説明

多価不飽和炭化水素の選択的水素化のための、Niと第IB族金属とをベースとした担持触媒の調製方法

【課題】従来技術において知られた、硫黄でパッシベーションがなされたニッケルベースの触媒に対する代替触媒を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の多孔質担体と、少なくとも1種の金属相とを含み、該金属相は、ニッケルと、少なくとも1種の第IB族金属Mとを、モル比M/Niが0.005〜0.5の範囲であるような割合で含む、触媒の調製方法であって、少なくとも以下の連続する工程を含む方法が記載される:a1)ニッケルを少なくとも前記担体上に沈着させて、担持型ニッケルベースの単金属触媒を得る工程;b1)少なくとも1種の還元ガスの存在下かつあらゆる水性溶媒の非存在下に、少なくとも前記金属Mの少なくとも1種の有機金属化合物を、前記単金属触媒上に沈着させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水蒸気分解ガソリンのような炭化水素供給原料中に存在する多価不飽和化合物の選択的水素化に関する。これらのガソリンは、ガム状物発生化合物、特にジオレフィンおよびアルケニル芳香族を含み、特にモノオレフィン化合物および芳香族化合物と混合されている。水蒸気分解ガソリンの品質向上を可能とするために、該ガソリンは、該ガソリン中のジオレフィン、アルケニル芳香族化合物のそれぞれを除去しなければならない;ジオレフィンは、モノオレフィンへと選択的に水素化され、アルケニル芳香族化合物は、芳香族化合物へと選択的に水素化される。より正確には、本発明は、炭化水素の留分中に存在する多価不飽和化合物の選択的水素化のための、ニッケルと少なくとも1種の第IB族金属とを含む担持触媒を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的水素化処理は一般に、無定形又は結晶質の担体上に沈着させられた金属触媒上で実施される。用いられる金属は、第VIII族金属であり、中でも、ニッケルが日常的に用いられているものとして、指摘され得る。
【0003】
しかし、ニッケル触媒は、水素化が低圧(ほぼ30〜50barの程度)かつ低温(50〜180℃(摂氏)の範囲)で実施される時でさえ、供給原料中に含有されるモノオレフィンの大部分を水素化する傾向が強いため、十分な選択性を有しない。
【0004】
これらの触媒の選択性の向上は、触媒を反応性供給原料と接触させる前に、硫黄含有化合物を注入して、硫黄によりパッシベーションがなされた触媒を得ることにより達成され得ることが知られている。これらの化合物は、以下の化合物から選択されてもよい:チオフェン、チオファン、アルキルモノスルフィド、例えばジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、又はプロピルメチルスルフィド。しかし、このような硫化は、選択性において著しい効果を達成するためには、分散されるべき硫化化合物が触媒床全体中に非常に均一に分散する必要があるため、実施が困難である。更に、当該手順は高価かつ長期にわたるため、結果的に生産性が低下する。
【0005】
ニッケル触媒固有の選択性の欠如は、モノオレフィンに関して認められているだけでなく、芳香族化合物についても認められている。もし、Ni粒子の表面が、高度に制御された方法で(明確に区分されたNiサイトへの優先)かつ約4または5個の表面Ni原子当たり1原子の硫黄の量で、硫黄含有有機化合物によってパッシベーションがなされた表面であったならば(非特許文献1または特許文献1)、芳香環の水素化はなしで済まされ、オレフィン化合物の水素化は大きく低速になるだろう。しかしながら、工業スケールで硫黄の沈着をそのように緊密に制御すること並びに選択的水素化のために用いられる反応条件(25〜30bar、50〜180℃)下に当該システムの安定性を制御することは、達成し難い。従って、ニッケル触媒で始める際、上述したタイプの硫黄含有化合物によってパッシベーションがなされる時でさえ、ジオレフィンもモノオレフィンも含有せず、かつ芳香族化合物を非常に少量しか含まない、非反応性開始供給原料を用いることが必要である。反応性の高い新鮮な触媒によるジオレフィン又は場合によってはモノオレフィンの水素化では、放出されるべき十分な熱が、200℃を優に超えるレベルまで触媒の温度を上昇させ、これにより芳香族化合物の水素化がもたらされ得る。この反応は、より一層発熱を伴い、温度は600℃を超えることもあり、これにより炭化水素の分解(それ自体が非常に発熱性の高い反応)をもたらす。この方法において、これらの暴走中に達する温度は、鋼製反応器の額面温度を超えるかもしれず、これは、触媒の充填だけでなく反応器自体の交換を意味する。
【0006】
特許文献2に記載されているように、触媒の選択性を向上させる他の方法は、酸化された状態かつ水素の非存在下で、有機硫黄化合物、例えば2,2−ジチオ−ビス−エタノール(2,2-dithio-bis-ethanol:DEODS)を含浸させることによって、Ni触媒に事前にパッシベーションを行うことからなる。ポリスルフィドは、水素化反応器内の水素中で、ニッケルの還元と同時に分解し、反応性供給原料は、次いで、反応の暴走の危険性無しに導入され得る。しかし、硫黄による還元とパッシベーションが同時に起こることを考えると、これらの条件下で、所望の化学量論量でかつ所望のNiサイトのみに、Ni表面の均一なパッシベーションを得ることは、より一層困難である。パッシベーションがなされていない還元されたNi粒子の存在を避けるために、ポリスルフィドは、過剰に導入され、Ni相の部分的形成を伴うオーバーパッシベーションは一般に回避され得ず、これによりジオレフィンに関してさえも触媒活性が大幅に低減する(非特許文献2)。
