説明

多元金属系硫黄化合物及びその製造方法

【課題】多元金属系硫黄化合物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】多元金属系硫黄化合物の製造方法により、多元金属系硫黄化合物のナノ粉末を合成するとき、含有する一種以上の金属元素はすべて構成元素の純元素粉体から使用し、及び/又は一種以上の金属合金粉末を原子比より調合し、常圧の液相合成法で合成されることになり、しかも、合成工程において使用される有機溶剤は芳香族アミン類化合物であり、該芳香族アミン類化合物は、沸点240℃以上で、pH値7〜10の弱アルカリ性であり、それゆえ、高温下でキレート反応によって多元金属系硫黄化合物が生成される。銅−インジウム−ガリウム−セレン元素化合物(CIGSmaterials)は、直接に塗布成膜し、ターゲット材に作られ、スパッタリング成膜されることになり、セレン化工程は不要で、塗膜層の組成の一致性をアップさせることで、製品の良品率も生産効率も向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多元金属系硫黄化合物及びその製造方法に関わり、更に詳しく言えば、半導体薄膜太陽電池に応用されるための多元金属系硫黄化合物及びその製造方法に関わるものである。
多元金属系硫黄化合物のナノ粉末を合成するとき、含有する一種以上の金属元素はすべて、構成元素の純元素粉体から使用し、及び/又は一種以上の金属合金粉末を原子比により調合し、常圧の液相合成法で合成して、該多元金属系硫黄化合物を直接に塗布成膜し、及び/又はターゲット材にしてスパッタリング成膜して行われるので、セレン化工程は不要で、製造工程も簡単化し、製品の良品率も生産効率も向上する。
【背景技術】
【0002】
近年、銅−インジウム−ガリウム−セレン化合物半導体薄膜太陽電池(Copper Indium Gallium diselenide Solar Cell、以下、CIGS Solar Cellという)については、University of Maineは1997年、電池効率が約6%という値を得たと報告し、米国エネルギー研究所(NREL)は2008年、最高電池效率が19.9%も達していると発表し、高效率でかつ長時間安定して使用可能であるため、応用範囲も多様化し、発電所、建築材料などにも応用できる。
【0003】
CIGS Solar Cellは、外部から太陽の光を吸収して電気に変える活性層(Active layer)の組成成分に用いられるCu(In1−xGax)Se2を使用し、変換効率19.9%という高效率で注目を集めている。
このような高品質のCIGS(Cu、In、Ga、Se)薄膜は、従来、同時多源高真空蒸着銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及びセレン(Se)などの元素を使用し、基板を高温500℃〜600℃で加熱し、化学変化を起こさせて合成されたものである。
該蒸着法は原理として、同一の真空室内に銅、インジウム、ガリウム、セレンの四つを蒸着源として配置し、それぞれの蒸着速度を制御し、基板に沈積させると同時に、基板を高温で加熱し、化合させ、該CIGS薄膜を形成させる方法である。
しかし、この方法では、材料の利用率が低く、膜厚均一性が悪く、混合均一性が悪く、基板を高温で加熱する必要があるという問題点があり、良品率が低く、材料や設備コストが高く、製造サイズが拡大できないため、製造性にマイナスな影響を与えた。
【0004】
同時蒸着技術のほかに、CIGS薄膜の形成はまた、単一スパッタリングターゲット材の銅−インジウム−ガリウム合金(以下、CIG alloyという)、またはプレメッキ二元合金の金属前駆体を使用して、CIG(Cu、In、Ga)薄膜を形成させたあと、高温環境下で、セレン蒸気またはセレン化水素(H2Se)ガスまたは硫化水素(H2S)ガスで、セレン化または硫化して、CIGS薄膜を形成させることになる。
しかしながら、セレン化または硫化工程は、複雑で時間がかかり、そして高温工程で行われるため、生産コストがかかり、生産効率が低下する。また、劇毒ガスのスセレン化水素の使用に対応するためのハイクラス設備を使用することで、設備コストも増加する。
【0005】
材料利用率への改善、生産効率への向上、及び寸法拡大を行うために、電着法(Electrodeposition)、化学気相堆積法(Chemical Vapor Deposition)、スプレー法(Spray Deposition)などの製造方法が発展されている。しかし、これらは電池効率が悪く、材料利用率が悪く、または結晶が悪いなどの原因で、その製造性にマイナスな影響を与えた。
【0006】
インジェット法(Ink−jet printing)では、材料利用率や製造サイズを高めることはできる。しかし、電池效率が低いこと、薄膜製造工程において、高温下で水素により還元され、セレン化水素ガスでセレン化されること、薄膜結晶の晶相が悪く、インクが作りにくいこと、高圧環境下で合成されること、また製造プロセスが複雑などの問題点があるため、その製造性にマイナスな影響を与えた。
【0007】
従来のCIGS ナノ粉体の合成は、次のような幾つの方法がある。
【0008】
特許文献1には、ヨウ化銅(CuI)、ヨウ化インジウム(InI3)とヨウ化ガリウム(GaI3)及びセレン化ナトリウム(Na2Se)をピリジン(pyridine)に溶解、反応させて生成されることが開示されている。
【0009】
非特許文献1には、金属ハロゲン化物及びナトリウム金属硫黄族元素化合物の液相置換合成法(Solution phase metathesis synthesis)により、前駆体をトルエンの中に配置し、72時間リフロー加熱し、反応させて生成されることが開示されている。
【0010】
