説明

多価DTPポリオワクチン

【課題】無細胞性ワクチン成分を含む組み合わせまたは多価ワクチンとその使用法の提供。
【解決手段】(a)精製した状態の百日咳トキソイド、線状赤血球凝集素、ペルタクチン、凝集原、(b)破傷風トキソイド、(c)ジフテリアトキソイド、(d)破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、インフルエンザ菌b型の莢膜多糖から選択されたキャリア分子の複合体から成り、各成分の免疫原性が製剤内の他の個別の成分により障害を受けないように、製剤の各成分が調整されている、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、および/またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の感染が原因となる疾病に対する宿主内防御を与える多価免疫原性成分。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価ワクチン、特に小児への投与用のワクチンに関する。本出願は、1995年7月12日出願の米国同時継続出願第08/501,743の一部継続出願に対応し、この同時継続出願そのものは、1995年5月4日出願の米国同時継続出願第08/433,646である。
【背景技術】
【0002】
百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)が原因で起こる重篤で感染性の高い上部気道感染症である。WHOの調査では、年間6千万人が百日咳にかかり、50万人から1千万人が百日咳関連で死亡していると推定している(参考文献1)。この出願書では、本発明に関係がある技術をさらに詳しく説明した種々の参考文献を括弧内に記載し、引用した各文献は、本明細書後部に記載している。これらの文献で開示されている内容は、本発明の開示内容の説明の中に参照文献の形で示してある。
【0003】
ワクチン接種をしていない5歳以下の小児における百日咳の罹患率は80%と高い(文献2)。百日咳は一般的には小児の病気であると考えられているが、無症候の状態で青年および成人にもその罹患が増加しているという臨床上の証拠がある(文献3,4,5)。
【0004】
1940年代に、化学的に、および、熱により失活(無毒化)させた百日咳菌を原料にした全細胞ワクチンが使用導入されて、百日咳菌が原因となる百日咳の発症率は劇的に減少した。症例の定義にもよるが、この全細胞ワクチン接種の有効率は95%であると考えられている。但し、ワクチンとして百日咳菌を感染させた場合の免疫持続効果は長期に及ぶけれども、全細胞ワクチンを使用した場合には、その感染防御効果は弱いという証拠も増えている(文献3)。さらに、全細胞百日咳ワクチンの接種と、その接種が原因となる身体への反応および副作用との関係を示した数種の報告書が発表されたことが原因で、ワクチンを接種する人口が減ってしまい、その結果、百日咳の流行が再度増加してしまった(文献7)。このために最近では、ワクチン成分を規定した成分性百日咳ワクチン(コンポーネントワクチン)が開発されている。
【0005】
(成分を規定した百日咳ワクチンのための抗原)
多様な非細胞性の百日咳ワクチンが開発されており、それらのワクチンには、その抗原として、百日咳菌(Bordetella pertussis)抗原としての百日咳毒素(PT)、線状赤血球凝集素(FHA)、69kDa外膜タンパク質(ペルタクチン:pertactin)、線毛凝集原が使用されている(下表1参照。表は本出願書の最後に記載)。
【0006】
(百日咳毒素)
百日咳毒素(PT)は、ADPリボシル転移酵素活性を有する細菌毒素のA/B毒素ファミリーの1種類である外毒素である(文献8)。この毒素の半分を構成するA部分は、ADPリボシル転移酵素活性を示し、別の半分を構成するB部分は、毒素の細胞受容体への結合およびA部分の作用部位への転移を仲介する。PTは、百日咳菌が線毛状上皮細胞に接着することを促進させ(文献9)、百日咳菌によるマクロファージの侵入にも関与している(文献10)。全部の非細胞性百日咳ワクチンに、このPTが含まれ、主要ビルレンス要素として、および感染防御抗原として使用されている(文献11,12)。百日咳菌が自然感染した場合は、このPTに対する体液性および細胞性免疫応答が誘起されることになる(文献13〜17)。乳幼児は、経胎盤的に獲得した抗-PT抗体を持っており(参考文献16,18)、抗-PT抗体を含んでいるヒトの初乳は、マウスでのエアロゾル感染に対する受動感染防御に有効であることが認められている(文献19)。無細胞ワクチンで免疫した後のPTサブユニットに対する細胞性免疫が誘起されることが報告されており(文献20)、さらに、全細胞ワクチンの接種の後もPTに対する細胞性免疫が誘導されている。全細胞性ワクチンまたはコンポーネントワクチンに化学的に不活化させたPTを抗原として使用した場合、動物にもヒトにも感染防御作用が認められている(文献21)。また、S1サブユニットに特異的であるモノクローナル抗体が百日咳菌に対する感染防御作用を示している(文献22,23)。
【0007】
PTの病態生理学的な効果は、ADPリボシル転移酵素活性によるものである。PTは、ADPリボースのNADからG1グアニン・ヌクレオチド結合タンパク質への転移反応を触媒し、細胞のアデニル酸シクラーゼ制御系を破壊する(文献24)。さらに、PTはマクロファージとリンパ球の炎症部位への移動を阻止し、好中球が仲介する食作用と細菌死滅作用を妨害する(文献25)。S1および/またはPTの酵素活性を評価するために、多数のin vitroおよびin vivoの試験が実施されており、これにはウシトランスデューシンのADPリボシル化法(文献26)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)クラスタ分析法(文献27)、ヒスタミン感作法(文献28)、NADグリコヒドラーゼ分析などが含まれる。CHOはPTに曝されると、特別なクラスター形態を示す。この現象は、PTの結合と、S1のその後の転移とADPリボシル転移酵素活性によるものである。そのために、CHO細胞クラスター分析は、PTホロ毒素の特性と毒性を試験する場合に多用されるのである。
【0008】
(線状赤血球凝集素)
線状赤血球凝集素(FHA)は、細菌集落形成中に、百日咳菌が上部気道の線毛状細胞に付着する作用を仲介する非毒性の大型のタンパク質(220kDa)である(文献9,29)。百日咳菌が自然感染をした場合には、抗-FHA抗体の産生と細胞性免疫が現れる(文献13,15,17,30,31)。抗−FHA抗体は、ヒトの初乳に存在し、経胎盤により移行する(文献17,18,19)。全細胞百日咳ワクチンまたは無細胞性百日咳ワクチンを接種すると、抗-FHA抗体を産生させ、FHAを含む無細胞性ワクチンの投与により、FHAに対する細胞性免疫を誘発する(文献20,32)。マウスの呼吸系チャレンジモデルにおいては、このFHAは、能動免疫または受動免疫での感染防御抗原となる(文献33,34)。しかし、マウスでの大脳内効果試験では、FHAだけでは効果がないことが判明している(文献28)。
【0009】
(69kDa外膜タンパク質(ペルタクチン))
この69kDaの外膜タンパク質は、本来は、気管支敗血症菌由来のものである(文献35)。このタンパク質は、ペルタクチンまたはP.69として知られているものである。これは、気管支敗血症菌に対する感染防御抗原として認識されていたが、その後、百日咳菌およびパラ百日咳菌にも存在することが判明している。この69kDaタンパク質は、真核細胞に直接に結合し(文献36)、百日咳菌の自然感染があると、抗―P.69体液性免疫応答(文献14)および細胞性免疫応答を誘発される(文献17,37,38)。全細胞百日咳ワクチンまたは無細胞性ワクチンの接種により抗−P.69抗体が産生し(文献32,39)、無細胞性ワクチンの投与で抗−P.69に対する細胞性免疫を誘発させる(文献39)。このペルタクチンは、マウスのエアロゾル試験では百日咳菌に感染防御作用を示し(文献40)、FHAを組み合わせた投与では、大脳内での百日咳菌感染を防御する(文献41)。ポリクローナルまたはモノクローナル抗-P.69抗体の投与でもマウスのエアロゾル試験における百日咳菌感染防御作用を示す(文献42)。
【0010】
(凝集原)
百日咳菌の血清型は、その凝集線毛により規定される。WHOは、全細胞ワクチンに、血清型が1,2,3型の凝集原(Agg)を含めることを勧めている。その理由は、これらが交差防御性の抗原でないからである(文献43)。Aggの血清型が1のものは、非線毛性のもので、すべての百日咳菌株に見つかっており、2型と3型のAggは線毛性である。全細胞性または無細胞性のワクチンによる免疫またはその自然感染では、抗−Agg抗体の産生を誘発する(文献15,32)。マウスでは、Agg2とAgg3をエアロゾル感染させると、ある特定の細胞性免疫反応が起こる(文献17)。マウスでの実験では、このAgg2、3は、呼吸系での感染防御作用を示し、さらに、抗−凝集素を含むヒト初乳の場合にも感染防御作用がある(文献19,44,45)。
【0011】
(無細胞性百日咳ワクチン)
サトウらにより最初に開発された無細胞性ワクチンは、PTとFHAの2成分を含むワクチン(JNIH6と呼ばれる)であった(文献46)。このワクチンは、百日咳菌Tohama株の培養物上清からPTとFHAを同時精製し、その後ホルマリン処理をしてトキソイドを調整したものであった。この無細胞性ワクチンを、種々のメーカが多様な成分を使用して製造し、1981年以来、日本の小児に投与され成功を納め、その結果、日本での百日咳罹患率が劇的に低下した(文献47)。このJNIH6とPTの単一成分トキソイドワクチン(JNIH7)の臨床試験が1986年にスエーデンで実施された。最初の臨床結果では、全細胞性ワクチンの効果より劣るとの結果であったが、血清学的検査では、軽度のものと診断された百日咳に対しては、この無細胞性ワクチンのほうが有効であることが示された(文献48、49、50、51)。しかし、これらのワクチンにおいて、ホルマリン処理をして無毒化したPTの毒性が復帰するという証拠が見つかった。さらに、これらのワクチンは、感染防止というよりは、感染した後の発病を抑えることに有効であることが判明した。
【0012】
最近は、表1に示したように、PT、FHA、P.69、および/または凝集原を組み合わせた多数の無細胞型のコンポーネントワクチンの有効性が評価されつつある。PTを化学的に無毒化する技術として、ホルマリン処理(文献46)、グルタルアルデヒド処理(文献52)、過酸化水素処理(文献53)およびテトラニトロメタン処理(文献54)を使用した数種の方法がある。
【0013】
(破傷風)
破傷風は、破傷風菌が原因菌である急性感染症である。この疾患の特徴は、過敏症、反射亢進、自律神経刺激の増加などを伴った重篤で痛みのある筋肉硬直である。軽度の刺激により反射筋肉痙攣の原因となる。極度の筋肉痙攣による発熱がある。破傷風は、顔、首、腹部、躯幹に広がる系統性(全身性)の場合もあり、特定の身体部分(創傷部位)に局在する局所性の場合もある。顔部の咬筋がこの菌で侵されると開口障害または「痙笑」として知られている顔面表現障害が発症する(文献78)。破傷風菌は、ヒトおよび動物の消化管内にも非病原性のものとして存在している。この微生物は糞などで汚染した土壌中に生存し、感染性胞子として数年に亘り土壌中で生き続ける(文献79)。
【0014】
破傷風は、破傷風菌の嫌気性成長と汚染創傷での神経毒素が原因となる疾病である。その菌またはその胞子を含んだ物質が組織内に侵入することで感染が起こる。最も普通に見られる感染は、貫通した創傷部位で起こる。しかし、創傷歴のない場合にも感染が発生している。壊死性または虚血性の組織が存在すると、このバチルス菌の増殖を促進させる(文献78)。
【0015】
感染の予防法は、ワクチンを使用するか、丹念に洗浄して創傷部を清潔にするか、失活組織を切除するかである。汚濁した創傷があり、その治療手当に失敗した場合には、破傷風ワクチンと破傷風免疫グロブリンの両方を投与する必要がある。呼吸系器官の保護、破傷風の抗毒素の投与、創傷部の洗浄などの治療を行う。近代医療の進歩にもかかわらず、破傷風による死亡率は依然として30〜90%と高いのである(文献79)。特に、高齢者の場合に死亡率が特に高い。さらに、自然感染では、必ずしもその後の感染防御の免疫が成立する訳ではない。
【0016】
破傷風に対する最も効果的な感染制御の方法は、ワクチンを使用することである。ワクチンが世界中で使用されるようになり、発展途上国での破傷風の発症も極めてまれになった。発症するのは、ほとんどの場合、ワクチンを所定どおり受けなかったり、受けても適当なブースタ投与をしていない症例である。10年に一度はブースタ投与を受けるべきである。
【0017】
(ジフテリア)
ジフテリアは、ジフテリア菌 (Corynebacterium diphtheriae)が原因菌となる急性の感染症である。主な感染部位は、上部気道(鼻、咽頭、喉頭、気管)である(文献80)。細胞毒素が原因で起こる病変としては、炎症で囲まれた緑色の偽膜の班である。ジフテリアの合併症として、頸部リンパ節症、咽喉の腫脹および浮腫が発症する。重篤な場合には、腫脹が閉塞にまで進む(咽頭ジフテリア)。その他の合併症として、心筋炎、中枢神経系障害(頭蓋、上行性麻痺のような運動神経、感覚神経障害)、血小板増加症がある。頻繁ではないが、その他の粘膜が侵されることもある。臨床的発現としては、無症候の感染症である場合もあり、劇症で死に至る場合もある(文献79)。ジフテリアによる皮膚と創傷での感染は熱帯地方や米国の貧困層住民に発生することが報告されている。ジフテリア菌の感染の唯一の貯蔵庫はヒトである(文献79)。
【0018】
病変部の臨床的観察により推定的診断は可能ではあるが、ジフテリアであることの最終確認は、その病変部の細菌学的検査が必要である。臨床的にジフテリアであるとの強い疑いがある時には、その確認が取れない時であっても、直ちに抗生物質(ペニシリンまたはエリスロマイシン)やジフレリア抗毒素で治療すべきである。臨床徴候の発生後、時間が経つにつれて死亡率が上昇するからである(文献80)。現代医療の進歩にもかかわらず、ジフテリアの死亡率は5〜10%(文献79)であり、特に、若年層と高齢者でその率が高い。自然感染の場合には、その後の感染を防御する免疫が成立するとは限らない(文献80)。ジフテリアは感染者の分泌物や排泄物に直接接触することにより伝染する。分泌物に細菌の存在が認められる限り、その感染者は接触感染性の保菌者である。この保菌状態は感染後4週間に亘って続く。伝染は感染した媒介物からも起こる(文献79)。感染者の厳格な隔離が望ましい。
【0019】
まれにではあるが、感染後に保菌者になってから6ヶ月間に亘り、病原菌を排出し続けていることがある。免疫されてない保菌者は直ちに完全なワクチン治療を受けるべきである。抗生物質を投与することで、4日以内に菌が減少し、非保菌者への感染の危険性を減らすことができる(文献80)。
【0020】
(ポリオ)
不活化ポリオワクチン(IPV)と弱毒生ポリオワクチン(OPV)の両方のワクチンが世界のポリオ拡散の制御に大きく寄与した。DPT-IPV組み合わせワクチンの特許がヨーロッパとカナダで認められ、世界の数百万の小児に投与されてポリオ予防に有効で、安全であることが示された。
【0021】
(インフルエンザ菌b型)
有効なワクチンが使用できるようになる前は、インフルエンザ菌b型(Hib)(Haemophilus influenzae type b)が若年小児における侵襲性血液感染性の髄膜炎の主要原因であり、生後2才までの幼児の髄膜炎の原因であった(文献81)。インフルエンザ菌による髄膜炎の患者の10%が死亡している。治癒後にも永久後遺症が残る。このインフルエンザ菌に対する免疫治療として、インフルエンザ菌b型由来の多糖ワクチン(硫酸ポリリボース・リビトール、PRP)を使用したワクチン投与がカナダにおいて1987年に開始された。PRPをジフテリアトキソイドに結合させた複合体(コンジュゲート)(PRP-D)から成るワクチンを、生後18カ月前後の小児に接種することで免疫原性が改善された。1992年以来、1才以下の幼児に免疫原性を示すPRP結合ワクチン(破傷風トキソイド結合PRP:PRP−T)の使用が認可されて、幼児に対するこのワクチンの接種が開始された。これらのインフルエンザ菌由来の結合ワクチンを使用しているカナダその他の国での侵襲性インフルエンザ感染症の発症率は減少している(文献82)。英国のコロンビアおよびカナダのアルバータで実施された約900例の小児を対象とした2つの臨床研究により、凍結乾燥したPRP−Tを、通常の生理食塩水希釈液の他に、DPT(COMBIPACK)(文献83)またはDPT-ポリオ・アドソーブド(PENTA:登録商標)(文献84)を使用して、液体状に戻せることが示された。世界の10万人の小児が参加した臨床試験においても、凍結乾燥PRP-T(ActHib:登録商標)接種の有効性が確認されている。生後2カ月からPRP-Tを3回投与するか、あるいは、生後12カ月後のPRP−Tを一回投与することにより、臨床試験の対象の90%以上において、感染防御作用があるレベルとされる抗-PRPレベル(≧0.15μg/ml)を達成している。長期感染防御ができるレベル(≧1.0μg/ml)を達成する割合については、各試験により70〜100%の幅でバラツキがあった。1992年以来、数百万の用量のPRP−Tが販売された。PRP−Tを使用したワクチン接種により侵襲性インフルエンザ感染症を根絶することは無理であるが、これは、おそらく、この疾患が免疫不全が関連しているものと考えられる(文献85)。
【0022】
(組み合わせワクチン)
多様な病原菌に対して同時に防御作用を示すように抗原を組み合わせたワクチンには実際上は多くの潜在的な長所があるけれども、組み合わせることによりそれぞれの成分の免疫原性に悪い影響を与えることもあり得る。ジフテリアと破傷風と全細胞性百日咳の3種の組み合わせワクチン(DTP)が50年以上も使用されており、これらの組み合わせワクチンに対する全体の綜合的な抗体産生は、個々のワクチン成分に対する個別の抗体産生よりも優れており、これは多分、全細胞性百日咳ワクチンのアジュバント効果が寄与しているためであろう。さらに、不活化ポリオウイルスワクチンも含んだDTP・ポリオ組み合わせワクチンが、この組み合わせにしたことにより、ワクチンの中の百日咳抗原に対する抗体応答が減少するにもかかわらず、多くの国で認可されている(文献69〜71)。DTPワクチンをHib結合ワクチンと組み合わせることによる有効性には変動がある。フランスで実施されたDTPとPRPTを使用した治験では、安全性においては同じような効果を示したが、PRPに対する抗体産生は減少してしまった(文献72〜73:非特許文献1、2)。カナダでのDTPとPRPTワクチンを使用した研究では、PRPに対する抗体産生効果はないが、百日咳凝集素に対しては少しの抗体産生があり、副作用として、この組み合わせたワクチン使用群での注射部位に痛みが発生した(文献74,75:非特許文献3、4)。
【0023】
APDTワクチンとHib結合ワクチンを組み合わせることによる影響については現在データを集めているところである。Hib結合ワクチン(PRP−T)を組み合わせた無細胞百日咳・ジフテリア・破傷風ワクチン(APDT)の用量を3回投与した2才の幼児群においては、同じ日に別々に注射した群よりも、PRPに対する抗体産生が有意に低いという結果が示された(文献76:非特許文献5)。PRP-Tと組み合わせた無細胞百日咳・ジフテリア・破傷風ワクチンを3回投与した例でも類似の結果が報告された(文献77:非特許文献6)。
【0024】
その他の報告とは違って、組み合わせワクチンで免疫した小児においてPRP、ジフテリア、百日咳抗原に対する抗体産生が、別々の日にPRPを投与した小児群に較べて優れているという結果が出ている。別々のワクチンによる免疫原性が減少したのに、これらの組み合わせたワクチンを接種した際には、同等またはそれより優れた免疫原性を示したことにはいくつかの理由があるかもしれない。すべての無細胞性百日咳ワクチン、コンポーネント百日咳ワクチンにおいて、その抗原の内容や、トキソイド化の方法、使用するアジュバントまたは保存剤などの種類や量が同一ということはあり得ない。しかし、PT、FHA、69kを含んだ無細胞性百日咳ワクチン(文献77)とPT、FHA、69kおよび線毛を含んだ無細胞性百日咳ワクチン(文献76)においては、その免疫原性がともに低下しているのである。
【0025】
スエーデンの国立医療研究所の支援の下で実施された臨床試験のフェーズIIIにおいて、5種類の成分を含むAPDTワクチンが85%(例5)(95%・CI・81/89)の防御有効性を示した(文献78:非特許文献7)。
【0026】
最近市販されている組み合わせワクチンでは、適切な免疫原性を有する適切な抗原が、適切に組み合わされて調剤されていないために、百日咳にかかり易いヒトで望まれるような有効レベルの抗体を産生できるワクチンとなっていない。
【0027】
このような状況の中で、選択された抗原の選択された量を含んだ無細胞性百日咳成分から成る有効な組み合わせ成分ワクチンの提供が望まれるのである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Infect. Dis. J. 1991; 10: 761-771
【非特許文献2】JAMA 1992; 267: 673-8
【非特許文献3】Can Med Assoc. J. 1993; 149: 1105-16
【非特許文献4】Infect. Dis. J. 1994; 13: 348-55
【非特許文献5】Shinefield H. Black S, Ray P, Lewis E. Fireman B., Hohenboken, hackell JG. Safety of combined acellular pertussis vaccine in infants [abstract no. G72]. In program and Abstracts of the 35th Interscience Conference on Antimicrobiols and Chemotherapy. Washington, DC; American Society of Microbiology 1995: 171
【非特許文献6】Greenberg DP, Wong VK, Partridge S, Howe BJ, Fing J. Ward JL. Evaluation of a new combination vaccine that incorporates diphtheria-tetanus-acellular pertussis, hepatitis b, and Haemophilus influenzae type b conjugate vaccines [Abstract no. G70] In program and Abstracts of the 35th Interscience Conference on Antimicrobiols and Chemotherapy. Washington, DC; American Society of Microbiology 1995: 170
【非特許文献7】Wassilak SGF, Orenstein WA, Tetanus, In Plotkin SA, Mortimer EA, Jr., eds, Vaccines, WB Saunders Company, Philadelphia, 1988; 45-73
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、無細胞性ワクチン成分を含む組み合わせまたは多価ワクチンと、その使用法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明にかかるワクチン組成物は、
(a)精製した状態の、百日咳トキソイド、線状赤血球凝集素、ペルタクチン及び凝集原、
(b)破傷風トキソイド、
(c)ジフテリアトキソイド、及び
(d)担体分子とインフルエンザ菌b型の莢膜多糖との複合体
を含み、宿主にin vivo投与するワクチンとして調剤された、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌及びインフルエンザウイルスの少なくとも1種の感染が原因となる疾病に対する宿主内防御を与える多価免疫原性組成物であって、
該組成物中の各成分が、その免疫原性が該組成物中の他の成分により障害を受けないように製剤化されていることを特徴とする多価免疫原性ワクチン組成物である。
【0031】
上記のワクチン組成物における担体分子は、破傷風トキソイド及びジフテリアトキソイドから選択されるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の開示を概略すれば、本発明は、ボルデテラ属(Bordetella)および非ボルデテラ属(Non-Bordetella)の抗原を使用した多成分性百日咳ワクチンである新規製剤を提供することである。このワクチンは、ヒトに使用した場合、安全で、副作用無反応性、免疫原性で、感染防御作用を有する。この発明の範囲内で修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】凝集原のボルデテラ菌株からの分離手順の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の態様の1つによれば、本発明は、
(a)精製品としての、百日咳トキソイド、線状赤血球凝集、ペルタクチン及び凝集原、
(b)破傷風トキソイド
(c)ジフテリアトキソイド
(d)不活化ポリオウイルス、およびオプションで、
(e)破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、インフルエンザ菌b型の莢膜多糖の担体分子の複合体から成る、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、ポリオウイルスおよび/またはインフルエンザ菌の感染が原因となる疾病に対しての免疫防御性を宿主に賦与する多価免疫原性成分を提供する。
【0035】
本発明にかかる免疫原性の成分は、宿主へのin vivoでの投与用に使用可能なワクチンとして調製されており、その個々の抗原成分の免疫原性が、その同じワクチンに含まれる他の個々の抗原成分により害されることがないように個々の成分を調剤している。
【0036】
この免疫原性の成分として、さらに、アジュバント、特に、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムも含まれる。
【0037】
この免疫原性成分には、窒素換算で約5〜30μgの百日咳トキソイド、窒素換算で約5〜30μgの線状赤血球凝集素、窒素換算で約3〜15μgのペルタクチン、窒素換算で約1〜10μgの凝集原を含む。
【0038】
別の実施例の1つによれば、この免疫原性成分は、百日咳トキソイド、線毛赤血球凝集素、69kDaタンパク質、百日咳の線状凝集素から成り、ヒトにおける単回投与量は、百日咳トキソイドが約20μg、線状赤血球凝集素が約20μg、線毛凝集原が約5μg、69kDaタンパク質が約3μgであり、それぞれの重量比が約20:20:5:3となっている。さらに別の実施例によれば、このワクチンは、百日咳トキソイド、線状赤血球凝集素、69kDaタンパク質、百日咳の線毛状凝集素から成り、ヒトにおける単回投与量は、百日咳トキソイドが約10μg、線状赤血球凝集素が約5μg、線毛凝集原が約5μg、69kDaタンパク質が約3μgであり、それぞれの重量比は約10:5:5:3となっている。ここで提供される免疫原性成分から成る1つの実施例では、このワクチンには、約15Lfのジフテリアトキソイドと約5Lfの破傷風トキソイドが含まれる。本発明の免疫原性成分に含まれる不活化ポリオウイルスには、不活化ポリオウイルス1型,2型,3型の混合物から成る。この不活化ポリオウイルスの1,2,3型の構成は、ヒトの単回投与量として、ポリオウイルス1型が約20〜50D抗原ユニット、ポリオウイルス2型が約5〜10D抗原ユニット、ポリオウイルス3型が約20〜50D抗原ユニットである。別の調剤では、ヒトの単回投与量として、ポリオウイルス1型が約40D抗原ユニット、ポリオウイルス2型が約8D抗原ユニット、ポリオウイルス3型が約32D抗原ユニットである。
【0039】
この免疫原性成分の複合分子は、破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイドおよびインフルエンザb型の硫酸ポリリボース・リビトール(PRP)の複合体から成っている。そのような複合体分子は凍結乾燥の状態で提供され、これは投与の時に他の成分と組み合わせて投与することで液体状に戻されるようになっている。この免疫原性成分は、ヒトにおける単回投与量として、約5〜約15μgのPRPを約15〜約35μgの破傷風トキソイドと結合させた複合体を含む。そのような調剤例の1つとして、約10μgのPRPを約20μgの破傷風トキソイドと結合させた複合体を含むものも可能である。さらに特別な実施例では、この免疫原性成分は、百日咳抗原のそれぞれに免疫応答を示し、無細胞性の成分による免疫応答が、全細胞性百日咳により誘導された免疫応答と実質的に同等である。
【0040】
本発明の好適な実施例では、この免疫原性成分の0.5ml用量当たり、20μgの百日咳トキソイド、20μgの線状赤血球凝集素、5μgの線毛凝集原2及び3、3μgのペルタクチン膜タンパク質、15Lfのジフテリアトキソイド、5Lfの破傷風トキソイド、ポリオウイルス1型の40D抗原ユニット、ポリオウイルス2型の8D抗原ユニット、1.5μgのリン酸アルミニウムから成る多価ワクチン成分が提供される。さらに、この成分は、0.5ml用量当たり、20μgの破傷風トキソイドと共有結合したインフルエンザ菌b型の精製硫酸ポリリボースリビトール莢膜多糖(PRP)を10μg含む。さらに、この成分には0.5ml用量当たり、0.6%2-フェノキシエタノールを含ませてもよい。
【0041】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明により提供される免疫原成分またはワクチンの免疫成立に有効な量を、ヒトなどの宿主に投与する手段から成る、多数の疾病に対して宿主を免疫する方法が提供される。
【0042】
本発明の長所は、この成分が、通常の幼児の疾病に対する免疫防御を与えることのできる、安全で有効な多価ワクチンであることである。多種類の疾病に対して、その多様な抗原のそれぞれに対しての免疫応答を互いに妨害することなく、単一の接種で免疫に有効な方法を提供できることは利点である。
【0043】
(凝集原の調製)
図1には、ボルデテラ菌から凝集原を調製する法が図示されている。図1に示されたように、百日咳菌細胞のような凝集原を含むボルデテラ菌細胞ペーストを、例えば、10mMのリン酸カリウム、150mM塩化ナトリウム、4M尿素のような緩衝液で抽出するが、その場合、細胞ペーストから凝集原をまず選択的に抽出して、凝集素を含む最初の上清(sp1)と最初の残留沈殿物(ppt1)を作製する。最初の上清(sp1)は、遠心分離などの方法により、最初の残留沈殿物から分離する。その後、その残留沈殿物(ppt1)は廃棄する。その後、精製した上清(sp1)を遠心分離して、例えば、100〜300kDa・NMWL膜フィルタを使用して、10mMリン酸カリウム/150mM塩化ナトリム/0.1%トリトン(Triton)X−100で濾過してもよい。その後、最初の上清は、ある温度で、ある一定の時間、インキュベートして、凝集原を含む精製した上清(sp2)と非凝集原汚濁物を含む第2の沈澱物(ppt2)を生産する。適当な温度としては、約70℃〜約85℃の範囲を含む約50℃〜約100℃であり、適当なインキュベーション時間は、約1〜約60分である。精製した上清は、その後、例えば、分子量約8000(PEG8000)のポリエチレングリコールを添加して遠心分離して、最終濃度を約4.5±0.2%にした後、少なくとも30分間はゆっくり撹拌して、第3の沈殿物(ppt3)を遠心分離で集めて作製する。残りの上清(sp3)を廃棄する。
