多チャンネル・マイクロニードル
鋭い先端(31)、細長い本体(32)、及び少なくとも2つの平行な独立したルーメン(5,6)を含む頭部(36)を含んでなるマイクロニードル(4)であって、該ルーメン(5,6)の各々が、頭部(36)の遠位の側面開口部(7,8)に通じ、上記開口部(7,8)が、基本的に、それのルーメン(5,6)主方向に対して垂直である方向を向いており、ここで、該ルーメン(5,6)の遠位の上端部(33,34)がマイクロニードル(4)の頭部(36)内にある、上記マイクロニードル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の送達のため、例えばかかる薬物の経皮及び/又は皮内流体送達のために使用することができるマイクロニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
生物医学的応用において、人間の角質層を経て、下層組織内へ、少量の液体を送達すること又は下層組織から体液をサンプルとして採ることが重要となってきた。このために、マイクロニードルは開発されてきた。それらの寸法が小さいので、従来の皮下注射針よりも、痛みなしで、それらを皮膚内に挿入することができ、引き起こされる組織損傷はより軽度である。経皮、及び/又は、皮内の適用分野において、マイクロニードルは、好適な薬物送達デバイスとなる可能性を有する。
【0003】
マイクロニードルは、通常、2つの種類、即ち、中空でない又は中空のマイクロニードルに分けられる。中空でないマイクロニードルは、原理上は、薬物の様な物質の能動的投与は不可能であり、皮膚を通っての物質の送達のため、ニードルのコーティングを使用する。
【0004】
中空ニードルの場合、それらは、皮膚を通しての医薬品を送ることができるチャンネル又はルーメンを有す。経皮及び/又は皮内適用のための、異なった、中空の、面外マイクロニードルが、これまでに説明されてきた。それらは、通常、デバイスを通ることによる流れ抵抗を減らすために、2次元配列に配置されている。その配列は、ウエハーレベル加工で達成することができる。開口部がニードルの頂部にあり、目詰まり又はコアリングの危険が増える設計である。かかるニードルの例が、例えば、以下の特許文献1及び2に開示されており、その内容は、参照することにより、その全文が本明細書に組み入れられている。
【0005】
他の異なる設計には、例えば、ニードルの先端に(例えば、非特許文献1を参照)又は特許文献3に、若しくは、特許文献4及び特許文献5に記述された様に、側面に、横断する穴開口部があるものがあり、これらの文献のすべては、参照することにより、その全文が本明細書に組み入れられている。
【0006】
より具体的に、特許文献6に対応して、特許文献4と特許文献5の特許公報が、マイクロニードルと該マイクロニードルの製作方法を開示している。これらの公報によると、マイクロニードルは、通常、支持部材から突き出ていて、マイクロニードル本体部分、先端領域にあるルーメンを遮断する、閉じた、尖った先端部分及び上記支持部材を通って、上記の突き出ているニードル内に伸びている、円筒形内部ルーメンを含む。マイクロニードル本体部分は、少なくとも1つの、前記内部ルーメンと通じている、少なくとも1つの側面開口部を有し、上記本体内の少なくとも1つの側面開口部を作るように、ニードル構造の外部エンベロープ表面が、少なくとも1つの画成された領域において、ニードル構造内部のエンベロープ表面を横切る。
【0007】
かかるマイクロニードル及び他の既知のものは、薬物通路のための、1つの単一内部ルーメン及び薬物投与それ自体のため、1つ又は数個の開口部を有す。たとえ、それらが数個の開口部を有しているとしても、それらはやはり1つの単一供給ルーメンを有す。例えば、皮膚の小片又は一部による閉塞、これらのニードルの大きさを考慮した、共通のリスク(common risk)の場合、その時、ニードルは無用になる。単一孔も、小口径、従って、大きな流れ抵抗又はニードルをより脆くする大口径、のいずれかを有す。
【0008】
数個のルーメンを持つ、マイクロブレードが、特許文献7に開示されている。しかし、それらは、それらの遠位端部に先端を示さず、ブレードを示す。なおその上、関連の開口部は先端のために設計されていない(及び、使用され得ない)。
【0009】
数個のルーメンを持つ、マイクロニードルが、特許文献8に開示されている。しかし、それらの開口部は、閉塞の危険性が非常に高い方法で、置かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US 6,132、755
【特許文献2】US 6,334,856
【特許文献3】WO 02/17985
【特許文献4】US 2004/0267205
【特許文献5】WO 03/015860
【特許文献6】EP 1416996
【特許文献7】US 2009/0093776 A1
【特許文献8】US 2004/0164454 A1
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】D. V. McAllister et al.“Microfabricated needles for transdermal delivery of macromolecules and nanoparticles: fabrication methods and transport studies”、Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A, vol.100, no.24, pp.13775-60,2003
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
それゆえ、本発明の目的は、既知のマイクロニードルを改良すること、及び既知のデバイスと方法の欠点を打開することである。
【0013】
より具体的には、本発明の目的は、米国特許US 2004/0164454に開示されている種類の、改良されたマイクロニードルを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、より優れた形状とより優れた機能を有する、マイクロニードルを提供することである。これらのマイクロニードルによって、1μmよりも小さい、極めて鋭い先端のお蔭で、皮膚内部への、より優れた貫通が可能である。