非特許文献2には、ホットインジェクション法(Hot injection method)により、塩化銅(CuCl)と塩化インジム(InCl3)をトリオクチルホスフィン(trioctylphosphine)(以下、TOPという)に溶かして、金属錯体化合物を生成したあと、トリオクチルホスフィンオキシド (trioctylphosphine oxide) (以下、TOPOという)を注入し、更に、330℃のセレン化トリオクチルホスフィン(trioctylphosphine selenide) (以下、TOPSeという)を注入、反応させて、二セレン化銅インジウム (以下、CISという)を生成させる方法が開示されている。この方法では、セレン化銅(Cu2Se)と酸化インジウム(In2O3)などの副産物を含んでいるCIS三元化合物だけは生成されことで、純化しにくい。また、熱分解法(Pyrolysis)により、まず、(PPh3)2CuIn(SePh)4金属錯体化合物を生成してから、高温環境下でスプレーし、分解を起こして、CIS粉体をさせることになる。
【0011】
非特許文献3には、微波合成法(Microwave− assisted synthesis)により、塩化銅、インジウム粉末とセレン粉末などの前駆体をエチレングリコールの中に溶かし、それにマイクロ波エネルギーを加えて、分解反応させて、CISを生成する方法が開示されている。その中にセレン化銅の副産物が含まれることで、純化しにくい。
【0012】
非特許文献4には、ソルボサーマル法(Solvothermal)により、塩化銅(CuCl2)、塩化インジウムとセレン粉末をエチレンジアミン(ethylenediamine)とジエチルアミン(diethylamine)の中に溶解し、圧力釜(Autoclave)による高温高圧で、15時間以上反応させて、CIS粉体を生成させる方法が開示されている。
【0013】
非特許文献5には、更に前駆体をハロゲン化物から純元素物質に変えることが開示されている。
【0014】
非特許文献6には、当該方法で、元素の銅、インジウム、ガリウム、セレンを合成してCIGS粉体を生成させる方法が開示されている。当該方法では、反応条件に限られて、大量生産はできない。
【0015】
従来の技術をまとめてみると、三元化合物のみ生成される場合もあり、高温高圧の合成条件なので大量生産が不可能になる場合もあり、また、生成物にハロゲンイオンが含まれて、製造や部品のニーズに合わない場合もある。
【0016】
それゆえ、半導体薄膜太陽光エネルギーの環境に応用され、多元金属系硫黄化合物のナノ粉末を合成するとき、含有する一種以上の金属元素はすべて、構成元素の純元素粉体から使用し、及び/又は一種以上の金属合金粉末を原子比により調合し、常圧の液相合成法で合成されることになり、高温高圧による合成条件は不要で、常圧の液相合成法で合成され、しかもハロゲンイオンが含まず、大量生産が可能になる、多元金属系硫黄化合物及びその製造方法を開発するのが課題になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】US Patent No. 612740, Schulz et al.
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】1998. Journal of Materials Chemistry 8: 2209−11, Carmalt et al.
【非特許文献2】1999. Advanced Materials 11: 1441−4, Malik et al.
【非特許文献3】2003. Inorganic Chemistry 42: 7148−55, Grisaru et al.
【非特許文献4】1999. Advanced Materials 11:1456−9, Li et al.
【非特許文献5】Inorganic Chemistry 39:2964, Jiang et al.
【非特許文献6】2005. Thin Soild Films 480:46−9, Chun YG et al.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、半導体薄膜太陽電池に応用され、多元金属系硫黄化合物のナノ粉末を合成するとき、含有する一種以上の金属元素はすべて構成元素の純元素粉体から使用し、及び/又は一種以上の金属合金粉末を原子比により調合し、常圧の液相合成法で合成されることになり、高温高圧の合成条件は不要で、常圧の液相合成法で合成され、しかも、ハロゲンイオンが含まず、大量生産が可能になるための多元金属系硫黄化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
本発明のもう一つの目的は、大気圧環境で、ナノ寸法の銅−インジウム−ガリウム−セレン元素化合物のCIGS粉体は、ハロゲンイオンが含まず、簡単で低コストでかつ大量生産され、該銅−インジウム−ガリウム−セレン化合物の材料は製造工程のニーズに応じて、一定範囲内で、銅、インジウム、ガリウム、セレンの原子比を好きなように変化させて、太陽電池ユニットの效率を高められ、しかも、該銅−インジウム−ガリウム−セレン化合物の材料を使用して、材料成分が均一なインク及びスパッタリングターゲット材を作り、製造工程の安定性と成膜の品質をアップさせるための多元金属系硫黄化合物及びその製造方法を提供することである。
【0021】
本発明のまたもう一つの目的は、本発明の多元金属系硫黄化合物製造方法で作られた、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物(CIGS materials)は、半導体薄膜太陽電池に必要とされる化合物であり、直接に塗布成膜し、ターゲット材に作られ、スパッタリング成膜されることになり、セレン化工程は不要で、製造工程を簡単化して、塗膜層の組成の一致性をアップさせることで、製品の良品率も生産効率も向上するための多元金属系硫黄化合物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述の目的に基づき、本発明によれば、合成条件及び芳香族又は複素芳香族アミン類化合物(化学的分類はアリールアミンarylamine)の合成した結合剤を利用し、高沸点、弱アルカリ性とキレート効果を有する芳香アミン類化合物の結合剤により、大気圧下で合成反応させて、ハロゲンイオンを含まない高純度の多元金属系硫黄化合物を大量生産することができる。
