説明

多元系合金磁性ヒドロゾルおよびその製造方法

【課題】飽和磁化および保磁力が高く、しかも水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒に安定に分散された磁性ヒドロゾルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】A多元系合金と、SH基およびCOOH基を有する分散剤、またはSH基およびOH基を有する分散剤と、水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒とを含み、A多元系合金が水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒中に分散されている〔A:Fe、Co;B:Pt、Pd;M:周期律表の7族〜11族の元素;x>0、y>0、z≧0〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多元系合金磁性ヒドロゾルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FePt系磁性粒子に代表されるCuAu型合金磁性粒子は、規則化時に発生する歪みのために、結晶磁気異方性が大きい。粒子サイズを小さくし、いわゆるナノ粒子といわれる状態としても強磁性を示すことから、磁気記録媒体の記録密度向上に有望な素材として広く知られている。
【0003】
最近、磁性粒子を用いた診断、治療などの医療分野が注目を集めている中で、ナノ粒子で飽和磁化の大きいものが求められており、酸化鉄以外にFePt系ナノ粒子が注目されている。一方、歯科治療におけるインプラント用途としては、飽和磁化、保磁力とも大きいものが求められている。上記の用途においては、磁性を持つヒドロゾルが必要とされている。さらに、上記以外の用途においても、磁性ヒドロゾルの利用される可能性があり得る。
【0004】
上記に関連する技術として、核酸を捕集する酸化鉄粒子が開示されており、これらの酸化鉄粒子はシリカで被覆されていることが示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。また、生理活性物質を固定化するための磁性複合粒子、特に、磁性粒子表面にキトサン層を複合化した複合磁性粒子が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2003−102473号公報
【特許文献2】特開2003−104996号公報
【特許文献3】特開2004−31792号公報
【特許文献4】特開2005−296942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまでに開示されている文献等に示されている磁性粒子では、飽和磁化が足りず、保磁力の点で不充分であった。しかも、磁性粒子の水や親水性溶媒中での分散安定性も必ずしも充分ではなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、飽和磁化および保磁力が高く、しかも水や親水性溶媒に安定に分散された多元系合金磁性ヒドロゾルおよびその製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> A多元系合金と、SH基およびCOOH基を有する分散剤、またはSH基およびOH基を有する分散剤と、水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒とを含み、前記水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒中に前記A多元系合金が分散されている多元系合金磁性ヒドロゾルである。
多元系合金において、AはFeまたはCoを表し、BはPtまたはPdを表し、Mは周期律表の7族から11族までの元素を表し、MはAおよびBと同一元素を同時に表すことはない。x>0、y>0、z≧0を表す。
【0008】
<2> 前記A多元系合金は、水または親水性溶媒中に分散された状態で、さらにゾルゲル膜で被覆されていることを特徴とする前記<1>に記載の多元系合金磁性ヒドロゾルである。
【0009】
<3> 前記A多元系合金は、AおよびBの比率(x,y)が25原子%以上75原子%以下であり、Mの比率(z)が1原子%以上50原子%以下であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の多元系合金磁性ヒドロゾルである。
【0010】
<4> 逆ミセル法で製造されたことを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の多元系合金磁性ヒドロゾルである。
【0011】
<5> SH基およびCOOH基を有する分散剤、またはSH基およびOH基を有する分散剤を用いて、逆ミセル法によりA多元系合金を水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒中に分散してA多元系合金磁性ヒドロゾルを製造する多元系合金磁性ヒドロゾルの製造方法である。