【0015】
本発明の別の目的は、より低い総括流れ抵抗を与え、一方で破損に対する抵抗力があり、小片又は皮膚部分によって閉塞される危険性がより低い、多数のチャンネル又はルーメン(以下の記述において、双方の言葉は区別なしに使用される)を有する、マイクロニードルを提供することである。これらの側面開口部の少なくとも1つは、基本的に、ルーメン軸に垂直方向である。
【0016】
より正確には、本発明は、円錐状鋭い先端と、少なくとも2つの平行な、独立したルーメンを含んでいる、細長い本体を含むマイクロニードルに関わり、上記ルーメンの各々は細長い本体の遠位側面開口部に通じており、該開口部は、それのルーメン主方向に対して、垂直方向を基本的に向き、ここで、上記ルーメンの遠位上端部が、上記先端によって、少なくとも部分的に閉じられている。
【0017】
本発明の基本的特徴は、ニードルに、単一のルーメンでなく、数個のルーメンを形成し、従って、閉塞の危険性を無くすことである。さらに、もし1つのルーメンが閉じる又は閉塞するとしても、薬物又は他の製品の送達のために使用することができる、少なくとも別のルーメンが依然としてある。
【0018】
本発明の別の効果は、同一の注射の間、同一のデバイスを用いて又は異なったチャンネルを経て、順次、異なった薬物を送達できることである。
【0019】
さらなる効果は、1つのチャンネル(又は、数個のチャンネル)内の薬物の送達のため、及び、同時に別のチャンネルによって(又は、数個のチャンネルによって)、別の液体を除去するために、同一のマイクロニードルを使用できることである。使用例は、グルコース測定のための、間質液のサンプリングと、同時に別のチャンネルにおいてのインシュリンの投与である。診断の分野における別の使用例は、チャンネルの1つずつに、別個の測定、及び、測定値の比較が又は異なった時間間隔で、チャンネル毎の連続測定が付いている、数個の独立したチャンネルにおける、間質液のサンプリングである。
【0020】
さらなるの効果は、必要とされる流れ抵抗に応じて、可変のチャンネル寸法を作る機会である。異なった薬物のために可変送達速度が必要とされる場合に、使用されるチャンネル毎に応じて、同一の流体圧力が、可変送達速度をもたらす。
【0021】
液送達とサンプリングが、注射場所に従って、異なる流れ抵抗を必要とする場合に、同じことが当てはまる。例としては、間質液の圧力が低いならば、サンプリングに大きなチャンネルが使用され、送達される薬物に対して、コントロールされた、より高い圧力ならば又は低流量が必要であれば、薬物送達のため、小さいチャンネルが使用されることが挙げられる。
【0022】
記述の様に、ニードル内のチャンネルの数に応じて、各チャンネル又はチャンネルの組合せは、専用の用途(注射、及び/又は、除去)を有してよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】米国特許US2004/0267205又は国際公開公報WO03/015860に従った先行技術のニードルの例を図示する。
【図2】本発明のプロセスフローの切断図を示す。
【図3】本発明の実施態様の切断図を図示する。
【図4】米国特許US2004/0267205又は国際公開公報WO03/015860に従った先行技術の先端と本発明の先端との比較を図示する。
【図5】本発明に記載の一連のニードルの斜視図を図示する。
【図6】本発明に記載の一連のニードルの斜視図を図示する。
【図7】異なった構成の、多チャンネル・マイクロニードルを切断図で図示する。
【図8】異なった構成の、多チャンネル・マイクロニードルを切断図で図示する。
【図9】異なった構成の、多チャンネル・マイクロニードルを切断図で図示する。
【図10】本発明に記載のマイクロニードルのSEM像である。
【図11】本発明に記載のマイクロニードルのSEM像である。
【図12】マイクロニードルのための、リザーバ(reservoir)の考えられる実施態様を示す。
【図13】マイクロニードルのための、リザーバ(reservoir)の考えられる実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、本発明の実施態様と添付図面についての以下の説明から十分に理解されるであろう。
【0025】
図1において、上述の様に、先行技術(米国特許US2004/0267205の様な)に記載のマイクロニードル1の例が示されている。このマイクロニードルは、1つの単一送達チャンネル2と薬物の送達のための数個の側面開口部3を含む。この先行技術の設計のさらなる記述のため、参照することにより本明細書に組み入れられている、引用されている特許公報に言及する。
【0026】
以下において、我々は、面外のシリコンの多チャンネル・マイクロニードルのための、ウエハーレベル製作プロセスを提示し、説明する(図2参照)。
【0027】
側面が空いたマイクロニードルの製作は、両側プロセス(表側と裏側)であり、エッチング方法に基づいている。我々は、マイクロニードルのための望ましい形状を得るために、ドライ・エッチングである、強反応性イオン・エッチング(DRIE)とウェット・エッチングの組合せを使用した。
【0028】
望ましい、マイクロニードル高さを得るために、十分な厚みのあるシリコン・ウエーハーを用いて始める。シリコン・ウエーハー内に照合位置合せマークをパターン形成するために、第1のフォトリソグラフィーを実現する(図2a)。この第1の工程は、表側上又は裏側上に実現することができる。それにより、各々のマスクをこれらの照合マークに位置合わせするので、1つ又は複数の表側マスクと、1つ又は複数の裏側マスクとの間の良好な位置合せが可能となる。ハードマスク(SiO2又は他の適した材料)が、裏側上と、表側上に付着される(図2c)。このハードマスクは、裏側シリコン・ディープ・エッチングを保証するために、十分厚くなくてはならない。第2のフォトリソグラフィーが、このハードマスク内にチャンネル形状の孔をパターン形成するために使用される(図2d)。ディープ・ドライ・エッチングは、ウエハーの裏側に実現される(図2e)。このディープ・ドライ・エッチングは、プラズマ・エッチャー(ICP、RIE又は他の適した装置)において得られ、極低温処理又はボッシュ法(Bosch Process)によって得られる。次に、保護層が、裏側穴を保護するために、裏側上に付着される(湿式酸化によるSiO2、他の適した材料と方法)(図2f)。ハードマスク(SiO2又は他の適した材料)は表側上に付着され、表側シリコン・ディープ・エッチングを保護するために十分に厚みがある。新しいフォトリソグラフィーが、このハードマスク内に円形をパターン形成するために使用される(図2g)。この円形は、照合マークのお蔭で裏側円筒形状に、完全に正しく位置が合わせられる。穴の直径は、表側円形の直径よりも、必ず小さくなければならない。マイクロニードルのパターニング(patterning)は、一連の等方性エッチング、及び、異方性エッチングにより得られる(図2hからl)。
