説明

外部接続が可能な電子回路ユニット

【課題】簡素な構造で回路基板と外部接続用のコネクタとの結合部分への水分の浸入を防ぐ防水機能を有する電子回路ユニットを提供する。
【解決手段】電子回路ユニットは、複数の接続用導体14が設けられた縁部12を有する回路基板10と、これを収容するケースと、複数の電線Wの端末にそれぞれ装着される端子30及びこれらを保持するハウジング40を有するコネクタと、各電線に設けられる電線側シール部材50と、コネクタ側シール部材60と、を備える。コネクタ側シール部材は、ケース内を密閉するようにハウジングとケースとの間に介在する。電線側シール部材はケース内を密閉するように電線と端子挿通部45の内周面との間に介在する。ケースはハウジングを係止するハウジング係止部28を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載され、複数本の電線を介して外部回路に接続されることが可能な電子回路ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される電子回路ユニットとして、電子回路が組込まれた回路基板と、この回路基板上の接続用導体に外部接続用の電線を接続するための基板用コネクタとを備えたものが多く知られている。さらに、その基板用コネクタとして、当該回路基板の縁部に装着される、いわゆるカードエッジ型のコネクタが知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1は、図7に示すように、複数の電線の端末にそれぞれ設けられる端子92と、これらの端子92を保持する端子側ハウジング94と、回路基板96の縁部に固定される基板側ハウジング98とを備えたコネクタを開示する。前記各端子92は、前記回路基板96の厚み方向に弾性変位可能な弾性接触片93を有する。この弾性接触片93は、前記回路基板96の表面と接触する際に当該表面から反力を受けて弾性変位し、その弾性復帰力によって当該表面上の接続用導体に圧接する。前記端子側ハウジング94は、前記各端子92の弾性接触片93が前記回路基板96をその表裏両側から挟み込み、かつ、回路基板96の幅方向に沿って複数個の端子92が並ぶような配列で、これらの端子92を保持する。前記基板側ハウジング98は、前記端子側ハウジング94を受入可能な形状を有し、前記各端子92の弾性接触片93が前記回路基板96の接続用導体に接触する位置で前記端子側ハウジング94を係止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−112682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような電子回路ユニットは、その使用場所や使用環境によっては防水機能を有することが求められる。具体的に、前記コネクタ90を用いる場合には、その端子92と回路基板96の接続用導体との接触部分への水分の浸入を防ぐことが求められる。このような水分の浸入を防ぐには、前記接触部分を含む回路基板96全体を専用のケース内に密閉することが考えられるが、前記回路基板96をこれにつながる前記コネクタ90も含めて前記ケース内に防水状態で密封することは容易でない。さらに、コネクタ90そのものの構造も、複数の端子92を保持する端子側ハウジング94及びこの端子側ハウジング94を回路基板96に係止する基板側ハウジング98を有する複雑な構造を有しており、当該コネクタ90に防水機能をもたせることも構造の複雑化及び大幅なコストアップを伴うことになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決すべく、回路基板と、これに結合される外部接続用のコネクタとを含む電子回路ユニットであって、簡素な構造で前記回路基板と前記外部接続用のコネクタとの結合部分への水分の浸入を防ぐ防水機能を有するものを提供することを目的とする。
【0007】