上記同様、AはFeまたはCoを表し、BはPtまたはPdを表し、Mは周期律表の7族から11族までの元素を表し、MはAおよびBと同一元素を同時に表すことはない。x>0、y>0、z≧0を表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飽和磁化および保磁力が高く、しかも水または親水性溶媒に安定に分散された多元系合金磁性ヒドロゾルを提供することができる。また、
本発明によれば、飽和磁化および保磁力が高く、しかも水または親水性溶媒に安定に分散されたA多元系合金磁性ヒドロゾルを作製することができる多元系合金磁性ヒドロゾルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の多元系合金磁性ヒドロゾルおよびその製造方法について、詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づくものであるが、本発明は下記のような実施態様に限定されるものではない。また、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
本発明の多元系合金磁性ヒドロゾルは、A多元系合金〔AはFeまたはCoを表し、BはPtまたはPdを表し、Mは周期律表の7族から11族までの元素を表し、MはAおよびBと同一元素を同時に表すことはない。x>0、y>0、z≧0を表す。〕と、SH基およびCOOH基を有する分散剤、またはSH基およびOH基を有する分散剤と、水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒とを含有し、水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒中にA多元系合金が分散された水性ゾルである。また、必要に応じて、他の成分を用いて構成することができる。
【0015】
<A多元系合金>
本発明の多元系合金磁性ヒドロゾルは、A多元系合金の少なくとも一種を含有する。本発明においては、磁性粒子としてA多元系合金を用いるので、高い飽和磁化と高い保磁力を得ることができる。
【0016】
本発明におけるA多元系合金において、AはFeまたはCoを表し、BはPtまたはPdを表し、Mは周期律表の7族から11族までの元素を表し、MはAおよびBと同一元素を同時に表すことはない。
ここで、x,y,zはそれぞれ、多元系合金中に存在する元素A、元素B、元素Mの各原子比率(%)を表し、x>0、y>0、z≧0を満たす。すなわち、本発明におけるA多元系合金には、ABMの3元系合金およびABの2元系合金の双方が含まれる。
【0017】
多元系合金を構成する元素A/Bの組み合わせとしては、Fe/Pt、Fe/Pd、Co/Pt、およびCo/Pdのいずれでもよく、高い飽和磁化および保磁力を得る点で好ましくは、Fe/PtまたはFe/Pdである。
【0018】
AB2元系合金の場合、より高い飽和磁化および保磁力を得る観点から、元素Aの比率(x)が25原子%以上75原子%以下であって、元素Bの比率(y)が25原子%以上75原子%以下である場合が好ましい。より好ましくは、比率xが40原子%以上60原子%以下であって、比率yが40原子%以上60原子%以下である場合である。
【0019】
前記比率zがz≠0である場合、A多元系合金は3元系合金である。この場合、前記元素Mは、周期律表の7族から11族までの元素から目的等に応じて選択することができる。Mとして好ましくは、Mn、Ni、Cu、Ru、Rh、Os、Ir、Ag、Auであり、高い飽和磁化および保磁力を得る点から、Mn、Ni、Ag、Auがより好ましい。
【0020】
ABM3元系合金の具体例としては、下記合金を好適に挙げることができる。ここで、下記合金には、A/BがFe/Pt、Fe/Pd、Co/Pt、またはCo/Pdである場合の全てが含まれる。例えば、
A/B/Ag、A/B/Au、A/B/Mn、A/B/Ni等である。
上記のうち、本発明の効果の点で好ましくは、Fe/Pt/Ag、Fe/Pd/Ag、Co/Pt/Ag、Co/Pd/Ag、Fe/Pt/Au、Fe/Pd/Au、Co/Pt/Au、Co/Pd/Au、Fe/Pt/Mn、Fe/Pd/Mn、Co/Pt/Mn、Co/Pd/Mn、Fe/Pt/Ni、Fe/Pd/Ni、Co/Pt/Ni、Co/Pd/Niである。
【0021】
ABM3元系合金の場合、より高い飽和磁化および保磁力を得る観点から、元素Aの比率(x)が25原子%以上75原子%以下であって、元素Bの比率(y)が25原子%以上75原子%以下であって、元素Mの比率(z)が1原子%以上50原子%以下である場合が好ましい。
元素Mの比率zは、50原子%以下であると飽和磁化が出やすく、1原子%以上であると製造負荷となるようなアニール温度を与えずに高い保磁力を得ることができる。元素Mの比率zとしては、10原子%以上40原子%以下が好ましい。
【0022】
ABM3元系合金およびAB2元系合金のいずれも、AおよびBの比率の差としては15原子%以内であることが好ましい。より好ましくは10原子%以内である。AおよびBの比率の差が15原子%以内であると、規則性結晶が得られやすく、より保磁力の高い磁性ナノ粒子を得ることができる。
【0023】