例えば、銅−インジウム−ガリウム−セレン元素化合物のCIGS粉体を例として、多元金属系硫黄化合物(Chalcogenide)(例えば、銅−インジウム−ガリウム−セレン化合物)のナノ粉体製造工程において、含有する一種以上の金属元素はすべて、構成元素の純元素粉体(例えば、銅、インジウム、ガリウム、セレンなど、純元素の物質粉体)を有機溶剤の中に配置し、加熱して化合させ、及び/又は原子比により、一種以上の金属合金粉末(例えば、銅/インジウム合金粉末、銅/ガリウム合金粉末、及びセレン粉末)を有機溶剤に配置し、加熱して化合させる。化合反応するとき、反応温度は240℃以上にして行われる。該有機溶剤は少なくとも、沸点240℃以上で、pH値7〜10の弱アルカリ性を有することを特徴とする。
【0023】
上述の目的に基づき、本発明によれば、合成条件及び芳香族又は複素芳香族アミン類化合物(化学的分類はアリールアミンarylamine)の合成した結合剤を利用し、高沸点、弱アルカリ性とキレート効果を有する芳香アミン類化合物の結合剤により、大気圧下で合成反応させて、ハロゲンイオンを含まない高純度の多元金属系硫黄化合物を大量生産することができる。例えば、銅−インジウム−ガリウム−セレン元素化合物のCIGS粉体を例として、多元金属系硫黄化合物(Chalcogenide)(例えば、銅−インジウム−ガリウム−セレン化合物)のナノ粉体製造工程において、含有する一種以上の金属元素はすべて、構成元素の純元素粉体(例えば、銅、インジウム、ガリウム、セレンなど、純元素の物質粉体)を有機溶剤の中に配置し、加熱して化合させ、及び/又は原子比により、一種以上の金属合金粉末(例えば、銅/インジウム合金粉末、銅/ガリウム合金粉末、及びセレン粉末)を有機溶剤に配置し、加熱して化合させる。化合反応するとき、反応温度を240℃以上にして行われる。該有機溶剤は少なくとも、沸点240℃以上で、pH値7〜10の弱アルカリ性を有することを特徴とする。
【0024】
本発明の目的、特徴と効果を当該分野の技術者に理解させるために、以下の具体的な実施例及びその図面を通じて、本発明を以下のように詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の多元金属系硫黄化合物の製造方法フローステップを説明するためのフローチャートであり、図1に示すように、ステップ11では、少なくとも一つの容器を使用し、それからステップ12へ入る。
【0026】
ステップ12では、化合反応による多元金属系硫黄化合物を得る前に、多元金属系硫黄化合物のナノ粉末を合成するとき、含有する一種以上の金属元素はすべて、構成元素の純元素の粉体(例えば、銅、インジウム、ガリウム、セレンなど、純元素の物質粉体)から使用し、及び/又は一種以上の金属合金粉末(例えば、銅/インジウム合金粉末、銅/ガリウム合金粉末、及びセレン粉末)を使用できる。すなわち、純元素粉体(例えば、銅、インジウム、ガリウム、セレンなど、純元素の物質粉体)、及び/又は一種以上の金属合金粉末(例えば、銅/インジウム合金粉末、銅/ガリウム合金粉末、及びセレン粉末)、及び硫黄族元素、例えば硫黄S、及び/又はセレンSe、及び/又はテルルTeを、原子比により調合し、それらを一緒に該容器に配置して、ステップ13へ入る。
【0027】
ステップ13では、少なくとも一種の、沸点240℃以上でpH値7〜10の弱アルカリ性の有機溶剤を該容器に配置して、該純元素粉体(例えば、銅、インジウム、ガリウム、セレンなどの純元素の物質粉体)、及び/又は一種以上の該金属合金粉末(例えば、銅/インジウム合金粉末、及び/又は銅/ガリウム合金粉末)、及び硫黄族元素、例えば硫黄S、及び/又はセレンSe、及び/又はテルルTeを均一に混合、合成反応させるようにする。該有機溶剤、該硫黄族元素、及び該純元素粉体、及び/又は一種以上の該金属合金粉末を反応温度200℃以上まで加熱し、多元金属系硫黄化合物に合成させ、それから、ステップ14へ入る。
【0028】
ステップ14では、該多元金属系硫黄化合物に対して、降温ステップ、分離ステップ、ろ過ステップ、洗浄ステップと乾燥ステップを行って、該多元金属系硫黄化合物のナノ粉体を形成する。
【0029】
本発明の多元金属系硫黄化合物の製造方法は、常圧下で、ナノ寸法の銅ーインジウムーガリウムーセレン化合物CIGS(Cu、In、Ga、Se)の粉体を合成して行われるが、該合成反応に用いる有機溶剤は、単一溶剤に限らず、少なくとも二種の混合溶剤が反応溶剤として使用される。
【0030】
多元金属系硫黄化合物のナノ粉末に含まれている、一種以上の金属元素は例えば、すべて構成元素の純元素粉体(例えば、銅、インジウム、ガリウム、セレンなど、純元素の物質粉体)から使用する場合、銅、インジウム、ガリウム、セレンなどの純元素に関する化学反応式と説明は次の通りである。

ここで、x値の区間は0.8〜1.2、y値の区間は0〜1.0、z値の区間は1.6〜2.4であり、しかも、y値が0より大きい場合は、合成反応温度は必ず240℃以上にする。本発明の四つの金属元素類硫黄化合物からなる構造式はCux(In1ーyGay)Sez、その中、0.8≦x≦1.2、0≦y≦1.0、そして1.6≦z≦2.4 である。
【0031】
該有機溶剤は、芳香族アミン類化合物または芳香族ジアミン類化合物でもよい。その化学構造式は下記の(a)〜(e)の通りである。
【化1】

ここで、該有機溶剤は芳香族アミン類で、上述のR'とR''はそれぞれ、水素原子、芳香基、炭素数1〜5のアミノ基及び炭素数1〜5のアルコール基からなるグループのいずれかの二つであり、該有機溶剤は少なくとも、ジフェニルアミン(diphenylamine)、Nーフェニルベンジルアミン(Nーphenylbenzylamine)、2ーアニリノエタノール(2ーanilinoethanol)、Nーフェニルエチレンジアミン(Nーphenylethyleneー diamine)からなるグループの中の一つである。
【0032】