【0029】
かかるマイクロニードルを得るために、少なくとも、3回の等方性エッチングと2回の異方性エッチングが必要である。全ての形態において、最後の工程は等方性エッチングである(図2l)。マイクロニードルのための非常に鋭い先端を保証するため、ちょうど、マスクが剥がれ落ちる時に、プロセスを止める。マスクの厚みは、マイクロニードルの製作の終りに、このマスク全体をエッチングするように計算される。後にSiO2ストリップ(HF strip)が続く、最終湿式酸化(図2m)が実現される(図2n)。この最後の工程が、マイクロニードルの先端を、再度、改善し、マイクロニードルの粗さを改善する。この最後の等方性エッチングの間に、側面開口部が現れるが、前の等方性エッチングの間に、それらが現れることも可能である。
【0030】
このプロセスが、面外の、シリコンの多数チャンネルのマイクロニードルのための、ウエハーレベル製作プロセスを説明するが、この製作プロセスは、異なった、面外の、側面が空いた、シリコン・マイクロニードル構成、及び/又は、寸法にも適用できる。この製作プロセスは、例えば、もしも1つ又はそれ以上のマイクロニードルを我々が有するならば、もしも、マイクロニードルあたり、1つ又はそれ以上のチャンネルを我々が有するならば、異なったマイクロニードル長さ又は横方向寸法に適用できる。
【0031】
図3は、本発明の原理に従ったマイクロニードル4の実施態様を、軸方向切断図において、示している。マイクロニードル4は、開口部7及び8において、ニードル4の頭部36で、各々が終わっている、少なくとも2つの独立したルーメン5、6を含む。
【0032】
現在の文章において、「先端31」又は「鋭い先端31」は、マイクロニードル4の遠位端部35に位置する円錐形部分として、理解される必要があり、「細長い本体32」及び頭部36は、先端31とベース17の間に位置する、縦要素、好ましくは、円筒である。
【0033】
図4において、上述の様に、米国特許US2004/0267205等の先行技術に記載のマイクロニードルの先端(1つだけのチャンネル29と4つの側面開口部が付いた図4a)と、本発明の先端(独立したチャンネル5,6が付いた図4b)との比較が示されている。
【0034】
図5及び6は、本発明の原理に従って作られた、一連の9つのマイクロニードル9の斜視図を示す。これらのマイクロニードルの各々は、本発明の原理に従って、ニードルの先端近くの4つの独立している開口部10で終わっている、4つのチャンネルを有する。
【0035】
図7から9は、異なった、考えられる構成のルーメンを切断図で概略的に図示する。
【0036】
より具体的には、図7は、2つのルーメン11が付いた構成を示し、図8は3つのルーメン12が付いた構成を、図9は6つのルーメン13が付いた構成を示す。
【0037】
図10及び11は、本発明に記載のマイクロニードル配列(図10)の又は単一のマイクロニードル(図11)の「SEM(走査型電子顕微鏡)像である。これは、各マイクロニードルが、3つのルーメンを有する例である。
【0038】
図12及び13において、マイクロニードルのための、リザーバの考えられる実施態様が示されている。先行技術において、かかるリザーバは、通常は、別の、及び/又は、独立した部分で作られ、次に、マイクロニードルに連結される。
【0039】
本発明においては、図12及び13に示されている様に、マイクロニードルの支持のもと、直接又は部分的に、リザーバを形成することが提示されている。より具体的には、図12において、ルーメン16と連結されている開口部15が付いたマイクロニードル14が、部分切断図に示されている。このニードルの設計は、前の図に示された他のニードルと同様である。このニードル14は、ベース17付きで作られ(上に開示された、前の実施態様の様に)、該ベース17は、リザーバの一部を形成する凹部18を含む。ベース17に取り付けられた別の要素19がある。この要素は、相応しい材料、例えば、パイレックス(登録商標)(pyrex(R))又はその他の適する材料で作られ、例えば、接着により、ベース17に取り付けられる。この要素19も凹部20を含み、双方の凹部18と20は、ルーメン16に連結されるリザーバを一緒に形成する。図12は、使用される薬物又はその他の製品で該リザーバを満たすための、リザーバのための入口21をも示している。
【0040】
図13は、3つのリザーバ23、24及び25が付いた、例えば、図12の例に基づいている、ニードル22の実施態様を、透明的に見た、透視図を図示する。また、リザーバ23から25のための、3つの入口26、27及び28も図示されている。好ましくは、この実施態様において、各々のリザーバは、この設計により、本発明の原理に従って、3つまでの異なった製品、即ち、薬剤の送達を可能とする、1つのルーメンに連結されている。
【0041】
勿論、これは例示の実施態様に過ぎず、本発明の枠組みにおいて、変形は可能である。
【0042】
