説明

多価不飽和脂肪酸含有油産物ならびにその使用および産生

本発明は、飽和脂肪と長鎖多価不飽和脂肪酸を有する微生物油とを有する油ならびに乳化剤を含む固形脂肪組成物を含む。特に、固形脂肪組成物は、高レベルの長鎖多価不飽和脂肪酸および少量の乳化剤を有し得る。好ましい態様において、多価不飽和油は脱ろうされていない微生物油である。本発明はまた、そのような組成物、ならびにそのような組成物を含む食品、栄養製品、および薬学的製品を製造する方法に関する。本発明はまた、LC-PUFAを少なくとも1種含む油含有画分を微生物バイオマスから抽出し、真空蒸発工程により画分を処理することによって調製される微生物油産物であって、溶媒脱ろう段階、腐食精製工程、冷却濾過工程、または漂白工程の1つまたは複数に供していない油産物を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、多価不飽和脂肪酸含有油産物、ならびに微生物由来長鎖多価不飽和脂肪酸および増粘剤を含む固形脂肪組成物中などでのその使用に関する。本発明はまた、そのような産物、ならびにそのような組成物を含む食品、栄養製品、および薬学的製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの有益な栄養素の食事摂取を増やすことは望ましい。特に有益な栄養素には、オメガ-3およびオメガ-6長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)が含まれる。オメガ-3 PUFAは、動脈硬化症および冠動脈心疾患を予防し、炎症状態を緩和し、ならびに腫瘍細胞の増殖を遅延させるのに重要な食品化合物として認識されている。オメガ-6 PUFAは、人体における構造脂質としてだけでなく、プロスタグランジンおよびロイコトリエンのような炎症におけるいくつかの因子の前駆体として機能を果たす。オメガ-3およびオメガ-6 PUFAの重要な種類は、長鎖オメガ-3およびオメガ-6 PUFAである。
【0003】
脂肪酸は、炭素鎖の長さおよび飽和特性に基づいて分類される。短鎖脂肪酸は2〜約6個の炭素を有し、典型的に飽和している。中鎖脂肪酸は約6〜約14個の炭素を有し、やはり典型的に飽和している。長鎖脂肪酸は16〜24個またはそれ以上の炭素を有し、飽和している場合もあれば不飽和である場合もある。長鎖脂肪酸では、1つまたは複数の不飽和箇所が存在する場合があり、それぞれ「一価不飽和」および「多価不飽和」という用語を生み出す。本発明では、20個またはそれ以上の炭素を有する長鎖PUFA(LC-PUFA)が特に対象となる。
【0004】
LC-PUFAは、十分に理解されている命名法により、脂肪酸中の二重結合の数および位置に従って分類される。LC-PUFAには、脂肪酸のメチル末端に最も近い二重結合の位置に応じて、2つの主要な系またはファミリーが存在する;オメガ-3系は3番目の炭素に二重結合を含み、オメガ-6系は6番目の炭素に初めて二重結合を有する。したがって、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)は、メチル末端から3番目の炭素から始まる6つの二重結合を伴う炭素22個の鎖長を有し、「22:6 n-3」と称される。その他の重要なオメガ-3 LC-PUFAには、「20:5 n-3」と称されるエイコサペンタエン酸(「EPA」)、および「22:5 n-3」と称されるオメガ-3ドコサペンタエン酸(「DPA」)が含まれる。重要なオメガ-6 LC-PUFAには、「20:4 n-6」と称されるアラキドン酸(「ARA」)、および「22:5 n-6」と称されるオメガ-6ドコサペンタエン酸(「DPA」)が含まれる。
【0005】
ヒトでは、オメガ-3およびオメガ-6必須脂肪酸のデノボまたは「新規」合成は起こらない;しかし、身体は、これらの必須脂肪酸を食事から得た場合に、非常に低い効率ではあるもののDHAおよびARAなどのLC-PUFAに変換することができる。人体は、分子の末端から数えて7番目の炭素原子よりもオメガ末端の近位に二重結合を挿入することができないため、オメガ-3およびオメガ-6脂肪酸はいずれも栄養摂取の一部でなければならない。ひいては、代謝による変換はすべて、オメガ-3およびオメガ-6二重結合を含む分子のオメガ末端を変更することなく起こる。したがって、オメガ-3およびオメガ-6酸は人体内で相互変換できないため、これらは脂肪酸の2つの別のファミリーである。
【0006】
過去20年間にわたり、健康の専門家達は、飽和脂肪が少なく多価不飽和脂肪の多い食事を勧めてきた。多くの消費者はこの助言に従っているが、心疾患、癌、糖尿病、および多くの他の衰弱性疾患の発症率は着実に増加し続けている。科学者達も、多価不飽和脂肪の種類および供給源が脂肪の総量と同程度に重要であることに同意している。最も多く見られる多価不飽和脂肪は植物質に由来し、長鎖脂肪酸(最も詳細には、オメガ-3 LC-PUFA)に欠けている。さらに、合成脂肪を製造するための多価不飽和脂肪の水素化は、ある種の健康障害を生じる一因となっており、いくつかの必須脂肪酸の欠乏を悪化させている。実際に、多くの病状は、オメガ-3の補給が有益であることが認められている。これらには、座瘡、アレルギー、アルツハイマー病、関節炎、アテローム性動脈硬化症、乳房嚢胞、癌、嚢胞性線維症、糖尿病、湿疹、高血圧症、活動過多症、腸疾患、腎機能障害、白血病、および多発性硬化症が含まれる。留意すべきことには、世界保健機構は、乳児用調合乳がオメガ-3脂肪酸に富むものであることを推奨している。
【0007】
従来用いられている多価不飽和化合物は植物油に由来するものであり、相当量のオメガ-6(C18:2 n-6)を含むが、オメガ-3脂肪酸をほとんど含んでいない。オメガ-6およびオメガ-3脂肪酸はいずれも良好な健康状態に必要であるが、それらを約4:1のバランスで摂取することが推奨されている。オメガ-3の主たる供給源は、亜麻仁油および魚油である。過去10年間で、亜麻仁油および魚油の産生量は急激に増加している。いずれの油種も、オメガ-3多価不飽和脂肪の良好な食物源と見なされている。亜麻仁油はEPA、DHA、DPA、およびARAを含まないが、身体のEPA生成を可能にする構成要素であるリノール酸(C18:3 n-3)を含む。しかし、代謝による変換の速度は、特に健康を害した人では遅くかつ不安定であり得るという証拠がある。魚油では、特定の種およびそれらの食餌に応じて、脂肪酸組成の種類およびレベルが大幅に変わる。例えば、水産養殖によって育てられた魚は、天然の魚よりも低レベルのオメガ-3脂肪酸を有する傾向がある。さらに、魚油は、魚に多く認められる環境汚染物を含む危険性を伴う。このようなオメガ-3およびオメガ-6 LC-PUFA(鎖長20超)の健康上の利点の観点から、食物をそのような脂肪酸で補うことが望ましいと考えられる。
【0008】
魚油およびある種の微生物油などの液体油は、LC-PUFAの含有量が高いことが知られている。しかし、多価不飽和の性質のために、これらの油は室温(すなわち、20℃)で固体ではなく、むしろ油または液体の形態である。しかし、PUFAの豊富な油の固体形態は、液体油が適用できないある種の食品用途において用いるのに望ましい。固体組成物を形成するために、いくつかのアプローチが試行されている。不飽和油を凝固させるために用いられる一般的な工程は、半固体油を得るためのそのような油の部分的または完全な水素化からなる。しかし、この化学的変換の結果として、油は飽和状態となり、その健康上の特性が失われる。部分的水素化工程によって「トランス」脂肪酸もまた形成され、これはいくつかの有害特性を有することが示されている。したがって、水素化工程によって不飽和油を凝固させることにより、不飽和油の有益な特性は、飽和油および「トランス」脂肪酸の形成の非常に望ましくない有害特性にとって代わられる。その他の方法は、混合物を半固体油にするために、不飽和油を「硬」脂肪または飽和脂肪と混合する段階を含む。この場合も同様に、「健康に良い」不飽和油の利点は、硬化したまたは飽和した脂肪の存在によって少なくとも部分的に弱められる。高レベルの多価不飽和脂肪を含む塗布可能な半固形脂肪組成物を形成するためのその他の方法は、高レベルの特定種類の乳化剤、または脂肪アルコールなどの他の増粘剤を用いる段階を含む。本発明に至るまで、当技術分野においては、高レベルのPUFAを含み、飽和脂肪が外部から添加されておらず、高レベルの乳化剤および/または他の種類の増粘剤が外部から添加されていない、固体または半固体の脂肪または食品を含む組成物が欠如していた。このような組成物およびこのような組成物を形成するための方法は、非常に望ましいと考えられる。このような組成物を製造するための安価な方法であって、無害な材料の使用、最小限の加工段階、および最小限の原材料在庫の使用を伴う方法を提供することは、さらに望ましいと考えられる。
【0009】
LC-PUFAの含有量が高いことが知られている微生物油などの液体油は、典型的に、前処理、脱溶媒化もしくは脱臭、脱ろう、腐食精製(化学精製としても知られる)、冷却濾過、および漂白を含む多段階によって、ヒトまたは他の動物による摂取用に加工される。このような工程によって、製品の調製に要する時間および費用は増大し、天然製品または有機製品市場に許容されない化学物質が精製工程中に取り込まれ得る。したがって、簡易化され、安価であり、かつ幅広い市場に許容されつつ、許容される官能特性を有する製品を製造するのになお効果的である、油産生の改良法の必要性が存在する。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明は、飽和脂肪とLC-PUFAを少なくとも1種含む微生物油とを含む油と、少なくとも1種の乳化剤を混合して、混合物を形成する段階;および混合物を凝固させ固形脂肪組成物を形成する段階を含む、固形脂肪組成物を製造する方法を提供する。本発明はまた、LC-PUFAを含む脱ろうされていない微生物油と乳化剤の混合物であって、室温で固体組成物である混合物を含む固形脂肪組成物を提供する。
【0011】
本方法のいくつかの態様では、油は、約5重量%〜約70重量%のLC-PUFAおよび約20重量%〜約60重量%の飽和脂肪を含む。
【0012】
いくつかの態様において、固形脂肪組成物は飽和脂肪を含む。
【0013】
いくつかの態様においては、飽和脂肪を外部から添加せず、他の態様においては、飽和脂肪を外部から添加する。さらなる態様において、微生物油は脱ろうされておらず、また水素化もしない。
【0014】
いくつかの態様において、微生物油は、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)属の微生物、シゾキトリウム(Schizochytrium)属の微生物、アルソルニア(Althornia)属の微生物、アプラノキトリウム(Aplanochytrium)属の微生物、ジャポノキトリウム(Japonochytrium)属の微生物、ラビリンチュラ(Labyrinthula)属の微生物、ラビリンチュロイデス(Labyrinthuloides)属の微生物、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される微生物に由来する。さらなる態様において、微生物は、ヤブレツボカビ属の微生物、シゾキトリウム属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0015】
いくつかの態様において、微生物油は、少なくとも20もしくは少なくとも22の炭素鎖長を有するか、または二重結合を少なくとも3つ有するもしくは二重結合を少なくとも4つ有するLC-PUFAを含む。いくつかの態様において、LC-PUFAは、ドコサヘキサエン酸、またはドコサペンタエン酸、またはアラキドン酸、またはエイコサペンタエン酸を含む。他の態様において、油は、少なくとも約50重量パーセントのドコサヘキサエン酸、または少なくとも約60重量パーセントのドコサヘキサエン酸を含む。
【0016】
いくつかの態様において、固形脂肪組成物は均一な構造を有するか、またはショートニングである。
【0017】
いくつかの態様において、乳化剤は、モノグリセリド、ジグリセリド、モノ/ジグリセリドの組み合わせ、レシチン、乳酸(lactylated)モノ-ジグリセリド、ポリグリセロールエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステロイル乳酸ナトリウム、ステロイル乳酸カルシウム、またはそれらの組み合わせである。さらなる態様において、乳化剤は約0.01重量パーセント〜約2.0重量パーセントの量で存在し、さらなる態様においては、約0.05重量パーセント〜約0.2重量パーセントの量で存在する。
【0018】
本方法のいくつかの態様において、固形脂肪組成物は、少なくとも約20℃、少なくとも約30℃、または少なくとも約35℃の融解温度を有する。
【0019】
本方法のいくつかの態様において、混合物を凝固させる段階は、固形脂肪組成物中の結晶の形成を制御する。固形脂肪組成物の態様において、組成物は結晶を含み、いくつかの態様において、結晶はβ-プライム結晶を含む。本方法または固形脂肪組成物のさらなる態様において、結晶はβ-プライム結晶を含み、固形脂肪組成物中の脂肪および/もしくは油の少なくとも約50重量%がβ-プライム結晶型であるか、または固形脂肪組成物中の脂肪および/もしくは油の少なくとも約80重量%がβ-プライム結晶型である。
【0020】
本方法のいくつかの態様においては、油および/もしくは乳化剤を加熱する、混合段階の前に加熱する、または少なくとも約40℃まで加熱する。
【0021】
本方法のいくつかの態様において、混合段階は混合物を撹拌する段階を含み、さらなる態様では、撹拌段階により混合物が持続して形成される。
【0022】
本方法のいくつかの態様において、混合物を凝固させる段階は混合物を冷却する段階を含み、さらなる態様において、冷却段階は混合物を約0℃〜約3℃まで冷却する段階を含み、または凝固段階は冷却段階中に混合物を混合する段階をさらに含み、または混合物は約1℃/分〜約20℃/分の速度で冷却する。
【0023】
本方法のいくつかの態様において、凝固段階は混合物中に窒素を導入する段階を含み、また混合物中に窒素を気泡化させる段階を含み得る。
【0024】
本方法は、水を含む水溶性液体を含む少なくとも1つの付加的な成分を混合物に添加する段階をさらに含み得る。水溶性液体は、約1重量%〜約10重量%の量で添加することができる。
【0025】
組成物は、水を含む水溶性液体を含む少なくとも1つの付加的な成分をさらに含み得る。水溶性液体は、約1重量%〜約10重量%の量で存在し得る。
【0026】
付加的な成分はまた、抗酸化剤、香味料、香味増強剤、甘味料、色素、ビタミン、ミネラル、プレバイオティクス化合物、プロバイオティクス化合物、治療用成分、薬効成分、機能性食品成分、加工成分、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0027】
いくつかの態様において、付加的な成分はアスコルビン酸またはアスコルビン酸の塩であり、いくつかの態様においては、これを約0.5重量%〜約5重量%の量で添加する。
【0028】
いくつかの態様において、付加的な成分は抗酸化剤であり、いくつかの態様においては、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、クエン酸、アスコルビン酸、第3ブチルヒドロキノン、ローズマリー抽出物、レシチン、またはこれらの混合物である。
【0029】
いくつかの態様において、固形脂肪組成物は、少なくとも約20、少なくとも約40、または少なくとも約60というOSI値を有する。
【0030】
本方法のいくつかの態様において、固形脂肪組成物は、食品、栄養製品、および薬学的製品からなる群より選択される。
【0031】
本方法のいくつかの態様において、本方法は、固形脂肪組成物を、食品、栄養製品、および薬学的製品からなる群より選択される製品に添加する段階をさらに含む。
【0032】
本発明はまた、約5重量%〜約70重量%のLC-PUFAおよび約20重量%〜約60重量%の飽和脂肪酸を含む脱ろうされていない微生物油;ならびに約0.01重量%〜約2.0重量%の乳化剤を含む脂肪組成物であって、約10重量%未満の水を含み、かつ室温で固体組成物である組成物を提供する。
【0033】
さらなる態様において、本発明は、微生物バイオマスから、少なくとも1種のLC-PUFAおよび少なくとも油含有画分に視覚的に影響するのに十分である飽和脂肪酸を含む油含有画分を抽出する段階;およびLC-PUFAを少なくとも1種含む油産物を産生するために真空蒸発により油含有画分を処理する段階を含む、摂取用に用いられる油産物であって、脱ろう段階に供していない油産物を調製する方法を提供する。本発明はまた、本方法によって産生される油産物を提供する。
【0034】
本方法はまた、微生物バイオマスから、少なくとも1種のLC-PUFAおよび少なくとも油含有画分に視覚的に影響するのに十分である飽和脂肪酸を含む油含有画分を抽出し、真空蒸発工程により画分を処理することによって調製される、摂取用に用いられる微生物油産物であって、脱ろう段階に供していない油産物を提供する。
【0035】
本方法のいくつかの態様において、油産物は腐食精製工程に供していない。他の態様において、油産物は冷却濾過工程に供しておらず、また他の態様において、油産物は漂白工程に供していない。
【0036】
本方法のいくつかの態様において、油含有画分は、少なくとも20、少なくとも22の炭素鎖長を有し、二重結合を少なくとも3つまたは二重結合を少なくとも4つ有するLC-PUFAを含み得る。いくつかの態様において、LC-PUFAは、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、またはエイコサペンタエン酸を含み得る。
【0037】
本方法のいくつかの態様において、油含有画分を処理する段階は脱溶媒化を含む。さらなる態様において、脱溶媒化は、抽出された油含有画分を、これに限定されないが約50℃〜約70℃の温度を含む高温で真空状態に供する段階を含み得る。脱溶媒化はまた、抽出された油含有画分を約100 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階、抽出された油含有画分を約70 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階、または抽出された油含有画分を約50 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階を含み得る。
【0038】
本方法のいくつかの態様において、油含有画分を処理する段階は脱臭を含む。さらなる態様において、脱臭は、抽出された油含有画分を蒸気で拡散させつつ、油含有画分を高温で真空状態に供する段階を含む。1つの局面において、高温は約190℃〜約220℃である。この態様において、脱溶媒化は、抽出された油含有画分を約25 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階、抽出された油含有画分を約12 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階、または抽出された油含有画分を約6 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階を含み得る。
【0039】
本方法のいくつかの態様では、油産物は、処理段階の前または後に漂白段階に供してある。他の態様において、本方法は、油をオレイン画分とステアリン画分に分画する段階をさらに含む。他の態様において、油産物はヒトの摂取用に用いられる。
【0040】
いくつかの態様において、油産物は腐食精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程に供していない。
【0041】
いくつかの態様において、微生物バイオマスは、ヤブレツボカビ属の微生物、シゾキトリウム属の微生物、アルソルニア属の微生物、アプラノキトリウム属の微生物、ジャポノキトリウムの微生物、ラビリンチュラ属の微生物、ラビリンチュロイデス属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される微生物に由来する。他の態様において、微生物バイオマスは、シゾキトリウム属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される微生物に由来する。
【0042】
いくつかの態様において、油産物は約0.5重量%未満の遊離脂肪酸含量を有し、他の態様においては、約0.3重量%未満の遊離脂肪酸含量を有する。
【0043】
いくつかの態様において、油産物は約10 ppm未満のリン価を有し、他の態様においては、約5 ppm未満のリン価を有する。
【0044】
いくつかの態様において、油産物は約2 meq/kg未満の過酸化物価を有し、他の態様においては、約1 meq/kg未満の過酸化物価を有する。
【0045】
いくつかの態様において、油産物は約5未満のアニシジン価を有し、他の態様においては、約3未満のアニシジン価を有する。
【0046】
いくつかの態様において、油産物は約5重量%未満のセッケン含量を有し、他の態様においては、約2.5重量%未満のセッケン含量を有する。
【0047】
いくつかの態様において、油産物は約1 ppm未満のFe濃度を有し、他の態様においては、約0.5 ppmのFe濃度を有する。
【0048】
いくつかの態様において、油産物は約1 ppm未満のPb濃度を有し、他の態様においては、約0.2 ppmのPb濃度を有する。
【0049】
いくつかの態様において、油産物は約0.1 ppm未満のHg濃度を有し、他の態様においては、約0.04 ppmのHg濃度を有する。
【0050】
いくつかの態様において、油産物は約0.1 ppm未満のNi濃度を有し、他の態様において、油産物は約0.01 ppmのNi濃度を有する。
【0051】
いくつかの態様において、油産物は約1 ppm未満のCu濃度を有し、他の態様においては、約0.2 ppmのCu濃度を有する。
【0052】
本発明はまた、微生物油産物を含む栄養製品、微生物油産物を含む薬学的製品、ならびに微生物油産物および食品または液体成分を含む食品を提供する。いくつかの態様において、薬学的製品は薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。他の態様において、薬学的製品は、スタチン、降圧薬、抗糖尿病薬、抗認知症薬、抗うつ薬、抗肥満薬、食欲抑制薬、ならびに記憶および/または認知機能を増強するための薬剤からなる群より選択される薬学的活性薬剤をさらに含む。
【0053】
いくつかの態様において、食品は、パン生地、ケーキ種、焼いた食品、液体食品、半固体食品、食品バー、加工肉、アイスクリーム、凍結デザート、フローズンヨーグルト、ワッフルミックス、サラダドレッシング、代用卵ミックス、塩味スナック、特殊スナック、ドライフルーツスナック、食肉スナック、ポークラインズ、健康食品バー、餅/コーンケーキ、および菓子スナックからなる群より選択される。
【0054】
いくつかの態様において、微生物油産物はヒトの摂取用に用いられる。
【0055】
本発明はまた、微生物バイオマスからLC-PUFAを少なくとも1種含む油含有画分を抽出する段階;および真空蒸発工程により画分を処理する段階を含む工程により調製される、摂取用に用いられる微生物油産物であって、脱ろう段階、腐食精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程に供しておらず、かつ約0.5重量%未満の遊離脂肪酸含量、約10 ppm未満のリン価、約2 meq/kg未満の過酸化物価、約5未満のアニシジン価、約5重量%未満のセッケン含量、約1 ppm未満のFe濃度、約1 ppm未満のPb濃度、約0.1 ppm未満のHg濃度、約0.1 ppm未満のNi濃度、および約1 ppm未満のCu濃度からなる群より選択される特徴を有する油産物を提供する。
【0056】
微生物油産物および食品または液体成分を含む食品、微生物油産物を含む栄養製品、ならびに微生物油産物を含む薬学的製品もまた提供する。
【0057】