該有機溶剤は芳香族アミン類で、上述のRは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ニトリル基と芳香基からなるグループのいずれかの一つであり、該有機溶剤化合物は少なくとも、4ーブチルアニリン(4ーbutylaniline)、2ービフェニルベンジルアミン(2ーbiphenylylamine)、2ーアミノベンゾニトリル(2ーaminobenzonitrile)、N,Nージエチル1,4ーフェニレンジアミン(N,Nーdiethylー 1,4ーphenylenediamine)及びoーフェネチジン(oーphenetidine)からなるグループの中の一つであり、また、該有機溶剤は芳香族二アミン類で、上述のRは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、ニトリル基と芳香基からなるグループのいずれかの一つであり、該有機溶剤化合物は少なくとも、1,2ーフェニレンジアミン(1,2ーphenylenediamine)、1,3ーフェニレンジアミン(1,3ーphenylenediamine)、1,4ーフェニレンジアミン(1,4ーphenylenediamine)、4ーメチルー 1,3ーフェニレンジアミン(4ーmethylー 1,3ーphenylenediamine)からなるグループの中の一つである。
【0033】
本発明の多元金属系硫黄化合物の製造方法により、多元金属系硫黄化合物、例えば、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物のCIGS(Cux(In1ーyGay)Sez)粉体が得られる。
【0034】
そして、上述した本発明の多元金属系硫黄化合物の製造方法は、セレン(Se)元素を使用するが、硫黄族元素から言えば、セレン(Se)元素の代わりに、硫黄(S)元素またはテルル(Te)元素を使用してもよい。銅族元素から言えば、銅(Cu)元素の代わりに、銀(Ag)元素を使用してもよい。ホウ素族元素から言えば、インジウム(In)元素とガリウム(Ga)元素の代わりに、アルミニウム(Al)元素を使用してもよい。上述の元素に代わって使用されるのは、上述の内容と同じ、または類似した理由なので、ここでそれ以上述べないことにする。
【0035】
本発明の多元金属系硫黄化合物の製造方法で得られた、多元金属系硫黄化合物のナノ粉体は、塗布印刷工程及びスパッタリング工程に応用される。例えば、該多元金属系硫黄化合物のナノ粉体をインクに分散させることで、塗布印刷工程に用いられる塗布材料が形成される。または、該多元金属系硫黄化合物のナノ粉体をスパッタリング工程のターゲット材に高温で加圧焼結することができる。言い換えれば、本発明は、溶液合成法で作られた銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物である、組成均一、高温で加圧焼結されたCIGSナノ粉体を使用して、スパッタリング工程に用いられるターゲット材の製造方法をも提供する。
【0036】
本発明の多元金属系硫黄化合物、例えば、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物は、スパッタリングターゲット材として用いられる。スパッタリング工程で堆積された銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物のCIGS薄膜は、各部位の組成が均一に形成し、スパッタリング時間の流れに伴って変化しないことで、薄膜製造工程の条件下で、成分制御が可能になり、セレン化工程は不要である。それ故、製造設備コストがカットされ、セレン化の材料コストも不要になり、組成の均一で良品率も向上し、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物によるCIGS薄膜太陽電池の製造性も大幅に向上される。
【0037】
図2に示すのは、本発明の多元金属系硫黄化合物を作るフローステップとして、本発明における多元金属系硫黄化合物の製造方法で行われる実施例を説明するためのフローチャートである。
【0038】
図2に示すように、ステップ21では、少なくとも一つの容器を使用する。それからステップ22へ入る。
【0039】
ステップ22では、まず、500mlの容器(例えば、三口フラスコ)を100℃まで又はそれ以上加熱し、窒素ガスを注入し、1時間の除水・酸素除去を経て、純元素の粉体を例えば、ガリウムインゴットを30℃まで加熱して約0.06モル、銅粉を0.2モル、インジウム粉末を0.14モル及びセレン粉末を0.5モルを取る。200℃以下で、N2−H2 またはN2を注入し、0.5時間放置後、原子比により調合し、ガリウムインゴット、銅粉、インジウム粉末、及びセレン粉末を該容器(三口フラスコ)の中に入れる。各元素間の割合、例えば銅:インジウム:ガリウム:セレンの割合は、0.2モル:0.14モル:0.06モル:0.5モルとなる。それからステップ23へ入る。
【0040】
ステップ23では、1.0モルのジフェニルアミン(有機溶剤)を取り、瓶の中に入れる。少なくとも一種の、沸点240℃以上でpH値7〜10の弱アルカリ性の有機溶剤で、ガリウムインゴット、銅粉、インジウム粉末及びセレン粉末を溶かし、磁石で1時間撹拌し、次第に240℃まで加熱し、温度が安定してから、24時間反応し、その後、ステップ24へ入る。
【0041】
ステップ24では、温度を80℃又はそれ以下に下げ、除水済み非溶剤(non−solvent)(例えば、メタノールまたはトルエン)を300ml入れ、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物の黒いCIGS粉体を沈澱、分離、ろ過させ、それから、非溶剤(nonーsolvent)(例えば、メタノールまたはトルエン)で洗浄し、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物のCIGS粉体を真空で、50℃またはそれ以上で1時間乾燥し、遠心分離器にかけて取出す。ここで、非溶剤とは、反応用有機溶剤(例えば、ジフェニルアミンやpーフェニレンジアミン)と相互に溶解するが、多元金属系硫黄化合物を溶解・分離できない溶剤のことをいう。
