多パラメータ不整脈識別
【解決手段】不整脈識別装置及び方法は、皮下位置において心電図信号及び代替信号を受け取ることを含む。心電図信号及び代替信号を用いて、正常洞調律と不整脈とを識別する。不整脈は、心電図信号を用いて検出されてもよく、代替信号を用いて確認されてもよい。心電図信号の受け取りに応答して検出窓が開始されてもよく、代替信号が検出窓の範囲内の時間に受け取られたか否かを判定するために用いられてもよい。心電図信号及び代替信号に基づいて心拍数を計算してもよい。心拍数は、正常洞調律と不整脈とを識別するために用いられてもよく、不整脈の不在を判定するために用いられてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、植え込み型の心臓モニタリング及び刺激装置に関し、より具体的には、心電図情報及び代替センサからの情報を用いた多パラメータ不整脈識別に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な心臓は、規則的な同期収縮を生じる。心臓の律動的な収縮は、通常、右心房上部に位置する特殊化した細胞群である洞房(SA)結節によって制御される。SA結節は心臓の通常のペースメーカーであり、1分間につき60〜100回の鼓動を起こさせるのが一般的である。SA結節が心臓の速度を正常にペーシングしている場合には、心臓は正常洞調律にあると言わる。
【0003】
心臓の電気的活動が不調和又は不規則である場合には、心臓は不整脈であることが意味される。心臓不整脈は心臓効率を損ない、潜在的に生命を脅かす事象となり得る。心臓不整脈には多くの病因源があり、それには、心筋梗塞による組織損傷、感染、又は、収縮を調整する電気的インパルスを発生又は同期させる心臓機能の低下が含まれる。
【0004】
心臓の律動が過度に遅いと徐脈が生じる。この状態は、例えば、SA結節の機能が損なわれること(洞機能不全症候群を意味する)によって、又は、心房−心室間の電気的インパルスの伝播遅延又は遮断によって生じ得る。徐脈は、十分な血行を維持できない過度に遅い心拍数を生じる。
【0005】
心拍数が過度に速い状態は、頻拍を意味する。頻拍の原因は、心房又は心室にあり得る。心臓の心房で生じる頻拍には、例えば、心房細動及び心房粗動が含まれる。これらの状態は、心房の急激な収縮を特徴とする。心房の急激な収縮は、血流力学的に非効率であるのみならず、心室拍動数にも悪影響を与え得る。
【0006】
例えば、心室の心筋層において、正常洞調律より速い心拍数で電気的活動が起こると、心室性頻拍症が生じる。心室性頻拍症は、急速に心室細動に変質し得る。心室細動は、心室組織内における極端に速く不調和な電気的活動によって意味される状態である。心室組織の急速且つ不規則な興奮によって、同期収縮が阻害され、身体に効果的に血液を供給する心臓の機能が損なわれる。この状態は、心臓が2、3分以内に洞律動に戻されない限り致命的である。
【0007】
重症不整脈患者に対する効果的な治療として、植え込み型心律動管理システムが用いられている。これらのシステムは、一般的に、心臓の1つ以上の内面及び/又は外面から信号を感知するための、1つ以上のリード及び回路を含む。このようなシステムは、心臓の1つ以上の内面及び/又は外面において心組織に与えられる電気パルスを生成する回路も含む。例えば、心臓の電気信号を感知し、不整脈を治療するための様々な治療法に従ってパルスを心臓に送るために、患者の心臓内に延びるリードが、心筋層と接触する電極に接続される。
【0008】
典型的な植え込み型除細動器(ICD)は、1つ以上の心内膜リードを含み、リードには少なくとも1つの除細動電極が接続される。このようなICDは、心臓に高エネルギーのショックを送ることができ、心室の頻拍性不整脈や心室細動を止め、心臓が正常洞調律を再開できるようにする。ICDは、ペーシング機能を更に含んでもよい。
【0009】
ICDは突然心臓死(SCD)の防止に非常に効果的であるにもかかわらず、SCDの危険にさらされている大部分の人々には植え込み型除細動器が提供されていない。この残念な現実の主な理由としては、リード/電極の経静脈植え込み法を行う能力がある医師の数が限られていること、このような心手技に対応する十分な装備を有する外科施設の数が限られていること、及び、必要な心内膜又は心外膜リード/電極植え込み治療を安全に受けられる、危険な状態の患者数が限られていることが含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、一般的に、経胸腔モニタリング、除細動治療、ペーシング治療又はこれらの機能の組合せを提供する、心臓モニタリング及び/又は刺激方法及びシステムに関する。本発明の複数の実施形態は、心臓活動又は不整脈を検出及び/又は治療する皮下心臓モニタリング及び/又は刺激の方法及びシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の複数の実施形態は、胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することを含む不整脈識別方法に関する。心電図信号は、心臓信号と、雑音及び心電図上アーチファクトの一方又は両方とを含み得る。代替センサと関連付けられた信号も受け取られる。
【0012】
代替センサは、非電気生理学的な心臓センサ、血液センサ、患者活動センサ、インピーダンスセンサ、脈波センサ、血中酸素センサ、経胸腔インピーダンスセンサ、血量センサ、音響センサ及び/又は圧力トランスデューサ、並びにアクセロメータを含むが、これに限定されるものではない。感知された心電図信号は、代替信号を用いて、心臓信号であることが確認される。心臓不整脈は、感知された心電図信号及び確認された心臓信号の一方又は両方を用いて検出される。感知された信号が心臓信号であることが確認されない場合には、心臓不整脈の治療は保留される。
【0013】
心電図信号を用いて不整脈が検出されてもよく、代替信号を用いて不整脈の存在が確認又は否認されてもよい。心電図信号と代替信号との時間的関係が判定されてもよい。心電図信号の受け取りに応答して検出窓が開始されてもよく、代替信号が検出窓の範囲内の時間に受け取られたか否かを判定するために用いられてもよい。
【0014】
一続きの心電図信号及び一続きの代替信号に基づいて、心拍数が計算されてもよい。心拍数は、正常洞調律と不整脈とを識別するために用いられてもよい。心拍数は、不整脈閾値と比較されてもよく、例えば、第1の不整脈閾値を越える第1の心拍数及び第2の不整脈閾値を越えない第2の心拍数に応答して、不整脈の不在を判定するために用いられてもよい。不整脈の存在は、心電図信号のモルフォロジーを用いて判定されてもよく、次に、代替信号を用いて確認されてもよい。非電気生理学的な代替信号の例には、心音信号、心臓活動を示す亜音速音響信号、脈拍圧信号、心臓活動を示すインピーダンス信号、及びパルス酸素測定信号が含まれる。
【0015】
本発明の別の実施形態では、心電図信号を用いた不整脈の検出及び代替信号を用いた不整脈の非検出に応答して、除細動治療の送出が阻止されてもよい。不整脈を検出しても治療を阻止する方法は、胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することを含んでもよい。検出窓は、心電図信号から判定される開始時間によって定められてもよい。非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた信号が受け取られてもよく、検出窓内で評価されてもよい。
【0016】
心臓不整脈の存在又は不在は心電図信号を用いて判定されてもよく、非電気生理学的な心臓信号によって検出された心臓不整脈の存在によって確認されてもよい。確認に用いられる検出窓の開始時間は、心電図信号の変曲点(例えば極大値又は極小値)と関連付けられてもよい。心電図信号と非電気生理学的な心臓信号との間の相関が行われてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態は、胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成されたハウジング及び電極装置を含む植え込み型心臓装置に関する。ハウジング内には検出回路が設けられ、電極構成に接続される。検出回路は、心臓信号と雑音及び心電図上アーチファクトの一方又は両方とを含む心電図信号を検出するよう構成される。
【0018】
検出回路には、非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた代替信号を感知するよう構成されたセンサが接続される。ハウジング内にはプロセッサが設けられ、検出回路、センサ及びエネルギー送出回路に接続され、心電図及び代替信号を用いて正常洞調律と不整脈とを識別する。プロセッサは、非電気生理学的な信号を用いて、感知された心電図信号が心臓信号であることを確認する。感知された信号が心臓信号を含むことが確認されない場合には、プロセッサは心臓不整脈の治療を保留する。
【0019】
エネルギー送出回路は、除細動治療回路及びペーシング治療回路の一方又は両方を含んでもよい。センサはハウジングの内部又は表面に設けられてもよく、ハウジングに接続されるリードの内部又は表面に設けられてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、医療システムはハウジングを含み、該ハウジング内にはエネルギー送出回路及び検出回路が設けられる。エネルギー送出及び検出回路には1つ以上の電極が接続され、心臓及び筋肉活動を感知するために用いられる。ハウジング内にはプロセッサが設けられ、エネルギー送出及び検出回路に接続される。プロセッサは、感知された心臓活動から生成される心臓信号を用いて心室性不整脈を検出してもよく、感知された筋肉活動から生成される活動信号を用いて患者の活動状態を検出してもよい。プロセッサは、筋活動信号に応答して、不整脈を治療するための治療の送出を変更してもよい。
【0021】
本発明の別の実施形態では、プロセッサは、患者の意識又は運動を示す活動閾値を越える活動信号に応答して、不整脈治療の送出を阻止する。プロセッサは、活動閾値を越える活動信号に応答して、不整脈治療の送出を所定時間だけ阻止してもよく、所定時間が満了し且つ不整脈が停止した場合には、不整脈治療の送出を保留してもよい。プロセッサは、生命を脅かす不整脈の検出に応答して、活動信号に関わりなく不整脈治療を直ちに送出してもよい。
【0022】
別の実施形態では、プロセッサは、検出回路から心電図を受け取ってもよく、筋肉信号を検出するよう構成された電極装置を用いて心電図から心臓信号と活動信号とを識別してもよい。
【0023】
本発明による方法は、1つ以上の電極を用いて信号を検出することと、検出された信号から心臓信号を識別することとを含む。検出された信号からは、患者の活動と関連付けられた活動信号も識別される。心臓信号を用いて不整脈を検出してもよく、活動信号を用いて患者の活動レベルを検出してもよい。活動信号に応じて不整脈を治療するために、不整脈治療が修正されてもよい。患者の意識又は運動を示す信号を用いた、活動閾値を越える活動信号に応答して、不整脈治療の送出が阻止されてもよい。活動閾値を越える活動信号に応答して、不整脈治療の送出が所定時間だけ阻止されてもよく、所定時間が満了し且つ不整脈が停止した場合には、不整脈治療の送出が保留されてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、医療装置は、胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成されたハウジングを含む。ハウジング内には検出回路が設けられ、電気生理学的心臓信号を生成するよう構成される。ハウジング内にはエネルギー送出回路も設けられる。検出及びエネルギー送出回路には、胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成された少なくとも1つの電極が接続される。この装置には、血液センサ信号を生成するよう構成された植え込み型血液センサも設けられ、ハウジング内に設けられたプロセッサに接続される。プロセッサは、検出及びエネルギー送出回路にも接続され、電気生理学的心臓信号及び血液センサ信号を用いて心律動を評価するために用いられる。1のアプローチでは、プロセッサは、電気生理学的心臓信号が心臓信号を含むことを確認するために血液センサ信号を用いるよう構成されると共に、血液センサ信号と心臓信号を含む電気生理学的心臓信号とを用いて心律動を評価するよう構成される。
【0025】
血液センサは、胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成されてもよく、ハウジングの内部又は表面に設けられてもよく、ハウジングに接続されたリード表面に設けられてもよく、ハウジングとは別個に設けられて有線又は無線リンクを介してプロセッサに接続されてもよい。血液センサは、血中酸素飽和センサ又はパルス酸素濃度計等といった、光学信号感知を行うよう構成されたセンサを含んでもよい。適切なパルス酸素濃度計は、2つの発光ダイオード及び1つの光検出器を含んでもよい。光検出器は、信号の変動を考慮するよう周期的に調整される検出閾値を有する回路を含んでもよい。
【0026】
別の構成では、適切なパルス酸素濃度計は、約550ナノメートルと約750ナノメートルとの範囲内のピーク発光波長を有する第1の発光ダイオードと、約750ナノメートルと約1050ナノメートルとの範囲内のピーク発光波長を有する第2の発光ダイオードとを含んでもよい。血液センサとして、光電脈波法回路が含まれてもよく、プロセッサに接続されてもよい。プロセッサは、電気生理学的心臓信号及び血液センサ信号を用いて、頻拍性不整脈である心律動を識別してもよい。
【0027】
プロセッサは、電気生理学的心臓信号と血液センサ信号の相対変化とを用いて、頻拍性不整脈である心律動を識別してもよく、頻拍性不整脈の検出に応答して、血液センサを選択的に起動及び停止させてもよい。プロセッサは、電気生理学的心臓信号を用いて血液センサを起動させてもよく、電気生理学的心臓信号及び血液センサ信号を用いて頻拍性不整脈を評価してもよい。プロセッサは、電気生理学的心臓信号及び血液センサ信号を用いて、頻拍性不整脈の存在を更に確認又は否認してもよい。
【0028】
装置は、頻拍性不整脈を治療するために治療を送出してもよく、プロセッサは、治療の送出前又は送出後に血液センサを停止させてもよい。プロセッサは、電気生理学的心臓信号及び血液センサ信号を用いて、血液動態を判定してもよい。プロセッサは、電気生理学的心臓信号を用いた識別不能な心律動の検出に応答して、血液センサ信号を用いて識別不能な心律動の識別を容易にするために血液センサを起動させてもよい。プロセッサは、例えば血液センサ信号のモルフォロジーを解析することによって、心機能、酸素飽和及び酸素飽和の変化、及び/又は後負荷を評価するために、血液センサ信号を用いてもよい。
【0029】
本発明による律動評価方法の実施形態は、胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することと、胸腔内ではない皮下の感知位置から血液感知信号を取得することとを含んでもよい。心電図信号及び血液センサ信号を用いて心律動が評価されてもよい。1のアプローチは、心電図信号が心臓信号を含むことを確認することと、血液感知信号と心臓信号を含む心電図信号とを用いて心律動を評価することとを含む。心電図信号及び血液感知信号の一方又は両方を用いて、例えば、心拍数に基づく解析やモルフォロジーに基づく解析を行うことによって、頻拍性不整脈が検出されてもよい。
【0030】
複数の電極を用いて心電図信号の活性化パターンが解析されてもよく、血液感知信号を用いて頻拍性不整脈の存在を確認した後に、検出された頻拍性不整脈が治療されてもよい。血液感知信号を用いて、頻拍性不整脈と雑音とが識別されてもよい。心律動を評価することは、心電図信号と血液感知信号との間の相関を行うこと(又は伝達関数を計算すること)によって心臓不整脈を検出することを含んでもよい。血液感知信号を取得することは、血液感知信号を生成する血液センサを選択的に電源投入及び電源切断することを含んでもよい。
【0031】
心律動を評価することは、心電図信号を用いて頻拍性不整脈を検出することと、血液感知信号を生成する血液センサに電源投入することと、血液感知信号を用いて頻拍性不整脈の存在を確認することと、血液センサを電源切断することとを含んでもよい。血液感知信号は、例えば、血液灌流情報、血中酸素飽和情報、光電脈波情報、パルス酸素測定情報、及び/又は血液センサからの他の情報を含んでもよい。
【0032】
上記の本発明の要約は、本発明の各実施形態やすべての実装例を記載することを意図したものではない。本発明の長所及び達成事項、並びに、本発明のより完全な理解は、添付の図面とともに考慮される以下の詳細説明及び特許請求の範囲を参照することにより、明らかになると共に認識されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、様々な変形及び代替形態をとり得るものであり、その詳細を図面に例示すると共に以下に詳細に説明する。しかしながら、記載される特定の実施形態に本発明を限定する意図はないことを理解されたい。逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲に定義される、本発明の範囲内に含まれる全ての変形物、均等物及び代替物を包含することが意図される。
【0034】
以下の例示的な実施形態の説明において、本明細書の一部を構成し、本発明が実施され得る様々な実施形態を例示する、添付の図面を参照する。なお、他の実施形態が用いられてもよく、本発明の範囲を逸脱することなく構造的及び機能的な変更が行われ得ることを理解されたい。
【0035】
本発明による植え込み型装置は、以下に記載する1つ以上の特徴、構成、方法、又はそれらの組合せを含んでよい。例えば、心臓モニタ又は心臓刺激器は、以下に記載する1つ以上の有利な特徴及び/又はプロセスを含むよう実装されてもよい。そのようなモニタ、刺激器、又は他の植え込み型若しくは部分植え込み型装置は、本願明細書に記載される特徴の全てを含む必要はなく、独特の構造及び/又は機能性に備えるよう選択された特徴を含むよう実装されてもよいことが意図される。このような装置は、様々な治療機能又は診断機能を提供するよう実装されてもよい。
【0036】
本発明の複数の実施形態は、胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することを含む不整脈識別方法に関する。心電図信号は、心臓信号と、雑音及び心電図上アーチファクトの一方又は両方とを含み得る。代替センサと関連付けられた信号も受け取られる。代替センサには、非電気生理学的な心臓センサ、血液センサ、患者活動センサ、インピーダンスセンサ、脈波センサ、血中酸素センサ、経胸腔インピーダンスセンサ、血液量センサ、音響センサ及び/又は圧力トランスデューサ、並びにアクセロメータが含まれるが、これらに限定されない。代替信号を用いて、感知された心電図信号が心臓信号であることを確認してもよい。更に、感知された心電図信号及び確認された心臓信号の一方又は両方を用いて、心臓不整脈を検出してもよい。感知された信号が心臓信号であることが確認されない場合には、心臓不整脈の治療が保留されてもよい。
【0037】
一般に、心臓信号識別構成及び方法は、心臓モニタリング及び/又は刺激皮下装置と共に用いられ得る。そのような装置は、患者の胸部領域の皮下に植え込まれ得る植え込み型経胸腔心臓感知及び/又は刺激(ITCS)装置である。ITCS装置は、例えば、この装置の全ての又は選択された要素が、心臓活動の感知及び心臓刺激治療の送出に適した患者の前部、後部、側部又は他の身体位置に配置されるように、皮下に植え込まれてもよい。なお、ITCS装置の要素は、胸部領域、腹部領域、又は鎖骨下領域等の複数の異なる身体位置に配置されてよく、各電極要素は、心臓近傍、心臓周囲、心臓内又は心臓上の異なる領域にそれぞれ配置されてよい。
【0038】
ITCS装置の主ハウジング(例えば、活性(active)又は非活性(non-active)の缶)は、例えば、胸郭外の肋間又は肋骨下、腹部内、胸部の上部領域(例えば、第3肋骨の上方等といった鎖骨下位置)等に配置されるよう構成されてもよい。1つの実装例では、1つ以上の電極が、主ハウジング上、及び/又は、心臓、大血管又は冠状脈管構造の周囲であって直に接触しない他の位置に配置されてもよい。
【0039】
別の実装例においては、例えば、従来の経静脈送出手法を用いて植え込まれた1つ以上のリードを介して、電極が組み込まれた1つ以上のリードが、心臓、大血管又は冠状脈管構造と直に接触するよう配置されてもよい。更に別の実装例では、例えば、活性缶を用いるITCS装置構成又は非活性缶を用いる構成において、心臓活動を感知して心臓刺激エネルギーを送るために、1つ以上の皮下電極サブシステム又は皮下電極アレイを用いてもよい。電極は、心臓に対して前方及び/又は後方の位置に配置されてもよい。有用な皮下電極、電極アレイ及びその配向の例は、2003年12月17日に出願された「雑音消去心臓電極("Noise Canceling Cardiac Electrodes")」という名称の共有の米国特許出願第10/738,608号、及び、2003年6月19日に出願された「心臓に対する皮下電極の配置を含む方法及びシステム("Methods And Systems Involving Subcutaneous Electrode Positioning Relative To A Heart")」という名称の米国特許出願第10/465,520号に記載されており、ここに参照することによりこれらを本願明細書に組み込む。
【0040】
本願明細書に示される特定の構成は、植え込み型除細動器(ICD)が従来行っている様々な機能を実装可能なものとして一般的に記載され、当該技術分野で周知の多くの電気的除細動(cardioversion)/除細動(defibrillation)モードで動作し得る。本発明によるITCS装置に組み込まれ得る態様である、ICD回路、構造及び機能性の例は、共有の米国特許第5,133,353号、第5,179,945号、第5,314,459号、第5,318,597号、第5,620,466号、及び第5,662,688号に開示されており、ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む。
【0041】
特定の構成において、システム及び方法は、電気的除細動/除細動治療に加えて、当該技術分野で周知の様々なペーシング治療の提供等といった、ペースメーカーが従来行っている機能を実行してもよい。本発明によるITCS装置に組み込まれ得る態様である、ペースメーカー回路、構造及び機能性の例は、共有の米国特許第4,562,841号、第5,284,136号、第5,376,106号、第5,036,849号、第5,540,727号、第5,836,987号、第6,044,298号、及び第6,055,454号に開示されており、ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む。なお、ITCS装置構成は、徐脈及び/又は抗頻拍ペーシング治療に加えて、又はそれとは別に、非生理学的なペーシング支援を提供してもよい。
【0042】
本発明によるITCS装置は、診断及び/又は、モニタリング機能を実装してもよく、心臓刺激治療を提供してもよい。本発明のITCS装置に組み込まれ得る態様である、心臓モニタリング回路、構造及び機能性の例は、共有の米国特許第5,313,953号、第5,388,578号、及び第5,411,031号に開示されており、ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む。
【0043】
ITCS装置は、心拍数に基づく、パターン及び心拍数に基づく、及び/又はモルフォロジーによる頻拍性不整脈識別解析を含み得る様々な診断機能を実装するために用いられてよい。頻拍性不整脈の検出及び終止を強化するために、生理学的及び非生理学的な情報を得るために、皮下、皮膚、及び/又は、外部センサを用いてもよい。なお、本開示に記載される構成、特徴、及び特徴の組合せは、広範囲の植え込み型医療装置において実装されてよく、そのような実施形態及び特徴は、本願明細書に記載する特定の装置に限定されない。
【0044】
次に、図1A及び図1Bを参照すると、患者の胸部領域の異なる位置に植え込まれた構成要素を有する経胸腔心臓感知及び/又は刺激(ITCS)装置の構成が示されている。図1A及び図1Bに示される特定の構成では、ITCS装置はハウジング102を含み、ハウジング102内には、様々な心臓感知、検出、処理及びエネルギー送出回路が収容され得る。なお、図示されると共に本願明細書に記載される構成要素及び機能性は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの組合せで実装されてよい。更に、分かれた又は別個のブロック/要素として図示される構成要素及び機能性は、他の構成要素及び機能性と組み合わせて実装されてもよく、このような構成要素及び機能性を個別の形態又は統合された形態で示すのは、説明を明確にするためであり、このように限定するものではない。
【0045】
ハウジング102内には、ITCS装置と外部の通信装置(例えば、可搬型又は臨床型通信ステーション、患者携帯型/着用型通信ステーション、又は外部プログラマ等)との間の通信を容易にするための通信回路が配置される。通信回路は、生理学的又は非生理学的な1つ以上の外部センサ、皮膚センサ、又は、皮下センサとの一方向又は双方向通信を容易にしてもよい。ハウジング102は、一般的に、1つ以上の電極(例えば缶電極(can electrode)及び/又は不関電極)を含むように構成される。なお、ハウジング102は活性缶として構成されるのが一般的であるが、非活性缶構成が実装されてもよく、その場合には、ハウジング102から離間された少なくとも2つの電極が用いられる。
【0046】
図1A及び図1Bに示される構成において、皮下電極104は、胸部領域の皮下に配置されてもよく、ハウジング102から遠位に位置してもよい。皮下電極及び、適用可能であればハウジング電極を、心臓の周囲の様々な位置及び向き(例えば心臓に対して前方及び/又は後方の様々な位置)に配置してもよい。皮下電極104は、リードアセンブリ106を介してハウジング102内の回路に接続される。リードアセンブリ106内には1つ以上の導体(例えばコイル又はケーブル)が設けられ、皮下電極104をハウジング102内の回路に電気的に結合させる。電極支持体の細長い構造体、ハウジング102及び/又は遠位電極アセンブリ(図1A及び1B図に示される構成では皮下電極104として示す)上には、1つ以上の感知電極、感知/ペーシング電極、又は除細動電極が配置されてよい。
【0047】
1つの構成では、リードアセンブリ106は一般的に柔軟であり、従来の植え込み型医療用電気リード(例えば除細動リードや除細動/ペーシング複合リード)に類似の構造を有する。別の構成では、リードアセンブリ106は、やや柔軟に構成されるが、臨床医による形付け又は操作後の所望の構成を保持する弾性、ばね式又は機械的な(形状)記憶を有する。例えば、リードアセンブリ106に、手の力で歪めて所望の形をとらせることができるグースネック又はブレード(組紐)システムを組み込んでもよい。このように、リードアセンブリ106は、所与の患者の固有の解剖学的構成に対応するための形状適応性を有してよく、植え込み後に、カスタマイズされた形状を概ね保持する。この構成によるリードアセンブリ106の形付けは、ITCS装置の植え込み前及び植え込み中に行われ得る。
【0048】
更に別の構成によれば、リードアセンブリ106は、ハウジング102に対して皮下電極104を位置的に安定させる剛性の細長い構造体等といった、剛性の電極支持アセンブリを含む。この構成では、細長い構造体の剛性により、皮下電極104とハウジング102との所望の間隔、及び、患者の心臓に対する皮下電極104/ハウジング102の所望の向きが保たれる。細長い構造体は、構造プラスチック材料、複合材料、又は金属材料から形成されてよく、生体適合材料を含むか又は生体適合材料で覆われる。細長い構造体が金属等の導電性材料で形成される場合には、ハウジング102と皮下電極104との間に適切な電気的アイソレーションが設けられる。
【0049】
1つの構成では、剛性の電極支持アセンブリ及びハウジング102は、単一構造(例えば単一のハウジング/ユニット)を定める。電子部品及び電極導体/コネクタは、一体的なITCS装置ハウジング/電極支持アセンブリ内又はその表面に配置される。単一構造上の、ハウジング/電極支持体アセンブリの両端部付近に、少なくとも2つの電極が支持される。単一構造は、例えば、弓形又は角度のついた形状を有してもよい。
【0050】
別の構成によれば、剛性の電極支持アセンブリは、ハウジング102に対して物理的に分離可能なユニットを定める。剛性の電極支持アセンブリは機械的及び電気的カップリングを含み、それらは、ハウジング102の対応する機械的及び電気的カップリングとの嵌合係合を容易にする。例えば、ヘッダブロック構成は、剛性の電極支持アセンブリとハウジング102との機械的且つ電気的接続に備えた電気的及び機械的カップリングを含むよう構成されてもよい。ヘッダブロック構成は、ハウジング102上又は剛性の電極支持アセンブリ上に設けられてもよい。或いは、剛性の電極支持アセンブリとハウジング102との機械的且つ電気的接続を確立するために、機械的/電気的カップラを用いてもよい。このような構成では、標準的なITCS装置ハウジング102への物理的及び電気的接続のために、様々な形状、サイズ及び電極構成を有する様々な異なる電極支持アセンブリを利用可能にしてもよい。
【0051】
なお、電極及びリードアセンブリ106は、様々な形状を取るよう構成されてよい。例えば、リードアセンブリ106は、楔形、V形、平坦な楕円形又はリボン形の形状を有してもよく、皮下電極104は、電極のアレイ又はバンド等といった複数の離間した電極を含んでもよい。さらに、2つ以上の皮下電極104を複数の電極支持アセンブリに取り付けて、皮下電極104間の所望の離間関係を達成してもよい。
【0052】
ITCS装置は、共有の米国特許第5,203,348号、第5,230,337号、第5,360,442号、第5,366,496号、第5,397,342号、第5,391,200号、第5,545,202号、第5,603,732号及び第5,916,243号(ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む)に開示されている植え込み型皮下医療装置の回路、構造及び機能性を組み込んでもよい。