【0044】
この第3の沈殿物(ppt3)を、例えば、10mMリン酸カリウム/150mM塩化ナトリムを含む緩衝液で抽出し、線毛粗凝集原含有溶液を作製する。1Mリン酸カリウムを粗線毛溶液に添加して、その容量を約100mMにする。代替法として、熱処理した線毛凝集原の精製上清を、セファロースCL6Bのようなゲルを使用したゲルクロマトグラフィにより、沈澱させることなく精製してもよい。その後、粗溶液内の線毛凝集原を、例えば、PEIシリカのカラム内を通過させるカラムクロマトグラフィーにより精製して、線毛凝集原を作製する。流入体を含む線毛凝集原をさらに遠心分離し、例えば、100−300kDa・NMWL膜を使用して、10mMリン酸カリウム/150塩化ナトリムを含む緩衝液で濾過する。その凝集原調製液を、≦0.22μM膜フィルタによる濾過により滅菌して、凝集原1を実質的に含んでいない線毛凝集原2,3最終精製線毛凝集原調製液を提供する。Agg2のAgg3に対する重量比は、約1.5:1から約2:1とする。ワクチンには、線状赤血球凝集素、69kDa外膜タンパク質、百日咳毒素またはそのトキソイドを含むその他の精製ボルデテラ菌抗原および、例えば、文献68などに記載されているPTの遺伝子的に無毒化させた類似体を含むようにしてもかまわない。
【0045】
例えば、クレイン(Klein)らの特許第5,085,862(この特許はすでに譲受人に譲渡されている。それについては、本申請では参考文献の形で記載している)に記載されているようなその他のボルデテラ菌抗原、百日咳毒素(遺伝子的に無毒化した類似体を含む)、FHA、69kDaタンパク質を下記に述べるような種々の方法により精製した形で作製してもよい。
【0046】
(PTの精製)
PTは、従来の方法により、百日咳株の培養上清から分離することができる。例えば、セクラ(Sekura)らの方法を使用できる(文献55)。それによれば、まず最初に、その培養上清を色素リガンド・ゲル・マトリックスであるアフィゲル・ブルー(Affi-Gel Blue)(Bio-Rad Laboratories社、リッチモンド、CA)を含むカラムに吸収させることによりPTを分離する。次に、そのPTを0.75M・塩化マグネシウムのような濃度の高い塩を使用してこのカラムから溶出させ、その塩を除去した後、臭化シアン活性化セファロースに結合させたフェチインを含むフェチュイン・セファロース・アフィニティマトリックスのカラム内を通過させる。4Mマグネシウム塩を使用してフェチイン・カラムからPTを溶出させる。代替法として、アイロン(Iron)らの方法(文献56)も使用可能である。培養上清をCNBr活性化セファロース4Bカラム上に吸収させる(この時、ヘプタグロブリンが最初に共有結合する)。PTはpH6.5で吸収剤に結合し、pHを少しづつ10になるまで変えることにより、0.1Mトリス/0.5M塩化ナトリム緩衝液から溶出する。
【0047】
代替法として、スコット(Scott)らに1987年11月10に認められた米国特許4,705,686(本申請では参考文献として記載)に記載されている方法も使用できる。この方法では、百日咳菌の培養上清または細胞抽出物を、外毒素を吸収し、ボルデテラ菌抗原を流れさせるだけの十分な機能のある陰イオン交換部を有するカラムを通過させるか、または、その外毒素から分離させる。
【0048】
代替法として、PTをEP特許番号336,736(この特許は譲受人に譲渡されており、本出願では、参考文献として記載)に開示されたパーライト・クロマトグラフィーを使用して精製してもよい。
【0049】
(PTの無毒化(不活化))
PTを、ワクチンの副作用の原因となるかもしれない好ましくない活性を除去するために無毒化する。ホルムアルデヒド、過酸化水素、テトラニトロメタンまたはグルタルアルデヒドのような多様な従来の化学的無毒化法のいずれも使用してもよい。
【0050】
例えば、PTは、ムノズ(Munoz)らの提唱した修飾法を使用し、グルタルアルデヒドでも無毒化できる(文献57)。この無毒化手順では、精製したPTを、0.01Mリン酸緩衝生理食塩水の溶液内でインキュベートする。溶液の濃度をグルタルアルデヒドにより0.05%にして、その混合液を室温で2時間インキュベートし、その後、濃度をLリシンで0.02Mにする。その混合物をさらに室温で2時間インキュベートして、0.01MPBSで2日間透析する。別の実施例では、EP特許番号336736に開示されている無毒化プロセスも使用できることを示している。簡単に説明すると、PTを以下のようにグルタルアルデヒドでも無毒化できる。
【0051】
0.22M塩化ナトリウムを含むpH8.0の75mMリン酸カリウム中で、精製したPTを、約50〜400μg/mlのタンパク質濃度と同量のグリセロールで溶出させる。その溶液を37℃で加熱し、グルタルアルデヒドを添加して最終濃度を0.5%(w/w)にして、無毒化する。この混合物を37℃で4時間放置して、その後、アスパラギン酸(1.5M)を添加して最終濃度を0.25Mとする。その混合物を室温で1時間インキュベートし、その後、0.15M塩化ナトリウムを含む10容量の10mMリン酸カリウム(pH8.0)と5%グリセロールで透析してグリセロールを減らし、グルタルアルデヒドを除去する。PTトキソイドを0.2μM膜を使用して滅菌濾過する。毒性を全く示さないか、ほとんど示さないPT突然変異体分子を作製するために遺伝子組換え技術をトキソイド処理に使用する場合には、化学的無毒化処理は必要ではない。
【0052】
(FHAの精製)
FHAを、コウエル(Cowell)らが報告したような、培養上清から精製する方法でもよい(文献58)。メチル化ベータシクロデキストリンのような成長促進剤を、培養物上清内のFHAの収量を増加させるために使用可能である。この培養物の上清をヒドロキシアパタイト・カラムに移して、その中のFHAをカラム上に吸収させる。これにはPTは存在しない。外毒素を除去するために、トリトン(Triton)X−100で、カラムを全体的に洗浄する。その後、0.5M塩化ナトリウムの0.1Mリン酸ナトリウム溶液を使用してFHAを溶出させ、必要な場合には、残留しているPTを除去するために、フェチイン・セファロースカラムを通過させる。追加的な精製プロセスとして、セファロースCL−6Bカラムを通過させてもよい。
【0053】
代替法として、抗原を対象とするモノクローナル抗体法を使用してFHA精製を行ってもよい。この場合には、FHAに対する抗体がCNBr活性化アフィニティカラムに付着する(文献59)。
【0054】
代替法として、FHAを、上記特許EP336,736に開示されたパーライトカラムを使用して精製してもよい。
【0055】
(69kDa外膜タンパク質の精製(ペルタクチン))
この69kDa外膜タンパク質(69Kまたはペルタクチンと呼ぶ)を細菌細胞から回収する。EP特許484621(本出願では文献として記載)で開示されている方法で、最初にチメルゾル(thimerosal)のような細菌発育阻止剤を使用し細菌細胞を不活化させる。不活化した細胞を、PBS(pH7~8)のような液体培地に懸濁させ、加温して(45〜60℃)、反復抽出させ、その後、さらに室温または4℃まで冷却させる。この抽出法により細胞から69Kタンパク質が放出される。69Kタンパク質を含む物質を沈澱させて集めて、それをアフィゲルブルー(Afffi-gel Blue)のカラム内を通過させる。この69Kタンパク質を0.5M塩酸マグネシウムのような濃度の高い塩類を使用して溶出させる。透析した後、クロマトフォーカシングの支持体を通過させて精製する。
【0056】
代替法として、公開PCT・WO91/155005(すでに譲受人名になっており、これは本出願に参考文献として記載)で開示されているように、69Kタンパク質を百日咳菌培地の上清から精製してもよい。この方法が好ましい。その理由は、アデニレート・シクラーゼ色素・クロマトグラフィ物質が混入していないペルタクチンが含まれていないからである。
【0057】
その他の適当な、69kDa外膜タンパク質の百日咳菌からの精製方法が、1984年1月4日取得の米国特許番号5,276,142[ゴトー(Gotto)ら]および1992年3月31日取得の米国特許番号5,101,014[バーンズ(Burns)]に開示されている。
【0058】
(本発明にかかるその他の成分)
本発明のワクチンは、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、不活化ポリオウイルス(IVP)および、オプションで、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドのインフルエンザb型の莢膜多糖(capsular polysaccharide)との複合体のようなボルデテラ菌でない菌由来の免疫原性物質も含む。多種類成分のワクチンに含まれるその他の成分としては、ヘモフィルス属菌の外膜タンパク質、B型肝炎表面抗原や流行性耳下腺炎(あたふくかぜ)菌、麻疹菌、風疹菌などの抗原が含まれる。インフルエンザ菌b型由来の硫酸ポリリボース・リビトール(PRP)を分離し、これを誘導してアジピン酸ジヒロラジドが得られるようにし、これを破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイドに共有結合させて、それぞれの複合体であるPRP−TまたはPRP−D複合体を作製することにより、破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイドおよびHib(インフルエンザ菌b型)の莢膜多糖の複合体を含ませてもよい。
【0059】
各抗原を、個別にリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム(これらをミョウバンと総称する)のようなアジュバントに吸収させることで、これらの抗原を選択した相対的な量を含む本発明のワクチンを迅速に生産することが可能となる。
【0060】
(選択された多価ワクチン調剤)
選択的実施例の1つでは、本発明は、下記の特性(ここで使用されているμgタンパク質という表示は、精製した濃縮物で実施したキジェダール(Kjedahl)試験結果を基礎にしたもので、タンパク質窒素のμg数として表現されている)を有するワクチンを提供する。これらのワクチンはすべて筋肉内投与が可能である。
【0061】
(a)CP20/20/5/3DT−mIPV(ハイブリッド)
調剤の1つは、百日咳ワクチン(CP)とジフテリアトキソイド(DI)と破傷風トキソイド(T)、不活化ポリオウイルス(mIPV)を組み合わせ成分のもので、「CP20/20/5/3DT-mIPV(ハイブリッド)」と呼ぶ。MRC―5細胞内で増殖させたポリオウイルスを「mIPV」と呼び、ベロ細胞内で増殖させたポリオウイルスを「IPVまたはvIPV」と呼んでいる。どちらも不活化したポリオウイルスであり、製剤ではどちらのウイルスも代替的に使用できる。
【0062】
ヒトに対する1回用量である0.5mlのCP20/20/5/3DT−mIPV(ハイブリッド)には、以下の成分量が含まれるように製剤する。
【0063】
20μg百日咳トキソイド(PT)
20μg線状赤血球凝集素(FHA)
5μg線毛凝集原2および3(FIM)
3μgペルタクチン外膜タンパク質(69kDa)
15Lfジフテリアトキソイド
5Lf破傷風トキソイド
40D 抗原ユニット ポリオウイルス1型
8D 抗原ユニット ポリオウイルス2型
32D 抗原ユニット ポリオウイルス3型
1.5mg リン酸アルミニウム
0.6% 2−フェノキシエタノール(保存剤として)。
【0064】
(b)CP20/20/5/3DT-mIPV(ハイブリッド)+PRP−T
別の調剤として、百日咳ワクチン(CP)、ジフテリアトキソイド(D)、破傷風トキソイド(T)、不活化ポリオウイルス(mIPV)の組み合わせたワクチンがあり、これを「CP20/20/5/3DT−mIPV(ハイブリッド)」と呼び、さらに、凍結乾燥させたPRP−Tを液体状に戻す調剤が使用される。その結果、調剤される成分には、0.5ml用量当たり、以下の成分量を含む。
【0065】
20μg百日咳トキソイド(PT)
20μg線状赤血球凝集素(FHA)
5μg線毛凝集原2,3(FIM)
3μg外膜タンパク質(69kDa)
15Lfジフテリアトキソイド
5Lf破傷風トキソイド
20μgの破傷風トキソイドと共有結合させた、インフルエンザ菌b型の精製 硫酸ポリリボース・リビトール莢膜多糖(PRP)の10μg
ポリオウイルス1型 40D抗原ユニット
ポリオウイルス2型 8D抗原ユニット
ポリオウイルス3型 32D抗原ユニット
1.5mg リン酸アルミニウム
0.6% 2−フェノキシエタノール。
【0066】
(c)CP20/20/5/3DT−PRP−T−IPV(ハイブリッド)
さらに別の調剤として、百日咳ワクチン(CP)、ジフテリアトキソイド(D)、破傷風トキソイド(T)不活化ポリオウイルス(mIPV)、PRP−Tを組み合わせたもので、これを「CP20/20/5/3DT-PRP-T-IPV(ハイブリッド)」と呼ぶ。この成分の、ヒトにおける0.5ml用量当たりの成分量は以下の通りである。
【0067】
20μg百日咳トキソイド(PT)
20μg線状赤血球凝集素(FHA)
5μg線毛凝集原2,3(FIM)
3μg外膜タンパク質(69kDa)
15Lfジフテリアトキソイド
5Lf破傷風トキソイド
20μgの破傷風トキソイドと共有結合させた、インフルエンザ菌b型の精製硫酸ポリリボース・リビトール莢膜多糖(PRP)の10μg
ポリオウイルス1型 40D抗原ユニット
ポリオウイルス2型 8D抗原ユニット
ポリオウイルス3型 32D抗原ユニット
1.5mg リン酸アルミニウム
0.6% 2−フェノキシエタノール。
【0068】
(臨床試験)
(a)DTPコンポーネント百日咳ワクチン
下記の方法で調製した、百日咳の感染防御のための線毛凝集原の安全性、非反応性、有用性を確認するために、かなりの数のヒト対象における臨床試験が実施された。この試験では、ワクチンに含まれる各抗原に対する免疫応答が得られた(例えば、第3表に示された例)。特別な多価百日咳ワクチンの1つであるCP10/5/5/3DTについて、その百日咳に対するワクチン効果を評価するために、リスクをもっているヒトを対象に、大規模なプラセボ・コントロール、多施設、二重・無作為の臨床試験を実施した。
【0069】
典型的な百日咳の症例の定義は以下の通りである
23日以上の痙攣性の咳があること、または、百日咳菌(B.pertussis)の存在が培養で確認されること、あるいは、ペアとして得た血清において、ELISA検査により、FHAまたはPTに対する100%IgGまたはIgA抗体産生の増加が認められ、ボルデテル菌感染を示す血清学的証拠があること、あるいは、血清学的データが不足している場合には、試験対象の小児が、その試験対象小児の咳の発症前後の28日以内に、咳の発症のあった家庭内において培養により百日咳菌の存在が確認されている患者に接触していること。
【0070】
この試験の結果として、このCP10/5/5/3DTが、上記の症例定義で規定された百日咳感染防御において、85%の有効性を有することが示された。同じ研究において、PTとFHAの2成分だけを含む百日咳無細胞性ワクチンの有効性は約58%であり(PT25・FHA25・DT)、全細胞百日咳ワクチン(DTP)が48%の有効性であった(下表4参照)。さらに、このCP10/5/5/3DTワクチンは、軽度(咳が少なくとも1日続く場合を「軽度」と定義する)の百日咳の感染を有効率で77%まで防御した。特に、このワクチンで得られた免疫応答の状態は、百日咳に対して高い有効性を示すと報告されている全細胞性百日咳ワクチンで免疫した場合と実質的に同じ程度であった。
【0071】
(b)多価DPT-PRP-T-IPVワクチン
(I)吸着ジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイド、インフルエンザ菌b型破傷風トキソイド複合ワクチン及び不活性化ポリオウイルスワクチン(ベロ細胞上で増殖)と、百日咳コンポーネントワクチンとの組合せ(CP20/20/5/3DT-PRP-T-IPV)の安全性と免疫原性について、
全細胞百日咳ワクチンの(a)吸着ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイド、及び不活化ポリオワクチンと組み合わせ、または(b)吸着ジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイド、及び不活性化ポリオワクチンとの組合せ(吸着DPT−ポリオ;MRC―5細胞上で増殖)を、凍結乾燥したインフルエンザ菌b型破傷風トキソイド複合体ワクチン(PENTA:登録商標)を液体状に戻して復元するために使用して得たワクチンとの組合せ、あるいは、
(c)ジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイド吸着インフルエンザ菌b型破傷風トキソイド複合ワクチン、並びにMRC−5細胞上で増殖させたポリオウイルスを不活化させて得たポリオワクチンの百日咳コンポーネントワクチンとの組合せ(CP20/20/5/3DT-mIPV)を、凍結乾燥したインフルエンザb型破傷風トキソイド複合体ワクチン(PRP−T)と個別に与えるか、またはその液状化に使用した場合について、生後2,4,6,18カ月の小児への投与により比較した。
【0072】
この無作為コントロール試験には、897例の2カ月齢の幼児が組み入れられ、8種類の異なるワクチンアームの1つを投与した。投与したワクチンは、CP20/20/5/3DT-PRP-T-IPV(液体);PRP−Tと同時ではあるが異なった部位に投与したCP20/20/5/3DT;対照ワクチン、PRP−T(PENTA:登録商標)を液体状に戻すために使用される全細胞性DPTポリオワクチンであった。治験を行った対象はすべて投与したワクチンに耐えた。組み換え百日咳菌を組み合わせた2つの型の間には免疫応答において有意な差異は認められなかった。
【0073】
PRP−Tを液状に戻すために使用した組合せワクチンCP20/20/5/3DT-mIPVを投与した小児では、これらを別個に異なった部位に投与した群に較べて、わずかに高い局所的反応が認められた。すべての組合せコンポーネント百日咳ワクチンでは、全細胞組合せワクチンに較べて全身的にも局所的にも反応は低かった。コンポーネント百日咳ワクチンと全細胞ワクチンとの反応発生率の差異は、ワクチン接種直後の24時間以内に顕著であった。組合せコンポーネント百日咳ワクチンは両方ともすべての抗原に対して優れた免疫応答を示した。すべての状況において、百日咳PT、FHA、ペルタクチンを使用したコンポーネントワクチンは、全細胞組合せワクチンに較べて優れた免疫応答を示した。しかし、コンポーネントワクチンと全細胞ワクチンとの間には、その免疫応答に有意な差異は認められなかった。抗-PRP、ジフテリア、ポリオ1,2に関しては、コンポーネントワクチンと全細胞調剤との間には、その免疫応答において、有意な差異は認められなかった。コンポーネント百日咳調剤は、両方ともPENTA(登録商標)よりは高い破傷風に対する免疫応答を示した。コンポーネントワクチンは両方とも、ポリオ3以外のすべての抗原に対して同じような血清学的反応を示した。このポリオ3に対しては、PRP−Tを液状に戻すために使用したCP20/20/5/3DT-mIPVのほうが、CP20/20/5/3DT-PRP-T-IPVに較べて高い免疫応答を示した。投与法により、破傷風抗原以外の抗原に対する血清学応答に影響が出ることはなかった。組み合わせた群においても、分離して投与した群においても、3回の接種後に、100%の小児において、破傷風に対しての感染防御が認められた(>0.01EU/ml)。ここでより重要なことは、PRP−Tに対しては、すべてのワクチン投与群でよい免疫応答が認められ、98.3%の小児が、>0.15μg/mlのレベルを達成し、86.1%の小児が、>1.0μg/mlのレベルを達成した。これらの数字は、以前の試験において全細胞百日咳ワクチンをPRP−Tに使用した際に観察された数字に匹敵するものである。
【0074】
得られた血清学的応答については表5〜7までに記載した(表の中で「H」とはハイブリッドのことである)。
【0075】
(II)吸着ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドと不活性化ポリオワクチン(MRC−5細胞上で増殖)とコンポーネント百日咳ワクチンの組合せ(CP20/20/5/3DT-mIPV)を、凍結乾燥したインフルエンザ菌b型破傷風トキソイド複合体ワクチン(PRP−T)と別個に与えるか、あるいはその液状化に用いた場合についての安全性と免疫原性を、吸着ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドと不活性化ポリオワクチン(MRC−5細胞上で増殖)を全細胞百日咳ワクチンと組合せたもの(DPT−ポリオ吸着)を、凍結乾燥したインフルエンザ菌b型破傷風トキソイド複合体ワクチン(PENTA:(R):登録商標)の液状化に使用した場合と、生後18〜19カ月の小児への投与において比較した。
【0076】
この5群のアーム試験には、PRP−Tを液体状に戻すために使用された全細胞PENTA(R)コントロール・アームとCP20/20/5/3DT-mIPVが含まれる。第5群では、CP20/20/5/3DT-mIPVはPRP−Tと同時にではあるが、別々の部位に接種された。生後18〜19カ月の489例の対象にワクチンを投与し、その内の466(95%)例がプロトコルに従った試験を完了した。PRP−Tを液体状に戻すために使用したCP20/20/5/3DT-mIPVは、特に接種後の最初の24時間以内において、PENTA(R)に較べて有意に非反応性であった。局所における反応性は、液体状に戻したワクチンのほうが別々に投与したワクチンに較べてわずかに高い率であった。PENTA(登録商標)は、PRP−Tを液体状に戻すために使用したCP20/20/5/3DT-mIPVよりも、ポリオ1に対する免疫応答が高かった。抗−PRP、ジフテリア、百日咳凝集素、線毛、ポリオ2またはポリオ3に対する免疫応答には、有意な差異は認められなかった。PRP−Tを液体状に戻すために使用したCP20/20/5/3DT-mIPVは、百日咳PT、FHA、ペルタクチンに対して有意に高い血清学的応答を示した。PRP−Tを液体状に戻すために使用したCP20/20/5/3DT-mIPVは、試験をしたすべての抗原に対して一定の一貫した血清学的応答を示した。PRP−Tを液体状に戻すために使用したCP20/20/5/3DT-mIPVと、PRP−Tとは別に投与されたCP20/20/5/3DT-mIPVとの間には、その免疫応答において、破傷風抗毒素に対して以外は、有意な差異は認められなかった(4.91:6.78EU/ml)。
【0077】
この試験では、PRP−Tを液体状に戻すために使用したCP20/20/5/3DT-mIPVが、3個のロットにおいて一貫した血清学的応答を示し、百日咳に対しては、PENTA(登録商標)よりも高い免疫原性を示しことが判明した。さらに、CP20/20/5/3DT-mIPVは、PENTA(R)に較べて有意に低い局所的、系統的(全身性)反応を示した。
(III)吸着ジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイドと不活化ポリオワクチン(MRC−5細胞上で増殖)とコンポーネント百日咳ワクチンの組合せ(CP20/20/5/3DT-mIPV)の安全性及び免疫原性を、吸着ジフテリアトキソイドと破傷風トキソイド、不活化ポリオワクチン(MRC−5細胞上で増殖)と全細胞百日咳ワクチンとの組合せにおけるものと、4才〜6才の小児において比較した。
【0078】
CP20/20/5/3DT-mIPV(n=131)またはDTT―ポリオ(n=33)のいずかを投与するために、164例の対象を無作為に4:1の割合に割り当てた。この試験では、有意または重篤な副作用は発生しなかった。CP20/20/5/3DT-mIPVは、特に、接種後0〜24時間の間に有意に低い局所的、系統的(全身性)反応を示した。この局所反応は、接種後0〜24時間の間、DPT―ポリオワクチンを投与した群の97%に、CP20/20/5/3DT-mIPVを投与した群の76.9%に普通に認められた。CP20/20/5/3DT-mIPVによる局所反応は、通常の場合、軽度または中等のものであった。それとは対照的に、DPT−ポリオワクチンを投与した対象の半分以上に重篤と見られる局所反応が現れた。ワクチンを注射した部位の痛みは、通常72時間までに消えたが、発赤または脹大は、24〜72時間に亘り残る傾向にあった。
【0079】
投与後0〜24時間での全身反応は、DPT―ポリオワクチン投与群(90.9%)に較べて、CP20/20/5/3DT-mIPV投与群では少なかった(38.5%)。24〜72時間における全身反応は両群ともに見られなかった。
【0080】
ジフテリア、破傷風、ポリオ2,3に対する免疫応答は両ワクチン間では類似していた。DPT―ポリオワクチン投与群(15,462)では、CP20/20/5/3DT-mIPV投与群(10,903)に較べて、ポリオ1に対する免疫応答が有意に高いものであった。対象すべてが優れた免疫応答を示し、それぞれの疾病に対して感染防御が可能であると判断された。百日咳抗原の全部に対しての血清学的応答は、CP20/20/5/3DT-mIPVの投与群において有意に高いものであった。
【0081】
(IV)吸着ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドとインフルエンザb型破傷風トキソイド複合ワクチンと、MRC−5細胞上で増殖させたポリオウイルスを不活性させたポリオワクチンと、コンポーネント百日咳ワクチンとの組合せ(CP20/20/5/3DT-PRP-T-mIPV)の安全性と免疫原性を、
吸着ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドと不活化ポリオワクチン(MCR−5細胞上で増殖)と全細胞百日咳ワクチンとの組合せ(DPT―ポリオ吸着)を、凍結乾燥したインフルエンザb型破傷風トキソイド複合体ワクチン(PENTA:登録商標)を液体状に戻すために使用して得たものと、あるいは
吸着ジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイドと不活性化ポリオワクチン(MCR−5細胞上で増殖)とコンポーネント百日咳ワクチンとの組合せ(CP20/20/5/3DT-mIPV)を、凍結乾燥したインフルエンザb型破傷風トキソイド複合体ワクチン(PRP−T)を液体状に戻すために使用して得たものにおける安全性と免疫原性とを、生後18〜19カ月の小児への投与において比較した。
【0082】
この3つのアーム・無作為コントロール・単一盲検の目的は、生後18〜19カ月に小児にける、組み合わせた2つの無細胞性百日咳ワクチンであるCP20/20/5/3DT-PRP-T-IPVと、PRP−Tを液体状に戻すために使用したCP20/20/5/3DT-mIPVの安全性と免疫原性を、PENTA(登録商標)(PRP−Tを液体状に戻すために使用した全細胞百日咳DPTポリオワクチン)と比較して評価することであった。
【0083】
合計で99例の小児のうち、97例(98%)がプロトコルに従って試験を完了した(3種類のワクチン群にはそれぞれ33例を割り当てた)。この研究では、特に重篤な反応は認められなかった。PENTA(R)投与群では、他の2つのワクチンの投与群に較べて、有意に、中等または重篤な局所および全身反応が発生する傾向があった。
【0084】
24時間目に差異は最も顕著であり、発熱、発赤、脹大、痛み、神経過敏、活動低下、食欲減退の点で、統計的な有意性を示した。組合せコンポーネント百日咳ワクチンを投与した小児において、反応性が軽度になる傾向があった。この2種類のコンポーネントワクチンの投与群間には、その反応発生率には有意な差異は認められなかったが、24時間目に、PRP−Tを液体状に戻すために使用したCP20/20/5/3DT-mIPVの投与群において、CP20/20/5/3DT-PRP-T-IPVの投与群に較べて、より頻繁に神経過敏が見られた(18%:3%)。血清学的応答は満足なもので、ワクチンを受けた治験参加者の100%がジフテリア抗毒素(≧0.01IU/ml)、破傷風抗毒素(≧0.01IU/ml)、抗PRP(≧1.0μg/ml)に対する防御作用を示すレベルを達成した。ポリオ1,2,3に対する検出可能な中和抗体が、接種後のすべての治験参加者に認められた。
【0085】
ジフテリアに対する免疫応答は、ワクチン内の高い抗原含有量(25Lf:15Lf)を反映して、PENTA(登録商標)投与群において高かった。
【0086】
百日咳抗体は、PENTA(登録商標)投与群に較べて、組み合わせた2種類の百日咳ワクチン群においてかなり高く、その抗−PT、抗―FAH、抗―ペルタクチン・GMT応答は統計的に有意のレベルに達した。抗―線毛および抗−百日咳凝集抗体も、コンポーネント百日咳ワクチンの投与群において高いものであったが、その差異は、統計的に有意であるものではなかった。
【0087】
要約すれば、この治験の結果は、2つの組み合わせ無細胞性百日咳ワクチンであるCP20/20/5/3DT-mIPV(これはPRP−Tを液体状に戻すために使用されたもの)とCP20/20/5/3DT-PRP-T-IPVとは同等のものであり、18〜19カ月の小児にブースターとして投与した場合には、共に、その反応発生率は低いものであり、しかも高い血清応答を示すことを示している。
【0088】
(V)吸着させたジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドを組み合わせたコンポーネント百日咳ワクチン(CP20/20/5/3DT)のみ、または、MRC―5細胞上で増殖させた1種類または2種類の不活化ポリオウイルス、mIPV、ベロ細胞上で増殖させて得たその他のvIPVを組み合わせたワクチン、または経口ポリオワクチン(OPV)の安全性と免疫原性について、生後17〜19カ月の小児に投与して評価した。
【0089】
CP20/20/5/3DTと2種類のIPV(ベロ細胞またはMRC―5細胞上で増殖させたもの)間の相互作用を試験するために、5群から成るアーム試験計画を立てた。この両方のIPVを、CP20/20/5/3DT-mIPVとCP20/20/5/3DT-vIPVの両方を含む単一の液体製品として、あるいは、これらが同時に投与されるが、その注射部位が異なるようにCP20/20/5/3DT+mIPVおよびCP20/20/5/3DT+vIPVを組み合わせたものとして分けた。第5番目の群には、CP20/20/5/3DTとOPVを同時に投与した。すべての対象者に、免疫後の血液採取の時に、PRP−Tを投与した。この研究では、抗−PRP応答についての評価は行っていない。
【0090】
【表1】