【0042】
図3に示すのは、図2で得られた、本発明の多元金属系硫黄化合物の結晶体構造を説明するイメージである。銅−インジウム−ガリウム−セレン元素化合物のCIGS粉体に関する鑑定分析は、X光回折装置(以下、XRDという)で行われる。その結晶体構造は図3に示すように、Cu(In,Ga)Se2.5特殊ピーク値はそれぞれ、112 (27.38)、204/220 (44.88)、116/312 (53.13)、008/400 (65.2)、316/332 (71.83)、228/424 (82.81)である。同時に、Cu3Se2特殊ピーク値の110 (25.12)と(48.43)を検出する。原子比では、X光フォトルミネッセンス解析装置(以下、EDSという)で測定された、Cu/(In+Ga)の比率は約1.0、Ga/(In+Ga)の比率は約0.3である。過量のセレン(Se)により、Cu3Se2の副産物が生じる。
【0043】
図4は、本発明のもう一つの多元金属系硫黄化合物のフローステップとして、本発明における多元金属系硫黄化合物の製造方法で行われたもう一つの実施例を説明するためのフローチャートである。
【0044】
図4に示すように、ステップ31では、少なくとも一つの容器を使用する。それからステップ32へ入る。
【0045】
ステップ32では、まず、500mlの容器(例えば、三口フラスコ)を100℃まで又はそれ以上加熱し、窒素ガスを注入し、1時間の除水・酸素除去を経て、一種以上の金属合金粉末、例えば、銅/インジウム合金粉末、銅/ガリウム合金粉末、及びセレン粉末を取る。200℃以下でN2−H2 またはN2を注入し、0.5時間放置後、銅/インジウム合金粉末、銅/ガリウム合金粉末、及びセレン粉末を原子比により調合し、該容器(三口フラスコ)の中に入れる。そこで、銅/インジウム合金粉末、銅/ガリウム合金粉末の粒サイズ100μm、セレン粉末の粒サイズ300meshとする。各元素間の割合、例えば、銅:インジウム:ガリウム:セレンの割合は、0.2モル:0.14モル:0.06モル:0.5モルとする。それからステップ33へ入る。
【0046】
ステップ33では、0.6モルのジフェニルアミン(有機溶剤)を取り、瓶の中に入れる。少なくとも一種の、沸点240℃以上でpH値7〜10の弱アルカリ性の有機溶剤で、銅/インジウム合金粉末、銅/ガリウム合金粉末、及びセレン粉末を溶かし、磁石で1時間撹拌し、次第に240℃まで加熱し、温度が安定してから、24時間反応する。その後、テップ34へ入る。
【0047】
ステップ34では、温度を80℃またはそれ以下に下げ、除水済み非溶剤(non−solvent)(例えば、メタノールまたはトルエン)を300ml入れ、銅−インジウム−ガリウム−セレン元素化合物の黒いCIGS粉体を沈澱、分離、ろ過させ、それから、非溶剤(non−solvent)(例えば、メタノールまたはまたはトルエン)で洗浄し、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物のCIGS粉体を真空で、50℃またはそれ以上で1時間乾燥し、遠心分離器にかけて取出す。ここで、非溶剤とは、反応用有機溶剤(例えば、ジフェニルアミンやpーフェニレンジアミン)と相互に溶解するが、多元金属系硫黄化合物を溶解・分離できない溶剤のことをいう。
【0048】
銅/インジウム合金、銅/ガリウム合金の使用により、反応時間が有効に減少され、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物のCIGS粉材がすばやく合成され、材料の割合が把握しやすく、反応時間が短く、常圧下で、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物(Cux(In1ーyGay)Se(2+z))がすばやく合成され、ターゲット材に焼結され、セレン化も不要である。
【0049】
図5に示すのは、図4で得られた、本発明の多元金属系硫黄化合物の結晶体構造を説明するイメージである。銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物のCIGS粉体に関する鑑定分析は、X光回折装置(以下、XRDという)で行われるが、その結晶体構造は図3に示すように、Cu(In,Ga)Se2.特殊ピーク値はそれぞれ、112 (26.90)、204/220 (44.65)、116/312 (52.95)にある。同時に、Cu3Se2特殊ピーク値の110 (25.12)を検出した。原子比は、X光フォトルミネッセンス解析装置(以下、EDSという)で測定された、Cu/(In+Ga)の比率は1.0、Ga/(In+Ga)の比率は約0.3である。過量のセレン(Se)を使用して、Cu3Se2の副産物が生じる。
【0050】
図6は、本発明のまたもう一つの多元金属系硫黄化合物のフローステップとして、本発明の多元金属系硫黄化合物の製造方法で行われたまたもう一つの実施例を説明するためのフローチャートである。
【0051】
図6に示すように、ステップ41では、少なくとも一つの容器を使用する。それからステップ42へ入る。
【0052】
ステップ42では、まず、500mlの容器(例えば、三口フラスコ)を100℃まで加熱し、不活性ガス(例えば、窒素ガス、ヘリウムガスまたはアルゴンガス)を注入し、1時間の除水・酸素除去を経て、ガリウムインゴットを30℃まで加熱し。約0.04モル取り、銅粉を0.18モル、インジウム粉末を0.16モル、及びセレン粉末を0.44モル取る。200℃以下でN2ーH2 またはN2を注入し、0.5時間放置後、ガリウムインゴット、銅粉、インジウム粉末、及びセレン粉末を原子比により調合し、該容器(三口フラスコ)の中に入れる。そこで、各元素間の割合、例えば、銅:インジウム:ガリウム:セレンは、0.18モル:0.16モル:0.04モル:0.38モルである。それからステップ43へ入る。
【0053】