【0053】
図1Cは、1つの構成によるITCS装置の様々な構成要素を示すブロック図である。この構成によれば、ITCS装置には、プロセッサに基づく制御システム205が組み込まれており、制御システム205は、適切な(揮発性及び不揮発性)メモリ209に接続されたマイクロプロセッサ206を含む。なお、任意のロジックに基づく制御アーキテクチャが用いられてよい。制御システム205は、回路及び構成要素に接続され、心臓が生じる電気信号の感知、検出及び解析を行い、所定の条件下で、心臓不整脈を治療するために、心臓に電気刺激エネルギーを送る。特定の構成では、制御システム205及びそれに関連する構成要素は、心臓にペーシング治療も提供する。ITCS装置によって送られる電気エネルギーは、低エネルギーのペーシングパルス、又は電気的除細動若しくは除細動のための高エネルギーパルスの形態であってもよい。
【0054】
心臓信号は、皮下電極214及びITCS装置のハウジング上に設けられた缶電極又は不関電極207を用いて感知される。例えば、非活性缶構成では、心臓信号は、皮下電極214のみを用いて感知されてもよい。このように、単極、双極、又は単極/双極複合電極構成、並びに、多素子電極、及び雑音消去電極と標準電極との組合せを用いてもよい。感知された心臓信号は、感知回路204によって受け取られる。感知回路204は感知増幅回路を含み、更に、フィルタリング回路及びアナログ−デジタル(A/D)変換器を含んでもよい。感知回路204によって処理された、感知された心臓信号は、信号が検出回路202に送信される前に雑音を更に低減してもよい雑音低減回路203によって受け取られてもよい。
【0055】
高電力又は計算集約的な雑音低減アルゴリズムが必要な場合には、雑音低減回路203は、感知回路202の後に組み込まれてもよい。雑音低減回路203は、電極信号を用いた操作を行うために用いられる増幅器を用いて、感知回路204の機能を実行してもよい。感知回路204及び雑音低減回路203の機能を組み合わせることは、必要な構成要素を最小限にすると共にシステムの所要電力を低減するために有用であり得る。
【0056】
図1Cに示される例示的な構成において、検出回路202は、雑音低減回路203に接続されるか又は別様で雑音低減回路203を組み込む。雑音低減回路203は、感知された心臓信号に含まれる、様々なソースから持ち込まれた雑音を除去することによって、感知された心臓信号のSN比(SNR)を向上させるよう動作する。典型的なタイプの経胸腔心臓信号雑音は、例えば、電気雑音及び骨格筋から生じる雑音を含む。
【0057】
検出回路202は、一般的に、特に頻拍性不整脈等といった心臓不整脈を検出するために、感知された心臓信号及び/又は他のセンサ入力の解析を調整する、信号プロセッサを含む。検出回路202の信号プロセッサは、不整脈症状の存在及び重症度を検出及び確認するための心拍数に基づく及び/又はモルフォロジーによる識別アルゴリズムを実装してもよい。本発明によるITCS装置が実装し得る態様である、不整脈検出及び識別回路、構成及び技術の例は、共有の米国特許第5,301,677号及び第6,438,410号に開示されており、ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む。
【0058】
検出回路202は、心臓信号情報を制御システム205に送信する。制御システム205のメモリ回路209は、感知、除細動、及び適用可能であればペーシングの各種モードで動作するためのパラメータを含むと共に、検出回路202が受け取った心臓信号を表すデータを格納する。メモリ回路209は、履歴ECG(心電図)データ及び治療データを格納するよう構成されてもよい。履歴ECGデータ及び治療データは様々な目的で用いられてよく、必要又は所望により外部の受信装置に送信されてもよい。
【0059】
特定の構成において、ITCS装置は診断回路210を含んでもよい。診断回路210は、一般的に、検出回路202及び感知回路204から入力信号を受け取る。診断回路210は、制御システム205に診断データを提供する。なお、制御システム205には、診断回路210又はその機能性の全部又は一部が組み込まれてもよい。制御システム205は、様々な診断目的のために診断回路210によって供給される情報を格納して用いてもよい。この診断情報は、例えば、トリガーイベントに続いて又は所定の間隔で格納されてもよく、システム診断(例えば、電源ステータス、治療送出履歴、及び/又は患者診断)を含んでもよい。診断情報は、治療送出の直前に取得される電気信号又は他のセンサデータの形態をとってもよい。
【0060】
電気的除細動及び除細動治療を提供する構成によれば、制御システム205は、検出回路202から受け取った心臓信号データを処理し、心臓不整脈症状を終止させて心臓を正常洞調律に復帰させるために、適切な頻拍性不整脈治療を開始する。制御システム205は、ショック治療回路216に接続される。ショック治療回路216は、皮下電極214及びITCS装置ハウジングの缶電極又は不関電極207に接続される。ショック治療回路216は、命令に応じて、選択された電気的除細動又は除細動治療に従い、心臓に電気的除細動及び除細動刺激エネルギーを送る。これより簡単な構成では、電気的除細動及び除細動治療の両方の送出を提供する構成とは対照的に、ショック治療回路216は、除細動治療を送るよう制御される。本発明の態様を利用可能なタイプのITCS装置に組み込まれ得る態様である、ICD高エネルギー送出回路、構造及び機能性の例は、共有の米国特許第5,372,606号、第5,411,525号、第5,468,254号、及び第5,634,938号に開示されており、ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む。
【0061】
別の構成によれば、ITCS装置には、電気的除細動及び/又は除細動機能に加えて、心臓ペーシング機能が組み込まれてもよい。図1Cの点線で示されるように、ITCS装置はペーシング治療回路230を含んでもよい。ペーシング治療回路230は、制御システム205、皮下電極214、及び缶/不関電極207に接続される。ペーシング治療回路は、命令に応じて、選択されたペーシング治療に従い、ペーシングパルスを心臓に送る。ペーシング療法に従って、制御システム205内のペースメーカー回路によって生成される制御信号は、開始されて(initiated)ペーシング治療回路230に送られ、そこでペーシングパルスが生成される。ペーシング療法は、制御システム205によって修正されてもよい。
【0062】
経胸腔心臓モニタリング及び/又は刺激装置では、多くの心臓ペーシング治療が有用であり得る。図1Cに示すように、このような心臓ペーシング治療は、ペーシング治療回路230を介して送られてもよい。或いは、心臓ペーシング治療は、ショック治療回路216を介して送られてもよく、これによって別個のペースメーカー回路の必要がなくなり効果的である。
【0063】
図1Cに示されるITCS装置は、本発明の実施形態による1つ以上の生理学的及び/又は非生理学的な代替センサから、信号を受け取るよう構成される。代替センサによって生成される信号は、用いられるセンサのタイプに応じて、検出回路202に直接接続された又は感知回路204を介して間接的に接続されたトランスデューサ回路に送られてもよい。なお、特定の代替センサは、感知データを、検出回路202による処理を経ずに制御システム205に送信してもよい。
【0064】
代替の非電気生理学的な心臓センサは、検出回路202に直接接続されてもよく、又は感知回路204を介して間接的に接続されてもよい。非電気生理学的な心臓センサは、非電気生理学的な性質の心臓活動を感知する。非電気生理学的な心臓センサである代替センサの例には、血中酸素センサ、経胸腔インピーダンスセンサ、血量センサ、音響センサ、及び/又は圧力トランスデューサ、及びアクセロメータが含まれる。これらのセンサからの信号は、心臓活動に基づいて生成されるが、電気生理的ソース(例えばR波やP波)からは直接得られない。図1Cに示すように、代替センサ261は、感知回路204、検出回路202(明瞭にするため接続は図示しない)、及び制御システム205の1つ以上に接続されてよい。
【0065】
通信回路218は、制御システム205のマイクロプロセッサ206に接続される。通信回路218は、ITCS装置が1つ以上の受信装置又はITCS装置の外部に位置するシステムと通信することを可能にする。例えば、ITCS装置は、通信回路218を介して患者着用型、携帯型又は、臨床型の通信システムと通信してもよい。1つの構成では、1つ以上の生理学的又は非生理学的な(皮下、皮膚、又は、患者の外部の)代替センサは、周知の通信標準(ブルートゥースやIEEE802標準等)に準拠したインターフェイス等といった短距離無線通信インターフェイスを備えてもよい。このようなセンサが取得したデータは、通信回路218を介してITCS装置に通信されてもよい。なお、無線送信機又はトランシーバを備えた生理学的又は非生理学的な代替センサは、患者の外部の受信システムと通信してもよい。
【0066】
通信回路218は、ITCS装置が外部プログラマと通信することを可能にしてもよい。1つの構成では、通信回路218及びプログラマユニット(図示せず)は、当該技術分野で周知のように、ワイヤループアンテナ及び無線周波遠隔測定リンクを用いて、プログラマユニットと通信回路218との間で信号及びデータの送受信を行う。このようにして、植え込み中及び植え込み後に、ITCS装置とプログラマユニットとの間でプログラム命令及びデータが転送される。医師は、プログラマを用いて、ITCS装置が用いる様々なパラメータを設定又は修正できる。例えば、医師は、ペーシング及び電気的除細動/除細動治療モードを含むITCS装置の感知、検出、ペーシング及び除細動機能に影響するパラメータを設定又は修正してもよい。
【0067】
一般的に、ITCS装置は、当該技術分野で周知のように、人体への植え込みに適したハウジングに収容されて気密密閉される。ITCS装置への電力は、ITCS装置内に収容された電気化学的電源220によって供給される。1つの構成では、電源220は充電式電池を含む。この構成によれば、何度も繰り返される電源220の非侵襲性の充電を容易にするために、電源220には充電回路が接続される。通信回路218、又は別個の受信器回路は、外部の無線周波エネルギー伝達器によって伝達される無線周波エネルギーを受け取るよう構成される。ITCS装置は、充電式電源に加えて非充電式電池を含んでもよい。なお、充電式電源を用いる必要はなく、その場合には、長寿命の非充電式電池を用いる。
【0068】
図1Dは、ITCS装置の検出回路302の構成を示す。検出回路302は、心拍数検出回路310及びモルフォロジー解析回路312の一方又は両方を含む。不整脈の検出及び確認は、心拍数検出回路310によって実装される、当該技術分野で周知の心拍数に基づく識別アルゴリズムを用いて達成されてもよい。不整脈の症状は、当該技術分野で周知のように、感知された心臓信号のモルフォロジーに基づく解析によって検出及び確認されてもよい。心拍数に基づく手法及びモルフォロジーに基づく手法の両方を用いて、層構造又は並列構造の不整脈識別アルゴリズムを実装してもよい。更に、例えば、ここに参照することにより本願明細書に組み込む米国特許第6,487,443号、第6,259,947号、第6,141,581号、第5,855,593号、及び第5,545,186号に開示されるアプローチを用いることにより、不整脈の症状を検出及び/又は確認するために、心拍数及びパターンに基づく不整脈検出及び識別手法を用いてもよい。
【0069】
マイクロプロセッサ306に接続された検出回路302は、感知された心臓信号を、経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置において特に有用な方法で処理するための専用回路を組み込むよう、又は専用回路と通信するよう構成されてもよい。図1Dに例示されるように、検出回路302は、複数の生理学的及び非生理学的な代替センサから情報を受け取ってもよい。例えば、適切な音響センサを用いて経胸腔音響をモニタリングしてもよい。例えば、心音を検出し、代替センサ処理回路318によって様々な目的に合わせて処理してもよい。音響データは、有線又は無線リンクを介して検出回路302に送られ、心臓信号検出及び/又は不整脈検出を強化するために用いられる。例えば、音響情報は、本発明に従って、ECG心拍数に基づく不整脈の識別を確証するために用いられてもよい。
【0070】
検出回路302は、骨格筋活動をモニタリングする1つ以上の代替センサから情報を受け取ってもよい。経胸腔電極は、心臓活動信号に加えて、骨格筋信号を容易に検出する。このような骨格筋信号は、患者の活動レベルを判定するために用いられてもよい。心臓信号検出の脈絡においては、このような骨格筋信号は、心臓活動信号のアーチファクトと考えられ、雑音と見なされ得る。処理回路316は、1つ以上の骨格筋センサからの信号を受け取り、処理した骨格筋信号データを検出回路302に送る。骨格筋雑音を伴う正常な心臓洞律動を、心臓不整脈と区別するために、このデータを用いてもよい。
【0071】
既に述べたように、検出回路302は、雑音処理回路314に接続されるか又は別様で雑音処理回路314を組み込む。雑音処理回路314は感知された心臓信号を処理し、感知された心臓信号に含まれる雑音を低減することによって心臓信号のSNRを改善する。
【0072】
次に図1Eを参照すると、1つの構成によるITCS装置の様々な構成要素のブロック図が示されている。図1Eは、様々な生理学的及び非生理学的パラメータの検出に関連する複数の構成要素を示す。図示されるように、ITCS装置はマイクロプロセッサ406を含み、マイクロプロセッサ406は、一般的にITCS装置の制御システムに組み込まれ、検出回路402に接続される。センサ信号処理回路要素410は、複数の異なる心電図センサ及び/又は代替センサからのセンサデータを受け取ることができる。
【0073】
例えば、ITCS装置は、様々なタイプの非生理学的なセンサ421、生理学的な外部/皮膚センサ422及び/又は生理学的な内部センサ424と協同するか又は別様でそれらを組み込んでよい。このようなセンサには、例えば、音響センサ、インピーダンスセンサ、酸素飽和センサ、血量センサ、及び血圧センサが含まれ得る。これらの各センサ421、422、424は、短距離無線通信リンク420を介して、センサ信号処理回路要素410に通信可能に接続されてもよい。或いは、生理学的内部センサ424等の特定のセンサは、配線接続(例えば電気的又は光学的な接続)を介して、センサ信号処理回路要素410に通信可能に接続されてもよい。本発明のITCS装置において実装され得る有用な光電脈波センサ及びそれを用いる技術は、ここに参照することにより本願明細書に組み込む米国特許第6,491,639号に開示されている。
【0074】
図1A〜図1Eに示される構成要素、機能性及び構造的構成は、ITCS装置に組み込まれ得る様々な特徴及び特徴の組合せの理解を提供することを意図したものである。比較的複雑な設計から比較的簡単な設計まで、広範囲のITCSやその他の植え込み型心臓モニタリング及び/又は刺激装置構成が考えられることを理解されたい。このように、特定のITCS又は心臓モニタリング及び/又は刺激装置構成は、本願明細書に記載される特定の特徴を含んでよく、他のそのような装置構成は、本願明細書に記載される特定の特徴を含まなくてもよい。
【0075】
本発明の実施形態によれば、ITCS装置は、心臓感知及び不整脈治療送出の一方又は両方を提供する皮下電極システムを含むよう実装されてもよい。1つのアプローチによれば、ITCS装置は、モニタリング、診断及び/又は治療の機能を実行する、長期にわたって植え込み可能なシステムとして実装されてもよい。ITCS装置は、心臓不整脈を自動的に検出して治療してもよい。
【0076】
1つの構成において、ITCS装置は、身体の前胸郭領域等といった身体の胸部領域の皮下に植え込まれるパルス発生器及び1つ以上の電極を含む。ITCS装置は、徐脈及び頻拍性不整脈に対する心房及び/又は心室治療を提供するために用いられてもよい。頻拍性不整脈治療は、例えば、心房性又は心室性の頻拍又は細動を治療するための、電気的除細動、除細動及び抗頻拍ペーシング(ATP)を含んでもよい。徐脈治療は、徐脈や心停止に対する一時的なポストショック(post-shock)ペーシングを含んでもよい。徐脈や心停止のためのポストショックペーシングを実装するための方法及びシステムは、2003年2月28日に出願された「心停止を防止するポストショック経胸腔ペーシングを用いる皮下心臓刺激("Subcutaneous Cardiac Stimulator Employing Post-Shock Transthoracic Asystole Prevention Pacing")」という名称の共有の米国特許出願第10/377,274号に記載されている(ここに参照することによりその全体を本願明細書に組み込む)。
【0077】
1つの構成において、1つのアプローチによるITCS装置は、従来のパルス発生器及び皮下電極植え込み技術を用いてもよい。パルス発生装置及び電極は、長期にわたって皮下に植え込まれてもよい。このようなITCSは、従来の植え込み型システムと同様に、自動的に不整脈を検出して治療するために用いられてもよい。別の構成では、ITCS装置は、単一構造(例えば、単一のハウジング/ユニット)を含んでもよい。電子部品及び電極導体/コネクタは、一体的ITCS装置ハウジング/電極支持アセンブリ内又はその表面に配置される。
【0078】
ITCS装置は電子部品を含み、従来の植え込み型細動除去器と類似していてもよい。身体の胸郭領域の皮下に配置された、一方がパルス発生器ハウジング(例えば缶)であり得る2つ以上の電極間で、高電圧ショック治療を行ってもよい。
【0079】
それに加えて、又はそれとは別に、ITCS装置は、徐脈治療のために低エネルギー電気刺激を提供してもよい。ITCS装置は、従来のペースメーカーと同様の徐脈ペーシングを提供してもよい。ITCS装置は、徐脈又は心停止に対する一時的なポストショックペーシングを提供してもよい。感知及び/又はペーシングは、ショック電極も組み込んだ電極サブシステム上に配置される感知/ペース電極を用いて、又は皮下に植え込まれるそれぞれ別個の電極によって、達成されてよい。
【0080】
ITCS装置は、本発明による様々な診断、治療、又はモニタリングの実装と関連して用いられ得る様々な代替信号を検出してもよい。例えば、ITCS装置は、脈拍圧信号、血中酸素レベル、心音、心臓加速、及び他の心臓の活動に関連した非電気生理学的な信号を検出するためのセンサ又は回路を含んでよい。一実施形態において、ITCS装置は、例えば、呼吸の1回換気量及び毎分換気量を含む様々な呼吸パラメータが導出され得る、胸腔内インピーダンスを感知する。1つ以上の身体運動又は体位に関する信号を検出するためのセンサ及びそれと関連付けられた回路が、ITCS装置と関連して組み込まれてもよい。例えば、患者の活動、患者の位置、身体の向き又は胴の位置を検出するために、アクセロメータ及びGPS装置を用いてもよい。
【0081】
ITCS装置は、高度患者管理(APM)システムの構成において用いられてもよい。高度患者管理システムは、医師が、遠隔から自動的に、患者の心機能及び呼吸機能、並びに他の状態をモニタリングすることを可能にし得るものである。1つの例では、心臓ペースメーカー、除細動器、及び再同期装置等といった植え込み型心律動管理システムは、患者のリアルタイムデータ収集、診断及び治療を可能にする様々な電気通信技術及び情報技術を備えてもよい。本願明細書に記載される様々な実施形態は、高度患者管理と関連して用いられ得る。遠隔からの患者/装置のモニタリング、診断、治療又は他のAPM関連の方法論を提供するよう構成され得る本願明細書に記載される方法、構成及び/又は技術は、ここに参照することにより本願明細書に組み込む米国特許第6,221,011号、第6,270,457号、第6,277,072号、第6,280,380号、第6,312,378号、第6,336,903号、第6,358,203号、第6,368,284号、第6,398,728号、及び第6,440,066号の1つ以上の特徴を組み込んでもよい。
【0082】
1つのアプローチによるITCS装置は、容易に植え込み可能な治療、診断又は、モニタリングシステムを提供する。このITCSシステムは、静脈内又は胸腔内へのアクセスを要さずに植え込まれ得るものであり、より簡単で侵襲性が低い植え込み手順を提供し、リード及び外科手術の複雑さを最小限にし得る。更に、このシステムは、経静脈リードシステムによって併発症を生じる患者に対する使用に有益であろう。このような併発症には、特に、外科的な併発症、感染、不十分な血管開通、人工弁の存在に関連する併発症、及び小児科患者の成長に起因する限界が含まれるが、これらに限定されない。このアプローチによるITCSシステムは、前胸部の皮下に植え込まれる2つ以上の電極サブシステムの組合せを含むよう構成され得る点で、従来のアプローチとは異なる。
【0083】
図2に示すように、1つの構成では、ITCSシステムの電極サブシステムは、患者の心臓510の周囲に配置される。ITCSシステムは、缶電極502を含む第1の電極サブシステムと、1つ以上の電極及び/又は1つ以上の多素子電極を含む第2の電極サブシステム504とを含む。第2の電極サブシステム504は、感知及び/又は電気刺激に用いられる複数の電極を含んでよく、代替センサを更に含んでもよい。
【0084】
様々な構成において、第2の電極サブシステム504は、電極の組合せを含んでもよい。第2の電極サブシステム504の電極の組合せは、コイル電極、先端電極、リング電極、多素子コイル、渦巻コイル、非導電性支持体に取り付けられた渦巻コイル、スクリーンパッチ電極、及び他の電極構成を含み得る。適切な非導電性支持体材料は、例えばシリコーンゴムである。
【0085】
缶電極502は、ITCS装置の電子部品を収容するハウジング501上に配置される。一実施形態では、缶電極502は、ハウジング501の外面全体を含む。別の実施形態では、ハウジング501の様々な部分は、缶電極502から、又は組織から、電気的に絶縁されてもよい。例えば、缶電極502の活性領域は、心臓の感知及び/又は刺激に有利なように電流の流れを案内するように、ハウジング501の前面又は後面の全て又は一部を含んでよい。
【0086】
一実施形態によれば、ハウジング501は、従来の植え込み型ICDのハウジングに類似していてもよく、ハウジング501の容積は約20〜100cc、厚さは0.4〜2cm、各面の表面積は約30〜100cm2である。上述のように、電流の流れを最適に案内するために、ハウジングの一部は組織から電気的に絶縁されてもよい。例えば、電流の流れを案内するために、ハウジング501の一部が非導電性又は別様で電気抵抗を有する材料で覆われてもよい。適切な非導電性材料コーティングには、例えば、シリコーンゴム、ポリウレタン又はパリレンから形成されるものが含まれる。
【0087】
それに加えて、又はそれとは別に、電流の流れを最適に案内するために、ハウジング501の全体又は一部が、導電率特性が変わるよう処理されてもよい。電流の流れを最適化するために、ハウジング501の表面の導電率特性を、表面の導電率を増減する等によって変更するために、様々な公知の技術を用いてよい。このような技術としては、所望の導電率特性を達成するためにハウジング501の表面を機械的又は化学的に変える技術が含まれ得る。
【0088】
上述のように、皮下に植え込まれた電極から収集される心臓信号には、雑音が混ざっている場合がある。更に、特定の雑音源は、心臓信号に類似した周波数特性を有する。このような雑音は、過剰な感知や不要なショック送出につながり得る。雑音信号の振幅が比較的高く、重複する周波数を含む可能性があるため、フィルタリングのみでは雑音の完全な抑制には至らない。更に、フィルタの性能は、遭遇する全種類の雑音に対して十分にロバストではないのが一般的である。更に、公知の適応的フィルタリング手法では、患者にVF(心室細動)がある状況又は高振幅雑音がある状況に対する、しばしば未知の基準信号が必要である。
【0089】
皮下植え込み電極から収集される心臓信号には、雑音が混ざっている場合がある。更に、特定の雑音源は、心臓信号に類似した周波数特性を有する。このような雑音は、過剰な感知や不要なショック送出につながり得る。雑音信号の振幅が比較的高く、重複する周波数を含む可能性があるため、フィルタリングのみでは雑音の完全な抑制には至らない場合がある。更に、フィルタの性能は、遭遇する全種類の雑音に対して十分にロバストではない場合がある。更に、公知の適応的フィルタリング手法では、患者にVF(心室細動)がある状況又は高振幅雑音がある状況に対する、しばしば未知の基準信号が必要である。
【0090】
本発明の1つのアプローチによれば、ITCS装置は、一群の分離された信号(例えばブラインドソース分離(BSS)技術で得られる分離信号)の中から心臓信号を識別するために、代替信号を用いてもよい。なお、後述する信号識別技術の全て又は特定の態様は、ITCS装置以外の(植え込み型又は非植え込み型の)装置又はシステムで実装されてもよく、ITCS装置で実装される分離方法としてのBSS技術の記載は説明を目的とするものであり、これに限定するものではないことを理解されたい。
【0091】
信号分離技術は、複合信号から多くの個々の信号を分離するものである。例えば、患者の表面又は患者の内部で検出される複合信号は、様々な信号ソースから生じる複数の信号成分(このような信号成分は、心臓信号、骨格筋運動関連信号、電磁干渉信号、及び発生源が未知の信号を含む)を含み得る。信号分離技術は、複合信号を個々の信号に分離するが、このような信号のソースは必ずしも示さない。
【0092】
複合信号マトリックスに対する主成分解析を行って生じる最大固有値を用いることは、ITCS装置が対象とする心臓信号である可能性が最も高い分離信号を識別する1つの方法を提供する。しかしながら、分離された全ての信号を解析することは、計算集約的なオペレーションである。本発明は、雑音信号と心臓信号との区別の補助となる代替信号を用いることにより、対象の心臓信号である可能性が最も高い信号の指標を効率的な方法で提供し、これにより、可能性がある多くの分離信号から対象の心臓信号を識別するのに必要な時間を大きく低減する。
【0093】
本発明の1つのアプローチによれば、ITCS装置は、例えばブラインドソース分離(BSS)技術で得られるような一群の分離信号の中から、心臓信号を識別するよう実装されてもよい。ブラインドソース分離のための装置及び方法は、2003年12月19日に出願された共有の米国特許出願番号第10/741,814号(ここに参照することにより本願明細書に組み込む)で更に説明されている。雑音消去電極を用いた別の有用な信号分離手法に関連する装置及び方法は、2003年12月17日に出願された共有の米国特許出願番号第10/738,608号(ここに参照することにより本願明細書に組み込む)で更に説明されている。
【0094】
上述のような代替センサ503からの情報は、例えばECGや他の心拍数に基づく不整脈識別等といった不整脈識別の精度を高めるために用いられてもよい。雑音の存在下における正常洞調律(NSR)からの不整脈の検出及び識別を改善するために、例えば、心音の音響信号、アクセロメータ、血液センサ又は他の非電気生理学的ソースのセンサ等といった、心臓の電気的活動に依存しない信号を用いてもよい。図2に示すように、代替センサ503は、ハウジング501内若しくはハウジング501上に設けられてもよく、又は、上述したように、第2の電極サブシステム504の一部として設けられてもよい。また、代替センサ503は、追加のリードを用いてハウジング501に直接接続されてもよく、又は、図1C及び図1Dを参照して説明したように、無線接続されてもよい。
【0095】
本発明の一実施形態では、電気雑音及び/又は心電図上アーチファクトの存在下で様々な心律動を検出する際の信号識別を補助するために、心音を用いる。この付加的な代替識別信号は、電気生理的心臓信号と時間相関しているので、代替信号は、たとえ電気雑音及び/又は心電図上アーチファクトの存在下でも、患者の律動の状態に関する情報を提供し得る。例えば、ECG信号がQRSコンプレックスを有する心臓信号を含むことを確認するために、この代替信号を用いてもよく、この場合、QRSコンプレックスを有するECG信号のみが、確認されたECG信号である。それに続く解析では、例えば心拍数の計算に、確認されたECG信号のみが用いられることを要求してもよい。これにより、電気的干渉及び雑音の混入の影響を受けにくい、よりロバストなアルゴリズムが提供される。
【0096】
一実施形態では、心音を検出するために、例えばアクセロメータや音響トランスデューサ等の皮下センサを用いてもよい。電気雑音を伴う正常洞調律を、潜在的に致命的な不整脈(例えば心室性頻拍症及び心室細動)から識別するために、心拍数、曲率及び他のECG情報と共に心音を用いてもよい。ITCS装置は、信号又は律動識別を行う際に、心音の存在、特性及び発生頻度の1つ以上をECG情報と組み合わせて用いてもよい。
【0097】
ECG信号から判定される心拍数を、例えば、診断目的で心音情報と共に解析してもよい。高いECG心拍数が、正常な心拍数の心音と共に検出された場合には、そのECG信号には雑音が存在することが示されよう。高いECG心拍数が、変性した心音と共に検出された場合には、潜在的に致命的な不整脈が示されよう。なお、上述の例の心拍数を、ECGのモルフォロジー又は他の技術で置き換えることもできよう。また、心音を他のセンサから得た信号で置き換えることもできよう。例えば、インピーダンス、脈拍圧、血液量/流量又は心臓加速を用いることができよう。
【0098】
心音の検出には、様々なタイプの音響センサが用いられてよい。このような音響センサの例としては、ダイアフラムに基づく音響センサ、MEMSに基づく音響センサ(MEMSに基づく音響トランスデューサ等)、光ファイバ音響センサ、圧電センサ、アクセロメータに基づく音響センサ及びアレイが含まれる。これらのセンサは、心音と関連する音声周波数圧力波を検出するために用いられてもよく、また、他の非電気生理学的な心臓関連信号を検出するために用いられてもよい。
【0099】