【0007】
二金属触媒が選択性および安定性の増加をもたらす可能性があることも知られている。選択的水素化触媒においては、パラジウムと第2の金属との関連(association)により、触媒の活性は減少するものの選択性が増すことが知られている。そのような関連は、2〜4個の炭素原子を含む炭化水素を含む留分の選択的水素化であって、通常第1の反応器が、単金属パラジウム触媒で作動して転化の大部分を実施し、二金属触媒を含む第2の反応器が、より選択性の高い方法で、転化を完了させる水素化のために提案されているだけである。一例として、特許文献3には、多価不飽和化合物の選択的水素化の適用のためには、第VIII族金属(好ましくはパラジウム)をインジウムやガリウムのような元素と関連させることが有利であることが開示されている。同様に、Pd-Cu (特許文献4)、Pd-Ag (特許文献5)、Pd-Sn、およびPd-Pb (特許文献6)の関連、あるいはパラジウムとアルカリ金属の組み合わせ(特許文献7)が、それらの水素化性能として確認されている。上記特許は全てモノオレフィンの収率を向上させることを目的としている。
【0008】
二金属ニッケルベース触媒も、従来技術において記載されている。特許文献1には、10ppmの白金族元素、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、または白金、好ましくはパラジウムを、C3、C4留分またはガソリンの選択的水素化触媒であって、10%のNiをセピオライトに担持されて含むものに導入することが記載されている。この導入は、再生後にNiの還元能を増大させる効果を有するが、パッシベーションのためには、その後のスルフィド化合物の導入が依然として必要である。特許文献8には、メタンの水蒸気改質のために、水相法によって、金を担持型ニッケル触媒中へと導入することが記載されている;金を導入する効果は、触媒の不活性化を減速することである。
【0009】
特許文献9には、オレフィンの収率を高めることを目的として、pH10未満の水相で、第VIII族金属(好ましくは、白金、パラジウム、およびニッケル)と、好ましくはゲルマニウム、スズ、銀、および金から選択される金属とを関連させる二金属触媒であって、多価不飽和化合物の選択的水素化のためのものを調製することを記載している。特許文献10には、4〜10個の炭素原子を含むジオレフィンの選択的水素化方法が記載されている;前記方法は、パラフィンの形成並びに触媒の不活性化を最小限にし、該触媒は、ニッケルおよび銀をベースとする担持触媒であり、好ましくは、ニッケル化合物と銀化合物を同時にまたは連続的に含浸させることによって調製される。Ag/Ni原子の割合は、1〜8の範囲である。
【0010】
特許文献11には、ジオレフィンとニトリルの選択的かつ同時水素化のためには、完全に還元された第VIII族金属と部分的に還元された第IB族金属、好ましくは銅とを関連させることが有利であることが教示されている。これらの触媒は、好ましくは、金属性塩の種々の水溶液を連続して含浸させ、中間に焼成と活性化を行うことにより調製される。特許文献12には、ブタジエンの選択的水素化のための担持触媒が記載されている。該触媒は、銅と、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、およびマンガンから選択される活性化金属とをベースとし、少なくとも50重量%の上記金属が担体の外層部中200ミクロンの厚さにわたって分布している。調製方法は、含浸、共沈、共ゲル化、又はイオン交換であり、好ましくは上記金属の塩の溶液の含浸である。利点は、触媒の安定性を向上させることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】英国特許第1565754号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0466567号明細書
【特許文献3】米国特許第5356851号明細書
【特許文献4】米国特許第5464802号明細書
【特許文献5】米国特許第4547600号明細書
【特許文献6】特開昭59−227829号公報
【特許文献7】欧州特許出願公開第0722776号明細書
【特許文献8】米国特許第5997835号明細書
【特許文献9】仏国特許発明第2792645号明細書
【特許文献10】米国特許第5208405号明細書
【特許文献11】米国特許第5948942号明細書
【特許文献12】米国特許第6417419号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ティー・イー・フィッシャー(T E Fischer)、エス・アール・ケレメン(S R Kelemen)著、J Catal、1978年、第53巻、p.24