いくつかの態様において、微生物油産物はヒトの摂取用に用いられる。
【0058】
本発明はまた、微生物バイオマスからLC-PUFAを少なくとも1種含む油含有画分を抽出する段階;およびLC-PUFAを少なくとも1種含む油産物を産生するために真空蒸発により油含有画分を処理する段階を含む、摂取用に用いられる油産物であって、腐食精製工程に供していない油産物を調製する方法を提供する。本発明はまた、この方法によって産生される油産物を提供する。
【0059】
いくつかの態様において、微生物はモルティエラ(Mortierella)属の微生物である。
【0060】
いくつかの態様において、油含有画分はアラキドン酸を含む。
【0061】
本発明はまた、微生物バイオマスから、少なくとも1種のLC-PUFAおよび少なくとも油含有画分に視覚的に影響するのに十分である飽和脂肪酸を含む油含有画分を抽出する段階;およびLC-PUFAを少なくとも1種含む油産物を産生するために真空蒸発により油含有画分を処理する段階を含む方法によって産生された油産物であって、脱ろう段階に供していない油産物;ならびに微生物バイオマスからLC-PUFAを少なくとも1種含む油含有画分を抽出する段階、およびLC-PUFAを少なくとも1種含む油産物を産生するために真空蒸発により油含有画分を処理する段階を含む方法によって産生された油産物であって、腐食精製工程に供していない油産物を含む混合油産物を提供する。
【0062】
いくつかの態様において、前者の油産物が産生された微生物バイオマスは、ヤブレツボカビ属の微生物、シゾキトリウム属の微生物、アルソルニア属の微生物、アプラノキトリウム属の微生物、ジャポノキトリウムの微生物、ラビリンチュラ属の微生物、ラビリンチュロイデス属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される微生物に由来する。さらなる態様において、微生物は、シゾキトリウム属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0063】
混合油産物のさらなる態様において、後者の油産物が産生された微生物バイオマスは、モルティエラ属の微生物に由来する。
【0064】
さらなる態様において、混合油産物はドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸を含む。
【0065】
本発明の態様のいずれにおいても、1つの局面において、本発明の工程または方法によって産生される油産物は20℃で固体である。
【0066】
発明の詳細な説明
本発明によって教示される食品、栄養製品、および薬学的製品組成物、ならびのこれらの調製方法により、栄養素、特にLC-PUFA、特にオメガ-3およびオメガ-6 LC-PUFAの摂取増加が可能となり、これによってそのような製品を摂取する人に健康上の利点が提供され得る。本発明は、機能性が改善され、安定性が改善され、かつ天然および/または有機市場部門を含む広範囲の用途と適合する、最小加工により調製された高品質PUFA含有油産物を一部対象とする。そのような油産物の1つの特に好ましい使用は、栄養製品、食品、および/もしくは薬学的製品(薬効および/または治療用)において、またはそれらとして用いられ得る、LC-PUFAを含む固形脂肪組成物の製造におけるものである。本発明の産物を製造するための油は、微生物バイオマス由来のLC-PUFAを含む微生物油である。
【0067】
本発明の第1の態様は、高品質PUFA含有油産物である最小加工微生物油を産生する工程である。本工程は、微生物油を産生するために、LC-PUFAを少なくとも1種含む油含有画分を微生物バイオマスから抽出する段階を含む。微生物供給源、ならびに微生物油中に回収するための栄養素および/またはLC-PUFAを含む微生物を培養する方法は、当技術分野において公知である(Industrial Microbiology and Biotechnology, 2nd edition, 1999, American Society for Microbiology)。好ましくは、微生物は発酵槽において発酵培地中で培養する。本発明の方法および組成物は、LC-PUFAを産生するいかなる工業用微生物にも適用できる。
【0068】
微生物供給源には、藻類、細菌、菌類(酵母を含む)、および/または原生生物などの微生物が含まれ得る。好ましい生物には、黄金色藻類(ストラメノパイル(Stramenopiles)界の微生物など)、緑藻類、珪藻類、渦鞭毛藻類(例えばクリプテコディニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)などのクリプテコディニウム属のメンバーを含む渦鞭毛藻(Dinophyceae)綱の微生物など)、酵母、ならびにこれらに限定されないがモルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)およびモルティエラ・シュムッケリ節(Mortierella sect. schmuckeri)を含むムコール(Mucor)属およびモルティエラ属の菌類からなる群より選択されるものが含まれる。微生物群ストラメノパイルのメンバーには、以下の微生物群を含む微細藻類および藻類様微生物が含まれる:ハマトレス(Hamatores)、プロテロモナス(Proteromonads)、オパリナ(Opalines)、デヴェルパエラ(Develpayella)、ディプロフリス(Diplophrys)、ラブリンチュリド(Labrinthulids)、ヤブレツボカビ(Thraustochytrids)、ビオセシド(Biosecids)、卵菌綱(Oomycetes)、サカゲツボカビ綱(Hypochytridiomycetes)、コマチオン(Commation)、レチキュロスファエラ(Reticulosphaera)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、ペラゴコッカス(Pelagococcus)、オリコラ(Ollicola)、オーレオコッカス(Aureococcus)、パルマ目(Parmales)、珪藻類(Diatoms)、黄緑色藻類(Xanthophytes)、褐藻類(Phaeophytes)(褐藻類(brown algae))、真正眼点藻類(Eustigmatophytes)、ラフィド藻類(Raphidophytes)、シヌリド(Synurids)、アキソジン(Axodines)(リゾクロムリナ目(Rhizochromulinaales)、ペディネラ目(Pedinellales)、ディクチオカ目(Dictyochales)を含む)、クリソメリス目(Chrysomeridales)、サルキノクリシス目(Sarcinochrysidales)、ミズオ目(Hydrurales)、ヒッバーディア目(Hibberdiales)、およびクロムリナ目(Chromulinales)。ヤブレツボカビには、シゾキトリウム属(種には、アグレガツム(aggregatum)、リムナセウム(limnaceum)、マングロベイ(mangrovei)、ミヌツム(minutum)、オクトスポルム(octosporum)が含まれる)、ヤブレツボカビ属(種には、アルジメンタレ(arudimentale)、アウレウム(aureum)、ベンチコラ(benthicola)、グロボスム(globosum)、キンネイ(kinnei)、モチブム(motivum)、ムルチルジメンタレ(multirudimentale)、パキデルマム(pachydermum)、プロリフェルム(proliferum)、ロゼウム(roseum)、ストリアツム(striatum)が含まれる)、ウルケニア(Ulkenia)属(種には、アモエボイデア(amoeboidea)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、ミヌタ(minuta)、プロフンダ(profunda)、ラジアテ(radiate)、サイレンズ(sailens)、サルカリアナ(sarkariana)、シゾキトロプス(schizochytrops)、ビスルゲンシス(visurgensis)、ヨーケンシス(yorkensis)が含まれる)、アプラノキトリウム属(種には、ハリオチジス(haliotidis)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、プロフンダ(profunda)、ストッキノイ(stocchinoi)が含まれる)、ジャポノキトリウム属(種にはマリヌム(marinum)が含まれる)、アルソルニア属(種にはクロウチイ(crouchii)が含まれる)、およびエリナ(Elina)属(種には、マリサルバ(marisalba)、シノリフィカ(sinorifica)が含まれる)が含まれる。ラブリンチュリドには、ラビリンチュラ属(種には、アルゲリエンシス(algeriensis)、コエノシスティス(coenocystis)、チャットニイ(chattonii)、マクロシスティス(macrocystis)、マクロシスティス・アトランティカ(macrocystis atlantica)、マクロシスティス・マクロシスティス(macrocystis macrocystis)、マリナ(marina)、ミヌタ(minuta)、ロスコフェンシス(roscoffensis)、バルカノビイ(valkanovii)、ビテリナ(vitellina)、ビテリナ・パシフィカ(vitellina pacifica)、ビテリナ・ビテリナ(vitellina vitellina)、ゾプフィ(zopfi)が含まれる)、ラビリントミキサ(Labyrinthomyxa)属(種にはマリナ(marina)が含まれる)、ラビリンチュロイデス属(種には、ハリオチジス(haliotidis)、ヨーケンシス(yorkensis)が含まれる)、ディプロフリス属(種にはアルケリ(archeri)が含まれる)、ピュロソルス(Pyrrhosorus)属*(種にはマリヌス(marinus)が含まれる)、ソロディプロフリス(Sorodiplophrys)属*(種にはステルコレア(stercorea)が含まれる)、クラミドミクサ(Chlamydomyxa)属*(種には、ラビリンチュロイデス(labyrinthuloides)、モンタナ(montana)が含まれる)が含まれる。(*=現在、これらの属の正確な分類学的配置には全体的な合意がない)。本発明の工程を用いて、多種多様な微生物で産生され得る栄養素の種類を産生することができるが、簡潔さ、便宜、および例証のために、この本発明の詳細な説明では、オメガ-3および/またはオメガ-6多価不飽和脂肪酸を含む脂質を産生し得る微生物、特にDHA、DPA n-3、DPA n-6、EPA、またはARAを産生し得る微生物を培養する工程について考察する。さらなる好ましい微生物は、ヤブレツボカビ属(ウルケニア属を含む)およびシゾキトリウム属を含み、ならびにいずれもBarclayに発行され、いずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による米国特許第5,340,594号および第5,340,742号に開示されているヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)を含む、ヤブレツボカビ目のヤブレツボカビなどの藻類である。より好ましくは、微生物は、ATCC番号20888、ATCC番号20889、ATCC番号20890、ATCC番号20891、およびATCC番号20892の識別特性を有する微生物からなる群より選択される。専門家達の間では、ウルケニア属がヤブレツボカビ属とは別の属であるかどうかについて意見の相違がいくらかあるため、本出願の目的で、ヤブレツボカビ属にウルケニア属を含める。同様に好ましいのは、モルティエラ・シュムッケリ節(例えば、ATCC 74371の識別特性を有する微生物を含む)およびモルティエラ・アルピナ(例えば、ATCC 42430の識別特性を有する微生物を含む)の系統の株である。同様に好ましいのは、ATCC番号30021、30334〜30348、30541〜30543、30555〜30557、30571、30572、30772〜30775、30812、40750、50050〜50060、および50297〜50300の識別特性を有する微生物を含む、クリプテコディニウム・コーニイの株である。上記のいずれかに由来する変異株およびそれらの混合物もまた好ましい。油性微生物もまた好ましい。本明細書で使用する「油性微生物」は、細胞重量の20%超を脂質形態として蓄積できる微生物として定義される。LC-PUFAを産生する遺伝子改変微生物もまた本発明に適している。これには、天然でLC-PUFAを産生しさらに遺伝子改変された微生物、および天然でLC-PUFAを産生しないがそれを産生するように遺伝子改変された微生物が含まれ得る。
【0069】
適切な生物は、自然環境から収集するなどして、いくつかの利用可能な供給源から得ることができる。アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションは、現在、上記微生物の公的に入手可能な多くの株を収載している。本明細書において用いられる任意の微生物または任意の特定型の生物には、野生株、変異体、または組換え型が含まれる。これらの生物を培養するための増殖条件は当技術分野において公知であり、これらの生物の少なくともいくつかに適した増殖条件は、例えば、いずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,130,242号、米国特許第5,407,957号、米国特許第5,397,591号、米国特許第5,492,938号、米国特許第5,711,983号、米国特許第5,882,703号、米国特許第6,245,365号、および米国特許第6,607,900号に開示されている。
【0070】
本発明において有用な微生物油は、当業者に公知の任意の適切な手段によって微生物供給源から回収することができる。例えば、油は、クロロホルム、ヘキサン、塩化メチレン、メタノールなどの溶媒による抽出によって、または超臨界流体抽出法によって回収することができる。または、油は、いずれも2001年1月19日に出願され、「Solventless Extraction Process」という表題であり、いずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,750,048号およびPCT特許出願第US01/01806号に記載されているような抽出技法を用いて抽出することができる。さらなる抽出および/または精製技法は、2001年4月12日に出願された、「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials」という表題のPCT特許出願第PCT/IB01/00841号;2001年4月12日に出願された、「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials Using Water-Soluble Organic Solvent and Centrifugation」という表題のPCT特許出願第PCT/IB01/00963号;2001年5月14日に出願された、「Production and Use of a Polar Lipid-Rich Fraction Containing Stearidonic Acid and Gamma Linolenic Acid from Plant Seeds and Microbes」という表題の米国仮特許出願第60/291,484号;2001年5月14日に出願された、「Production and Use of a Polar-Lipid Fraction Containing Omega-3 and/or Omega-6 Highly Unsaturated Fatty Acids from Microbes, Genetically Modified Plant Seeds and Marine Organisms」という表題の米国仮特許出願第60/290,899号;2000年2月17日に出願され2002年6月4日に発行された、「Process for Separating a Triglyceride Comprising a Docosahexaenoic Acid Residue from a Mixture of Triglycerides」という表題の米国特許第6,399,803号;および2001年1月11日に出願された、「Process for Making an Enriched Mixture of Polyunsaturated Fatty Acid Esters」という表題のPCT特許出願第US01/01010号において教示されており、これらはすべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる。抽出された油を減圧下で蒸発させて、濃縮油材料の試料を生成することができる。脂質を回収するためのバイオマスの酵素処理の工程は、2002年5月3日に出願された、「HIGH-QUALITY LIPIDS AND METHODS FOR PRODUCING BY ENZYMATIC LIBERATION FROM BIOMASS」という表題の米国仮特許出願第60/377,550号;2003年5月5日に出願された、「HIGH-QUALITY LIPIDS AND METHODS FOR PRODUCING BY ENZYMATIC LIBERATION FROM BIOMASS」というPCT特許出願第PCT/US03/14177号;2004年10月22日に出願された、「HIGH-QUALITY LIPIDS AND METHODS FOR PRODUCING BY LIBERATION FROM BIOMASS」という表題の同時係属中の米国特許出願第10/971,723号;いずれも「Process for extracting native products which are not water-soluble from native substance mixtures by centrifugal force」という表題のEP特許公報第0 776 356号および米国特許第5,928,696号に開示されており、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0071】
好ましい態様において、本発明の微生物粗製油は、上記の工程によって調製された高品質微生物粗製油である。例えば、魚類バイオマスからの回収は典型的に加熱調理およびヘキサン抽出を伴うため、ならびに油は汚染物質および/またはその他の望ましくない成分および/または望ましくない脂肪酸プロファイルを含み得るため、本発明のこのような油は、例えば典型的に質の悪い粗製油を提供する魚油に勝る大きな利点を有する。
【0072】
上記の微生物バイオマスから抽出された、LC-PUFAを少なくとも1種含む微生物油含有画分は、LC-PUFA(すなわち、20個またはそれ以上の炭素を有するPUFA)を少なくとも1種含む。本発明の好ましいPUFAには、C20、C22、またはC24のオメガ-3またはオメガ-6 PUFAが含まれる。好ましくは、PUFAは、C20もしくはC22オメガ-3またはC20もしくはC22オメガ-6多価不飽和脂肪酸を含む長鎖PUFA(LC-PUFA)である。本発明のLC-PUFAは、二重結合を少なくとも2つ、好ましくは二重結合を3つ、さらにより好ましくは二重結合を少なくとも4つ含む。4つまたはそれ以上の不飽和炭素-炭素結合を有するPUFAはまた、一般に、高度不飽和脂肪酸またはHUFAと称される。特に、LC-PUFAには、ドコサヘキサエン酸(総脂肪酸の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、または約80重量パーセント)、ドコサペンタエン酸n-3(総脂肪酸の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、または約80重量パーセント)、ドコサペンタエン酸n-6(総脂肪酸の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、または約80重量パーセント)、アラキドン酸(総脂肪酸の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、または約80重量パーセント)、および/またはエイコサペンタエン酸(総脂肪酸の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、または約80重量パーセント)が含まれ得る。PUFAは、これらに限定されないがトリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、リン脂質、遊離脂肪酸、エステル化脂肪酸を含む天然脂質中に、またはこれらの脂肪酸の天然もしくは合成誘導体型(例えば、脂肪酸のカルシウム塩、エチルエステルなど)中に認められる一般的な形態のいずれかであってよい。好ましい態様において、微生物油含有画分は、トリグリセリド型として画分中に少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、および少なくとも約95重量%のPUFAを含む。本発明で使用するLC-PUFAという用語は、DHAなどの単一のオメガ-3 LC-PUFAを含む油、ARAもしくはDPA n-6などの単一のオメガ-6 LC-PUFAを含む油、またはDHA、DPA n-6、ARA、およびEPAなどの2つもしくはそれ以上のLC-PUFAの混合物を含む油を指し得る。好ましい態様において、産物は少なくとも1つの他の栄養素と組みわせてLC-PUFAを含む。
【0073】
油を抽出するための微生物バイオマスの使用に加えて、本発明はまた、LC-PUFAを抽出または回収するためのバイオマスとしての油料種子の使用を含む。油料種子バイオマスから抽出されたそのような油は、油産物を産生するために、本明細書に開示する通りに加工および処理することができる。例えば、任意の高等植物、特に作物およびとりわけその油を目的として利用される植物を含む摂取用植物。そのような植物には、例えば、カノーラ、ダイズ、菜種、亜麻仁、トウモロコシ、ベニバナ、ヒマワリ、およびタバコが含まれ得る。その他の好ましい植物には、薬学的薬剤、香味剤、栄養補助剤、機能性食品成分、もしくは化粧的活性薬剤として用いられる化合物を産生することが知られている植物、またはこれらの化合物/薬剤を産生するよう遺伝子改変された植物が含まれる。特に好ましい植物には、ポリケチド合成酵素系の遺伝子が導入された植物のような、LC-PUFAを産生するよう遺伝子改変された植物が含まれる。例えば、そのような遺伝子および植物形質転換の方法は、WO 02/083870 A2、WO 2004/087879 A2、WO 2000/42195 A2、米国特許出願公開第US-2005-0100995-A1号、2005年4月15日に出願された仮特許出願第60/671.656号、および米国特許出願公開第US-2005-0014231-A1号に開示されており、それらはすべて参照により明細書に組み入れられる。
【0074】
そのような種子は、油を回収するために、洗浄、脱皮、および粉砕によるなど、従来法により処理する。次いで、種子を圧搾して油を生成すること、または薄片化した後などに溶媒と接触させて油を抽出することができる。適切な溶媒には、有機溶媒、水混和性溶媒、および水が含まれ得る。好まし溶媒はヘキサンである。
【0075】
本発明の種々の態様におけるPUFA含有油産物のさらなる特徴は、それが、少なくとも油含有画分に視覚的に影響するのに十分である飽和脂肪酸を含む点である。多くのPUFA含有油産物は、油中に混濁をもたらすことによるなど、室温(すなわち、20℃)で油に視覚的に影響する形態の十分量の飽和脂肪酸を含む。いくつかのそのような産物は、例えばトリグリセリド型として十分な飽和脂肪酸を含むために、飽和脂肪酸の存在に起因して実にペースト様である。従来の加工では、飽和脂肪酸を除去するためにそのような油産物を脱ろうするが、本発明は、以下にさらに詳述するように、商業的に価値のある製品をそのような油産物から脱ろうなしに調製することができることを認識する。
【0076】