患者の心臓パルス又は鼓動の存在は、患者の首を触診すること、及び、患者の心臓から供給される血液による患者の頸動脈の体積変化を感知することによって検出されるのが一般的である。図3の一番上には、連続した2つのパルス、即ち鼓動間の、患者の頸動脈の物理的な伸縮を表す頸動脈波信号810のグラフが示されている。鼓動において心臓心室が収縮すると、患者の末梢循環系の隅々まで圧力波が送られる。図3に示される頸動脈波信号810は、心収縮期における心室からの血液の拍出と共に上昇し、心臓からの圧力波が最大に達するときにピークに達する。各脈拍の終わりに向かって圧力が弱まると、頸動脈波信号810は再び低下する。
【0100】
鼓動の間の患者の心臓弁の開閉により、隣接した心臓壁及び血管に高周波振動が生じる。これらの振動は、患者の身体において心音として聞くことができ、上述したように、センサによって検出され得る。患者の表面に配置される従来の心音図(PCG)トランスデューサは、心音の音響のエネルギーを電気エネルギーに変換し、図3の中間部上寄りのグラフに示すように記録及び表示され得るPCG波形820を生じる。
【0101】
図3に示すPCG波形820で示されるように、典型的な鼓動は2つの主要な心音を生じる。S1で示される第1の心音830は、一般的に、心収縮期の最初の三尖弁及び僧帽弁の閉止と関連付けられる振動によって生じる。一般的に、心音830は約14ミリ秒の長さであり、最高約500Hzまでの周波数を含む。S2で示される第2の心音840は、一般的に、心収縮期の最後の大動脈弁及び肺弁の閉止から生じる振動と関連付けられる。第2の心音840の持続時間は、一般的に第1の心音830より短く、第2の心音840のスペクトルバンド幅は、一般的に第1の心音830のスペクトルバンド幅より大きい。
【0102】
心電図(ECG)波形850は、患者の心臓の電気的活動を記述するものである。図3の中間部下寄りのグラフは、2つの鼓動に対するECG波形850の例を示し、同じく図3に示される頸動脈波信号810及びPCG波形820と時間的に対応している。1番目に示されている鼓動を参照すると、心房筋線維の脱分極を表すECG波形850の部分は「P」波と呼ばれる。心室筋線維の脱分極は、ECG波形の「Q」「R」及び「S」波で集合的に表され、QRSコンプレックスと呼ばれる。最後に、心室筋線維の再分極を表す波形の部分は「T」波として知られている。鼓動間では、ECG波形850は等電位レベルに戻る。
【0103】
患者の経胸腔インピーダンス信号860の変動は、心臓の各脈波と共に生じる血流量と相関する。図3の一番下のグラフは、患者のフィルタ処理された経胸腔インピーダンス信号860の例を示しており、インピーダンスの変動は、同じく図3に示される頸動脈信号810、PCG波形820及びECG波形850と時間的に対応している。
【0104】
次に図4を参照すると、心音が関与する本発明の別の実施形態では、正常洞調律から不整脈を識別するために、このような音を用いてもよい。図4は、ECG信号850における連続した2つのPQRSコンプレックスと、それらと関連する、アクセロメータ信号835から生じた非電気生理学的な成分とを表すグラフである。本発明の一実施形態による、信号間の相関を評価するために用いられる検出窓870も示されている。図4に示すように、S1心音832及びS1心音834と、QRSコンプレックス852及びQRSコンプレックス854とは、それぞれ概ね密接に時間相関している。S1心音832、S2心音833、及びS1心音834は、体内に植え込まれたアクセロメータから検出されたものとして示されている。S1心音は心臓信号と密接に時間相関し得るが、雑音及びアーチファクト信号とは時間相関しない。このように、NSRから不整脈を識別するために、心音を用いてもよい。
【0105】
本発明による方法の一実施形態において、不整脈検出方法は、ECG信号を用いて検出窓を定める。次に、検出窓内の代替ソース信号を、心臓情報について評価する。代替ソース信号が、窓内に心臓イベントを含む場合には、その心臓イベントに対応するECG信号が確証される。これは、例えば、心拍数に基づく不整脈検出アルゴリズムにおいて、ECG情報のみを用いて計算された心拍数よりもロバストな心拍数を提供するために用いられ得る。このアルゴリズムは、例えば、関連付けられた代替(センサによって)感知された心拍動によってその心拍動が確証された場合に、その識別されたECGの心拍動のみを考慮してもよい。
【0106】
図1C及び1D図に示されるように、ITCS装置は、信号処理回路及び/又は信号処理ソフトウェアを含むよう実装されてもよい。引続き図4を参照すると、雑音の存在下におけるNSRからの不整脈の識別を提供するために、信号処理を用いて、S1心音等の心音を、R波のピーク又は他のQRSコンプレックスの特徴と相関させてもよい。
【0107】
図4に示す手法において、検査又は検出窓870は、QRSコンプレックス852のQ位置に基づく開始時間875に開始するよう定められる。次に、ITCSアルゴリズムは、S1心音832を求めて、検出窓870内のアクセロメータ信号835をサーチする。このアルゴリズムは、S1心音832のピーク振幅とQRSコンプレックス852のピークRとの時間相関を探してもよい。例えば、ECG信号850は、検査窓870の範囲内のR波ピーク856と、検査窓872の範囲内のR波ピーク858とを有する。検査窓870の範囲内のR波ピーク856は、検査窓870内においてECG信号850がS1心音信号832と時間相関していることを示す大きな相関値を生じる。同様に、検査窓872の範囲内のR波ピーク858は、検査窓872内においてECG信号850がS1心音信号834と時間相関していることを示す大きな相関値を生じる。心拍数は、例えば、QRSコンプレックス852、854と、それらと関連するS1心音832、834との大きな相関値を有する連続した心拍動の間で判定されてもよい。
【0108】
次に図5を参照すると、本発明による信号識別方法がフローチャート900に示されている。心電図信号902は、胸腔内ではない皮下位置で受け取られる。心電図信号902は、心臓信号と、雑音及び心電図上アーチファクトの一方又は両方とを含み得る。非電気生理学的心臓ソースと関連付けられた非電気生理学的信号904等の代替信号も受け取られる。代替信号は、非電気生理学的な性質の心機能情報(例えば心音情報、血流量情報、血中酸素情報、及び上述の他の代替センサからの情報)を提供する。心電図信号902及び非電気生理学的信号904の両方を用いて、図5のフローチャート900に示される幾つかの任意の経路を介して、正常洞調律と不整脈とを識別する。
【0109】
心電図信号902を用いて不整脈を検出してもよく、心電図信号902と非電気生理学的信号904との比較903を用いて不整脈の存在を確認してもよい。心電図信号902と非電気生理学的信号904との時間的関係は、例えば、心電図信号902のモルフォロジー907と非電気生理学的信号904のモルフォロジー909との比較905を用いて判定されてもよい。
【0110】
検出窓906は、心電図信号902の受け取りに応答して開始されてもよく、例えば相関911を用いて、非電気生理学的信号904が検出窓906の範囲内の時間に受信されたか否かを判定するために用いられてもよい。確認に用いられる検出窓906の開始時間は、心電図信号の変曲点(例えば、極大値、極小値、又は他の任意の適切なモルフォロジー属性)と関連付けられてもよい。
【0111】
心拍数は、一続きの心電図信号902及び一続きの非電気生理学的信号904の両方に基づいて計算されてもよい。正常洞調律と不整脈とを識別するために、ECG心拍数908及び信号速度916を用いてもよい。ECG心拍数908が不整脈閾値910と比較されてもよく、例えば、第1の心拍数は第1の不整脈閾値を越えるが、第2の心拍数の信号速度916は第2の不整脈閾値918を越えないことに応答して、不整脈の存在/不在を判定するために用いられてもよい。
【0112】
フローチャート900の任意の経路による、心電図信号902を用いた不整脈の検出と、例えば比較903、比較941及び/又は相関911を用いた不整脈の確認又は否認とに応答して、除細動治療の送出が阻止される場合(920)又は治療が行われる場合(921)がある。
【0113】
図6は、本発明の別の実施形態による、多パラメータ不整脈識別方法を示すフローチャートである。胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知すること(951)を含む不整脈識別方法950が示されている。非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた代替信号が受け取られ(952)、感知された心電図信号が心臓信号を含むか否かを判定するために確認される(953)。心臓不整脈は、感知された心電図信号及び確認された心臓信号の一方を用いて検出される(954)。感知された信号が心臓信号でない場合には、心臓不整脈の治療は保留される(955)。本実施形態及び他の実施形態による確認方法は、不整脈検出、確認及び治療法の決定の基礎となる感知された信号が確かに心臓信号であることを確実にすることにより、不必要な心臓ショックの送出を都合よく低減又は解消する。
【0114】
図7は、心電図1410及び代替信号を示すグラフであり、この代替信号は患者活動信号1420である。図7に示されるグラフは、本発明の一実施形態による閾値1450を含む。このグラフは、横軸として時間、縦軸として信号電圧レベルを含む。図7に示されるECG信号1410及び患者活動信号1420は、増幅されてフィルタリングされたものである。この例では、ECG信号1410及び患者活動信号1420は両方とも心臓電極から得られる。この場合、患者活動信号1420は、骨格筋活動を示す信号を提供するよう優先して配置された心臓電極構成から得られる。なお、患者活動信号1420はかなりのECG成分を含むが、筋運動は、少なくとも筋雑音検出窓1440内で明瞭に識別可能である。
【0115】
例えば、患者活動信号1420が閾値1450を越える場合の筋運動を、意識があって活発な患者を示すものと定義してもよい。閾値1450は、適応的であっても、動的であっても、又は固定されていてもよく、絶対値として、基線のパーセンテージとして、又は他の公知の信号モルフォロジーの方法論若しくは統計的な方法論を用いて定められてもよい。例えば、ECG信号1410は患者へのショックが必要な不整脈の発生を示しているが、患者活動信号1420は患者が移動可能で活発であることを示している場合には、ITCS装置のアルゴリズムは、患者の心臓へのショックを遅延1460のような所定時間だけ遅延させてもよい。
【0116】
遅延1460は、ECG信号1410に擬似信号が存在するか否か、又は患者にショックを与える必要が実際にあるか否かをITCS装置が評価する時間を提供する。遅延1460の持続時間は、最初の不整脈検出に続いて、検出された不整脈の存在を1つ以上の非心臓信号(例えば骨格筋信号や患者の運動の信号)を用いて確認するための更なる時間を、ITCS装置に提供するよう選択される。遅延期間1460は、検出された不整脈の再評価を可能にするよう、患者の健康を損なわない範囲で充分に持続すべきである。遅延1460の持続時間は、例えば2秒から60秒まで変動し得る。装置は、遅延時間が呼び出された際に通知を与えてもよい。
【0117】
遅延1460の経過後、ITCS装置は、患者へのショック送出の準備として除細動コンデンサへの充電を開始してもよく、ショック送出前に患者活動信号1420を再評価してもよい。ショック時間1470におけるショック送出前に患者の活動ステータスを判定するために、患者活動信号1420が再評価される。
【0118】
図7のグラフに示されているショック時間1470では、患者活動信号1420は閾値1450を下回っており、患者がもはや活発でないことを示している。これは、患者が不十分な血液供給に屈したためであるかもしれず、意識不明である可能性がある。明らかにショック1470が示唆され、この場合には、患者を蘇生させるためにショック1470が送られる。しかし、ショック時間1470におけるECG信号1410が、不整脈が終わったことを示す場合には、患者活動信号1420のステータスに関わりなく、患者へのショックは送られない。
【0119】
遅延1460は、検出された不整脈の重症度に応じて選択的に用いられるような、階層的な方法で用いられてもよい。例えば、ECG信号1410が危険又は生命を脅かす不整脈の存在を明らかに示す場合には、遅延1460をバイパスして、患者に直ちにショックを与えてもよい。しかし、ECG信号1410が、確定的でないが、不整脈の可能性を示す場合には、患者活動信号1420を評価できるように、不整脈治療の送出が遅延される。
【0120】
図8は、皮下の骨格筋信号検出をECG又はEGMに基づく律動検出と組み合わせて用いる1つの方法に関連する様々な処理を示す。心電図に基づくアルゴリズム等といった他の不整脈検出手段を用いた後に、骨格筋信号検出回路を使用可能にしてもよい。エネルギーを節約するために、例えば、骨格筋信号検出は、心臓信号検出回路を用いて不整脈を検出した後に起動されてもよく、不整脈治療の送出後又は不整脈が止まった後で、停止させてもよい。このように、骨格筋信号検出を用いて雑音から不整脈イベントを識別することにより、不適切なショック送出の発生を低減でき、患者の快適さを大きく改善する可能性が提供される。
【0121】
引続き図8を参照すると、本発明の一実施形態に従って心臓不整脈を検出するために、ECGに基づく検出アルゴリズム600が用いられる。ECGに基づく検出601を用いて、心室性不整脈が検出された(602)場合には、骨格筋信号の状態を判定するためにチェック604が行われる。骨格筋信号の現在状態が未知であるか又は利用できない場合には、骨格筋信号が取得される(606)。これには、骨格筋センサ又は検出回路を作動させる(すなわち電源投入する)ことが含まれてもよい。
【0122】
閾値に対する骨格筋信号の比較607が患者の無活動を示す場合には、除細動コンデンサが充電され(608)、不整脈を治療するためにショックが送られる(610)。しかし、閾値に対する骨格筋信号の比較607が患者の活動又は意識を示す場合には、遅延期間が開始され、遅延期間の満了後に心電図信号の再確認614が行われる。前にブロック606で骨格筋信号をチェックした後に、心電図信号が心室性不整脈の継続的な存在を示唆又は確認する場合には、除細動コンデンサが充電され(608)、ショックが送られる(610)。
【0123】
この例示的な手法では、確認された心室性不整脈の治療が過度に遅れないように、骨格筋信号を用いた、検出された心室性不整脈の再評価は、一回だけ行われる。なお、ショック送出前にコンデンサを充電する間に、心室性不整脈再確認ルーチンが実行されてもよい。
【0124】
本発明の別の実施形態では、不整脈の識別及び確認のための代替信号を提供するために、血液センサが用いられる。心電図信号は、しばしば、真の心臓信号及び様々な不整脈に似た雑音信号及びアーチファクトを含む。本発明に従い、代替センサとして血液センサを用いることにより、様々な雑音を含む状態から真の不整脈状態を識別する能力が提供される。さらに、本発明による代替センサとして血液センサを用いることにより、不整脈検出及び治療送出判定の基礎になる信号が、真の心臓信号の特徴に類似した特徴を有し得る擬似信号ではなく、心臓信号(例えばQRSコンプレックス)を含むことを確認する能力が提供される。
【0125】
ITCS装置は、皮下電極によって感知される心臓のECG信号の雑音除去を改善するための、多パラメータ心臓信号確認能力及び/又は不整脈識別能力を含むよう実装されてもよい。この雑音除去/低減手法は、多パラメータ不整脈識別を提供することにより、検出アルゴリズムで偽陽性が生じるリスクを都合よく低減する。
【0126】
例えば、代替信号を用いて、ECG信号がQRSコンプレックスを有する心臓信号を含むことと、QRSコンプレックスを有するECG信号のみが確認されたECG信号であると見なされることとを確認してもよい。それに続く心律動解析(特に不整脈解析を含む)は、例えば、このような解析に用いられる心拍数の計算に、確認されたECG信号のみが用いられることを要求してもよい。この心臓信号確認技術は、電気的干渉及び雑音が混入しにくい、よりロバストなアルゴリズムを提供することにより、頻拍性不整脈治療の不適切な送出の発生を低減する。
【0127】
心臓信号確認の1つの手法は、心電図信号と代替信号との時間的な関係を判定することを含む。検出窓は、例えば、心電図信号の検出に応答して開始されてもよく、代替信号が検出窓の範囲内の時間に受け取られたか否かを判定するために用いられてもよい。例えば、1つの不整脈検出手法では、ECG信号を用いて検出窓を定める。次に、検出窓内の血液センサ信号等といった非電気生理学的ソース信号を、心臓情報について評価する。非電気生理学的ソース信号が窓内の心臓イベントを含む場合には、その心臓イベントに対応するものとしてECG信号が確証される。これは、例えば、心拍数に基づく不整脈検出アルゴリズムにおいて、ECG情報のみを用いて計算した心拍数よりロバストな心拍数を提供するために用いられてもよい。心拍動が、それと関連付けられた非電気生理学的に感知された心拍動によって確証される場合には、このアルゴリズムは、例えば、この識別されたECG心拍動のみを考慮してもよい。
【0128】
心拍数は、例えば、一続きの心電図信号及び一続きの代替信号に基づいて計算されてもよい。これらの心拍数は、正常洞調律と不整脈とを識別するために用いられてもよい。これらの心拍数は不整脈閾値と比較されてもよく、例えば、第1の不整脈閾値を越える第1の心拍数及び第2の不整脈閾値を越えない第2の心拍数に応答して、不整脈の不在を判定するために用いられてもよい。不整脈の存在は、心電図信号のモルフォロジーを用いて判定されてもよく、次に、代替信号を用いて確認されてもよい。
【0129】
本発明の別の実施形態では、心電図信号を用いて不整脈を検出したが、代替信号(例えば血液センサ信号)を用いると不整脈が検出されないことに応答して、除細動治療の送出が阻止又は保留されてもよい。不整脈の感知及び治療の阻止を行う方法は、胸腔内ではない皮下位置において心電図信号を感知することを含んでよい。検出窓は、心電図信号から決定される開始時間によって定められてもよい。検出窓内において、非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた信号を受け取って評価してもよい。心臓不整脈の存在又は不在は心電図信号を用いて判定されてもよく、非電気生理学的な心臓信号によって検出された心臓不整脈の存在によって確認されてもよい。確認に用いられる検出窓の開始時間は、心電図信号の変曲点(例えば極大値又は極小値)と関連付けられてもよい。心電図信号と非電気生理学的な心臓信号との間の相関を行ってもよい。
【0130】
一実施形態によれば、電気雑音又はアーチファクトの存在下で様々な心律動を検出する際の雑音識別を補助する代替信号を提供するために、光電脈波法が用いられる。この付加的な識別信号は血中酸素レベル又は拍動血液量レベルに基づくものであり、電気的心臓信号には基づかないので、この信号は、たとえ電気雑音の存在下でも、患者の律動状態又は血流動態に関する情報を提供し得る。
【0131】
血中酸素測定の検出のために皮下センサを用いてもよい。このようなセンサの1つは、例えばパルス酸素測定センサである。心室性頻拍症や心室細動等の潜在的に致命的な不整脈から、電気雑音を伴う正常洞調律を識別するために、心拍数、曲率及び他のECG情報と共に、血中酸素レベル情報を用いてもよい。ITCS装置は、識別のために、典型的なECG情報と組み合わせた血中酸素情報の特性を利用してもよい。
【0132】
本発明の一実施形態によれば、心律動の検出及び/又は確認のための代替信号として、非電気生理学的な心臓信号を生成するために、皮下光電脈波法を用いてもよい。この特徴は、特に電気雑音の存在下で心律動又は血液動態を検出するための、皮下ICDシステム(例えばITCS装置)の一部として、心電図に対する代替又は付加的な信号として、皮下光電脈波を用いる。
【0133】
植え込み型電気除細動器/細動除去器によって検出された患者の心臓不整脈を確認するために、皮下で光電脈波法を用いてもよい。植え込み型電気除細動器/細動除去器用に患者の血流動態を特徴づけるために、皮下光電脈波法を用いてもよい。例えば、皮下光電脈波法を用いて、後負荷を評価してもよい。後負荷とは、左心室の収縮開始後に左心室にかかる収縮期負荷である。後負荷に関連する抵抗は、各心拍動の間に血管系に血液の塊を押し込む際の、血管系の抵抗力から生じる。高血圧や大動脈弁狭窄症は、後負荷の慢性的な増加を生じる場合があり、これは、左心室肥大や、それに続く心不全に至る場合がある。
【0134】
更に、植え込み型電気除細動器/細動除去器用の患者の酸素飽和の変化に関連する特性を測定するためのパルス酸素測定のために、皮下の光電脈波法を用いてもよい。一般的には、他の検出アルゴリズムを用いた後の不整脈の確認にのみ光電脈波法を用いる等というように、光電脈波法の全体的なエネルギーを低減することが望ましい。
【0135】
1つの特定の手法では、心律動解析に用いられる心臓信号が、骨格雑音信号等の擬似信号ではなく、本当に心臓信号であることを確認又は証明するために、皮下光電脈波を用いる。例えば、皮下光電脈波を用いて、頻拍性不整脈治療の送出の決定を行うために用いられる心臓信号が患者の実際の心律動を示す心電図であることを確認してもよい。この手法によれば、皮下光電脈波は、主として、不整脈解析及び治療送出判定に用いられる信号が本当に心臓信号であることを確認するために用いられる。これは、不整脈の有無を別途確認するためにこの信号を用いることとは別である。しかし、皮下光電脈波が、この信号を心臓信号の確認のために用いることとは別に、又はそれに加えて、不整脈の有無を別途確認するための信号として用いられてもよいことを理解されたい。
【0136】
例えば、制御システムプロセッサは、不整脈の存在の検出に用いられるECG信号が心臓信号(例えばQRSコンプレックス)を含むことが、光電脈波信号を用いて確認されるまで、頻拍性不整脈治療の送出を阻止してもよい。プロセッサは、例えば、頻拍性不整脈治療の送出を所定時間だけ阻止してもよく、その間、検証プロセスを実行し、このような検証プロセスが不成功だった場合、又は不整脈の停止に応答して、所定時間の満了時に頻拍性不整脈治療の送出を保留する。プロセッサは、検証プロセスの良好な結果に応答して、頻拍性不整脈治療を送ってもよい。また、プロセッサは、検証プロセスに関わりなく、生命を脅かす不整脈の検出に応答して、頻拍性不整脈治療を直ちに送ってもよい。
【0137】
皮下光電脈波法の使用により、幾つかの利点が達成され得る。例えば、ショックの特異度を向上させることによって不適切なショックの回数を低減するために、皮下光電脈波法を用いてもよい。血液灌流のレベル又は血液灌流の相対変化に基づく心室性不整脈の確認に備えるために、皮下光電脈波法を用いてもよい。更に、非電気的な光に基づく(non-electric photo-based)検出法を用いることによって、心電図に基づくアルゴリズムを補うために、皮下光電脈波法を用いてもよい。また、不整脈の再検出及び再確認のために、皮下光電脈波法を用いてもよい。
【0138】
図9〜図14は、心律動の検出及び/又は確認のために用いられる代替信号を提供する皮下の血液感知の使用と関連する、様々な実施形態及びプロセスを示す。図9は、皮下心臓刺激器511(例えばITCS装置)での使用に適した光電脈波感知システム500の1つの実装例を示す。
【0139】
図9は、皮膚530の層と筋組織540の層との間で配向された皮下光電脈波のセンサ520の配備を示す。図9の説明的な例は、光源550(すなわちLED)と、筋組織540に面した検出器560とを示している。この配向は、周囲光源からの干渉を都合よく低減し、特に、検出器560に光を案内するための不透明バリア570を用いた場合には、脈波上の雑音アーチファクトが低減される。他の構成は、光源550と、皮膚の側又は皮膚に面した検出器560とを有してもよい。
【0140】
心臓刺激器511が解釈不能な心電図に遭遇した場合に、又は、血流力学的に不安定な不整脈の検出を確認するために、光源550が起動され、光検出器560の出力が同期測定される。次に、光電脈波から脈拍数を判定し、治療判定を知らせるために、心臓刺激器511のアルゴリズムが呼び出される。この信号からの測定値を、心電図雑音識別及び/又は不整脈検出アルゴリズムに知らせる、又はこのアルゴリズムを適応させるために用いてもよい。
【0141】
この実施形態による皮下光電脈波法の使用は、電気雑音又はアーチファクトの存在下における心律動の検出を都合よく提供する。光電脈波は光学信号であるので、ECGと同じ雑音源の影響を受けにくいという点で、このアルゴリズムはロバストである。
【0142】
分解図580は、光源550から検出器560に至る光路570を示す。筋組織540内の血液の灌流は、光路570に沿って組織540から検出器560へと反射される光の特性に影響を及ぼし、血中酸素飽和レベル、血液量、脈拍、及び他の血液特性等といった血液情報を提供する。
【0143】
図10に示される実装例は光源回路515を含み、光源回路515は、赤色LED535及び赤外線(IR)LED545のそれぞれに接続されたLED制御525を含む。2つの光源及び1つの検出器を用いて、組織542内の酸素飽和レベルの変化を測定してもよい。一般的に、一方の光源(例えば960nmまでの波長で発光するIR LED545)は血液の色の変化に概ね影響を受けない吸収特性を有し、他方の光源(例えば660nmまでの波長で発光する赤色LED535)は血液の色の変化に影響される吸収特性を有する。灌流が低い領域では、反射率を用いて酸素飽和度の絶対値を計算する際に誤差が生じ得るので、図10〜13図に示される実施形態は、酸素飽和の絶対レベルではなく、変化のみをモニタリングする。血液の酸素飽和の変化からの情報は、潜在的に致命的な不整脈と雑音アーチファクトとを識別するのに十分である(この雑音アーチファクトは、識別を行わない場合には患者の不必要なショック治療につながり得る)。
【0144】
引き続き図10を参照すると、光検出回路555は、フォトダイオード576に接続される検出器565を含む。この構成では、処理回路575は、光源回路515及び光検出回路555に接続される。処理回路575は、LED制御525及び検出回路555に接続されたマルチプレクサ585を含む。マルチプレクサ585と信号処理回路要素575との間には、赤色信号チャネル586及びIR信号チャネル587がそれぞれ接続される。信号処理回路575は、赤色信号チャネル586及びIR信号チャネル587から受け取った信号を操作し、不整脈検出及び確認を含む心律動検出及び/又は確認のために、様々なアルゴリズムを用いてこのような信号を評価する。
【0145】
拡大図582は、検出器562に至る第1の光源552からの光路572及び第2の光源554からの光路574を示す。筋組織542内の血液の灌流は、組織542から検出器562まで光路572及び光路574に沿って反射される光の特性に影響を及ぼし、血中酸素飽和レベル、血液量、脈拍、又は他の血液特性等といった血液情報を提供する。
【0146】
図11及び図12は、生きた豚の被検体から得たデータのグラフであり、本発明の一実施形態に従い、正常洞調律と不整脈とを区別するために心電図法と光電脈波法とを組み合わせた一例を示す。図11は、正常洞調律状態730及び心室細動状態740に対する、2秒間にわたって示された心電図700及び光電脈波710を示す。図12は、正常洞調律762の後に心室細動事象764が続く38秒間の期間780における、心電図760及び時間相関した光電脈波770を示す。図11及び図12は、正常洞調律730、762が心室細動740、764状態に移ると、心電図700、760及び光電脈波710、770の特性が大きく変化することを示している。
【0147】
再び図11を参照すると、正常洞調律730のグラフと心室細動740のグラフとはスケールが異なることを留意されたい。心室細動740の光電脈波710は、正常洞調律730の光電脈波710と同等に見えるが、心室細動740のグラフの光電脈波710のピーク間振幅は、正常洞調律730のグラフの光電脈波710のピーク間振幅よりかなり小さい。心室細動740のグラフの縦軸スケールは、正常洞調律730のグラフの縦軸スケールと等しい。
【0148】
次に図12を参照すると、RMS血中酸素レベル772は正常洞調律762に対応し、RMS血中酸素レベル774は心室細動事象764に対応する。閾値776は予め決められてもよく、又は、正常洞調律762と心室細動事象764との区別を補助するために適応的に調整されてもよい。正常洞調律762と心室細動事象764との間の時間は、心室細動764を意図的に誘発する間の心電図データの損失760を示す。
【0149】
図13Aは、本発明の一実施形態による光電脈波回路のLED電流源部1810の概略図である。図13Aに示すように、電流源部1810は定電流源として構成されており、ソースLED回路1811を用い、例えば、1msの周期及び0.1msのパルス幅を有する駆動パルス1813を生じ得る発振器1812によって駆動される。
【0150】
図13Bは、本発明の一実施形態による光電脈波回路の光検出器部1820の概略図である。図13Bに示される検出器部は、フォトダイオード1821と、光電流−電圧増幅器1822と、高域フィルタ1823と、電圧積分器1824と、低域フィルタ1825とを含む。図13A及び図13Bに示される回路は、図12に示される信号770のような光電脈波信号を提供するために有用である。
【0151】
図14は、心電図に基づく律動検出と組み合わせて皮下光電脈波を利用する1つの方法と関連する、様々な処理を示す。図14に示される方法は、エネルギー利用に関する詳細を提示する。光電脈波回路は、心電図に基づくアルゴリズム等の他の不整脈検出法が用いられた後にのみ、使用可能にされてもよい。エネルギーを節約するために、潜在的なショック送出の前にのみ光電脈波法を用いてもよい。光電脈波の使用が終わったら、回路を使用不能にしてもよい。1つの実装例によれば、光電脈波法を10秒間用いる場合に必要な更なるエネルギーは約0.5ジュールである。このエネルギーは、除細動に用いられるエネルギー(>5ジュール)と比較して非常に低い。従って、光電脈波法を用いて、心電図で識別された1つの不整脈事象を雑音として識別することにより、4.5ジュール以上の節約となる可能性がある。なお、不必要なショックをなくすことにより、ITCSの使用寿命が延長されると同時に、患者の快適さが改善される。
【0152】