ステップ43では、1.2モルの2−アミノベンゾニトリル(有機溶剤)を取り、瓶の中へ入れる。少なくとも一種の、沸点240℃以上でpH値7〜10の弱アルカリ性の有機溶剤で、ガリウムインゴット、銅粉、インジウム粉末、及びセレン粉末を溶かし、磁石で1時間撹拌し、次第に240℃まで加熱し、温度が安定してから、12時間反応する。その後、ステップ44へ入る。
【0054】
ステップ44では、温度を80℃またはそれ以下に下げ、非溶剤(non−solvent)(例えば、メタノールまたはトルエン)を160ml入れ、銅ーインジウムーセレン元素化合物の黒い粉体を沈澱、分離、ろ過させ、更に、非溶剤(non−solvent)(例えば、メタノールまたはトルエン)洗浄し、銅ーインジウムーセレン元素化合物の粉体を真空で、50℃またはそれ以上で1時間乾燥する。
【0055】
図7に示すのは、図6で得られた、本発明の多元金属系硫黄化合物の結晶体構造を説明するイメージである。銅ーインジウムーセレン元素化合物の粉体に関する鑑定分析は、X光回折装置(以下、XRDという)で行われる。Cu0.9(In,Ga)Se1.9特殊ピーク値はそれぞれ、112 (27.19)、204/220 (44.69)、116/312 (52.81)、008/400 (65.02)、316/332 (71.25)、228/424 (82.18)である。スペクトルで検出した不純物は極僅かで、原子比はEDXで測定されたCu/(In+Ga)の比率は約0.9、Ga/(In+Ga)の比率は約0.2となる。
【0056】
図8は、本発明の更にもう一つの多元金属系硫黄化合物のフローステップとして、本発明の多元金属系硫黄化合物の製造方法で行われた更にもう一つの実施例を説明するためのフローチャートである。
【0057】
図8に示すように、ステップ51では、少なくとも一つの容器を使用する。それからステップ52へ入る。
【0058】
ステップ52では、まず、500mlの容器(例えば、三口フラスコ)を100℃まで加熱し、不活性ガス(例えば、窒素ガス、ヘリウムガスまたはアルゴンガス)を注入し、1時間の除水・酸素除去を経て、一種以上の金属合金粉末、例えば、銅/インジウム合金粉末、及びセレン粉末を取る。200℃以下でN2ーH2 またはN2を注入し、0.5時間放置後、銅/インジウム合金粉末、及びセレン粉末を原子比により調合し、該容器(三口フラスコ)の中へ入れる。銅/インジウム合金粉末の粒サイズ100μm、セレン粉末の粒サイズ300meshである。各元素間の割合、例えば、銅:インジウム:セレンは0.18モル:0.18モル:0.38モルである。それからステップ53へ入る。
【0059】
ステップ53では、1.2モルの2ーアミノベンゾニトリル(有機溶剤)を取り、瓶の中へ入れる。少なくとも一種の、沸点240℃以上でpH値7〜10の弱アルカリ性の有機溶剤で、銅/インジウム合金粉末、及びセレン粉末を溶かし、磁石で1時間撹拌し、次第に240℃まで加熱し、温度が安定してから、12時間反応する。その後、ステップ54へ入る。
【0060】
ステップ54では、温度を80℃またはそれ以下に下げ、非溶剤(nonーsolvent)(例えば、メタノールまたはトルエン)を160ml入れ、銅ーインジウムーセレン元素化合物の黒い粉体を沈澱、分離、ろ過させ、更に、非溶剤(nonーsolvent)(例えば、メタノールまたはトルエン)で洗浄し、銅ーインジウムーセレン元素化合物の粉体を真空で、50℃またはそれ以上で1時間乾燥する。
【0061】
図9に示すのは、図8で得られた、本発明の多元金属系硫黄化合物の結晶体構造を説明するイメージである。銅ーインジウムーセレン元素化合物の粉体に関する鑑定分析は、X光回折装置(以下、XRDという)で行われる。CuInSe2.特殊ピーク値はそれぞれ、112 (26.60)、204/220 (44.25)、116/312 (52.35)にあり、スペクトルで検出された不純物は極少ない。
【0062】
以上の実施例をまとめると、本発明による多元金属系硫黄化合物及びその製造方法は、半導体薄膜太陽電池に応用されるもので、本発明の多元金属系硫黄化合物の製造方法により、多元金属系硫黄化合物のナノ粉末を合成するとき、含有する一種以上の金属元素はすべて構成元素の純元素粉体から使用し、及び/又は一種以上の金属合金粉末を原子比より調合し、常圧の液相合成法で合成されることになる。しかも、合成工程において使用される有機溶剤は芳香族アミン類化合物であり、該芳香族アミン類化合物は、沸点240℃以上で、pH値7〜10の弱アルカリ性であり、それゆえ、高温下でキレート反応で多元金属系硫黄化合物が生成される。例えば、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物(CIGS materials)を例として、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物は、半導体薄膜太陽電池に必要とされる化合物であり、直接に塗布成膜し、ターゲット材に作られ、スパッタリング成膜される。それ故、セレン化工程は不要で、製造工程を簡単化して、塗膜層の組成の一致性をアップさせることで、製品の良品率も生産効率も向上できる。
【0063】
本発明の多元金属系硫黄化合物及びその製造方法は、以下のような長所がある。
【0064】
半導体薄膜太陽電池の環境に応用され、多元金属系硫黄化合物のナノ粉末を合成するとき、含有する一種以上の金属元素はすべて、構成元素の純元素粉体から使用し、及び/又は一種以上の金属合金粉末を原子比により調合し、常圧の液相合成法で合成されることになり、高温高圧の合成条件は不要で、しかもハロゲンイオンを含まず、大量生産が可能になる、多元金属系硫黄化合物及びその製造方法を提供できる。
大気圧環境下で、ナノ寸法の銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物のCIGS粉体は、ハロゲンイオンを含まず、簡単で低コストでかつ大量生産され、該銅ーインジウムーガリウムーセレン化合物の材料は製造工程のニーズに応じて、一定範囲内で、銅、インジウム、ガリウム、セレンの原子比を好きなように変化させて、太陽電池ユニットの效率を高められる。しかも、該銅ーインジウムーガリウムーセレン化合物の材料を使用して、材料成分が均一なインク及びスパッタリングターゲット材を作り、製造工程の安定性と成膜の品質を高められる。