本発明が提供する電子回路ユニットは、縁部を有してその表面に複数の接続用導体が設けられる回路基板と、この回路基板を収容するためのケースであって、特定方向に開いた開口を有し、この開口から当該ケース内に前記回路基板が前記縁部と反対側の縁部を先頭にして当該回路基板の板厚方向と直交する基板挿入方向に挿入されるのを許容するものと、このケース内に収容される前記回路基板の各接続用導体に電線を接続するように前記ケースに装着されるコネクタと、前記ケースと前記コネクタとの間に介設されるコネクタ側シール部材と、前記各電線についてそれぞれ設けられる複数の電線側シール部材と、を備える。前記コネクタは、前記各電線の端末に接続され、かつ、前記回路基板の前記接続用導体にそれぞれ接触することにより当該導体と導通可能な複数の端子と、前記各接続用導体に前記各端子が同時に接触可能となる配列でこれらの端子を保持するハウジングとを備え、このハウジングは、前記各端子が外側から挿通可能な複数の端子挿通孔をそれぞれ囲む内周面を有する端子挿通部と、前記端子挿通部を通じて挿通された端子を受け入れて保持するとともに、ケースの開口から当該ケース内に挿入可能な形状を有し、その挿入状態で前記各端子を前記回路基板の各接触用導体にそれぞれ接触させることが可能となるように前記各端子を保持する端子保持部と、を有する。前記コネクタ側シール部材は、前記ケース内を密閉するように前記ハウジングと前記ケースとの間に介在する。前記各電線側シール部材は、前記ケース内を密閉するように前記各電線と前記各端子挿通部の内周面との間に介在する。前記ケースは、前記ハウジングをこのハウジングの端子保持部に保持された各端子が当該ケース内の回路基板の各接続用導体に接触しかつ前記コネクタ側シール部材が前記ケース内を密閉するように前記ハウジングと前記ケースとの間に介在する位置に係止するハウジング係止部を有する。
【0008】
この電子回路ユニットでは、回路基板がケースに設けられた開口を通じて当該ケース内に挿入され、かつ、その開口の内側にコネクタのハウジングの端子保持部が挿入されて当該ハウジングを前記ケースのハウジング係止部が係止することにより、前記ケース内に前記回路基板と前記コネクタの各端子との接触部位が格納されかつ当該ケースの開口が当該ハウジングによって塞がれるから、前記ハウジングと前記ケースとの間に介在するコネクタ側シール部材と、前記各電線について設けられる複数の電線側シール部材とを具備するだけの簡素な構造で、前記接触部位を前記ケース内に密封してその防水を行うことが可能である。
【0009】
前記コネクタ側シール部材は、例えば、弾性変形可能な材料からなり、弾性変形しながら前記ハウジングの端子保持部の外周面及び前記ケースの内周面にそれぞれ全周にわたって密着することが可能な形状を有することにより、簡素な形状で前記ケース内を密閉することが可能である。
【0010】
この場合、前記コネクタ側シール部材は前記ハウジングの端子保持部の外周面上に固定されていることが、好ましい。この場合には、当該端子保持部と当該コネクタ側シール部材とを一体に前記ケースの開口の内側に挿入するだけの簡単な操作で、ケース内の密閉が行われることが可能である。
【0011】
一方、前記各電線側シール部材は、弾性変形可能な材料からなり、前記各電線にその外周面と密着するように装着され、かつ、弾性変形しながら前記端子挿通部の内周面に全周にわたって密着することが可能な形状を有するものが、好適である。
【0012】
前記コネクタのハウジングは、前記端子保持部が前記ケースの開口の内側に挿入された状態で当該ケースの当該開口側の端部を外側から覆う形状のカバー部を有するのが、好ましい。このカバー部は、前記端子保持部と前記ケースとの間のシール部位を外側から覆うことにより有効に保護することができる。
【0013】
さらに、このカバー部に前記ケースのハウジング係止部に係止される被係止部が設けられることにより、前記ハウジングは、前記シール部位に影響を与えることなく前記ケースの外側で当該ケースに係止されることができる。
【0014】
本発明に係るコネクタは、前記回路基板の縁部を両側から挟むようにして当該回路基板に接続される、いわゆるカードエッジ型コネクタとして構成されることが可能である。具体的には、前記接続用導体が前記回路基板の縁部の両面にそれぞれ配列され、前記ハウジングが、前記回路基板の一方の面に配列された接続用導体にそれぞれ接続されるべき端子が前記回路基板の縁部に沿う方向に並んで第1の端子列を形成し、前記回路基板の他方の面に配列された接続用導体にそれぞれ接続されるべき端子が前記第1の端子列と平行な方向に並んで第2の端子列を形成するように、これらの端子を保持することにより、さらに多くの端子及び電線と回路基板との接続が可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、回路基板を収容して保持するケースを備えてこのケース内をコネクタのハウジングを利用した簡素な構造で密閉することにより、当該回路基板と前記コネクタの端子との接続部位を効率よく防水することが可能な電子回路ユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子回路ユニットのケースにコネクタが装着される前の状態を示す一部断面分解斜視図である。