【0091】
一般的に、ワクチンが別々に注射されたか、または、CP20/20/5/3DT(ハイブッド)ワクチンと組み合わされて注射されたかどうかに関係なく、MRC―5またはベロ細胞上で増殖させたウイルスを不活化して得たポリオワクチンを投与した後の副作用の発生率に差異はなかった。
【0092】
群間では、PT、FHA、ペルタクチンに対する免疫応答における有意な差異は認められなかった。CP20/20/5/3DT(ハイブッド)とOPVを投与した小児における、FIM、百日咳凝集素、ジフテリア、破傷風に対する免疫応答は、CP20/20/5/3DT(ハイブッド)およびベロ細胞由来IPVを投与した小児におけるよりもわずかに高いものであったけれども、有意に高いということではなかった。一般的には、ポリオワクチンに対する免疫応答は、IPVを投与した小児の場合は、OPVを投与した小児の場合と同等かまたは高かった。1例を除いて、すべて対象において、百日咳凝集素に対して、>1:64のレベルを達した。さらに、1例を除いてすべての対象において、ジフテリア抗毒素に対して、≧0.1U/mlレベルを達した。破傷風抗毒素に対しては、すべて≧0.1EU/mlレベルを達した。
【0093】
この試験の結果により、IPV(MRC−5細胞またはベロ細胞由来)と組み合わせたCP20/20/5/3DT(ハイブッド)は、生後17〜19カ月の小児に使用した場合にも、安全で、免疫原性を発揮することが示された。コンポーネント組合せワクチンは、少なくとも、成分が個別に注射されたワクチンと同じくらい免疫原性があり、場合によっては、より強力な免疫原性を発揮する場合もある。複数のワクチンを、単一の注射液にまとめて組み合わせて使用しても、局所における副作用の有意な増加となることはなかった。2種類のIPVワクチンをそれぞれ単独で投与した場合でも、一緒にまとめて注射した場合でも、その副作用発生または免疫応答に実質的な差異は認められなかった。IPVを含めた場合でも、CP20/20/5/3DT(ハイブッド)を単独で投与した場合に較べて、副作用発生率を増加させるということはなかった。
【0094】
本試験で得られた血清学的結果は、表8に概説している(表において、H=ハイブリッド)。
【0095】
(VI)ジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドだけを吸着させて組み合わせたコンポーネント百日咳ワクチン(CP20/20/5/3DTおよびCP10/5/5/3DT)または、それにインフルエンザb型複合物ワクチンも組み合わせたコンポーネント百日咳ワクチンを17〜19カ月の小児に使用した場合の、安全性と免疫原性について評価した。
【0096】
生後18〜19カ月の小児における、クラシックなコンポーネント百日咳ワクチン(CP10/5/5/3DT)およびハイブリッド百日咳ワクチン(CP20/20/5/3DT)と、インフルエンザb型複合ワクチン(PRP−T)との間の相互作用を評価すべく、6アーム試験を計画した。
【0097】
3種類のスケジュールを使用した。以下の通りである。
(a)PRP−Tを液体状に戻すためにコンポーネント百日咳ワクチンの1つを使用すること、
(b)コンポーネント百日咳ワクチンとPRP−Tの両方を同時に投与するが、一方は、PRP−Tを投与する部位とは別の部位に投与すること、および
(c)PRP−Tをコンポーネント百日咳ワクチンを接種した後1カ月に投与すること
である。全部の小児に最初の来院時にOPVを投与し、生後2,4,6カ月の時に、同じコンポーネント百日咳ワクチンを投与した。すべての小児は、以前において、これらの2種類のワクチンに関する大規模な安全試験に参加していた。
【0098】
合計で545例の対象が試験に参加し、うち542例(99%)が試験を完了した。
【0099】
【表2】