【非特許文献2】ビー・ダブリュー・ホッファ(B W Hoffer)、アール・エル・シー・ボネ(R L C Bonne)、エイ・ディー・ファン・ランゲベルト(A D van Langeveld)、シー・グリフィス(C Griffiths)、シー・エム・ロク(C M Lok,)、ジェイ・エイ。モウリジン(J A Moulijn)著、Fuel、2004年、、第83巻、p.1-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、ニッケルと、少なくとも1種の第IB族金属とをベースとする金属相を含み、新調製方法によって調製される、炭化水素留分中に存在する多価不飽和化合物の選択的水素化のための触媒を提供することである。より正確には、本発明は、従来技術において知られた、硫黄でパッシベーションがなされたニッケルベースの触媒に対する代替触媒を提供することを提案している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも1種の多孔質担体と、少なくとも1種の金属相とを含み、該金属相は、ニッケルと、少なくとも1種の第IB族金属Mとを、モル比M/Niが0.005〜0.5の範囲であるような割合で含む、触媒の調製方法であって、少なくとも以下の連続する工程を含む、方法を提供する:
a1) ニッケルを少なくとも前記担体上に沈着させて、担持型ニッケルベースの単金属触媒を得る工程;および
b1) 少なくとも1種の還元ガスの存在下かつあらゆる水性溶媒の非存在下に、少なくとも前記金属Mの少なくとも1種の有機金属化合物を、前記単金属触媒上に沈着させる工程。
【0015】
本発明はまた、多価不飽和炭化水素の供給原料の選択的水素化のための方法であって、前記供給原料を、本発明の調製方法によって調製された、ニッケルと少なくとも1種の第IB族金属とを含む、少なくとも1種の金属相を含む少なくとも1種の担持触媒を備えた少なくとも1つの反応装置へと、通過させることを含む、方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法を用いて調製され、かつ多価不飽和炭化水素の選択的水素化のための方法において用いられる触媒は、モノ不飽和化合物のための選択性という観点において、触媒性能を向上させる。更に、本発明の方法を用いて調製され、かつ多価不飽和炭化水素の選択的水素化のための方法において用いられる触媒は、例えば芳香族性の、スチレン、又はインデン化合物などの、多価不飽和化合物中に存在する芳香環の水素化を、大幅に制限するか、あるいは排除さえする。これは、反応の暴走が回避され得る事を意味し、また本発明の選択的水素化方法から生じる芳香環を有する化合物が種々の用途において品質向上され得ることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、少なくとも1種の多孔質担体と、少なくとも1種の金属相とを含み、該金属相は、ニッケルと、少なくとも1種の第IB族金属Mとを、モル比M/Niが0.005〜0.5の範囲であるような割合で含む、触媒の調製方法であって、少なくとも以下の連続する工程を含む、方法に関する:
a1) ニッケルを少なくとも前記担体上に沈着させて、担持型ニッケルベースの単金属触媒を得る工程;および
b1) 少なくとも1種の還元ガスの存在下かつあらゆる水性溶媒の非存在下に、少なくとも前記金属Mの少なくとも1種の有機金属化合物を、前記単金属触媒上に沈着させる工程。
【0018】
本発明によると、本発明の方法を用いて調製された触媒は、ニッケルと、銅、銀、および金から選択される第IB族からの少なくとも1種の金属Mとを含む金属相を含み、前記金属は多孔質担体上に沈着させられる。前記触媒中のニッケル含有量は、触媒の質量に対して、有利には1〜50重量%の範囲であり、好ましくは5〜40重量%の範囲であり、より好ましくは8〜30重量%の範囲である。第IB族金属Mの量は、前記金属の性質に応じて変わる:第IB族金属Mの量は有利には、Mが銅である場合は0.005〜30重量%の範囲であり、Mが銀又は金である場合は0.01〜50重量%の範囲である。モル比M/Niは、一般に0.005〜0.5の範囲であり、好ましくは0.01〜0.5の範囲であり、より好ましくは、0.03〜0.3の範囲である。本発明の方法に従って調製された前記触媒は、1種以上の第IB族金属Mを含んでもよい。非常に好ましくは、前記第IB族金属Mは金である。
【0019】
本発明の方法を用いて調製された触媒中に存在する多孔質担体は、一般に、少なくとも1種の耐火性酸化物を含み、該耐火性酸化物は、有利には、新元素周期律表の第2、3、4、13、および14族からの金属の酸化物、例えば、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、またはトリウムの酸化物から選択され、選択された酸化物は、単独または混合物であるか、または、元素周期律表からの金属の他の酸化物と混合される。炭(coal)を用いることもできる。担体は、好ましくはアルミナ、シリカ、およびシリカ−アルミナから選択され、より好ましくはアルミナ又はシリカである。担体の細孔容積は、一般に0.1〜1.5cm/gの範囲であり、好ましくは0.5〜1cm/gの範囲である。担体の比表面積は、一般に10〜250cm/gの範囲であり、好ましくは30〜200cm/gの範囲であり、より好ましくは40〜180cm/gの範囲である。前記多孔質担体は、有利にはビーズ状、押出物状、ペレット状、又は不規則な非球形凝集体状であり、その特定の形状は、粉砕工程によって得られ得るものである。非常に有利には、前記担体は、ビーズ状又は押出物状である。