ルーメンは、図において、断面において対称であるとして図示されているが、勿論、それらは非対称であってもよく、異なった流れ抵抗を示す、独立した、可変の直径を有することができる。例は、各薬物に異なった速度が必要である又は異なったチャンネルに連結された、数種の薬物の各々に、同様な圧力、若しくは、拡散特性が適用できる、多数の薬物送達システムが付いたマイクロニードルの使用の場合である。それらは、表わされているものとは異なった形状及び異なった大きさであってもよく、ニードル当たりのルーメンの数も、本明細書に示された形態、即ち、少なくとも、2つ又はそれ以上に限られるものではない。また、それらは、マイクロニードルの縦方向軸の周りに、対称的に又は非対称的に分布されてもよい。例は、糖尿病の患者において、間質液サンプリング及び薬物注射の場合に、インシュリン投与と間質液サンプリングとの間の相互作用を制限するため、チャンネルが反対方向に置かれているものである。
【0043】
ルーメンの断面形状は、円形、三角形、多角形又は他の適する形状であってよい。側面開口部は、ルーメンの軸にいつも垂直である。
【0044】
容易に理解できる様に、1つの単一ルーメンを有する、先行技術の設計では、1つの単一の注射部位の作成のみが可能である。本発明であれば、複数の独立した注射部位(各ルーメンに対して1つ)を作成することが可能である。上述の様に、これにより、異なった製品、即ち、薬物(ルーメン当たりに1つ)を注射することだけでなく、1つのルーメンにおいて注射し、別のルーメンを通じて別の製品を取り戻すこと(例えば、吸引により)が、2つの液体間の相互作用を制限しながら、可能になる。
【0045】
同一の製品(例えば、薬物)のために全てのルーメンを使用する時、単一のルーメンで、これまでに可能であったよりも、マイクロニードルの周りでより良好な均一性を得ることができる。また、同一製品のために、1つより多くのルーメンを使用することにより、全流体抵抗は減少し、同一の時間の間に、より多量の製品を注射することができ、従って、破損にたいするマイクロニードル全体の抵抗力を増しながら、マイクロニードルの流れを改善する。
【0046】
一つの実施態様において、全てのルーメンが流体又は他の同等な製品の投与に使用される時、各ルーメンは、異なったリザーバに連結することができる。
【0047】
異なった流速をもたらす、異なった流れ抵抗を有するために、ルーメンの寸法と設計を計算し得る。
【0048】
実施態様において、本発明に記載のマイクロニードルは,パッチ(patch)・リザーバから、少なくとも2つの薬物を投与するために使用される。
【0049】
実施態様において、マイクロニードルは、皮膚内部への、少なくとも1つの薬物(例えば、インシュリン)の投与及び皮膚からの少なくとも1つの物質(例えば、間質液からのグルコース)のサンプリングのために使用される。
【0050】
本発明に記載の好適な実施態様は、ニードルの中のシリンダーの存在にある。このシリンダーは図1及び5から7に見ることができ、30として符番されている。容易にわかる様に、このシリンダーは、通常は、ニードル4の中央領域にあり(例えば、それは軸方向に伸びている)、ルーメン/チャンネルに囲まれている。このシリンダー(先行技術には存在していない)の効果は、ニードルの寸法を変えることなしに、それはニードルを強化し、破損に対する抵抗力を増すことである。
【0051】
本明細書に記述された全ての実施態様は、非限定的な典型的な例であり、他の変形は、本発明の範囲内で可能であることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の送達のため、例えばかかる薬物の経皮及び/又は皮内流体送達のために使用することができるマイクロニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
生物医学的応用において、人間の角質層を経て、下層組織内へ、少量の液体を送達すること又は下層組織から体液をサンプルとして採ることが重要となってきた。このために、マイクロニードルは開発されてきた。それらの寸法が小さいので、従来の皮下注射針よりも、痛みなしで、それらを皮膚内に挿入することができ、引き起こされる組織損傷はより軽度である。経皮、及び/又は、皮内の適用分野において、マイクロニードルは、好適な薬物送達デバイスとなる可能性を有する。
【0003】
マイクロニードルは、通常、2つの種類、即ち、中空でない又は中空のマイクロニードルに分けられる。中空でないマイクロニードルは、原理上は、薬物の様な物質の能動的投与は不可能であり、皮膚を通っての物質の送達のため、ニードルのコーティングを使用する。
【0004】
中空ニードルの場合、それらは、皮膚を通しての医薬品を送ることができるチャンネル又はルーメンを有す。経皮及び/又は皮内適用のための、異なった、中空の、面外マイクロニードルが、これまでに説明されてきた。それらは、通常、デバイスを通ることによる流れ抵抗を減らすために、2次元配列に配置されている。その配列は、ウエハーレベル加工で達成することができる。開口部がニードルの頂部にあり、目詰まり又はコアリングの危険が増える設計である。かかるニードルの例が、例えば、以下の特許文献1及び2に開示されており、その内容は、参照することにより、その全文が本明細書に組み入れられている。
【0005】
他の異なる設計には、例えば、ニードルの先端に(例えば、非特許文献1を参照)又は特許文献3に、若しくは、特許文献4及び特許文献5に記述された様に、側面に、横断する穴開口部があるものがあり、これらの文献のすべては、参照することにより、その全文が本明細書に組み入れられている。
【0006】
より具体的に、特許文献6に対応して、特許文献4と特許文献5の特許公報が、マイクロニードルと該マイクロニードルの製作方法を開示している。これらの公報によると、マイクロニードルは、通常、支持部材から突き出ていて、マイクロニードル本体部分、先端領域にあるルーメンを遮断する、閉じた、尖った先端部分及び上記支持部材を通って、上記の突き出ているニードル内に伸びている、円筒形内部ルーメンを含む。マイクロニードル本体部分は、少なくとも1つの、前記内部ルーメンと通じている、少なくとも1つの側面開口部を有し、上記本体内の少なくとも1つの側面開口部を作るように、ニードル構造の外部エンベロープ表面が、少なくとも1つの画成された領域において、ニードル構造内部のエンベロープ表面を横切る。
【0007】