【0100】
血清学的応答は、コンポーネント百日咳ワクチンを、PRP−Tと同じ日に投与した場合には、別々の日に投与した場合に較べて全体的に、大抵の抗原に対してより高いレベルを示した(表9参照)。
【0101】
より重要なことは、コンポーネント百日咳ワクチンとPRP−Tを別々の日に投与した時には、コンポーネント百日咳ワクチンをPRP−Tと同じ日に投与した場合に較べて、抗―PRP応答が低下しなかったことである。
【0102】
別々の日にワクチンを投与した小児における免疫後のGMTは、有意に低いものであった。対象を層化(グループ分け)した場合、同時に投与したケースと別々の日に投与したケース間では、抗―PRP応答での差異が認められた。CP20/20/5/3DT(ハイブリッド)を受けた者(レシピエント)は、別々の日に投与された場合よりも、同時に投与された場合に低い抗―PRPレベルを示した。これらの差異は、CP10/5/5/3DTを受けた者には認められず、群を組み合わせると、これらの差異は消えた。すべてのレシピエントの抗―PRPレベルは、≧0.15μg/mlであり、各群の98%以上の対象のレベルは、≧1.0μg/mlであった。このレベルに達しなかったのは、わずかに4例のレシピエント(0.7%)だけであり、それは、別々のワクチン注射を別の日に投与した3例と、組み合わせワクチンを投与した群の1例である。各群の82%以上において、抗―PRP抗体の抗体価は10μg/mlであった。ワクチン投与により引き起こされた局所反応のうち、痛みだけが、別々の日に投与を受けた群(16.7%)に較べて、組み合わせワクチン投与を受けた群(27.8%)により頻繁に認められた。この発生率は、同じ日に別々のワクチン注射を受けた群(24.2%)のそれと差異がなかった。全体では、全身的な反応がワクチン投与を受けた各群のそれぞれに同じ頻度(60〜62.1%)で認められた。レシピエントの約3分の1には、発熱はほとんど認められなかった。神経過敏だけが、別々のワクチンを別々に受けた群(22.0%)または、ワクチンを別々の日に受けた群(22.8%)に較べて、組み合わせワクチン注射を受けた群(33.3%)のほうに頻繁に認められた。
【0103】
これらの試験結果を要約すると、CP10/5/5/3DTまたはCP20/20/5/3DTとPRP−Tとの同日同時投与は、抗−PRP−T応答を妨害するものではなく、実際にはそれを増強し得るものである。その他の抗原に対する血清学的応答も優れた結果が認められた。2種類のワクチンを一緒に混合した場合には、破傷風が影響を受けた唯一の抗原であったが、全小児において、高いレベルの防御効果を得ることができた。
【0104】
後期の臨床試験の準備として、アクトヒブ(ActHib)(PRP−T)を液体状に戻すために使うための、CP10/5/5/3DT-IPV(MRC5細胞上で増殖)と、A5I(CP10/5/5/3DT-PRP-T-IPV(ベロ細胞上で増殖)、3μg/ml)を調製した。コンポーネント百日咳抗原は、保存剤のない状態で、3mg/mlの割合で、個別にリン酸アルミニウムに吸着させた。
【0105】
これに関して、PTは、10mM・リン酸カリウム、0.15M・NaCl、5%グリセロールに入れ、FHAは、10mM・リン酸カリウム、0.5M・NaClに、69Kは、10mM・リン酸カリウム、0.15M・NaClに、線毛は、10mM・リン酸カリウム、0.15M・NaClに入れた。Dを濃度が300Lf/mlとして、リン酸アルミニウムに吸着させた(6.25mg/ml)。2−フェノキシエタノールを保存剤として、その容量が全体の0.6%になるように添加した。Tを、濃度300Lf/mLで、リン酸アルミニウムに吸着させた(6.25mg/ml)。2−フェノキシエタノールを保存剤として、その容量が全体の0.6%になるように添加した。吸着させたコンポーネント百日咳抗原を、濃度を3.65投与量/mlまたは最終容量の55%になるように、吸着させたD、吸着させたTと組み合わせた。2−フェノキシエタノールの容量は0.6%であった。mIPVまたはv−IPV/PRP−Tと組み合わせる前に、殺菌状態、アルミニウム容量、2−フェノキシエタノールの容量を確認した。5mlのm−IPVおよび2−フェノキシエタノールを添加して最終の濃度になるように希釈した。A51、v−IPV、PRP−T、2−フェニキシエタノールを添加して最終強度になるように希釈した。
【0106】
多価ワクチンの臨床試験の結果を概略すれば、PRP−Tを液体状に戻すために使用したCP20/20/5/3DT―mIPVは、PENTA(登録商標)(全細胞百日咳ワクチンを含む)と同等の、ジフテリア、破傷風、ポリオ1,2,3に対する血清学的応答を発生するということが判明した。抗―PRP応答の程度は、幼児に投与した場合でも、ブースターとして投与した場合でも、PENTA(R)で観察されたと同等かそれより高い。破傷風応答は、PRP−Tとは別々に投与されたCP20/20/5/3DT―mIPVに較べて、PRP−Tを液体状に戻すために使用するCP20/20/5/3DT―mIPVよりも低いものであったが、このことは臨床的に重要なことではない。他の試験結果にも同じことが言えるが、全細胞性ワクチンは、コンポーネント百日咳ワクチンと同等かまたは高い線毛および凝集素応答を示したが、使用されている全細胞性ワクチンには高い免疫原性の線毛成分を含んでいることが知られている。その他のすべての百日咳の免疫応答の程度は、一貫して、PRP−Tを液体状に戻すために使用されたCP20/20/5/3DT―mIPVのほうがPENTA(登録商標)より強い。このように、本発明は、他の成分またはその多価ワクチンの別々の内容物により、各抗原に対する免疫応答が低下したり減退することのない多価免疫原成分を提供する。減退した免疫応答のことを時々干渉と呼ぶことがある。
【0107】
(ワクチンの調製と使用法)
このように、ワクチンとして使用できる免疫原性成分を、以下に記載するような免疫原から調製してもよい。ワクチンは免疫応答を誘発し、投与した対象は抗体を産生する。ワクチンを含む免疫成分を、液体成分またはエマルジョンのような注射可能な状態に調製してもよい。免疫原を、免疫原と混和可能で、薬学的に受け入れ可能な医薬品添加物と混合してもよい。そのような医薬品添加物としては、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、およびそのこれらの組み合わせ物質がある。免疫成分およびワクチンには、さらに湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤のような補助物質、または効果を増強するためのアジュバントを含めてもよい。免疫原性成分およびワクチンを、非経口で、あるいは、皮下による注射、筋肉内投与してもよい。免疫原性調剤およびワクチンをそのワクチンの形態に合わせて投与し、しかも、治療上効果があり、免疫原性があり、免疫防御できる量を使用する。
【0108】
投与する量は、治療対象により異なり、例えば、個人の免疫系の抗体を合成する能力や、必要な場合には、細胞性免疫応答を成立させる能力により違ってくる。投与で要求される有効成分の正確な量も、医者の判断により違ってくる。しかし、当業者には、適当な投与量の決定は容易であり、抗原をμgのオーダーで用いることができる。最初の投与およびその後のブースタ量に関する適当な治療法は多様であるが、これには最初の投与後に続けて投与する方法が含まれる得る。投与量は投与経路や宿主の大きさにより違ってくる。
【0109】
本発明にかかる免疫原性成分の免疫原濃度は、一般的には、約1〜95%である。抗原を、通常は、リン酸緩衝生理食塩水に0.005〜0.5%の濃度で溶かされたアジュバントと一緒に投与することにより、その免疫原性を有意に改善できる。アジュバントは、抗原の免疫原性を強化するが、それ自体に免疫原性をもっている必要はない。アジュバントの作用は、投与部位の近くに抗原を保持することにより貯蔵効果を発揮する、つまり、免疫系細胞に抗原を徐放する効果がある。さらに、アジュバントは、免疫系細胞を抗原貯蔵部に引き寄せ、それらを刺激して免疫応答を誘発する。
【0110】
免疫刺激剤またはアジュバンドは、例えば、ワクチンなどの宿主の免疫応答を改善させるために長年使用されている。リポ多糖のような内因性アジュバントは、通常、ワクチンとして使用される、死滅させたか、弱毒化させた細菌の成分である。外因性アジュバントは、典型的な場合では抗原に非共有的に結合している免疫調節剤であり、宿主の免疫応答を強化するように調剤されている。このように、アジュバントは、非経口で投与された抗原に対する免疫応答を強化させる作用がある。しかし、これらのアジュバントの中には、有毒で、好ましくない副作用を発生させ、そのために、ヒトおよび多くの動物に使用するには適当でないものもある。実際、現在では、水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウム(これらを総称して、ミョウバンという)だけが、ヒトおよび動物用ワクチン用の通常アジュバントとして使用されている。ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドに対する抗体応答を増加させるミョウバンの有効性は確認されている。抗原に対する潜在的な免疫応答を誘発する広範囲の外因性アジュバントがある。そのようなアジュバントとして、膜タンパク質抗原とコンプレックス結合させたサポニン(免疫刺激複合体)、鉱物油結合プルロニック(非イオン性)ポリマー、鉱物油中で死滅させたミコバクテリア、フロイント完全アジュバント、ムラミルジペプチド(MDP)やリポ多糖(LPS)のような細菌産生物、リピッドA、リポソームがある。体液性免疫応答(HIR)と細胞性免疫応答(CMI)を有効に誘導するために、しばしば、免疫原をアジュバント内で乳化させる。多くのアジュバントは、有毒であり、肉芽腫、急性および慢性炎症(フロイント完全アジュバント、FCA)、細胞溶解(サポニン及び非イオン性ポリマー)、発熱性、関節炎、前部ブドウ膜炎(LPSおよびMDP)を引き起こす。FCAは優れたアジュバントで研究用に広く使用されているが、その毒性のために、ヒトおよび動物にはその使用は承認されていない。
【0111】
理想的なアジュバントの望ましい特性として、以下のことがあげられる。
(1)毒性がないこと。
(2)長期間持続する免疫応答を誘導する作用があること。
(3)製造が簡単であること、長期の貯蔵でも安定していること。
(4)種々の経路で投与された抗原に対してCMIとHIRを誘起すること。
(5)他のアジュバントとの相乗効果があること。
(6)抗原提示細胞(APC)の多数と選択的に相互作用すること。
(7)適当なTH1またはTH2細胞特異的免疫応答を特に誘導する作用があること。
(8)抗原に対する適当な抗体イソタイプレベル(例えば、IgA)を選択的に増加する作用があること。
【0112】
ロックホフ(Lockhoff)らが取得した米国特許第4,855,282(1989年8月出願)(本出願では、参考文献として記載されている)には、N―グルコシルアミド、N−グリコシルウレア、N−グルコシルカーバメイトのようなグリコリピド類似体の糖残基をアミノ酸で置換させて、免疫調節剤またはアジュバントとして使用できることを開示している。ロックホフら(米国特許第4,855,283および参考文献60)は、グルコスフィンゴ脂質およびグリコグリセロール糖脂質のような天然のグリコリピドとの構造的類似性を有するN−グルコリピド類似体が、単純疱疹ウイルスワクチンおよび仮性狂犬病ウイルスの両方において、強力な免疫応答を誘導する能力があることを開示している。天然の脂質残基の機能を模倣するために、2・3のグリコリピドは、アノマー炭素原子により糖と直接に結合した長鎖アルキルアミドおよび脂肪酸から合成されている。
【0113】
モラニー(Moloney)らの米国特許4,258,029(譲受済み、本出願では参考文献として記載)には、オクタデシルチロシン塩酸塩(OTH)が、それを破傷風トキソイドおよびホルマリン処理による不活化ポリオウイルスI、II、III型ウイルスワクチンと複合化させた場合、アジュバントとして作用することを開示している。また、ニクソン-ジョージら(文献61)は、組み換えB型肝炎表面抗原と複合化させた芳香族アミノ酸のオクタデシルエステルが、B型肝炎ウイルスの宿主免疫応答を強化することを報告している。
【実施例】
【0114】
上記の説明により本発明の内容を概略的に述べたが、以下の例を参照することにより、さらに完全な理解が得られるであろう。これらの例は単に説明のために記載されてものであって、本発明の範囲を限定するものではない。周囲の状況により、内容の形式を変更したり、他の同等物で代替してもよい。本出願には特別な用語が使用されているが、それらは記述上の目的で使用したものであって、その用語のために発明の範囲が限定されるようなことはない。
【0115】
本特許で使用されているが、明白に記載されていないタンパク質生化学、発酵学、免疫学の方法や例については、関連科学文献に十分報告されており、当業者には分かる範囲のものである。
例1
この例は、百日咳菌(Bordetella pertussis)の培養について記載している。
(マスター・シード)
百日咳菌のマスターシード培養菌は、凍結乾燥ロットとして2℃~8℃の温度で保管した。
(ワーキング・シード(使用原料菌))
凍結乾燥した培養菌を、ホーニブルーク(Hornibrook)培地で復元し、ボーデットジンゴー(Bordet-Gengou)寒天(BGA)プレートに植菌した。ホーニブルーク(Hornibrook)培地の成分は以下の通りである。
(成分:1リットル当たり)
カゼイン加水分解物(チャーコール処理済み):10.0g
ニコチン酸:0.001g
塩化カルシウム:0.002g
塩化ナトリウム:5.0g
塩化マグネシウム・ヘキサヒドレート:0.025g
塩化カリウム:0.200g
二塩基リン酸カリウム:0.250g
デンプン:1.0g
蒸留水:1リットル以内
1%炭酸ナトリウム溶液を使用して、pHを6.9±0.1に調製する。培地をチューブの中で懸濁させ、20分間、加圧蒸気滅菌して、その後、20分間、121℃〜124℃でオートクレーブにかけた。菌を2回継代培養した。最初は、BGAプレート上で行い、次にコンポーネント百日咳寒天(CPA)で実施した。ここで使用したコンポーネント百日咳寒天(CPA)の成分は以下の通りである。
NaCl:2.5 g/L
KH2PO4:0.5 g/L
KCl:0.2 g/L
MgCl2(H2O)6:0.1 g/L
Tris塩基:1.5g/L
Casamino酸:10.5g/L
NaHglutamate:10.0 g/L
濃塩酸:pH7.2まで
寒天:15.0g/L
成長因子(CPGF):10.0ml/L。
【0116】
コンポーネント百日咳成長因子(CPGF)-100Xの成分は以下の通りである。
L−システイン HCl:4.0 g/L
ナイアシン:0.4 g/L
アスコルビン酸:40.0 g/L
グルタチオン(還元):15.0 g/L
Fe2SO4(H2O)7:1.0 g/L
ジメチルーβ―シクロデキストリン:100 g/L
CaCl2(H2O)2:2.0 g/L
最終培養物を、百日咳菌懸濁緩衝液(CPSB)に懸濁させ、2〜4mlに分液し、−60℃〜−85℃で凍結保存した。百日咳菌懸濁緩衝液(PSSB)の成分は以下の通りである。
Casamino酸:10.0 g/L
Tris塩基:1.5 g/L
無水グリセロール:100 mL/L
濃塩酸:pH7.2まで
これらのグリセロール懸濁液は、ワーキング・シード(使用菌)の調製のための出発材料を提供する。
【0117】
(培養プロセス)
コンポーネント百日咳寒天ラックスボトル(Roux bottle)の中で、使用菌の増殖を4〜7日間、34℃〜38℃で実施した。この培養の後、コンポーネント百日咳培養液(CPB)を使用して、細胞を寒天から洗い流した。試料をグラム染色して、その培養した菌の純度と不透明度について観察を行った。細胞を、CPBが入った4リットル三角フラスコに移し、振とうしながら、34℃〜38℃で20〜26時間インキュベートした。試料をグラム染色して、培養した菌の純度について点検した。フラスコをプールして、懸濁液を使用して、CPBを含む2個の発酵槽に植菌した(OD6000.1〜0.4での出発容量は10リットル)。最終のOD600が5.0〜10.0になるように増殖させた。試料をグラム染色して培養の純度について試験し、抗原特異的ELISAにより滅菌結果を点検した。
【0118】
例2
この例では、百日咳菌細胞培養物からの抗原の精製について記載している。
(培養液の作製と細胞濃度)
細菌懸濁液を2個の発酵槽に入れて、34℃〜37℃で35〜50時間培養して菌を増殖させた。発酵槽から試料を取って、培地の無菌性試験を行った。懸濁液を連続流入ディスクスタック遠心機で遠心して(12,000×g)細胞を培養液から分離した。細胞を集めて線毛成分の抽出を行った。上清溶液を、≦0.22μmの膜フィルタを通過させた。濾過された溶液を、10〜30kDa分子量限界(NMWL:NOMINAL MOLECULAR WEIGHT LIMIT)膜を使用した限外濾過により濃縮した。濃縮物を貯蔵した後、百日咳毒素(PT)、線状赤血球凝集素(FHA)、69kDa(ペルタクチン)成分の分離精製を行った。
(培養液成分の分離)
培養液成分(69kDa、PT、FHA)を、パーライトクロマトグラフィと選択的溶出ステップにより分離して精製した。この方法は、実質的には、EP特許番号336,736および上記で述べたPCT番号WO91/15505に記載されている。この特別な精製法は以下の通りである。
(百日咳毒素(PT))
パーライトカラムを、50mMトリス(Tris)、50mMトリス/0.5%トリトン(Triton)X−100および50mMトリス緩衝液で洗浄した。PT分画を、50mMトリス/0.12NaCl緩衝液を使用して、パーライトカラムから溶出させた。パーライトクロマトグラフィから取ったPT分画を、ヒドロキシルアパタイト・カラムに移して、30mMリン酸カリウム緩衝液を使用して洗浄した。PTを、75mMリン酸カリウム/225mMNaCl緩衝液を使用して溶出させた。カラムを200mMリン酸カリウム/0.6MNaClを使用して洗浄し、FHA分画を取り出し、それを廃棄した。グリセロールを50%の濃度になるまで精製PTに添加し、その混合物が、無毒化されるまで、2℃〜8℃で1週間以内の期間で貯蔵した。
(線状赤血球凝集素(FHA))
FHA分画を、50mMトリス/0.6M・NaClを使用して、パーライトカラムから溶出させた。線状赤血球凝集素をヒドロキシアパタイトを使用したクラマトグラフィにより精製した。パーライトカラムから得たFHA分画をヒドロキシアパタイトカラムに移し、0.5%トリトンX−100を含んだ30mMリン酸カリウムおよびその後30mM・リン酸カリウム緩衝液で洗浄した。PT分画を85mMリン酸カリウム緩衝液を使用して溶出させ、廃棄した。FHA分画を200mM・リン酸カリウム/0.6NaClを使用して溶出させ、無毒化されるまで、2℃〜8℃で1週間以内の期間で貯蔵した。
(69kDa(ペルタクチン))
培養液濃縮液を、注射(WFI)ができる状態にするために、水で希釈して、伝達率が3〜4mS/cmとなるようにし、さらに、パーライトカラムに、1mlのパーライト当たり0.5〜3.5mgのタンパク質が負荷されるように搭載させた。素通し流出分(69kDa成分分画)を、10〜30kDa・NMWL膜を使用した限外濾過により濃縮した。その流出分濃縮液に、その濃度が35%±3%になるように硫酸アルミニウムを添加し、その結果できた混合物を、2℃〜8℃で4±2日間で貯蔵するか、またはすぐに遠心分離にかけた(7,000xg)。余分な上清を注いで、さらに遠心分離(7,000xg)により沈殿物を集めた。69kDaペレットを、-20℃〜-30℃で凍結保存するか、またはトリスまたはリン酸緩衝液で溶解させるか、あるいは、すぐに使用した。
【0119】
パーライト素通し流出分の濃縮物の35%(w/v)硫酸アンモニア沈澱により得られた69kDa外膜タンパク質を精製した。硫酸アンモニア(リットル当たり100±5g)を69kDa分画に添加し、その混合物を2℃~8℃で少なくとも2時間撹拌した。上清を回収するために、この混合物を遠心分離(7,000xg)した。リン酸アルミニウム(1リットル当たりを100±150g)をその上清に添加し、その混合物を2℃〜8℃で少なくとも2時間撹拌した。ペレットを回収するために、その混合物を遠心分離した(7,000xg)。回収したペレットを10mMトリス、HCl(pH8)中で溶解させた。溶液のイオン強度を、15mM硫酸アンモニウムを含む10mM・トリスHCl(pH8)と等しくなるように調整した。
【0120】
69kDaタンパク質を、Q-セファロース・カラムと直列に連結されているヒドロキシルアパタイトに入れた。69kDaを素通し流出分中に集め、さらに15mM硫酸アンモニアを含む10mM・トリス・HCl(pH8)を使用してカラムから洗浄分離したものを、素通し流出分中の69kDaと一緒にプールした。69kDaタンパク質プールを、100〜300kDa・NMWLの膜上で0.15M・NaClを含む10mMリン酸カリウム(pH8)6〜10容量を使用して濾過した。限外濾過による濾過物を集め、その限外濾過物内の69kDaタンパク質を濃縮した。
【0121】
69kDaタンパク質を10mMトリスHCl(pH8)で溶剤交換をして、Q−セファロースに吸着させた後、10mM・トリスHCl(pH8)/5mM硫酸アンモニウムで洗浄した。69kDaタンパク質を50mMリン酸カリウム(pH8.0)で溶出させた。69kDaタンパク質を、10〜30kDa・NMWL膜上で0.15M・NaClを含む10mMリン酸カリウム(pH8.0)の6〜10容量で濾過した。69kDaタンパク質を、≦0.22μmフィルタを使用して滅菌濾過した。滅菌後の溶液を2℃~8℃で保存し、3カ月以内に吸着をさせた。
【0122】
(線毛凝集原)
凝集原を、培養液の分離後に得られた細胞ペーストより精製した。細胞ペーストを10mMリン酸カリウム、150mMNaCl、4M尿素を含む緩衝液内で0.05容量の細胞分画に希釈し、30分間混合した。細胞融解液を遠心分離(12,000xg)により清澄化し、その後、濃縮を行い、100〜300kDa・NMWLの膜を使用して10mMリン酸カリウム/150mM・NaCl/0.1%トリトンX−100で濾過した。
【0123】
濃縮物を80℃で30分間熱処理をして、遠心分離(9,000xg)により再清澄化した。PEG8000を、その最終濃度が4.5%±0.2%になるまで清澄化上清に添加して、最小でも30分間ゆっくりと撹拌した。その結果生成した沈澱物を遠心分離(17,000xg)により集め、そのペレットを10mMリン酸カリウム/150mMNaCl緩衝液で抽出して、線毛凝集原の粗溶液を作製した。線毛凝集原をPEIシリカを通過させることで精製した。粗溶液のリン酸の濃度を、1Mリン酸カリウム緩衝液を使用して100mMにし、PEIシリカカラム内を通過させた。