【0020】
本発明の調製方法の工程a1)によると、ニッケルが多孔質担体上に沈着させられる。ニッケルは、当業者に公知のあらゆる方法を用いて前記担体上に沈着させられ得る。一例として、沈着物は、前記多孔質担体を、少なくとも1種のニッケル化合物の少なくとも1種の水溶液又は有機溶液と接触させるか、あるいは少なくとも1種の有機又は無機ニッケル化合物の懸濁液と接触させることからなる含浸によって生じさせられる。あるいは沈着は、当業者に周知の沈着−析出法を用いて完了させてもよい。[J W Geus, Preparation of Catalysts III, in G Poncelet, P Grange, P A Jacobs (Eds), Elsevier, Amsterdam 1983, 1]。担体上にニッケルを沈着させた後、場合によっては1回以上の洗浄および/又は、場合によっては、溶媒の留去が行われる。有利には、多孔質担体上にニッケルを沈着させた後、1回以上の熱的又は化学的処理が行われ、その結果、主に酸化物状態又は主に金属状態の、ニッケルをベースとした単金属担持触媒が得られる。前記工程a1)により、担持型ニッケルベースの単金属触媒が調製される。
【0021】
本発明の調製方法の工程b1)によると、前記ニッケルベースの単金属触媒上に少なくとも前記金属Mの少なくとも1種の有機金属化合物を沈着させるための少なくとも1回の工程が、少なくとも1種の還元ガスの存在下かつあらゆる水性溶媒の非存在下で実施される。還元ガスは、好ましくは水素である。前記工程b1)は、10〜100℃の範囲、好ましくは20〜50℃の範囲で、10分〜24時間の範囲の期間にわたって実施される。好ましい実施によると、前記工程b1)は気相内で実施される。一層より好ましい実施によると、前記工程b1)は、例えばヘプタン又はトルエン等の有機溶媒中の液相内で実施される。
【0022】
第IB族金属M(単数種または複数種)(好ましくは金)が、前記金属の有機金属化合物の形態で導入される。前記工程b1)を実施するために用いられる少なくとも前記金属Mの前記有機金属化合物は、少なくとも1つの炭素−金属M結合(C−M結合)を含み、好ましくは、炭素−金結合を含む。
【0023】
少なくとも1つのC−Au結合を含む金のあらゆる有機金属化合物が、前記工程b1)を実施するのに適している。有利には、シアン化金 [AuCN]、ジメチル金アセチルアセトナート[Au(CH3)2(acac)]、ジメチル金ヨージド・ダイマー[((CH3)2AuI)2]、ジメチル金カルボキシラート[(CH3)2Au(COOR)、式中R=CH又はtert−ブチル]、トルフェニルホスフィン金クロリド [Ph3PAuCl]、ジメチル金オキシナート[(CH3)2AuL)、式中L=8−キノールエノール]が用いられる。金の有機金属化合物は、好ましくは、シアン化金 [AuCN]、ジメチル金アセチルアセトナート[Au(CH3)2(acac)]、ジメチル金ヨージド・ダイマー [((CH3)2AuI)2]から選択され、より好ましくは、シアン化金 [AuCN]である。
【0024】
少なくとも1つのC−Ag結合を含む銀のあらゆる有機金属化合物が、前記工程b1)を実施するのに適している。有利には、シアン化銀[AgCN]、銀アセチルアセトナート [Ag(acac)]、N, N’−ジイソプロピルアセトアミジナト銀 [(Ag(iPr-Me-AMD))x、式中(x=2,3)]、trans−ビス(トリメチルシリル)エテン(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)銀、銀エチルヘキサノアート[AgOOCCH(C2H5)C4H9]が用いられる。銀の有機金属化合物は、好ましくは、シアン化銀[AgCN]、および銀アセチルアセトナート [Ag(acac)] である。
【0025】
少なくとも1つのC−Cu結合を含む銅のあらゆる有機金属化合物が、前記工程b1)を実施するのに適している。有利には、シアン化銅 [CuCN]、銅アセチルアセトナート [Cu(acac)]、(N, N’−ジイソプロピルアセトアミジナト)銅 [(Cu(iPr-Me-AMD))2]、N, N’−ジイソプロピル−2−n−ブチルアミジナト銅 [(Cu(iPr-nBu-AMD))2]、銅ヘキサフルオロ−アセチルアセトナト [(Cu(hfac) 2] 、シクロペンタジエニル銅トリエチルホスフィン、シクロペンタジエニル銅tert−ブチルイソシアニド、銅エチルヘキサノアート[Cu(OOCCH(C2H5)C4H9) 2]、銅ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)[Cu(OCC(CH3) 3CHCOC(CH3) 3) 2]が用いられる。銅の有機金属化合物は、好ましくは、シアン化銅 [CuCN]、および銅アセチルアセトナート [Cu(acac)] である。
【0026】
上記の有機金属化合物およびそれらの調製方法はすべて、当業者に公知である。前記化合物は、市販されているか、あるいは文献に記載されたものである。