かかるマイクロニードル及び他の既知のものは、薬物通路のための、1つの単一内部ルーメン及び薬物投与それ自体のため、1つ又は数個の開口部を有す。たとえ、それらが数個の開口部を有しているとしても、それらはやはり1つの単一供給ルーメンを有す。例えば、皮膚の小片又は一部による閉塞、これらのニードルの大きさを考慮した、共通のリスク(common risk)の場合、その時、ニードルは無用になる。単一孔も、小口径、従って、大きな流れ抵抗又はニードルをより脆くする大口径、のいずれかを有す。
【0008】
数個のルーメンを持つ、マイクロブレードが、特許文献7に開示されている。しかし、それらは、それらの遠位端部に先端を示さず、ブレードを示す。なおその上、関連の開口部は先端のために設計されていない(及び、使用され得ない)。
【0009】
数個のルーメンを持つ、マイクロニードルが、特許文献8に開示されている。しかし、それらの開口部は、閉塞の危険性が非常に高い方法で、置かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US 6,132、755
【特許文献2】US 6,334,856
【特許文献3】WO 02/17985
【特許文献4】US 2004/0267205
【特許文献5】WO 03/015860
【特許文献6】EP 1416996
【特許文献7】US 2009/0093776 A1
【特許文献8】US 2004/0164454 A1
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】D. V. McAllister et al.“Microfabricated needles for transdermal delivery of macromolecules and nanoparticles: fabrication methods and transport studies”、Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A, vol.100, no.24, pp.13775-60,2003
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
それゆえ、本発明の目的は、既知のマイクロニードルを改良すること、及び既知のデバイスと方法の欠点を打開することである。
【0013】
より具体的には、本発明の目的は、米国特許US 2004/0164454に開示されている種類の、改良されたマイクロニードルを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、より優れた形状とより優れた機能を有する、マイクロニードルを提供することである。これらのマイクロニードルによって、1μmよりも小さい、極めて鋭い先端のお蔭で、皮膚内部への、より優れた貫通が可能である。
【0015】
本発明の別の目的は、より低い総括流れ抵抗を与え、一方で破損に対する抵抗力があり、小片又は皮膚部分によって閉塞される危険性がより低い、多数のチャンネル又はルーメン(以下の記述において、双方の言葉は区別なしに使用される)を有する、マイクロニードルを提供することである。これらの側面開口部の少なくとも1つは、基本的に、ルーメン軸に垂直方向である。
【0016】
より正確には、本発明は、円錐状鋭い先端と、少なくとも2つの平行な、独立したルーメンを含んでいる、細長い本体を含むマイクロニードルに関わり、上記ルーメンの各々は細長い本体の遠位側面開口部に通じており、該開口部は、それのルーメン主方向に対して、垂直方向を基本的に向き、ここで、上記ルーメンの遠位上端部が、上記先端によって、少なくとも部分的に閉じられている。
【0017】
本発明の基本的特徴は、ニードルに、単一のルーメンでなく、数個のルーメンを形成し、従って、閉塞の危険性を無くすことである。さらに、もし1つのルーメンが閉じる又は閉塞するとしても、薬物又は他の製品の送達のために使用することができる、少なくとも別のルーメンが依然としてある。
【0018】
本発明の別の効果は、同一の注射の間、同一のデバイスを用いて又は異なったチャンネルを経て、順次、異なった薬物を送達できることである。
【0019】
さらなる効果は、1つのチャンネル(又は、数個のチャンネル)内の薬物の送達のため、及び、同時に別のチャンネルによって(又は、数個のチャンネルによって)、別の液体を除去するために、同一のマイクロニードルを使用できることである。使用例は、グルコース測定のための、間質液のサンプリングと、同時に別のチャンネルにおいてのインシュリンの投与である。診断の分野における別の使用例は、チャンネルの1つずつに、別個の測定、及び、測定値の比較が又は異なった時間間隔で、チャンネル毎の連続測定が付いている、数個の独立したチャンネルにおける、間質液のサンプリングである。
【0020】
さらなるの効果は、必要とされる流れ抵抗に応じて、可変のチャンネル寸法を作る機会である。異なった薬物のために可変送達速度が必要とされる場合に、使用されるチャンネル毎に応じて、同一の流体圧力が、可変送達速度をもたらす。
【0021】
液送達とサンプリングが、注射場所に従って、異なる流れ抵抗を必要とする場合に、同じことが当てはまる。例としては、間質液の圧力が低いならば、サンプリングに大きなチャンネルが使用され、送達される薬物に対して、コントロールされた、より高い圧力ならば又は低流量が必要であれば、薬物送達のため、小さいチャンネルが使用されることが挙げられる。
【0022】
記述の様に、ニードル内のチャンネルの数に応じて、各チャンネル又はチャンネルの組合せは、専用の用途(注射、及び/又は、除去)を有してよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】米国特許US2004/0267205又は国際公開公報WO03/015860に従った先行技術のニードルの例を図示する。
【図2】本発明のプロセスフローの切断図を示す。
【図3】本発明の実施態様の切断図を図示する。
【図4】米国特許US2004/0267205又は国際公開公報WO03/015860に従った先行技術の先端と本発明の先端との比較を図示する。
【図5】本発明に記載の一連のニードルの斜視図を図示する。
【図6】本発明に記載の一連のニードルの斜視図を図示する。
【図7】異なった構成の、多チャンネル・マイクロニードルを切断図で図示する。