本発明の好ましい態様において、油は、LC PUFAを含む固体または半固体組成物を製造するのに特に適した脂質プロファイルを有する。より詳細には、そのような油は、高度不飽和化合物(例えば、4つ、5つ、またはそれ以上の不飽和点)が比較的濃縮されている、飽和化合物が比較的濃縮されている、ならびに/または一価、二価、および三価飽和化合物が比較的濃縮されていない。そのような組成物は、飽和の点で化合物の二峰性分布を有すること、すなわち大量の飽和化合物および大量の高度不飽和化合物、ならびに不飽和が中程度量である少量の化合物を有することを特徴とし得る。例えば、そのような油は、4つまたはそれ以上の不飽和点を有する高度不飽和化合物を約20重量%よりも多く、約25重量%よりも多く、約30重量%よりも多く、約35重量%よりも多く、約40重量%よりも多く、約45重量%よりも多く、または約50重量%よりも多く有し得る。他の態様において、そのような油は、5つまたはそれ以上の不飽和点を有する高度不飽和化合物を約20重量%よりも多く、約25重量%よりも多く、約30重量%よりも多く、約35重量%よりも多く、約40重量%よりも多く、約45重量%よりも多く、または約50重量%よりも多く有し得る。あるいはまたはさらに、そのような油は、飽和化合物を約30重量%よりも多く、約35重量%よりも多く、約40重量%よりも多く、約45重量%よりも多く、または約50重量%よりも多く有し得る。あるいはまたはさらに、そのような油は、一価、二価、または三価飽和化合物を約25重量%未満、約20重量%未満、約15重量%未満、約10重量%未満、または約5重量%未満有し得る。
【0077】
LC-PUFAを少なくとも1種含む最小加工高品質PUFA含有油産物を産生するための本発明の工程は、上記のように生成された油含有抽出画分を処理する段階をさらに含む。そのようなさらなる処理は、LC-PUFAを少なくとも1種含む油産物を産生するための真空蒸発の工程を含む。
【0078】
高真空蒸発による脱溶媒化または乾燥の工程は当技術分野において一般的に公知であり、抽出油を好ましくは高温(例えば、約50℃〜約70℃)で真空状態に供する段階を含む。例えば、油は、約100 mm Hgの真空よりも高い、約70 mm Hgの真空よりも高い、および約50 mm Hgの真空よりも高い真空に供することができる。例えば、本明細書で使用する「約100 mm Hgの真空よりも高い真空」への言及は、例えば90 mm Hgまたは80 mm Hgの真空のようなより強い真空を意味する。これらの条件下では、油よりも低い沸点を有する抽出油中の溶媒、水、またはその他の成分がいずれも除去される。
【0079】
脱臭工程は当技術分野において一般的に公知であり、存在し得る低分子量成分を除去するために、抽出油を真空条件に供する段階を含む。典型的に、これらの成分は、高真空下において高温で、蒸気で拡散させることによって除去される。例えば、油は一般に、脱溶媒化に関して上記したものよりも高い真空に供する。具体的には、真空は約50 mm Hgの真空よりも高い、約25 mm Hgの真空よりも高い、約12 mm Hgの真空よりも高い、約6 mm Hgの真空よりも高い真空であってよく、典型的には約12 mm Hgの真空〜約6 mm Hgの真空であるか、または約6 mm Hgの真空〜約1 mm Hgの真空であってよい。この工程はまた、存在し得る多くの過酸化物結合を破壊し、臭気を軽減または除去し、油の安定性を改善するのに役立つ。さらに、これらの条件下では、油よりも低い沸点を有する抽出油中の溶媒、水、またはその他の成分が除去される。脱臭は典型的に、約190℃〜約220℃などの高温で行われる。
【0080】
この工程から得られる油産物は、ヒトおよび非ヒト動物による摂取に用いられるか、またはそのような摂取に適した高品質PUFA含有油である。すなわち、油の官能特性は、産物の摂取がヒトおよび非ヒト動物に許容されるようなものである。具体的には、油産物は、低濃度の遊離脂肪酸、リン、過酸化物価、アニシジン価、セッケン、および重金属を含み得る。本発明によるこの油の産生により、微生物油を許容される商業条件にもっていくために必要な後続加工の量が最小となる。特定の変更には、溶媒脱ろう段階の排除、腐食精製工程の排除、冷却濾過工程の排除、および漂白工程の排除の可能性が含まれる。さらに、脱臭工程の代わりに高真空蒸発工程を用いることができる。上記の工程内容により、組成物が室温(すなわち、約20℃)で液体になるのを防ぐのに十分な飽和化合物の存在が保持されて、固体または半固体製品の製造が容易になる。本発明により、粗製微生物油から例外的に高収率(95〜100%)で、天然および/または有機市場部門と適合する食用油を産生することが可能になる。
【0081】
種々の態様において、溶媒脱ろう、腐食精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程という従来の加工段階の1つまたは複数に供することなく産生された油のような本発明の油産物は、低い遊離脂肪酸濃度を有する。油の遊離脂肪酸の濃度の測定は、当技術分野において周知である。より詳細には、本発明の油は、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、および約0.05重量%未満の遊離脂肪酸含量を有し得る。
【0082】
種々の態様において、溶媒脱ろう、腐食精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程という従来の加工段階の1つまたは複数に供することなく産生された油のような本発明の油産物は、低いリン価を有する。油のリン価の測定は、当技術分野において周知である。より詳細には、本発明の油は、約10 ppm未満、約5 ppm未満、および約0 ppmのリン価を有し得る。
【0083】
種々の態様において、溶媒脱ろう、腐食精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程という従来の加工段階の1つまたは複数に供することなく産生された油のような本発明の油産物は、低い過酸化物価を有する。油の過酸化物価の測定は、当技術分野において周知である。より詳細には、本発明の油は、約2 meq/kg未満、約1 meq/kg未満、および約0 meq/kgの過酸化物価を有し得る
【0084】
種々の態様において、溶媒脱ろう、腐食精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程という従来の加工段階の1つまたは複数に供することなく産生された油のような本発明の油産物は、低いアニシジン価を有する。油のアニシジン価の測定は、当技術分野において周知である。より詳細には、本発明の油は、約5未満、約3未満、約2未満、約1未満、約0.5未満、約0.3未満、約0.1未満、および検出未満のアニシジン価を有し得る。
【0085】
種々の態様において、溶媒脱ろう、腐食精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程という従来の加工段階の1つまたは複数に供することなく産生された油のような本発明の油産物は、低いセッケン濃度を有する。油のセッケン濃度の測定は、当技術分野において周知である。より詳細には、本発明の油は、約5重量%未満、約2.5重量%未満、および0重量%のセッケン含量を有し得る。
【0086】
種々の態様において、溶媒脱ろう、腐食精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程という従来の加工段階の1つまたは複数に供することなく産生された油のような本発明の油産物は、低い重金属値を有する。油の重金属値の測定は、当技術分野において周知である。より詳細には、本発明の油は、約1 ppm未満、約0.5 ppm未満、および好ましくは約0 ppmのFe濃度;約1 ppm未満、約0.2 ppm未満、および好ましくは約0 ppmのPb濃度;約0.1 ppm未満、約0.04 ppm未満、および好ましくは約0 ppmのHg濃度;約0.1 ppm未満、約0.01 ppm未満、および好ましくは約0 ppmのNi濃度;約1 ppm未満、約0.2 ppm未満、および好ましくは約0 ppmのCu濃度を有し得る。
【0087】
LC-PUFAを少なくとも1種有する最小加工高品質PUFA含有油産物を産生するための本発明の工程は、任意に、脱臭段階または高真空分画段階の前または後に油産物を漂白する段階を含み得るが、これはより一般的には脱臭段階の前に行われる。油の漂白は当技術分野で周知であり、従来の工程において達成され得る。具体的には、例えば、残留セッケンを除去するためのシリカ吸着剤(Trysil 600(Grace Chemicals)など)および漂白土を油に導入し、次いでこれを濾過除去することができる。典型的に、シリカ吸着剤は漂白土の前に添加する。
【0088】
LC-PUFAを少なくとも1種有する高品質PUFA含有油産物を産生するための本発明の工程は、LC PUFA含有液体油画分およびLC PUFA含有固形脂肪産物を生成するための工程を含み得る。そのような工程は、本明細書に開示するような高品質微生物粗製油を油産物と関連の固形脂肪産物に分画する段階を含む。そのような粗製油産物は、少なくとも1種のLC-PUFAおよび飽和脂肪酸を含む油含有画分を微生物バイオマスから抽出することによって調製することができる。油含有画分は、LC-PUFAを少なくとも1種含む液体油産物およびLC-PUFAを少なくとも1種含む固体産物を産生するために、脱ろう、冷却濾過、真空蒸発、および/またはその他の手段によって処理することができる。そのような他の手段には、液体油画分と固体組成物を分離するための濾過が含まれ得る。
【0089】
固体画分成分(おそらくは吸着剤を含む)は、固体/液体分離技法によって回収することができる。固形脂肪質を融解させるために吸着剤および固形脂肪質を加熱することによって、いずれの吸着剤も固体画分から分離することができる。次いで、融解した固体物から例えば濾過により吸着剤を分離することができ、次に融解した固体物を冷却により再凝固させることができる。
【0090】
回収された固体画分は、高レベルのLC PUFAを含む。好ましい態様において、固体画分は、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%のLC PUFA、特にDHAを含む。透明油および固体物はそれぞれ、例えば食品または食品添加物として用いることができる。
【0091】
本発明に従って産生される油産物は、固体物または半固体物であってよい。本明細書で使用する「油」という用語には、室温で固体または半固体である物質、および室温で液体である物質が含まれる。
【0092】
LC-PUFAを少なくとも1種有する最小加工高品質PUFA含有油産物を産生するための本発明の工程は、任意に、脱臭段階または高真空分画段階の後に、油をオレイン画分とステアリン画分に分画する段階を含み得る。油のオレイン画分とステアリン画分への分画を任意の粗製油または漂白もしくは脱臭油に適用して、透明オレイン画分および硬質ステアリン画分を生成することができる。それらの物理的特性の相違から、オレインおよびステアリンは異なる食品用途に用いることができる。従来の工程では、ステアリンは種々の脱ろうおよび冷却濾過の副産物であり、廃棄されるために約30%の損失が生じる。分画により、販売可能なステアリン画分の産生が可能になる。この分画の例を、以下の実施例5に示す。
【0093】
図1を参照して、本発明の様々な代替的態様を説明する。噴霧乾燥バイオマスなどのバイオマスのような出発材料を、粗製油の抽出のために、溶媒による処理に供し得る。そのような粗製油は、長鎖多価不飽和脂肪酸を含む。粗製油を、所望の油成分よりも低い沸点を有する粗製油中の抽出溶媒、水、およびその他の成分を除去する高真空蒸発に供し得る。または、粗製油を、カロテノイドを除去するためなどの任意の漂白段階に供してもよい。任意に処理した粗製油は次いで、高真空下において高温で、蒸気で油を拡散させることによって脱臭に供す。高真空蒸発または脱臭のいずれかによって産生された最終的な油産物は、次いで、任意に、オレイン画分とステアリン画分への分画によって処理し得る。
【0094】
図2を参照して、本発明の様々な代替的態様を工程図により説明する。その最も基本的な形態において、工程は、微生物バイオマスを含む低温殺菌された発酵ブロスから開始する段階を含まねばならない。細胞から油を放出させるために、溶解によって、例えば酵素処理または機械的破壊によって、ブロスを前処理する。前処理した発酵ブロスは次いで、微生物油を生成するために抽出段階に供する。少なくとも、工程は次いで、本明細書に記載する脱臭段階を含む。1つの別の工程では、工程は漂白段階を含み、抽出微生物油は脱臭段階の前に漂白に供される。さらなる別の態様では、漂白段階の前におよび/または漂白段階と脱臭段階の間に、抽出微生物油に対して脱ろう段階(すなわち、冷却濾過)を行い得る。
【0095】
本発明の最小加工油を産生する工程および得られた産物は、いくつかの大きな利点を有する。PUFA含有油産物を産生する従来法と比較して、本発明では、コストが低下し、加工要件が減少し、産生処理量が増加し、加工段階の安全性が増加し、廃棄物/副産物の流れが排除される。さらに、本工程は、天然および/または有機市場部門と調和する。油加工の従来法では、典型的に、化学精製を含む後続加工のすべての面を利用する。物理的精製法(すなわち、腐食精製を伴わない方法)は、おそらくはそのような油の加工における公知の困難さのために、魚油および類似のPUFA含有油にまで拡張されていない。さらに、公知の物理的加工法または精製度の低い産物の多くは、臭気および味覚の限界のために制限される。驚くべきことに、本発明の工程により、物理的方法および最小段階を用いてより良好な味覚の油が産生される。
【0096】
以下にさらに十分に記載するように、本発明の高品質PUFA含有油産物は、種々の食品および用途において用いることができる。油産物は、栄養製品、食品、薬効製品、または薬学的製品としてヒトに直接摂取され得る。さらに、油産物は、栄養を改善するためのヒトによる摂取を目的として、任意の公知のヒト用食物または液体と混合することができる。油産物はまた、飼料としてまたは動物飼料への栄養補助剤として動物に直接与えることもできる。このようにして、動物を原料にした食品はいずれも、ヒトに摂取された場合に向上した質を有し得る。
【0097】
1つの態様において、本発明の油産物は、乳児用調合乳を補うために用いることができる。例えば、モルティエラ・アルピナもしくはモルティエラ・シュムッケリ節などのARA産生微生物由来の物理的精製油を、単独で、または魚油、もしくはDHA-S(商標)およびDHA-T(商標)油(Martek Biosciences、メリーランド州、コロンビア)を含む微生物油などのDHA豊富なさらなる油などの他の油と組み合わせて、幼児用調合乳に追加することができる。そのようなARA含有物理的精製油は、化学的に精製されていない。または、例えば、クリプテコディニウム・コーニイなどのDHA産生微生物由来の最小加工油を、単独で、またはARASCO(登録商標)(Martek Biosciences、メリーランド州、コロンビア)を含むARAの豊富な他の油と組み合わせて、乳児用調合乳に追加することができる。さらなる態様においては、例えば、DHAを含む最小加工油(例えば、クリプテコディニウム・コーニイ由来)およびARAを含む物理的精製油(例えば、モルティエラ・アルピナ由来)などの、2つ以上の供給源に由来する本発明の複数の油を、乳児用調合乳に追加することができる。
【0098】
他の態様では、本発明の油産物を組み合わせて混合物を生成することができる。例えば、クリプテコディニウム・コーニイ由来の最小加工油を、モルティエラ・アルピナ由来の物理的精製油と混合することができ、得られた混合物を用いて乳児用調合乳を補うことができる。本発明の油を用いたARA含有油とDHA含有油の混合物は、ARAとDHAの様々な異なる比率で生成することができる。そのような混合物は、約1:1〜約2:1のARA:DHA比を含み得る。より詳細には、約1:1、1.25:1、1.5:1、1.75:1、または2:1のARA:DHA比を有する混合物を生成することができる。
【0099】
特に好ましい態様では、本発明の高品質PUFA含有油産物を、以下に詳述する固形脂肪組成物の出発材料として用いることができる。しかし、本発明の最小加工油産物の使用は、本明細書に記載する固形脂肪組成物の出発材料に制限されないことが理解されるべきである。
【0100】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の固形脂肪組成物の好ましい態様において、脱ろうされていない微生物由来ドコサヘキサエン酸含有油(DHA油)を含む、LC-PUFAの豊富な油の脱ろうされていない型が、本発明の固形脂肪組成物の出発材料として使用できることを見出した。これらの油からそのような組成物を製造する工程により、油の水素化、これらの油を硬脂肪もしくは飽和脂肪または他の増粘剤型薬剤と混合することの必要性が回避され得る。典型的に、精製油、すなわち液体の魚油または微生物油は、最初に粗製油として生成され、その後精製段階(リン脂質および遊離脂肪酸を除去する)および漂白段階(色素を除去するため)に供される。油は次いで、典型的に、飽和脂肪を除去するために脱ろうされる。
【0101】
本発明者らは、驚くべきことに、例えば、脱ろうされていない微生物油、すなわち脱ろう段階が行われていない微生物油が、固体組成物を形成するために、先行技術で教示される処理を必要としない出発材料となることを見出した。さらに、上記したような脱ろうされていない油料種子油を、以下に記載する微生物油の代替物として用いることができる。理論によって縛られることはないが、本発明者らは、脱ろうされていない油中に存在する飽和脂肪が、油により堅固な粘稠性を付与する(脱ろう液体油と比較して)と考えている。また、固形脂肪組成物を製造するための本発明の方法により、脱ろうされていない油が粒状を呈して(トリグリセリドの結晶化による)、そのような脱ろうされていない油が粒子を伴う高粘度の液体油のように見える傾向が克服される。室温に放置すると、脱ろうされていない油は分離し、内部に固体を有して高粘度の液体油のように見える産物が生じる。本発明により、脱ろうされていない油のこの特性が克服され得る。本発明の工程により、室温に放置した場合に安定である(明白な分離が起こらない)均一な外観の滑らかな産物が生成される。得られる産物は、ショートニングの粘稠性を有し得る。
【0102】
さらなる態様において、本発明は、固形脂肪組成物を製造する方法を含む。本方法は、飽和脂肪およびLC-PUFAを少なくとも1種伴う微生物油を含む油と少なくとも1種の乳化剤を混合して、混合物を形成する段階を含む。次いで、固形脂肪組成物を形成するために混合物を凝固させる。
【0103】
「固形脂肪組成物」とは、室温(すなわち、20℃)で固体または半固体である組成物を指す。脂肪および油の生理化学的特性には、それらの粘度および融解温度が含まれる。好ましくは、固形脂肪組成物は、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、および好ましくは少なくとも約35℃の融解温度を有する。融解温度は、存在する異なる化学物質の数に応じてその鋭敏さが異なる。典型的に、いくつかのトリグリセリドの混合物は、個々のトリグリセリドの融点に基づいて予測されるよりも低い融点を有する。混合物はまた、その個々の成分の融解範囲よりも広い融解範囲を有する。モノグリセリドおよびジグリセリドは、類似の脂肪酸組成のトリグリセリドよりも高い融点を有する。好ましい態様において、固形脂肪組成物は、食品に塗布するのに十分柔らかいままである。好ましくは、室温において組成物は粘稠性であり、遅い流動特性を有し、および/またはこの産物を製造するための出発材料よりも表面に対する粘着性が高い。
【0104】
固形脂肪組成物を製造するための本発明の方法において用いられる油は、LC-PUFAを少なくとも1種伴う微生物油を含む。微生物供給源、ならびに微生物油中に回収するための栄養素および/またはLC-PUFAを含む微生物を培養する方法は、本発明の最小加工油の説明において上記で詳述したように、当技術分野において公知である。そのような微生物供給源および方法は、微生物油の産生目的と同様、本発明の固形脂肪組成物の出発材料として適している。実際に、上記の最小加工油は、固形脂肪組成物を製造するための好ましい出発材料である。しかし、以下に記載するような多種多様なその他の微生物油出発材料も、本発明の固形脂肪組成物の出発材料として使用できることが理解されるべきである。1つの特に好ましい態様において、微生物油は、2001年4月12日に出願されWO 01/76715として公開された、「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials」という表題のPCT特許出願第PCT/IB01/00841号;および2001年4月12日に出願されWO 01/76385として公開された、「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials Using Water-Soluble Organic Solvent and Centrifugation」という表題のPCT特許出願第PCT/IB01/00963号における開示に従って産生される油である。これらの2つのPCT出願における開示は、一般にFriolex工程と称され得る微生物油回収工程について記載している。
【0105】
本発明の微生物油は、LC-PUFA(すなわち、20個またはそれ以上の炭素を有するPUFA)を少なくとも1種含む。本発明の好ましいPUFAには、C20、C22、またはC24のオメガ-3またはオメガ-6 PUFAが含まれる。好ましくは、PUFAは、C20もしくはC22オメガ-3またはC20もしくはC22オメガ-6多価不飽和脂肪酸を含む長鎖PUFA(LC-PUFA)である。本発明のLC-PUFAは、二重結合を少なくとも2つ、好ましくは二重結合を3つ、さらにより好ましくは二重結合を少なくとも4つ含む。4つまたはそれ以上の不飽和炭素-炭素結合を有するPUFAはまた、一般に、高度不飽和脂肪酸またはHUFAと称される。特に、LC-PUFAには、ドコサヘキサエン酸(総脂肪酸の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、または約80重量パーセント)、ドコサペンタエン酸n-3(総脂肪酸の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、または約80重量パーセント)、ドコサペンタエン酸n-6(総脂肪酸の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、または約80重量パーセント)、アラキドン酸(総脂肪酸の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、または約80重量パーセント)、および/またはエイコサペンタエン酸(総脂肪酸の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、または約80重量パーセント)が含まれ得る。PUFAは、これらに限定されないがトリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、リン脂質、遊離脂肪酸、エステル化脂肪酸を含む天然脂質中に、またはこれらの脂肪酸の天然もしくは合成誘導体型(例えば、脂肪酸のカルシウム塩、エチルエステルなど)中に認められる一般的な形態のいずれかであってよい。好ましい態様において、微生物油は、トリグリセリド型として油中に少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、および少なくとも約95重量%のPUFAを含む。本発明で使用するLC-PUFAという用語は、DHAなどの単一のオメガ-3 LC-PUFAを含む油、ARAもしくはDPA n-6などの単一のオメガ-6 LC-PUFAを含む油、またはDHA、DPA n-6、ARA、およびEPAなどの2つもしくはそれ以上のLC-PUFAの混合物を含む油を指し得る。好ましい態様において、産物は少なくとも1つの他の栄養素と組みわせてLC-PUFAを含む。
