギ、ネコ、および、他のヒトと動物との絆の一部としてヒトと近い関わりを持ってそれを維持している他のペットが挙げられる。
【0013】
外部寄生生物としては、一般的に動物に寄生するまたは感染する昆虫およびダニ目の害虫が挙げられ、またそれらの卵期、幼生期、蛹の段階、幼虫の段階、および、成虫期を含む。このような害虫としては、ノミ、シラミ、蚊、ダニ(mites)、マダニ類のダニ(ticks)、および、血を吸うか噛むか邪魔なハエ種が挙げられる。特に対象となるのは、ノミ、より具体的には、ネコノミ(Ctenocephalides felis)である。
【0014】
「制御する」とは、宿主動物において、現状の寄生を改善するかまたは除去するか、あるいは、寄生を予防するかのいずれかを意味する。
【0015】
「有効量」は、外部寄生生物を制御するのに十分なスピネトラムまたはその塩の量を意味し、外部寄生生物の寄生集団における測定可能な減少をもたらす量である。この制御は、スピネトラムまたはその複合体もしくはその塩を供給した場合にそれらが害虫の系に侵入する結果として生じ得るか、あるいはスピネトラムまたはその複合体もしくはその塩の全身における存在に起因した防虫剤またはインビボでの作用を介した結果として生じ得る。本発明の方法および製剤におけるスピネトラムまたはその塩の範囲は、動物の体重において0.01〜1000mg/kg、より好ましくは0.1〜100mg/kg、および、特に好ましくは10〜60mg/kgの範囲である。
【0016】
本願明細書において用いられる「医薬的に許容される」は、例えば、塩および製剤成分(例えば、担体)を意味し、「獣医学的に許容される」を含むため、ヒトおよび動物の両方の適用を独立して含む。
【0017】
医薬的に許容される塩およびそれらを調製する一般的な手順は当該技術分野において公知である。例えば、P.Stahlら,HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE,(VCHA/Wiley−VCH,2002),S.M.Bergeら,「Pharmaceutical Salts」,Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.66,No.1,1977年1月を参照のこと。塩の例としては、これに限定されないが、有機酸および無機酸の両方(例えば、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、コール酸、パモン酸、粘液酸、グルタミン酸、ショウノウ酸、グルタル酸、グリコール酸、フタル酸、酒石酸、ギ酸、ラウリン酸、ステアリン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ソルビン酸、ピクリン酸、安息香酸、桂皮酸および類似の酸)との標準的な反応によって形成される塩が挙げられる。
【0018】
用語「担体」は、本願明細書において、製剤中の活性成分以外の任意成分を意味する。担体の選択は、例えば、特定の投与様式、溶解性および安定性への担体の影響、ならびに、投与形態の性質等の要因に大きく依存する。
【0019】
スピネトラムまたはその塩の投与は、任意の適切な経路により全身投与され得る。適切な経路の例としては、経口投与、局所(経皮)投与、および、非経口投与が挙げられる。経路の選択は、宿主動物の種および外部寄生性の寄生の性質に依存する。投与は、宿主動物内の全身分布をもたらす。全身の有効性(寄生生物による血液の摂取、または、全身への防虫剤もしくはインビボでの作用を介する、いずれかの有効性)は、皮膚表面での寄生生物との接触が曝露の様式である、非全身に適用される外部寄生生物撲滅薬と比較して、異なる曝露の様式を提供する。非全身治療(例えば、非経皮局所治療)と比較して、寄生生物の全身治療および殺傷の利点としては、(a)動物の環境(例えば、床、絨毯、家具)におけるヒトの適用者(applicator)および子供ならびに対象への曝露の減少、(b)動物が水(湖、川、風呂等)に曝されることによる損失または摩擦による損失の心配がほとんどないこと、(c)UV照射および劣化と無関係であること、(d)皮膚上の油等による酸化の問題がないこと、および、(e)全用量が投与されることの確実性(用量のいくらかが処置後直ぐに垂れるか、擦れて取れるか、および/または、分配チューブ内に残ることがあり得る、局所的非経皮適用と比較して)が挙げられる。
【0020】
スピネトラムおよびその塩は、全身投与のための医薬組成物として製剤化され得る。このような医薬的組成物およびその製造プロセスは当該技術分野において公知である。例えば、「REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY,(A. Gennaroら,eds.,19th ed.,Mack Publishing Co.,1995)」を参照のこと。スピネトラムまたはその塩は、製剤の重量に対して1%〜90%、より特には、5%〜60%の量で製剤中に存在し得る。