上記のABM3元系合金の中でも、飽和磁化および保磁力をより高める観点から、比率xが25原子%以上75原子%以下であって、比率yが25原子%以上75原子%以下であって、比率zが1原子%以上50原子%以下である場合が好ましく、特に好ましくは、比率xが30原子%以上60原子%以下であって、比率yが30原子%以上60原子%以下であって、比率zが10原子%以上40原子%以下である場合である。
【0024】
多元系合金の多元系合金磁性ヒドロゾル中における含有量としては、使用目的に応じて任意に設定できるが、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜30質量%がより好ましい。
【0025】
<分散剤>
本発明の多元系合金磁性ヒドロゾルは、SH基およびCOOH基を有する分散剤、並びにSH基およびOH基を有する分散剤からなる群より選択される少なくとも一種(以下、「本発明における分散剤」ということがある。)を含有する。この分散剤は、SH基およびCOOH基もしくはOH基を有するので、水または親水性溶媒に対する親和性を有し、SH基が合金に作用して良好な分散性を得ることができる。
【0026】
SH基およびCOOH基、またはSH基およびOH基を有する分散剤としては、アルカン類にSH基およびCOOH基、またはSH基およびOH基を置換して得られる分散剤、無置換またはアルキル置換のシクロヘキサンにSH基およびCOOH基、またはSH基およびOH基を置換して得られる分散剤、無置換またはアルキル置換のベンゼンにSH基およびCOOH基、またはSH基およびOH基を置換して得られる分散剤、などが挙げられる。
好ましくは、アルカン類にSH基およびCOOH基、またはSH基およびOH基を置換した分散剤である。
【0027】
分散剤の具体例としては、メルカプトコハク酸、3−メルカプトプロピオン酸、6−メルカプトヘキサン酸、8−メルカプトオクタン酸、11−メルカプトウンデカン酸、16−メルカプトヘキサデカン酸、3−(4−メルカプト)シクロヘキシル−1−プロパンカルボン酸、5−(4−メルカプト)ベンジル−1−ペンタンカルボン酸、2−ヒドロキシエタンチオール、8−ヒドロキシオクタンチオール、p−メルカプトフェノール、4−(2−ヒドロキシ)エチルシクロヘキサンチオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
分散剤の多元系合金磁性ヒドロゾル中における含有量としては、A多元系合金1モルに対して、0.01〜20モルが好ましく、0.1〜10モルがより好ましい。分散剤の含有量が前記範囲内であると、A多元系合金を分散させたときの分散性を安定に保つのに有効である。
【0029】
(水および親水性溶媒)
本発明の多元系合金磁性ヒドロゾルは、水および親水性溶媒並びにこれらの混合溶媒の少なくとも一種を含有し、水および/または親水性溶媒中に前記A多元系合金が前記本発明における分散剤を用いて分散されている。
【0030】
水は、純水、イオン交換水などを特に制限なく使用することができ、親水性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アミノエタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類や、エチルアミン、ジエチルアミン、イソペンチルアミン等のアミン類、エチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、その他、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、チアゾール、テトラヒドロフラン、ベゼンスルホン酸、イソインドール、アセチルアセトン、イソ酪酸、グリシドール、リンゴ酸ジエチル等を使用できる。また、水と親水性溶媒とを適宜選択した比率で混合した混合溶媒も使用できる。
【0031】
なお、水および/または親水性溶媒の量は、目的とする多元系合金磁性ヒドロゾルに応じて任意に選択すればよい。
【0032】
〜ゾルゲル被覆〜
本発明の多元系合金磁性ヒドロゾルは、A多元系合金が水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒中に分散された状態で存在し、さらに分散されているA多元系合金がゾルゲル膜で被覆されていることが好ましい。合金はゾルゲル膜で被覆されることで、分散後の水系中における分散安定性をより向上させることができ、所望の官能基を与えるのに有効である。
【0033】
ゾルゲル被覆のための被覆用材料としては、シランカップリング剤を用いたゾルゲル膜が好適である。シランカップリング剤としては、例えば、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、テトラエチルオルソシリケート、テトライソプロピルオルソシリケート、テトラメチルオルソシリケート、テトラn−ブチルオルソシリケート、2−シアノエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0034】
多元系合金のゾルゲル膜による被覆は、多元系合金の還元反応時、熟成時、又は分散時のいずれかにおいて、シランカップリング剤等の被覆用材料(例えばシランカップリング剤含有溶液)を添加、撹拌することにより行なうことができる。