【0106】
本発明の好ましい態様において、固形脂肪組成物を製造するための本発明の方法において用いられる油は、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%のLC-PUFA、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%のLC-PUFA、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、および少なくとも約50重量%のLC-PUFAを含み得る。そのような態様はまた、約30重量%未満、約35重量%未満、約40重量%未満、約45重量%未満のLC-PUFA、約50重量%未満、約55重量%未満、約60重量%未満、約65重量%未満のLC-PUFA、および約70重量%未満のLC-PUFAを有し得る。
【0107】
固形脂肪組成物を製造するための本発明の方法において用いられる油は、LC-PUFAを少なくとも1種伴う微生物油に加えて、飽和脂肪を含む。飽和脂肪は典型的に、LC-PUFAまたはLC-PUFAの混合物よりも高い融点を有する。そのような飽和脂肪は、外部から油に添加することができる。添加するのに好ましい、外部から添加する飽和脂肪には、部分的水素化植物油、完全水素化油、部分的水素化ラード、および非トランス熱帯油などの「硬脂肪」が含まれる。例えば、パーム油およびパーム核油ならびにそれらの画分(パームおよびパーム核オレインならびにパームおよびパーム核ステアリン)を用いることができる。組成物が、外部から添加された脂肪を含む場合、LC-PUFA油は脱ろうしてもしなくてもよい。外部から添加する脂肪の好ましい量は、出発材料の堅さおよび/または粘度の程度、ならびに組成物中に所望される堅さおよび/または粘度および/または塗布粘稠度の所望の程度に応じて、当業者によって決定され得る。外部から添加する脂肪は、約20重量%〜約60重量%、約30重量%〜約50重量%、および約35重量%〜約45重量%の量で添加することができる。
【0108】
好ましい態様では、飽和脂肪は外部から添加せず、微生物油中に天然に存在する。例えば、LC-PUFAを含む微生物油は、当技術分野で公知の任意の手段によって抽出された非加工油であってよい。そのような油において、微生物油中の飽和脂肪の量は、約20重量%〜約60重量%、約30重量%〜約50重量%、および約35重量%〜約45重量%であってよい。
【0109】
本発明の好ましい態様において、微生物油は脱ろうされておらず(すなわち、分画されていない)、したがって飽和脂肪を含む。脱ろうとは、植物油を含む多くの油中に低温で出現する沈殿物(典型的に、高融点固体飽和脂肪)を除去する工程を指し、最も典型的には、冷蔵庫内温度で液体画分が混濁するのを回避するために濾過によって結晶化物質の量を除去する段階を含む。そのような技法は、異なる融点を有する2つまたはそれ以上の画分へと、油を分離する段階を含む。分離された液体画分および固体画分は、物理的および化学的特性において顕著な相違を示す。適切な技法は当技術分野において公知であり、典型的に以下の3段階を含む:(i) 液体油を超飽和まで冷却することによる結晶核の形成、(ii) 徐冷却による結晶の進行的増大、および(iii) 液相と結晶相の分離。これらの技法には、例えば、従来の脱ろう、界面活性剤分画、および溶媒脱ろうが含まれ得る。従来の脱ろうには、冷却中に、融解温度の最も高いトリグリセリドを原液または融解した脂肪から優先的に結晶化させる乾燥分画結晶が含まれる。乾燥分画工程の原理は、化学物質を添加しない、制御条件下での油の冷却に基づく。液相と固相は、機械的手段により分離する。界面活性剤分画の原理は、溶媒を添加しない、制御条件下での油の冷却に基づき、乾燥分画と類似している。その後、水性界面活性剤溶液を添加した後に、遠心分離により液相と固相を分離する。低温下のトリグリセリドは一般に、溶媒が存在しない場合よりも存在する場合の方がより安定した結晶を形成するため、トリグリセリドの結晶形成を促進するために溶媒(典型的に、アセトン)脱ろうが用いられる。溶媒支援の分画では、濾過中の系の粘度を低下させるために極性または非極性溶媒を用いることができる。得られた画分は次いで、蒸留によって溶媒から遊離させる。したがって、脱ろうされていない微生物油とは、脱ろうまたは分画工程に供されていない微生物油である。
【0110】
さらなる好ましい態様において、微生物油は水素化も部分的水素化もされない。水素化は当技術分野において公知であり、触媒の存在下で液体脂肪に水素ガスを化学的に添加する工程を含む。この工程により、脂肪分子中の不飽和脂肪酸の二重結合の少なくともいくつかが一重結合に変換され、それによって脂肪の飽和度が増加する。水素化の程度、すなわち変換された二重結合の総数により、水素化脂肪の物理的および化学的特性が決まる。部分的に水素化された油は多くの場合、かなりの程度の不飽和をその脂肪酸中に保持する。水素化はまた、1つまたは複数の二重結合が脂肪酸鎖中の新たな位置に移行することによる、いくつかのシス二重結合のトランス配置への変換をもたらす。現在の研究から、トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸とほぼ同程度に総コレステロールおよび心疾患リスクを上昇させる可能性があり、よって食事に望ましくないことが示されている。本発明により、水素化または部分的水素化を必要とせずに、固体または半固体製品が形成され得る。本方法は、少なくとも1種の乳化剤を、LC-PUFAを少なくとも1種有する微生物油を含む油と混合する段階を含む。本発明と共に使用するのに好ましい乳化剤は、モノグリセリド、ジグリセリド、モノ/ジグリセリドの組み合わせ、レシチン、乳酸モノ-ジグリセリド、ポリグリセロールエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステロイル乳酸ナトリウム、ステロイル乳酸カルシウム、およびそれらの組み合わせである。好ましい態様において、乳化剤はモノ/ジグリセリドの組み合わせである。好ましい態様において、乳化剤は、約0.01重量パーセント〜約2.0重量パーセントの量で、約0.025重量パーセント〜約1.0重量パーセントの量で、および約0.05重量パーセント〜約0.2重量パーセントの量で存在する。理論によって縛ることを意図しないが、乳化剤は、混合物中の種々の成分間の安定性を提供して、均一な組成物を維持するよう作用し得ると考えられる。安定性が欠如すると、油の分離または油相と水相の分離が起こり得る。乳化剤はまた、乳化に加えて機能的特質を提供する可能性があり、これには、通気、デンプンおよびタンパク質複合化、水和、結晶変態、可溶化、および分散が含まれる。
【0111】
乳化剤を油と混合する物理的段階は、当技術分野で公知である混合の任意の従来様式で行う。均一な溶液を得るためなど、混合を達成するために、組成物を混合する。例えば、組成物が完全に液体となり、相互に混和するように、微生物油および/または乳化剤を例えば少なくとも約40℃まで加熱することが必要な場合がある。好ましい態様において、油はLC-PUFAの豊富な脱ろうされていない油であり、油の全成分を可溶化するために少なくとも約40℃まで加熱する。好ましい態様において、乳化剤はモノグリセリドおよびジグリセリド乳化剤の混合物であり、油とは別の容器中で液体を形成するよう加熱する。次いで融解した油と乳化剤を、任意の公知の方法により、好ましくは混合物を持続して形成するための撹拌により混合する。
【0112】
本発明はまた、固形脂肪組成物を形成するために、油と乳化剤の混合物を凝固させる段階を含む。例えば、混合物が室温よりも高い状態にある好ましい態様では、混合物を室温まで冷ますことができる。または、混合物を積極的に室温まで、または例えば室温よりも低く冷却することができる。例えば、組成物を凝固のために約0℃〜約3℃まで冷却することができる。能動的であろうと受動的であろうと冷却段階の間、混合物を混合するかまたは撹拌することができる。このようにして、層状組成物が形成されることなく均一な冷却が達成されるよう、冷却を制御することができる。好ましくは、脂肪の結晶構造(すなわち、分子が固体段階においてそれ自体を配向する様式)が所望のレベルに達して、所望の産物可塑性、機能性、および安定性が得られるように、そのような冷却条件を調節する。一般に、β-プライム結晶は、滑らかでクリーム状の粘稠性をもたらす。β結晶は典型的にβ-プライム結晶よりも大きく、粗く、かつより粒状であり、よって典型的に望ましくない。したがって、好ましい態様においては、混合物中のトリグリセリドが安定なβ-プライム配置に達して、滑らかな粘稠性を有する産物が生成され得るように、冷却工程を制御する。そのような好ましい結晶化形態を可能にする冷却方法は、約1℃/分〜約20℃/分、約5℃/分〜約15℃/分、および約10℃/分の速度で混合物を冷却する段階を含む。理論によって縛られることはないが、本発明者らは、モノグリセリドおよびジグリセリドのような本発明との使用に適したいくつかの乳化剤は、組成物中のトリグリセリド結晶化に少なくとも一部影響を及ぼしておよび/またはその結晶化を制御して、β-プライム結晶を生じるよう作用すると考えている。好ましくは、固形脂肪組成物中の脂肪および/または油の少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または約100重量%がβ-プライム結晶配置である。
【0113】
さらなる態様において、固形脂肪組成物を形成するために油および乳化剤の混合物を凝固させる段階は、混合物中に窒素を導入する段階を含み得る。例えば、組成物中に窒素を気泡化させることができる。または、窒素を乳化剤と共に低温晶析装置に導入することができる。
【0114】
凝固中に窒素を導入することにより、産物の酸化安定性を高めることができ、かつ光沢のある外観をもたらして産物の外観を改良することができる。
【0115】
好ましい態様において、本発明の固形脂肪組成物は均一な構造を有し、よって均一な外観および粘稠性を有する。これらの態様の別の特徴は、好ましくは長期にわたり、組成物が安定であり、放置した場合に分離しないか、または他の方法でその均一な構造を失わないという点である。したがって、組成物は、放置に際して不均一な外観または粘稠性を生じない。好ましい態様において、本発明の組成物は、分離することなく、または他の方法でその均一な構造を失うことなく、室温で少なくとも約1日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、および少なくとも約4週間放置することができる。
【0116】
本発明の組成物はまた、いくつかの付加的な機能性成分を含み得る。例えば、本発明の組成物は、例えば、タンパク質、単純糖質および複合糖質、固体、ならび微粒子を含むマイクロカプセル剤をさらに含み得る。好ましいマイクロカプセル剤には、細胞微粒子、アカシアゴム、マルトデキストリン、疎水性改変デンプン、多糖(アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、およびグアーガムを含む)、オクチル置換デンプンなどの疎水性改変多糖、タンパク質(乳清タンパク質分離物、大豆タンパク質、およびカゼイン酸ナトリウムを含む)、ならびにそれらの混合物が含まれる。さらに、本発明の組成物は、例えば、陰イオン活性剤、陽イオン活性剤、非イオン活性剤、両性活性剤、非水溶性乳化剤、細粒、および天然物質を含む界面活性剤を含み得る。陰イオン活性剤には、カルボン酸、硫酸エステル、アルカンスルホン酸、アルキル芳香族スルホン酸、種々の陰イオン性親水基が含まれ;陽イオン活性剤には、アミン塩、アンモニウム化合物、その他の窒素塩基、非窒素塩基が含まれ;非イオン活性剤には、可溶化基に対するエーテル結合、エステル結合、アミド結合、種々の結合、複数の結合が含まれ;両性活性剤には、アミノおよびカルボキシ、アミノおよび硫酸エステル、アミノおよびアルカンスルホン酸、アミノおよび芳香族スルホン酸、塩基性基および酸性基の種々の組み合わせが含まれ;非水溶性乳化剤には、イオン性親水基、非イオン性親水基が含まれ;細粒には、粘度および炭素を含む任意の微粉化非可溶化粒子が含まれ;天然物質には、アルギン酸、セルロース誘導体、水溶性ガム、脂質およびステロール、リン脂質、脂肪酸、アルコール、タンパク質、アミノ酸、界面化製剤、および親水性コロイドが含まれる。その他の任意の成分には、多糖を含む増粘剤が含まれる。増粘剤は、組成物の粘度を増加させるために用いられる成分である。そのような態様において、付加的な機能性成分は典型的に、混合段階中に添加する。
【0117】
1つの態様において、固形脂肪組成物はショートニングである。ショートニングは典型的に、水または水性成分がほとんど添加されておらず、高レベルの脂肪を含む。または、固形脂肪組成物は、マーガリン、スプレッド、マヨネーズ、またはサラダドレッシングなどの製品であってよい。そのような製品は、脂肪および/または油を、水および/または乳製品、適切な食用タンパク質、塩、香味剤および着色剤、ならびにビタミンAおよびDなどの他の成分と混合することによって調製される。マーガリンは典型的に、少なくとも80%の脂肪を含む。マヨネーズおよびサラダドレッシングは、典型的にそれぞれ65%および30%以上の植物油、および乾燥全卵または卵黄を含む半固体高脂肪食品である。これらの製品は、塩、砂糖、香辛料、調味料、酢、レモン果汁、およびその他の成分により仕上げられる。
【0118】
したがって、本発明の組成物は、混合物に対する水溶性液体の存在または添加をさらに含み得る。好ましくは、水溶性液体は水であり、約10重量%未満、約1重量%〜約10重量%、約2重量%〜約8重量%、および約4重量%〜約6重量%の量で添加される。水溶性液体が存在することで、1つまたは複数の付加的な水溶性成分の添加が可能になる。いかなる水溶性成分も本発明に適している。好ましい付加的な成分には、抗酸化剤、香味料、香味増強剤、甘味料、色素、ビタミン、ミネラル、プレバイオティクス化合物、プロバイオティクス化合物、治療用成分、薬効成分、機能性食品成分、加工成分、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0119】
特に好ましい態様において、付加的な成分は抗酸化剤である。抗酸化剤は当技術分野において公知であり、発酵もしくは脂質加工による微生物油の産生における任意の点、または本発明の工程中の任意の点で添加することができる。抗酸化剤は、得られた製品を酸化変質から保護するのに役立ち得る。適切な抗酸化剤は、当業者によって選択され得る。好ましい抗酸化剤には、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、クエン酸、アスコルビン酸、第3ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ローズマリー抽出物、レシチン、およびこれらの混合物が含まれる。抗酸化剤は、当技術分野において慣習的な量で製品に含めることができる。特に好ましい抗酸化剤には、アスコルビン酸またはアスコルビン酸の塩が含まれる。好ましい態様において、抗酸化剤がアスコルビン酸またはアスコルビン酸の塩である場合、約0.5重量%〜約5重量%、約1.5重量%〜約5重量%、および約3重量%〜約5重量%の範囲の量を含む、最大で約5重量%までの量で、これを添加することができる。アスコルビン酸、クエン酸、またはそれらの塩のような水溶性抗酸化剤を添加する場合には、これが組成物中に十分に分散されるように、水と共に添加しなければならないことに留意されたい。驚くべきことに、特に抗酸化剤がアスコルビン酸またはアスコルビン酸の塩である場合に、本発明の製品の酸化安定性における増加のレベルが、使用する抗酸化剤の量に関して予測されるよりも高いことが判明した。例えば、約5重量%のアスコルビン酸またはその塩を添加すると、本発明の組成物のOSI(酸化安定性指数)は3倍増加する。
【0120】
脂質を含む組成物の酸化状態および安定性は、当技術分野で公知のいくつかの方法で測定することができ、これらの技法の多くの記載は、米国油化学会およびその他の供給源から得ることができる。製品の酸化安定性を定量する1つの方法は、熱分解に供した場合に試料から発生する導電種(揮発性分解生成物)を測定するRancimat装置を使用するなどして、OSI(酸化安定性指数)を測定することによる。好ましい態様において、本発明の組成物は、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、および少なくとも約60というOSI値を有する。
【0121】
好ましい態様において、本発明の製品(高品質PUFA含有油産物および固形脂肪組成物を含む)は、酸化的分解を最小限に抑えるために適切な条件下で保存する。そのような保存条件をもたらす多くの方法が当技術分野において公知であって、本発明との使用に適しており、例えば外気の不活性ガス雰囲気による置換などがある。酸化的分解を減少させるまたは最小限に抑えるための好ましい方法は、製品を窒素(N2)雰囲気または窒素と二酸化炭素の混合雰囲気下で保存することである。好ましくは、包装製品は窒素下で包装する。製品を含む容器中に窒素ガス雰囲気をもたらす方法は、当技術分野において公知である。他の好ましい態様では、酸化に対するさらなる保護を提供するために、冷却しながら混合物中に窒素を気泡化させることによって、本製品の酸化的および/または化学的安定性を増加させることもできる。
【0122】
別の好ましい態様において、本発明の製品は、薬学的に許容される賦形剤および/または付加された薬学的活性薬剤(すなわち、治療的もしくは薬効的活性成分またはそれらの組み合わせ)を含み得る。本態様は、水中で低い溶解度を有する薬学的活性薬剤に特に有益である。このような薬学的製品は、LC-PUFAなどの有益な栄養素と共に治療的活性成分を提供するという利点を有する。薬学的に許容される賦形剤の例には、これらに限定されないが、水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンクス液、その他の水性生理的平衡溶液、油、エステル、およびグリコールが含まれる。本発明の薬学的活性薬剤には、非限定的に、スタチン、降圧薬、抗糖尿病薬、抗認知症薬、抗うつ薬、抗肥満薬、食欲抑制薬、ならびに記憶および/または認知機能を増強するための薬剤が含まれる。別の好ましい態様において、本発明の製品は、機能性食品成分、食品添加物、または他の成分などの食品成分を含み得る。
【0123】
本発明の製品は、食品、栄養製品、もしくは薬学的製品として単独で使用することができ、または食品、栄養製品、もしくは薬学的製品に取り込むもしくは添加することができる。第1の態様において、本発明の製品は、本発明の油産物および食品成分を含む食品である。製品は、油ならびに/もしくはショートニングならびに/もしくはスプレッド、ならびに/もしくは飲料、ソース、乳製品(ミルク、ヨーグルト、チーズ、およびアイスクリームなど)、および焼いた食品中の他の脂肪成分などの食品成分として直接用いることができ;またはあるいは、例えば栄養補助剤(カプセルまたは錠剤型)のような栄養製品;その肉もしくは産物をヒトが摂取する任意の動物用の飼料もしくは飼料補助剤;非限定的にイヌ、ネコ、およびウマを含む任意のペット用の飼料もしくは飼料補助剤;ベビーフードおよび乳児用調合乳を含む食品補助剤して用いることができる。「動物」という用語は動物界に属する任意の生物を意味し、家禽肉、海産食品、牛肉、豚肉、または子羊肉となる任意の動物が含まれる。海産食品は、非限定的に、魚、エビ、および甲殻類に由来する。「産物」という用語には、これらに限定されないが卵、乳、または他の産物を含む、そのような動物由来の肉以外の任意の産物が含まれる。そのような動物に与えた場合、LC-PUFAなどの栄養素はそのような動物の肉、乳、卵、または他の産物中に組み込まれて、これらの栄養素の含有量が増大し得る。さらに、そのような動物に与えた場合、LC-PUFAなどの栄養素は動物の健康全般を改善し得る。
【0124】
本発明の組成物は、焼いた食品、ビタミン補助剤、食品補助剤、粉末飲料などの広範な製品に、様々な製造段階で添加することができる。本発明の組成物を用いて、多くの粉末食品完成品または半製品を製造することができる。
【0125】
本発明の製品を含む食品の一部のリストには、パン生地、ケーキ種、例えばケーキ、チーズケーキ、パイ、カップケーキ、クッキー、バー、パン、ロールパン、ビスケット、マフィン、ペストリー、スコーン、およびクルトンなどの品目を含む焼いた食品;液体食品、例えば飲料、栄養飲料、乳児用調合乳、液体食品、フルーツジュース、総合ビタミンシロップ、食事代替物、薬効食品、およびシロップ;半固体食品、例えばベビーフード、ヨーグルト、チーズ、シリアル、ホットケーキミックスなど;エネルギーバーを含む食品バー;加工肉;アイスクリーム;凍結デザート;フローズンヨーグルト;ワッフルミックス;サラダドレッシング;ならびに代用卵ミックスが含まれる。焼いた食品、例えばクッキー、クラッカー、甘い食品、スナックケーキ、パイ、グラノーラ/スナックバー、およびトースターペストリーなど;塩味スナック、例えばポテトチップ、コーンチップ、トルティアチップ、押し出しスナック、ポップコーン、プレッツェル、ポテトクリスプ、およびナッツなど;特殊スナック、例えばディップ、ドライフルーツスナック、食肉スナック、ポークラインズ、健康食品バー、および餅/コーンケーキなど;ならびにキャンディーなどの菓子スナックもまた含まれる。
【0126】
本発明の別の製品態様は医療用食品である。医療用食品には、医師の監督の下で外部から摂取または投与される製剤中に存在し、かつ認められた科学原理に基づいて特有の栄養所要量が医学的評価によって確立されている、疾患または病態の特定の食事管理用に意図される食品が含まれる。
【0127】
米国仮特許出願第60/695,996号および米国仮特許出願第60/738,304号それぞれの開示全体は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0128】
本発明を特定の方法、製品、および生物に関して開示するが、本発明は、当業者に利用可能であるようなすべての置換、改変、および最適化を含め、本明細書に開示する教示に従って入手可能でありかつ有用であるようなすべての方法、製品、および生物を含むことが意図される。以下の実施例および試験結果は例示を目的として提供するものであり、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【0129】
実施例
実施例1:高品質粗製油の調製
DHA油の豊富なシゾキトリウム微生物を発酵槽内で培養して、発酵ブロスを生成した。発酵ブロスを回収し、シゾキトリウム細胞を溶解するプロテアーゼ、Alcalase(登録商標)2.4と接触させた。得られた溶解細胞混合液は乳濁液であり、これを27%イソプロパノール水溶液と接触させた。この混合液を撹拌によって混合し、その後遠心分離に供して、2相を有する実質的非乳化産物を生成した。重相は使用した発酵ブロスの成分を含み、軽相はいくらかのイソプロパノールおよび水と共にDHAの豊富な油を含んでいた。軽相を乾燥させて、高品質粗製油を生成した。
【0130】
実施例2:藻類油の最小加工
本実施例は、本発明による最小加工油の産生について例証する。
【0131】
最小加工油を大規模に産生した。DHAを含むシゾキトリウム微生物から生成された高品質粗製油(実施例1に記載した通りに生成) 200 kgを、窒素下で65℃〜70℃まで加熱した。次いで、約0.2%(油に対するw/w)の50%クエン酸溶液を油に添加し、窒素下で油を30〜45分間混合した。続いて、0.2〜0.5%(油に対するw/w)の濾過助剤を油に添加し、油中に存在する不純物をすべて除去するために濾過した。次に、180 kg/時間の供給速度で、油を210℃で脱臭した。その後、脱臭油にトコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、およびローズマリー抽出物を添加した。各工程段階における油の特徴を表1に示す。「PV」という用語は過酸化物価を意味し;「FFA」という用語は遊離脂肪酸を意味し;また「p-AV」はp-アニシジン値を意味する。この工程による回収率は98%を上回った。
【0132】
【表1】