【0021】
用語「単回投与医薬製剤」は、長期間にわたって外部寄生生物の寄生を効果的に制御する製剤の単回投与を意味する。用語「長期間」は、少なくとも7日間、好ましくは少なくとも2週間、より好ましくは少なくとも30日間の期間を含む。用語「パルス投与製剤」は、目的とするスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩の全量を、分割した個別の用量で投与する(通常、1日間または2日間という短期間に投与される)のに適した製剤を意味する。パルス投与は、治療効果は同等または実質的に同等であるが、全投与量が短期間に1回以上投与される点において、単回投与とは対照的である。例えば、目的とする全投与量(通常、1日間または2日間の目的とする投与量を合計すると等しい量になる)は、2回、3回、または、4回以上に分けて投与されることでパルス投与され得る。あるいは、パルス投与は、その後徐々に放出される目的とする全投与量の単回投与により達成され得る。このパルス投与へのアプローチは、動態(例えば、2時間、3時間、4時間またはそれ以上の時間ごと)または消化官内の位置(例えば、胃内で50%、その後小腸内で50%)に基づいて、時間にわたって内部に放出される総投与量の特定部分を有することで生じ得る。
【0022】
経口投与は、カプセル剤、ボーラス、錠剤、粉末、トローチ、チューズ、マルチおよびナノ粒子、ゲル、固溶体、フィルム、スプレー、または、液体製剤によるものであってもよい。液体形態としては、懸濁液、溶液、シロップ、ドレンチおよびエリキシルが挙げられる。このような製剤は、ソフトカプセルまたはハードカプセル内の充填剤として利用されてもよく、典型的に、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または、適切な油、ならびに、1つ以上の乳化剤および/または懸濁化剤を含んでもよい。液体製剤はまた、例えば小袋から固体を再構成することにより調製されてもよい。経口ドレンチは、適切な媒体内で活性成分を溶解または懸濁することにより一般的に調製される。経口投与は、動物の食べ物と混合するかその上に乗せることにより達成されてもよい。
【0023】
スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩は、全身投与をもたらすために皮膚、粘膜(mucosa)、または、粘膜(mucous membrane)に投与されてもよい。このような投与の1つの様式は、経皮投与である。典型的な担体としては、アルコール、水、ミネラルオイル、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、および、プロピレングリコールが挙げられる。浸透促進剤も組み込まれてもよい(例えば、FinninおよびMorganによるJ.Pharm Sci,88(10),955−958(1999年、10月)を参照のこと)。
【0024】
さらに、スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩は、血流、筋肉内または内臓器官に非経口的または直接注入されることで投与されてもよい。非経口投与のための適切な経路としては、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、および、皮下が挙げられる。非経口投与のための適切な機器としては、針(マイクロ針を含む)注射器、無針注射器、および、点滴技術が挙げられる。注射可能な製剤は、他の物質(例えば、溶液を血液と等張させるのに十分な塩またはグルコース)を含み得る滅菌溶液の形態で調製され得る。受容可能な液体担体としては、植物油(例えば、ごま油)、グリセリド(例えば、トリアセチン)、エーテル(例えば、安息香酸ベンジル、ミリスチン酸イソプロピル、および、プロピレングリコールの脂肪酸誘導体)、ならびに、有機溶媒(例えば、ピロリジン−2−オンおよびグリセロールホルマール)が挙げられる。製剤は、スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を液体内に溶解または懸濁することにより調製される。これらの製剤は、自己保存、自己滅菌であってもよいか、または、非滅菌であってもよく、それに防腐剤が任意に追加され得る。非経口製剤は、典型的に、賦形剤(例えば、塩、炭水化物、および、緩衝剤)を含み得る水性溶液(好ましくは、3〜9のpH)であるが、いくつかの用途では、それらは、滅菌非水性溶液としてまたは適切なビヒクル(例えば、滅菌無ピロゲン水)とともに用いられる粉末形態または乾燥形態としてより適切に製剤化され得る。滅菌条件下の非経口製剤の調製は、例えば、当業者に周知の標準的な薬学的技術を用いて容易に達成され得る。非経口溶液の調製において用いられるスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩の溶解性は、適切な製剤技術を用いる(例えば、溶解促進剤と組み合わせる)ことで増加し得る。