【0035】
ゾルゲル膜の膜厚としては、分散状態の安定化の点で、0.5〜20nmが好ましく、より好ましくは1〜10nmである。
【0036】
シランカップリング剤等の被覆用材料の添加量としては、例えば被覆のしやすさ、被覆厚等を考慮して選択することができるが、合金磁性粒子1モル当り、0.1〜50モルが好ましく、より好ましくは1〜20モルである。
【0037】
〜多元系合金磁性ヒドロゾルの合成〜
多元系合金磁性ヒドロゾルの合成は、沈殿法で分類すると、(1)1級アルコールを用いるアルコール還元法、(2)2級、3級、2価または3価のアルコールを用いるポリオール還元法、(3)熱分解法、(4)超音波分解法、(5)強力還元剤還元法、などを利用することができる。また、反応系で分類すると、(6)高分子存在法、(7)高沸点溶媒法、(8)正常ミセル法、(9)逆ミセル法(マイクロエマルション法)、などを利用することができる。
これらのうち、(2)と(6)の組み合わせ、(5)と(6)の組み合わせ、および(5)と(9)の組み合わせが好ましく利用できる。特に、粒径が制御しやすい点から、(9)逆ミセル法を用いた方法が好ましい。
【0038】
上記のうち、例えば、前記(2)ポリオール還元法は、2級、3級、2価または3価のアルコールを用いて還元する方法である。また、前記(5)強力還元剤還元法は、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等を用いて還元する方法であり、前記(6)高分子存在法は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を存在させて行なう方法である。
【0039】
また、前記(9)逆ミセル法は、金属イオンを含む逆ミセル溶液と陰イオンを含む逆ミセル溶液とを混合することにより粒子を生成するものである。2つの逆ミセルを混合すると衝突して会合し、逆ミセル間で異なるイオンが相互に拡散・混合し、ナノサイズの粒子が得られる。このとき、逆ミセルの会合、解離が繰り返して起こることで粒子を一定のサイズに成長させることができる。
逆ミセルとは,親油性溶媒に少量の水(および/または親水性溶媒)と界面活性剤とを添加し、水滴周囲に形成される界面活性剤の球状集合体(water-in-oil(w/o)型マイクロエマルション)である。
【0040】
具体的には、例えば、少なくとも、(1)2種の逆ミセル溶液を混合して還元反応を行なう還元工程と、(2)還元反応後に所定温度で熟成する熟成工程とを設けて合成することができる。
以下、逆ミセル法の各工程について詳細に説明する。
【0041】
(1)還元工程
還元工程では、下記の(i)〜(iii)の操作を行なう。
まず、(i)界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と還元剤水溶液とを混合して逆ミセル溶液(I)を調製する。
【0042】
前記界面活性剤としては、油溶性界面活性剤が用いられる。具体的には、スルホン酸塩型界面活性剤(例えば、エーロゾルOT(東京化成工業(株)製)など)、4級アンモニウム塩型界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)、エーテル型界面活性剤(例えば、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル)などが挙げられる。
【0043】
界面活性剤の非水溶性有機溶媒中における量としては、20〜200g/リットルであることが好ましい。界面活性剤の量が前記範囲内であると、生成したミセルが安定に保持できる。
【0044】
界面活性剤を溶解する非水溶性有機溶媒として好ましいものは、アルカン、エーテル等が挙げられる。
アルカンとしては、炭素数7〜12のアルカン類であることが好ましい。具体的には、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が好ましい。
エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等が好ましい。
【0045】
還元剤水溶液を構成する還元剤としては、アルコール類;ポリオール類;H;HCHO、S2−、HPO、BH、N、HPOなどを含む化合物;を単独で使用し、あるいは2種以上を併用することが好ましい。
水溶液中の還元剤の量としては、金属塩に対して、3〜50倍当量であることが好ましい。還元剤の量が前記範囲内であると、金属原子への還元が良好に行なえる。
【0046】
ここで、逆ミセル溶液(I)溶液中の水と界面活性剤との質量比(水/界面活性剤)は、20以下となるようにすることが好ましい。質量比が20以下であると、沈殿の生成を抑え、粒子も揃いやすいといった利点がある。質量比は、15以下とすることが好ましく、0.5〜10とすることがより好ましい。なお、逆ミセル溶液(I)溶液とともに、目的に応じて、前記質量比や使用原料を変えた逆ミセル溶液(I')、(I'')等を調製し、これらを併用してもよい。
【0047】
上記とは別に、(ii)界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と金属塩水溶液とを混合した逆ミセル溶液(II)を調製する。
