説明

多人数用透析装置における使用済透析液の排出方法

【課題】 多人数用透析装置において、使用済透析液の排出に際し、原水と使用済透析液の温度差を利用して、熱交換により透析液の調製に使用する原水を効率的に温める方法を提供する。
【解決手段】 各コンソールから排出された使用済透析液を、熱交換器を備えた一つの配管に集め、使用済透析液と原水との温度差を利用して、熱交換により原水を温めた後、この熱交換に使用された使用済透析液を排出する。さらに、RO排水を熱交換機に供給し、前記RO排水と原水との温度差を利用して、熱交換により前記原水を温めた後、この熱交換に使用されたRO排水を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多人数用透析装置における使用済透析液の排出方法に関し、より詳しくは、使用済透析液と水処理前の水道水等(以下原水という)との温度差を利用した熱交換を行った後に、使用済透析液を排出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腎不全の患者や、術後の薬液注入によって水分過多症になった患者などの重篤な状態を改善するために、血液透析装置を使用する血液透析や血液濾過が行われている。
たとえば特許文献1に記載されているような、多人数用透析装置は、RO膜で水処理された水道水(RO水)などを用いて調製された透析液をヒーターなどで30℃程度に加温してコンソールに送り、血液透析治療を行う装置であるが、多人数用透析装置においては、従来、熱交換器(小型)はコンソール毎に設けられており、使用済透析液で水道水を温める操作は、個々のコンソールに設けられた小型の熱交換器で行っていた。
【0003】
【特許文献1】特開2003−310749号公報
【0004】
従って、熱効率が悪く、また、小型とはいえ個々のコンソールに熱交換器を備えることから、コスト的にも不利なものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、多人数用透析装置において、使用済透析液の排出に際し、原水と使用済透析液の温度差を利用して、熱交換により原水を効率的に温める方法を提供することを目的とする。また、原水が冷たい冬期などの場合、さらにRO水と原水の温度差を利用して、熱交換により原水を効率的に温める方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多人数用透析装置における使用済透析液の排出方法は、各コンソールから排出された使用済透析液を、熱交換器を備えた一つの配管に集め、使用済透析液と原水との温度差を利用して、熱交換により原水を温めた後、この熱交換に使用された使用済透析液を排出する。この場合、さらにRO排水を熱交換器に供給し、前記RO排水と原水との温度差を利用して、熱交換により前記原水を温めた後、この熱交換に使用されたRO排水を排出するようにしてもよい。また、多人数用透析装置における使用済透析液の排出に際し、各コンソールから排出された前記使用済透析液を、第1の熱交換器を備えた一つの配管に集め、前記使用済透析液とRO水との温度差を利用して、熱交換により前記RO水を温めた後、この熱交換に使用された使用済透析液を排出するとともに、さらにRO排水を第2の熱交換器に供給し、原水との温度差を利用して、熱交換により前記原水を温めた後、この熱交換に使用されたRO排水を排出する様にしてもよい。
【0007】
以上、一般的に本発明を記述したが、より一層の理解は、いくつかの特定の実施例を参照することによって得ることができる。これらの実施例は、本明細書に例示の目的のためにのみ提供されるものであり、他の旨が特定されない限り、限定的なものではない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下のような効果が期待できる。すなわち、各コンソールから排出された使用済透析液を、熱交換器を備えた一つの配管に集め、使用済透析液と原水との温度差を利用して、熱交換により原水を温めた後、この熱交換に使用された使用済透析液を排出するので、原水を水処理して得られるRO水などを用いて調製される透析液の加温が少なくて済み、熱効率のよい透析治療が可能になる。冬期など原水の温度が低いときには、さらにRO排水を熱交換器に供給し、前記RO排水と原水との温度差を利用して、熱交換により前記原水を温めた後、該熱交換に使用されたRO排水を排出するようにすれば、熱効率はさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の排水方法を採用した多人数用透析装置を示す概略図である。
【図2】実施例2の排水方法を採用した多人数用透析装置を示す概略図である。
【図3】実施例3の排水方法を採用した多人数用透析装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0010】
1 水処理装置(ROタンク)
2 多人数用透析液供給装置
31、32、33、34 コンソール
4 熱交換器
5 配管
6 配管
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