【0124】
カラムからの流出液を濃縮し、100〜300kDa・NMWLの膜を使用して、10mM・リン酸カリウム/150mM・NaCl緩衝液で濾過した。
【0125】
滅菌後の溶液を2℃〜8℃で保存し、3カ月以内に吸着をさせた。線毛凝集原溶液には、線毛Agg2及び3を、重量比で約1.5〜2:1を含み、事実上、Agg1を含んでいないことが判明した。
【0126】
例3
この例は、精製した百日咳抗原PTとFHAのトキソイド化について記載している。
【0127】
例2で記載したような純粋な形のPTを、そのPT溶液内のグルタルアルデヒド濃度を0.5%±0.1%に調整し、37℃±3℃で4時間インキュベートすることによりトキソイド化させた。濃度が0.21±0.02Mになるまで、L−アスパラギン酸を添加することにより停止させた。その後、混合物を室温で1±0.1時間放置し、さらに温度2℃〜8℃で1〜7日間放置した。
【0128】
その結果生成する混合物を、30kDa・NMWL膜フィルタを使用して、10mMリン酸カリウム/0.15M・NaCl/5%グリセロール緩衝液で濾過し、≦0.22μmフィルタを使用して滅菌濾過した。滅菌後の溶液を2℃〜8℃で保存し、3カ月以内に吸着をさせた。
【0129】
例2で記載したような純粋な形のFHAを、L−リシンとホルムアルデヒド濃度を47±5mMと0.24%±0.05%にそれぞれ調整し、35℃〜38℃で6週間インキュベートすることによりトキソイド化させた。その結果生成する混合物を、30kDa・NMWL膜フィルタを使用して、10mMリン酸カリウム/0.5M・NaClで濾過し、膜フィルタを通過させて滅菌濾過した。滅菌後の溶液を2℃~8℃で保存し、3カ月以内に吸着をさせた。
【0130】
例4
この例は精製した百日咳抗原の吸着について記載したものである。
【0131】
PT、FHA、Agg、69kDaのリン酸アルミニウム(ミョウバン)上への個別の吸着のために、濃度が18.75±1mg/mlのリン酸アルミニウムの原液を作製した。適当な容器を用意し、抗原のどれかを無菌的にその容器に分けた。最終濃度を0.6%±0.1%v/vにするために、2−フェノキシエタノールを無菌的に添加し、全体が均一になるまで撹拌した。適当な量のリン酸アルミニウムを無菌的に容器に添加した。最終濃度を3mgリン酸アルミニウム/mlにするために、適当な量の滅菌蒸留水を添加した。容器を密閉しラベルを付け、室温で4時間撹拌されるようにした。その容器を最終調整時まで放置貯蔵した。
【0132】
例5
この例は、ジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドとを組み合わせたコンポーネント百日咳ワクチンの製剤を記載することである。上記の例で記載したような百日咳抗原を、以下に述べるような数種類のコンポーネント百日咳(CP)ワクチンを提供するために、ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドを一緒に調製した。
【0133】
例1から例4において詳しく述べているような培養により増殖させた百日咳菌から百日咳菌成分を調製した。増殖が完了した後、培養液および細菌細胞を遠心分離により分離した。各抗原を個別に精製した。百日咳毒素(PT)、線状赤血球凝集原(FHA)を培養液からパーライトとヒドロキシアパタイトを使用した連続クロマトグラフィにより精製した。PTをグルタルアルデヒドを使用して無毒化させ、FHA分画に存在している残留PT(約1%)をホルムアルデヒドを使用して無毒化させた。線毛凝集原(AGG2,3)を細菌細胞から用意した。細胞を尿素で破壊し、熱処理をして、線毛凝集原をポリエチレングリコールを使用して沈澱させ、ポリエチレンイミン・シリカを使用したクラマトグラフィにより精製した。69kDaタンパク質(ペルタクチン)成分をパーライトクロマトグラフィーからの流出物(例2)から硫酸アンモニウムによる沈澱をさせて分離し、ヒドロキシルアパタイトとQ−セファロースを使用した連続クロマトグラフィにより精製した。0.22μm膜フィルタを使用して、全部の成分を濾過により滅菌した。
【0134】
標準的な方法で、培養により増殖させたジフレリア菌(Corynebacterium diphtheriae)ジフテリアトキソイドを調製した。ジフテリアトキソイドの生産プロセスを5段階に分けた。使用菌(working seed)の保管維持、ジフテリア菌の増殖、ジフテリア毒素の収集、ジフテリア毒素の無毒化、ジフテリアトキソイドの濃縮の5ステップである。
(ジフテリアトキソイドの調製)
(I)使用菌
ジフテリア菌を凍結乾燥した状態で保管した。復元菌のロットをロッフェラー・スロープ(Loeffler slope)により、温度35℃±2℃で18〜24時間増殖させ、ジフテリア培地の入ったフラスコに移した。培養した菌について、純粋であるかどうか、Lf価について検査した。残りの菌を発酵槽に移して増殖させた。
(II)ジフテリア菌の増殖
培養菌を35℃±2℃でインキュベートし、発酵槽で撹拌した。硫酸第一鉄、塩化カルシウム、リン酸溶液の予め決めておいた量を培養菌に添加した。各溶液(リン酸、硫酸第一鉄、塩化カルシム)の実際の量を実験的に各培地ごとに測定した。選択されたレベルは、最高のLf価とになるものであった。増殖周期(30〜50時間)の最後において、その培養菌をサンプリングして、その純度、Lf価を検査した。
【0135】
pHを重炭酸ナトリウムを使用して調整し、その培養菌を、温度を35℃±2℃に保温したまま、0.4%トルエンを一時間使用して不活化させた。生きたジフテリア菌が存在しないことを確認するために、滅菌性試験を実施した。
(III)ジフテリア毒素の収集
一個の発酵槽または2・3の発酵槽から取り出した、トルエンで処理した培養菌を一個の大きなタンクにプールした。およそ0.12%の重炭酸ナトリウム、0.25%チャーコール、23%硫酸アンモニウムを添加して、pHを検査した。
【0136】
混合物を約30間撹拌した。珪藻土を添加し、その混合物をデプス・フィルタに入れた。液が透明になるまで濾過物を再環流させ、その後収集してサンプリングをしてLf価を検査した。濃度を40%にするために、濾過物に追加の硫酸アンモニウムを添加した。珪藻土も添加した。この混合物を、2℃~8℃で3〜4時間放置して沈澱物を固化させた。珪藻土を濾過により除去し、硫酸アンモニウムを取り除くために、毒素を0.9%生理食塩水で透析した。透析した毒素をプールして、サンプリングによりLf価と純度を試験した。
【0137】
(IV)ジフテリア毒素の無毒化
透析の後すぐに無毒にされる。無毒化のために、毒素を、最終溶液に以下のものを含むように希釈する。
a)濃度が1000±10%Lf/mlのジフテリア毒素
b)0.5%重炭酸ナトリウム
c)0.5%ホルマリン
d)0.9%w/vL−リシン・モノ塩酸塩
この溶液を生理食塩水を加えて容量を増やし、pHを7.6±0.1%に調整した。
【0138】
トキソイドをセルロース珪藻土フィルター、及び/または膜フィルタ及び0.2μm膜フィルタで濾過して収集容器に集め、34℃で5〜7週間インキュベートした。サンプリングをして毒性を試験した。
(V)精製したトキソイドの濃縮
トキソイドをプールし、その後、限外濾過により濃縮させ、それを集めて適当な容器に入れた。サンプリングをして、Lf価と純度を試験した。保存剤(2−フェノキシエタノール)を、最終濃度が0.375%になるように添加し、pHを6.6〜7.6になるように調整した。
【0139】
トキソイドを前置フィルタと0.22μm膜フィルタ(またはその同等品)を使用した濾過により滅菌した後、濾過物を収集した。滅菌したトキソイドをサンプリングして、トキソイドのLf価、保存剤容量、純度(窒素含有量)、滅菌性、毒性に関しての非可逆性を検査した。滅菌した濃縮トキソイドを、最終製剤まで2℃〜8℃で保存した。
【0140】
(破傷風トキソイドの調製)
培地増殖させた破傷風菌(Clostridium tetani)から破傷風トキソイド(T)を調製した。破傷風トキソイドの作製プロセスを5ステップに分けることができる。使用菌の保管維持、ジフテリア菌の増殖、ジフテリア毒素の収集、ジフテリア毒素の無毒化、ジフテリアトキソイドの精製の5ステップである。
(I)使用菌
破傷風毒素のトキソイドへの変換に使用する破傷風菌を菌ロットの中で凍結乾燥した状態で保存した。この菌をチオグリレート培地に植菌して、35±2℃で約24時間増殖させた。サンプリングをして、培養物の純度を試験した。
(II)破傷風菌の増殖
破傷風培地を発酵槽に移し、熱処理をした後、冷却した。発酵槽に菌を入れ、その培養物を4〜9日、34±2℃で増殖させた。サンプルを採取して培養の純度およびLf価を検査した。
(III)破傷風菌の収集
毒素をセルロース珪藻土パッドを使用した濾過により分離した後、清澄化した毒素を膜フィルタを使用して滅菌した。サンプルを採取して、Lf価の測定と滅菌性試験を行った。毒素を30,000ダルトンのポアサイズフィルタを使用した限外濾過により濃縮した。
(IV)破傷風毒素の無毒化
毒素のサンプルを採取して、無毒化の前に、そのLf価を測定検査した。濃縮した毒素(475〜525Lf/ml)を、0.5%w/v重炭酸ナトリウム、0.3%w/vホルマリン、0.9%w/v L−リシンモノ塩酸塩を添加し、生理食塩水により容量を増加させて無毒化した。pHを7.5±0.1に調整し、その混合物を20〜30日間、37℃でインキュベートした。サンプリングをして、滅菌と毒性について試験をした。
(V)トキソイドの精製
濃縮したトキソイドを前置フイルタおよびその後0.2μm膜フィルタにより滅菌した。サンプリングをして、滅菌性とLf価について検査した。硫酸アンモニウムの最適濃度は、トキソイドの試料から決定された「S」カーブの分画化を基礎にしている。最初の濃縮液をトキソイド(1900〜2100 Lf/mlに希釈)に添加した。その混合物を少なくとも一時間20℃〜25℃で放置し、収集した上清と高分子量の分画を含む沈澱物を廃棄した。硫酸アンモニウムの第2の濃縮液を第2分画が低分子量の不純物を除去するように上清に添加した。混合物を少なくとも2時間20℃〜25℃で放置し、さらに、最大3日間2℃〜8℃で放置した。精製トキソイドである沈殿物を遠心分離と濾過で収集した。
【0141】
硫酸アンモニウムを、アミコン(Amicon)(または、同等物)限外濾過膜とPBSを使用して、トキソイド溶液からすべて完全に除去した。pHを6.6〜7.6に調整し、2−フェノキシエタノールを加えて、その最終濃度を0.375%になるようにした。トキソイドを膜濾過で滅菌して、サンプルを採取して試験をした(トキソイド、Lf価、pH、保存剤容量、純度、滅菌、毒性に関する不可逆性)。
【0142】
(多価ワクチンの調整)
ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドと組み合わせたコンポーネント百日咳ワクチンを含んだ一方の調剤をCP10/5/5/3DT(時には、クラシック:CLASSICと呼ぶ)。CP10/5/5/3DTのヒトに対する0.5mlの一回投与量には、以下の成分が含まれるように調剤する。
【0143】
10μg 百日咳トキソイド(PT)
5μg 線状赤血球凝集素(FHA)
5μg 線毛凝集原2,3(FIMB)
3μg 69kDa外膜タンパク質
15 Lf ジフテリアトキソイド
5 Lf 破傷風トキソイド
1.5 mg リン酸アルミニウム
0.6% 2−フェノキシエタノール(保存剤)
ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドと組み合わせたコンポーネント百日咳ワクチンを含んだもうひとつの調剤をCP10/5/5DT(時には、ハイブリッドHYBRIDと呼ぶ)。このCP10/5/5DTのヒトに対する0.5mlの一回投与量には、以下の成分が含まれるように調剤する。
【0144】
10μg 百日咳トキソイド(PT)
5μg 線状赤血球凝集素(FHA)
5μg 線毛凝集原2,3(FIMB)
15 Lf ジフテリアトキソイド
5 Lf 破傷風トキソイド
1.5 mg リン酸アルミニウム
0.6% 2−フェノキシエタノール(保存剤)
ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドと組み合わせたコンポーネント百日咳ワクチンを含んださらに別のもうひとつの調剤をCP20/20/5/3DTと呼ぶ。このCP20/20/5/3DTのヒトに対する0.5mlの一回投与量には、以下の成分が含まれるように調剤する。
【0145】
20μg 百日咳トキソイド(PT)
20μg 線状赤血球凝集素(FHA)
5μg 線毛凝集原2,3(FIMB)
3μg 69kDa外膜タンパク質
15 Lf ジフテリアトキソイド
5 Lf 破傷風トキソイド
1.5 mg リン酸アルミニウム
0.6% 2−フェノキシエタノール(保存剤)
ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドと組み合わせたコンポーネント百日咳ワクチンを含んださらに別のもうひとつの調剤をCP20/20/10/6DTと呼ぶ。このCP20/20/10/6DTのヒトに対する0.5mlの一回投与量には、以下の成分が含まれるように調剤する。
【0146】
20μg 百日咳トキソイド(PT)
10μg 線状赤血球凝集素(FHA)
10μg 線毛凝集原2,3(FIMB)
6μg 69kDa外膜タンパク質
15 Lf ジフテリアトキソイド
5 Lf 破傷風トキソイド
1.5 mg リン酸アルミニウム
0.6% 2−フェノキシエタノール(保存剤)
例6
この例は、コンポーネント無細胞百日咳ワクチンの臨床評価を記載したものである。
(a)成人における試験
成人および生後16〜20カ月の小児における試験では、線毛凝集原を含む5多成分ワクチンが安全で免疫原性であることを示している(表2)。
【0147】
カルガリー、アルバートにおいて、5成分コンポーネント百日咳ワクチン(CP10/5/5/3DT)とその使用による副作用に関して、フェーズI臨床試験が生後17及び18カ月の小児に実施された。33例にワクチンの投与を行い、さらに、追加的に35例に対して、同じワクチンであるが、69kDaタンパク質成分の含まれていないワクチンを投与した。
【0148】
局所反応の発生はまれであった。主として被刺激性が内容である全身的な副作用が、どのワクチンを投与したかに関係なく、試験対象者の約半数に認められた。有意な抗体の上昇が認められた。すなわち、エンザイム・イムノアッセイにより抗−PT、抗―FHA、抗―線毛凝集原、抗―69kDa・IgG抗体の上昇が測定され、CHO細胞中和試験において、抗−PT抗体の上昇が測定された。4成分ワクチン(CP10/5/5DT)を投与した小児と、5成分ワクチン(CP10/5/5/3DT)を投与した小児において、抗―69kDa抗体以外の抗体応答には、差異は検出されなかった。69kDaタンパク質を含む5成分ワクチンを投与した小児では、免疫後の抗―69kDa抗体レベルが有意に高いものであった。
【0149】
4成分ワクチンを使用した用量応答試験が、カナダのウインペグ、マニトバにおいて実施された。この試験では、二種類のコンポーネント百日咳調剤、つまり、CP10/5/5/3DTとCP20/10/10/6DTが使用された。全細胞DPTワクチンも対照として接種された。この試験は、ブースター投与をした時に、生後17〜18カ月の91例において実施した幼児における二重盲検試験であった。対象は、CP10/5/5/3DTとCP20/10/10/6DTの両方によく耐えた。いずれのワクチンを投与した場合にも、局所反応または全身反応を示した対象数に差異は認められなかった。対照的なことは、CP20/10/10/6DTワクチンを投与した小児よりも、全細胞性ワクチンを投与した小児において、有意に多く、局所および全身的反応が認められた。
【0150】
(幼児における試験)
フェーズII
CP10/5/5/3DTを使用した試験が、カナダのカルガリー、アルバータ、ブリティッシュコロンビアにおいて実施された。この試験において、生後2,4,6カ月の432例の幼児にコンポーネント百日咳ワクチンまたは全細胞性対照ワクチンDPTが投与された。対象幼児はこのCP10/5/5/3DTによく耐えた。投与後において、全細胞性ワクチンを投与した場合よりも、コンポーネントワクチンを投与した例のほうが局所性反応が少なかった。コンポーネント百日咳ワクチンを接種した場合には、全抗原に対して有意な抗体応答が認められた。全細胞性ワクチンのレシピエントは、線毛凝集原、DおよびTに対して顕著な抗体応答を示した。投与後7カ月に、コンポーネントワクチンのレシピエントの82%〜89%、全細胞ワクチンのレシピエントの92%において、線毛凝集原に対する抗体価が4倍またはそれ以上の上昇となった。これとは対照的に、コンポーネントワクチンを投与した対象では、その75〜78%においてFHA抗体応答を示したが、全細胞ワクチンの投与対象では、その31%において抗体応答を示しただけであった。コンポーネントワクチンのレシピエントの90〜93%において、抗―69kDa抗体が4倍の増加となったが、全細胞ワクチンのレシピエントにおいては75%にすぎなかった。エンザイムイムノアッセイの検査の結果、コンポーネントワクチンのレシピエントの40〜49%において、PTに対する抗体が4倍に上昇したが、全細胞ワクチンのレシピエントにおいては32%であった。CHO中和試験の結果、コンポーネントワクチンのレシピエントの55〜69%において、PT抗体の4倍の上昇があったが、全細胞ワクチンのレシピエントでは6%であった(表2)。
フェーズIIB
無作為盲検を実施して、CP20/20/5/3DTおよびCP10/10/5/3DTの評価を行った。対象は、生後2,4,6カ月の100例の幼児であり、対照は、D15PDとし、ジフテリア含有量が15Lfの場合と25Lfの場合について比較した。この含有量の2種類のワクチン間には副作用の発生率に差異はなかった。両方とも、対照である全細胞性ワクチンに較べて有意に反応性は低いものであった。エンザイムイムノアッセイ検査およびCHO中和試験の結果、抗原の含有量を増加したCP20/20/5/3DTのレシピエントにおいて、PTおよびFHAに対する高い抗体価が達成された。接種後7カ月目において、抗−FHA幾何平均抗体価は、CP20/20/5/3DPのレシピエントにおいて95.0、CP10/10/5/3DTのレシピエントにおいて45.2、D15PDのレシピエントにおいてわずかに8.9のみであった。抗―PT抗体価に関しては、それぞれイムノアッセイ検査による結果では133.3、58.4及び10.4で、中和試験では82.4、32.7及び4.0であった。
【0151】
本試験は、吸着ジフテリアトキソイドと吸着破傷風トキソイドを組み合わせ、しかも、抗原含量を増やしたコンポーネント百日咳ワクチンが、幼児において、安全であり免疫原性を発揮するものであること、抗原を増加させたことにより、副作用反応性を増加させることなく、抗原(PT、FHA)に対する免疫応答を変化させることができることを示した。
(米国国立アレルギー感染症研究所、フェーズII、比較試験)
米国において、米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の後援により、無細胞性百日咳ワクチンの大規模な有効性治検の予備段階としての、フェーズII試験が実施された。本発明にかかる、吸着させたジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドを組み合わせたコンポーネント百日咳ワクチン(CP10/5/5/3DT)が、別の12種類の無細胞性ワクチンと2種類の全細胞性ワクチンと一緒に使用された。
【0152】
コンポーネントワクチンであるCP10/5/5/3DTを投与した、生後2,4、6カ月の137例の小児における安全性に関する結果が報告された。以前の試験で認められように、このコンポーネントワクチンは安全であり、副作用反応性が低いこと、対象がよく耐えるものであることが判明している。
【0153】
接種後7カ月では、コンポーネントワクチンにおける抗−PT抗体、抗−FHA抗体、抗―69kDa抗体、抗―線毛凝集原抗体が、全細胞ワクチンの抗体レベルよりも高いかまたは同等であった(文献71,表2)。CP20/20/5/3DPまたはCP10/5/5/3DTのいずれかを、小児に無作為で割り当て投与する二重盲検試験が実施された。米国およびカナダで実施された試験では、合計で2050例の幼児が組み入れられ、1961例が試験を完了した。上記の両剤ともに安全で、反応性は低く、免疫原性を発揮した。292例の群で免疫原性が評価された。両ワクチンに含まれた全抗原に対しての抗体の上昇が認められた。CP20/20/5/3DPワクチンはFHAに対してより高い抗体価を示したが、PTに対しては示さなかった。CP10/5/5/3DTワクチンは、線毛に対して、および凝集原に対して高い抗体価を誘起した。
【0154】
さらに、フランスにおいても、安全性と免疫原性に関する試験が実施された。試験方式は、生後2,3,4カ月の小児に投与された点以外は、北アメリカで実施されたものと同じであった。局所および全身の副作用反応性は全体的に軽微であった。このフランスの試験では経口のワクチン投与であったが、対象はそれによく耐えた。
【0155】
(10,000例幼児を対象とした、2種類の無細胞性百日咳ワクチンと1種類の全細胞ワクチンに関するプラセボコントロール有効性治験)
米国でのNIAIDフェーズII比較試験に続いて実施された多施設コントロール、二重無作為プラセボコントロール有効性治験では、2成分無細胞ワクチンと5成分無細胞ワクチンが使用された。百日咳の発症率の高いスエーデンにおいて、臨床治験が実施された。使用された2成分ワクチンには、グリセルアルデヒドとホルマリンにより不活化させたPT(25μg)、ホルマリン処理したFHA(25μg)、ジフテリアトキソイド17Lf、破傷風トキソイド10Lfが含まれていた。この5成分百日咳ワクチンはCP10/5/5/3DTワクチンであった。
【0156】
この治験では、スエーデンにおけるこの年齢層の幼児の約半分に相当する10,000例の幼児が、出生届けを元に治験場所を地理的に14の場所に分割して実施された治験に参加した。
【0157】
1992年1月、2月に生まれた小児を無作為に3つのアーム(集団)に分け、口頭による同意を得た後、それらの幼児の3分の2に、2種類のジフテリア・破傷風・無細胞性百日咳の調剤のうちの1つを、生後2,4,6カ月目に投与した。対照群には、DTだけを投与した。1992年5月に、米国で認可された市販の全細胞DTPワクチンを使用して、1992年の3月から12月に生まれた小児を、無作為に4つのアームに分けて治験を行った。口頭による同意を得た後、幼児の4分の3に3種類のDTP調剤のうちの1つを、2,4,6カ月目に投与した。対照にはDTだけを投与した。