界面活性剤および非水溶性有機溶媒の詳細(使用する物質、濃度等)については、前記逆ミセル溶液(I)の場合と同様である。
なお、逆ミセル溶液(I)と同種のものまたは異種のものを使用することができる。また、逆ミセル溶液(II)中の水と界面活性剤との質量比も逆ミセル溶液(I)の場合と同様であり、逆ミセル溶液(I)の質量比と同一としてもよく、異なっていてもよい。また、逆ミセル溶液(II)とともに、目的に応じて、前記質量比や使用原料を変えた逆ミセル溶液(II')、(II'')等を調製し、これらを併用してもよい。
【0048】
前記金属塩の具体例としては、HPtCl、KPtCl、Pt(CHCOCHCOCH、NaPdCl、Pd(OCOCH、PdCl、Pd(CHCOCHCOCH、HAuCl、Fe(SO、Fe(NO、Fe(NH(C、Fe(CHCOCHCOCH、CoCl、Co(OCOCH、(NH)CoCl、HAuCl、KAuCl、AgNO,AgClOなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0049】
金属塩水溶液中の金属塩の濃度(金属塩濃度)は、0.1〜1000μmol/mlであることが好ましく、1〜100μmol/mlであることがより好ましい。
【0050】
次に、(iii)以上のようにして調製した逆ミセル溶液(I)および(II)を混合する。
混合方法は、特に限定されるものではないが、還元の均一性を考慮して、逆ミセル溶液(I)を撹拌しながら、逆ミセル溶液(II)を添加していって混合することが好ましい。混合終了後、還元反応を進行させることになるが、その際の温度は−5〜30℃の範囲で、一定の温度とすることが好ましい。
【0051】
還元温度を−5〜30℃とすることで、水相が凝結して還元反応が不均一になるといった問題を解消し、凝集または沈殿が起こりやすく系が不安定となる問題をも解消することができる。好ましい還元温度は0〜25℃であり、より好ましくは5〜25℃である。
ここで、前記「一定温度」とは、設定温度をT(℃)とした場合、当該TがT±3℃の範囲にあることをいう。なお、このようにした場合であっても、当該Tの上限および下限は、上記還元温度(−5〜30℃)の範囲にあるものとする。
【0052】
還元反応の時間は、逆ミセル溶液の量等により適宜設定する必要があるが、1〜30分とすることが好ましく、5〜20分とすることがより好ましい。
【0053】
還元反応は、粒径分布の単分散性に大きな影響を与えるため、できるだけ高速攪拌しながら行なうことが好ましい。
好ましい攪拌装置は、高速攪拌混合できるものであればいずれの種類のものでもよい。また、特開2005−133135号公報に記載の装置や、以下に示した高剪断力を有する攪拌装置の利用も有効である。例えば、攪拌羽根が基本的にタービン型あるいはパドル型の構造を有し、さらにその羽根の端もしくは羽根と接する位置に鋭い刃を付けた構造であり、羽根をモーターで回転させる攪拌装置である。具体的には、ディゾルバー(特殊機化工業社製)、オムニミキサー(ヤマト科学社製)、ホモジナイザー(SMT社製)などの装置が有用である。これらの装置を用いることにより、単分散な多元系磁性ナノ粒子を安定なヒドロゾルとして合成することができる。
装置の回転数は、1000〜20000rpmにすることが好ましい。
【0054】
(2)熟成工程
熟成工程では、前記(1)還元工程における還元反応終了後、反応後の溶液を熟成温度まで昇温して熟成する。
【0055】
前記熟成温度は、30〜120℃で一定の温度とすることが好ましく、その温度は、前記還元反応の温度より高くする。また、熟成時間は、5〜240分とすることが好ましい。熟成温度および時間が上記範囲にあることで、凝集または沈殿を防ぎ、不完全な反応による組成変化を防ぐことができる。好ましい熟成温度および時間は40〜100℃および10〜180分であり、より好ましい熟成温度および時間は40〜80℃および60〜180分である。
【0056】
ここで、前記「一定温度」とは、還元反応の温度の場合と同義(但し、この場合、「還元温度」は「熟成温度」となる)であるが、特に、上記熟成温度の範囲(30〜120℃)内で、前記還元反応の温度より5℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましい。5℃以上高くすることで、処方通りの組成が得られやすくなる。
【0057】
上記において、既述の本発明における分散剤(SH基とCOOH基もしくはOH基とを有する分散剤)は、前記(2)熟成工程における熟成開始前、熟成中、または熟成後のいずれかのタイミングで添加することができる。
本発明における分散剤の詳細については、既述の通りである。
【0058】
(3)洗浄・分散工程
前記熟成工程で熟成して分散剤を添加した後は、水と1級アルコールとの混合溶液で熟成後の溶液を洗浄し、その後1級アルコールで沈殿化処理を施して沈殿物を生成させ、該沈殿物を有機溶媒で分散させる洗浄・分散工程を設けることが好ましい。
【0059】
この洗浄・分散工程を設けることで、不純物が除去され、溶媒中に多元系合金磁性ナノ粒子と分散剤とが主成分として存在する純度の高い(好ましくは純粋な)ヒドロゾルが得られる。また、不純物除去としては、限外濾過も有効である。