各コンソールから排出された使用済透析液を、熱交換器を備えた一つの配管に集め、使用済透析液と原水との温度差を利用した熱交換により原水を温めた後、この熱交換後の使用済透析液を排出するとともに、RO排水を熱交換器に供給し、前記RO排水と原水との温度差を利用して、熱交換により前記原水を温めた後、該熱交換に使用されたRO排水を排出する。
【0012】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1について説明する。
図1は実施例1の排水方法を採用した多人数用透析装置を示す概略図である。
水処理される前の原水は、季節によって異なるが通常5〜25℃の水温を有している。一方、多人数用透析装置に供給される透析液の温度はヒーターで加温されて30℃前後になっており、透析治療により33〜35℃になる。また、ROタンクで製造されるRO水は25℃前後に加温されたRO原水の約56%で、従来約44%のRO排水は無駄に廃棄されていた。
水処理装置(ROタンク)1に供給された原水(25%前後に加温されている)は、ここで例えばRO水に処理され、次いで多人数用透析液供給装置2に供給され、ここで透析液の調製に使用される。調製された透析液は30℃前後に加熱され多人数用透析装置(コンソール)31、32、33、34に供給され、透析治療に使用される。そして、使用済透析液は、熱交換器4を備えた一つの配管5に集められて熱交換器4に供給され、使用済透析液とこの熱交換器4に供給された原水との温度差を利用して、原水を温めた後、排水される。一方、熱交換器4で暖められた原水はROタンク1に供給される。これにより、熱効率を20〜30%向上させることができる。
【0013】
(実施例2)
図2は、実施例1の排水方法を採用した多人数用透析装置を示す概略図である。
実施例1では、使用済透析液により原水を加温する様になっているが、この装置では、さらにRO排水により原水を加温する様になっている。従って、使用済透析液による原水の加温については説明を省略する。
ROタンク1に供給された原水(略25℃に加温されている)はここで処理され、約56%がRO水として多人数用透析液供給装置に供給される。一方、残りの約44%はRO排水として配管6を通って、熱交換器4に供給され、RO排水とこの熱交換器4に供給された原水との温度差を利用して、原水を温めた後、排水される。一方、熱交換器4で暖められた原水はROタンク1に供給される。これにより、熱効率をさらに向上させることができる。
【0014】
(実施例3)
図3は、実施例3の排水方法を採用した多人数用透析装置を示す概略図である。
実施例1では、使用済透析液により原水を加温する様になっており、実施例2では、さらにRO排水により原水を加温する様になっているが、この装置では、この装置では、各コンソールから排出された前記使用済透析液を、第1の熱交換器を備えた一つの配管に集め、前記使用済透析液とRO水との温度差を利用して、熱交換により前記RO水を温めた後、この熱交換に使用された使用済透析液を排出するとともに、さらにRO排水を第2の熱交換器に供給し、原水との温度差を利用して、熱交換により前記原水を温めた後、この熱交換に使用されたRO排水を排出する様になっている。
ROタンク1に供給された原水(略25℃に加温されている)はここで処理され、約56%がRO水として第1の熱交換器41に供給され、この熱交換器41に供給された使用済透析液との温度差を利用して温められ、多人数用透析液供給装置に供給される。一方、残りの約44%はRO排水として配管6を通って、第2の熱交換器42に供給され、原水との温度差を利用して温められ、排水される。一方、熱交換器4で暖められた原水は加温室(図示していない)に供給され、ここで略25℃に加温されてROタンク1に供給される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多人数用透析装置における使用済透析液の排出に際し、各コンソールから排出された前記使用済透析液を、熱交換器を備えた一つの配管に集め、前記使用済透析液と原水との温度差を利用して、熱交換により前記原水を温めた後、該熱交換に使用された使用済透析液を排出することを特徴とする、使用済透析液の排出方法。
【請求項2】
さらにRO排水を熱交換器に供給し、前記RO排水と原水との温度差を利用して、熱交換により前記原水を温めた後、該熱交換に使用されたRO排水を排出することを特徴とする、請求項1に記載の排出方法。
【請求項3】
多人数用透析装置における使用済透析液の排出に際し、各コンソールから排出された前記使用済透析液を、第1の熱交換器を備えた一つの配管に集め、前記使用済透析液とRO水との温度差を利用して、熱交換により前記RO水を温めた後、該熱交換に使用された使用済透析液を排出するとともに、さらにRO排水を第2の熱交換器に供給し、原水との温度差を利用して、熱交換により前記原水を温めた後、該熱交換に使用されたRO排水を排出することを特徴とする、使用済透析液の排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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