説明

多分岐ポリマー

ポルフィリン部分、およびそれに共有結合している1個または複数の多分岐ポリマー鎖を含むことを特徴とする水溶性の多分岐ポリマー。Fe(II)イオンでメタル化されたポリマーは血液の酸素結合特性を模倣可能である。ポリマーは、ヘモグロビンの代替品として、合成血液製剤中に、また代用血液として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多分岐ポリマーに関し、より詳しくは、ポルフィリン部分を含む多分岐ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
多分岐ポリマー(2世代(generation)以上の分岐を含むポリマー)はよく知られている。1個のタイプAの基および2個のタイプBの基を含むABモノマーからの分子量の大きい多分岐ポリマーの形成は、特許文献1に最初に記載された。それ以降、数多くの他の多分岐ポリマーが、例えば非特許文献1、非特許文献2、ならびに特許文献2、特許文献3および特許文献4により報告されている。これらの多分岐ポリマーのすべては、ABモノマーに関わる重縮合プロセスで得られた。
【0003】
位相幾何学的(topologically)には、多分岐ポリマーは、少なくとも2個の分岐点と、末端基から明らかに区別可能な1個の焦点単位または核とを有する。焦点または核は、一般に重合の開始位置となる。公知の多分岐ポリマーは0.2から0.8の間の高い分岐度を有する不規則に分岐した構造を有する。AB多分岐ポリマーの分岐度DBは等式DB=(1−f)で定義されている(式中、fは2個のB基のうち1個しかA基と反応していないABモノマー単位のモル分率である)。
【0004】
ポルフィリンは広く天然に存在し、各種の生物プロセスで重要な役割を果たす。ポルフィリンの化学構造を式1に示す。
【0005】
【化1】

【0006】
ポルフィリンの基本構造は4つのメチン架橋で結合された4個のピロール単位からなる。ポルフィリンの1つの特徴は、そのメタル化および脱メタル化される能力である。多くの金属(例えばFe、Zn、Cu、Ni)をポルフィリンの空洞(cavity)に、各種の金属塩を用いて挿入することができる。金属の除去(脱メタル化)は、例えば酸処理で実行することができる。
【0007】
ポルフィリンは、様々な方法、例えばモノピロールの四量体化、ジピロール中間体の縮合、または鎖状テトラピロールの環化により合成することができる。
【0008】
ヘム(鉄(II)プロトポルフィリン−IX錯体)は、生体組織中で二酸素を輸送および保存する役割を担う分子であるヘモグロビンおよびミオグロビン中の補欠分子族である。その化学構造を式2に示す。
【0009】
【化2】