【0027】
本発明の調製方法の第1の特定の実施形態によると、工程a1)の後、工程b1)が実施される前に、工程a2)が実施される。前記工程a2)は、前記工程a1)の終わりに、得られた前記単金属触媒を少なくとも1種の還元ガス(好ましくは水素)の存在下に還元することからなる。より正確には、前記工程a2)は一般に、還元ガスの流れ中(好ましくは水素中)、徐々に、例えば0.1〜5℃/分の範囲で、100〜600℃の範囲、好ましくは200〜500℃の範囲の最大還元温度まで昇温させ、その後、1〜40時間の範囲、好ましくは5〜30時間の範囲の期間にわたって前記温度を維持することからなる。前記条件であれば、大幅に還元された担持型単金属触媒を得ることができる。
【0028】
本発明の調製方法の第2の特定の実施形態によると、前記工程b1)の後、少なくとも1回の工程c1)が実施される。工程c1)が実施されている間、前記工程b1)の最後で得られたニッケルと少なくとも1種の第IB族金属とをベースとした前記金属相を含む前記担持触媒に、少なくとも1回の乾燥段階が施される。前記工程c1)は、真空下、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム)の流れの中で、又は空気流れ中で実施され、好ましくは真空下または不活性ガスの流れの中で実施される。これは、10〜150℃の範囲、好ましくは20〜50℃の範囲の温度で実施される。
【0029】
本発明の調製方法の第3の特定の実施形態によると、前記工程b1)の後、少なくとも1回の工程c2)が実施される。工程c2)が実施されている間、前記工程b1)の最後で得られたニッケルと少なくとも1種の第IB族金属とをベースとした前記金属相を含む前記担持触媒に、少なくとも1回の洗浄段階が施される。洗浄(1回又は複数回)は、液相において実施される場合、好ましくは炭化水素、例えば前記工程b1)で溶媒として用いられ得たものを用いて実施される。
【0030】
本発明の調製方法によると、上記の第2および第3の特定の実施態様は、互いに独立している。有利には、本発明の前記調製方法は、少なくとも前記工程c1)および前記工程c2)を用い、前記工程c1)および前記工程c2)は、前記工程b1)の後、あらゆる順で実施される。好ましくは、前記工程b1)からの触媒に、少なくとも1回のc1)による乾燥工程が施され、その後少なくとも1回のc2)による洗浄工程が施される。c2)による洗浄工程の後、c1)による新たな乾燥工程が実施されることもしばしばある。
【0031】
本発明の調製方法の第4の特定の実施形態によると、前記工程b1)の後、少なくとも1種の還元ガス、好ましくは水素、の存在下で、前記工程b1)の終わりに得られた触媒の活性化を実施することからなる工程d1)が実施される。前記工程d1)は、150〜600℃の範囲、好ましくは200〜500℃の範囲、より好ましくは300〜500℃の範囲の温度で、1分〜30時間の範囲、好ましくは10分〜10時間の範囲の期間にわたって実施される。この活性化温度への昇温は一般にゆっくりで、例えば、0.1〜5℃/分の範囲である。還元ガスの存在下でのこの活性化は、静的状態で又は還元ガスの流れの中で実施されてもよく、好ましくは、還元ガスの流れの中で実施される。
【0032】
本発明の調製方法によると、上記方法を実施する際に、上記の1以上の特定の実施形態が実施されてもよい。好ましくは、工程a1)、工程b1)、工程c1)、工程c2)および工程d1)が連続して実施され、より一層好ましくは、工程a1)、工程a2)、工程b1)、工程c1)、工程c2)および工程d1)が連続して実施される。
【0033】
前記工程b1)の実施後、あるいは前記工程c1)および/または前記工程c2)の実施後、あるいは前記工程d1)の実施後得られた触媒は、炭化水素供給原料(feed)の転化を実施する反応装置内で、特に、多価不飽和炭化水素供給原料の選択的水素化を実施する反応装置内で、直接用いられる。本発明の方法を用いて調製された前記触媒は、空気中で保存されて、使用前に還元されてもよい。還元は一般に、還元ガスの流れ中(好ましくは水素中)、徐々に、例えば0.1〜5℃/分の範囲で、100〜600℃の範囲、好ましくは200〜500℃の範囲の最大還元温度まで昇温させ、その後、1〜40時間の範囲、好ましくは5〜30時間の範囲の期間にわたって当該温度を維持することからなる。
【0034】
本発明はまた、多価不飽和炭化水素供給原料の選択的水素化のための方法であって、前記供給原料を、本発明の調製方法によって調製されたニッケルと少なくとも1種の第IB族金属Mとを含む少なくとも1種の金属相を含む少なくとも1種の担持触媒を備えた少なくとも1つの反応装置内を通過させる工程を含む、方法に関する。
【0035】
本発明の選択的水素化方法において処理される前記多価不飽和炭化水素供給原料は、有利には、少なくとも4個の炭素原子を含みかつ220℃以下の終点を有する多価不飽和炭化水素を含む水蒸気分解ガソリンである。より正確には、本発明の選択的水素化方法を用いて処理される供給原料中に存在する前記多価不飽和炭化水素は、特にジオレフィン化合物、スチレン化合物、およびインデン化合物である。ジオレフィン化合物に関し、前記供給原料は特に、ブタジエン、イソプレン、およびシクロペンタジエンを含む。スチレン化合物に関し、前記供給原料は特に、スチレンおよびα−メチルスチレンを含む。インデン化合物に関し、前記供給原料は特に、インデンを含む。