【図2】前記ケースに前記コネクタが装着された状態を示す一部断面斜視図である。
【図3】図2の状態を示す断面正面図である。
【図4】図2の状態を示す斜視図である。
【図5】前記コネクタ及びそのハウジングに固定されるコネクタ側シール部材を示す断面正面図である。
【図6】前記コネクタのハウジング及びこれに固定されるコネクタ側シール部材を示す一部断面斜視図である。
【図7】従来のカードエッジ型コネクタの例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図1〜図6を参照しながら説明する。
【0018】
この実施の形態にかかる電子回路ユニットは、回路基板10と、これを収容するケース20と、回路基板10に複数の電線Wを接続するためのコネクタと、複数の電線側シール部材である複数の防水栓50と、コネクタ側シール部材であるシールリング60と、を備え、前記コネクタは複数の端子30とこれらを保持するハウジング40とを有する。
【0019】
前記回路基板10は、例えばプリント回路基板からなり、その表裏両面に回路構成用の導体パターンが配設されるとともに、回路を構成する電子部品が実装される。この実施の形態にかかる回路基板10は矩形状をなす。その一つの縁部(図1〜図3では右側の縁部)12の表側面上及び裏側面上にそれぞれ複数の薄板状の接続用導体14が設けられる。これらの接続用導体14は前記縁部12に沿って配列されている。
【0020】
前記ケース20は、略直方体状をなし、特定方向(図1〜図3では右方向)に開いた開口21を有し、この開口21から当該ケース20内に前記回路基板10が前記縁部12と反対側の縁部を先頭にして当該回路基板10の板厚方向と直交する基板挿入方向(この実施の形態では図1〜図3の左方向)に挿入されるのを許容する形状をもつ。具体的には、天壁22、底壁24、左右一対の側壁23(図3に奥側の側壁23のみ示される。)、及び端壁26を有する。前記天壁22及び前記底壁24は互いに平行な姿勢で上下に配置される。両側壁23は天壁22と底壁24との間に配設され、これら天壁22及び底壁24とともに四角筒体を形成する。端壁26は当該四角筒体のうち前記開口21と反対側の開口(図1〜図3では左側の開口)をふさぐように前記各壁22〜24と一体につながる。前記天壁22及び前記底壁24における前記開口21の近傍の部位には、後述のように前記コネクタのハウジング40を係止するためのハウジング係止部である複数の係止突起28が外向きに突出するように形成されている。
【0021】
前記コネクタの各端子30は、対応する電線Wの端末に装着され、前記回路基板10の各接続用導体14と接触することにより当該回路基板10と前記電線Wとを電気的に接続する。前記コネクタのハウジング40は合成樹脂等の絶縁材料により成形され、前記端子30をまとめて保持しながら前記ケース20に装着される。
【0022】
前記電線Wは、図略の導体と、これを覆う絶縁被覆からなる。当該電線Wの端末では前記絶縁被覆が部分的に除去されて前記導体が露出している。このように導体が露出する部分のすぐ後方の位置に前記防水栓50が装着されている。この防水栓50は、ゴム等の弾性変形可能な材料からなり、前記電線Wを外側から囲む筒状をなす。
【0023】
前記各端子30は、導体である金属板により形成され、前側に位置する基板接触部31と後側に位置する電線接続部32とを一体に有する。電線接続部32は、左右の導体バレル33とその後方に位置する左右のインシュレーションバレル34とを有する。両導体バレル33は、電線Wの端末の露出した導体を抱き込むようにして当該導体に圧着され、これにより当該導体と導通する。両インシュレーションバレル34は、前記導体の露出部分よりも後ろ側に位置する絶縁被覆の部分をその外側に位置する前記防水栓50の前端部分とともに抱き込むようにして電線Wに圧着される。これにより、当該防水栓50は当該電線Wの外周面に密着するように当該電線Wに装着される。
【0024】