【0158】
約2,500例の小児に対して各ワクチンを投与した。ワクチンを3回の用量に分けて投与した。生後2カ月目、3カ月目以内に最初の用量のワクチンを投与した。その後、8週間の間隔をおいて投与した。ワクチンは筋肉内投与をした。
【0159】
小児とその家族を数ヶ月に亘りフォローアップした。百日咳が疑われる場合には、臨床データを集めて、鼻吸引液を使用した細菌培養とポリメラーゼ連鎖反応(PCR)診断による検査をした。急性および回復期血液サンプルを採取して血清学的診断を行った。
【0160】
この治験の実施前には、本発明にかかるコンポーネント百日咳ワクチンに含まれるペルタクチンのリスクを持っているヒト(特に、新生児)に対する有効性の程度については不明であった。特に、百日咳菌成分の種類による影響やその投与量がワクチン有効性に与える影響ついては不明であった。
【0161】
この治験の主目的は、無細胞性百日咳ワクチンと全細胞ワクチンの感染防御能力をプラセボと較べて評価することであった。
【0162】
第2の目的は、種々の症状の程度を有する百日咳感染に対するワクチンの有効性を評価することであった。ワクチンの有効性とは、ワクチンを投与したレシピエントにおける百日咳発症を抑える可能性を、投与していなレシピエントのそれと比較して百分率で示したものである。
【0163】
ワクチンを投与した2群における百日咳の相対的リスクは、その2群での疾病発病の率を比較することで判明する。百日咳発症を抑える可能性は、違った別の方法でも示すことができる。つまり、サンプルサイズの計算において、ある特定の治験群での百日咳を抑える能力は、百日咳に罹患した小児数で、治験の終了時点で治験群に残っている小児の数を除した値として与えられる。
【0164】
本治験でのコンポーネントワクチンであるCP10/5/5/3DTの百日咳感染を防御する有効性は表4に示されている通り、約85%である。同じ治験において、PTとFHAだけを含む2種類のコンポーネント百日咳無細胞ワクチンの有効性は約58%であり、全細胞ワクチンの場合には約48%である。このCP10/5/5/3DTの中程度の症状の百日咳を感染防御する有効性は約77%であると考えられる。
【0165】
例7
この例は、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の莢膜多糖を含む組み合わせ多価ワクチンの調剤と免疫原性について記載している。
(a)PRP−T成分の調剤
インフルエンザ菌由来の莢膜多糖(PRP)を精製し、下記の方法により、破傷風トキソイドと結合させた。インフルエンザ菌の使用菌ロットの凍結乾燥したアンプルから、連続3回の前培養を行った。最初の前培養は個体培地で行った。アンプルをチャーコール寒天と煮沸処理した血液(80℃で15分間加熱した10%の馬血液)中のシャーレに接種して、CO2存在下で、36℃~37℃で20±4時間インキュベートした。第2の前培養は、液体培地において37℃で8時間実施した。液体培地における1リットル当たりの成分は以下の通りであった。
1.Casamino酸 Difco:10g
リン酸モノナトリウム 2H2O:2.03g
リン酸ジナトリウム 12H2O:31.14g
乳酸ナトリム(60%溶液):1.5ml
L−システイン:0.07g
L−トリプトファン:0.02g
CaCl2・2H2O:0.02g
(NH42SO4:1 g
MgSO4・7H2O:0.4 g
ダウコーニング社・消泡剤:M.S.A
パラフィンオイル中に25%:0.15ml
2.ヘミン+デキストロースの限外濾過物(デキストロース20g:ヘミン1mg)。
【0166】
この溶液に、5mgのニコチンアミドーアデニンジヌクレオチドを添加した。フィルターで滅菌処理した。
3.酵母抽出物・Difco:5g
(フィルタ滅菌)
第3回目の前培養を液体培地で、37℃で4時間実施した。第3回目の前培養を実施して発酵槽に接種し、培養を37℃で14時間撹拌しながら維持した。培養物を冷却タンク内で収集した。10ml/リットルの濃度にホルマリンを添加した。培養物をゆっくり撹拌しながら、+4℃で2〜24時間撹拌して、その後、遠心分離を行った。ホルマリンの添加の目的は、細菌を完全には不活化するためのものではなく、増殖を抑止し、代謝を阻止するためのものであった。この添加により、細胞内成分による汚染を伴う細胞溶解を減少させた。この固定のための継続期間は2〜24時間であり、遠心分離にかける前に、この培養物を1夜放置する。多糖類を含む上清を収集して、細胞ペレットを廃棄した。精製は、フェノール精製の場合を除いて、一般的には、冷室か、または、製品と薬剤の温度が+10℃またはそれ以下で実施した。培養物の濃縮の後、その上清は濃縮した。濃縮物からの莢膜多糖を、セントリイミド(Centrimide)を添加することにより、その最終濃度が5%(w/v)になるように沈澱させた。セントリイミドは、濃縮液(SNF)からのPSを沈澱させた。タンパク質、核酸、リポ多糖(LPS)も共沈澱させた。沈澱物を、SNFに他の汚染物とタンパク質を残す遠心分離により収集した。この遠心分離により収集したペレットを、≦−20℃で保存した。そのペレットを0.3MNaCl溶液内で再縣濁して、その縣濁液を再度遠心分離した。NaClは、選択的に多糖セントリイミド複合体を溶解した。その汚染物(核酸、LPS、タンパク質)をプロセス中で解離させた。事前に冷却した無水エタノールを、最終濃度が60%になるように、上清に添加した。この結果発生した沈澱物を遠心分離により収集し、冷却した無水エタノールで洗浄した。沈澱物を真空下で温度0〜4℃で乾燥して、中間産物を得た。酢酸ナトリム中でフェノールを使用し、室温で、この中間産物を溶解した。連続遠心分離により、液相を収集した。フェノール抽出と遠心分離を数回繰り返して、液体相を透析し濾過した。濾過溶液からの莢膜多糖を、0.3M・NaClの存在下で、事前に冷却したエタノールを最終濃度が60%になるように添加することにより、沈殿させた。沈澱物を遠心分離で収集して、事前に冷却した無水エタノール、アセトン、エタノールで洗浄し、真空下4℃で乾燥させた。乾燥した沈澱物を低湿気下で微粉末に粉砕した。この沈澱物が精製したインフルエンザ菌b型の多糖を構成する。
【0167】
溶液ml当たり、5gの多糖を得るために、精製した多糖を水に溶解して、pHをNaOHを使用して10.8±0.2に調製した。臭化シアンの水溶液を、0.5mg CNBr/mg−多糖の割合で添加した。反応混合物のpHを、NaClにより、10.8±0.2に維持して、23±3℃で35~40分間放置した。さらに、このpHを、HClを添加することによりpH9まで下げた。最終濃度を3.5mg・ADH/mg−多糖にするために、アジピン酸ジヒドラジドを添加し、pHを8.5にした。
【0168】
反応混合物を23±3℃で15分間インキュベートした(pHを8.5に維持した)。その後、その溶液をゆっくり撹拌しながら、+4℃で1夜インキュベートした。反応混合物を、NaCl溶液で透析し、その後、濃縮した。その溶液を0.45μフィルタで濾過し、≦-40℃で凍結した。AH-ポリ多糖を構成するものであり、これを≦-40℃で凍結した。
【0169】
破傷風毒素成分を産生するために、破傷風菌(Clostridium tetani)を、10mlのロゼノー(Rosenow)培地とチオグリコレート培地を含む直列に連結されたチューブに接種した。ロゼノー培地には下記の成分を含む。
式(蒸留水1リットル当たりのグラム数)
ペプトン:10
肉抽出物:3
グルコース:2
塩化ナトリウム:5
「アンドレード」指示器
(5%フクシン酸):10ml
白大理石:1個
脳:1片
使用直前に用意された培地をチューブに充填し、120℃で20分間滅菌した。
【0170】
3リットルの「マサチューセッツ」培地を含む5リットルボトルに破傷風菌を接種し、16〜18時間、35±1℃で16時間ンキュベートした。その後、その内容物を、15リットルの滅菌「マサチューセッツ」培地を含む20リットルボトルに移し、35±1℃で8時間インキュベートした。各ボトルから「マサチューセッツ」培地の582リットルを含む発酵槽に接種し、35℃で5〜6日、通気をしながらインキュベートした。
【0171】
発酵槽を冷やし、その培養物に12kgの塩化ナトリウム、8kgのクエン酸三ナトリウムを添加した。1日中撹拌をして、培養の最後の段階で細菌から残留毒素の抽出をした。濾過または連続遠心分離により毒素を清澄化した。
【0172】
1200リットルの培養物からの上清を限外濾過により濃縮し、濃縮毒素を0.07M・リン酸二ナトリム(pH8.2)で濾過した。最終容量を500Lf/mに調整した。
【0173】
精製した破傷風毒素を得るために、二重硫安沈澱を実施した。硫安と、以前にすでに得ている濾過毒素の1リットル当たりに対して10gのチャーコールをゆっくりと添加する。+4℃で16〜24時間インキュベートした後、沈澱物を除去するために、毒素をカートリッジ上で濾過した。その後、全体の容量が320gm/Lになるように、ある量の硫安を以前に取得していた上清の1リットル当たりに対してゆっくりと添加した。+4℃で48時間放置した後、ペレットを遠心分離により収集し、0.05M・リン酸ジナトリム溶液(pH8.2)中で溶解させた。その溶液を0.05M・リン酸ジナトリム溶液(pH8.2)を使用して濾過した後、濃度が300Lf/mlになるように調整した。その後、溶液を濾過滅菌した。7.5μモル(0.225%)のホルムアルデヒドを毒素溶液のml当たりに対して添加した。+4℃と+22℃での中間的期間を含めて+37℃で24時間インキュベーションを実施した後に、無毒化を行った。破傷風トキソイドを得るために濾過による滅菌(0.22μ)をおこなった。破傷風トキソイドを分子量が≦50,000である膜を使用したNaClで透析して濃縮した。濃縮したタンパク質を無菌的に濾過し、+4℃で貯蔵した。AH―ポリ多糖と破傷風トキソイド(±20%)の同量を、0.05M・NaClを使用して混合し、ポリ多糖のmlあたりの濃度を7.5mgとした。その溶液のpHをpH5.7+0.2に調整し、HClと1−エチルー3−(3ジメチル・アミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)を添加して、反応混合物の最終濃度を19.17mgEDAC/mlとした。破傷風タンパク質のカルボキシル基をEDACに結合させることで活性化させた。反応条件をかすかに酸性条件として、AH−PSとEDAC活性化破傷風タンパク質が共有結合する脱水反応を起こさせた。混合物を、一定のpH(5.7)で60分間+4℃でインキュベートし、その後、NaOHを使用して、pHを6.9±0.2に調整し、反応混合物をNaClで+4℃で透析した。複合物を、スクロース勾配(4%〜60%)で、ゾーン遠心分離法により精製して、EDAC、遊離AH−ポリ多糖、遊離破傷風タンパク質、低分子量複合体を除去した。下記の成分を含む複合溶液を得るために、ポリ多糖複合体を含む分画に、発熱物質を含まない水、スクロース、トリス−HCL緩衝液を添加した。
【0174】
スクロース:8.5%W/V±0.5%
ポリ多糖:濃度約200μg/ml
トリス−HCl緩衝10mM(pH7.0±0.5)
この溶液をその後無菌的に、0.2μフィルタを使用して濾過し、-40℃で貯蔵した。
【0175】
インフルエンザ菌b型ポリ多糖複合液を、希釈液を使用して滅菌条件下で希釈して、最終成分が以下のようになるようにした。
【0176】
多糖インフルエンザb型複合物を200mgのポリ多糖に濃度調製した。
【0177】
トリスHCL緩衝液200mMを10mM(pH7.2)にした。
【0178】
スクロースを850gに、注射用水を10lにして、最終液をバイアルに充填し凍結乾燥した。(この凍結乾燥ワクチンは、使用するときには、0.5mlまたは0.4%NaClで液体状に戻した。)
(b)調剤
多価ワクチン(APDT)である2つの調剤を試験した。第1のワクチン(APDT―低)は、0.5ml用量当たり、10μgの百日咳トキソイド(PT)、5μgの線状赤血球凝集素(FHA)、5μgの線毛2、3μgの69Kタンパク質(69k)を含む。第2の調剤(APDT―高)には、上記のワクチンの2倍の量のPT(20μg)と、同量のFIMと69K(ハイブリッド)が含まれるようにした。両方の調剤には、15Lfのジフテリアトキソイド、5Lfの破傷風トキソイド、1.5mgのリン酸アルミニウム(アジュバント)、0.6%2−フェノキシエタノール(保存剤)が含まれる。上記と同じ方法で、Hib破傷風トキソイドワクチン(PRPT)がコノートラボラトリーズ社(Connaught Laboratories Inc.スイフトウオータ、米国)により生産されている。
(治験対象)
以前の臨床試験において、APDT(低)またはPRP―Tのいずれかの3回用量を、別々の注射により、生後2,4,6カ月の時に、投与された健常な、生後17〜21カ月の小児が治験に組み入れられた。書面によるインフォームドコンセントへの同意の後、これらの小児を、コンピュータベースの無作為バランスリストを基に、APDTワクチンが投与された後1カ月目、PRT−Tを、同じ日に、APDTとは別々に注射される群と、この両方を一緒に一回の注射(APDTにより凍結乾燥したPRP−Tを液体状に戻した注射液)により投与される群に割り当てた。各小児へのAPDT調剤(高または低)は、最初の3回投与されたものと同じものであった(割り当て率6:1、APDT(高):APDT(低))。ワクチンを、25mm針を使用して、腕の三角筋または、大腿が注射に不適切である時には、大腿の外側広筋の筋肉内投与した。PRP―Tに第2の注射が必要である時には、反対側の足に注射を行った。
臨床および検査モニター
試験対象者について、免疫のすぐ後に、局所的および系統的(全身的)の副作用がないかどうかを、両親が免疫後72時間モニターした。24時間目および72時間目に電話インタビューの形でデータを収集した。体温を少なくとも1日に1回または両親が小児に熱があると判断した場合に測定した。痛みと系統的(全身的)反応(被刺激性、活動減退、食欲不振)については、事前に設定された基準に従って、軽度、中等症、重度にランク付けを行い、両親は、この基準により症状の程度を、すでにある例を基に判定して選択した。測定された局所反応については、その大きさや小児が泣く時間の長さなどによりランク付けを行った。
【0179】
PRP−Tを投与した小児(それ故、APDTの投与後2カ月の小児)の血液サンプルを、免疫をする前および免疫の後28日目に、静脈穿刺または指穿刺により採取した。Hib(PRP)の莢膜多糖に対する抗体をRIAにより測定した。PTに対するIgG抗体をELAにより、PT中和抗体をチャイニーズハムスタ卵巣細胞(CHO)細胞毒性中和法により測定した。IgG抗―FHA、抗−FIM、抗―69k抗体をEIAにより測定した。抗体単位量を米国FDA基準抗血清(#3)を使用して計算した。百日咳凝集原も測定した。ジフテリア抗毒素を微細中和法により、破傷風抗毒素をEIA法により測定した。抗体価は幾何平均抗体価で示され、試験上の検出限界以下の抗体価である血清サンプルには、統計上の計算のために、低い検出限界の2分の1の値を割り当てた。
統計分析
副作用を臨床的な有意性によりグループ分けをして分析した。副作用の発生率を、ワクチン調剤を層別化変数として使用して、その相対リスクに関するマンテル・ハンツゼル(Mantel-Haenszel)予測値を基に比較検討した。RRの点予測値および95%CI(信頼区間)を各症例で推定した。1を含まないCIは統計的に有意である。抗体価を計算するために、幾何平均抗体価および95%CIを各ワクチン抗原を接種する前および接種した後に計算した。平均ログ(log)抗体価を3因子分散分析により比較した。各群における事前に特定したレベルを達成した対象の割合をロジスティック回帰分析により比較した。多重比較での調整は行わなかった。
【0180】
合計545例の小児(44%女児)が治験に組み込まれ、74%が幼児シリーズ治験を最後まで完了した。2種類の調剤を投与された治験への参加者の割合は6:1(468APDT[高]:77APDT[低])のままであった。平均年齢は、18.9カ月(17〜21カ月の範囲)であり、3小児以外はすべて治験を完了した(99.4%)。
副作用
APDT(高)とAPDT(低)との間における副作用の発生率に差異はなかった。一回の来院時に接種が別々になされたか、組み合わされて単回で注射されたかどうかに関係なく、この発生率は類似していた。
抗体反応
APDT(高)またはAPDT(低)を、最初の3回の用量で投与した小児に免疫をする前における、FHA以外のすべての抗原に対する抗体レベルは類似していた。その4倍量のFHAの量のAPDT(高)ワクチンを投与した小児では、APDT(低)で免疫した小児に較べて、有意に高い(P=0.0001)FHA抗体が認められた。免疫後において、APDT(高)は、APDT(低)よりも高い抗体価を誘導した(P=0.0001)。対照的なこととして、CHO中和またはEIAにより測定された免疫前抗−PT抗体は、2群においては類似していた。逆説的なことであるが、抗原量が2倍であったにもかかわらず、抗―PT抗体価は、APDT(低)の免疫後に較べて、APDT(高)の免疫後のほうが低かった(P=0.038)。同様に、ワクチン製剤中の線毛抗原の量が同量であったにもかかわらず、抗―FIM抗体と凝集素後免疫は、APDT(低)を投与した群において高かった(それぞれP=0.01およびP=0.04)。免疫前においては、APDTと組み合わせたPRP―Tを、無作為に、同じ日に、あるいは、別々の日に、一回の投与により、あるいは、別々の注射による投与により接種した群間には抗―百日咳抗体における差異は少なかった(表10)。APDT(高)またはAPDT(低)のレシピエントに関してのデータが個別に提示されたが、APDT(低)を投与した小児が少数であるので、これらの結果についてはこれ以上は記載しない。CHO中和分析の結果では、無作為に、同じ日にワクチンを別々に注射した群の抗―PT抗体は、2つのワクチンを別々の日に投与した群のそれに較べて、高かった(6.14:4.80ユニット、p<0.05)。この群(176ユニット)における免疫後の抗体レベルは、組み合わせたワクチンを一回に投与された群(171ユニット、p<0.01)で同様な高いレベルが認められたけれども、別々の日に、別々の注射により投与された群(122ユニット、p<0.01)に較べれば高かった。抗体応答は、組み合わせたワクチンを一回で投与された小児よりも、同じ日に2つの注射で投与された小児において高く、さらに、同じ日に2つの注射により免疫された小児のほうが、別の日に免疫された小児(243:190ユニット;p<0.001)、および別の日に2つの注射で免疫された小児に較べて、高かったけれども、抗―69K免疫後の抗体応答については、この群において認められた。
【0181】
免疫前においては、抗―PRP抗体レベルは3群において類似していた。免疫後の抗体は、別々の日に別々の注射により免疫された群28.4μg/ml;P<0.001)または組み合わされたワクチンを一回に投与された群(47.1;P<0.05)に較べて、同じ日に別々の注射により免疫された小児において高かった(66.0μg/ml)。組み合わせたワクチンの免疫の場合には、別の日に免疫した場合に較べて、有意に(p<0.05)高い抗体レベルを誘導した。「防御」レベルを成し遂げた割合においては、群間には差異は認められなかった。全部の治験参加者に、免疫後に、0.15μg/mlを超える量の抗体が認められた。4例(0.7%)だけが1μg/mlを超える量の抗体を産生できなかった(この4例のうちの3例は、別の日に、別の注射を受けた群に属し、残りの1例は、組み合わせたワクチンを一回に投与された群に属していた)。各群の82%以上の小児において、抗―PRP抗体のレベルが10μg/mlを越えた。
【0182】
ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドに対しての強い抗体応答も誘起された。別々の日に免疫された群(2.1IU/ml)と比較して、同じ日に2回の注射で免疫された(3.1IU/ml;p<0.01)小児において、または、組み合わせワクチンを一回注射して免疫された(3.3IU/ml;p<0.001)小児において、有意に高い抗―ジフテリア抗体レベルが誘起された。同じ日に2回注射して免疫した(6.7IU/ml)レシピエントのほうが、別の日に免疫した(5.2IU/ml;p<0.01)小児または組み合わせたワクチンを一回の注射により免疫した小児(4.8IU/ml;p<0.001)に較べて、抗破傷風抗体のレベルは高かった。免疫後に、0.1IU/mlを越える抗―ジフテリア、抗―破傷風の抗体価(すでに報告されているレベルの10倍)が全部の小児に認められた。抗―破傷風抗体価が96%以上、抗ジフテリア抗体価が74%以上であると、1.0IU/ml以上のレベルであり、免疫群間には差異はなかった。
【0183】
例8
この例は、不活性ポリオワクチンを含む多価組み合わせワクチンの製剤と免疫原性を記載したものである。
(a)不活化ポリオウイルスの調製
(i)MRC―5細胞内での増殖
不活化ポリオウイルス(MRC―5細胞内で増殖)を下記のように調製した。細胞をミドリザル(Ceropithacus aethiops)の肝臓細胞から採取した。
【0184】
三価ポリオウイルスの不活化ウイルスには、マイクロ・キャリア・ビーズ上のMCR−5細胞内で増殖させたI型(Maoney)、II型(MEF)、III型(Saukett)の各成分が含まれ、これを加工して、三価ポリオウイルスワクチンに組み合わせる前に、別々に不活化させた。
【0185】
MCR―5細胞の縣濁液を、pHが7.2(6.9〜7.6)で、温度が35±0.5℃である、発酵槽の中の細胞増殖培地に入れた。細胞増殖培地の成分は以下の通りであった。
【0186】
CMRL培地1969
重炭酸ナトリウム:0.15%
成牛血清:5.00%〜7.00%
硫酸ネオマイシン(活性μg):10IU/ml
ポリミキシンB:200IU/ml
CMRL培地の成分は以下の通りであった。
乾燥粉末
(成分アミノ酸:単位mg/l)
L−アラニン:25.0
L−アルギニン(遊離塩基):58.0
L−アスパラギン酸:30.0
L−システイン・HCl:0.1
L−シスチン・ジナトリウム:24.0
L−グルタミン酸・H2O:67.0
L−グルタミン:200.0
L−グリシン:50.0
L−ヒスチジン(遊離塩基):16.2
L−ヒドロキシプロリン:10.0
L−イソロイシン:20.0
L−ロイシン:60.0
L−リシン・HCl:70.0
L−メチオニン:15.0
L−フェニルアラニン:25.0
L−プロリン:40.0
L−セリン:25.0