【0036】
本発明の選択的水素化方法は、前記供給原料中に存在する前記多価不飽和炭化水素を選択的に水素化して、ジオレフィン化合物が部分的に水素化されモノオレフィンとなり、スチレン化合物およびインデン化合物が部分的に水素化され対応する芳香族化合物となるように処理することを意図している。
【0037】
本発明の選択的水素化方法を実施した後に得られる流出物の多価不飽和炭化水素の含有量は、相当少ない;特に、そのジオレフィン化合物、スチレン化合物、およびインデン化合物の含有量は少ないが、その一方で、前記炭化水素供給原料中に存在する芳香族化合物の量に近い芳香族化合物の量(より正確には芳香環の量)を保持している。前記流出物は、有利にはガソリン中のベースとして品質向上可能であり、又は芳香族化合物を品質向上させるためのベースとして使用可能である。
【0038】
本発明の選択的水素化方法は、有利には、圧力下、液相で、炭化水素供給原料中に存在する多価不飽和化合物の選択的水素化を可能にする化学量論量の値を僅かに超える(すなわち、一般には5〜30%の範囲の過剰分である)量の水素の存在下に実施される。本発明の選択的水素化方法は、20〜200℃の範囲の温度で実施される。圧力は、処理されるべき供給原料の少なくとも80重量%を反応装置への入口において液相に維持できれば一般に十分である。それは、一般には0.4〜5MPaの範囲であり、より有利には1〜4MPaの範囲である。これらの条件下で確立される毎時空間速度(触媒の容積に対する供給原料の容積流量の割合として定義される)は、一般に0.2〜30h―1の範囲であり、好ましくは1〜20h―1の範囲であり、より好ましくは2〜10h―1の範囲である。
【0039】
選択的水素化方法は技術的に、例えば、供給原料と水素を固定床反応器へ、上昇流あるいは下降流として注入することによって実施される。また、選択的水素化方法は、有利には、反応蒸留塔中又は反応器−交換器中に、ニッケルと少なくとも1種の第IB族金属とを含む少なくとも前記担持触媒を移植することにより実施されてもよい。
【0040】
以下の実施例は本発明を例証するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0041】
(実施例1(比較例):シリカ上に担持され、ニッケルを含む、単金属触媒Aの調製)
Ni/シリカ型触媒(触媒A)は、シリカ上の[Ni(NH3)6)]2+塩の陽イオン交換によって調製された。含浸溶液は、濃度7×10−3mol/Lの硝酸ニッケル溶液を濃度0.4mol/Lのアンモニア溶液と混合することによって調製された。4gの量のシリカ(Aerosil(登録商標)-200, Degussa)は、周囲温度で撹拌しながら、含浸溶液に24時間にわたって接触させられた。その後、固体物は、ろ過により回収され、交換水での洗浄、80℃、次いで100℃での真空オーブン中の乾燥、そして最後に500℃の水素流れ中での処理を経た後、冷却され空気中に保存された。
【0042】
このようにして得られた単金属触媒Aには、11.7重量%のNiが含まれていた(元素分析による)。
【0043】
(実施例2(本発明に合致する):シリカ上に担持され、ニッケルおよび金を含む、触媒Bの調製)
40mgの量の単金属触媒Aは、400℃の水素流れ中、14時間にわたって、予備還元された。触媒Bは、40mgの予備還元された単金属触媒Aを、水素の存在下、撹拌しながら(マグネティックスターラー、マグネティックバー)周囲温度で、ヘプタン(Acros)中のシアン化金(AuCN,Strem)の懸濁液(n−ヘプタン20mL中、4mgのAuCN)と接触させることによって調製された。接触の12時間後、これにより得られた触媒Bは、実施例6で例証されるスチレンの選択的水素化試験のために、オートクレーブに直接導入された。
【0044】
(実施例3(本発明に合致する):シリカ上に担持され、ニッケルおよび金を含む、触媒Cの調製)
1.08gの量の単金属触媒Aは、400℃の水素流れ中、14時間にわたって、予備還元された。触媒Cは、1.08gの予備還元された単金属触媒Aを、水素の存在下、撹拌しながら(マグネティックスターラー、マグネティックバー)、ヘプタン(Acros)中のシアン化金(AuCN,Strem)の懸濁液(n−ヘプタン20mL中、100mgのAuCN)と接触させることによって調製された。接触の12時間後、固体物は、真空乾燥させられ(10−1mbar)、20mLのn−ヘプタンで4回洗浄され、再び周囲温度で真空下(10−1mbar)に置かれた。その後、アルゴン(1atm)下で保存された。これにより得られた触媒Cは、11.5重量%のNiと9.6重量%の金とが含まれていた(元素分析による)。これはAu/Niモル比0.25に相当する。
【0045】
(実施例4(本発明に合致する):シリカ上に担持され、ニッケルおよび金を含む、触媒Dの調製)