前記基板接触部31は、図3及び図5に示すような本体部37、弾性接触片35、及び弾発力補強部材36からなる。前記本体部37は、前記電線接続部32と一体に形成され、角筒状をなす。前記弾性接触片35は、端子30の軸方向に延び、その前端部が前記本体部37と一体につながってこの前端部を支点に後端部が上下方向に撓み変位可能となっている。この後端部は弾性変位しながら前記回路基板10の接続用導体14に接触するための接触端部35a(図5)を構成する。弾性接触片35は、図5に示すように変形していない状態では本体部37の外側に突出する形状を有するが、図3に示すようにこの接触端部35aが前記回路基板10の縁部12と接触する際には当該縁部12からの反力を受けて当該接触端部35aが前記本体部37内に没入する向きに撓み変位し、その弾発力で当該接触端部35aが前記縁部12上の接続用導体14に圧接する。前記弾発力補強部材36は、前記接触端部35aが撓み変位するのに伴って当該弾発力補強部材36自身が弾性変形するように前記本体部37内に設けられ、その弾性変形による弾発力で前記接触端部35aの弾性復帰力を増強する。
【0025】
なお、本発明において端子の具体的構造は前記端子30の構造に限定されない。本発明に係る端子は、回路基板の接続用導体に接触してこれと電気的に導通可能な部分と、電線の端末に装着されることが可能な部分とを有するものであればよい。
【0026】
前記ハウジング40は、前記各端子30における弾性接触片35の接触端部35aがそれぞれ前記回路基板10の縁部12の両面の接続用導体14に同時に接触するような配列で当該端子30をまとめて保持する。具体的に、このハウジング40は、端子保持部と、その後方に位置する複数の端子挿通部45と、カバー部46と、を一体に有する。
【0027】
前記端子保持部は、前記各端子30の主として基板接触部31を保持しながら前記ケース20の開口21の内側に挿入可能な形状を有し、その挿入状態で前記各基板接触部31と前記回路基板10の各接続用導体14とが相互接触可能となるように前記各端子30を保持するものである。
【0028】
この実施の形態に係る端子保持部は、前側内壁43と、この前側内壁43から後方に間隔をおいて位置する後側内壁44と、これらの内壁43,44を囲む周壁42とを有し、当該内壁43,44と当該周壁42との間にそれぞれ前記各端子30の基板接触部31を収容して保持する複数の端子収容室が形成されている。前記前側内壁43は、その前側から前記回路基板10の縁部12が挿入可能な基板挿入空間41を囲み、前記後側内壁44は当該基板挿入空間41の後方に位置する。
【0029】
両内壁43,44同士の間には接触用空間が確保され、この接触用空間内に前記各基板接触部31の弾性接触片35の接触端部35aが突出するように各端子30がハウジング40に保持される。すなわち、前記両内壁43,44と前記周壁42の上側部分との間の端子収容室に収容される端子30(上側列の端子30)は、その接触端部35aが下を向くようにハウジング40に保持され、前記両内壁43,44と前記周壁42の下側部分との間の端子収容室に収容される端子30(下側列の端子30)は、その接触端部35aが上を向くようにハウジング40に保持される。そして、前記基板挿入空間41内に所定の深さで前記回路基板10の縁部12が挿入された状態で前記各端子30の接触端部35aが前記回路基板10の各接続用導体14に同時に接触するように、ハウジング40における各端子30の保持位置が設定されている。すなわち、当該ハウジング40は、前記回路基板10の一方の面(図1〜図3,図5では上面)に配列された接続用導体14にそれぞれ接続されるべき端子30が前記回路基板10の縁部12に沿う方向に並んで第1の端子列(図1〜図3,図5では上側端子列)を形成し、前記回路基板10の他方の面(図1〜図3,図5では下面)に配列された接続用導体14にそれぞれ接続されるべき端子が前記第1の端子列と平行な方向に並んで第2の端子列(図1〜図3,図5では下側端子列)を形成するように、これらの端子30を保持する。
【0030】
前記周壁42の前端からは前方に複数のランス(端子係止部)47が延びる。各ランス47は、前記各端子30の基板接触部31を係止するためのもので、その後端を支点として前端が端子30から退避する向きに撓み変位し、当該端子30の挿入完了時点で弾性復帰することにより、当該端子30の適所を係止する。
【0031】