本発明の多元金属系硫黄化合物製造方法で作られた、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物(CIGS materials)は、半導体薄膜太陽電池に必要とされる化合物であり、直接に塗布成膜し、ターゲット材に作られ、スパッタリング成膜される。そのため、セレン化工程は不要で、製造工程を簡単化して、塗膜層の組成の一致性をアップさせることで、製品の良品率も生産効率も向上できる。
【0065】
上述した内容は、本発明の好適な実施例を説明するのみに用いられるのであり、それを以って本発明の範囲を制限してならず、本発明に掲示したコンセプトや考えなどを改造や修正して、これと同等な効果を得たとしても、すべて後述の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の多元金属系硫黄化合物の製造方法フローステップを説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の多元金属系硫黄化合物を作るフローステップとして、本発明における多元金属系硫黄化合物の製造方法で行われる実施例を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2で得られた、本発明の多元金属系硫黄化合物の結晶体構造を説明するイメージである。
【図4】本発明のもう一つの多元金属系硫黄化合物のフローステップとして、本発明における多元金属系硫黄化合物の製造方法で行われたもう一つの実施例を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4で得られた、本発明の多元金属系硫黄化合物の結晶体構造を説明するイメージである。
【図6】本発明のまたもう一つの多元金属系硫黄化合物のフローステップとして、本発明の多元金属系硫黄化合物の製造方法で行われたまたもう一つの実施例を説明するためのフローチャートである。
【図7】図6で得られた、本発明の多元金属系硫黄化合物の結晶体構造を説明するイメージである。
【図8】本発明の更にもう一つの多元金属系硫黄化合物のフローステップとして、本発明の多元金属系硫黄化合物の製造方法で行われた更にもう一つの実施例を説明するためのフローチャートである。
【図9】図8で得られた、本発明の多元金属系硫黄化合物の結晶体構造を説明するイメージである。
【符号の説明】
【0067】
11 12 13 14 ステップ
21 22 23 24 ステップ
31 32 33 34 ステップ
41 42 43 44 ステップ
51 52 53 54 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの容器を使用し、
一種以上の金属元素の純元素粉体、及び/又は一種以上の金属合金粉末、及び一つの硫黄族元素を該容器の中に入れ、
一つの有機溶剤を該容器の中へ入れ、
該有機溶剤は沸点が約240℃以上で、pH値が約7〜10にある弱アルカリ性の特性を有するものであり、
合成反応を行い、一種以上の該金属合金粉末、一つの該硫黄族元素、及び該有機溶剤を反応温度まで加熱し、多元金属系硫黄化合物を合成させ、該反応温度は200℃以上で行われるという手順が含まれる
ことを特徴とする多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項2】
前記一種以上の該金属合金粉末は、銅元素、インジウム元素、ガリウム元素からなるグループから選択される一種以上であり、
前記一つの該硫黄族元素は、硫黄元素、セレン元素及びテルル元素からなるグループから選択される一つ
であることを特徴とする請求項1に記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項3】
前記一種以上の該金属合金粉末は、銅/インジウム合金、及び銅/ガリウム合金からなるグループから選択される一種以上であり、
前記一つの該硫黄族元素は、硫黄元素、セレン元素及びテルル元素からなるグループから選択される一つであり、
前記多元金属系硫黄化合物は、銅ーインジウムーガリウムーセレン元素化合物であることを特徴とする請求項1に記載の該多元金属系硫黄化合物製造方法。
【請求項4】
前記有機溶剤は芳香族アミン類で、その化学構造式は下記
【化2】

であることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶剤において、R'とR''はそれぞれ、水素原子、芳香基、炭素数1〜5のアミノ基及び炭素数1〜5のアルコール基からなるグループから選択される二つであることを特徴とする、請求項4に記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項6】
該有機溶剤は、ジフェニルアミン(diphenylamine)、Nーフェニルベンジルアミン(Nーphenylbenzylamine)、2ーアニリノエタノール(2ーanilinoethanol)、Nーフェニルエチレンジアミン(Nーphenylethyleneーdiamine)からなるグループから選択される一つであることを特徴とする請求項5に記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項7】
該有機溶剤は芳香族アミン類で、その化学構造式は下記
【化3】

であり、該有機溶剤の上述のRは、水素原子、炭素数1〜10アルキル基、炭素数1〜10のアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ニトリル基及び芳香基からなるグループのいずれかの一つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項8】