図14を参照すると共に、図11及び図12を更に参照すると、心臓不整脈を検出するために、ECGに基づく検出アルゴリズム1600が用いられる。ECGに基づく検出1601を用いて、心室性不整脈が検出される(1602)と、光電脈波がチェックされたか否かを確かめるために判定1604が行われる。取得した光電脈波のチェック1606が行われる。
【0153】
例えば閾値1607を用いる等して、光電脈波が心室性不整脈の存在を示唆又は確認した場合には、除細動コンデンサが充電され(1608)、ショックが送られる(1610)。なお、コンデンサ充電の間、ショック送出前に、心室性不整脈再確認ルーチンが実行されてもよい。光電脈波信号が、例えば図12に示される閾値のような所定の閾値1607を越えている場合には(なお、この比較には光電脈波のRMSレベルを用いてもよい)、所定時間後にECG信号の再チェック1614が行われる。
【0154】
図14に示される方法では、光電脈波信号を生成する光電脈波センサは、選択的に電源投入及び電源切断されてもよい。例えば、光電脈波センサは、図14のブロック1601及び1602等においてECG信号を用いて頻拍性不整脈が検出されるまでは、電源切断状態であってもよい。光電脈波センサは、心臓信号及び/又は不整脈検出検証プロセスが完成するまでは、電源投入されたままであってもよい。例えば、光電脈波センサは、ブロック1606及び1607と関連付けられた処理の完了後、ブロック1608で除細動コンデンサが充電される前(コンデンサを完全に充電するには約20秒間かかり得る)に、電源切断されてもよい。
【0155】
本願明細書に記載した心臓信号識別へのアプローチは、心臓信号の存在確認、不整脈及びそれに関連するECG信号の識別及び/又は確認を含む様々な目的のための代替信号の使用を含む。本発明の態様を用いたITCS装置は、バッチモードで、又は適応的に動作してもよく、オンライン又はオフラインの実装を可能にする。電力を節約するために、このシステムは、収集された信号中の不整脈の存在又は雑音を識別して、本発明に従って心臓信号識別法を賢明にオン/オフするために、当該技術分野で周知のアルゴリズムを用いる階層的決定ルーチンのためのオプションを含んでもよい。
【0156】
上述した好ましい実施形態には、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更及び追加が行われ得る。従って、本発明の範囲は、上述した特定の実施形態によって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びその均等物のみによって定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1A】本発明の一実施形態による、患者に植え込まれた経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置を示す図である。
【図1B】本発明の一実施形態による、患者に植え込まれた経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置を示す図である。
【図1C】本発明の一実施形態による、経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置の様々な構成要素を示すブロック図である。
【図1D】本発明の一実施形態による、経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置の様々な処理及び検出要素を示すブロック図である、
【図1E】本発明の一実施形態による、ITCS装置の様々な構成要素の1つの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による、電極アレイを含む経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置の構成要素を示す図である。
【図3】連続した2つの鼓動に対する、頸動脈脈拍波形、心音図(PCG)波形、心電図(ECG)波形、及び、フィルタリングされた経胸腔インピーダンス信号を示す図である。
【図4】連続した2つのPQRSコンプレックスと、それらに関連する疑似アクセロメータ信号と、本発明の一実施形態による信号相関のための検出窓とを示すグラフである。
【図5】本発明による多パラメータ不整脈識別方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明による多パラメータ不整脈識別方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態による、閾値を含む心電図信号及び骨格筋信号のグラフである。
【図8】本発明の一実施形態による不整脈識別方法のフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による、皮下に植え込まれた光電脈波法機能を有するICDの平面図である。
【図10】本発明の一実施形態による2色光電脈波システムを示すブロック図である。
【図11】正常洞調律の信号対心室性細動の信号を示すグラフである。
【図12】正常洞調律におけるRMS光電脈波レベル対心室細動におけるRMS光電脈波レベルを示すグラフである。
【図13A】本発明の一実施形態によるLED伝達回路及びLED検出回路の回路図である。
【図13B】本発明の一実施形態によるLED伝達回路及びLED検出回路の回路図である。
【図14】本発明の一実施形態による不整脈識別方法のフローチャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、植え込み型の心臓モニタリング及び刺激装置に関し、より具体的には、心電図情報及び代替センサからの情報を用いた多パラメータ不整脈識別に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な心臓は、規則的な同期収縮を生じる。心臓の律動的な収縮は、通常、右心房上部に位置する特殊化した細胞群である洞房(SA)結節によって制御される。SA結節は心臓の通常のペースメーカーであり、1分間につき60〜100回の鼓動を起こさせるのが一般的である。SA結節が心臓の速度を正常にペーシングしている場合には、心臓は正常洞調律にあると言わる。
【0003】
心臓の電気的活動が不調和又は不規則である場合には、心臓は不整脈であることが意味される。心臓不整脈は心臓効率を損ない、潜在的に生命を脅かす事象となり得る。心臓不整脈には多くの病因源があり、それには、心筋梗塞による組織損傷、感染、又は、収縮を調整する電気的インパルスを発生又は同期させる心臓機能の低下が含まれる。
【0004】
心臓の律動が過度に遅いと徐脈が生じる。この状態は、例えば、SA結節の機能が損なわれること(洞機能不全症候群を意味する)によって、又は、心房−心室間の電気的インパルスの伝播遅延又は遮断によって生じ得る。徐脈は、十分な血行を維持できない過度に遅い心拍数を生じる。
【0005】
心拍数が過度に速い状態は、頻拍を意味する。頻拍の原因は、心房又は心室にあり得る。心臓の心房で生じる頻拍には、例えば、心房細動及び心房粗動が含まれる。これらの状態は、心房の急激な収縮を特徴とする。心房の急激な収縮は、血流力学的に非効率であるのみならず、心室拍動数にも悪影響を与え得る。
【0006】
例えば、心室の心筋層において、正常洞調律より速い心拍数で電気的活動が起こると、心室性頻拍症が生じる。心室性頻拍症は、急速に心室細動に変質し得る。心室細動は、心室組織内における極端に速く不調和な電気的活動によって意味される状態である。心室組織の急速且つ不規則な興奮によって、同期収縮が阻害され、身体に効果的に血液を供給する心臓の機能が損なわれる。この状態は、心臓が2、3分以内に洞律動に戻されない限り致命的である。
【0007】
重症不整脈患者に対する効果的な治療として、植え込み型心律動管理システムが用いられている。これらのシステムは、一般的に、心臓の1つ以上の内面及び/又は外面から信号を感知するための、1つ以上のリード及び回路を含む。このようなシステムは、心臓の1つ以上の内面及び/又は外面において心組織に与えられる電気パルスを生成する回路も含む。例えば、心臓の電気信号を感知し、不整脈を治療するための様々な治療法に従ってパルスを心臓に送るために、患者の心臓内に延びるリードが、心筋層と接触する電極に接続される。
【0008】
典型的な植え込み型除細動器(ICD)は、1つ以上の心内膜リードを含み、リードには少なくとも1つの除細動電極が接続される。このようなICDは、心臓に高エネルギーのショックを送ることができ、心室の頻拍性不整脈や心室細動を止め、心臓が正常洞調律を再開できるようにする。ICDは、ペーシング機能を更に含んでもよい。
【0009】
ICDは突然心臓死(SCD)の防止に非常に効果的であるにもかかわらず、SCDの危険にさらされている大部分の人々には植え込み型除細動器が提供されていない。この残念な現実の主な理由としては、リード/電極の経静脈植え込み法を行う能力がある医師の数が限られていること、このような心手技に対応する十分な装備を有する外科施設の数が限られていること、及び、必要な心内膜又は心外膜リード/電極植え込み治療を安全に受けられる、危険な状態の患者数が限られていることが含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、一般的に、経胸腔モニタリング、除細動治療、ペーシング治療又はこれらの機能の組合せを提供する、心臓モニタリング及び/又は刺激方法及びシステムに関する。本発明の複数の実施形態は、心臓活動又は不整脈を検出及び/又は治療する皮下心臓モニタリング及び/又は刺激の方法及びシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の複数の実施形態は、胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することを含む不整脈識別方法に関する。心電図信号は、心臓信号と、雑音及び心電図上アーチファクトの一方又は両方とを含み得る。代替センサと関連付けられた信号も受け取られる。
【0012】
代替センサは、非電気生理学的な心臓センサ、血液センサ、患者活動センサ、インピーダンスセンサ、脈波センサ、血中酸素センサ、経胸腔インピーダンスセンサ、血量センサ、音響センサ及び/又は圧力トランスデューサ、並びにアクセロメータを含むが、これに限定されるものではない。感知された心電図信号は、代替信号を用いて、心臓信号であることが確認される。心臓不整脈は、感知された心電図信号及び確認された心臓信号の一方又は両方を用いて検出される。感知された信号が心臓信号であることが確認されない場合には、心臓不整脈の治療は保留される。
【0013】
心電図信号を用いて不整脈が検出されてもよく、代替信号を用いて不整脈の存在が確認又は否認されてもよい。心電図信号と代替信号との時間的関係が判定されてもよい。心電図信号の受け取りに応答して検出窓が開始されてもよく、代替信号が検出窓の範囲内の時間に受け取られたか否かを判定するために用いられてもよい。
【0014】
一続きの心電図信号及び一続きの代替信号に基づいて、心拍数が計算されてもよい。心拍数は、正常洞調律と不整脈とを識別するために用いられてもよい。心拍数は、不整脈閾値と比較されてもよく、例えば、第1の不整脈閾値を越える第1の心拍数及び第2の不整脈閾値を越えない第2の心拍数に応答して、不整脈の不在を判定するために用いられてもよい。不整脈の存在は、心電図信号のモルフォロジーを用いて判定されてもよく、次に、代替信号を用いて確認されてもよい。非電気生理学的な代替信号の例には、心音信号、心臓活動を示す亜音速音響信号、脈拍圧信号、心臓活動を示すインピーダンス信号、及びパルス酸素測定信号が含まれる。
【0015】
本発明の別の実施形態では、心電図信号を用いた不整脈の検出及び代替信号を用いた不整脈の非検出に応答して、除細動治療の送出が阻止されてもよい。不整脈を検出しても治療を阻止する方法は、胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することを含んでもよい。検出窓は、心電図信号から判定される開始時間によって定められてもよい。非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた信号が受け取られてもよく、検出窓内で評価されてもよい。
【0016】
心臓不整脈の存在又は不在は心電図信号を用いて判定されてもよく、非電気生理学的な心臓信号によって検出された心臓不整脈の存在によって確認されてもよい。確認に用いられる検出窓の開始時間は、心電図信号の変曲点(例えば極大値又は極小値)と関連付けられてもよい。心電図信号と非電気生理学的な心臓信号との間の相関が行われてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態は、胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成されたハウジング及び電極装置を含む植え込み型心臓装置に関する。ハウジング内には検出回路が設けられ、電極構成に接続される。検出回路は、心臓信号と雑音及び心電図上アーチファクトの一方又は両方とを含む心電図信号を検出するよう構成される。
【0018】
検出回路には、非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた代替信号を感知するよう構成されたセンサが接続される。ハウジング内にはプロセッサが設けられ、検出回路、センサ及びエネルギー送出回路に接続され、心電図及び代替信号を用いて正常洞調律と不整脈とを識別する。プロセッサは、非電気生理学的な信号を用いて、感知された心電図信号が心臓信号であることを確認する。感知された信号が心臓信号を含むことが確認されない場合には、プロセッサは心臓不整脈の治療を保留する。
【0019】
エネルギー送出回路は、除細動治療回路及びペーシング治療回路の一方又は両方を含んでもよい。センサはハウジングの内部又は表面に設けられてもよく、ハウジングに接続されるリードの内部又は表面に設けられてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、医療システムはハウジングを含み、該ハウジング内にはエネルギー送出回路及び検出回路が設けられる。エネルギー送出及び検出回路には1つ以上の電極が接続され、心臓及び筋肉活動を感知するために用いられる。ハウジング内にはプロセッサが設けられ、エネルギー送出及び検出回路に接続される。プロセッサは、感知された心臓活動から生成される心臓信号を用いて心室性不整脈を検出してもよく、感知された筋肉活動から生成される活動信号を用いて患者の活動状態を検出してもよい。プロセッサは、筋活動信号に応答して、不整脈を治療するための治療の送出を変更してもよい。
【0021】
本発明の別の実施形態では、プロセッサは、患者の意識又は運動を示す活動閾値を越える活動信号に応答して、不整脈治療の送出を阻止する。プロセッサは、活動閾値を越える活動信号に応答して、不整脈治療の送出を所定時間だけ阻止してもよく、所定時間が満了し且つ不整脈が停止した場合には、不整脈治療の送出を保留してもよい。プロセッサは、生命を脅かす不整脈の検出に応答して、活動信号に関わりなく不整脈治療を直ちに送出してもよい。
【0022】
別の実施形態では、プロセッサは、検出回路から心電図を受け取ってもよく、筋肉信号を検出するよう構成された電極装置を用いて心電図から心臓信号と活動信号とを識別してもよい。
【0023】
本発明による方法は、1つ以上の電極を用いて信号を検出することと、検出された信号から心臓信号を識別することとを含む。検出された信号からは、患者の活動と関連付けられた活動信号も識別される。心臓信号を用いて不整脈を検出してもよく、活動信号を用いて患者の活動レベルを検出してもよい。活動信号に応じて不整脈を治療するために、不整脈治療が修正されてもよい。患者の意識又は運動を示す信号を用いた、活動閾値を越える活動信号に応答して、不整脈治療の送出が阻止されてもよい。活動閾値を越える活動信号に応答して、不整脈治療の送出が所定時間だけ阻止されてもよく、所定時間が満了し且つ不整脈が停止した場合には、不整脈治療の送出が保留されてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、医療装置は、胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成されたハウジングを含む。ハウジング内には検出回路が設けられ、電気生理学的心臓信号を生成するよう構成される。ハウジング内にはエネルギー送出回路も設けられる。検出及びエネルギー送出回路には、胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成された少なくとも1つの電極が接続される。この装置には、血液センサ信号を生成するよう構成された植え込み型血液センサも設けられ、ハウジング内に設けられたプロセッサに接続される。プロセッサは、検出及びエネルギー送出回路にも接続され、電気生理学的心臓信号及び血液センサ信号を用いて心律動を評価するために用いられる。1のアプローチでは、プロセッサは、電気生理学的心臓信号が心臓信号を含むことを確認するために血液センサ信号を用いるよう構成されると共に、血液センサ信号と心臓信号を含む電気生理学的心臓信号とを用いて心律動を評価するよう構成される。
【0025】
血液センサは、胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成されてもよく、ハウジングの内部又は表面に設けられてもよく、ハウジングに接続されたリード表面に設けられてもよく、ハウジングとは別個に設けられて有線又は無線リンクを介してプロセッサに接続されてもよい。血液センサは、血中酸素飽和センサ又はパルス酸素濃度計等といった、光学信号感知を行うよう構成されたセンサを含んでもよい。適切なパルス酸素濃度計は、2つの発光ダイオード及び1つの光検出器を含んでもよい。光検出器は、信号の変動を考慮するよう周期的に調整される検出閾値を有する回路を含んでもよい。
【0026】
別の構成では、適切なパルス酸素濃度計は、約550ナノメートルと約750ナノメートルとの範囲内のピーク発光波長を有する第1の発光ダイオードと、約750ナノメートルと約1050ナノメートルとの範囲内のピーク発光波長を有する第2の発光ダイオードとを含んでもよい。血液センサとして、光電脈波法回路が含まれてもよく、プロセッサに接続されてもよい。プロセッサは、電気生理学的心臓信号及び血液センサ信号を用いて、頻拍性不整脈である心律動を識別してもよい。
【0027】
プロセッサは、電気生理学的心臓信号と血液センサ信号の相対変化とを用いて、頻拍性不整脈である心律動を識別してもよく、頻拍性不整脈の検出に応答して、血液センサを選択的に起動及び停止させてもよい。プロセッサは、電気生理学的心臓信号を用いて血液センサを起動させてもよく、電気生理学的心臓信号及び血液センサ信号を用いて頻拍性不整脈を評価してもよい。プロセッサは、電気生理学的心臓信号及び血液センサ信号を用いて、頻拍性不整脈の存在を更に確認又は否認してもよい。
【0028】
装置は、頻拍性不整脈を治療するために治療を送出してもよく、プロセッサは、治療の送出前又は送出後に血液センサを停止させてもよい。プロセッサは、電気生理学的心臓信号及び血液センサ信号を用いて、血液動態を判定してもよい。プロセッサは、電気生理学的心臓信号を用いた識別不能な心律動の検出に応答して、血液センサ信号を用いて識別不能な心律動の識別を容易にするために血液センサを起動させてもよい。プロセッサは、例えば血液センサ信号のモルフォロジーを解析することによって、心機能、酸素飽和及び酸素飽和の変化、及び/又は後負荷を評価するために、血液センサ信号を用いてもよい。
【0029】
本発明による律動評価方法の実施形態は、胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することと、胸腔内ではない皮下の感知位置から血液感知信号を取得することとを含んでもよい。心電図信号及び血液センサ信号を用いて心律動が評価されてもよい。1のアプローチは、心電図信号が心臓信号を含むことを確認することと、血液感知信号と心臓信号を含む心電図信号とを用いて心律動を評価することとを含む。心電図信号及び血液感知信号の一方又は両方を用いて、例えば、心拍数に基づく解析やモルフォロジーに基づく解析を行うことによって、頻拍性不整脈が検出されてもよい。
【0030】
複数の電極を用いて心電図信号の活性化パターンが解析されてもよく、血液感知信号を用いて頻拍性不整脈の存在を確認した後に、検出された頻拍性不整脈が治療されてもよい。血液感知信号を用いて、頻拍性不整脈と雑音とが識別されてもよい。心律動を評価することは、心電図信号と血液感知信号との間の相関を行うこと(又は伝達関数を計算すること)によって心臓不整脈を検出することを含んでもよい。血液感知信号を取得することは、血液感知信号を生成する血液センサを選択的に電源投入及び電源切断することを含んでもよい。
【0031】
心律動を評価することは、心電図信号を用いて頻拍性不整脈を検出することと、血液感知信号を生成する血液センサに電源投入することと、血液感知信号を用いて頻拍性不整脈の存在を確認することと、血液センサを電源切断することとを含んでもよい。血液感知信号は、例えば、血液灌流情報、血中酸素飽和情報、光電脈波情報、パルス酸素測定情報、及び/又は血液センサからの他の情報を含んでもよい。
【0032】
上記の本発明の要約は、本発明の各実施形態やすべての実装例を記載することを意図したものではない。本発明の長所及び達成事項、並びに、本発明のより完全な理解は、添付の図面とともに考慮される以下の詳細説明及び特許請求の範囲を参照することにより、明らかになると共に認識されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、様々な変形及び代替形態をとり得るものであり、その詳細を図面に例示すると共に以下に詳細に説明する。しかしながら、記載される特定の実施形態に本発明を限定する意図はないことを理解されたい。逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲に定義される、本発明の範囲内に含まれる全ての変形物、均等物及び代替物を包含することが意図される。
【0034】
以下の例示的な実施形態の説明において、本明細書の一部を構成し、本発明が実施され得る様々な実施形態を例示する、添付の図面を参照する。なお、他の実施形態が用いられてもよく、本発明の範囲を逸脱することなく構造的及び機能的な変更が行われ得ることを理解されたい。
【0035】
本発明による植え込み型装置は、以下に記載する1つ以上の特徴、構成、方法、又はそれらの組合せを含んでよい。例えば、心臓モニタ又は心臓刺激器は、以下に記載する1つ以上の有利な特徴及び/又はプロセスを含むよう実装されてもよい。そのようなモニタ、刺激器、又は他の植え込み型若しくは部分植え込み型装置は、本願明細書に記載される特徴の全てを含む必要はなく、独特の構造及び/又は機能性に備えるよう選択された特徴を含むよう実装されてもよいことが意図される。このような装置は、様々な治療機能又は診断機能を提供するよう実装されてもよい。
【0036】
本発明の複数の実施形態は、胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することを含む不整脈識別方法に関する。心電図信号は、心臓信号と、雑音及び心電図上アーチファクトの一方又は両方とを含み得る。代替センサと関連付けられた信号も受け取られる。代替センサには、非電気生理学的な心臓センサ、血液センサ、患者活動センサ、インピーダンスセンサ、脈波センサ、血中酸素センサ、経胸腔インピーダンスセンサ、血液量センサ、音響センサ及び/又は圧力トランスデューサ、並びにアクセロメータが含まれるが、これらに限定されない。代替信号を用いて、感知された心電図信号が心臓信号であることを確認してもよい。更に、感知された心電図信号及び確認された心臓信号の一方又は両方を用いて、心臓不整脈を検出してもよい。感知された信号が心臓信号であることが確認されない場合には、心臓不整脈の治療が保留されてもよい。
【0037】
一般に、心臓信号識別構成及び方法は、心臓モニタリング及び/又は刺激皮下装置と共に用いられ得る。そのような装置は、患者の胸部領域の皮下に植え込まれ得る植え込み型経胸腔心臓感知及び/又は刺激(ITCS)装置である。ITCS装置は、例えば、この装置の全ての又は選択された要素が、心臓活動の感知及び心臓刺激治療の送出に適した患者の前部、後部、側部又は他の身体位置に配置されるように、皮下に植え込まれてもよい。なお、ITCS装置の要素は、胸部領域、腹部領域、又は鎖骨下領域等の複数の異なる身体位置に配置されてよく、各電極要素は、心臓近傍、心臓周囲、心臓内又は心臓上の異なる領域にそれぞれ配置されてよい。
【0038】
ITCS装置の主ハウジング(例えば、活性(active)又は非活性(non-active)の缶)は、例えば、胸郭外の肋間又は肋骨下、腹部内、胸部の上部領域(例えば、第3肋骨の上方等といった鎖骨下位置)等に配置されるよう構成されてもよい。1つの実装例では、1つ以上の電極が、主ハウジング上、及び/又は、心臓、大血管又は冠状脈管構造の周囲であって直に接触しない他の位置に配置されてもよい。
【0039】
別の実装例においては、例えば、従来の経静脈送出手法を用いて植え込まれた1つ以上のリードを介して、電極が組み込まれた1つ以上のリードが、心臓、大血管又は冠状脈管構造と直に接触するよう配置されてもよい。更に別の実装例では、例えば、活性缶を用いるITCS装置構成又は非活性缶を用いる構成において、心臓活動を感知して心臓刺激エネルギーを送るために、1つ以上の皮下電極サブシステム又は皮下電極アレイを用いてもよい。電極は、心臓に対して前方及び/又は後方の位置に配置されてもよい。有用な皮下電極、電極アレイ及びその配向の例は、2003年12月17日に出願された「雑音消去心臓電極("Noise Canceling Cardiac Electrodes")」という名称の共有の米国特許出願第10/738,608号、及び、2003年6月19日に出願された「心臓に対する皮下電極の配置を含む方法及びシステム("Methods And Systems Involving Subcutaneous Electrode Positioning Relative To A Heart")」という名称の米国特許出願第10/465,520号に記載されており、ここに参照することによりこれらを本願明細書に組み込む。
【0040】
本願明細書に示される特定の構成は、植え込み型除細動器(ICD)が従来行っている様々な機能を実装可能なものとして一般的に記載され、当該技術分野で周知の多くの電気的除細動(cardioversion)/除細動(defibrillation)モードで動作し得る。本発明によるITCS装置に組み込まれ得る態様である、ICD回路、構造及び機能性の例は、共有の米国特許第5,133,353号、第5,179,945号、第5,314,459号、第5,318,597号、第5,620,466号、及び第5,662,688号に開示されており、ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む。
【0041】
特定の構成において、システム及び方法は、電気的除細動/除細動治療に加えて、当該技術分野で周知の様々なペーシング治療の提供等といった、ペースメーカーが従来行っている機能を実行してもよい。本発明によるITCS装置に組み込まれ得る態様である、ペースメーカー回路、構造及び機能性の例は、共有の米国特許第4,562,841号、第5,284,136号、第5,376,106号、第5,036,849号、第5,540,727号、第5,836,987号、第6,044,298号、及び第6,055,454号に開示されており、ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む。なお、ITCS装置構成は、徐脈及び/又は抗頻拍ペーシング治療に加えて、又はそれとは別に、非生理学的なペーシング支援を提供してもよい。
【0042】
本発明によるITCS装置は、診断及び/又は、モニタリング機能を実装してもよく、心臓刺激治療を提供してもよい。本発明のITCS装置に組み込まれ得る態様である、心臓モニタリング回路、構造及び機能性の例は、共有の米国特許第5,313,953号、第5,388,578号、及び第5,411,031号に開示されており、ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む。
【0043】
ITCS装置は、心拍数に基づく、パターン及び心拍数に基づく、及び/又はモルフォロジーによる頻拍性不整脈識別解析を含み得る様々な診断機能を実装するために用いられてよい。頻拍性不整脈の検出及び終止を強化するために、生理学的及び非生理学的な情報を得るために、皮下、皮膚、及び/又は、外部センサを用いてもよい。なお、本開示に記載される構成、特徴、及び特徴の組合せは、広範囲の植え込み型医療装置において実装されてよく、そのような実施形態及び特徴は、本願明細書に記載する特定の装置に限定されない。
【0044】
次に、図1A及び図1Bを参照すると、患者の胸部領域の異なる位置に植え込まれた構成要素を有する経胸腔心臓感知及び/又は刺激(ITCS)装置の構成が示されている。図1A及び図1Bに示される特定の構成では、ITCS装置はハウジング102を含み、ハウジング102内には、様々な心臓感知、検出、処理及びエネルギー送出回路が収容され得る。なお、図示されると共に本願明細書に記載される構成要素及び機能性は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの組合せで実装されてよい。更に、分かれた又は別個のブロック/要素として図示される構成要素及び機能性は、他の構成要素及び機能性と組み合わせて実装されてもよく、このような構成要素及び機能性を個別の形態又は統合された形態で示すのは、説明を明確にするためであり、このように限定するものではない。
【0045】
ハウジング102内には、ITCS装置と外部の通信装置(例えば、可搬型又は臨床型通信ステーション、患者携帯型/着用型通信ステーション、又は外部プログラマ等)との間の通信を容易にするための通信回路が配置される。通信回路は、生理学的又は非生理学的な1つ以上の外部センサ、皮膚センサ、又は、皮下センサとの一方向又は双方向通信を容易にしてもよい。ハウジング102は、一般的に、1つ以上の電極(例えば缶電極(can electrode)及び/又は不関電極)を含むように構成される。なお、ハウジング102は活性缶として構成されるのが一般的であるが、非活性缶構成が実装されてもよく、その場合には、ハウジング102から離間された少なくとも2つの電極が用いられる。