洗浄および分散は、少なくともそれぞれ1回、好ましくはそれぞれ2回以上行う。
【0060】
洗浄で用いる前記1級アルコールとしては、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール等が好ましい。体積混合比(水/1級アルコール)は、10/1〜2/1の範囲にあることが好ましく、5/1〜3/1の範囲にあることがより好ましい。水の比率が高いと、界面活性剤が除去されにくくなることがあり、逆に1級アルコールの比率が高いと、凝集を起こしてしまうことがある。
【0061】
以上のようにして、水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒中にA多元系合金が分散された多元系合金磁性ヒドロゾルが得られる。本発明の多元系合金磁性ヒドロゾルは、単分散で均一組成であり、造影剤や温熱療法用組成物などの各種医療用途、その他種々の広範な分野において安全にかつ効率的に適用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、組成比、合成法などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0063】
〔実施例1〕
高純度Nガス中で下記の操作を行なった。
三シュウ酸三アンモニウム鉄〔Fe(NH(C〕(和光純薬工業(株)製)0.30gと塩化白金酸カリウム〔KPtCl〕(和光純薬工業(株)製)0.29gとを水(脱イオンおよび脱酸素処理済み)12mLに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT(商品名、東京化成工業(株)製;油溶性界面活性剤(ヒ゛ス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム)、以下同様)12.4gをデカン(和光純薬工業(株)製;非水溶性有機溶媒)120mLに溶解したアルカン溶液を添加し、混合して逆ミセル溶液(a)[逆ミセル溶液(II)]を調製した。
【0064】
NaBH(和光純薬工業(株)製)0.48gを水(脱イオンおよび脱酸素処理済み)12mLに溶解した還元剤水溶液に、エーロゾルOT12.4gをデカン120mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(b)[逆ミセル溶液(I)]を調製した。
【0065】
過塩素酸銀〔AgClO・HO〕(和光純薬工業(株)製)0.14gを水(脱イオンおよび脱酸素処理済み)6mLに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT6.2gをデカン60mLに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(c)[逆ミセル溶液(II)]を調製した。
【0066】
NaBH0.12gを水(脱イオンおよび脱酸素処理済み)3mLに溶解した還元剤水溶液に、エーロゾルOT3.1gをデカン30mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(d)[逆ミセル溶液(I)]を調製した。
【0067】
L−アスコルビン酸(和光純薬工業(株)製)0.09gを水(脱イオンおよび脱酸素処理済み)3mLに溶解した水溶液に、エーロゾルOT3.1gをデカン30mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(e)を調製した。
【0068】
逆ミセル溶液(b)を22℃でオムニミキサー(ヤマト科学(株)製)で高速撹拌しながら、逆ミセル溶液(a)を瞬時に添加した。高速撹拌開始から3分後に逆ミセル溶液(c)を瞬時に添加した。次に、高速撹拌開始から5分後に逆ミセル溶液(d)を瞬時に添加した。次に、高速撹拌開始から7分後に逆ミセル液(e)を瞬時に添加した。そして、高速撹拌開始から9分後に撹拌をマグネチックスターラーに変更して行ない、60℃に昇温した後、120分間熟成した。熟成後30分経過した後に、分散剤として8−メルカプトオクタン酸(和光純薬工業(株)製;SH基およびCOOH基を有する分散剤)の10質量%水溶液3mlを添加した。
【0069】
室温に冷却後、オレイン酸(和光純薬工業(株)製;分散剤)3mLをさらに添加、混合して、大気中に取出した。逆ミセルを破壊するために、水450mLとメタノール450mLとの混合液を添加して水相と油相とに分離した。油相側に多元系合金磁性ナノ粒子が分散された状態が得られた。油相側を、水900mLとメタノール300mLとの混合液で1回洗浄した。その後、油相側にエタノールを300mL添加して、3000r.p.m.で10分間遠心分離してナノ粒子を沈降させた。上澄み液を除去して、水(脱イオンおよび脱酸素処理済み)50mlを添加して再分散した。さらに、エタノール150mLを添加し、前記同様に遠心分離操作を行なってナノ粒子を沈降させた。この操作をさらに2回繰り返して行ない、最終的に水(脱イオンおよび脱酸素処理済み)10mLを添加して、FePtAg合金磁性ヒドロゾル(a)を得た(Fe/Pt/Ag比率(原子%)=35/35/30)。