該有機溶剤は、4ーブチルアニリン(4ーbutylaniline)、2ーフェニルベンジルアミン(2ーbiphenylylamine)、2ーアミノベンゾニトリル(2ーaminobenzonitrile)、N,Nージエチル1,4ーフェニレンジアミン(N,Nーdiethylー 1,4ーphenylenediamine)及びoーフェネチジン(oーphenetidine)からなるグループから選択される一つであることを特徴とする請求項7に記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項9】
該有機溶剤は芳香族二アミン類で、その化学構造式は下記の通り
【化4】

であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項10】
Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、ニトリル基及び芳香基からなるグループから選択される一つであることを特徴とする請求項9に記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項11】
該有機溶剤化合物は少なくとも、1,2−フェニレンジアミン(1,2−phenylenediamine)、1,3−フェニレンジアミン(1,3−phenylenediamine)、1,4−フェニレンジアミン(1,4−phenylenediamine)、4−メチル− 1,3−フェニレンジアミン(4−methyl− 1,3−phenylenediamine)からなるグループから選択される一つであることを特徴とする請求項10に記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項12】
前記合成反応を行う前に、使用する該容器を約100℃以上まで加熱し、不活性ガスを注入し、除水・酸素除去をしてから、該合成反応を行う方法であって、
前記不活性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス及びアルゴンガスからなるグループから選択される一つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項13】
該合成反応に使用される有機溶剤は、少なくとも二種からなる混合溶剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項14】
該多元金属系硫黄化合物は、構造式Cux(In1ーyGay)Sezで、0.8≦x≦1.2、0≦y≦1.0及1.6≦z≦2.4であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項15】
少なくとも一つの容器を使用し、
一種以上の金属元素の純元素粉体、及び/又は一種以上の金属合金粉末、及び一つの硫黄族元素を該容器の中に入れ、
一つの有機溶剤を該容器の中へ入れ、該有機溶剤は沸点が約240℃以上で、pH値が約7〜10にある弱アルカリ性の特性を有するものであり、
合成反応を行い、一種以上の該金属合金粉末、一つの該硫黄族元素、及び該有機溶剤を反応温度まで加熱し、多元金属系硫黄化合物を合成させるが、該反応温度は200℃以上で行われ、そして、
該多元金属系硫黄化合物に対して、降温ステップ、分離ステップ、ろ過ステップ、洗浄ステップと乾燥ステップを行って、該多元金属系硫黄化合物のナノ粉体を形成するという手順が含まれることを特徴とする多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項16】
該降温ステップは、該多元金属系硫黄化合物の温度を約80℃以下まで下げるステップであり、
該分離ステップは、非溶剤を加えて、該多元金属系硫黄化合物を分離させるステップであり、該非溶剤は、メタノールまたはトルエンのいずれかの一つであり、及び/又は、
該洗浄ステップは、非溶剤で該多元金属系硫黄化合物を洗浄するステップであり、該非溶剤は、メタノールまたはトルエン中のいずれかの一つであり、及び/又は、
該乾燥ステップは、真空で約50℃以上で該多元金属系硫黄化合物を約1時間乾燥するステップであること
を特徴とする請求項15に記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項17】
該ナノ粉体は、スパッタリング工程または塗布印刷工程のいずれかの一つに応用されることを特徴とする請求項15に記載の該多元金属系硫黄化合物の製造方法。
【請求項18】
ナノ粉体は、ターゲット材に高温で加圧焼結される手順が含まれ、該ナノ粉体は請求項15に記載の該多元金属系硫黄化合物の該ナノ粉体であることを特徴とするスパッタリング工程に用いられるターゲット材の製造方法。
【請求項19】
ナノ粉体をインクに分散させる手順が含まれ、該ナノ粉体は、請求項15に記載の該多元金属系硫黄化合物の該ナノ粉体であることを特徴とする塗布印刷工程に用いられる塗布材料の製造方法。
【請求項20】
該多元金属系硫黄化合物は、
一種以上の金属元素の純元素粉体、及び/又は
一種以上の金属合金粉末、
一つの硫黄族元素、及び
一つの有機溶剤
を共同で反応温度まで加熱し、合成反応させて得られるものであり、
該有機溶剤は沸点が約240℃以上で、pH値が約7〜10にある弱アルカリ性の特性を有するもので、該反応温度は200℃以上に設けられていることを特徴とする多元金属系硫黄化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−215499(P2010−215499A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43997(P2010−43997)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(510056124)
【出願人】(510056135)慧濠光電科技股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】