【0046】
図1A及び図1Bに示される構成において、皮下電極104は、胸部領域の皮下に配置されてもよく、ハウジング102から遠位に位置してもよい。皮下電極及び、適用可能であればハウジング電極を、心臓の周囲の様々な位置及び向き(例えば心臓に対して前方及び/又は後方の様々な位置)に配置してもよい。皮下電極104は、リードアセンブリ106を介してハウジング102内の回路に接続される。リードアセンブリ106内には1つ以上の導体(例えばコイル又はケーブル)が設けられ、皮下電極104をハウジング102内の回路に電気的に結合させる。電極支持体の細長い構造体、ハウジング102及び/又は遠位電極アセンブリ(図1A及び1B図に示される構成では皮下電極104として示す)上には、1つ以上の感知電極、感知/ペーシング電極、又は除細動電極が配置されてよい。
【0047】
1つの構成では、リードアセンブリ106は一般的に柔軟であり、従来の植え込み型医療用電気リード(例えば除細動リードや除細動/ペーシング複合リード)に類似の構造を有する。別の構成では、リードアセンブリ106は、やや柔軟に構成されるが、臨床医による形付け又は操作後の所望の構成を保持する弾性、ばね式又は機械的な(形状)記憶を有する。例えば、リードアセンブリ106に、手の力で歪めて所望の形をとらせることができるグースネック又はブレード(組紐)システムを組み込んでもよい。このように、リードアセンブリ106は、所与の患者の固有の解剖学的構成に対応するための形状適応性を有してよく、植え込み後に、カスタマイズされた形状を概ね保持する。この構成によるリードアセンブリ106の形付けは、ITCS装置の植え込み前及び植え込み中に行われ得る。
【0048】
更に別の構成によれば、リードアセンブリ106は、ハウジング102に対して皮下電極104を位置的に安定させる剛性の細長い構造体等といった、剛性の電極支持アセンブリを含む。この構成では、細長い構造体の剛性により、皮下電極104とハウジング102との所望の間隔、及び、患者の心臓に対する皮下電極104/ハウジング102の所望の向きが保たれる。細長い構造体は、構造プラスチック材料、複合材料、又は金属材料から形成されてよく、生体適合材料を含むか又は生体適合材料で覆われる。細長い構造体が金属等の導電性材料で形成される場合には、ハウジング102と皮下電極104との間に適切な電気的アイソレーションが設けられる。
【0049】
1つの構成では、剛性の電極支持アセンブリ及びハウジング102は、単一構造(例えば単一のハウジング/ユニット)を定める。電子部品及び電極導体/コネクタは、一体的なITCS装置ハウジング/電極支持アセンブリ内又はその表面に配置される。単一構造上の、ハウジング/電極支持体アセンブリの両端部付近に、少なくとも2つの電極が支持される。単一構造は、例えば、弓形又は角度のついた形状を有してもよい。
【0050】
別の構成によれば、剛性の電極支持アセンブリは、ハウジング102に対して物理的に分離可能なユニットを定める。剛性の電極支持アセンブリは機械的及び電気的カップリングを含み、それらは、ハウジング102の対応する機械的及び電気的カップリングとの嵌合係合を容易にする。例えば、ヘッダブロック構成は、剛性の電極支持アセンブリとハウジング102との機械的且つ電気的接続に備えた電気的及び機械的カップリングを含むよう構成されてもよい。ヘッダブロック構成は、ハウジング102上又は剛性の電極支持アセンブリ上に設けられてもよい。或いは、剛性の電極支持アセンブリとハウジング102との機械的且つ電気的接続を確立するために、機械的/電気的カップラを用いてもよい。このような構成では、標準的なITCS装置ハウジング102への物理的及び電気的接続のために、様々な形状、サイズ及び電極構成を有する様々な異なる電極支持アセンブリを利用可能にしてもよい。
【0051】
なお、電極及びリードアセンブリ106は、様々な形状を取るよう構成されてよい。例えば、リードアセンブリ106は、楔形、V形、平坦な楕円形又はリボン形の形状を有してもよく、皮下電極104は、電極のアレイ又はバンド等といった複数の離間した電極を含んでもよい。さらに、2つ以上の皮下電極104を複数の電極支持アセンブリに取り付けて、皮下電極104間の所望の離間関係を達成してもよい。
【0052】
ITCS装置は、共有の米国特許第5,203,348号、第5,230,337号、第5,360,442号、第5,366,496号、第5,397,342号、第5,391,200号、第5,545,202号、第5,603,732号及び第5,916,243号(ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む)に開示されている植え込み型皮下医療装置の回路、構造及び機能性を組み込んでもよい。
【0053】
図1Cは、1つの構成によるITCS装置の様々な構成要素を示すブロック図である。この構成によれば、ITCS装置には、プロセッサに基づく制御システム205が組み込まれており、制御システム205は、適切な(揮発性及び不揮発性)メモリ209に接続されたマイクロプロセッサ206を含む。なお、任意のロジックに基づく制御アーキテクチャが用いられてよい。制御システム205は、回路及び構成要素に接続され、心臓が生じる電気信号の感知、検出及び解析を行い、所定の条件下で、心臓不整脈を治療するために、心臓に電気刺激エネルギーを送る。特定の構成では、制御システム205及びそれに関連する構成要素は、心臓にペーシング治療も提供する。ITCS装置によって送られる電気エネルギーは、低エネルギーのペーシングパルス、又は電気的除細動若しくは除細動のための高エネルギーパルスの形態であってもよい。
【0054】
心臓信号は、皮下電極214及びITCS装置のハウジング上に設けられた缶電極又は不関電極207を用いて感知される。例えば、非活性缶構成では、心臓信号は、皮下電極214のみを用いて感知されてもよい。このように、単極、双極、又は単極/双極複合電極構成、並びに、多素子電極、及び雑音消去電極と標準電極との組合せを用いてもよい。感知された心臓信号は、感知回路204によって受け取られる。感知回路204は感知増幅回路を含み、更に、フィルタリング回路及びアナログ−デジタル(A/D)変換器を含んでもよい。感知回路204によって処理された、感知された心臓信号は、信号が検出回路202に送信される前に雑音を更に低減してもよい雑音低減回路203によって受け取られてもよい。
【0055】
高電力又は計算集約的な雑音低減アルゴリズムが必要な場合には、雑音低減回路203は、感知回路202の後に組み込まれてもよい。雑音低減回路203は、電極信号を用いた操作を行うために用いられる増幅器を用いて、感知回路204の機能を実行してもよい。感知回路204及び雑音低減回路203の機能を組み合わせることは、必要な構成要素を最小限にすると共にシステムの所要電力を低減するために有用であり得る。
【0056】
図1Cに示される例示的な構成において、検出回路202は、雑音低減回路203に接続されるか又は別様で雑音低減回路203を組み込む。雑音低減回路203は、感知された心臓信号に含まれる、様々なソースから持ち込まれた雑音を除去することによって、感知された心臓信号のSN比(SNR)を向上させるよう動作する。典型的なタイプの経胸腔心臓信号雑音は、例えば、電気雑音及び骨格筋から生じる雑音を含む。
【0057】
検出回路202は、一般的に、特に頻拍性不整脈等といった心臓不整脈を検出するために、感知された心臓信号及び/又は他のセンサ入力の解析を調整する、信号プロセッサを含む。検出回路202の信号プロセッサは、不整脈症状の存在及び重症度を検出及び確認するための心拍数に基づく及び/又はモルフォロジーによる識別アルゴリズムを実装してもよい。本発明によるITCS装置が実装し得る態様である、不整脈検出及び識別回路、構成及び技術の例は、共有の米国特許第5,301,677号及び第6,438,410号に開示されており、ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む。
【0058】
検出回路202は、心臓信号情報を制御システム205に送信する。制御システム205のメモリ回路209は、感知、除細動、及び適用可能であればペーシングの各種モードで動作するためのパラメータを含むと共に、検出回路202が受け取った心臓信号を表すデータを格納する。メモリ回路209は、履歴ECG(心電図)データ及び治療データを格納するよう構成されてもよい。履歴ECGデータ及び治療データは様々な目的で用いられてよく、必要又は所望により外部の受信装置に送信されてもよい。
【0059】
特定の構成において、ITCS装置は診断回路210を含んでもよい。診断回路210は、一般的に、検出回路202及び感知回路204から入力信号を受け取る。診断回路210は、制御システム205に診断データを提供する。なお、制御システム205には、診断回路210又はその機能性の全部又は一部が組み込まれてもよい。制御システム205は、様々な診断目的のために診断回路210によって供給される情報を格納して用いてもよい。この診断情報は、例えば、トリガーイベントに続いて又は所定の間隔で格納されてもよく、システム診断(例えば、電源ステータス、治療送出履歴、及び/又は患者診断)を含んでもよい。診断情報は、治療送出の直前に取得される電気信号又は他のセンサデータの形態をとってもよい。
【0060】
電気的除細動及び除細動治療を提供する構成によれば、制御システム205は、検出回路202から受け取った心臓信号データを処理し、心臓不整脈症状を終止させて心臓を正常洞調律に復帰させるために、適切な頻拍性不整脈治療を開始する。制御システム205は、ショック治療回路216に接続される。ショック治療回路216は、皮下電極214及びITCS装置ハウジングの缶電極又は不関電極207に接続される。ショック治療回路216は、命令に応じて、選択された電気的除細動又は除細動治療に従い、心臓に電気的除細動及び除細動刺激エネルギーを送る。これより簡単な構成では、電気的除細動及び除細動治療の両方の送出を提供する構成とは対照的に、ショック治療回路216は、除細動治療を送るよう制御される。本発明の態様を利用可能なタイプのITCS装置に組み込まれ得る態様である、ICD高エネルギー送出回路、構造及び機能性の例は、共有の米国特許第5,372,606号、第5,411,525号、第5,468,254号、及び第5,634,938号に開示されており、ここに参照することによってそれぞれの全体を本願明細書に組み込む。
【0061】
別の構成によれば、ITCS装置には、電気的除細動及び/又は除細動機能に加えて、心臓ペーシング機能が組み込まれてもよい。図1Cの点線で示されるように、ITCS装置はペーシング治療回路230を含んでもよい。ペーシング治療回路230は、制御システム205、皮下電極214、及び缶/不関電極207に接続される。ペーシング治療回路は、命令に応じて、選択されたペーシング治療に従い、ペーシングパルスを心臓に送る。ペーシング療法に従って、制御システム205内のペースメーカー回路によって生成される制御信号は、開始されて(initiated)ペーシング治療回路230に送られ、そこでペーシングパルスが生成される。ペーシング療法は、制御システム205によって修正されてもよい。
【0062】
経胸腔心臓モニタリング及び/又は刺激装置では、多くの心臓ペーシング治療が有用であり得る。図1Cに示すように、このような心臓ペーシング治療は、ペーシング治療回路230を介して送られてもよい。或いは、心臓ペーシング治療は、ショック治療回路216を介して送られてもよく、これによって別個のペースメーカー回路の必要がなくなり効果的である。
【0063】
図1Cに示されるITCS装置は、本発明の実施形態による1つ以上の生理学的及び/又は非生理学的な代替センサから、信号を受け取るよう構成される。代替センサによって生成される信号は、用いられるセンサのタイプに応じて、検出回路202に直接接続された又は感知回路204を介して間接的に接続されたトランスデューサ回路に送られてもよい。なお、特定の代替センサは、感知データを、検出回路202による処理を経ずに制御システム205に送信してもよい。
【0064】
代替の非電気生理学的な心臓センサは、検出回路202に直接接続されてもよく、又は感知回路204を介して間接的に接続されてもよい。非電気生理学的な心臓センサは、非電気生理学的な性質の心臓活動を感知する。非電気生理学的な心臓センサである代替センサの例には、血中酸素センサ、経胸腔インピーダンスセンサ、血量センサ、音響センサ、及び/又は圧力トランスデューサ、及びアクセロメータが含まれる。これらのセンサからの信号は、心臓活動に基づいて生成されるが、電気生理的ソース(例えばR波やP波)からは直接得られない。図1Cに示すように、代替センサ261は、感知回路204、検出回路202(明瞭にするため接続は図示しない)、及び制御システム205の1つ以上に接続されてよい。
【0065】
通信回路218は、制御システム205のマイクロプロセッサ206に接続される。通信回路218は、ITCS装置が1つ以上の受信装置又はITCS装置の外部に位置するシステムと通信することを可能にする。例えば、ITCS装置は、通信回路218を介して患者着用型、携帯型又は、臨床型の通信システムと通信してもよい。1つの構成では、1つ以上の生理学的又は非生理学的な(皮下、皮膚、又は、患者の外部の)代替センサは、周知の通信標準(ブルートゥースやIEEE802標準等)に準拠したインターフェイス等といった短距離無線通信インターフェイスを備えてもよい。このようなセンサが取得したデータは、通信回路218を介してITCS装置に通信されてもよい。なお、無線送信機又はトランシーバを備えた生理学的又は非生理学的な代替センサは、患者の外部の受信システムと通信してもよい。
【0066】
通信回路218は、ITCS装置が外部プログラマと通信することを可能にしてもよい。1つの構成では、通信回路218及びプログラマユニット(図示せず)は、当該技術分野で周知のように、ワイヤループアンテナ及び無線周波遠隔測定リンクを用いて、プログラマユニットと通信回路218との間で信号及びデータの送受信を行う。このようにして、植え込み中及び植え込み後に、ITCS装置とプログラマユニットとの間でプログラム命令及びデータが転送される。医師は、プログラマを用いて、ITCS装置が用いる様々なパラメータを設定又は修正できる。例えば、医師は、ペーシング及び電気的除細動/除細動治療モードを含むITCS装置の感知、検出、ペーシング及び除細動機能に影響するパラメータを設定又は修正してもよい。
【0067】
一般的に、ITCS装置は、当該技術分野で周知のように、人体への植え込みに適したハウジングに収容されて気密密閉される。ITCS装置への電力は、ITCS装置内に収容された電気化学的電源220によって供給される。1つの構成では、電源220は充電式電池を含む。この構成によれば、何度も繰り返される電源220の非侵襲性の充電を容易にするために、電源220には充電回路が接続される。通信回路218、又は別個の受信器回路は、外部の無線周波エネルギー伝達器によって伝達される無線周波エネルギーを受け取るよう構成される。ITCS装置は、充電式電源に加えて非充電式電池を含んでもよい。なお、充電式電源を用いる必要はなく、その場合には、長寿命の非充電式電池を用いる。
【0068】
図1Dは、ITCS装置の検出回路302の構成を示す。検出回路302は、心拍数検出回路310及びモルフォロジー解析回路312の一方又は両方を含む。不整脈の検出及び確認は、心拍数検出回路310によって実装される、当該技術分野で周知の心拍数に基づく識別アルゴリズムを用いて達成されてもよい。不整脈の症状は、当該技術分野で周知のように、感知された心臓信号のモルフォロジーに基づく解析によって検出及び確認されてもよい。心拍数に基づく手法及びモルフォロジーに基づく手法の両方を用いて、層構造又は並列構造の不整脈識別アルゴリズムを実装してもよい。更に、例えば、ここに参照することにより本願明細書に組み込む米国特許第6,487,443号、第6,259,947号、第6,141,581号、第5,855,593号、及び第5,545,186号に開示されるアプローチを用いることにより、不整脈の症状を検出及び/又は確認するために、心拍数及びパターンに基づく不整脈検出及び識別手法を用いてもよい。
【0069】
マイクロプロセッサ306に接続された検出回路302は、感知された心臓信号を、経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置において特に有用な方法で処理するための専用回路を組み込むよう、又は専用回路と通信するよう構成されてもよい。図1Dに例示されるように、検出回路302は、複数の生理学的及び非生理学的な代替センサから情報を受け取ってもよい。例えば、適切な音響センサを用いて経胸腔音響をモニタリングしてもよい。例えば、心音を検出し、代替センサ処理回路318によって様々な目的に合わせて処理してもよい。音響データは、有線又は無線リンクを介して検出回路302に送られ、心臓信号検出及び/又は不整脈検出を強化するために用いられる。例えば、音響情報は、本発明に従って、ECG心拍数に基づく不整脈の識別を確証するために用いられてもよい。
【0070】
検出回路302は、骨格筋活動をモニタリングする1つ以上の代替センサから情報を受け取ってもよい。経胸腔電極は、心臓活動信号に加えて、骨格筋信号を容易に検出する。このような骨格筋信号は、患者の活動レベルを判定するために用いられてもよい。心臓信号検出の脈絡においては、このような骨格筋信号は、心臓活動信号のアーチファクトと考えられ、雑音と見なされ得る。処理回路316は、1つ以上の骨格筋センサからの信号を受け取り、処理した骨格筋信号データを検出回路302に送る。骨格筋雑音を伴う正常な心臓洞律動を、心臓不整脈と区別するために、このデータを用いてもよい。
【0071】
既に述べたように、検出回路302は、雑音処理回路314に接続されるか又は別様で雑音処理回路314を組み込む。雑音処理回路314は感知された心臓信号を処理し、感知された心臓信号に含まれる雑音を低減することによって心臓信号のSNRを改善する。
【0072】
次に図1Eを参照すると、1つの構成によるITCS装置の様々な構成要素のブロック図が示されている。図1Eは、様々な生理学的及び非生理学的パラメータの検出に関連する複数の構成要素を示す。図示されるように、ITCS装置はマイクロプロセッサ406を含み、マイクロプロセッサ406は、一般的にITCS装置の制御システムに組み込まれ、検出回路402に接続される。センサ信号処理回路要素410は、複数の異なる心電図センサ及び/又は代替センサからのセンサデータを受け取ることができる。
【0073】
例えば、ITCS装置は、様々なタイプの非生理学的なセンサ421、生理学的な外部/皮膚センサ422及び/又は生理学的な内部センサ424と協同するか又は別様でそれらを組み込んでよい。このようなセンサには、例えば、音響センサ、インピーダンスセンサ、酸素飽和センサ、血量センサ、及び血圧センサが含まれ得る。これらの各センサ421、422、424は、短距離無線通信リンク420を介して、センサ信号処理回路要素410に通信可能に接続されてもよい。或いは、生理学的内部センサ424等の特定のセンサは、配線接続(例えば電気的又は光学的な接続)を介して、センサ信号処理回路要素410に通信可能に接続されてもよい。本発明のITCS装置において実装され得る有用な光電脈波センサ及びそれを用いる技術は、ここに参照することにより本願明細書に組み込む米国特許第6,491,639号に開示されている。
【0074】
図1A〜図1Eに示される構成要素、機能性及び構造的構成は、ITCS装置に組み込まれ得る様々な特徴及び特徴の組合せの理解を提供することを意図したものである。比較的複雑な設計から比較的簡単な設計まで、広範囲のITCSやその他の植え込み型心臓モニタリング及び/又は刺激装置構成が考えられることを理解されたい。このように、特定のITCS又は心臓モニタリング及び/又は刺激装置構成は、本願明細書に記載される特定の特徴を含んでよく、他のそのような装置構成は、本願明細書に記載される特定の特徴を含まなくてもよい。
【0075】
本発明の実施形態によれば、ITCS装置は、心臓感知及び不整脈治療送出の一方又は両方を提供する皮下電極システムを含むよう実装されてもよい。1つのアプローチによれば、ITCS装置は、モニタリング、診断及び/又は治療の機能を実行する、長期にわたって植え込み可能なシステムとして実装されてもよい。ITCS装置は、心臓不整脈を自動的に検出して治療してもよい。
【0076】
1つの構成において、ITCS装置は、身体の前胸郭領域等といった身体の胸部領域の皮下に植え込まれるパルス発生器及び1つ以上の電極を含む。ITCS装置は、徐脈及び頻拍性不整脈に対する心房及び/又は心室治療を提供するために用いられてもよい。頻拍性不整脈治療は、例えば、心房性又は心室性の頻拍又は細動を治療するための、電気的除細動、除細動及び抗頻拍ペーシング(ATP)を含んでもよい。徐脈治療は、徐脈や心停止に対する一時的なポストショック(post-shock)ペーシングを含んでもよい。徐脈や心停止のためのポストショックペーシングを実装するための方法及びシステムは、2003年2月28日に出願された「心停止を防止するポストショック経胸腔ペーシングを用いる皮下心臓刺激("Subcutaneous Cardiac Stimulator Employing Post-Shock Transthoracic Asystole Prevention Pacing")」という名称の共有の米国特許出願第10/377,274号に記載されている(ここに参照することによりその全体を本願明細書に組み込む)。
【0077】
1つの構成において、1つのアプローチによるITCS装置は、従来のパルス発生器及び皮下電極植え込み技術を用いてもよい。パルス発生装置及び電極は、長期にわたって皮下に植え込まれてもよい。このようなITCSは、従来の植え込み型システムと同様に、自動的に不整脈を検出して治療するために用いられてもよい。別の構成では、ITCS装置は、単一構造(例えば、単一のハウジング/ユニット)を含んでもよい。電子部品及び電極導体/コネクタは、一体的ITCS装置ハウジング/電極支持アセンブリ内又はその表面に配置される。
【0078】
ITCS装置は電子部品を含み、従来の植え込み型細動除去器と類似していてもよい。身体の胸郭領域の皮下に配置された、一方がパルス発生器ハウジング(例えば缶)であり得る2つ以上の電極間で、高電圧ショック治療を行ってもよい。
【0079】
それに加えて、又はそれとは別に、ITCS装置は、徐脈治療のために低エネルギー電気刺激を提供してもよい。ITCS装置は、従来のペースメーカーと同様の徐脈ペーシングを提供してもよい。ITCS装置は、徐脈又は心停止に対する一時的なポストショックペーシングを提供してもよい。感知及び/又はペーシングは、ショック電極も組み込んだ電極サブシステム上に配置される感知/ペース電極を用いて、又は皮下に植え込まれるそれぞれ別個の電極によって、達成されてよい。
【0080】
ITCS装置は、本発明による様々な診断、治療、又はモニタリングの実装と関連して用いられ得る様々な代替信号を検出してもよい。例えば、ITCS装置は、脈拍圧信号、血中酸素レベル、心音、心臓加速、及び他の心臓の活動に関連した非電気生理学的な信号を検出するためのセンサ又は回路を含んでよい。一実施形態において、ITCS装置は、例えば、呼吸の1回換気量及び毎分換気量を含む様々な呼吸パラメータが導出され得る、胸腔内インピーダンスを感知する。1つ以上の身体運動又は体位に関する信号を検出するためのセンサ及びそれと関連付けられた回路が、ITCS装置と関連して組み込まれてもよい。例えば、患者の活動、患者の位置、身体の向き又は胴の位置を検出するために、アクセロメータ及びGPS装置を用いてもよい。
【0081】
ITCS装置は、高度患者管理(APM)システムの構成において用いられてもよい。高度患者管理システムは、医師が、遠隔から自動的に、患者の心機能及び呼吸機能、並びに他の状態をモニタリングすることを可能にし得るものである。1つの例では、心臓ペースメーカー、除細動器、及び再同期装置等といった植え込み型心律動管理システムは、患者のリアルタイムデータ収集、診断及び治療を可能にする様々な電気通信技術及び情報技術を備えてもよい。本願明細書に記載される様々な実施形態は、高度患者管理と関連して用いられ得る。遠隔からの患者/装置のモニタリング、診断、治療又は他のAPM関連の方法論を提供するよう構成され得る本願明細書に記載される方法、構成及び/又は技術は、ここに参照することにより本願明細書に組み込む米国特許第6,221,011号、第6,270,457号、第6,277,072号、第6,280,380号、第6,312,378号、第6,336,903号、第6,358,203号、第6,368,284号、第6,398,728号、及び第6,440,066号の1つ以上の特徴を組み込んでもよい。
【0082】
1つのアプローチによるITCS装置は、容易に植え込み可能な治療、診断又は、モニタリングシステムを提供する。このITCSシステムは、静脈内又は胸腔内へのアクセスを要さずに植え込まれ得るものであり、より簡単で侵襲性が低い植え込み手順を提供し、リード及び外科手術の複雑さを最小限にし得る。更に、このシステムは、経静脈リードシステムによって併発症を生じる患者に対する使用に有益であろう。このような併発症には、特に、外科的な併発症、感染、不十分な血管開通、人工弁の存在に関連する併発症、及び小児科患者の成長に起因する限界が含まれるが、これらに限定されない。このアプローチによるITCSシステムは、前胸部の皮下に植え込まれる2つ以上の電極サブシステムの組合せを含むよう構成され得る点で、従来のアプローチとは異なる。
【0083】
図2に示すように、1つの構成では、ITCSシステムの電極サブシステムは、患者の心臓510の周囲に配置される。ITCSシステムは、缶電極502を含む第1の電極サブシステムと、1つ以上の電極及び/又は1つ以上の多素子電極を含む第2の電極サブシステム504とを含む。第2の電極サブシステム504は、感知及び/又は電気刺激に用いられる複数の電極を含んでよく、代替センサを更に含んでもよい。
【0084】
様々な構成において、第2の電極サブシステム504は、電極の組合せを含んでもよい。第2の電極サブシステム504の電極の組合せは、コイル電極、先端電極、リング電極、多素子コイル、渦巻コイル、非導電性支持体に取り付けられた渦巻コイル、スクリーンパッチ電極、及び他の電極構成を含み得る。適切な非導電性支持体材料は、例えばシリコーンゴムである。
【0085】
缶電極502は、ITCS装置の電子部品を収容するハウジング501上に配置される。一実施形態では、缶電極502は、ハウジング501の外面全体を含む。別の実施形態では、ハウジング501の様々な部分は、缶電極502から、又は組織から、電気的に絶縁されてもよい。例えば、缶電極502の活性領域は、心臓の感知及び/又は刺激に有利なように電流の流れを案内するように、ハウジング501の前面又は後面の全て又は一部を含んでよい。
【0086】
一実施形態によれば、ハウジング501は、従来の植え込み型ICDのハウジングに類似していてもよく、ハウジング501の容積は約20〜100cc、厚さは0.4〜2cm、各面の表面積は約30〜100cm2である。上述のように、電流の流れを最適に案内するために、ハウジングの一部は組織から電気的に絶縁されてもよい。例えば、電流の流れを案内するために、ハウジング501の一部が非導電性又は別様で電気抵抗を有する材料で覆われてもよい。適切な非導電性材料コーティングには、例えば、シリコーンゴム、ポリウレタン又はパリレンから形成されるものが含まれる。
【0087】
それに加えて、又はそれとは別に、電流の流れを最適に案内するために、ハウジング501の全体又は一部が、導電率特性が変わるよう処理されてもよい。電流の流れを最適化するために、ハウジング501の表面の導電率特性を、表面の導電率を増減する等によって変更するために、様々な公知の技術を用いてよい。このような技術としては、所望の導電率特性を達成するためにハウジング501の表面を機械的又は化学的に変える技術が含まれ得る。
【0088】
上述のように、皮下に植え込まれた電極から収集される心臓信号には、雑音が混ざっている場合がある。更に、特定の雑音源は、心臓信号に類似した周波数特性を有する。このような雑音は、過剰な感知や不要なショック送出につながり得る。雑音信号の振幅が比較的高く、重複する周波数を含む可能性があるため、フィルタリングのみでは雑音の完全な抑制には至らない。更に、フィルタの性能は、遭遇する全種類の雑音に対して十分にロバストではないのが一般的である。更に、公知の適応的フィルタリング手法では、患者にVF(心室細動)がある状況又は高振幅雑音がある状況に対する、しばしば未知の基準信号が必要である。
【0089】
皮下植え込み電極から収集される心臓信号には、雑音が混ざっている場合がある。更に、特定の雑音源は、心臓信号に類似した周波数特性を有する。このような雑音は、過剰な感知や不要なショック送出につながり得る。雑音信号の振幅が比較的高く、重複する周波数を含む可能性があるため、フィルタリングのみでは雑音の完全な抑制には至らない場合がある。更に、フィルタの性能は、遭遇する全種類の雑音に対して十分にロバストではない場合がある。更に、公知の適応的フィルタリング手法では、患者にVF(心室細動)がある状況又は高振幅雑音がある状況に対する、しばしば未知の基準信号が必要である。
【0090】
本発明の1つのアプローチによれば、ITCS装置は、一群の分離された信号(例えばブラインドソース分離(BSS)技術で得られる分離信号)の中から心臓信号を識別するために、代替信号を用いてもよい。なお、後述する信号識別技術の全て又は特定の態様は、ITCS装置以外の(植え込み型又は非植え込み型の)装置又はシステムで実装されてもよく、ITCS装置で実装される分離方法としてのBSS技術の記載は説明を目的とするものであり、これに限定するものではないことを理解されたい。
【0091】
信号分離技術は、複合信号から多くの個々の信号を分離するものである。例えば、患者の表面又は患者の内部で検出される複合信号は、様々な信号ソースから生じる複数の信号成分(このような信号成分は、心臓信号、骨格筋運動関連信号、電磁干渉信号、及び発生源が未知の信号を含む)を含み得る。信号分離技術は、複合信号を個々の信号に分離するが、このような信号のソースは必ずしも示さない。