【0070】
〔実施例2〕
実施例1において、逆ミセル溶液(a)の調製に用いた三シュウ酸三アンモニウム鉄〔Fe(NH(C〕の量を0.24gにし、塩化白金酸カリウム〔KPtCl〕の量を0.23gにし、更に逆ミセル溶液(c)の調製に用いた過塩素酸銀〔AgClO・HO〕の量を0.20gにしたこと以外は、実施例1と同様にして、FePtAg合金磁性ヒドロゾル(b)を得た(Fe/Pt/Ag比率(原子%)=27/28/45)。
【0071】
〔実施例3〕
実施例1において、逆ミセル溶液(c)の調製に用いた過塩素酸銀0.14gを塩化金酸〔HAuCl・4HO〕(和光純薬工業(株)製)0.25gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、FePtAu合金磁性ヒドロゾル(c)を得た(Fe/Pt/Au比率(原子%)=36/35/29)。
【0072】
〔実施例4〕
実施例1において、逆ミセル溶液(a)の調製に用いた三シュウ酸三アンモニウム鉄〔Fe(NH(C〕の量を0.34gにし、塩化白金酸カリウム〔KPtCl〕の量を0.33gにし、逆ミセル溶液(c)の調製に用いた過塩素酸銀0.14gを塩化金酸〔HAuCl・4HO〕0.16gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、FePtAu合金磁性ヒドロゾル(d)を得た(Fe/Pt/Au比率(原子%)=39/41/20)。
【0073】
〔実施例5〕
実施例1において、逆ミセル溶液(a)の調製に用いた塩化白金酸カリウム0.29gを塩化パラジウム酸ナトリウム〔NaPdCl・3HO〕(和光純薬工業(株)製)0.24gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、FePdAg合金磁性ヒドロゾル(e)を得た(Fe/Pd/Ag比率(原子%)=36/36/28)。
【0074】
〔実施例6〕
実施例1において、逆ミセル溶液(a)の調製に用いた三シュウ酸三アンモニウム鉄0.30gを酢酸コバルト〔Co(CHCOO)・4HO〕(和光純薬工業(株)製)0.20gにし、塩化白金酸カリウム(KPtCl)の量を0.33gにし、逆ミセル溶液(c)の調製に用いた過塩素酸銀0.14gを塩化金酸〔HAuCl・4HO〕0.16gにしたこと以外は、実施例1と同様にして、CoPtAu合金磁性ヒドロゾル(f)を得た(Co/Pt/Au比率(原子%)=42/39/19)。
【0075】
〔実施例7〕
実施例1において、逆ミセル液(e)を下記の逆ミセル液(e')に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ゾルゲル膜で被覆されたFePtAg合金磁性ヒドロゾル(g)を得た。ゾルゲル膜が形成されていることは、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子(株)製、JEM−2000FX)を用いて、FePtAg合金磁性粒子を撮影することにより確認した。また、ゾルゲル膜の厚みは、約1.3nmであった。
−逆ミセル液(e')−
テトライソプロピルオルソシリケート(東京化成工業(株)製)0.53gを1−ヘキサノール(和光純薬工業(株)製)3mLに溶解した溶液に、エーロゾルOT3.1gをデカン30mLに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル液(e')を調製した。
【0076】
〔実施例8〕
実施例1において、逆ミセル液(c)の添加を行なわなかったこと以外は、実施例1と同様にして、FePt合金磁性ヒドロゾル(h)を得た。
【0077】
〔実施例9〕
実施例5において、逆ミセル液(c)の添加を行なわなかったこと以外は、実施例5と同様にして、FePd合金磁性ヒドロゾル(i)を得た。
【0078】
〔比較例1〕
硫酸第一鉄〔FeSO・7HO〕(和光純薬工業(株)製)10gを水(脱イオン処理済み)100mLに溶解して硫酸第一鉄水溶液を得た。また、水酸化ナトリウム〔NaOH〕(和光純薬工業(株)製)28.8gを水(脱イオン処理済み)50mLに溶解して水酸化ナトリウム水溶液を得た。
続いて、硫酸第一鉄水溶液を羽根撹拌(300r.p.m.)しながら、水酸化ナトリウム水溶液を60分かけて滴下し、水酸化第一鉄の沈殿を生成させた。滴下終了後、撹拌しながら液温を75℃まで上昇させ、さらに空気を5L/分の速度で吹き込み、8時間酸化した。得られたマグネタイト粒子を水(脱イオン処理済み)で洗浄し、濾過する操作を2回繰り返し、乾燥させた。
【0079】
次いで、キトサン(焼津水産化学工業(株)製、PSH−80、脱アセチル化度80%以上)0.5gを水(脱イオン処理済み)100mLに分散し、酢酸(和光純薬工業(株)製)0.5gを徐々に滴下して溶解した。不溶物を濾過により除去した。
そして、キトサン溶液20mLに前記マグネタイト粒子2gを混合し、撹拌しながら、0.5mol/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液を徐々に滴下してpH7.1とし、その後1時間撹拌を続けた。次に、0.1mol/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液を滴下してpH約8とし、さらに1時間撹拌を行なった。その後、水(脱イオン処理済み)で洗浄し、濾過する操作を2回繰り返して、キトサンで被覆されたマグネタイト〔Fe〕ヒドロゾル(A)を得た。