【0133】
実施例3a:物理的精製
本実施例は、本発明による最小加工油の産生について例証する。
【0134】
高品質粗製油(実施例1に記載した通りに生成)(FFA<0.3%、リン<10 ppm、PV<2 meq/kg) 約600 kgを得て、窒素および/または真空下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(w/w)の50%クエン酸を添加し、窒素および/または真空下において油を50〜55℃で15分間保持した。Trisyl 600(0.1%〜3% w/w、通常は0.25%)を添加し、窒素および/または真空下において温度を50〜55℃に15分間保持した。Tonsil Supreme FF漂白土(0.1%〜4% w/w、通常は0.5%未満)を添加し、油を90〜95℃まで加熱し、真空(>24”Hg)下で30分間保持した。次いでセライト(0.1〜0.5% w/w、通常は0.2%)を添加し、Sparklerフィルターを通して油を濾過した。その後、210〜225℃および流速180〜225 kg/hrで油を脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。この工程により、室温で半固体である油が得られた。
【0135】
この工程による油の収率は約92〜97%であった。抗酸化剤を伴ったこれらの実行に関する品質データを表2に示す。
【0136】
【表2】

【0137】
脱臭油のFFAは、抗酸化剤の添加前および添加後に測定した。抗酸化剤の添加後に、FFAの有意な増加(約2倍)が認められた。
【0138】
実施例3b:物理的精製(透明油)
本実施例は、本発明による最小加工液体油および関連の固形脂肪産物の産生について例証する。
【0139】
高品質粗製油(実施例1に記載した通りに生成)(FFA<0.3%、リン<12 ppm、PV<2 meq/kg) 約1200 kgを得て、窒素および/または真空下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素および/または真空下において油を50〜55℃で15分間保持した。次いで、窒素および/真空下において、油を様々な保持時間(0〜12時間)および撹拌速度(4〜16 rpm)で約55℃〜約35℃に冷却した。この時点でセライト(0.1%〜0.5% w/w、通常は0.2%)を添加し、Sparklerフィルターを通して油を濾過した。油を窒素および/または真空下で加熱し、様々な保持時間(0〜12時間)および撹拌速度(4〜16 rpm)で約50℃〜約30℃まで冷却することにより、冷却濾過段階を繰り返した。セライト(0.1〜0.5% w/w、通常は0.2%)を再度添加し、Sparklerフィルターを通して油を濾過した。次に、Trisyl 600(0.1%〜3% w/w、通常は0.25%)を添加し、窒素および/または真空下において温度を50〜55℃に15分間保持した。Tonsil Supreme FF漂白土(0.1%〜4% w/w、通常は0.5%未満)を添加し、油を90〜95℃まで加熱し、真空(>24”Hg)下で30分間保持した。セライト(0.1〜0.5% w/w、通常は0.2%)を添加し、Sparklerフィルターを通して油を濾過した。次いで、窒素および/真空下において、油を様々な保持時間(0〜12時間)および撹拌速度(4〜16 rpm)で約40℃〜約20℃に再度冷却した。セライト(0.1〜0.5% w/w、通常は0.2%)を添加し、Sparklerフィルターを通して油を濾過した。その後、210〜225℃および流速180〜225 kg/hrで油を脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。この工程により、室温で透明な油が得られた。この工程による油の収率は約55〜60%であった。抗酸化剤を伴ったこれらの実行に関する品質データを表3に示す。
【0140】
【表3】