【0092】
複合信号マトリックスに対する主成分解析を行って生じる最大固有値を用いることは、ITCS装置が対象とする心臓信号である可能性が最も高い分離信号を識別する1つの方法を提供する。しかしながら、分離された全ての信号を解析することは、計算集約的なオペレーションである。本発明は、雑音信号と心臓信号との区別の補助となる代替信号を用いることにより、対象の心臓信号である可能性が最も高い信号の指標を効率的な方法で提供し、これにより、可能性がある多くの分離信号から対象の心臓信号を識別するのに必要な時間を大きく低減する。
【0093】
本発明の1つのアプローチによれば、ITCS装置は、例えばブラインドソース分離(BSS)技術で得られるような一群の分離信号の中から、心臓信号を識別するよう実装されてもよい。ブラインドソース分離のための装置及び方法は、2003年12月19日に出願された共有の米国特許出願番号第10/741,814号(ここに参照することにより本願明細書に組み込む)で更に説明されている。雑音消去電極を用いた別の有用な信号分離手法に関連する装置及び方法は、2003年12月17日に出願された共有の米国特許出願番号第10/738,608号(ここに参照することにより本願明細書に組み込む)で更に説明されている。
【0094】
上述のような代替センサ503からの情報は、例えばECGや他の心拍数に基づく不整脈識別等といった不整脈識別の精度を高めるために用いられてもよい。雑音の存在下における正常洞調律(NSR)からの不整脈の検出及び識別を改善するために、例えば、心音の音響信号、アクセロメータ、血液センサ又は他の非電気生理学的ソースのセンサ等といった、心臓の電気的活動に依存しない信号を用いてもよい。図2に示すように、代替センサ503は、ハウジング501内若しくはハウジング501上に設けられてもよく、又は、上述したように、第2の電極サブシステム504の一部として設けられてもよい。また、代替センサ503は、追加のリードを用いてハウジング501に直接接続されてもよく、又は、図1C及び図1Dを参照して説明したように、無線接続されてもよい。
【0095】
本発明の一実施形態では、電気雑音及び/又は心電図上アーチファクトの存在下で様々な心律動を検出する際の信号識別を補助するために、心音を用いる。この付加的な代替識別信号は、電気生理的心臓信号と時間相関しているので、代替信号は、たとえ電気雑音及び/又は心電図上アーチファクトの存在下でも、患者の律動の状態に関する情報を提供し得る。例えば、ECG信号がQRSコンプレックスを有する心臓信号を含むことを確認するために、この代替信号を用いてもよく、この場合、QRSコンプレックスを有するECG信号のみが、確認されたECG信号である。それに続く解析では、例えば心拍数の計算に、確認されたECG信号のみが用いられることを要求してもよい。これにより、電気的干渉及び雑音の混入の影響を受けにくい、よりロバストなアルゴリズムが提供される。
【0096】
一実施形態では、心音を検出するために、例えばアクセロメータや音響トランスデューサ等の皮下センサを用いてもよい。電気雑音を伴う正常洞調律を、潜在的に致命的な不整脈(例えば心室性頻拍症及び心室細動)から識別するために、心拍数、曲率及び他のECG情報と共に心音を用いてもよい。ITCS装置は、信号又は律動識別を行う際に、心音の存在、特性及び発生頻度の1つ以上をECG情報と組み合わせて用いてもよい。
【0097】
ECG信号から判定される心拍数を、例えば、診断目的で心音情報と共に解析してもよい。高いECG心拍数が、正常な心拍数の心音と共に検出された場合には、そのECG信号には雑音が存在することが示されよう。高いECG心拍数が、変性した心音と共に検出された場合には、潜在的に致命的な不整脈が示されよう。なお、上述の例の心拍数を、ECGのモルフォロジー又は他の技術で置き換えることもできよう。また、心音を他のセンサから得た信号で置き換えることもできよう。例えば、インピーダンス、脈拍圧、血液量/流量又は心臓加速を用いることができよう。
【0098】
心音の検出には、様々なタイプの音響センサが用いられてよい。このような音響センサの例としては、ダイアフラムに基づく音響センサ、MEMSに基づく音響センサ(MEMSに基づく音響トランスデューサ等)、光ファイバ音響センサ、圧電センサ、アクセロメータに基づく音響センサ及びアレイが含まれる。これらのセンサは、心音と関連する音声周波数圧力波を検出するために用いられてもよく、また、他の非電気生理学的な心臓関連信号を検出するために用いられてもよい。
【0099】
患者の心臓パルス又は鼓動の存在は、患者の首を触診すること、及び、患者の心臓から供給される血液による患者の頸動脈の体積変化を感知することによって検出されるのが一般的である。図3の一番上には、連続した2つのパルス、即ち鼓動間の、患者の頸動脈の物理的な伸縮を表す頸動脈波信号810のグラフが示されている。鼓動において心臓心室が収縮すると、患者の末梢循環系の隅々まで圧力波が送られる。図3に示される頸動脈波信号810は、心収縮期における心室からの血液の拍出と共に上昇し、心臓からの圧力波が最大に達するときにピークに達する。各脈拍の終わりに向かって圧力が弱まると、頸動脈波信号810は再び低下する。
【0100】
鼓動の間の患者の心臓弁の開閉により、隣接した心臓壁及び血管に高周波振動が生じる。これらの振動は、患者の身体において心音として聞くことができ、上述したように、センサによって検出され得る。患者の表面に配置される従来の心音図(PCG)トランスデューサは、心音の音響のエネルギーを電気エネルギーに変換し、図3の中間部上寄りのグラフに示すように記録及び表示され得るPCG波形820を生じる。
【0101】
図3に示すPCG波形820で示されるように、典型的な鼓動は2つの主要な心音を生じる。S1で示される第1の心音830は、一般的に、心収縮期の最初の三尖弁及び僧帽弁の閉止と関連付けられる振動によって生じる。一般的に、心音830は約14ミリ秒の長さであり、最高約500Hzまでの周波数を含む。S2で示される第2の心音840は、一般的に、心収縮期の最後の大動脈弁及び肺弁の閉止から生じる振動と関連付けられる。第2の心音840の持続時間は、一般的に第1の心音830より短く、第2の心音840のスペクトルバンド幅は、一般的に第1の心音830のスペクトルバンド幅より大きい。
【0102】
心電図(ECG)波形850は、患者の心臓の電気的活動を記述するものである。図3の中間部下寄りのグラフは、2つの鼓動に対するECG波形850の例を示し、同じく図3に示される頸動脈波信号810及びPCG波形820と時間的に対応している。1番目に示されている鼓動を参照すると、心房筋線維の脱分極を表すECG波形850の部分は「P」波と呼ばれる。心室筋線維の脱分極は、ECG波形の「Q」「R」及び「S」波で集合的に表され、QRSコンプレックスと呼ばれる。最後に、心室筋線維の再分極を表す波形の部分は「T」波として知られている。鼓動間では、ECG波形850は等電位レベルに戻る。
【0103】
患者の経胸腔インピーダンス信号860の変動は、心臓の各脈波と共に生じる血流量と相関する。図3の一番下のグラフは、患者のフィルタ処理された経胸腔インピーダンス信号860の例を示しており、インピーダンスの変動は、同じく図3に示される頸動脈信号810、PCG波形820及びECG波形850と時間的に対応している。
【0104】
次に図4を参照すると、心音が関与する本発明の別の実施形態では、正常洞調律から不整脈を識別するために、このような音を用いてもよい。図4は、ECG信号850における連続した2つのPQRSコンプレックスと、それらと関連する、アクセロメータ信号835から生じた非電気生理学的な成分とを表すグラフである。本発明の一実施形態による、信号間の相関を評価するために用いられる検出窓870も示されている。図4に示すように、S1心音832及びS1心音834と、QRSコンプレックス852及びQRSコンプレックス854とは、それぞれ概ね密接に時間相関している。S1心音832、S2心音833、及びS1心音834は、体内に植え込まれたアクセロメータから検出されたものとして示されている。S1心音は心臓信号と密接に時間相関し得るが、雑音及びアーチファクト信号とは時間相関しない。このように、NSRから不整脈を識別するために、心音を用いてもよい。
【0105】
本発明による方法の一実施形態において、不整脈検出方法は、ECG信号を用いて検出窓を定める。次に、検出窓内の代替ソース信号を、心臓情報について評価する。代替ソース信号が、窓内に心臓イベントを含む場合には、その心臓イベントに対応するECG信号が確証される。これは、例えば、心拍数に基づく不整脈検出アルゴリズムにおいて、ECG情報のみを用いて計算された心拍数よりもロバストな心拍数を提供するために用いられ得る。このアルゴリズムは、例えば、関連付けられた代替(センサによって)感知された心拍動によってその心拍動が確証された場合に、その識別されたECGの心拍動のみを考慮してもよい。
【0106】
図1C及び1D図に示されるように、ITCS装置は、信号処理回路及び/又は信号処理ソフトウェアを含むよう実装されてもよい。引続き図4を参照すると、雑音の存在下におけるNSRからの不整脈の識別を提供するために、信号処理を用いて、S1心音等の心音を、R波のピーク又は他のQRSコンプレックスの特徴と相関させてもよい。
【0107】
図4に示す手法において、検査又は検出窓870は、QRSコンプレックス852のQ位置に基づく開始時間875に開始するよう定められる。次に、ITCSアルゴリズムは、S1心音832を求めて、検出窓870内のアクセロメータ信号835をサーチする。このアルゴリズムは、S1心音832のピーク振幅とQRSコンプレックス852のピークRとの時間相関を探してもよい。例えば、ECG信号850は、検査窓870の範囲内のR波ピーク856と、検査窓872の範囲内のR波ピーク858とを有する。検査窓870の範囲内のR波ピーク856は、検査窓870内においてECG信号850がS1心音信号832と時間相関していることを示す大きな相関値を生じる。同様に、検査窓872の範囲内のR波ピーク858は、検査窓872内においてECG信号850がS1心音信号834と時間相関していることを示す大きな相関値を生じる。心拍数は、例えば、QRSコンプレックス852、854と、それらと関連するS1心音832、834との大きな相関値を有する連続した心拍動の間で判定されてもよい。
【0108】
次に図5を参照すると、本発明による信号識別方法がフローチャート900に示されている。心電図信号902は、胸腔内ではない皮下位置で受け取られる。心電図信号902は、心臓信号と、雑音及び心電図上アーチファクトの一方又は両方とを含み得る。非電気生理学的心臓ソースと関連付けられた非電気生理学的信号904等の代替信号も受け取られる。代替信号は、非電気生理学的な性質の心機能情報(例えば心音情報、血流量情報、血中酸素情報、及び上述の他の代替センサからの情報)を提供する。心電図信号902及び非電気生理学的信号904の両方を用いて、図5のフローチャート900に示される幾つかの任意の経路を介して、正常洞調律と不整脈とを識別する。
【0109】
心電図信号902を用いて不整脈を検出してもよく、心電図信号902と非電気生理学的信号904との比較903を用いて不整脈の存在を確認してもよい。心電図信号902と非電気生理学的信号904との時間的関係は、例えば、心電図信号902のモルフォロジー907と非電気生理学的信号904のモルフォロジー909との比較905を用いて判定されてもよい。
【0110】
検出窓906は、心電図信号902の受け取りに応答して開始されてもよく、例えば相関911を用いて、非電気生理学的信号904が検出窓906の範囲内の時間に受信されたか否かを判定するために用いられてもよい。確認に用いられる検出窓906の開始時間は、心電図信号の変曲点(例えば、極大値、極小値、又は他の任意の適切なモルフォロジー属性)と関連付けられてもよい。
【0111】
心拍数は、一続きの心電図信号902及び一続きの非電気生理学的信号904の両方に基づいて計算されてもよい。正常洞調律と不整脈とを識別するために、ECG心拍数908及び信号速度916を用いてもよい。ECG心拍数908が不整脈閾値910と比較されてもよく、例えば、第1の心拍数は第1の不整脈閾値を越えるが、第2の心拍数の信号速度916は第2の不整脈閾値918を越えないことに応答して、不整脈の存在/不在を判定するために用いられてもよい。
【0112】
フローチャート900の任意の経路による、心電図信号902を用いた不整脈の検出と、例えば比較903、比較941及び/又は相関911を用いた不整脈の確認又は否認とに応答して、除細動治療の送出が阻止される場合(920)又は治療が行われる場合(921)がある。
【0113】
図6は、本発明の別の実施形態による、多パラメータ不整脈識別方法を示すフローチャートである。胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知すること(951)を含む不整脈識別方法950が示されている。非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた代替信号が受け取られ(952)、感知された心電図信号が心臓信号を含むか否かを判定するために確認される(953)。心臓不整脈は、感知された心電図信号及び確認された心臓信号の一方を用いて検出される(954)。感知された信号が心臓信号でない場合には、心臓不整脈の治療は保留される(955)。本実施形態及び他の実施形態による確認方法は、不整脈検出、確認及び治療法の決定の基礎となる感知された信号が確かに心臓信号であることを確実にすることにより、不必要な心臓ショックの送出を都合よく低減又は解消する。
【0114】
図7は、心電図1410及び代替信号を示すグラフであり、この代替信号は患者活動信号1420である。図7に示されるグラフは、本発明の一実施形態による閾値1450を含む。このグラフは、横軸として時間、縦軸として信号電圧レベルを含む。図7に示されるECG信号1410及び患者活動信号1420は、増幅されてフィルタリングされたものである。この例では、ECG信号1410及び患者活動信号1420は両方とも心臓電極から得られる。この場合、患者活動信号1420は、骨格筋活動を示す信号を提供するよう優先して配置された心臓電極構成から得られる。なお、患者活動信号1420はかなりのECG成分を含むが、筋運動は、少なくとも筋雑音検出窓1440内で明瞭に識別可能である。
【0115】
例えば、患者活動信号1420が閾値1450を越える場合の筋運動を、意識があって活発な患者を示すものと定義してもよい。閾値1450は、適応的であっても、動的であっても、又は固定されていてもよく、絶対値として、基線のパーセンテージとして、又は他の公知の信号モルフォロジーの方法論若しくは統計的な方法論を用いて定められてもよい。例えば、ECG信号1410は患者へのショックが必要な不整脈の発生を示しているが、患者活動信号1420は患者が移動可能で活発であることを示している場合には、ITCS装置のアルゴリズムは、患者の心臓へのショックを遅延1460のような所定時間だけ遅延させてもよい。
【0116】
遅延1460は、ECG信号1410に擬似信号が存在するか否か、又は患者にショックを与える必要が実際にあるか否かをITCS装置が評価する時間を提供する。遅延1460の持続時間は、最初の不整脈検出に続いて、検出された不整脈の存在を1つ以上の非心臓信号(例えば骨格筋信号や患者の運動の信号)を用いて確認するための更なる時間を、ITCS装置に提供するよう選択される。遅延期間1460は、検出された不整脈の再評価を可能にするよう、患者の健康を損なわない範囲で充分に持続すべきである。遅延1460の持続時間は、例えば2秒から60秒まで変動し得る。装置は、遅延時間が呼び出された際に通知を与えてもよい。
【0117】
遅延1460の経過後、ITCS装置は、患者へのショック送出の準備として除細動コンデンサへの充電を開始してもよく、ショック送出前に患者活動信号1420を再評価してもよい。ショック時間1470におけるショック送出前に患者の活動ステータスを判定するために、患者活動信号1420が再評価される。
【0118】
図7のグラフに示されているショック時間1470では、患者活動信号1420は閾値1450を下回っており、患者がもはや活発でないことを示している。これは、患者が不十分な血液供給に屈したためであるかもしれず、意識不明である可能性がある。明らかにショック1470が示唆され、この場合には、患者を蘇生させるためにショック1470が送られる。しかし、ショック時間1470におけるECG信号1410が、不整脈が終わったことを示す場合には、患者活動信号1420のステータスに関わりなく、患者へのショックは送られない。
【0119】
遅延1460は、検出された不整脈の重症度に応じて選択的に用いられるような、階層的な方法で用いられてもよい。例えば、ECG信号1410が危険又は生命を脅かす不整脈の存在を明らかに示す場合には、遅延1460をバイパスして、患者に直ちにショックを与えてもよい。しかし、ECG信号1410が、確定的でないが、不整脈の可能性を示す場合には、患者活動信号1420を評価できるように、不整脈治療の送出が遅延される。
【0120】
図8は、皮下の骨格筋信号検出をECG又はEGMに基づく律動検出と組み合わせて用いる1つの方法に関連する様々な処理を示す。心電図に基づくアルゴリズム等といった他の不整脈検出手段を用いた後に、骨格筋信号検出回路を使用可能にしてもよい。エネルギーを節約するために、例えば、骨格筋信号検出は、心臓信号検出回路を用いて不整脈を検出した後に起動されてもよく、不整脈治療の送出後又は不整脈が止まった後で、停止させてもよい。このように、骨格筋信号検出を用いて雑音から不整脈イベントを識別することにより、不適切なショック送出の発生を低減でき、患者の快適さを大きく改善する可能性が提供される。
【0121】
引続き図8を参照すると、本発明の一実施形態に従って心臓不整脈を検出するために、ECGに基づく検出アルゴリズム600が用いられる。ECGに基づく検出601を用いて、心室性不整脈が検出された(602)場合には、骨格筋信号の状態を判定するためにチェック604が行われる。骨格筋信号の現在状態が未知であるか又は利用できない場合には、骨格筋信号が取得される(606)。これには、骨格筋センサ又は検出回路を作動させる(すなわち電源投入する)ことが含まれてもよい。
【0122】
閾値に対する骨格筋信号の比較607が患者の無活動を示す場合には、除細動コンデンサが充電され(608)、不整脈を治療するためにショックが送られる(610)。しかし、閾値に対する骨格筋信号の比較607が患者の活動又は意識を示す場合には、遅延期間が開始され、遅延期間の満了後に心電図信号の再確認614が行われる。前にブロック606で骨格筋信号をチェックした後に、心電図信号が心室性不整脈の継続的な存在を示唆又は確認する場合には、除細動コンデンサが充電され(608)、ショックが送られる(610)。
【0123】
この例示的な手法では、確認された心室性不整脈の治療が過度に遅れないように、骨格筋信号を用いた、検出された心室性不整脈の再評価は、一回だけ行われる。なお、ショック送出前にコンデンサを充電する間に、心室性不整脈再確認ルーチンが実行されてもよい。
【0124】
本発明の別の実施形態では、不整脈の識別及び確認のための代替信号を提供するために、血液センサが用いられる。心電図信号は、しばしば、真の心臓信号及び様々な不整脈に似た雑音信号及びアーチファクトを含む。本発明に従い、代替センサとして血液センサを用いることにより、様々な雑音を含む状態から真の不整脈状態を識別する能力が提供される。さらに、本発明による代替センサとして血液センサを用いることにより、不整脈検出及び治療送出判定の基礎になる信号が、真の心臓信号の特徴に類似した特徴を有し得る擬似信号ではなく、心臓信号(例えばQRSコンプレックス)を含むことを確認する能力が提供される。
【0125】
ITCS装置は、皮下電極によって感知される心臓のECG信号の雑音除去を改善するための、多パラメータ心臓信号確認能力及び/又は不整脈識別能力を含むよう実装されてもよい。この雑音除去/低減手法は、多パラメータ不整脈識別を提供することにより、検出アルゴリズムで偽陽性が生じるリスクを都合よく低減する。
【0126】
例えば、代替信号を用いて、ECG信号がQRSコンプレックスを有する心臓信号を含むことと、QRSコンプレックスを有するECG信号のみが確認されたECG信号であると見なされることとを確認してもよい。それに続く心律動解析(特に不整脈解析を含む)は、例えば、このような解析に用いられる心拍数の計算に、確認されたECG信号のみが用いられることを要求してもよい。この心臓信号確認技術は、電気的干渉及び雑音が混入しにくい、よりロバストなアルゴリズムを提供することにより、頻拍性不整脈治療の不適切な送出の発生を低減する。
【0127】
心臓信号確認の1つの手法は、心電図信号と代替信号との時間的な関係を判定することを含む。検出窓は、例えば、心電図信号の検出に応答して開始されてもよく、代替信号が検出窓の範囲内の時間に受け取られたか否かを判定するために用いられてもよい。例えば、1つの不整脈検出手法では、ECG信号を用いて検出窓を定める。次に、検出窓内の血液センサ信号等といった非電気生理学的ソース信号を、心臓情報について評価する。非電気生理学的ソース信号が窓内の心臓イベントを含む場合には、その心臓イベントに対応するものとしてECG信号が確証される。これは、例えば、心拍数に基づく不整脈検出アルゴリズムにおいて、ECG情報のみを用いて計算した心拍数よりロバストな心拍数を提供するために用いられてもよい。心拍動が、それと関連付けられた非電気生理学的に感知された心拍動によって確証される場合には、このアルゴリズムは、例えば、この識別されたECG心拍動のみを考慮してもよい。
【0128】
心拍数は、例えば、一続きの心電図信号及び一続きの代替信号に基づいて計算されてもよい。これらの心拍数は、正常洞調律と不整脈とを識別するために用いられてもよい。これらの心拍数は不整脈閾値と比較されてもよく、例えば、第1の不整脈閾値を越える第1の心拍数及び第2の不整脈閾値を越えない第2の心拍数に応答して、不整脈の不在を判定するために用いられてもよい。不整脈の存在は、心電図信号のモルフォロジーを用いて判定されてもよく、次に、代替信号を用いて確認されてもよい。
【0129】
本発明の別の実施形態では、心電図信号を用いて不整脈を検出したが、代替信号(例えば血液センサ信号)を用いると不整脈が検出されないことに応答して、除細動治療の送出が阻止又は保留されてもよい。不整脈の感知及び治療の阻止を行う方法は、胸腔内ではない皮下位置において心電図信号を感知することを含んでよい。検出窓は、心電図信号から決定される開始時間によって定められてもよい。検出窓内において、非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた信号を受け取って評価してもよい。心臓不整脈の存在又は不在は心電図信号を用いて判定されてもよく、非電気生理学的な心臓信号によって検出された心臓不整脈の存在によって確認されてもよい。確認に用いられる検出窓の開始時間は、心電図信号の変曲点(例えば極大値又は極小値)と関連付けられてもよい。心電図信号と非電気生理学的な心臓信号との間の相関を行ってもよい。
【0130】
一実施形態によれば、電気雑音又はアーチファクトの存在下で様々な心律動を検出する際の雑音識別を補助する代替信号を提供するために、光電脈波法が用いられる。この付加的な識別信号は血中酸素レベル又は拍動血液量レベルに基づくものであり、電気的心臓信号には基づかないので、この信号は、たとえ電気雑音の存在下でも、患者の律動状態又は血流動態に関する情報を提供し得る。
【0131】
血中酸素測定の検出のために皮下センサを用いてもよい。このようなセンサの1つは、例えばパルス酸素測定センサである。心室性頻拍症や心室細動等の潜在的に致命的な不整脈から、電気雑音を伴う正常洞調律を識別するために、心拍数、曲率及び他のECG情報と共に、血中酸素レベル情報を用いてもよい。ITCS装置は、識別のために、典型的なECG情報と組み合わせた血中酸素情報の特性を利用してもよい。
【0132】
本発明の一実施形態によれば、心律動の検出及び/又は確認のための代替信号として、非電気生理学的な心臓信号を生成するために、皮下光電脈波法を用いてもよい。この特徴は、特に電気雑音の存在下で心律動又は血液動態を検出するための、皮下ICDシステム(例えばITCS装置)の一部として、心電図に対する代替又は付加的な信号として、皮下光電脈波を用いる。
【0133】
植え込み型電気除細動器/細動除去器によって検出された患者の心臓不整脈を確認するために、皮下で光電脈波法を用いてもよい。植え込み型電気除細動器/細動除去器用に患者の血流動態を特徴づけるために、皮下光電脈波法を用いてもよい。例えば、皮下光電脈波法を用いて、後負荷を評価してもよい。後負荷とは、左心室の収縮開始後に左心室にかかる収縮期負荷である。後負荷に関連する抵抗は、各心拍動の間に血管系に血液の塊を押し込む際の、血管系の抵抗力から生じる。高血圧や大動脈弁狭窄症は、後負荷の慢性的な増加を生じる場合があり、これは、左心室肥大や、それに続く心不全に至る場合がある。
【0134】
更に、植え込み型電気除細動器/細動除去器用の患者の酸素飽和の変化に関連する特性を測定するためのパルス酸素測定のために、皮下の光電脈波法を用いてもよい。一般的には、他の検出アルゴリズムを用いた後の不整脈の確認にのみ光電脈波法を用いる等というように、光電脈波法の全体的なエネルギーを低減することが望ましい。
【0135】
1つの特定の手法では、心律動解析に用いられる心臓信号が、骨格雑音信号等の擬似信号ではなく、本当に心臓信号であることを確認又は証明するために、皮下光電脈波を用いる。例えば、皮下光電脈波を用いて、頻拍性不整脈治療の送出の決定を行うために用いられる心臓信号が患者の実際の心律動を示す心電図であることを確認してもよい。この手法によれば、皮下光電脈波は、主として、不整脈解析及び治療送出判定に用いられる信号が本当に心臓信号であることを確認するために用いられる。これは、不整脈の有無を別途確認するためにこの信号を用いることとは別である。しかし、皮下光電脈波が、この信号を心臓信号の確認のために用いることとは別に、又はそれに加えて、不整脈の有無を別途確認するための信号として用いられてもよいことを理解されたい。
【0136】
例えば、制御システムプロセッサは、不整脈の存在の検出に用いられるECG信号が心臓信号(例えばQRSコンプレックス)を含むことが、光電脈波信号を用いて確認されるまで、頻拍性不整脈治療の送出を阻止してもよい。プロセッサは、例えば、頻拍性不整脈治療の送出を所定時間だけ阻止してもよく、その間、検証プロセスを実行し、このような検証プロセスが不成功だった場合、又は不整脈の停止に応答して、所定時間の満了時に頻拍性不整脈治療の送出を保留する。プロセッサは、検証プロセスの良好な結果に応答して、頻拍性不整脈治療を送ってもよい。また、プロセッサは、検証プロセスに関わりなく、生命を脅かす不整脈の検出に応答して、頻拍性不整脈治療を直ちに送ってもよい。
【0137】
皮下光電脈波法の使用により、幾つかの利点が達成され得る。例えば、ショックの特異度を向上させることによって不適切なショックの回数を低減するために、皮下光電脈波法を用いてもよい。血液灌流のレベル又は血液灌流の相対変化に基づく心室性不整脈の確認に備えるために、皮下光電脈波法を用いてもよい。更に、非電気的な光に基づく(non-electric photo-based)検出法を用いることによって、心電図に基づくアルゴリズムを補うために、皮下光電脈波法を用いてもよい。また、不整脈の再検出及び再確認のために、皮下光電脈波法を用いてもよい。
【0138】
図9〜図14は、心律動の検出及び/又は確認のために用いられる代替信号を提供する皮下の血液感知の使用と関連する、様々な実施形態及びプロセスを示す。図9は、皮下心臓刺激器511(例えばITCS装置)での使用に適した光電脈波感知システム500の1つの実装例を示す。
【0139】
図9は、皮膚530の層と筋組織540の層との間で配向された皮下光電脈波のセンサ520の配備を示す。図9の説明的な例は、光源550(すなわちLED)と、筋組織540に面した検出器560とを示している。この配向は、周囲光源からの干渉を都合よく低減し、特に、検出器560に光を案内するための不透明バリア570を用いた場合には、脈波上の雑音アーチファクトが低減される。他の構成は、光源550と、皮膚の側又は皮膚に面した検出器560とを有してもよい。
【0140】
心臓刺激器511が解釈不能な心電図に遭遇した場合に、又は、血流力学的に不安定な不整脈の検出を確認するために、光源550が起動され、光検出器560の出力が同期測定される。次に、光電脈波から脈拍数を判定し、治療判定を知らせるために、心臓刺激器511のアルゴリズムが呼び出される。この信号からの測定値を、心電図雑音識別及び/又は不整脈検出アルゴリズムに知らせる、又はこのアルゴリズムを適応させるために用いてもよい。
【0141】
この実施形態による皮下光電脈波法の使用は、電気雑音又はアーチファクトの存在下における心律動の検出を都合よく提供する。光電脈波は光学信号であるので、ECGと同じ雑音源の影響を受けにくいという点で、このアルゴリズムはロバストである。
【0142】
分解図580は、光源550から検出器560に至る光路570を示す。筋組織540内の血液の灌流は、光路570に沿って組織540から検出器560へと反射される光の特性に影響を及ぼし、血中酸素飽和レベル、血液量、脈拍、及び他の血液特性等といった血液情報を提供する。
【0143】
図10に示される実装例は光源回路515を含み、光源回路515は、赤色LED535及び赤外線(IR)LED545のそれぞれに接続されたLED制御525を含む。2つの光源及び1つの検出器を用いて、組織542内の酸素飽和レベルの変化を測定してもよい。一般的に、一方の光源(例えば960nmまでの波長で発光するIR LED545)は血液の色の変化に概ね影響を受けない吸収特性を有し、他方の光源(例えば660nmまでの波長で発光する赤色LED535)は血液の色の変化に影響される吸収特性を有する。灌流が低い領域では、反射率を用いて酸素飽和度の絶対値を計算する際に誤差が生じ得るので、図10〜13図に示される実施形態は、酸素飽和の絶対レベルではなく、変化のみをモニタリングする。血液の酸素飽和の変化からの情報は、潜在的に致命的な不整脈と雑音アーチファクトとを識別するのに十分である(この雑音アーチファクトは、識別を行わない場合には患者の不必要なショック治療につながり得る)。