L−トレオニン:30.0
L−トリプトファン:10.0
L−チロシン:40.0
L−バリン:25.0
ビタミン類
P−アミノ安息香酸:0.05
アスコルビン酸:0.05
d−ビオチン:1.00
パントテン酸カルシウム:1.00
コリン二水素クエン酸:2.12
葉酸:1.00
グルタチオン:0.05
i―イノシトール:2.00
ニコチンアミド:1.00
ピリドキサール・HCl:0.10
リボフラビン−5−リン酸:0.10
チアミン・HCl:1.00
有効成分:mg/l
塩化ナトリム:8000.0
塩化カリウム:400.0
塩化カルシウム(無水):140.0
硫酸マグネシウム・7H2O:200.0
リン酸ナトリウム、無水二塩基:180.0
リン酸ナトリウム(無塩基):70.0
D−グルコース(無水):1000.0
フェノールレッド:20.0
10.852gm歩留まり・1リットル培地CMRL1969。
【0187】
この培地は以下のように調製する。450リットルの発熱物質を含まない蒸留水を905mlの1N塩酸に添加した。この混合物を、5426.5gのCMRL1969乾燥粉末に、連続的に撹拌しながら、溶解されて液が透明になるまで添加した。
【0188】
下記の化学品を、連続的に撹拌しながら、各化学品が溶解するまで、以下の順序で、次の化学品を添加する前に添加した。
【0189】
ネオマイシン:10mcg/ml
ポリミキシンB:200ユニット/ml
TES緩衝溶液:5000.0ml
重炭酸ナトリウム:750.0g
ウシ血清:30.0L
新鮮な蒸留水を加えて、500Lまで容量を増やし、均一に混合するまで撹拌した。細胞増殖をモニターし、増殖が対数期になると、使用した増殖培地を廃棄し、ウイルス増殖培地で取り換える。ウイルス増殖培地の成分は以下の通りであった。
【0190】
イーグル塩を含んだ培地199の化学成分
重炭酸ナトリウム:0.26%
トゥエーン80(Tween 80):20ppm
硫酸ネオマイシン(活性μg):10IU/ml
ポリミキシンB:200IU/ml
L−グルタミン:100mg/l
L−アルギニン:29mg/l
L−ロイシン:30mg/l
L−イソロイシン:10mg/l
L−メチオニン:7.5mg/l
L−セリン:12.5mg/l
L−トレオニン:15mg/l
L−システイン:10mg/l
コリン二水素クエン酸:107mg/l
CMRL199培地の成分は以下の通りである。
乾燥粉末
(成分:単位mg/l)
L−アラニン:25.0
L−アルギニン(遊離塩基):58.0
L−アスパラギン酸::30.0
L−システイン・HCl・H2O:0.1
L−シスチン・ジナトリウム:24.0
L−グルタミン酸H2O:67.0
L−グルタミン:100.0
グリシン:50.0
L−ヒスチジン(遊離塩基):16.2
L−ヒドロキシプロリン:10.0
L−イソロイシン:20.0
L−ロイシン:60.0
L−リシン:70.0
L−メチオニン:15.0
L−フェニルアラニン:25.0
L−プロリン:40.0
L−セリン:25.0
L−トレオニン:30.0
L−トリプトファン:10.0
L−チロシン:40.0
L−バリン:25.0
p−アミノ安息香酸:0.050
アスコルビン酸:0.050
d−ビオチン:0.010
パントテン酸カルシウム:0.010
コリン二水素クエン酸:1.060
葉酸:0.010
グルタチオン:0.050
i―イノシトール:0.050
メナジオン:0.010
ニコチンアミド(ナイアシンアミド):0.025
ニコチン酸(ナイアシン):0.025
ピリドキサール・HCl:0.025
ピリドキシン・HCl:0.025
リボフラビンー5−リン酸:0.010
チアミンHCL:0.010
酢酸ビタミンA:0.100
ビタミンD(カルシフェロール):0.100
ビタミンE(トコフェロール・リン酸):0.010
硫酸アデニン:10.000
アデノシン三リン酸:1.000
アデノシンー5−リン酸:0.200
デオキシー2−リボース:0.500
d−リボース:0.500
コレストロール:0.200
グアニン:0.300
ヒポキサンチン:0.300
培養物を適当なシード・ウイルスで感染させた(感染多重度)。感染は36±1℃で起こるようにした。ウイルスのC・P・Eが完全になった時に培養物を2~15℃に冷やした。
【0191】
集めたウイルス液を濾過により清澄化した。集めたウイルス容量を、分子量100,000でカットする膜限外濾過により、0.04Mリン酸緩衝液で濾過するのに適当な量に減少させた。濾過の後、容量をさらに濃縮して、ゲル濾過のできるまで量まで減少させた。生ワクチン濃縮物のサンプリングをして2〜8℃で貯蔵した。
【0192】
生きたウイルス濃縮物をゲル濾過カラムに入れて、そのカラムから0.04M・リン酸緩衝液で溶出させた。ウイルス分画を254と280nmでのカラム溶出物の光学的濃度をモニターすることにより集めた。
【0193】
第2の精製ステップを、溶出緩衝液として0.04M・リン酸を使い、DEAEイオン交換媒体物により実行した。254nmと280nmでの光学濃度をモニタしながら、使用したイオン交換媒体の量が不十分であれば、上記のステップを繰り返した。
収集したウイルス分画を濃縮し、リン酸含有を減らすために、ハンクス特別培地を使用して透析した。ハンクス特別培地の成分は以下の通りであった。
(アミノ酸:単位mg/l)
D、L―アラニン:25.00
L−アルギニン・HCl:58.00
D、L−アスパラギン酸:30.00
L−システイン・HCl・H2O:0.10
L−シスチン・2HCl:26.00
D、L−グルタミン酸:67.00
L−グルタミン:100.00
グリシン:50.00
L−ヒスチジン・HCl・H2O:16.20
L−ヒドロプロリン:10.00
D、L−イソロイシン:20.00
D、L―ロイシン:60.00
L−リシン・HCL:70.00
D,L―メチニオン:15.00
D、L−フェニルアラニン:25.00
L−プロリン:40.00
D、L−セリン:25.00
D、L−トレオニン:30.00
D、L−トリプトファン:10.00
L−チロシン(ジナトリウム塩):40.00
D、L−バリン:25.00
ビタミン
アスコルビン酸:0.050
d−ビオチン:0.010
ビタミンD(カルシフェロル):0.100
D−パントテン酸カルシウム:0.010
塩酸コリン:1.060
葉酸:0.010
i―イノシトール:0.050
(ミネラル塩:単位mg/l)
塩化カルシウム(無水):40.00
硝酸鉄・9H2O:0.10
塩化カリウム:400.00
塩化ナトリウム:8000.00
硫酸マグネシウム・7H2O:200.00
(その他の成分:単位mg/l)
硫酸アデニン:10.000
アデノシン三リン酸(ジナトリム塩):1.000
アデニル酸:0.200
dαリン酸トコフェロール(ナトリウム塩):0.010
コレステロール:0.200
デオキシリボース:0.500
グルコース:1000.000
グルタチオン:0.050
グアニン・HCl:0.300
ヒポキサンチン(ナトリウム塩):0.300
リボース:0.500
酢酸ナトリウム・3H2O:81.500
チミン:0.300
トゥエーン80:20.000
ウラシル:0.300
キサンチン(ナトリム塩):0.300
メナジオン:0.010
ニコチン酸:0.025
ニコチンアミド:0.025
p−アミノ安息香酸:0.050
ピリドサール・HCl:0.025
ピリドキシン・HCl:0.025
リボフラビン−5−リン酸:0.010
チアミンHCl:0.010
ビタミンA(酢酸):0.140。
【0194】
精製したウイルス分画を0.2μの多孔フィルターを使用して濾過した。複数の精製ウイルス濃縮分画を不活化のためにプールした。ELISA試験結果に基礎をおいて一価ウイルスプールを希釈した。
型I:1750±250DU/ml
型II:1500±250DU/ml
型III:1250±250DU/ml(ハンクス特別培地)
一価プールを37±1℃まで加温し、その後、0.2μの多孔フィルターを使用して濾過をした。
【0195】
濃度を1:4000にするために、必要なホルマリン量を添加した。ウイルスプールとホルマリンを混合して、37±1℃の温度で連続で撹拌した。一価ウイルスプールのサンプルを採取して生存率を検査した。第6日目に、不活化ウイルスプールを0.2μのフィルターを使用して濾過を行って、37±1℃で保温した。不活化から13日目に、ウイルスプールを2μのフィルターを使用して濾過した。
【0196】
複数の不活化一価成分を選択し無菌的にプールタンクに移した。さらに、この一価プールを分子量100,000でカットする膜限外濾過により濃縮した。RIV−PBS希釈液:
リン酸水素ジナトリウム(Na2HPO4)、0.346g/CCml
リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、0.187g/CCml
をTweenとともに使用して、これに対しての透析を最終製剤が均一になるように行った。
【0197】
最終濃度が0.5%になるように、アルブミン(ヒト)を添加した。その後、プールした一価の濃縮液を0.2μのフィルターを使用して濾過した。
【0198】
推定(計算)により、0.5ml当たり10~15用量になるように、トゥエーン(Tween)を含んだRIV−PBS希釈液を添加した。プールした濃縮液を使用する時間まで2〜8℃で保管した。
【0199】
型I、型II、型IIIの一価成分の適当な用量を計算し組み合わせた。三価のワクチンには以下のものを含むようにした。
【0200】
型I:40 DU/0.5ml用量
型II:8 DU/0.5ml用量
型III:32 DU/0.5ml用量
三価の濃縮液を使用する時まで2〜8℃で保管した。ホルムアルデヒドと2−フェノキシエタノールを加えて混合した。計算により濃度が0.5%になるようにアルブミン(ヒト)を加えた。
(ii)ベロ細胞内での増殖
ベロ(Vero)細胞をアンプルに入れて、選択した細胞継代数になるまで、継代培養した。この細胞をアンプルに入れた状態で、液体窒素で保管した。細胞を、表面にDEAEの基を有するデキストランポリマー(ジエチルアミノエチル)で構成されている直径が約100ミクロンの球形ビーズであるマクロサポートビーズ(これが陽電荷を与える)を使用して増殖させた。
【0201】
細胞増殖の基礎培地は、Earle生理食塩水溶液に0.2%のラクトアルブミン加水分解物、0.1%のデキストロース、5%の子ウシ血清を入れた「イーグルの最小必須培地」であった。この培地のml当たりの成分は以下の通りであった。
【0202】
ストレプトマイシン:ml当たり75ユニット
ネオマイシン:ml当たり14ユニット
硫酸ポリミキシンB:ml当たり35ユニット
ベロ細胞を、バイオジェネレータのサイズを順次に大きくしながら、順番に継代培養をした。その後、培地と、培地のリットル当たりの十分な量のマイクロサポートビーズを産業用のバイオジェネレータに入れた。温度を37℃で安定化させた。トリプシン化により収集した細胞を撹拌しながら加えた。連続培養を、撹拌の速度を順番に増加させながら37℃で4〜7日間実施した。通常、培養の最後において、細胞増殖が6〜20倍増加する。ウイルスの増殖に使用された培地は、Earle生理食塩水中の199培地(パーカ)を使用し、0.1%デキストロースで強化した。この培地には、細胞増殖のために培地と同じ濃度で、同じ抗生物質を含むが、子ウシ血清は含んでいない。細胞増殖の第4日目、第7日目に、撹拌している工業的な段階にあるバイオジェネレータを停止させ、タンクの底にビーズを固定させて、古い培地を除去した。血清の入っていない199培地を各バイオジェネレータに入れて撹拌した。その後、この培地を引き出してビーズと細胞を洗浄した。血清の入っていない199培地を、必要な量の使用菌と一緒にバイオジェネレータに移した。ゆっくりと撹拌して、ウイルスを細胞に吸着させた。ウイルスの培養の最後において、撹拌を停止した。ウイルスの縣濁液を取り出して、収集しビーズを濾過した。ウイルスの縣濁液をホモジェナイザー処理した。ポアサイズが0.20mmである有機膜により濾過したウイルスを+4℃で保存した。このウイルスを限外濾過により濃縮した。DEAEデキストラン・スフェロシル・サポートを使用し、0.04Mリン酸緩衝液(pH=7.00)で均衡させた、イオン交換クロマトグラフィにより、ウイルスをさらに精製した。そのウイルスを、さらに、アガロースゲルおよび0.04Mのリン酸(pH=7.00)で緩衝させたセファロシスCL−6Bを含んだゲル濾過クロマトグラフィにより精製した。0.04Mのリン酸緩衝液(pH=7.00)で緩衝させたDEAEデキストラン・スフェロシルを使用したクロマトグラフィにより精製した。最後の精製が実施されるとすぐに、ウイルス縣濁液の量を、リン酸の入っていないM−199培地(pH=7.0)を使用して、必要なレベルに調整し、5mgのEDTA、0.5%グリセリン、トゥエーン80で10回濃縮して、最終濃度を50mg/lとした(不活化培地)。「濃縮ウイルス混合液」は、この混合液から成っており、これを、0.2μmの膜フィルターを使用して濾過した。濃縮したウイルス縣濁液を+4℃で保存した。
【0203】
上記の同じ型の「濃縮ウイルス混合液」の1ロットまたは数ロットを混合し、その用量を、適当なタンクに入れた「不活化培地」を使用して、希釈または調整した。以下の範囲のD抗原の抗体を得るために、その希釈液を、型に従って、正しい用量になるように調整した。
・型1では、1500および2000Dユニット
・型2では、800および1000Dユニット
・型3では、1000および1500Dユニット
そして、そのタンパク質の割合が以下の通りである。
・型1では、≦40μg/ml
・型2では、≦70μg/ml
・型3では、≦30μg/ml
調整した精製濃縮ウイルス縣濁液を、不活化を始める前に、0.22μm膜を使用して最長72時間濾過した。このウイルス縣濁液を再度+37℃まで加温した。不活化のために、濃度を1/4000にするために、ホルムアルデヒド溶液を追加した。24,48,72、96時間後に、不活化の状態を確認するために、最初の4日間サンプルを採取した。10mlのサンプリングを実施し、すぐに亜硫酸水素塩ナトリウムを使用してホルムアルデヒドの中和を行った。これを-20℃で保存して滴定を行った。
【0204】
6日目に、不活化させているウイルス縣濁液を0.22μmフィルタを使用して濾過した。濾過後に、6日間以上に亘り一定の撹拌をしながら、+37℃で濾過後の液体のインキュベーションを実施した。不活化を開始してから9日目に、3000ヒト投与量に相当する量と、最低500mlの粗収穫物を取り出した。この容量を、「濃縮ウイルス混合液」のD抗原に対する抗体価に従って計算した。残留ホルムアルデヒドの作用を止めるために、サンプリングした試料を、直接に亜硫酸水素塩ナトリウムを使用して中和した。12日目の不活化の後、ホノナイナイザー処理をして不活化させたウイルス縣濁液を、37℃のインキュベータから取り出した。この溶液を亜硫酸水素塩ナトリウムを使用して中和し、+4℃で保存した。
【0205】
IPVの濃縮三価ロットを調整するために、一価の調剤を組み合わせて下記の抗原が得られるようにした。
・型1(Mahoney) 400抗原Dユニット
・型2(MEF-1) 80抗原Dユニット
・型3(Saukett) 320抗原Dユニット
199培地(pH7.2)1ml
混合液を撹拌して、0.22μm多孔膜フィルタで均一濾過を行った。
【0206】
濃縮した三価の液体ロットから、0.5ml当たりのユニット抗原量が下記の量になるように、フェノールレッドを使用することなく、199培地(pH7.2)を使用した希釈プロセスにより最終製品を得るようにした。
・型1では、40ユニットのD抗原
・型2では、8ユニットのD抗原
・型3では、32ユニットのD抗原。
(b)調剤
多価ワクチン調剤(APDT)には、0.5ml当たり、5種類百日咳抗原(10μgのPT、5μgのFHM2,5μgのFIM2及び3、3μgの69K)、15Lfのジフテリアトキソイド、5Lfの破傷風トキソイド、1.5mgのリン酸アルミニウム(アジュバント)、0.6%の2−フェノキシエタノール(保存剤)が含まれるようにした(クラシック:CLASSIC)。
【0207】
このワクチンは、単独で、あるいは 、MRC−5細胞内で増殖させて得たIPV(mIPV)または、ベロ細胞内で増殖させて得たIPV(vIPV)またはOPV(コノートラボラトリーズ社)と組み合わせて使用した。これらの抗原の通常の免疫スケジュールを乱さないように、フォローアップのために来院した際に、インフルエンザ菌b型―破傷風トキソイド複合ワクチンを投与した。
(治験対象)
生後8カ月目の時に、DTPの3用量とOPVの2用量またはDTP−IPVの3用量で免疫した健常な17〜19カ月の小児を対象とした。両親または保護者の書面による同意を得た後、コンピュータベースの無作為均衡ブロックリストに従って、対象小児を割り振って、5ワクチンのうちのどれか1つを投与した(表10)。A3DTを含む組み合わせワクチンを25mm針を使用して腕の三角筋または、三角筋の部位が不十分な場合には、大腿の外側広筋に穿刺を行い筋肉内投与した。IPV(0.5ml;mIPVまたはvIPV)を単独で投与する場合には、長さが1/2〜 5/8インチ(12.5〜16mm)の針を使用して、皮下投与をし、ワクチンを含むAPDTは左足肢に投与し、不活化ポリオワクチンを別に投与する場合及び2回目の来院で全部に対してインフルエンザ菌b型複合ワクチンを投与するときには、右足肢を使用した。
臨床試験および検査モニター
免疫をする前、および、免疫をした後28日目に、静脈穿刺または指穿刺により、血液サンプルを採取した。PTに対するIgG抗体をエンザイムイムノアッセイにより、PT―中和抗体をCHO中和法により測定した。IgG抗−FHA、抗―FIM、および抗―69K抗体をエンザイムイムノアッセイにより測定し、抗体価をUS・FDA基準抗血清(#3)を使用して計算した。百日咳凝集原も測定した。ジフテリア抗毒素をマイクロ中和法により、破傷風抗毒素をイムノアッセイにより測定した。抗体ポリオウイルス型1,2,3をウイルス中和法により測定した。抗体価を幾何平均抗体価として表した。試験検出限界値以下の抗体価の血清サンプルには、統計計算のために、低いほうの検出限界値の2分の1を割り当てた。免疫をする前後に、各ワクチン抗原に対する抗体価を算出するために、幾何平均抗体価および95%信頼区間を計算した。平均対数抗体価における増加をプロファイル分析と分散分析により比較した。各群における事前特定のレベルに到達した対象の割合をロジステック回帰分析により比較した。別々に投与されたか、または、組み合わせて投与されたかのいずれかの各ポリオウイルス・ワクチン間、および、mIPVおよびvIPV間、および、組み合わせたIPVワクチンとOPV間の比較を行った。多重比較での調整は実施しなかった。
【0208】
合計425例の小児(52%は女児)を治験に組み入れて、ブースター免疫を行った(表10)。平均年齢は17.8カ月(範囲は17.0〜20.0)であった。免疫後の血清試料を、免疫後平均29.2日目に422(99.3%)例の参加小児から採取した(28〜41日の範囲)。重篤と分類された副作用はまれであった。
【0209】
免疫前には、大抵の抗原に対して群間の抗体価レベルは同等であった。例外は、APDTおよびmIPVを別々の注射により投与した群での抗―FIM、抗―凝集原、抗―ジフテリア、抗―破傷風抗体レベルが、組み合わせたAPDT−mIPVワクチンを投与した群に比べて低かったことである。同様に、APDTおよびvIPVを別々の注射により無作為に投与した群での抗―破傷風抗体レベルが、組み合わせたAPDT−vIPVを投与した群に比べて低かった。免疫後では、すべてのワクチン投与群において、ワクチンに含まれているすべての抗原に対して、抗体価の有意な上昇が認められた。ポリオワクチンの群では、百日咳抗原に対する抗体応答における差異はわずかしかない。エンザイムイムノアッセイまたはCHO中和による抗−PT抗体または抗−FAH抗体での差異はない。抗―69K抗体は、別々の注射によりmIPV(37.9ユニット;p<0.001)を投与した群またはOPV(47.7;p<0.05)を投与した群に比べて、APDT(77.7ユニット)と組み合わせたmIPVワクチンを投与した群において有意に高かった。抗―FIM抗体および抗―凝集原抗体も、別々に注射された群に比べて、組み合わせたAPDT−mIPVを投与した群において、そのレベルが高かったが、これらの同じ差異が事前免疫した血清にも検出された。
【0210】
抗―ポリオウイルス抗体応答において差異は検出されなかった。APDT−mIPVおよびAPDT−vIPVの両方において、高い抗―ポリオウイルス型1,型3抗体が誘起された(全比較において、p<0.001)。抗ポリオウイルス型2抗体レベルも、OPV(7185)を投与した群に比べて、APDT−mIPV(10,633、相互希釈)およびAPDT―vIPV(10,256)を投与した群において高かったが、このことから、APDT−mIPV(p<0.05)に関してのみ統計的有意性が認められた。抗―ポリオウイルス抗体についても、APDT―MIPVと組み合わせた群において、別々の注射で投与した群よりも高かった(6620―1、p<0.05)。OPVのレシピエントにおいて、IPVの組み合わせがいずれの場合も、抗―破傷風抗体価が高かった(p<0.05)。抗―ジフテリア抗体価も、OPV投与群において高かったが、これは、APDT−vIPVの投与群(p<0.05)と比べた場合の統計的な意味においてである。免疫後、小児全部において、ジフテリア、破傷風に対する抗体が0.01IU/mlを超えていた(1例だけは、0.1IU/mlの抗体価であった)。
【0211】
この研究の結果の示すところは、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドを組み合わせたPT、FHA、69K、FIMを含む成分性百日咳ワクチンを、不活化したポリオウイルス・ワクチンに組み合わせて投与しても、その副作用反応性や免疫原性に有意な増減がないということである。全細胞DTPの試験結果と対照的に、百日咳抗原に対する抗体応答に減少は認められなかった。MMC―5細胞内増殖あるいはベロ細胞内増殖のいずれにより得たIPVワクチンの投与群間においても実質的な差異は認められなかった。これらは両方とも、OPVよりも高いレベルの抗―ポリオウイルス抗体を誘発した。mIPVであってもvIPVであってもそれらが同等であるということは、細胞から得たIPVを優先的に組み合わせた無細胞性百日咳ワクチンとして使用できるということである。
【0212】
この例から判明したことの結論は、5成分無細胞性百日咳ワクチンは、2種類のIPVワクチンのいずれとも組み合わせて、第4番目のワクチンとして、生後17〜19カ月の小児に、安全に使用できるということである。
【0213】
【表3】