【0141】
フィルターに保持された物質は、漂白土から固体物を分離するために、例えば加熱および濾過によって処理することができる。フィルターに保持された物質を加熱すると、固体が融解する。次いで、融解した固体を例えば濾過により漂白土から分離し、次にこれを冷却によって再凝固させることができる。回収された固体は、その大部分がDHAである約20〜30%のPUFAを含む。透明油および固体は、例えば食品または食品添加物として用いることができる。
【0142】
実施例3c:物理的精製/シリカ精製
本実施例は、本発明による最小加工油の産生について例証する。
【0143】
高品質粗製油(実施例1に記載した通りに生成)(FFA<0.8%、リン<10 ppm、PV<2 meq/kg) 約100 gを得て、窒素下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素および/または真空下において油を50〜55℃で15分間保持した。続いて、0.5%〜1.25% w/wのシリカ(Brightsorb F100)を添加し、油を真空下で85℃まで加熱した。30分間保持した後、Tonsil Supreme FF漂白土(0.5% w/w)を添加し、油を90〜95℃まで加熱し、真空(>24”Hg)下で30分間保持した。次いでセライト(0.1〜0.5% w/w、通常は0.2%)を添加し、60〜65℃まで冷却した後にブフナー漏斗を用いて油を真空濾過した。これらの試験の収率は95〜96%であった。これらの試験の品質結果を表4に示す。最終産物は半固体油であった。この産物はまた、脱臭および/または漂白することもできるが、半固体油のままであると考えられる。
【0144】
【表4】

【0145】
実施例3d:改良腐食精製
本実施例は、本発明による最小加工油の産生について例証する。
【0146】
FFAを最大で0.8%有する高品質粗製油(実施例1に記載した通りに生成)(リン<12 ppm、PV<2 meq/kg) 約600 kgを得て、窒素および/または真空下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素および/または真空下において油を50〜55℃で15分間保持した。この時点で0.1%〜0.5% w/wの50%アルカリを油に添加し、60〜65℃で15〜30分間保持した(これは、標準使用量よりもアルカリ性が約2〜10倍弱い)。次いで油を遠心分離して、油からセッケンを除去した。Trisyl 600(0.1%〜3% w/w、通常は0.25%)を添加し、窒素および/または真空下において温度を50〜55℃に15分間保持した。Tonsil Supreme FF漂白土(0.1%〜4% w/w、通常は0.5%未満)を添加し、油を90〜95℃まで加熱し、真空(>24”Hg)下で30分間保持した。セライト(0.1〜0.5% w/w、通常は0.2%)を添加し、Sparklerフィルターを通して油を濾過した。その後、210〜225℃および流速180〜225 kg/hrで油を脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。この工程により、半固体の液体が得られた。
【0147】
この工程による油の収率は約81〜91%であった。抗酸化剤を伴ったこれらの実行に関する品質データを表5に示す。
【0148】
【表5】

【0149】
実施例3e:改良腐食精製/遠心分離なし
本実施例は、本発明による最小加工油の産生について例証する。
【0150】
高品質粗製油(実施例1に記載した通りに生成)(FFA<0.3%、リン<10 ppm、PV<2 meq/kg) 約100 gを得て、窒素および/または真空下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素および/または真空下において油を50〜55℃で15分間保持した。この時点で0.4% w/wの50%アルカリを油に添加し、60〜65℃で15〜30分間保持した(これは、標準使用量よりもアルカリ性が約2〜10倍弱い)。次いでTrisyl 600(1.5% w/w)を添加し、窒素および/または真空下において温度を50〜55℃に15分間保持した。セライト(0.2% w/w)を油に添加し、ブフナー漏斗を用いてこれを真空濾過した。濾過した油にTonsil Supreme FF漂白土(1.0% w/w)を添加して、90〜95℃まで加熱し、真空(>24”Hg)下で30分間保持した。セライト(0.2%w/w)を添加し、ブフナー漏斗を用いてこれを真空濾過した。この試験の品質結果を表6に示す。最終産物は半固体油であった。この産物はまた、脱臭および/または漂白することもできるが、半固体油のままであると考えられる。
【0151】
【表6】

【0152】
実施例4:粗製藻類油の乾燥分画
本実施例は、本発明による、DHAを含むシゾキトリウム微生物から生成された粗製藻類油のオレイン画分とステアリン画分への乾燥分画を例証する。
【0153】
液体オレイン画分および固体ステアリン画分を生成するため、粗製油350 kgを本発明による乾燥分画工程に供した。容器中で粗製藻類油を撹拌しながら60〜70℃まで加熱することにより、その油中の結晶相をすべて確実に融解した。次いで、前冷却段階として、スターラーの速度を毎分回転数40まで上げて、材料を20〜30℃まで速やかに冷却した。この段階で熱伝達係数が可能な限り最大となるように、冷却液を使用し、本実施例では水を使用した。冷却液の温度は、核形成温度を有意に下回らないようにした。
【0154】
続く核形成段階を撹拌容器内で行い、スターラー速度を毎分回転数20に下げることで開始した。冷却液と油との間に存在する温度差を調節することによって、開始の油温度20〜30℃から結晶化温度約12〜14℃まで、油のさらなる冷却を行った。結晶化温度に到達した時点で、スターラー速度を毎分回転数15まで下げた。残存する油、すなわち結晶間になお存在するいわゆるオレイン画分が所望の曇り点に到達した直後に、懸濁液を濾過ユニットに移すことによって、結晶化を終了させた。オレイン画分の曇り点をモニターするため、結晶化段階では懸濁液試料の試験濾過を行った。
【0155】
結晶懸濁液を濾過ユニットに移した後、濾布を通して液相を押し出した。フィルターチャンバーの容積を機械的に減少させることによって生じる圧縮圧力をフィルターチャンバーに課し、圧縮圧力を徐々に増していった。最終的な濾過圧は10バールに達した。濾過後、分離された画分を秤量した。オレイン収率は濾液の重量である。ステアリン収率は、フィルター上に残った結晶塊の重さである。測定したオレイン画分およびステアリン画分の収率を表7に示す。供給材料、オレイン各分、およびステアリン画分の組成を表8に示す。
【0156】
【表7】

【0157】
【表8】

【0158】
本明細書に記載し上記実施例において例証した最小化工法のいずれかにより、または先行技術で公知の任意の方法により、オレイン画分(液体)およびステアリン画分(固体または半固体)をさらに加工して、脱臭油を製造することができる。
【0159】
実施例5
以下の実施例は、本発明の固形脂肪産物を形成するためのベンチ規模工程を示す。
【0160】
シゾキトリウム微生物のバイオマスからヘキサンによって抽出された脱ろうされていない油を、固体物がすべて融解し均一な液体が形成されるまで、40℃に加熱した。別の容器で、モノグリセリドおよびジグリセリド乳化剤(DIMODAN PTK A、DANISCOから入手)を、完全に液体になるまで同じ温度(40℃)で融解した。次いで、融解した乳化剤を融解した油に添加し、混合した。次に油/乳化剤混合液を氷浴に移し、冷却しながら一定に混合した。冷却した産物は、ショートニングの粘稠性を有する固体であった。次いで産物を容器に移し、保存した。
【0161】
実施例6
以下の実施例は、産物の凝固段階において窒素を導入する、固形脂肪産物を形成するためのベンチ規模工程を示す。
【0162】
窒素を約10〜約50 ml/分の速度で冷却中の組成物中に気泡化すること以外は、手順は実施例5に上記したものと同様であったが、産物にさらなる安定性が付与され、産物の色/物理的特性が光沢のない外観から光沢のある黄色の外観に変化した。冷却した産物は、ショートニングの粘稠性を有する固体であった。冷却後、産物を容器に移し、保存した。
【0163】
実施例7
以下の実施例は、固形脂肪産物を形成するための試験的または大規模工程を示す。
【0164】
シゾキトリウム微生物のバイオマスからヘキサンによって抽出された脱ろうされていない油を、固体物がすべて融解し均一な液体が形成されるまで、40℃に加熱した。別の容器で、実施例5と同様の乳化剤を、完全に液体になるまで同じ温度(40℃)で融解した。次いで、融解した乳化剤を融解した油(HM)に添加し、混合した。熱い乳濁液を氷中のビーカーに撹拌しながら導入し、掻き取り式熱交換器の冷却を模倣した。組成物は、約4分間で約40℃から約0℃まで冷却された。この工程中に、窒素を約10〜約50 ml/分の速度で組成物中に導入した。冷却後、得られた結晶化脂肪を容器に移し、保存した。
【0165】
実施例8
以下の実施例は、油および添加した栄養素を有する固形脂肪産物を形成するための試験的または大規模工程を示す。
【0166】
実施例7に記載する通りに、乳化剤と油の混合液を調製した。混合液を冷却しつつ一定に混合し、5重量%の水を添加することで、粘稠性のわずかに異なる産物が得られた。次いで、遊離酸としてのアスコルビン酸を約5重量%で混合液に添加した。次に、約0.0008重量%の葉酸を混合液に添加した。その後、得られた結晶化脂肪を容器に移し、保存した。
【0167】
実施例9
以下の実施例は、アスコルビン酸を含む、ならびにアスコルビン酸および葉酸を含む本発明の組成物の酸化安定性の増加を示す。
【0168】
実施例5に従って、本発明の固形脂肪組成物を調製した。冷却段階において付加的な成分を導入することにより、実施例1に従って、アスコルビン酸(5重量%)および水(5重量%)をさらに含む、ならびにアスコルビン酸(5重量%)、葉酸(0.0008重量%)、および水(5重量%)をさらに含む固形脂肪組成物を調製した。得られた組成物を酸化安定性について評価し、その結果を図3に示す。図からわかるように、アスコルビン酸および水の添加により、OSI値が基礎組成物の3倍を上回った。さらに、アスコルビン酸および水を有する組成物に葉酸を添加することで、組成物の酸化安定性が増加した。
【0169】
実施例10:最小加工油を含む混合組成物
上記の実施例3aおよび3dによるDHAの豊富な油を、ARASCO(登録商標)(Martek Biosciences、メリーランド州、コロンビア)と2:1の比率で混合し、ARAおよびDHA含有油混合物を生成した。
【0170】
最小加工DHAおよびARASCO(登録商標)から作製された混合組成物の品質特性