【図8】異なった構成の、多チャンネル・マイクロニードルを切断図で図示する。
【図9】異なった構成の、多チャンネル・マイクロニードルを切断図で図示する。
【図10】本発明に記載のマイクロニードルのSEM像である。
【図11】本発明に記載のマイクロニードルのSEM像である。
【図12】マイクロニードルのための、リザーバ(reservoir)の考えられる実施態様を示す。
【図13】マイクロニードルのための、リザーバ(reservoir)の考えられる実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、本発明の実施態様と添付図面についての以下の説明から十分に理解されるであろう。
【0025】
図1において、上述の様に、先行技術(米国特許US2004/0267205の様な)に記載のマイクロニードル1の例が示されている。このマイクロニードルは、1つの単一送達チャンネル2と薬物の送達のための数個の側面開口部3を含む。この先行技術の設計のさらなる記述のため、参照することにより本明細書に組み入れられている、引用されている特許公報に言及する。
【0026】
以下において、我々は、面外のシリコンの多チャンネル・マイクロニードルのための、ウエハーレベル製作プロセスを提示し、説明する(図2参照)。
【0027】
側面が空いたマイクロニードルの製作は、両側プロセス(表側と裏側)であり、エッチング方法に基づいている。我々は、マイクロニードルのための望ましい形状を得るために、ドライ・エッチングである、強反応性イオン・エッチング(DRIE)とウェット・エッチングの組合せを使用した。
【0028】
望ましい、マイクロニードル高さを得るために、十分な厚みのあるシリコン・ウエーハーを用いて始める。シリコン・ウエーハー内に照合位置合せマークをパターン形成するために、第1のフォトリソグラフィーを実現する(図2a)。この第1の工程は、表側上又は裏側上に実現することができる。それにより、各々のマスクをこれらの照合マークに位置合わせするので、1つ又は複数の表側マスクと、1つ又は複数の裏側マスクとの間の良好な位置合せが可能となる。ハードマスク(SiO2又は他の適した材料)が、裏側上と、表側上に付着される(図2c)。このハードマスクは、裏側シリコン・ディープ・エッチングを保証するために、十分厚くなくてはならない。第2のフォトリソグラフィーが、このハードマスク内にチャンネル形状の孔をパターン形成するために使用される(図2d)。ディープ・ドライ・エッチングは、ウエハーの裏側に実現される(図2e)。このディープ・ドライ・エッチングは、プラズマ・エッチャー(ICP、RIE又は他の適した装置)において得られ、極低温処理又はボッシュ法(Bosch Process)によって得られる。次に、保護層が、裏側穴を保護するために、裏側上に付着される(湿式酸化によるSiO2、他の適した材料と方法)(図2f)。ハードマスク(SiO2又は他の適した材料)は表側上に付着され、表側シリコン・ディープ・エッチングを保護するために十分に厚みがある。新しいフォトリソグラフィーが、このハードマスク内に円形をパターン形成するために使用される(図2g)。この円形は、照合マークのお蔭で裏側円筒形状に、完全に正しく位置が合わせられる。穴の直径は、表側円形の直径よりも、必ず小さくなければならない。マイクロニードルのパターニング(patterning)は、一連の等方性エッチング、及び、異方性エッチングにより得られる(図2hからl)。
【0029】
かかるマイクロニードルを得るために、少なくとも、3回の等方性エッチングと2回の異方性エッチングが必要である。全ての形態において、最後の工程は等方性エッチングである(図2l)。マイクロニードルのための非常に鋭い先端を保証するため、ちょうど、マスクが剥がれ落ちる時に、プロセスを止める。マスクの厚みは、マイクロニードルの製作の終りに、このマスク全体をエッチングするように計算される。後にSiO2ストリップ(HF strip)が続く、最終湿式酸化(図2m)が実現される(図2n)。この最後の工程が、マイクロニードルの先端を、再度、改善し、マイクロニードルの粗さを改善する。この最後の等方性エッチングの間に、側面開口部が現れるが、前の等方性エッチングの間に、それらが現れることも可能である。
【0030】
このプロセスが、面外の、シリコンの多数チャンネルのマイクロニードルのための、ウエハーレベル製作プロセスを説明するが、この製作プロセスは、異なった、面外の、側面が空いた、シリコン・マイクロニードル構成、及び/又は、寸法にも適用できる。この製作プロセスは、例えば、もしも1つ又はそれ以上のマイクロニードルを我々が有するならば、もしも、マイクロニードルあたり、1つ又はそれ以上のチャンネルを我々が有するならば、異なったマイクロニードル長さ又は横方向寸法に適用できる。
【0031】
図3は、本発明の原理に従ったマイクロニードル4の実施態様を、軸方向切断図において、示している。マイクロニードル4は、開口部7及び8において、ニードル4の頭部36で、各々が終わっている、少なくとも2つの独立したルーメン5、6を含む。
【0032】
現在の文章において、「先端31」又は「鋭い先端31」は、マイクロニードル4の遠位端部35に位置する円錐形部分として、理解される必要があり、「細長い本体32」及び頭部36は、先端31とベース17の間に位置する、縦要素、好ましくは、円筒である。
【0033】
図4において、上述の様に、米国特許US2004/0267205等の先行技術に記載のマイクロニードルの先端(1つだけのチャンネル29と4つの側面開口部が付いた図4a)と、本発明の先端(独立したチャンネル5,6が付いた図4b)との比較が示されている。
【0034】
図5及び6は、本発明の原理に従って作られた、一連の9つのマイクロニードル9の斜視図を示す。これらのマイクロニードルの各々は、本発明の原理に従って、ニードルの先端近くの4つの独立している開口部10で終わっている、4つのチャンネルを有する。
【0035】
図7から9は、異なった、考えられる構成のルーメンを切断図で概略的に図示する。
【0036】
より具体的には、図7は、2つのルーメン11が付いた構成を示し、図8は3つのルーメン12が付いた構成を、図9は6つのルーメン13が付いた構成を示す。