【0080】
〔比較例2〕
実施例1において、分散剤として用いた8−メルカプトオクタン酸をオクタン酸に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、FePtAg合金磁性粒子(B)を得た。
但し、沈降が起こり、ヒドロゾルが得られなかった。
【0081】
(評価)
実施例1〜9で得た合金磁性ヒドロゾル(a)〜(i)、並びに比較例1のマグネタイトヒドロゾル(A)およびSH基を有しない分散剤を用いた比較例2の磁性粒子(B)について、数平均粒径、保磁力、飽和磁化および分散性を比較評価した。測定、評価の結果は下記表1に示す。
【0082】
−数平均粒径−
透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子(株)製、JEM−2000FX)で撮影した粒子写真を画像解析システム(カールツアイス(株)製、KS300)によって測定した。
【0083】
−保磁力、飽和磁化−
各ヒドロゾルをシリコン基板に塗布し、乾燥させた試料を用いて、振動試料型磁力計(東英工業(株)製、VSM)によって室温測定した。
【0084】
−分散性−
各ヒドロゾルをそのまま、動的光散乱法による粒径分布測定器(日揮装(株)製、マイクロトラック500)によって測定し、分散度を求めた。分散度はMv/Mn比で表す(Mvは体積平均粒子径であり、Mnは数平均粒子径である)。分散度(Mv/Mn比)は、1により近い方ほど凝集が少なく、安定であることを示す。
【0085】
【表1】

【0086】
前記表1に示すように、実施例では、多元系合金磁性ヒドロゾルの粒径が小さくても、保磁力と飽和磁化の高く、優れた性能を示した。また、凝集性の尺度で見た粒径分布が狭いことから、凝集の少ない安定な分散性を有していることを示した。特に、ゾルゲル膜で被覆した実施例7(FePtAg合金磁性ヒドロゾル(g))は、より安定な分散性を示した。
これに対し、従来の酸化鉄系の粒子である比較例1では、保磁力および飽和磁化に劣るばかりか、分散性も不充分であった。また、本発明における分散剤(SH基とCOOH基もしくはOH基とを有する分散剤)以外の分散剤を用いた比較例2では、ヒドロゾルを形成することができなかった。
【0087】
上記の実施例では、元素MとしてAg、Auを用いた場合を中心に説明したが、AgおよびAu以外の他の族に属する金属を用いた場合も上記と同様の効果を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多元系合金〔AはFeまたはCoを表し、BはPtまたはPdを表し、Mは周期律表の7族から11族までの元素を表し、MはAおよびBと同一元素を同時に表すことはない。x>0、y>0、z≧0を表す。〕と、SH基およびCOOH基を有する分散剤、またはSH基およびOH基を有する分散剤と、水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒とを含み、
前記水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒中に前記A多元系合金が分散されている多元系合金磁性ヒドロゾル。
【請求項2】
前記A多元系合金は、水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒中に分散された状態で、さらにゾルゲル膜で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の多元系合金磁性ヒドロゾル。
【請求項3】
前記A多元系合金は、AおよびBの比率(x,y)が25原子%以上75原子%以下であり、Mの比率(z)が1原子%以上50原子%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多元系合金磁性ヒドロゾル。
【請求項4】
逆ミセル法で製造されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多元系合金磁性ヒドロゾル。
【請求項5】
SH基およびCOOH基を有する分散剤、またはSH基およびOH基を有する分散剤を用いて、逆ミセル法によりA多元系合金を水もしくは親水性溶媒またはこれらの混合溶媒中に分散して多元系合金磁性ヒドロゾルを製造する多元系合金磁性ヒドロゾルの製造方法。
〔AはFeまたはCoを表し、BはPtまたはPdを表し、Mは周期律表の7族から11族までの元素を表し、MはAおよびBと同一元素を同時に表すことはない。x>0、y>0、z≧0を表す。〕

【公開番号】特開2008−231556(P2008−231556A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76857(P2007−76857)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】