【0010】
ヘモグロビンは4個のタンパク質サブユニットを含み、各サブユニットはその「活性部位」にポルフィリン部分を有する。鉄(II)原子は各ポルフィリン部分の中心に位置し、二酸素を可逆的に結合するのはこの原子である。タンパク質骨格の主要な役割は、疎水性環境中でポルフィリン活性部位を保護および隔離することにある。
【0011】
ヘムは、過酸化水素による基質の酸化を触媒する酵素ペルオキシダーゼにも見ることができる。同じくヘムを含む関連酵素カタラーゼは、過酸化水素の水および酸素への分解を触媒する。他のヘム含有タンパク質としては、電子伝達鎖中で一電子伝達体として働くシトクロムが挙げられる。
【0012】
ポルフィリン環上のピロール単位の1つの還元により、クロリンと呼ばれるポルフィリン誘導体の部類が生じる。緑色植物に豊富に見られるクロロフィルはこの分類に属し、光合成のプロセスに重要な役割を果たす。
【0013】
近年、共有結合したマルチポルフィリンアレイを調製し、このような系を人工光合成に使用することが試みられている。デンドリマー骨格へのポルフィリン部分の取り込みは非特許文献3および非特許文献4に記載されている。デンドリマーの主な欠点は、時間と費用の両方がかかる多段階合成で構築しなければならないことである。
【0014】
複数のポルフィリン部分を含む多分岐脂肪族ポリエーテルポリマーは非特許文献5に記載されている。これらのポリマーは、光物理学および電気化学研究における、ならびに光電子デバイスを構築するための使用が提案されてきたが、それらの生体不適合性(bio−incompatibility)および生物媒体における相対的不溶性のため、それらの生物系での使用は限定されている。
【0015】
【特許文献1】米国特許第4857630号明細書
【特許文献2】米国特許第5196502号明細書
【特許文献3】米国特許第5225522号明細書
【特許文献4】米国特許第5214122号明細書
【非特許文献1】Hawker et al, J. Am. Chem. Soc. 113, 4252-4261 (1991)
【非特許文献2】Turner et al, Macromolecules, 27, 1611 (1994)
【非特許文献3】Jiang and Aida, J. Macromol. Sci, Pure Appl. Chem., 1997, A34, 2047
【非特許文献4】Weyermann and Diederich J. Chem, Soc., Perkins Trans, 1, 2000, 4231-4233
【非特許文献5】Hecht et al, Chem. Commun., 2000, 313-314
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、ポルフィリン部分を含む水溶性の多分岐ポリマーが提供される。
【0017】
第1の態様では、本発明は、ポルフィリン部分、およびそれに共有結合している1個または複数の多分岐ポリマー鎖を含むことを特徴とする水溶性の多分岐ポリマーを提供する。
【0018】
好ましくは、ポルフィリン部分はポリマーの焦点核(focal core)であり、それに共有結合している最大4個の多分岐ポリマー鎖で囲まれている。
【0019】
第2の態様では、本発明は、1個または複数のポルフィリン部分を含む水溶性の多分岐ポリマーの製造方法であって、重合開始剤の核としての官能基化ポルフィリンまたはポルフィリン誘導体の存在下でABモノマーを重合反応させることを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、Fe(II)原子が挿入されているポルフィリン部分を含むことを特徴とする水溶性の多分岐ポリマーを提供する。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、可逆的に酸素を結合できるFe(II)原子が挿入されているポルフィリン部分を含む水溶性の多分岐ポリマーの水溶液を含むことを特徴とする合成血液製剤を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の多分岐ポリマーは下記の構造を有することが好ましい。
【0023】
P(HB) (3)
(式中、Pは下記定義のポルフィリン部分であり、HBは多分岐ポリマー鎖であり、nは1から4の整数である)
【0024】
本明細書で「水溶性」とは、多分岐ポリマーが、少なくとも1g/リットル、より好ましくは少なくとも50g/リットル、最も好ましくは少なくとも100g/リットルの範囲まで水溶性であることを意味する。本発明の多分岐ポリマーは、例えばポリマー鎖中の可溶化置換基の存在により水溶性となることができる。中性の水酸基が可溶化置換基として特に効果的であるが、アミン、酸、四級アンモニウムまたは他の同様な基などの基も使用することができる。当然ながら、水溶性ポリマー鎖はいくつかの異なる可溶化置換基を含むことができる。可溶化置換基は、多分岐ポリマー鎖のモノマー成分から誘導することができ、あるいは置換反応で導入することができる。
【0025】
多分岐ポリマー鎖は、例えばポリエーテル、ポリエステル、およびポリアミドであってもよい。ポリグリセロールおよび他のヒドロキシル置換ポリエーテルが特に好ましい。多分岐ポリマーがポリエーテルの場合、例えば2−(ブロモメチル)−2−メチルプロパン−1,3−ジオール(またはその誘導体)などのABモノマーの重合により、それを導くことができる。
【0026】
多分岐ポリマーがポリエステルの場合、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸および3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパン酸などのABモノマーの重合により、それを導くことができる。
【0027】
モノマーが開環重合により重合する潜在性ABモノマーが特に好ましい。潜在性ABモノマーの好ましい例としては、グリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)、2,3−エポキシ−1−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノールおよび4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトン(ならびにそれらの単純な誘導体)が含まれる。
【0028】
重合反応は、例えば有機溶媒中で還流下、好ましくは40〜180℃の温度で行うことができる。
【0029】
ポルフィリン部分に共有結合している多分岐ポリマー鎖は、ポルフィリン部分の周りに疎水性領域を与え、ポルフィリン部分を保護および隔離するのに十分なサイズ、形状および数を有することが好ましい。これは、ポルフィリン部分が挿入された鉄(II)イオンを含む場合、鉄(II)イオンの酸化速度(したがって不活性化速度)を低下させる上で特に重要である。最大限の保護のためには、ポルフィリン部分に4個の多分岐ポリマー鎖が共有結合していることが好ましい。本発明の多分岐ポリマーの分子量は、好ましくは1000〜10,000、より好ましくは4000〜7000、さらに好ましくは5000〜6000の範囲である。多分岐ポリマーの多分散度は1.1〜3.0であることが好ましい。
【0030】
本明細書で「ポルフィリン部分」とは、4個の結合したピロール単位の基本構造を有する部分およびその誘導体を意味し、ポルフィリン(式1);アルキル置換ポルフィリン、例えばC1〜6テトラ(ヒドロキシアルキル)置換ポルフィリン;アリール置換ポルフィリン、例えばテトラフェノールポルフィリン;ポルフィリンのメタル化誘導体、例えば鉄(II)プロトポルフィリン−IX錯体(式2);ポルフィリンの還元生成物、例えばクロリン(式3);
【0031】
【化3】