【0037】
図10及び11は、本発明に記載のマイクロニードル配列(図10)の又は単一のマイクロニードル(図11)の「SEM(走査型電子顕微鏡)像である。これは、各マイクロニードルが、3つのルーメンを有する例である。
【0038】
図12及び13において、マイクロニードルのための、リザーバの考えられる実施態様が示されている。先行技術において、かかるリザーバは、通常は、別の、及び/又は、独立した部分で作られ、次に、マイクロニードルに連結される。
【0039】
本発明においては、図12及び13に示されている様に、マイクロニードルの支持のもと、直接又は部分的に、リザーバを形成することが提示されている。より具体的には、図12において、ルーメン16と連結されている開口部15が付いたマイクロニードル14が、部分切断図に示されている。このニードルの設計は、前の図に示された他のニードルと同様である。このニードル14は、ベース17付きで作られ(上に開示された、前の実施態様の様に)、該ベース17は、リザーバの一部を形成する凹部18を含む。ベース17に取り付けられた別の要素19がある。この要素は、相応しい材料、例えば、パイレックス(登録商標)(pyrex(R))又はその他の適する材料で作られ、例えば、接着により、ベース17に取り付けられる。この要素19も凹部20を含み、双方の凹部18と20は、ルーメン16に連結されるリザーバを一緒に形成する。図12は、使用される薬物又はその他の製品で該リザーバを満たすための、リザーバのための入口21をも示している。
【0040】
図13は、3つのリザーバ23、24及び25が付いた、例えば、図12の例に基づいている、ニードル22の実施態様を、透明的に見た、透視図を図示する。また、リザーバ23から25のための、3つの入口26、27及び28も図示されている。好ましくは、この実施態様において、各々のリザーバは、この設計により、本発明の原理に従って、3つまでの異なった製品、即ち、薬剤の送達を可能とする、1つのルーメンに連結されている。
【0041】
勿論、これは例示の実施態様に過ぎず、本発明の枠組みにおいて、変形は可能である。
【0042】
ルーメンは、図において、断面において対称であるとして図示されているが、勿論、それらは非対称であってもよく、異なった流れ抵抗を示す、独立した、可変の直径を有することができる。例は、各薬物に異なった速度が必要である又は異なったチャンネルに連結された、数種の薬物の各々に、同様な圧力、若しくは、拡散特性が適用できる、多数の薬物送達システムが付いたマイクロニードルの使用の場合である。それらは、表わされているものとは異なった形状及び異なった大きさであってもよく、ニードル当たりのルーメンの数も、本明細書に示された形態、即ち、少なくとも、2つ又はそれ以上に限られるものではない。また、それらは、マイクロニードルの縦方向軸の周りに、対称的に又は非対称的に分布されてもよい。例は、糖尿病の患者において、間質液サンプリング及び薬物注射の場合に、インシュリン投与と間質液サンプリングとの間の相互作用を制限するため、チャンネルが反対方向に置かれているものである。
【0043】
ルーメンの断面形状は、円形、三角形、多角形又は他の適する形状であってよい。側面開口部は、ルーメンの軸にいつも垂直である。
【0044】
容易に理解できる様に、1つの単一ルーメンを有する、先行技術の設計では、1つの単一の注射部位の作成のみが可能である。本発明であれば、複数の独立した注射部位(各ルーメンに対して1つ)を作成することが可能である。上述の様に、これにより、異なった製品、即ち、薬物(ルーメン当たりに1つ)を注射することだけでなく、1つのルーメンにおいて注射し、別のルーメンを通じて別の製品を取り戻すこと(例えば、吸引により)が、2つの液体間の相互作用を制限しながら、可能になる。
【0045】
同一の製品(例えば、薬物)のために全てのルーメンを使用する時、単一のルーメンで、これまでに可能であったよりも、マイクロニードルの周りでより良好な均一性を得ることができる。また、同一製品のために、1つより多くのルーメンを使用することにより、全流体抵抗は減少し、同一の時間の間に、より多量の製品を注射することができ、従って、破損にたいするマイクロニードル全体の抵抗力を増しながら、マイクロニードルの流れを改善する。
【0046】
一つの実施態様において、全てのルーメンが流体又は他の同等な製品の投与に使用される時、各ルーメンは、異なったリザーバに連結することができる。
【0047】
異なった流速をもたらす、異なった流れ抵抗を有するために、ルーメンの寸法と設計を計算し得る。
【0048】
実施態様において、本発明に記載のマイクロニードルは,パッチ(patch)・リザーバから、少なくとも2つの薬物を投与するために使用される。
【0049】
実施態様において、マイクロニードルは、皮膚内部への、少なくとも1つの薬物(例えば、インシュリン)の投与及び皮膚からの少なくとも1つの物質(例えば、間質液からのグルコース)のサンプリングのために使用される。
【0050】
本発明に記載の好適な実施態様は、ニードルの中のシリンダーの存在にある。このシリンダーは図1及び5から7に見ることができ、30として符番されている。容易にわかる様に、このシリンダーは、通常は、ニードル4の中央領域にあり(例えば、それは軸方向に伸びている)、ルーメン/チャンネルに囲まれている。このシリンダー(先行技術には存在していない)の効果は、ニードルの寸法を変えることなしに、それはニードルを強化し、破損に対する抵抗力を増すことである。
【0051】
本明細書に記述された全ての実施態様は、非限定的な典型的な例であり、他の変形は、本発明の範囲内で可能であることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋭い先端(31)、細長い本体(32)、及び少なくとも2つの平行な独立したルーメン(5,6)を含む頭部(36)を含んでなるマイクロニードル(4)であって、該ルーメン(5,6)の各々が、頭部(36)の遠位の側面開口部(7,8)に通じ、該開口部(7,8)が、基本的に、それのルーメン(5,6)主方向に対して垂直である方向を向いており、ここで、該ルーメン(5,6)の遠位の上端部(33,34)がマイクロニードルの頭部(36)内にある、上記マイクロニードル。