【実施例】
【0025】
全身作用を測定するために、スピネトラムをインビトロおよびインビボのバイオアッセイを用いて評価した。多くのアッセイにおいて、スピノサド(spinosad)をコンパレータまたはヒストリカルポジティブコントロールとして使用したが、他の標準物質(フィプロニル、ペルメトリン、イミダクロプリド)も利用した。スピネトラムを技術上の活性として、および製剤内の両方において利用した。
【0026】
成体安定バエまたはイエバエのアッセイ(ASF、AhsF)
このアッセイは、White,W.H.,S.M.Bauer,X.Zhaoら,Comparison of in vitro and in vivo ectoparasiticide activity of an experimental benzimidazole−carbamate with permethrin and amitraz,J.Med.Entomol.42,207−211(2005)およびWhite,W.H.,C.M.McCoy,J.A.Meyerら,Knockdown and mortality comparisons among spinosad−,imidacloprid−, and methomyl−containing baits against susceptible Musca domestica(Diptera:Muscidae)under laboratory conditions,J.Econ.Entomol.100,155−163(2007)に記載されるように実質的に行う。
【0027】
検査物質を10mMにてDMSO中で製剤化する。同様の溶媒内で2倍希釈して、10個の試験レベルを用意する。物質を、ウシ血清(安定バエ)または5%グルコース溶液(イエバエ)のうちいずれかで希釈して、200〜0.39μMの望ましい曝露濃度を得る。約3mlの希釈された検査物質を、試験管内に入れ(試験レベルにつきn=3)、デンタルウィック(dental wick)を液体吸引に用いる。1つのデンタルウィックを100mmペトリ皿の中の低重量ボートに置く。約10匹の混合性別の成体バエを二酸化炭素を用いて麻酔し、各皿で計数する。皿を27℃および50〜70%の相対湿度にてインキュベートする。ハエを麻酔状態から戻し、化合物が染み込んだデンタルウィックを与える。24時間後、生存ハエ/死亡ハエを数える。非線形回帰を、投与量と死亡率の関係をモデリングするために用いて、同時期のコントロール(溶媒のみまたはペルメトリン)と比較した相対力価(LD50)データを得る。
【0028】
以下の表1は、スピネトラム(技術上)対ハエに対する標準物質に関するインビトロ特性評価の概要を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
スピネトラムは、スピノサドと比較して、成体イエバエに対して顕著に大きなインビトロ殺虫活性(5.5倍以上の効果)を示した。
【0031】
イヌに対する口からの経口投与
上記データを前提として、イヌにおける経口効果の検証を始めた。この検証を、(1)成体ネコノミ(Ctenocephalides felis)、成体期のアメリカイヌダニ(Dermacentor variabilis)、および成体期の犬舎のダニ(Rhipicephalus sanguineus)での実験的同時寄生に対する、30mg/kgの投与量点についての効果、(2)30mg/kgの血漿濃度で処置したイヌ、ならびに(3)成体期の犬舎のダニ(R.sanguineus)での実験的同時寄生に対する、50mg/kgまたは100mg/kgのいずれかの投与量点についての効果を評価するために行った。
【0032】
16匹のイヌを、1群ごとに8匹のイヌ(4匹の雄:4匹の雌)となるよう2つの群に選択した。一方の処置群にスピネトラムを与え、他方の群は未処置のままとした。イヌを、鎖で繋いだ状態でコンクリート床の犬舎に内部および外部の両方にて個別に収容した。検証の間、イヌに乾燥した犬用餌を、未乾燥の缶詰餌を与えた処置の日(0日目)以外は与えた。イヌに水を自由に飲めるようにした。
【0033】
0日目は、第1の群に30mg/kgの量で口からスピネトラム粉末を含有する1またはそれ以上のゼラチンカプセルを与え、一方、未処置の群にプラシーボを与えた。R.sanguineusに対する効果についての高い投与量(50mg/kgおよび100mg/kg)の評価のために、30mg/kgの群からのイヌに対して、低い投与量で投与して一旦ノミの効果データを収集した後、約2.5ヶ月間は高いレベルで再度投与した。