【0032】
還元したピロール単位が互いに対角線の反対側にあるクロリンの還元生成物、例えばバクテリオクロリン(式4);
【0033】
【化4】

【0034】
ならびにコリン(式5);
【0035】
【化5】

【0036】
およびコロール(式6)などのポルフィリン様部分を含む。
【0037】
【化6】

【0038】
官能基化ポルフィリンまたはポルフィリン誘導体は、ABモノマーの重合を開始し、伸張する多分岐ポリマーと共有結合を形成することが可能なものである。官能基は、ABモノマーと反応可能な官能基のいずれかであることができ、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基、酸基、アミン基、エポキシおよびエステル基を含む。官能基は、ポルフィリンを不活性化しないのであれば、ポルフィリンまたはポルフィリン誘導体の環上の任意の好都合な位置に導入することができる。したがって、ピロール環およびメチン架橋基において適宜置換を行うことができる。ABモノマーの重合を開始させ、伸張する多分岐ポリマーと共有結合を形成することができる最大8個の官能基を導入することができるが、4個で十分であることが多い。好ましい官能基化ポルフィリンおよびポルフィリン誘導体としては、特に5,10,15,20−置換ポルフィリン、特に5,10,15,20−ヒドロキシアリール置換ポルフィリン、例えば5,10,15,20−テトラフェノールポルフィリンおよび5,10,15,20−テトラ(ジヒドロキシフェニル)ポルフィリンを含む。このような化合物は、例えば水素化ナトリウムなどの脱プロトン化剤との反応により活性化されて重合開始剤となることができる。
【0039】
本明細書で「焦点核(focal core)」とは、そこから多分岐ポリマー鎖が放射状に広がるようにみえる領域を意味する。本発明の好ましいプロセスでは、ABモノマーが重合して、ポリマー分子の中心または核を占めるポルフィリン部分から放射状に広がる多分岐ポリマー鎖を形成するような重合条件下で、官能基化ポルフィリンまたは誘導体はABモノマーと反応する。潜在性ABモノマーとしてグリシドールを用い、反応開始剤として5,10,15,20−テトラフェノールポルフィリンを用いる本発明の重合反応の具体例を反応スキームIに示す。
【0040】
【化7】