前記各端子挿通部45は、これに対応する端子30の基板接触部31が後方から挿通可能な端子挿通孔49を囲む内周面を有し、前記端子保持部からこれと一体に後方に延びている。この実施の形態に係る各端子挿通部45は円筒状をなし、前記端子挿通孔49を囲む円筒状の内周面を有する。これらの端子挿通部45は、当該端子挿通部45が囲む端子挿通孔49に後方から挿通された端子30の基板接触部31がそのまま前記端子保持部の端子収容室内に収容されるような位置にそれぞれ形成されている。
【0032】
ここで、前記各防水栓50は、ケース20内を密閉すべく、前記各基板接触部31が前記端子収容室内に挿入された状態で前記各端子挿通部45の内周面に対して全周にわたり密着する形状を有する。具体的に、各防水栓50の外周面には径方向の外向きに突出して全周にわたり延びる複数本の突条52が形成され、これらの突条52が弾性変形しながら前記端子挿通部45の内周面に全周にわたり接触することにより、当該端子挿通部45を通じてのハウジング40内への水分の浸入を阻止する。
【0033】
前記カバー部46は、前記端子保持部及び前記シールリング60を外側から覆う形状を有する。具体的には、前記周壁42の後端から外向きに突出する部分と、この部分からさらに前方に延びて前記周壁42さらにはこの周壁42が挿入される前記ケース20の端部(開口21を囲む部分)を外側から覆う部分と、を一体に有する。このカバー部46には、前記ケース20の各係止突起28が内側から嵌り込み可能な貫通穴48が形成されている。これらの貫通穴48は前記各係止突起28に係止されることにより前記ケース20への前記ハウジング40の装着状態を保持する、具体的には、前記ハウジング40の端子保持部に保持される各端子30が前記ケース20内の回路基板10の各接続用導体14に接触可能な位置に当該ハウジング40を保持する被係止部を形成する。
【0034】
前記シールリング60は、ゴム等の弾性変形可能な材料からなり、前記ケース20内を密閉するように当該ケース20と前記ハウジング40とに密着するもので、この実施の形態では、前記周壁42を囲む無端帯状をなし、当該周壁42の外周面上に当該外周面と全周にわたって密着する状態で固定されている。このシールリング60は、前記ハウジング40の端子保持部が前記ケース20の内側にその開口21を通じて挿入された状態で、弾性変形しながら当該ケース20の内周面と全周にわたり密着する外周面を有し、この密着により当該ケース20と当該周壁42との隙間からの当該ケース20内への水分の浸入を阻止する。この実施の形態では、前記シールリング60の外周面に、その弾性変形を容易にするための周方向の複数本の突条が形成されている。
【0035】
次に、この電子回路ユニットの組立要領の一例を説明する。
【0036】
1)ハウジング40への端子30の挿入
ハウジング40の各端子挿通孔49内に各端子30の基板接触部31が後方から挿通される。この基板接触部31は、端子保持部の各端子収容室内に至り、ランス47により係止される。このようにして各端子30が上下2段にわたって配列され、かつ、各端子30の接触端部35aが内側を向く姿勢で各端子30が共通のハウジング40内に保持される。このとき、各端子30の後方で電線Wに装着されている防水栓50が前記端子挿通孔49を囲む端子挿通部45の内周面に全周にわたって密着することにより、当該電線Wと端子挿通部45との間でのシールが行われる。すなわち、電線W側での防水が行われる。
【0037】
2)ケース20内への回路基板10の挿入及び保持
ケース20内にその開口21から回路基板10が挿入され、所定の位置、具体的にはこの回路基板10の縁部12が前記コネクタのハウジング40の基板挿入空間41内に挿入可能となる位置に、保持される。本発明では、このケース20内での回路基板10の保持のための具体的な手段を問わない。例えば、ケース20以外の専用の部材を用いて当該ケース20と前記回路基板10との連結が行われてもよいし、前記回路基板10の左右両縁部がそれぞれ嵌入可能な保持用溝がケース20の両側壁23の内側面に形成されて当該保持用溝に前記左右両縁部が嵌入されることにより前記回路基板10がケース20に保持されてもよい。基板挿入方向については、ケース20の端壁26とコネクタのハウジング40の後側内壁44との間に回路基板10が隙間なくあるいは若干の隙間を含んで拘束されてもよいし、前記保持用溝の形状によって回路基板10の位置決めがなされてもよい。あるいは、回路基板10と各端子30との嵌合力(上下列の端子30が回路基板10を挟持する力)のみによって回路基板10がコネクタに保持されてもよいし、さらに、この保持を補強するための構造がコネクタのハウジング40に付加されてもよい。後者の場合、すなわちコネクタが単独で回路基板10を保持する場合は、当該回路基板10と当該コネクタとの結合が行われてから当該回路基板10が前記ケース20内に挿入されることになる。