【0144】
引き続き図10を参照すると、光検出回路555は、フォトダイオード576に接続される検出器565を含む。この構成では、処理回路575は、光源回路515及び光検出回路555に接続される。処理回路575は、LED制御525及び検出回路555に接続されたマルチプレクサ585を含む。マルチプレクサ585と信号処理回路要素575との間には、赤色信号チャネル586及びIR信号チャネル587がそれぞれ接続される。信号処理回路575は、赤色信号チャネル586及びIR信号チャネル587から受け取った信号を操作し、不整脈検出及び確認を含む心律動検出及び/又は確認のために、様々なアルゴリズムを用いてこのような信号を評価する。
【0145】
拡大図582は、検出器562に至る第1の光源552からの光路572及び第2の光源554からの光路574を示す。筋組織542内の血液の灌流は、組織542から検出器562まで光路572及び光路574に沿って反射される光の特性に影響を及ぼし、血中酸素飽和レベル、血液量、脈拍、又は他の血液特性等といった血液情報を提供する。
【0146】
図11及び図12は、生きた豚の被検体から得たデータのグラフであり、本発明の一実施形態に従い、正常洞調律と不整脈とを区別するために心電図法と光電脈波法とを組み合わせた一例を示す。図11は、正常洞調律状態730及び心室細動状態740に対する、2秒間にわたって示された心電図700及び光電脈波710を示す。図12は、正常洞調律762の後に心室細動事象764が続く38秒間の期間780における、心電図760及び時間相関した光電脈波770を示す。図11及び図12は、正常洞調律730、762が心室細動740、764状態に移ると、心電図700、760及び光電脈波710、770の特性が大きく変化することを示している。
【0147】
再び図11を参照すると、正常洞調律730のグラフと心室細動740のグラフとはスケールが異なることを留意されたい。心室細動740の光電脈波710は、正常洞調律730の光電脈波710と同等に見えるが、心室細動740のグラフの光電脈波710のピーク間振幅は、正常洞調律730のグラフの光電脈波710のピーク間振幅よりかなり小さい。心室細動740のグラフの縦軸スケールは、正常洞調律730のグラフの縦軸スケールと等しい。
【0148】
次に図12を参照すると、RMS血中酸素レベル772は正常洞調律762に対応し、RMS血中酸素レベル774は心室細動事象764に対応する。閾値776は予め決められてもよく、又は、正常洞調律762と心室細動事象764との区別を補助するために適応的に調整されてもよい。正常洞調律762と心室細動事象764との間の時間は、心室細動764を意図的に誘発する間の心電図データの損失760を示す。
【0149】
図13Aは、本発明の一実施形態による光電脈波回路のLED電流源部1810の概略図である。図13Aに示すように、電流源部1810は定電流源として構成されており、ソースLED回路1811を用い、例えば、1msの周期及び0.1msのパルス幅を有する駆動パルス1813を生じ得る発振器1812によって駆動される。
【0150】
図13Bは、本発明の一実施形態による光電脈波回路の光検出器部1820の概略図である。図13Bに示される検出器部は、フォトダイオード1821と、光電流−電圧増幅器1822と、高域フィルタ1823と、電圧積分器1824と、低域フィルタ1825とを含む。図13A及び図13Bに示される回路は、図12に示される信号770のような光電脈波信号を提供するために有用である。
【0151】
図14は、心電図に基づく律動検出と組み合わせて皮下光電脈波を利用する1つの方法と関連する、様々な処理を示す。図14に示される方法は、エネルギー利用に関する詳細を提示する。光電脈波回路は、心電図に基づくアルゴリズム等の他の不整脈検出法が用いられた後にのみ、使用可能にされてもよい。エネルギーを節約するために、潜在的なショック送出の前にのみ光電脈波法を用いてもよい。光電脈波の使用が終わったら、回路を使用不能にしてもよい。1つの実装例によれば、光電脈波法を10秒間用いる場合に必要な更なるエネルギーは約0.5ジュールである。このエネルギーは、除細動に用いられるエネルギー(>5ジュール)と比較して非常に低い。従って、光電脈波法を用いて、心電図で識別された1つの不整脈事象を雑音として識別することにより、4.5ジュール以上の節約となる可能性がある。なお、不必要なショックをなくすことにより、ITCSの使用寿命が延長されると同時に、患者の快適さが改善される。
【0152】
図14を参照すると共に、図11及び図12を更に参照すると、心臓不整脈を検出するために、ECGに基づく検出アルゴリズム1600が用いられる。ECGに基づく検出1601を用いて、心室性不整脈が検出される(1602)と、光電脈波がチェックされたか否かを確かめるために判定1604が行われる。取得した光電脈波のチェック1606が行われる。
【0153】
例えば閾値1607を用いる等して、光電脈波が心室性不整脈の存在を示唆又は確認した場合には、除細動コンデンサが充電され(1608)、ショックが送られる(1610)。なお、コンデンサ充電の間、ショック送出前に、心室性不整脈再確認ルーチンが実行されてもよい。光電脈波信号が、例えば図12に示される閾値のような所定の閾値1607を越えている場合には(なお、この比較には光電脈波のRMSレベルを用いてもよい)、所定時間後にECG信号の再チェック1614が行われる。
【0154】
図14に示される方法では、光電脈波信号を生成する光電脈波センサは、選択的に電源投入及び電源切断されてもよい。例えば、光電脈波センサは、図14のブロック1601及び1602等においてECG信号を用いて頻拍性不整脈が検出されるまでは、電源切断状態であってもよい。光電脈波センサは、心臓信号及び/又は不整脈検出検証プロセスが完成するまでは、電源投入されたままであってもよい。例えば、光電脈波センサは、ブロック1606及び1607と関連付けられた処理の完了後、ブロック1608で除細動コンデンサが充電される前(コンデンサを完全に充電するには約20秒間かかり得る)に、電源切断されてもよい。
【0155】
本願明細書に記載した心臓信号識別へのアプローチは、心臓信号の存在確認、不整脈及びそれに関連するECG信号の識別及び/又は確認を含む様々な目的のための代替信号の使用を含む。本発明の態様を用いたITCS装置は、バッチモードで、又は適応的に動作してもよく、オンライン又はオフラインの実装を可能にする。電力を節約するために、このシステムは、収集された信号中の不整脈の存在又は雑音を識別して、本発明に従って心臓信号識別法を賢明にオン/オフするために、当該技術分野で周知のアルゴリズムを用いる階層的決定ルーチンのためのオプションを含んでもよい。
【0156】
上述した好ましい実施形態には、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更及び追加が行われ得る。従って、本発明の範囲は、上述した特定の実施形態によって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びその均等物のみによって定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1A】本発明の一実施形態による、患者に植え込まれた経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置を示す図である。
【図1B】本発明の一実施形態による、患者に植え込まれた経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置を示す図である。
【図1C】本発明の一実施形態による、経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置の様々な構成要素を示すブロック図である。
【図1D】本発明の一実施形態による、経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置の様々な処理及び検出要素を示すブロック図である、
【図1E】本発明の一実施形態による、ITCS装置の様々な構成要素の1つの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による、電極アレイを含む経胸腔心臓感知及び/又は刺激装置の構成要素を示す図である。
【図3】連続した2つの鼓動に対する、頸動脈脈拍波形、心音図(PCG)波形、心電図(ECG)波形、及び、フィルタリングされた経胸腔インピーダンス信号を示す図である。
【図4】連続した2つのPQRSコンプレックスと、それらに関連する疑似アクセロメータ信号と、本発明の一実施形態による信号相関のための検出窓とを示すグラフである。
【図5】本発明による多パラメータ不整脈識別方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明による多パラメータ不整脈識別方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態による、閾値を含む心電図信号及び骨格筋信号のグラフである。
【図8】本発明の一実施形態による不整脈識別方法のフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による、皮下に植え込まれた光電脈波法機能を有するICDの平面図である。
【図10】本発明の一実施形態による2色光電脈波システムを示すブロック図である。
【図11】正常洞調律の信号対心室性細動の信号を示すグラフである。
【図12】正常洞調律におけるRMS光電脈波レベル対心室細動におけるRMS光電脈波レベルを示すグラフである。
【図13A】本発明の一実施形態によるLED伝達回路及びLED検出回路の回路図である。
【図13B】本発明の一実施形態によるLED伝達回路及びLED検出回路の回路図である。
【図14】本発明の一実施形態による不整脈識別方法のフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成されたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられるエネルギー送出回路と、
前記ハウジング内に設けられる検出回路と、
前記エネルギー送出及び検出回路に接続され、患者の胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成された1つ以上の電極であって、心臓及び筋活動を感知する1つ以上の電極と、
前記ハウジング内に設けられ、前記エネルギー送出及び検出回路に接続されるプロセッサであって、感知された心臓活動から生成される心臓信号を用いて不整脈を検出すると共に、感知された筋活動から生成される活動信号を用いて患者の活動状態を検出し、前記活動信号に応じて前記不整脈を治療する治療の送出を修正するプロセッサと、
を含む、植え込み型心臓刺激装置。
【請求項2】
前記プロセッサが、活動閾値を越える前記活動信号に応答して前記不整脈治療の送出を阻止する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサが、患者の意識又は運動を示す前記活動信号に応答して前記不整脈治療の送出を阻止する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサが、活動閾値を越える前記活動信号に応答して前記不整脈治療の送出を所定時間だけ阻止すると共に、前記所定時間が満了し且つ前記不整脈が停止した場合には前記不整脈治療の送出を保留する、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、活動閾値を越える前記活動信号に応答して前記不整脈治療の送出を所定時間だけ阻止すると共に、前記所定時間が満了し且つ前記不整脈が停止していない場合には前記不整脈治療を送出する、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、活動閾値を越える前記活動信号に応答して前記不整脈治療の送出を阻止すると共に、前記プロセッサが、前記不整脈治療が阻止されたことを通知する、請求項1記載の装置。
【請求項7】
患者の意識又は運動を示す前記活動信号に応答して、前記プロセッサが前記不整脈治療の送出を阻止し、
生命を脅かす不整脈の検出に応答して、前記プロセッサが前記活動信号に関わりなく直ちに前記不整脈治療を送出する、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記検出回路を用いて心電図を受け取り、該心電図から前記心臓信号と前記活動信号とを識別する、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、信号分離技術を用いて前記心臓信号と前記活動信号とを識別する、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサが、ブラインドソース分離を用いて前記心臓信号と前記活動信号とを識別する、請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記1つ以上の電極が、
前記心臓活動と関連付けられた心臓信号を優先して感知するよう構成された第1の電極の組合せと、
前記筋活動と関連付けられた雑音信号を優先して感知するよう構成された第2の電極の組合せと、
を含む、請求項8記載の装置。
【請求項12】
前記1つ以上の電極が複数の電極で構成され、
前記プロセッサが前記複数の電極の組合せを選択し、
前記プロセッサが、コントローラが選択した前記電極の各組合せによって取得された信号の心臓信号成分及び雑音成分を感知する、
請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記1つ以上の電極が複数の電極で構成され、前記プロセッサが、前記複数の電極にわたる興奮順序を用いて前記不整脈を検出する、請求項1記載の装置。
【請求項14】
前記プロセッサが、心臓信号の曲率を用いて前記不整脈を検出する、請求項1記載の装置。
【請求項15】
胸腔内ではない1つ以上の皮下位置で信号を検出することと、
前記検出された信号から心臓信号を識別することと、
前記検出された信号から筋活動に関連付けられた活動信号を識別することと、
前記心臓信号を用いて不整脈を検出することと、
前記活動信号を用いて患者の活動状態を検出することと、
前記活動信号に応じて、前記不整脈を治療する胸腔内ではない皮下における治療の送出を修正することと、
を含む心臓刺激方法。
【請求項16】
活動閾値を越える前記活動信号に応答して、前記不整脈治療の送出が阻止される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
患者の意識又は運動を示す前記活動信号に応答して、前記不整脈治療の送出が阻止される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
活動閾値を越える前記活動信号に応答して、前記不整脈治療の送出が所定時間だけ阻止され、前記所定時間が満了し且つ前記不整脈が停止した場合には、前記不整脈治療の送出が保留される、請求項15記載の方法。
【請求項19】
活動閾値を越える前記活動信号に応答して、前記不整脈治療の送出が所定時間だけ阻止され、前記所定時間が満了し且つ前記不整脈が停止していない場合には、前記不整脈治療が送出される、請求項15記載の方法。
【請求項20】
患者の意識又は運動を示す前記活動信号に応答して、前記不整脈治療の送出が阻止され、
生命を脅かす不整脈の検出に応答して、前記活動信号に関わりなく前記不整脈治療が直ちに送出される、
請求項15記載の方法。
【請求項21】
前記心臓信号と前記活動信号とを識別することが、前記検出された信号に対して信号分離技術を用いて前記心臓信号と前記活動信号とを識別することを含む、請求項15記載の装置。
【請求項22】
前記心臓信号と前記活動信号とを識別することが、前記検出された信号に対してブラインドソース分離を行うことを含む、請求項15記載の方法。
【請求項23】
前記信号を検出することが、胸腔内ではない複数の位置に設けられる複数の電極を用いて信号を検出することを含み、前記電極は、複数の感知ベクトルを定めるよう選択的に組み合わせ可能であり、前記心臓信号と前記活動信号とを識別することが、
前記心臓活動と関連付けられた信号を優先して感知する前記複数の感知ベクトルの第1の感知ベクトルを選択することと、
前記筋活動と関連付けられた信号を優先して感知する前記複数の感知ベクトルの第2の感知ベクトルを選択することと、
を含む、
請求項15記載の方法。
【請求項24】
前記筋活動が患者の運動を示し、前記活動信号を識別することが、前記患者の運動を示すアクセロメータ信号を検出することを含む、請求項15記載の方法。
【請求項25】
前記不整脈が、モルフォロジーに基づく不整脈検出を用いて検出される、請求項15記載の方法。
【請求項26】
前記不整脈が、心拍数に基づく不整脈検出を用いて検出される、請求項15記載の方法。
【請求項27】
前記不整脈が、複数の電極によって検出される興奮順序を用いて検出される、請求項15記載の方法。
【請求項28】
前記不整脈が、前記心臓信号の曲率を用いて検出される、請求項15記載の方法。
【請求項29】
胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することと、
非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた信号を受け取ることと、
前記非電気生理学的な信号を用いて、前記心電図信号が心臓信号を含むことを確認することと、
前記心電図信号及び前記非電気生理学的な信号を用いて、正常洞調律と心臓不整脈とを識別することと、
前記感知された信号が心臓信号でない場合に、胸腔内ではない皮下における心臓刺激治療の送出を保留することと、
を含む、不整脈識別方法。
【請求項30】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
前記心電図信号を用いて前記不整脈を検出することと、
前記非電気生理学的な信号を用いて前記不整脈の存在を確認することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
前記心電図信号を用いて前記不整脈を検出することと、
前記不整脈の検出中に受け取った前記心電図信号と前記非電気生理学的な信号との時間的関係を判定することと、
前記心電図信号と前記非電気生理学的な信号との前記時間的関係に基づいて前記不整脈の存在を確認することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
一続きの前記心電図信号の各心電図信号の受け取りに応答して検出窓を開始することと、
一続きの前記非電気生理学的な信号の各非電気生理学的な信号が前記検出窓の範囲内の時間に受け取られたか否かを判定することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
一続きの心電図信号に基づいて第1の心拍数を計算することと、
一続きの非電気生理学的な信号に基づいて第2の心拍数を計算することと、
前記第1の心拍数及び前記第2の心拍数を用いて前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項34】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
一続きの心電図信号に基づいて第1の心拍数を計算することと、
一続きの非電気生理学的な信号に基づいて第2の心拍数を計算することと、
前記第1の心拍数を第1の不整脈閾値と比較すること、
前記第2の心拍数を第2の不整脈閾値と比較すること、
前記第1の不整脈閾値を越える第1の心拍数及び前記第2の不整脈閾値を越える第2の心拍数に応答して、前記不整脈の存在を判定することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項35】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
一続きの心電図信号に基づいて第1の心拍数を計算することと、
一続きの非電気生理学的な信号に基づいて第2の心拍数を計算することと、
前記第1の心拍数を第1の不整脈閾値と比較することと、
前記第2の心拍数を第2の不整脈閾値と比較することと、
前記第1の不整脈閾値を越える前記第1の心拍数及び前記第2の不整脈閾値を越えない前記第2の心拍数に応答して、前記不整脈の不在を判定することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項36】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
前記心電図信号のモルフォロジーを用いて前記不整脈の存在を判定することと、
前記非電気生理学的な信号を用いて前記不整脈の存在を確認することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項37】
前記非電気生理学的な信号が心音信号を含む、請求項29記載の方法。
【請求項38】
前記非電気生理学的な信号が、前記心臓活動を示す亜音速音響信号を含む、請求項29記載の方法。
【請求項39】
前記非電気生理学的な信号が脈拍圧信号を含む、請求項29記載の方法。
【請求項40】
前記非電気生理学的な信号が、前記心臓活動を示すインピーダンス信号を含む、請求項29記載の方法。
【請求項41】
前記非電気生理学的な信号が、パルス酸素測定信号を含む、請求項29記載の方法。
【請求項42】
前記心電図信号を用いた不整脈の検出及び前記非電気生理学的な信号を用いた不整脈の検出に応答して、不整脈症状を宣言することを更に含む、請求項29記載の方法。
【請求項43】
前記心電図信号を用いた不整脈の検出及び前記非電気生理学的な信号を用いた不整脈の検出に応答して、除細動治療の送出を可能にすることを更に含む、請求項29記載の方法。
【請求項44】
前記心電図信号を用いた不整脈の検出及び前記非電気生理学的な信号を用いた不整脈の非検出に応答して、除細動治療の送出を阻止することを更に含む、請求項29記載の方法。
【請求項45】
胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することと、
非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた信号を受け取ることと、
前記非電気生理学的な信号を用いて、前記感知された心電図信号が心臓信号を含むことを確認することと、
前記感知された心電図信号及び前記確認された心臓信号の一方を用いて、心臓不整脈を検出することと、
前記感知された信号が心臓信号でない場合に、前記心臓不整脈の治療を保留することと、
を含む、不整脈識別方法。
【請求項46】
前記心電図信号の変曲点と関連付けられた開始時間を有する検出窓を定めることと、
前記検出窓の範囲内で受け取られた非電気生理学的な信号を評価することと、
を更に含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記検出窓の前記開始時間が、前記心電図信号の極大値又は極小値と関連付けられる、請求項46記載の方法。
【請求項48】
一続きの心電図信号間のインターバルに基づいて第1の心拍数を計算することと、
一続きの非電気生理学的な心臓信号間のインターバルに基づいて第2の心拍数を計算することと、
を更に含み、
前記心臓不整脈の存在を確認することが、前記第1の心拍数と前記第2の心拍数とを比較することを含む、
請求項45記載の方法。
【請求項49】
前記心臓不整脈の存在を確認することが、前記心電図信号と前記非電気生理学的な心臓信号との間の相関を行うことを含む、請求項45記載の方法。
【請求項50】
前記非電気生理学的な心臓信号がアコースティックエミッション情報を含む、請求項45記載の方法。
【請求項51】
前記アコースティックエミッション情報がピークの心音の時間的位置を含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記非電気生理学的な心臓信号が心臓加速情報を含む、請求項45記載の方法。
【請求項53】
前記非電気生理学的な心臓信号が、脈拍圧情報、血流量情報、心拍数情報、及びパルス酸素測定情報の1つ以上を含む、請求項45記載の方法。
【請求項54】
前記心臓不整脈の存在又は不在を検出することが、前記心電図信号の心拍数に基づく解析を行うことを含む、請求項45記載の方法。
【請求項55】
前記心臓不整脈の存在又は不在を検出することが、前記心電図信号のモルフォロジーに基づく解析を行うことを含む、請求項45記載の方法。
【請求項56】
前記心臓不整脈を治療するために心臓治療を送ることを更に含む、請求項45記載の方法。
【請求項57】
植え込み可能なハウジングと、
胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成された電極構成と、
前記ハウジング内に設けられ、前記電極構成に接続される検出回路であって、心電図信号を検出するよう構成された検出回路と、
非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた信号を感知するよう構成されたセンサと、
前記電極構成に接続されるエネルギー送出回路と、
前記ハウジング内に設けられ、前記検出回路、前記センサ、及び前記エネルギー送出回路に接続されるプロセッサであって、前記非電気生理学的な信号を用いて、前記検出された心電図信号が心臓信号を含むことを確認し、前記検出された心電図信号が心臓信号を含まない場合には心臓不整脈の治療を保留するプロセッサと、
を含む、植え込み型心臓装置。
【請求項58】
前記エネルギー送出回路が除細動治療回路を含む、請求項57記載の装置。
【請求項59】
前記エネルギー送出回路がペーシング治療回路を含む、請求項57記載の装置。
【請求項60】
前記センサが、前記ハウジングの内部又は表面に設けられる、請求項57記載の装置。
【請求項61】
前記センサが、前記ハウジングに接続されるリードの内部又は表面に設けられる、請求項57記載の装置。
【請求項62】
前記センサが、アクセロメータ、マイクロホン、音響トランスデューサ、血流量トランスデューサ、パルス酸素濃度計、及び光電脈波回路の1つ以上を含む、請求項57記載の装置。
【請求項63】
胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成されたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、電気生理学的心臓信号を生成するよう構成された検出回路と、
前記ハウジング内に設けられるエネルギー送出回路と、
胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成され、前記検出及びエネルギー送出回路に接続される少なくとも1つの電極と、
血液センサ信号を生成するよう構成された植え込み型血液センサと、
前記ハウジング内に設けられ、前記血液センサと前記検出及びエネルギー送出回路とに接続されるプロセッサであって、前記血液センサ信号を用いて、前記電気生理学的心臓信号が心臓信号を含むことを確認するよう構成されると共に、前記血液センサ信号と前記心臓信号を含む前記電気生理学的心臓信号とを用いて、心律動を評価するように構成されたプロセッサと、
を含む、植え込み型皮下装置。
【請求項64】
前記血液センサが、胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成された、請求項63記載の装置。
【請求項65】
前記血液センサが前記ハウジングの内部又は表面に設けられる、請求項63記載の装置。
【請求項66】
前記血液センサが、光学信号感知を行うよう構成されたセンサを含む、請求項63記載の装置。
【請求項67】
前記血液センサが血中酸素飽和センサを含む、請求項63記載の装置。
【請求項68】
前記血液センサがパルス酸素濃度計を含む、請求項63記載の装置。
【請求項69】
前記血液センサがパルス酸素濃度計を含み、該パルス酸素濃度計が少なくとも2つの発光ダイオード及び少なくとも1つの光検出器を含む、請求項63記載の装置。
【請求項70】
信号の変動を考慮するために光検出器の検出閾値が周期的に調整される、請求項69記載の装置。
【請求項71】
前記血液センサがパルス酸素濃度計を含み、該パルス酸素濃度計が、約550ナノメートルと約750ナノメートルとの範囲内のピーク発光波長を有する第1の発光ダイオードと、約750ナノメートルと約1050ナノメートルとの範囲内のピーク発光波長を有する第2の発光ダイオードとを含む、請求項63記載の装置。
【請求項72】
前記血液センサが光電脈波法回路を含む、請求項63記載の装置。
【請求項73】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号及び前記血液センサ信号を用いて、頻拍性不整脈である心律動を識別する、請求項63記載の装置。
【請求項74】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号と前記血液センサ信号の相対変化とを用いて、頻拍性不整脈である心律動を識別する、請求項63記載の装置。
【請求項75】
前記プロセッサが前記血液センサを選択的に起動及び停止させる、請求項63記載の装置。
【請求項76】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号を用いた頻拍性不整脈の検出に応答して前記血液センサを起動させ、前記電気生理学的心臓信号及び前記血液センサ信号を用いて前記頻拍性不整脈を評価する、請求項63記載の装置。
【請求項77】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号及び前記血液センサ信号を用いて前記頻拍性不整脈の存在を確認する、請求項76記載の装置。
【請求項78】
前記プロセッサが、前記頻拍性不整脈の存在の確認に応答して、前記頻拍性不整脈を治療する治療を送出し、前記プロセッサが、前記治療の送出前又は送出後に、前記血液センサを停止させる、請求項77記載の装置。