【0214】
【表4】

【0215】
【表5】

【0216】
【表6】

【0217】
【表7】

【0218】
【表8】

【0219】
【表9】

【0220】
【表10】

【0221】
【表11】

【0222】
【表12】

【0223】
【表13】

【0224】
【表14】

【0225】
【表15】

【0226】
【表16】

【0227】
【表17】

【0228】
【表18】

【0229】
【表19】

【0230】
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)精製した状態の、百日咳トキソイド、線状赤血球凝集素、ペルタクチン及び凝集原、
(b)破傷風トキソイド、
(c)ジフテリアトキソイド、及び
(d)担体分子とインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型の莢膜多糖との複合体を含み、
宿主にin vivo投与するワクチンとして調剤された、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)及びインフルエンザウイルス(Haemophilus influenzae)の少なくとも1種の感染が原因となる疾病に対する宿主内防御を与える多価免疫原性組成物であって、
該組成物中の各成分が、その免疫原性が該組成物中の他の成分により障害を受けないように調剤化されていることを特徴とする多価免疫原性組成物。
【請求項2】
前記担体分子が、破傷風トキソイド及びジフテリアトキソイドから選択される請求項1に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項3】
更にアジュバントを含む請求項1または2に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項4】
アジュバントが水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムである請求項3に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項5】
ヒトへの1回の投与用量に、前記百日咳菌トキソイドが5〜30μg窒素の量で、前記線状赤血球凝集素が5〜30μg窒素の量で、前記ペルタクチンが3〜15μg窒素の量で、前記凝集原が1〜10μg窒素の量でそれぞれ存在する請求項1〜4のいずれかに記載の多価免疫原組成物。
【請求項6】
ヒトへの1回の投与用量に、20μg窒素の前記百日咳菌トキソイド、20μg窒素の前記線状赤血球凝集素、5μg窒素の前記ペルタクチン及び3μg窒素の前記凝集原を含む請求項5に記載の多価免疫原組成物。
【請求項7】
前記ジフテリアトキソイド(b)が10〜20Lfsの量で、前記破傷風トキソイド(c)が1〜10Lfsの量で存在していいる請求項1〜6のいずれかに記載の多価免疫原性組成物。
【請求項8】
前記ジフテリアトキソイド(b)が15Lfsの量で、前記破傷風トキソイド(c)が5Lfsの量で存在している請求項7に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項9】
前記複合体(d)が、凍結乾燥状態で供給され、該多価免疫原性組成物の成分によって該多価免疫原性組成物中で復元されたものである請求項1〜8のいずれかに記載の多価免疫原性組成物。
【請求項10】
ヒトへの1回の投与用量に、前記多価免疫原性組成物が、5〜15μgPRPの量で前記複合体を含み、該複合体は15〜35μgの破傷風トキソイドと複合している請求項1〜9のいずれかに記載の多価免疫原性組成物。
【請求項11】
ヒトへの1回の投与用量に、前記多価免疫原性組成物が、10μgPRPの量で前記複合体を含み、該複合体は20μgの破傷風トキソイドと複合している請求項1〜9のいずれかに記載の多価免疫原性組成物。
【請求項12】
医薬用である請求項1〜11のいずれかの多価免疫原性組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−121981(P2011−121981A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24221(P2011−24221)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【分割の表示】特願2006−165354(P2006−165354)の分割
【原出願日】平成9年7月2日(1997.7.2)
【出願人】(500096994)サノフィ パスツ−ル リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR LIMITED
【Fターム(参考)】