【0034】
試験日(−1、5、12、19、28、35、および42日目)に、各イヌを、各種の約100匹の成体ノミおよび50匹のダニに実験的に寄生させ、49日目および56日目にさらなるノミを寄生させた。ダニおよびノミの両方に対するノックダウン評価を、投与の24時間後に行った。それに続く全計数を、寄生の48時間後に行った。高い投与量については、再投与の1日前にイヌを約50匹のR.sanguineusダニに寄生させ、再投与の5日後にもう一度寄生させて、その後約24時間後に櫛で梳いて計数した。ノックダウン活性(1日目)を、投与の24時間後に櫛で梳いて計数して測定した。処置後の残余ダニの全計数について、寄生の48時間後に櫛で梳いて計数した。14、21、28および35日目に血液サンプルを採取して、血漿中のスピネトラムの濃度を測定した。
【0035】
表2は、30mg/kgにてイヌに経口投与した後の、スピネトラムのノミについての治療効果および残存効果(ノミ減少の幾何平均パーセント)を示す。
【0036】
【表2】

【0037】
イヌにおける30mg/kgの経口投与量の点において、スピネトラムは、成体ネコノミの寄生に対するスピノサドのヒストリカルデータと比較して同等のノックダウンおよび優れた残存効果を示した。残存制御(≧97%)が8週間を超えて続いていることに注目されたい。スピネトラムは、検査された投与量にてダニ種のうちいずれかに対する統計的に有意な活性を示していなかった。一般的に、両方のダニ種に対する処置の効果を解釈することは、未処置のコントロール動物における寄生生物保持数が非常に低いため、困難であった。
【0038】
イヌ/ネコノミ(Ctenocephalides felis)に対する口からのパルス投与対単回投与
以下の(1)〜(4)に示すノミの寄生に対する効果を評価するために、イヌの別の検証を行った。(1)60mg/kgの単回投与量点の経口投与、(2)1日の間、2時間ごとの20mg/kgのTIDのパルス投与スキームの経口投与、(3)1日の間、4時間ごとの20mg/kgのTIDのパルス投与スキームの経口投与、および(4)スピネトラムの処置後の血漿濃度。
【0039】
各8匹のイヌ(4匹の雄、4匹の雌)という4つの処置群に、以下に示すようにスピネトラムを投与した。
処置群1:60mg/kg、単回投与
処置群2:60mg/kg、(2時間ごとに20mg/kg、3回)
処置群3:60mg/kg、(4時間ごとに20mg/kg、3回)
処置群4:0mg/kg、(ネガティブコントロール)
【0040】
イヌを、鎖で繋いだ状態でコンクリート床の犬舎に内部および外部の両方にて個別に収容した。検証の間、イヌに乾燥した犬用餌を、未乾燥の缶詰餌を与えた処置の日(0日目)およびその2日前以外は与えた。イヌに水を自由に飲めるようにした。
【0041】
処置されたイヌに、技術上の活性のスピネトラム粉末を含有する1またはそれ以上のゼラチンカプセルを1ヶ月与え、処置群4にプラシーボを与えた。試験日(−1、5、12、19、28、35、42、49、および56日目)に、各イヌを、約100匹のノミに実験的に寄生させた。ノックダウン評価を投与の24時間後に行い、次いで残存効果を各々のその後の寄生の48時間後に評価した。60mg/kg投与の約24時間後または最初のパルス投与後の、1日目の櫛で梳く計数は、初期効果/ノックダウン効果を測定するのに役立った。血液サンプルを採取して血漿中のスピネトラムの濃度を測定した。
【0042】
表3は、未処置コントロール群と比較した、生存成体ノミ計数の減少の幾何平均パーセントを示す。結果は、60mg/kgの単回投与または20mg/kgの複数回投与であろうとなかろうと、効果の結果において実質的に差異がないことを示す。
【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の外部寄生生物の寄生を制御する方法であって、該動物に対して有効量のスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を全身投与する工程を含む方法。
【請求項2】