【0038】
3)ケース20へのコネクタの装着
前記ケース20の開口21の側の端部にコネクタが装着される。具体的には、当該コネクタのハウジング40の端子保持部が開口21から前記ケース20の内側に挿入され、当該ハウジング40のカバー部46の貫通穴48にケース20の係止突起28が嵌り込むことにより、当該ケース20に当該ハウジング40が係止される。
【0039】
この係止の際、あるいは予め回路基板10とコネクタとの結合が行われる際、前記ハウジング40の基板挿入空間41内に前記回路基板10の縁部12が挿入されることにより、当該縁部12に配列された各接続用導体14と前記ハウジング40に保持された各端子の基板接触部31、より詳しくは弾性接触片35の接触端部35a、とが接触する。これにより、各端子30を介して回路基板10と各電線Wとが電気的に接続される。また、前記のようにハウジング40が係止される位置では、コネクタ側シール部材であるシールリング60の外周面がケース20の開口21側の端部の内周面に全周にわたって接触することにより、当該ケース20の内周面とハウジング40の周壁42の外周面との間からのケース20内への水分の浸入が阻止される。すなわち、コネクタ側での防水が行われる。
【0040】
このように、図1〜図6に示す電子回路ユニットは、回路基板10を収容するケース20を備えるのに加え、各端子30を保持するハウジング40が前記ケース20の開口21を塞ぐ蓋として利用されるから、防水用の部材として、各電線Wに装着される複数の電線側シール部材(この実施の形態では複数の防水栓50)と、ハウジング40の端子保持部とケース20との間に介設されるコネクタ側シール部材(この実施の形態ではシールリング60)とを備えるだけの簡素な構造で、回路基板10とコネクタとの接続部位(具体的には各接続用導体14と各端子30の基板接触部31との接触部位)を確実に防水することができる。
【0041】
なお、本発明に係るコネクタ側シール部材(前記実施の形態ではシールリング60)は、防水機能を有するようにケースとハウジングとの間に介在していればよく、必ずしもハウジングに固定されなくてもよい。しかし、このコネクタ側シール部材が予めハウジングの端子保持部に固定されていることは、当該端子保持部と当該コネクタ側シール部材とを一体に前記ケースの開口の内側に挿入するだけの簡単な操作で、ケース内の密閉を行うことを可能にする。また、当該コネクタ側シール部材と当該ハウジングとが一体にモールド成形されることも可能である。
【0042】
あるいは、コネクタ側シール部材は、例えばグリースのように低いが流動性を有する材料からなり、ケースとハウジングとの間の隙間を埋めるように両者の間に介設されるものでもよい。この場合もケース内が密閉されることが可能である。各電線側シール部材も、同様の低い流動性を有する材料からなり、各電線と端子挿通孔の内周面との隙間を埋めるように両者の間に介設されるものでもよい。
【0043】
前記ハウジング40のカバー部46は省略されることが可能である。しかし、このカバー部46は、前記端子保持部と前記ケース20との間のシール部位を外側から覆うことで有効に保護することができる。さらに、このカバー部46に前記貫通穴48などの被係止部、すなわちケース20のハウジング係止部(前記実施形態では係止突起28)に係止される部分が設けられることにより、このシール部位に影響を与えることなく前記ケース20の外側で当該ケース20にハウジング40が係止されることができる。
【符号の説明】
【0044】
W 電線
10 回路基板
12 縁部
14 接続用導体
20 ケース
21 開口
22 天壁
23 側壁
24 底壁
26 端壁
28 係止突起(ハウジング係止部)
30 端子
31 基板接触部
32 電線接続部
35 弾性接触片
35a 接触端部
40 ハウジング
41 基板挿入空間
42 周壁(端子保持部を構成)
43 前側内壁(端子保持部を構成)
44 後側内壁(端子保持部を構成)
45 端子挿通部
46 カバー部
47 ランス
48 貫通穴(被係止部)
49 端子挿通孔
50 防水栓(電線側シール部材)