【0041】
本発明の特に有用なポリマーは、ポルフィリン部分が、好ましくはFe(II)イオンでメタル化されているポリマーである。メタル化は、鉄塩、例えば塩化鉄(II)または臭化鉄(II)を用いて行うことができる。そのようなポリマーの好ましい実施形態は、軸配位子の存在下で、血液の酸素結合特性を模倣することが可能であり、ヘモグロビンの代替品として使用することができる。本発明のこの態様では、例えばピリジン、イミダゾールおよびヒスチジンなどの窒素供与体配位子を含む様々な軸配位子を使用することができる。特に好ましい供与体配位子は1,2−ジメチルイミダゾールである。ポルフィリン錯体を安定化させるためには、軸配位子がメタル化ステップ時に存在することが好ましい。
【0042】
生理学的に適合性のある液体中のこのようなポリマーの溶液を合成血液製剤として、また例えば緊急治療における代用血液として使用することもできる。
【0043】
本発明の多分岐ポリマーの他の実施形態を触媒として、また光線力学療法において使用することができる。
【0044】
本発明を以下の非制限的な実施例により説明する。
【実施例】
【0045】
(ポルフィリンを中心とする多分岐ポリグリセロールの合成)
反応スキーム1に従って反応を行った。磁気攪拌子および還流冷却器を備えた丸底フラスコ中(窒素雰囲気下)で重合を行った。水素化ナトリウム(0.071g、2.9mmol)を用いて、テトラヒドロフラン(15ml)中のテトラフェノールポルフィリン(1)(1.0g、1.48mmol)を脱プロトン化した。次に、グリシドール(5.46g、80mmol)をエチレングリコールジメチルエーテルに溶かした溶液15mlを、シリンジポンプを通じて65℃で12時間にわたって加えた。次に、THFを減圧除去してフラスコの底部に赤色ペーストが残った。次に、過剰量のエチレングリコールジメチルエーテルをデカントして除去し、粗生成物をメタノールに溶解し、アセトン中で2回析出させた。乾燥(15時間、80℃、減圧下)後、ポルフィリンを中心とするポリグリセロールを赤色高粘度ペーストとして収率45%で得た(微量のモノマーまたはポルフィリンはGPCにより検出されなかった)。δ(250MHz,DO):7.38(d(b),Ph−H)、6.95(d(b),Ph−H)、6.62(s(b),β−H)4.91(s,OH)、4.05〜3.15(m,CおよびC)。GPC(water;pH7.4)、Mn 6507、Mw 7960(DP〜80)。UV:λmax418nm。
【0046】
ポルフィリンを中心とする多分岐ポリグリセロールの水溶性を24℃で測定したところ、100mg/mlであった。
【0047】
(Fe(II)−1,2−ジメチルイミダゾール・ポルフィリンを中心とする多分岐ポリグリセロールの合成)
ポルフィリンを中心とする多分岐ポリグリセロールは、溶媒としてのメタノール中でFeBrおよびピリジンと共にポリマーを還流することでメタル化させることができる。得られたFe(III)ポルフィリンを中心とする多分岐ポリグリセロールは、亜ジチオン酸ナトリウムNaとの反応により還元される。酸素結合性ポリマーを生成するためには、軸配位子1,2−ジメチルイミダゾールの存在下で還元を行うことが好ましい。
【0048】
(可逆的O結合の測定)
本発明のFe(II)を中心とする多分岐ポリマー(HBP)の酸素を結合する能力は下記の通り証明することができる。
【0049】
実験は、スバシールを取り付けた石英UVキュベット(光路長1cm)中で、溶媒として水(脱気)を用いて行う。次に、4倍過剰の軸配位子1,2−ジメチルイミダゾールを含むFe(II)を中心とするHBPの溶液に酸素を1分間通気する。次に、溶液のUVスペクトルを測定し、ポルフィリンのソーレー帯の明確で特徴的なシフトが観察される(すなわち、Fe(II)からFe(II)/O錯体へ)。ソーレー帯の位置は、窒素を同じ溶液に5分間通気した後、Fe(II)に対応するピークまで戻る。次に、この手順(Oの後でN)を4回繰り返し、Fe(II)HBPが可逆的にOを結合可能であることが明確に示される。スペクトルに現れ始めるFe(III)に対応するピークで特徴付けられるように、連続サイクル(Oの後でN)により不可逆的な酸化が発生し始める。
【0050】
読者の注意は、本出願に関連する本明細書と同時またはそれ以前に提出され、本明細書と共に公衆の閲覧に供されるすべての論文および文献を対象とし、すべてのこのような論文および文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示された特徴のすべて、および/または本明細書に開示された任意の方法またはプロセスのステップのすべては、任意の組合せで組み合わせることができるが、ただし、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除く。
【0052】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示された各特徴は、特記されない限り、同じ、同等の、または同様の目的を有する代替的特徴に置き換えることができる。したがって、特記されない限り、開示された各特徴は、同等または類似の特徴の一般系列のうち一例に過ぎない。
【0053】
本発明は任意の前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規の1つまたは任意の新規の組合せ、あるいは本明細書に開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規の1つまたは任意の新規の組合せに及ぶ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルフィリン部分、およびそれに共有結合している1個または複数の多分岐ポリマー鎖を含む水溶性で多分散系の多分岐ポリマーであって、少なくとも1g/リットルの範囲まで水溶性であることを特徴とする多分岐ポリマー。