該動物が家畜である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該家畜がペットである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該ペットがイヌまたはネコである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該投与が局所経皮投与、経口投与、またが非経口投与によるものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該投与が2週間に1回より多くなく単回投与またはパルス投与で行われる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該投与が1カ月に1回より多くなく行われる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該外部寄生生物が昆虫である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該昆虫がノミである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該有効量が該動物の体重の0.01mg/kg〜1000mg/kgである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該有効量が該動物の体重の10mg/kg〜60mg/kgである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
イヌまたはネコのノミの寄生を制御する方法であって、該イヌまたはネコに対して有効量のスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩を経口的に全身投与する工程を含む方法。
【請求項13】
該ノミがネコノミ(Ctenocephalides felis)である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該投与が2週間に1回より多くなく単回投与またはパルス投与で行われる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
該投与が1カ月に1回より多くなく行われる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該有効量が該動物の体重の10mg/kg〜60mg/kgである請求項12に記載の方法。
【請求項17】
外部寄生生物の寄生を全身制御する医薬製剤であって、スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される担体を含む医薬製剤。
【請求項18】
該スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩が該医薬製剤の重量に対して1〜90%の量で該医薬製剤中に存在する請求項17に記載の医薬製剤。
【請求項19】
該スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩が該医薬製剤の重量に対して5〜60%の量で該医薬製剤中に存在する請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
経口投与、局所投与、または、非経口全身投与に適している請求項17に記載の医薬製剤。
【請求項21】
経口投与に適しており、錠剤またはカプセル剤である請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項22】
該医薬製剤が2週間に1回より多くなく単回投与またはパルス投与で投与される請求項17に記載の医薬製剤。
【請求項23】
該医薬製剤が1カ月に1回より多くなく投与される請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項24】
イヌまたはネコにおける外部寄生生物の寄生を全身制御するための単回投与またはパルス投与の医薬製剤であって、錠剤、カプセル剤、または液剤から選択される経口投与形態の、体重1kg当たり10〜60mgの用量のスピネトラムまたはその医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される担体を含む医薬製剤。
【請求項25】
該投与形態が錠剤またはカプセル剤であり、該スピネトラムまたはその医薬的に許容される塩の量が該錠剤またはカプセル剤の重量に対して5〜60%である請求項24に記載の医薬製剤。
【請求項26】
該医薬製剤が2週間に1回より多くなく投与される請求項24に記載の医薬製剤。
【請求項27】
該医薬製剤が1カ月に1回より多くなく投与される請求項26に記載の医薬製剤。
【請求項28】
該医薬製剤が噛むことができる治療形態である請求項24に記載の医薬製剤。

【公表番号】特表2012−526122(P2012−526122A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509884(P2012−509884)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/033458
【国際公開番号】WO2010/129491
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】