60 シールリング(コネクタ側シール部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部との接続が可能な電子回路ユニットであって、
縁部を有してその表面に複数の接続用導体が設けられる回路基板と、
この回路基板を収容するためのケースであって、特定方向に開いた開口を有し、この開口から当該ケース内に前記回路基板が前記縁部と反対側の縁部を先頭にして当該回路基板の板厚方向と直交する基板挿入方向に挿入されるのを許容するものと、
このケース内に収容される前記回路基板の各接続用導体に電線を接続するように前記ケースに装着されるコネクタと、
前記ケースと前記コネクタとの間に介設されるコネクタ側シール部材と、
前記各電線についてそれぞれ設けられる複数の電線側シール部材と、を備え、
前記コネクタは、前記各電線の端末に接続され、かつ、前記回路基板の前記接続用導体にそれぞれ接触することにより当該導体と導通可能な複数の端子と、前記各接続用導体に前記各端子が同時に接触可能となる配列でこれらの端子を保持するハウジングとを有し、
このハウジングは、前記各端子が外側から挿通可能な複数の端子挿通孔をそれぞれ囲む内周面を有する端子挿通部と、前記端子挿通部を通じて挿通された端子を受け入れて保持するとともに、ケースの開口から当該ケース内に挿入可能な形状を有し、その挿入状態で前記各端子を前記回路基板の各接触用導体にそれぞれ接触させることが可能となるように前記各端子を保持する端子保持部と、を有し、
前記コネクタ側シール部材は、前記ケース内を密閉するように前記ハウジングと前記ケースとの間に介在し、
前記各電線側シール部材は、前記ケース内を密閉するように前記各電線と前記各端子挿通部の内周面との間にそれぞれ介在し、
前記ケースは、前記ハウジングをこのハウジングの端子保持部に保持された各端子が当該ケース内の回路基板の各接続用導体に接触しかつ前記コネクタ側シール部材が前記ケース内を密閉するように前記ハウジングと前記ケースとの間に介在する位置に係止するハウジング係止部を有する、電子回路ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の電子回路ユニットであって、前記コネクタ側シール部材は、弾性変形可能な材料からなり、弾性変形しながら前記ハウジングの端子保持部の外周面及び前記ケースの内周面にそれぞれ全周にわたって密着することが可能な形状を有する、電子回路ユニット。
【請求項3】
請求項2記載の電子回路ユニットであって、前記コネクタ側シール部材は、前記ハウジングの端子保持部の外周面上に固定されている、電子回路ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電子回路ユニットであって、前記各電線側シール部材は、弾性変形可能な材料からなり、前記各電線にその外周面と密着するように装着され、かつ、弾性変形しながら前記端子挿通部の内周面に全周にわたって密着することが可能な形状を有する、電子回路ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電子回路ユニットであって、前記コネクタのハウジングは、前記端子保持部が前記ケースの開口の内側に挿入された状態で当該ケースの当該開口側の端部を外側から覆う形状のカバー部を有する、電子回路ユニット。
【請求項6】
請求項5記載の電子回路ユニットであって、前記カバー部に前記ケースに係止される被係止部が設けられている、電子回路ユニット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電子回路ユニットであって、前記接続用導体が前記回路基板の縁部の両面にそれぞれ配列され、前記ハウジングが、前記回路基板の一方の面に配列された接続用導体にそれぞれ接続されるべき端子が前記回路基板の縁部に沿う方向に並んで第1の端子列を形成し、前記回路基板の他方の面に配列された接続用導体にそれぞれ接続されるべき端子が前記第1の端子列と平行な方向に並んで第2の端子列を形成するように、これらの端子を保持する、電子回路ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−80879(P2013−80879A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221218(P2011−221218)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】