【請求項2】
各ルーメン(5,6)が異なったリザーバ(23から25)に連結される、請求項1に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項3】
前記先端(31)が1μmより小さい直径を有する、請求項1又は2に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項4】
細長い本体(32)及び頭部(36)が、外側円形断面を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項5】
細長い本体(32)及び頭部(36)が、外側多角形断面を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項6】
マイクロニードル(4)の頭部(36)が、細長い本体(32)の外側断面よりも小さい、外側断面を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項7】
面外シリコン型のものであり、ベース(17)を含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項8】
同一の基材に固定される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の、マイクロニードル(4)群。
【請求項9】
前記請求項のいずれかに規定され、そして1つの等方性エッチング含んでなり、1つの異方性エッチングを含んでなる方法によって得られる、多チャンネル・マイクロニードル。
【請求項10】
前記方法が、3つの等方性エッチングと2つの異方性エッチングを含んでなる、請求項9に記載の多チャンネル・マイクロニードル。
【請求項11】
前記請求項1〜8のいずれかに規定され、3つの等方性エッチングと2つの異方性エッチングを含んでなる、多チャンネル・マイクロニードルを製造する方法。
【請求項12】
最後の工程が等方性エッチングである、請求項11に記載の方法。
【請求項1】
鋭い先端(31)、細長い本体(32)、及び少なくとも2つの平行な独立したルーメン(5,6)を含む頭部(36)を含んでなるマイクロニードル(4)であって、該ルーメン(5,6)の各々が、頭部(36)の遠位の側面開口部(7,8)に通じ、該開口部(7,8)が、基本的に、それのルーメン(5,6)主方向に対して垂直である方向を向いており、ここで、該ルーメン(5,6)の遠位の上端部(33,34)がマイクロニードルの頭部(36)内にある、上記マイクロニードル。
【請求項2】
各ルーメン(5,6)が異なったリザーバ(23から25)に連結される、請求項1に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項3】
前記先端(31)が1μmより小さい直径を有する、請求項1又は2に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項4】
細長い本体(32)及び頭部(36)が、外側円形断面を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項5】
細長い本体(32)及び頭部(36)が、外側多角形断面を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項6】
マイクロニードル(4)の頭部(36)が、細長い本体(32)の外側断面よりも小さい、外側断面を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項7】
面外シリコン型のものであり、ベース(17)を含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマイクロニードル(4)。
【請求項8】
同一の基材に固定される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の、マイクロニードル(4)群。
【請求項9】
前記請求項のいずれかに規定され、そして1つの等方性エッチング含んでなり、1つの異方性エッチングを含んでなる方法によって得られる、多チャンネル・マイクロニードル。
【請求項10】
前記方法が、3つの等方性エッチングと2つの異方性エッチングを含んでなる、請求項9に記載の多チャンネル・マイクロニードル。
【請求項11】
前記請求項1〜8のいずれかに規定され、3つの等方性エッチングと2つの異方性エッチングを含んでなる、多チャンネル・マイクロニードルを製造する方法。
【請求項12】
最後の工程が等方性エッチングである、請求項11に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図4】
【図5】
【図6】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図4】
【図5】
【図6】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−532709(P2012−532709A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519945(P2012−519945)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056863
【国際公開番号】WO2011/006699
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(511280951)デバイオテック・ソシエテ・アノニム (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056863
【国際公開番号】WO2011/006699
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(511280951)デバイオテック・ソシエテ・アノニム (7)
【Fターム(参考)】
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