【請求項79】
前記プロセッサが、前記血液センサ信号を用いて前記頻拍性不整脈の存在を確認するまで、頻拍性不整脈治療の送出を阻止する、請求項63記載の装置。
【請求項80】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号及び前記血液センサ信号を用いて血液動態を判定する、請求項63記載の装置。
【請求項81】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号を用いた識別不能な心律動の検出に応答して前記血液センサを起動させ、前記血液センサ信号を用いて前記識別不能な心律動の識別を容易にする、請求項63記載の装置。
【請求項82】
前記少なくとも1つの電極がリードを介して前記ハウジングに接続され、前記ハウジングが少なくとも1つのハウジング電極を更に含む、請求項63記載の装置。
【請求項83】
前記プロセッサが、心機能を評価するために前記血液センサ信号を用いる、請求項63記載の装置。
【請求項84】
前記プロセッサが、酸素飽和を評価するために前記血液センサ信号を用いる、請求項63記載の装置。
【請求項85】
前記プロセッサが、後負荷を評価するために前記血液センサ信号を用いる、請求項63記載の装置。
【請求項86】
前記プロセッサが、前記血液センサ信号のモルフォロジーを解析することによって後負荷を評価する、請求項85記載の装置。
【請求項87】
胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することと、
胸腔内ではない皮下の感知位置から血液感知信号を取得することと、
前記心電図信号が心臓信号を含むことを確認することと、
前記血液感知信号と前記心臓信号を含む前記心電図信号とを用いて心律動を評価することと、
を含む律動評価方法。
【請求項88】
前記心律動を評価することが、前記心電図信号及び前記血液感知信号の一方又は両方を用いて頻拍性不整脈を検出することを含む、請求項87記載の方法。
【請求項89】
前記頻拍性不整脈を検出することが、前記心電図信号の心拍数に基づく解析を行うことを含む、請求項88記載の方法。
【請求項90】
前記頻拍性不整脈を検出することが、前記心電図信号のモルフォロジーに基づく解析を行うことを含む、請求項88記載の方法。
【請求項91】
前記頻拍性不整脈を検出することが、複数の電極を用いて前記心電図信号の活性化パターンを解析することを含む、請求項88記載の方法。
【請求項92】
前記頻拍性不整脈を治療することを更に含む、請求項88記載の方法。
【請求項93】
前記心律動を評価することが、前記心電図信号及び前記血液感知信号を用いて頻拍性不整脈の存在を確認することを含む、請求項87記載の方法。
【請求項94】
前記心律動を評価することが、前記心電図信号を用いて頻拍性不整脈を検出することと、前記血液感知信号を用いて前記頻拍性不整脈の存在を確認することと、を含む、請求項87記載の方法。
【請求項95】
前記心律動を評価することが、前記心電図信号を用いて頻拍性不整脈を検出することと、前記血液感知信号を用いて前記検出された頻拍性不整脈と雑音とを識別することと、を含む、請求項87記載の方法。
【請求項96】
前記心律動を評価することが、前記心電図信号と前記血液感知信号との間の相関を行うことによって心臓不整脈を検出することを含む、請求項87記載の方法。
【請求項97】
前記心律動を評価することが心臓頻拍性不整脈を検出することを含み、前記方法が、前記血液感知信号を用いて前記頻拍性不整脈の存在が確認されるまで頻拍性不整脈治療の送出を阻止することを更に含む、請求項87記載の方法。
【請求項98】
前記血液感知信号を取得することが、前記血液感知信号を生成する血液センサを選択的に電源投入及び電源切断することを含む、請求項87記載の方法。
【請求項99】
前記心律動を評価することが、
前記心電図信号を用いて頻拍性不整脈を検出することと、
前記頻拍性不整脈の検出に応答して、前記血液感知信号を生成する血液センサに電源投入することと、
前記血液感知信号を用いて前記頻拍性不整脈の存在を確認することと、
前記頻拍性不整脈の存在の確認後に前記血液センサを電源切断することと、
を含む、
請求項87記載の方法。
【請求項100】
前記頻拍性不整脈を治療することと、
前記頻拍性不整脈の治療前又は治療後に前記血液センサを電源切断することと、
を更に含む、請求項99記載の方法。
【請求項101】
前記血液感知信号が、血液灌流情報、血中酸素飽和情報、光電脈波情報、及びパルス酸素測定情報の1つ以上を含む、請求項87記載の方法。
【請求項1】
患者の胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成されたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられるエネルギー送出回路と、
前記ハウジング内に設けられる検出回路と、
前記エネルギー送出及び検出回路に接続され、患者の胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成された1つ以上の電極であって、心臓及び筋活動を感知する1つ以上の電極と、
前記ハウジング内に設けられ、前記エネルギー送出及び検出回路に接続されるプロセッサであって、感知された心臓活動から生成される心臓信号を用いて不整脈を検出すると共に、感知された筋活動から生成される活動信号を用いて患者の活動状態を検出し、前記活動信号に応じて前記不整脈を治療する治療の送出を修正するプロセッサと、
を含む、植え込み型心臓刺激装置。
【請求項2】
前記プロセッサが、活動閾値を越える前記活動信号に応答して前記不整脈治療の送出を阻止する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサが、患者の意識又は運動を示す前記活動信号に応答して前記不整脈治療の送出を阻止する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサが、活動閾値を越える前記活動信号に応答して前記不整脈治療の送出を所定時間だけ阻止すると共に、前記所定時間が満了し且つ前記不整脈が停止した場合には前記不整脈治療の送出を保留する、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、活動閾値を越える前記活動信号に応答して前記不整脈治療の送出を所定時間だけ阻止すると共に、前記所定時間が満了し且つ前記不整脈が停止していない場合には前記不整脈治療を送出する、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、活動閾値を越える前記活動信号に応答して前記不整脈治療の送出を阻止すると共に、前記プロセッサが、前記不整脈治療が阻止されたことを通知する、請求項1記載の装置。
【請求項7】
患者の意識又は運動を示す前記活動信号に応答して、前記プロセッサが前記不整脈治療の送出を阻止し、
生命を脅かす不整脈の検出に応答して、前記プロセッサが前記活動信号に関わりなく直ちに前記不整脈治療を送出する、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記検出回路を用いて心電図を受け取り、該心電図から前記心臓信号と前記活動信号とを識別する、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、信号分離技術を用いて前記心臓信号と前記活動信号とを識別する、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサが、ブラインドソース分離を用いて前記心臓信号と前記活動信号とを識別する、請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記1つ以上の電極が、
前記心臓活動と関連付けられた心臓信号を優先して感知するよう構成された第1の電極の組合せと、
前記筋活動と関連付けられた雑音信号を優先して感知するよう構成された第2の電極の組合せと、
を含む、請求項8記載の装置。
【請求項12】
前記1つ以上の電極が複数の電極で構成され、
前記プロセッサが前記複数の電極の組合せを選択し、
前記プロセッサが、コントローラが選択した前記電極の各組合せによって取得された信号の心臓信号成分及び雑音成分を感知する、
請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記1つ以上の電極が複数の電極で構成され、前記プロセッサが、前記複数の電極にわたる興奮順序を用いて前記不整脈を検出する、請求項1記載の装置。
【請求項14】
前記プロセッサが、心臓信号の曲率を用いて前記不整脈を検出する、請求項1記載の装置。
【請求項15】
胸腔内ではない1つ以上の皮下位置で信号を検出することと、
前記検出された信号から心臓信号を識別することと、
前記検出された信号から筋活動に関連付けられた活動信号を識別することと、
前記心臓信号を用いて不整脈を検出することと、
前記活動信号を用いて患者の活動状態を検出することと、
前記活動信号に応じて、前記不整脈を治療する胸腔内ではない皮下における治療の送出を修正することと、
を含む心臓刺激方法。
【請求項16】
活動閾値を越える前記活動信号に応答して、前記不整脈治療の送出が阻止される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
患者の意識又は運動を示す前記活動信号に応答して、前記不整脈治療の送出が阻止される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
活動閾値を越える前記活動信号に応答して、前記不整脈治療の送出が所定時間だけ阻止され、前記所定時間が満了し且つ前記不整脈が停止した場合には、前記不整脈治療の送出が保留される、請求項15記載の方法。
【請求項19】
活動閾値を越える前記活動信号に応答して、前記不整脈治療の送出が所定時間だけ阻止され、前記所定時間が満了し且つ前記不整脈が停止していない場合には、前記不整脈治療が送出される、請求項15記載の方法。
【請求項20】
患者の意識又は運動を示す前記活動信号に応答して、前記不整脈治療の送出が阻止され、
生命を脅かす不整脈の検出に応答して、前記活動信号に関わりなく前記不整脈治療が直ちに送出される、
請求項15記載の方法。
【請求項21】
前記心臓信号と前記活動信号とを識別することが、前記検出された信号に対して信号分離技術を用いて前記心臓信号と前記活動信号とを識別することを含む、請求項15記載の装置。
【請求項22】
前記心臓信号と前記活動信号とを識別することが、前記検出された信号に対してブラインドソース分離を行うことを含む、請求項15記載の方法。
【請求項23】
前記信号を検出することが、胸腔内ではない複数の位置に設けられる複数の電極を用いて信号を検出することを含み、前記電極は、複数の感知ベクトルを定めるよう選択的に組み合わせ可能であり、前記心臓信号と前記活動信号とを識別することが、
前記心臓活動と関連付けられた信号を優先して感知する前記複数の感知ベクトルの第1の感知ベクトルを選択することと、
前記筋活動と関連付けられた信号を優先して感知する前記複数の感知ベクトルの第2の感知ベクトルを選択することと、
を含む、
請求項15記載の方法。
【請求項24】
前記筋活動が患者の運動を示し、前記活動信号を識別することが、前記患者の運動を示すアクセロメータ信号を検出することを含む、請求項15記載の方法。
【請求項25】
前記不整脈が、モルフォロジーに基づく不整脈検出を用いて検出される、請求項15記載の方法。
【請求項26】
前記不整脈が、心拍数に基づく不整脈検出を用いて検出される、請求項15記載の方法。
【請求項27】
前記不整脈が、複数の電極によって検出される興奮順序を用いて検出される、請求項15記載の方法。
【請求項28】
前記不整脈が、前記心臓信号の曲率を用いて検出される、請求項15記載の方法。
【請求項29】
胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することと、
非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた信号を受け取ることと、
前記非電気生理学的な信号を用いて、前記心電図信号が心臓信号を含むことを確認することと、
前記心電図信号及び前記非電気生理学的な信号を用いて、正常洞調律と心臓不整脈とを識別することと、
前記感知された信号が心臓信号でない場合に、胸腔内ではない皮下における心臓刺激治療の送出を保留することと、
を含む、不整脈識別方法。
【請求項30】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
前記心電図信号を用いて前記不整脈を検出することと、
前記非電気生理学的な信号を用いて前記不整脈の存在を確認することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
前記心電図信号を用いて前記不整脈を検出することと、
前記不整脈の検出中に受け取った前記心電図信号と前記非電気生理学的な信号との時間的関係を判定することと、
前記心電図信号と前記非電気生理学的な信号との前記時間的関係に基づいて前記不整脈の存在を確認することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
一続きの前記心電図信号の各心電図信号の受け取りに応答して検出窓を開始することと、
一続きの前記非電気生理学的な信号の各非電気生理学的な信号が前記検出窓の範囲内の時間に受け取られたか否かを判定することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
一続きの心電図信号に基づいて第1の心拍数を計算することと、
一続きの非電気生理学的な信号に基づいて第2の心拍数を計算することと、
前記第1の心拍数及び前記第2の心拍数を用いて前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項34】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
一続きの心電図信号に基づいて第1の心拍数を計算することと、
一続きの非電気生理学的な信号に基づいて第2の心拍数を計算することと、
前記第1の心拍数を第1の不整脈閾値と比較すること、
前記第2の心拍数を第2の不整脈閾値と比較すること、
前記第1の不整脈閾値を越える第1の心拍数及び前記第2の不整脈閾値を越える第2の心拍数に応答して、前記不整脈の存在を判定することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項35】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
一続きの心電図信号に基づいて第1の心拍数を計算することと、
一続きの非電気生理学的な信号に基づいて第2の心拍数を計算することと、
前記第1の心拍数を第1の不整脈閾値と比較することと、
前記第2の心拍数を第2の不整脈閾値と比較することと、
前記第1の不整脈閾値を越える前記第1の心拍数及び前記第2の不整脈閾値を越えない前記第2の心拍数に応答して、前記不整脈の不在を判定することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項36】
前記正常洞調律と前記不整脈とを識別することが、
前記心電図信号のモルフォロジーを用いて前記不整脈の存在を判定することと、
前記非電気生理学的な信号を用いて前記不整脈の存在を確認することと、
を含む、
請求項29記載の方法。
【請求項37】
前記非電気生理学的な信号が心音信号を含む、請求項29記載の方法。
【請求項38】
前記非電気生理学的な信号が、前記心臓活動を示す亜音速音響信号を含む、請求項29記載の方法。
【請求項39】
前記非電気生理学的な信号が脈拍圧信号を含む、請求項29記載の方法。
【請求項40】
前記非電気生理学的な信号が、前記心臓活動を示すインピーダンス信号を含む、請求項29記載の方法。
【請求項41】
前記非電気生理学的な信号が、パルス酸素測定信号を含む、請求項29記載の方法。
【請求項42】
前記心電図信号を用いた不整脈の検出及び前記非電気生理学的な信号を用いた不整脈の検出に応答して、不整脈症状を宣言することを更に含む、請求項29記載の方法。
【請求項43】
前記心電図信号を用いた不整脈の検出及び前記非電気生理学的な信号を用いた不整脈の検出に応答して、除細動治療の送出を可能にすることを更に含む、請求項29記載の方法。
【請求項44】
前記心電図信号を用いた不整脈の検出及び前記非電気生理学的な信号を用いた不整脈の非検出に応答して、除細動治療の送出を阻止することを更に含む、請求項29記載の方法。
【請求項45】
胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することと、
非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた信号を受け取ることと、
前記非電気生理学的な信号を用いて、前記感知された心電図信号が心臓信号を含むことを確認することと、
前記感知された心電図信号及び前記確認された心臓信号の一方を用いて、心臓不整脈を検出することと、
前記感知された信号が心臓信号でない場合に、前記心臓不整脈の治療を保留することと、
を含む、不整脈識別方法。
【請求項46】
前記心電図信号の変曲点と関連付けられた開始時間を有する検出窓を定めることと、
前記検出窓の範囲内で受け取られた非電気生理学的な信号を評価することと、
を更に含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記検出窓の前記開始時間が、前記心電図信号の極大値又は極小値と関連付けられる、請求項46記載の方法。
【請求項48】
一続きの心電図信号間のインターバルに基づいて第1の心拍数を計算することと、
一続きの非電気生理学的な心臓信号間のインターバルに基づいて第2の心拍数を計算することと、
を更に含み、
前記心臓不整脈の存在を確認することが、前記第1の心拍数と前記第2の心拍数とを比較することを含む、
請求項45記載の方法。
【請求項49】
前記心臓不整脈の存在を確認することが、前記心電図信号と前記非電気生理学的な心臓信号との間の相関を行うことを含む、請求項45記載の方法。
【請求項50】
前記非電気生理学的な心臓信号がアコースティックエミッション情報を含む、請求項45記載の方法。
【請求項51】
前記アコースティックエミッション情報がピークの心音の時間的位置を含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記非電気生理学的な心臓信号が心臓加速情報を含む、請求項45記載の方法。
【請求項53】
前記非電気生理学的な心臓信号が、脈拍圧情報、血流量情報、心拍数情報、及びパルス酸素測定情報の1つ以上を含む、請求項45記載の方法。
【請求項54】
前記心臓不整脈の存在又は不在を検出することが、前記心電図信号の心拍数に基づく解析を行うことを含む、請求項45記載の方法。
【請求項55】
前記心臓不整脈の存在又は不在を検出することが、前記心電図信号のモルフォロジーに基づく解析を行うことを含む、請求項45記載の方法。
【請求項56】
前記心臓不整脈を治療するために心臓治療を送ることを更に含む、請求項45記載の方法。
【請求項57】
植え込み可能なハウジングと、
胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成された電極構成と、
前記ハウジング内に設けられ、前記電極構成に接続される検出回路であって、心電図信号を検出するよう構成された検出回路と、
非電気生理学的な心臓ソースと関連付けられた信号を感知するよう構成されたセンサと、
前記電極構成に接続されるエネルギー送出回路と、
前記ハウジング内に設けられ、前記検出回路、前記センサ、及び前記エネルギー送出回路に接続されるプロセッサであって、前記非電気生理学的な信号を用いて、前記検出された心電図信号が心臓信号を含むことを確認し、前記検出された心電図信号が心臓信号を含まない場合には心臓不整脈の治療を保留するプロセッサと、
を含む、植え込み型心臓装置。
【請求項58】
前記エネルギー送出回路が除細動治療回路を含む、請求項57記載の装置。
【請求項59】
前記エネルギー送出回路がペーシング治療回路を含む、請求項57記載の装置。
【請求項60】
前記センサが、前記ハウジングの内部又は表面に設けられる、請求項57記載の装置。
【請求項61】
前記センサが、前記ハウジングに接続されるリードの内部又は表面に設けられる、請求項57記載の装置。
【請求項62】
前記センサが、アクセロメータ、マイクロホン、音響トランスデューサ、血流量トランスデューサ、パルス酸素濃度計、及び光電脈波回路の1つ以上を含む、請求項57記載の装置。
【請求項63】
胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成されたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、電気生理学的心臓信号を生成するよう構成された検出回路と、
前記ハウジング内に設けられるエネルギー送出回路と、
胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成され、前記検出及びエネルギー送出回路に接続される少なくとも1つの電極と、
血液センサ信号を生成するよう構成された植え込み型血液センサと、
前記ハウジング内に設けられ、前記血液センサと前記検出及びエネルギー送出回路とに接続されるプロセッサであって、前記血液センサ信号を用いて、前記電気生理学的心臓信号が心臓信号を含むことを確認するよう構成されると共に、前記血液センサ信号と前記心臓信号を含む前記電気生理学的心臓信号とを用いて、心律動を評価するように構成されたプロセッサと、
を含む、植え込み型皮下装置。
【請求項64】
前記血液センサが、胸腔内ではない皮下に配置されるよう構成された、請求項63記載の装置。
【請求項65】
前記血液センサが前記ハウジングの内部又は表面に設けられる、請求項63記載の装置。
【請求項66】
前記血液センサが、光学信号感知を行うよう構成されたセンサを含む、請求項63記載の装置。
【請求項67】
前記血液センサが血中酸素飽和センサを含む、請求項63記載の装置。
【請求項68】
前記血液センサがパルス酸素濃度計を含む、請求項63記載の装置。
【請求項69】
前記血液センサがパルス酸素濃度計を含み、該パルス酸素濃度計が少なくとも2つの発光ダイオード及び少なくとも1つの光検出器を含む、請求項63記載の装置。
【請求項70】
信号の変動を考慮するために光検出器の検出閾値が周期的に調整される、請求項69記載の装置。
【請求項71】
前記血液センサがパルス酸素濃度計を含み、該パルス酸素濃度計が、約550ナノメートルと約750ナノメートルとの範囲内のピーク発光波長を有する第1の発光ダイオードと、約750ナノメートルと約1050ナノメートルとの範囲内のピーク発光波長を有する第2の発光ダイオードとを含む、請求項63記載の装置。
【請求項72】
前記血液センサが光電脈波法回路を含む、請求項63記載の装置。
【請求項73】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号及び前記血液センサ信号を用いて、頻拍性不整脈である心律動を識別する、請求項63記載の装置。
【請求項74】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号と前記血液センサ信号の相対変化とを用いて、頻拍性不整脈である心律動を識別する、請求項63記載の装置。
【請求項75】
前記プロセッサが前記血液センサを選択的に起動及び停止させる、請求項63記載の装置。
【請求項76】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号を用いた頻拍性不整脈の検出に応答して前記血液センサを起動させ、前記電気生理学的心臓信号及び前記血液センサ信号を用いて前記頻拍性不整脈を評価する、請求項63記載の装置。
【請求項77】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号及び前記血液センサ信号を用いて前記頻拍性不整脈の存在を確認する、請求項76記載の装置。
【請求項78】
前記プロセッサが、前記頻拍性不整脈の存在の確認に応答して、前記頻拍性不整脈を治療する治療を送出し、前記プロセッサが、前記治療の送出前又は送出後に、前記血液センサを停止させる、請求項77記載の装置。
【請求項79】
前記プロセッサが、前記血液センサ信号を用いて前記頻拍性不整脈の存在を確認するまで、頻拍性不整脈治療の送出を阻止する、請求項63記載の装置。
【請求項80】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号及び前記血液センサ信号を用いて血液動態を判定する、請求項63記載の装置。
【請求項81】
前記プロセッサが、前記電気生理学的心臓信号を用いた識別不能な心律動の検出に応答して前記血液センサを起動させ、前記血液センサ信号を用いて前記識別不能な心律動の識別を容易にする、請求項63記載の装置。
【請求項82】
前記少なくとも1つの電極がリードを介して前記ハウジングに接続され、前記ハウジングが少なくとも1つのハウジング電極を更に含む、請求項63記載の装置。
【請求項83】
前記プロセッサが、心機能を評価するために前記血液センサ信号を用いる、請求項63記載の装置。
【請求項84】
前記プロセッサが、酸素飽和を評価するために前記血液センサ信号を用いる、請求項63記載の装置。
【請求項85】
前記プロセッサが、後負荷を評価するために前記血液センサ信号を用いる、請求項63記載の装置。
【請求項86】
前記プロセッサが、前記血液センサ信号のモルフォロジーを解析することによって後負荷を評価する、請求項85記載の装置。
【請求項87】
胸腔内ではない皮下位置で心電図信号を感知することと、
胸腔内ではない皮下の感知位置から血液感知信号を取得することと、
前記心電図信号が心臓信号を含むことを確認することと、
前記血液感知信号と前記心臓信号を含む前記心電図信号とを用いて心律動を評価することと、
を含む律動評価方法。
【請求項88】
前記心律動を評価することが、前記心電図信号及び前記血液感知信号の一方又は両方を用いて頻拍性不整脈を検出することを含む、請求項87記載の方法。
【請求項89】
前記頻拍性不整脈を検出することが、前記心電図信号の心拍数に基づく解析を行うことを含む、請求項88記載の方法。
【請求項90】
前記頻拍性不整脈を検出することが、前記心電図信号のモルフォロジーに基づく解析を行うことを含む、請求項88記載の方法。
【請求項91】
前記頻拍性不整脈を検出することが、複数の電極を用いて前記心電図信号の活性化パターンを解析することを含む、請求項88記載の方法。
【請求項92】
前記頻拍性不整脈を治療することを更に含む、請求項88記載の方法。
【請求項93】
前記心律動を評価することが、前記心電図信号及び前記血液感知信号を用いて頻拍性不整脈の存在を確認することを含む、請求項87記載の方法。
【請求項94】
前記心律動を評価することが、前記心電図信号を用いて頻拍性不整脈を検出することと、前記血液感知信号を用いて前記頻拍性不整脈の存在を確認することと、を含む、請求項87記載の方法。
【請求項95】
前記心律動を評価することが、前記心電図信号を用いて頻拍性不整脈を検出することと、前記血液感知信号を用いて前記検出された頻拍性不整脈と雑音とを識別することと、を含む、請求項87記載の方法。
【請求項96】
前記心律動を評価することが、前記心電図信号と前記血液感知信号との間の相関を行うことによって心臓不整脈を検出することを含む、請求項87記載の方法。
【請求項97】
前記心律動を評価することが心臓頻拍性不整脈を検出することを含み、前記方法が、前記血液感知信号を用いて前記頻拍性不整脈の存在が確認されるまで頻拍性不整脈治療の送出を阻止することを更に含む、請求項87記載の方法。
【請求項98】
前記血液感知信号を取得することが、前記血液感知信号を生成する血液センサを選択的に電源投入及び電源切断することを含む、請求項87記載の方法。
【請求項99】
前記心律動を評価することが、
前記心電図信号を用いて頻拍性不整脈を検出することと、
前記頻拍性不整脈の検出に応答して、前記血液感知信号を生成する血液センサに電源投入することと、
前記血液感知信号を用いて前記頻拍性不整脈の存在を確認することと、
前記頻拍性不整脈の存在の確認後に前記血液センサを電源切断することと、
を含む、
請求項87記載の方法。
【請求項100】
前記頻拍性不整脈を治療することと、
前記頻拍性不整脈の治療前又は治療後に前記血液センサを電源切断することと、
を更に含む、請求項99記載の方法。
【請求項101】
前記血液感知信号が、血液灌流情報、血中酸素飽和情報、光電脈波情報、及びパルス酸素測定情報の1つ以上を含む、請求項87記載の方法。
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1D】
【図1E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−524106(P2006−524106A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509836(P2006−509836)
【出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/010917
【国際公開番号】WO2004/091719
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(592245720)カーディアック ペースメーカーズ,インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/010917
【国際公開番号】WO2004/091719
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(592245720)カーディアック ペースメーカーズ,インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】
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