1.08gの量の単金属触媒Aは、400℃の水素流れ中、14時間にわたって、予備還元された。触媒Dは、1.08gの予備還元された単金属触媒Aを、周囲温度で水素の存在下、撹拌しながら(マグネティックスターラー、マグネティックバー)、ヘプタン(Acros)中のシアン化金(AuCN,Strem)の懸濁液(n−ヘプタン20mL中、100mgのAuCN)と接触させることによって調製された。接触の12時間後、固体物は、真空乾燥させられ(10−1mbar)、20mLのn−ヘプタンで4回洗浄され、再び周囲温度で真空下(10−1mbar)に置かれた。その後、アルゴン(1atm)下で保存された。その後、水素の存在下(100mbar)に置かれ、2時間にわたって400℃迄熱せられた(1.5℃/分の昇温)。最後に、周囲温度のアルゴン下で保存された。
【0046】
これにより得られた触媒Dには、11.5重量%のニッケルと9.6重量%の金とが含まれていた(元素分析による)。これはAu/Niモル比0.25に相当する。
【0047】
(実施例5(比較例):シリカ上に担持され、ニッケルおよび前駆体として金属金塩(metallic gold salt)を用いた金を含む、触媒Eの調製)
[Au(NH3)4]3+塩の水溶液が、20mLの蒸留水中31mgのAu(NH3)4 (NO3)3 を溶解させることによって、予備調製された。錯体Au(NH3)4 (NO3)3 は、それ自体、硝酸アンモニウム(Aldrich)の水溶液中に塩化金酸HAuCl4(Aldrich)を溶解させることによって予備調製された;濃アンモニアは、pHが常に5以下となるように滴下された。これにより形成された錯体は、水とエーテルで洗浄され、真空乾燥後空気中に保存された。
【0048】
単金属触媒Aは、400℃の水素流れ中、14時間にわたって、予備還元された。触媒Eは、水素の存在下、撹拌しながら、周囲温度で5時間にわたって、0.5gの予備還元された触媒Aを、20mLの[Au(NH3)4]3+塩の水溶液と接触させることにより調製された。その後、固体物は、ろ過によって回収され、エタノール、次いでヘプタンで洗浄され、周囲温度で真空下次いで空気中で乾燥させられ、その後400℃の水素流れ中で処理された。
【0049】
これにより得られた触媒Eには、11.6重量%のニッケルと2.6重量%の金とが含まれていた(元素分析による)。
【0050】
(実施例6:スチレンの水素化における触媒A〜Eの触媒性能)
上記実施例において調製された触媒の触媒特性はスチレンの水素化方法において連続して評価された。スチレンの選択的水素化は、エチルベンゼンを生成させ、この水素化は所望の反応を構成する。スチレンの完全水素化は、エチルシクロヘキサンを生成させ、これは不要な逐次反応によって生成させられる。
【0051】
スチレンは、機械的かつ磁気的に作動する撹拌機能を備え、かつ最大圧力が100barで5〜200℃の範囲の温度で機能し得る、100mLのステンレス鋼製オートクレーブ中で水素化された。
【0052】
40mgの量の触媒が、空気の非存在下のオートクレーブの中へ移された。単金属触媒Aは、400℃の水素流れ中、14時間にわたって、予備還元された。他の触媒B、C、D、およびEは、そのままで用いられた。50mlのn−ヘプタンを追加した後、オートクレーブはシールされ、パージされ、その後水素15bar(0.15MPa)まで加圧された。スチレン導入後、150℃で2時間にわたって、撹拌しながら、熱せられ、その後、初期試験温度(5℃)まで戻された。時間t=0の時、3.5gのスチレンと内部基準がオートクレーブ中に導入され、撹拌が開始させられた(500rpm)。反応の進行は、一定の時間間隔で反応媒体から試料を取ることによってモニタリングされた。これらの試料は、ガスクロマトグラフィーによって分析された。一旦スチレンが全て消費されると、オートクレーブ中の圧力は60barまで上げられ、温度は150℃まで急速に上げられた(1時間未満):この第2工程において、起こった反応は、エチルベンゼンのエチルシクロヘキサンへの水素化であった。
【0053】
触媒の性能は、選択性の観点から評価された。これは、水素化反応の反応速度を測定することから評価された。スチレンのエチルベンゼンへの水素化と、エチルベンゼンのエチルシクロヘキサンへの水素化という、2つの反応の反応速度は、エチルベンゼンの濃度の経時変化のグラフ中の、触媒の質量に対する基点における傾きとして定義された。スチレンのエチルベンゼンへの水素化における反応速度r1は、試験の第1工程で決定された。エチルベンゼンのエチルシクロヘキサンへの水素化における反応速度r2は、試験の第2工程で決定された。所望の生成物、すなわちエチルベンゼンのための触媒の選択性は、r1/r2の割合によって評価された;この割合が高い程、エチルベンゼンのための触媒の選択性がより高い。
【0054】
表1において、上記実施例によって調製された触媒の選択性は、単金属Ni触媒(触媒A)の選択性と比較された。
【0055】
【表1】

【0056】
表1において、r1refおよびr2refは、それぞれ上に定義された反応速度r1又はr2に対応し、それぞれが、対応する単金属触媒Aを用いて測定されている。
【0057】
本発明の方法を用いて調製されたニッケルおよび金をベースとした触媒B、C、およびDは、単金属ニッケル触媒(触媒A)の選択性より3〜6倍高い選択性を有する。従って、ニッケルおよび金をベースとした、これらの触媒B、C、およびDについて、エチルベンゼンのエチルシクロヘキサンへの水素化速度は、スチレンのエチルベンゼンへの水素化速度と比べて、非常に遅くされている。従って、前記触媒B、CおよびDについて、芳香環の水素化は、触媒Aで観察された水素化に比べて、相当低減させられており、触媒Aは、エチルベンゼンを損なってエチルシクロヘキサンの生成を優先する。従って、触媒B、C、およびDは、触媒Aよりも、エチルベンゼンのための選択性が遙かに高い。従って、金を追加すると、スチレンの芳香環の水素化反応が低減し得る。