【0171】
実施例11
以下の実施例は、シゾキトリウム由来の油およびパームステアリンを有する固形脂肪産物を形成するためのベンチ規模工程を示す。
【0172】
シゾキトリウム微生物のバイオマスから産生された脱ろうされていない完全精製油を、固体物がすべて融解し均一な液体が形成されるまで、窒素下で40〜50℃に加熱した。別の容器で、パームステアリン(Ciranda Inc.、ウィスコンシン州、ハドソンから入手)を、完全に液体になるまで同じ温度(40〜50℃)で融解した。使用した脱ろうされていない油とパームステアリンの比率は75:25(%、w/w)であった。続いて、融解したパームステアリンを、シゾキトリウム由来の脱ろうされていない油と混合した。別の容器で、モノグリセリドおよびジグリセリド乳化剤(Dimodan 930-KAまたはGrindsted PS 219/B K-Aのいずれか、Danisco、デンマークから入手)を、均一な液体が形成されるまで、70〜75℃に加熱した。次いで、融解した油混合物(脱ろうされていない油およびパームステアリン)を融解した乳化剤に添加し、混合した。熱い液体処方物を、冷却装置バッチ中で、窒素下において撹拌しながら15℃まで冷却した。結晶化温度に到達した時点で、処方物を撹拌しながら15℃で1時間保持した。その後、得られた結晶化脂肪処方物を容器に移し、保存した。結果を以下の表9に示す。
【0173】
【表9】

【0174】
実施例12
以下の実施例は、シゾキトリウム由来の油およびパーム核ステアリンを有する固形脂肪産物を形成するためのベンチ規模工程を示す。
【0175】
シゾキトリウム微生物のバイオマスから産生された脱ろうされていない完全精製油を、固体物がすべて融解し均一な液体が形成されるまで、窒素下で40〜50℃に加熱した。別の容器で、パーム核ステアリン(Ciranda Inc.、ウィスコンシン州、ハドソンから入手)を、完全に液体になるまで同じ温度(40〜50℃)で融解した。脱ろうされていない油とパーム核ステアリンの比率は、75:25〜80:20(%、w/w)であった。続いて、融解したパーム核ステアリンを、シゾキトリウム由来の脱ろうされていない油と混合した。別の容器で、モノグリセリドおよびジグリセリド乳化剤(Dimodan 930-KAまたはGrindsted PS 219/B K-Aのいずれか、Danisco、デンマークから入手)を、均一な液体が形成されるまで、70〜75℃に加熱した。次いで、融解した油混合物(脱ろうされていない油およびパーム核ステアリン)を融解した乳化剤に添加し、混合した。熱い液体処方物を、冷却装置バッチ中で、窒素下において撹拌しながら15℃まで冷却した。結晶化温度に到達した時点で、処方物を撹拌しながら15℃で1時間保持した。その後、得られた結晶化脂肪処方物を容器に移し、保存した。結果を以下の表10に示す。
【0176】
【表10】

【0177】
実施例13
以下の実施例は、抗酸化剤を添加した、シゾキトリウム油およびパーム核ステアリンを含む固形脂肪産物を形成するためのベンチ規模工程を示す。
【0178】
シゾキトリウム微生物のバイオマスから産生された脱ろうされていない完全精製油を、0.2%(w/w)抗酸化剤(10%トコフェロールおよび10%パルミチン酸アスコルビルを含む)と混合し、固体物がすべて融解し均一な液体が形成されるまで、窒素下で40〜50℃に加熱した。別の容器で、パーム核ステアリン(Ciranda Inc.、ウィスコンシン州、ハドソンから入手)を、完全に液体になるまで同じ温度(40〜50℃)で融解した。脱ろうされていない油とパーム核ステアリンの比率は、75:25(%、w/w)を使用した。続いて、融解したパーム核ステアリンを、シゾキトリウム由来の脱ろうされていない油と混合した。別の容器で、モノグリセリドおよびジグリセリド乳化剤(Dimodan 930-KAまたはGrindsted PS 219/B K-Aのいずれか、Danisco、デンマークから入手)を、均一な液体が形成されるまで、70〜75℃に加熱した。次いで、融解した油混合物(脱ろうされていない油およびパーム核ステアリン)を融解した乳化剤に添加し、混合した。熱い液体処方物を、冷却装置バッチ中で、窒素下において撹拌しながら15℃まで冷却した。結晶化温度に到達した時点で、処方物を撹拌しながら15℃で1時間保持した。その後、得られた結晶化脂肪処方物を容器に移し、保存した。結果を以下の表11に示す。
【0179】
【表11】

【0180】
実施例14
以下の実施例は、10〜20%(w/w) DHAを含む、シゾキトリウム油およびパーム核ステアリンを有する固形脂肪産物を形成するためのベンチ規模工程を示す。
【0181】
シゾキトリウム微生物のバイオマスから産生された脱ろうされていない完全精製油を、0.2%(w/w)抗酸化剤(10%トコフェロールおよび10%パルミチン酸アスコルビルを含む)と混合し、固体物がすべて融解し均一な液体が形成されるまで、窒素下で40〜50℃に加熱した。別の容器で、パーム核ステアリン(Ciranda Inc.、ウィスコンシン州、ハドソンから入手)を、完全に液体になるまで同じ温度(40〜50℃)で融解した。脱ろうされていない油とパーム核ステアリンの比率は、60:40(%、w/w)を使用した。続いて、融解したパーム核ステアリンを、シゾキトリウム由来の脱ろうされていない油と混合した。別の容器で、モノグリセリドおよびジグリセリド乳化剤(Dimodan 930-KAまたはGrindsted PS 219/B K-Aのいずれか、Danisco、デンマークから入手)を、均一な液体が形成されるまで、70〜75℃に加熱した。次いで、融解した油混合物(脱ろうされていない油およびパーム核ステアリン)を融解した乳化剤に添加し、混合した。熱い液体処方物を、冷却装置バッチ中で、窒素下において撹拌しながら15℃まで冷却した。結晶化温度に到達した時点で、処方物を撹拌しながら15℃で1時間保持した。その後、得られた結晶化脂肪処方物を容器に移し、保存した。結果を以下の表12に示す。
【0182】
【表12】

【0183】
実施例15
以下の実施例は、20〜30%(w/w) DHAを含む、シゾキトリウム油およびパーム核ステアリンを有する固形脂肪産物を形成するためのベンチ規模工程を示す。
【0184】
シゾキトリウム微生物のバイオマスから産生された脱ろうされていない完全精製油を、0.2%(w/w)抗酸化剤(10%トコフェロールおよび10%パルミチン酸アスコルビルからなる)と混合し、固体物がすべて融解し均一な液体が形成されるまで、窒素下で40〜50℃に加熱した。別の容器で、パーム核ステアリン(Ciranda Inc.、ウィスコンシン州、ハドソンから入手)を、完全に液体になるまで同じ温度(40〜50℃)で融解した。脱ろうされていない油とパーム核ステアリンの比率は、75:25〜85:15(%、w/w)であった。続いて、融解したパーム核ステアリンを、シゾキトリウム由来の脱ろうされていない油と混合した。別の容器で、モノグリセリドおよびジグリセリド乳化剤(Dimodan 930-KAまたはGrindsted PS 219/B K-Aのいずれか、Danisco、デンマークから入手)を、均一な液体が形成されるまで、70〜75℃に加熱した。次いで、融解した油混合物(脱ろうされていない油およびパーム核ステアリン)を融解した乳化剤に添加し、混合した。熱い液体処方物を、冷却装置バッチ中で、窒素下において撹拌しながら15℃まで冷却した。結晶化温度に到達した時点で、処方物を撹拌しながら15℃で1時間保持した。その後、得られた結晶化脂肪処方物を容器に移し、保存した。結果を以下の表13に示す。
【0185】
【表13】

【0186】
実施例16
以下の実施例は、>30%(w/w) DHAを有する、シゾキトリウム油およびパーム核ステアリンを含む固形脂肪産物を形成するためのベンチ規模工程を示す。
【0187】
シゾキトリウム微生物のバイオマスから産生された脱ろうされていない完全精製油を、0.2%(w/w)抗酸化剤(10%トコフェロールおよび10%パルミチン酸アスコルビル)と混合し、固体物がすべて融解し均一な液体が形成されるまで、窒素下で40〜50℃に加熱した。別の容器で、パーム核ステアリン(Ciranda Inc.、ウィスコンシン州、ハドソンから入手)を、完全に液体になるまで同じ温度(40〜50℃)で融解した。使用した脱ろうされていない油とパーム核ステアリンの比率は80:20(%、w/w)であった。続いて、融解したパーム核ステアリンを、シゾキトリウム由来の脱ろうされていない油と混合した。別の容器で、モノグリセリドおよびジグリセリド乳化剤(Dimodan 930-KAまたはGrindsted PS 219/B K-Aのいずれか、Danisco、デンマークから入手)を、均一な液体が形成されるまで、70〜75℃に加熱した。次いで、融解した油混合物(脱ろうされていない油およびパーム核ステアリン)を融解した乳化剤に添加し、混合した。熱い液体処方物を、冷却装置バッチ中で、窒素下において撹拌しながら15℃まで冷却した。結晶化温度に到達した時点で、処方物を撹拌しながら15℃で1時間保持した。その後、得られた結晶化脂肪処方物を容器に移し、保存した。結果を以下の表14に示す。
【0188】
【表14】

【0189】
実施例17
以下の実施例は、天然バター香味料および苦味マスク剤を添加した、シゾキトリウム油およびパーム核ステアリンを含む固形脂肪産物を形成するためのベンチ規模工程を示す。
【0190】
シゾキトリウム微生物のバイオマスから産生された脱ろうされていない完全精製油を、0.2%(w/w)抗酸化剤(10%トコフェロールおよび10%パルミチン酸アスコルビル)、0.1〜0.15%(w/w)天然バター香味料(Daniscoから入手)、および0.03〜0.05%(w/w)天然苦味マスク剤(Firmenich Inc.から入手)と混合した。次いでこれを、固体物がすべて融解し均一な液体が形成されるまで、窒素下で40〜50℃に加熱した。別の容器で、パーム核ステアリン(Ciranda Inc.、ウィスコンシン州、ハドソンから入手)を、完全に液体になるまで同じ温度(40〜50℃)で融解した。使用した脱ろうされていない油とパーム核ステアリンの比率は80:20(%、w/w)であった。続いて、融解したパーム核ステアリンを、シゾキトリウム由来の脱ろうされていない油と混合した。別の容器で、モノグリセリドおよびジグリセリド乳化剤(Dimodan 930-KA、Danisco、デンマークから入手)を、均一な液体が形成されるまで、70〜75℃に加熱した。次いで、融解した油混合物(脱ろうされていない油およびパーム核ステアリン)を融解した乳化剤に添加し、混合した。熱い液体処方物を、冷却装置バッチ中で、窒素下において撹拌しながら15℃まで冷却した。結晶化温度に到達した時点で、処方物を撹拌しながら15℃で1時間保持した。その後、得られた結晶化脂肪処方物を容器に移し、保存した。結果を以下の表15に示す。
【0191】
【表15】

【0192】
本発明の原理、好ましい態様、および実施形態を、上記明細書において説明した。しかしながら、本明細書において保護が意図される本発明は、開示した特定の形態が限定的ではなく例示的なものと見なされるべきであるため、これらに制限されるものと解釈されるべきではない。当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、変更および修正を行うことができる。したがって、上記の発明実施の最良の形態は、事実上例示的なものと見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲および精神を制限するものと見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】本発明のPUFA含有油を産生するための本発明の様々な代替的態様を示す。
【図2】本発明のPUFA含有油を産生するための本発明の様々な代替的態様を示す。
【図3】固形脂肪組成物、アスコルビン酸を添加した固形脂肪組成物、ならびにアスコルビン酸および葉酸を添加した固形脂肪組成物の酸化安定性指数の比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 飽和脂肪とLC-PUFAを少なくとも1種含む微生物油とを含む油と、少なくとも1種の乳化剤を混合して、混合物を形成する段階;および
b) 混合物を凝固させ固形脂肪組成物を形成する段階
を含む、固形脂肪組成物を製造する方法。
【請求項2】
油が約5重量%〜約70重量%のLC-PUFAおよび約20重量%〜約60重量%の飽和脂肪を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
飽和脂肪を外部から添加しない、請求項2記載の方法。
【請求項4】
飽和脂肪を外部から添加する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
微生物油が脱ろうされていない、請求項1記載の方法。
【請求項6】
油を水素化しない、請求項1記載の方法。
【請求項7】
微生物油が、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)属の微生物、シゾキトリウム(Schizochytrium)属の微生物、アルソルニア(Althornia)属の微生物、アプラノキトリウム(Aplanochytrium)属の微生物、ジャポノキトリウム(Japonochytrium)属の微生物、エリナ(Elina)属の微生物、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される微生物に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
微生物が、ヤブレツボカビ属の微生物、シゾキトリウム属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
微生物油が少なくとも20の炭素鎖長を有するLC-PUFAを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
LC-PUFAが少なくとも22の炭素鎖長を有する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
LC-PUFAが二重結合を少なくとも3つ有する、請求項9記載の方法。
【請求項12】
LC-PUFAが二重結合を少なくとも4つ有する、請求項9記載の方法。
【請求項13】
LC-PUFAがドコサヘキサエン酸を含む、請求項9記載の方法。
【請求項14】
油が少なくとも約50重量パーセントのドコサヘキサエン酸を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
油が少なくとも約60重量パーセントのドコサヘキサエン酸を含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
LC-PUFAがドコサペンタエン酸を含む、請求項9記載の方法。
【請求項17】
LC-PUFAがアラキドン酸を含む、請求項9記載の方法。
【請求項18】
LC-PUFAがエイコサペンタエン酸を含む、請求項9記載の方法。
【請求項19】
固形脂肪組成物が均一な構造を有する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
固形脂肪組成物がショートニングである、請求項1記載の方法。
【請求項21】
乳化剤が、モノグリセリド、ジグリセリド、モノ/ジグリセリドの組み合わせ、レシチン、乳酸(lactylated)モノ-ジグリセリド、ポリグリセロールエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステロイル乳酸ナトリウム、ステロイル乳酸カルシウム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
乳化剤がモノ/ジグリセリドの組み合わせである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
乳化剤が約0.01重量パーセント〜約2.0重量パーセントの量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項24】
乳化剤が約0.05重量パーセント〜約0.2重量パーセントの量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項25】
固形脂肪組成物が少なくとも約20℃の融解温度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
固形脂肪組成物が少なくとも約30℃の融解温度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
固形脂肪組成物が少なくとも約35℃の融解温度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項28】
混合物を凝固させる段階が固形脂肪組成物中の結晶の形成を制御する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
結晶がβ-プライム結晶を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
固形脂肪組成物中の脂肪および/または油の少なくとも約50重量%がβ-プライム結晶型である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
固形脂肪組成物中の脂肪および/または油の少なくとも約80重量%がβ-プライム結晶型である、請求項29記載の方法。
【請求項32】
油を加熱する、請求項1記載の方法。
【請求項33】
油を混合段階の前に加熱する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
油を少なくとも約40℃まで加熱する、請求項32記載の方法。
【請求項35】
乳化剤を加熱する、請求項1記載の方法。
【請求項36】
乳化剤を混合段階の前に加熱する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
乳化剤を少なくとも約40℃まで加熱する、請求項35記載の方法。
【請求項38】
混合段階が混合物を撹拌する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項39】
撹拌段階により混合物が持続して形成される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
混合物を凝固させる段階が混合物を冷却する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項41】
冷却段階が混合物を約0℃〜約3℃の温度まで冷却する段階を含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
凝固段階が冷却段階中に混合物を混合する段階をさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項43】
混合物を約1℃/分〜約20℃/分の速度で冷却する、請求項40記載の方法。
【請求項44】
凝固段階が混合物中に窒素を導入する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項45】
導入段階が混合物通って窒素を気泡化させる段階を含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの付加的な成分を混合物に添加する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項47】
付加的な成分が水溶性液体である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
水溶性液体が水である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
水溶性液体を約1重量%〜約10重量%の量で添加する、請求項47記載の方法。
【請求項50】
付加的な成分が、抗酸化剤、香味料、香味増強剤、甘味料、色素、ビタミン、ミネラル、プレバイオティクス化合物、プロバイオティクス化合物、治療用成分、薬効成分、機能性食品成分、加工成分、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項46記載の方法。
【請求項51】
付加的な成分がアスコルビン酸またはアスコルビン酸の塩である、請求項46記載の方法。
【請求項52】
アスコルビン酸またはアスコルビン酸の塩を約0.5重量%〜約5重量%の量で添加する、請求項51記載の方法。
【請求項53】
付加的な成分が抗酸化剤である、請求項46記載の方法。
【請求項54】
抗酸化剤が、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、クエン酸、アスコルビン酸、第3ブチルヒドロキノン、ローズマリー抽出物、レシチン、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
固形脂肪組成物が少なくとも約20のOSI値を有する、請求項1記載の方法。
【請求項56】
固形脂肪組成物が少なくとも約40のOSI値を有する、請求項1記載の方法。
【請求項57】
固形脂肪組成物が少なくとも約60のOSI値を有する、請求項1記載の方法。
【請求項58】
固形脂肪組成物が、食品、栄養製品、および薬学的製品からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項59】
固形脂肪組成物を、食品、栄養製品、および薬学的製品からなる群より選択される製品に添加する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項60】
LC-PUFAを含む脱ろうされていない微生物油と乳化剤の混合物であって、室温で固体組成物である混合物を含む固形脂肪組成物。
【請求項61】
油が飽和脂肪を含む、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項62】
飽和脂肪を外部から添加しない、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項63】
飽和脂肪を外部から添加する、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項64】
油を水素化しない、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項65】
微生物油が、ヤブレツボカビ属の微生物、シゾキトリウム属の微生物、アルソルニア属の微生物、アプラノキトリウム属の微生物、ジャポノキトリウム属の微生物、エリナ属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される微生物に由来する、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項66】
微生物が、ヤブレツボカビ属の微生物、シゾキトリウム属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項65記載の固形脂肪組成物。
【請求項67】
微生物油が少なくとも20の炭素鎖長を有するLC-PUFAを含む、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項68】
LC-PUFAが少なくとも22の炭素鎖長を有する、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項69】
LC-PUFAが二重結合を少なくとも3つ有する、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項70】
LC-PUFAが二重結合を少なくとも4つ有する、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項71】
LC-PUFAがドコサヘキサエン酸を含む、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項72】
油が少なくとも約50重量パーセントのドコサヘキサエン酸を含む、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項73】
油が少なくとも約60重量パーセントのドコサヘキサエン酸を含む、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項74】
LC-PUFAがドコサペンタエン酸を含む、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項75】
LC-PUFAがアラキドン酸を含む、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項76】
LC-PUFAがエイコサペンタエン酸を含む、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項77】
ショートニングである、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項78】
乳化剤が、モノグリセリド、ジグリセリド、モノ/ジグリセリドの組み合わせ、レシチン、乳酸モノ-ジグリセリド、ポリグリセロールエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステロイル乳酸ナトリウム、ステロイル乳酸カルシウム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項79】
乳化剤がモノ/ジグリセリドの組み合わせである、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項80】
乳化剤が約0.01重量パーセント〜約2.0重量パーセントの量で存在する、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項81】
乳化剤が約0.05重量パーセント〜約0.2重量パーセントの量で存在する、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項82】
結晶を含む、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項83】
結晶がβ-プライム結晶を含む、請求項82記載の固形脂肪組成物。
【請求項84】
固形脂肪組成物中の脂肪および/または油の少なくとも約50重量%がβ-プライム結晶型である、請求項82記載の固形脂肪組成物。
【請求項85】
固形脂肪組成物中の脂肪および/または油の少なくとも約80重量%がβ-プライム結晶型である、請求項82記載の固形脂肪組成物。
【請求項86】
少なくとも1つの付加的な成分をさらに含む、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項87】
付加的な成分が水溶性液体である、請求項86記載の固形脂肪組成物。
【請求項88】
水溶性液体が水である、請求項87記載の固形脂肪組成物。
【請求項89】
水溶性液体が約1重量%〜約10重量%の量で存在する、請求項87記載の固形脂肪組成物。
【請求項90】
付加的な成分が、抗酸化剤、香味料、香味増強剤、甘味料、色素、ビタミン、ミネラル、プレバイオティクス化合物、プロバイオティクス化合物、治療用成分、薬効成分、機能性食品成分、加工成分、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項86記載の固形脂肪組成物。
【請求項91】
付加的な成分がアスコルビン酸またはアスコルビン酸の塩である、請求項86記載の固形脂肪組成物。
【請求項92】
アスコルビン酸またはアスコルビン酸の塩が約0.5重量%〜約5重量%の量で存在する、請求項91記載の固形脂肪組成物。
【請求項93】
付加的な成分が抗酸化剤である、請求項86記載の固形脂肪組成物。
【請求項94】
抗酸化剤が、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、クエン酸、アスコルビン酸、第3ブチルヒドロキノン、ローズマリー抽出物、レシチン、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項93記載の固形脂肪組成物。
【請求項95】
少なくとも約20のOSI値を有する、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項96】
少なくとも約40のOSI値を有する、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項97】
少なくとも約60のOSI値を有する、請求項60記載の固形脂肪組成物。
【請求項98】
a) 約5重量%〜約70重量%のLC-PUFAおよび約20重量%〜約60重量%の飽和脂肪を含む脱ろうされていない微生物油;ならびに
b) 約0.01重量%〜約2.0重量%の乳化剤
を含む脂肪組成物であって、約10重量%未満の水を含み、かつ室温で固体組成物である、脂肪組成物。
【請求項99】
a) 微生物バイオマスから、少なくとも1種のLC-PUFAおよび少なくとも油含有画分に視覚的に影響するのに十分である飽和脂肪酸を含む油含有画分を抽出する段階;ならびに
b) LC-PUFAを少なくとも1種含む油産物を産生するために真空蒸発により油含有画分を処理する段階
を含む、摂取用に用いられる油産物であって、脱ろう段階に供していない油産物を調製する方法。
【請求項100】
油産物を腐食精製工程に供していない、請求項99記載の方法。
【請求項101】
油産物を冷却濾過工程に供していない、請求項99記載の方法。
【請求項102】
油産物を漂白工程に供していない、請求項99記載の方法。
【請求項103】
油産物を腐食精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程に供していない、請求項99記載の方法。
【請求項104】
微生物バイオマスが、ヤブレツボカビ属の微生物、シゾキトリウム属の微生物、アルソルニア属の微生物、アプラノキトリウム属の微生物、ジャポノキトリウム属の微生物、エリナ属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される微生物に由来する、請求項99記載の方法。
【請求項105】
微生物が、シゾキトリウム属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項104記載の方法。
【請求項106】
油含有画分が少なくとも20の炭素鎖長を有するLC-PUFAを含む、請求項99記載の方法。
【請求項107】
LC-PUFAが少なくとも22の炭素鎖長を有する、請求項106記載の方法。
【請求項108】
LC-PUFAが二重結合を少なくとも3つ有する、請求項106記載の方法。
【請求項109】
LC-PUFAが二重結合を少なくとも4つ有する、請求項106記載の方法。
【請求項110】
LC-PUFAがドコサヘキサエン酸を含む、請求項106記載の方法。
【請求項111】
LC-PUFAがドコサペンタエン酸を含む、請求項106記載の方法。
【請求項112】
LC-PUFAがアラキドン酸を含む、請求項106記載の方法。
【請求項113】
LC-PUFAがエイコサペンタエン酸を含む、請求項106記載の方法。
【請求項114】
油含有画分を処理する段階が脱溶媒化(desolventization)を含む、請求項99記載の方法。
【請求項115】
脱溶媒化が、抽出された油含有画分を高温で真空状態に供する段階を含む、含む、請求項114記載の方法。
【請求項116】
高温が約50℃〜約70℃である、請求項114記載の方法。
【請求項117】
脱溶媒化が、抽出された油含有画分を約100 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階を含む、請求項115記載の方法。
【請求項118】
脱溶媒化が、抽出された油含有画分を約70 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階を含む、請求項115記載の方法。
【請求項119】
脱溶媒化が、抽出された油含有画分を約50 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階を含む、請求項115記載の方法。
【請求項120】
油含有画分を処理する段階が脱臭を含む、請求項99記載の方法。
【請求項121】
脱臭が、抽出された油含有画分を蒸気と共に噴霧させつつ、抽出された油含有画分を高温で真空状態に供する段階を含む、請求項120記載の方法。
【請求項122】
高温が約190℃〜約220℃である、請求項121記載の方法。
【請求項123】
脱臭が、抽出された油含有画分を約25 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階を含む、請求項121記載の方法。
【請求項124】
脱臭が、抽出された油含有画分を約12 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階を含む、請求項121記載の方法。
【請求項125】
脱臭が、抽出された油含有画分を約6 mm Hgの真空よりも高い真空に供する段階を含む、請求項121記載の方法。
【請求項126】
油産物が約0.5重量%未満の遊離脂肪酸含量を有する、請求項99記載の方法。
【請求項127】
油産物が約0.3重量%未満の遊離脂肪酸含量を有する、請求項99記載の方法。
【請求項128】
油産物が約10 ppm未満のリン価を有する、請求項99記載の方法。
【請求項129】
油産物が約5 ppm未満のリン価を有する、請求項99記載の方法。
【請求項130】
油産物が約2 meq/kg未満の過酸化物価を有する、請求項99記載の方法。
【請求項131】
油産物が約1 meq/kg未満の過酸化物価を有する、請求項99記載の方法。
【請求項132】
油産物が約5未満のアニシジン価を有する、請求項99記載の方法。
【請求項133】
油産物が約3未満のアニシジン価を有する、請求項99記載の方法。
【請求項134】
油産物が約5重量%未満のセッケン含量を有する、請求項99記載の方法。
【請求項135】
油産物が約2.5重量%未満のセッケン含量を有する、請求項99記載の方法。
【請求項136】
油産物が約1 ppm未満のFe濃度を有する、請求項99記載の方法。
【請求項137】
油産物が約0.5 ppm未満のFe濃度を有する、請求項99記載の方法。
【請求項138】
油産物が約1 ppm未満のPb濃度を有する、請求項99記載の方法。
【請求項139】
油産物が約0.2 ppmのPb濃度を有する、請求項99記載の方法。
【請求項140】
油産物が約0.1 ppm未満のHg濃度を有する、請求項99記載の方法。
【請求項141】
油産物が約0.04 ppmのHg濃度を有する、請求項99記載の方法。
【請求項142】
油産物が約0.1 ppm未満のNi濃度を有する、請求項99記載の方法。
【請求項143】
油産物が約0.01 ppmのNi濃度を有する、請求項99記載の方法。
【請求項144】
油産物が約1 ppm未満のCu濃度を有する、請求項99記載の方法。
【請求項145】
油産物が約0.2 ppmのCu濃度を有する、請求項99記載の方法。
【請求項146】
油産物を処理段階の前または後に漂白段階に供してある、請求項99記載の方法。
【請求項147】
油をオレイン画分とステアリン画分に分画する段階をさらに含む、請求項99記載の方法。
【請求項148】
油産物がヒトの摂取用に用いられる、請求項99記載の方法。
【請求項149】
油産物が20℃で固体である、請求項99記載の方法。
【請求項150】
請求項99記載の工程によって産生される油産物。
【請求項151】
微生物バイオマスから、少なくとも1種のLC-PUFAおよび少なくとも油含有画分に視覚的に影響するのに十分である飽和脂肪酸を含む油含有画分を抽出し、真空蒸発工程により画分を処理することによって調製される、摂取用に用いられる微生物油産物であって、脱ろう段階に供していない、微生物油産物。
【請求項152】
腐食精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程に供していない、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項153】
微生物バイオマスが、ヤブレツボカビ属の微生物、シゾキトリウム属の微生物、アルソルニア属の微生物、アプラノキトリウム属の微生物、ジャポノキトリウム属の微生物、エリナ属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される微生物に由来する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項154】
微生物バイオマスが、シゾキトリウム属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される微生物に由来する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項155】
約0.5重量%未満の遊離脂肪酸含量を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項156】
約0.3重量%未満の遊離脂肪酸含量を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項157】
約10 ppm未満のリン価を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項158】
約5 ppm未満のリン価を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項159】
約2 meq/kg未満の過酸化物価を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項160】
約1 meq/kg未満の過酸化物価を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項161】
約5未満のアニシジン価を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項162】
約3未満のアニシジン価を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項163】
約5重量%未満のセッケン含量を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項164】
約2.5重量%未満のセッケン含量を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項165】
約1 ppm未満のFe濃度を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項166】
約0.5 ppmのFe濃度を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項167】
約1 ppm未満のPb濃度を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項168】
約0.2 ppmのPb濃度を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項169】
約0.1 ppm未満のHg濃度を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項170】
約0.04 ppmのHg濃度を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項171】
約0.1 ppm未満のNi濃度を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項172】
約0.01 ppmのNi濃度を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項173】
約1 ppm未満のCu濃度を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項174】
約0.2 ppmのCu濃度を有する、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項175】
20℃で固体である、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項176】
ヒトの摂取用に用いられる、請求項151記載の微生物油産物。
【請求項177】
請求項151記載の微生物油産物を含む栄養製品。
【請求項178】
請求項151記載の微生物油産物を含む薬学的製品。
【請求項179】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項178記載の薬学的製品。
【請求項180】
スタチン、降圧薬、抗糖尿病薬、抗認知症薬、抗うつ薬、抗肥満薬、食欲抑制薬、ならびに記憶および/または認知機能を増強するための薬剤からなる群より選択される薬学的活性薬剤をさらに含む、請求項178記載の薬学的製品。
【請求項181】
請求項151記載の微生物油産物および食品または液体成分を含む食品。
【請求項182】
パン生地、ケーキ種、焼いた食品、液体食品、半固体食品、食品バー、加工肉、アイスクリーム、凍結デザート、フローズンヨーグルト、ワッフルミックス、サラダドレッシング、代用卵ミックス、塩味スナック、特殊スナック、ドライフルーツスナック、食肉スナック、ポークラインズ、健康食品バー、餅/コーンケーキ、および菓子スナックからなる群より選択される、請求項182記載の食品。
【請求項183】
a) LC-PUFAを少なくとも1種含む油含有画分を、微生物バイオマスから抽出する段階;および
b) 真空蒸発工程により画分を処理する段階
を含む工程により調製される、摂取用に用いられる微生物油産物であって、
脱ろう段階、腐食精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程に供しておらず;かつ
約0.5重量%未満の遊離脂肪酸含量、約10 ppm未満のリン価、約2 meq/kg未満の過酸化物価、約5未満のアニシジン価、約5重量%未満のセッケン含量、約1 ppm未満のFe濃度、約1 ppm未満のPb濃度、約0.1 ppm未満のHg濃度、約0.1 ppm未満のNi濃度、および約1 ppm未満のCu濃度からなる群より選択される特徴を有する、微生物油産物。
【請求項184】
20℃で固体である、請求項183記載の微生物油産物。
【請求項185】
請求項183記載の微生物油産物および食品または液体成分を含む食品。
【請求項186】
請求項183記載の微生物油産物を含む栄養製品。
【請求項187】
請求項183記載の微生物油産物を含む薬学的製品。
【請求項188】
ヒトの摂取用に用いられる、請求項183記載の微生物油産物。
【請求項189】
a) LC-PUFAを少なくとも1種含む油含有画分を、微生物バイオマスから抽出する段階;および
b) 真空蒸発により油含有画分を処理してLC-PUFAを少なくとも1種含む油産物を産生する段階
を含む、摂取用に用いられる油産物であって、腐食精製工程に供していない油産物を調製する方法。
【請求項190】
微生物がモルティエラ(Mortierella)属の微生物である、請求項189記載の方法。
【請求項191】
油含有画分がアラキドン酸を含む、請求項189記載の方法。
【請求項192】
油産物が20℃で固体である、請求項189記載の方法。
【請求項193】
請求項189記載の方法によって産生される油産物。
【請求項194】
請求項151記載の油産物および請求項193記載の油産物を含む混合油産物。
【請求項195】
請求項151記載の油産物が産生された微生物バイオマスが、ヤブレツボカビ属の微生物、シゾキトリウム属の微生物、アルソルニア属の微生物、アプラノキトリウム属の微生物、ジャポノキトリウムの微生物、エリナ属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される微生物に由来する、請求項194記載の混合油産物。
【請求項196】
微生物が、シゾキトリウム属の微生物、クリプテコディニウム属の微生物、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項194記載の混合油産物。
【請求項197】
請求項193記載の油産物が産生された微生物バイオマスが、モルティエラ属の微生物に由来する、請求項194記載の混合油産物。
【請求項198】
ドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸を含む、請求項194記載の混合油産物。
【請求項199】
微生物粗製油を油産物と固形脂肪産物に分画する段階を含み、固形脂肪産物が少なくとも約20重量%のLC PUFA含量を有する、LC PUFA含有液体油画分およびLC PUFA含有固形脂肪産物を生成する方法。
【請求項200】
固形脂肪産物が少なくとも約20重量%のDHA含量を有する、請求項199記載の方法。
【請求項201】
分画段階が微生物粗製油を吸着剤と接触させる段階を含み、
a) 微生物粗製油から吸着剤および吸着した物質を分離する段階;
b) 吸着剤および吸着した物質から固形脂肪産物を回収する段階
をさらに含む、請求項199記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−500022(P2009−500022A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519655(P2008−519655)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/025797
【国際公開番号】WO2007/005725
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508004410)マーテック バイオサイエンシーズ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】