【0058】
触媒Dにのみ施された最終活性化処理(水素の存在下、400℃で2時間の時間にわたる)を例外として、同一の手順を用いて調製された触媒C、およびDは、この活性化処理の重要性を例証している。これにより、エチルベンゼンに関する触媒の選択性が大きく増大させられることが可能になる。
【0059】
本発明の方法を用いて調製された触媒B、C、およびDはまた、水性媒体中の金属性の金塩の存在下で調製された触媒Eより、遙かに選択性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の多孔質担体と、少なくとも1種の金属相とを含み、該金属相は、ニッケルと、少なくとも1種の第IB族金属Mとを、モル比M/Niが0.005〜0.5の範囲であるような割合で含む、触媒の調製方法であって、少なくとも以下の連続する工程を含む方法:
a1) ニッケルを少なくとも前記担体上に沈着させて、担持型ニッケルベースの単金属触媒を得る工程;および
b1) 少なくとも1種の還元ガスの存在下かつあらゆる水性溶媒の非存在下に、少なくとも前記金属Mの少なくとも1種の有機金属化合物を、前記単金属触媒上に沈着させる工程。
【請求項2】
前記触媒のM/Niモル比は、0.01〜0.5の範囲である、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記触媒中に存在する前記多孔質担体は、アルミナまたはシリカである、請求項1または2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記第IB族金属Mは金である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項5】
前記工程b1)は気相内で実施される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項6】
前記工程b1)は、有機溶媒中の液相内で実施される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項7】
前記金属Mが金である場合、前記有機金属化合物はシアン化金である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項8】
前記工程a1)の後、前記工程b1)を実施する前に、前記工程a2)が実施され、前記工程a2)は、少なくとも1種の還元ガスの存在下で前記単金属触媒の還元を実施することからなる、請求項1〜7のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項9】
前記工程b1)の後、少なくとも1回の工程c1)を実施し、該工程c1)の間、前記工程b1)の終わりに得られた前記担持触媒に、少なくとも1回の乾燥段階を施す、請求項1〜8のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項10】
前記工程b1)の後、少なくとも1回の工程c2)を実施し、該工程c2)の間、前記工程b1)の終わりに得られた前記担持触媒に、少なくとも1回の洗浄段階を施す、請求項1〜9のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項11】
前記工程b1)の後、少なくとも1種の還元ガスの存在下、前記工程b1)の終わりに得られた触媒を活性化することからなる工程d1)を実施する、請求項1〜10のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項12】
多価不飽和炭化水素の供給原料の選択的水素化のための方法であって、前記供給原料を、請求項1〜11のいずれか1つに記載の調製方法によって調製された少なくとも1種の金属相を含む少なくとも1種の担持触媒を備えた少なくとも1つの反応装置へと通過させることを含む、方法。
【請求項13】
前記多価不飽和炭化水素の供給原料は、少なくとも4個の炭素原子を含みかつ220℃以下の終点を有する多価不飽和炭化水素を含む水蒸気分解ガソリンである、請求項12に記載の選択的水素化方法。
【請求項14】
前記多価不飽和炭化水素の供給原料は、ジオレフィン化合物、スチレン化合物、およびインデン化合物である、請求項13に記載の選択的水素化方法。
【請求項15】
20〜200℃の範囲の温度で、0.4〜5MPaの範囲の圧力で、0.2〜30h―1の範囲の毎時空間速度(触媒の容積に対する供給原料の容積流量の割合として定義される)で実施される、請求項12〜14のいずれか1つに記載の選択的水素化方法。

【公開番号】特開2011−36857(P2011−36857A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182488(P2010−182488)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】