【請求項2】
ポルフィリン部分はポリマーの焦点核であり、それに共有結合している最大4個の多分岐ポリマー鎖で囲まれていることを特徴とする請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
式3の構造を有する請求項1または2に記載のポリマーであって、
P(HB) (3)
Pは下記定義のポルフィリン部分であり、HBは多分岐ポリマー鎖であり、nは1〜4の整数であることを特徴とするポリマー。
【請求項4】
多分岐ポリマーはポリマー鎖中に可溶化置換基を備えることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
可溶化置換基は水酸基、アミン基、酸基、および四級アンモニウム基から選択されることを特徴とする請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
可溶化置換基は多分岐ポリマー鎖のモノマー成分から誘導されることを特徴とする請求項4または5に記載のポリマー。
【請求項7】
多分岐ポリマー鎖はポリエーテル、ポリエステルまたはポリアミドであることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
多分岐ポリマー鎖はポリグリセロールまたは他のヒドロキシル置換ポリエーテルであることを特徴とする請求項7に記載のポリマー。
【請求項9】
ポルフィリン部分に共有結合している多分岐ポリマー鎖は、ポルフィリン部分の周りに疎水性領域を与え、ポルフィリン部分を保護および隔離するのに十分なサイズ、形状および数を有することを特徴とする前記請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項10】
ポルフィリン部分には4個の多分岐ポリマー鎖が共有結合していることを特徴とする請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
多分岐ポリマーの分子量は2000から24000の範囲であることを特徴とする前記請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項12】
多分岐ポリマーの多分散度は1.1から3.0であることを特徴とする前記請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項13】
ポルフィリン部分はポルフィリン、アルキル置換ポルフィリン、アリール置換ポルフィリン、ポルフィリンのメタル化誘導体、クロリン、バクテリオクロリン、コリンおよびコロールから選択されることを特徴とする前記請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項14】
ポルフィリン部分は鉄(II)プロトポルフィリン−IX錯体であることを特徴とする請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
実質的に実施例に記載の通りであることを特徴とする前記請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項16】
実質的に上記に記載の通りであることを特徴とする前記請求項1〜15のいずれか一項に記載の多分岐ポリマー。
【請求項17】
1個または複数のポルフィリン部分を含む水溶性で多分散性の多分岐ポリマーの製造方法であって、重合開始剤の核としての官能基化ポルフィリンまたはポルフィリン誘導体の存在下でABモノマーを重合反応させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
多分岐ポリマーはポリエーテルであり、ABモノマーは2−(ブロモメチル)−2−メチルプロパン−1,3−ジオールまたはその単純な誘導体から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
多分岐ポリマーはポリエステルであり、ABモノマーは4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸および3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパン酸から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ポリマーは潜在性ABモノマーであり、モノマーは開環重合により重合することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
潜在性ABモノマーはグリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)、2,3−エポキシ−1−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノールおよび4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトンから選択されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
官能基化ポルフィリンまたはポルフィリン誘導体は、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基、酸基、アミン基、エポキシ基およびエステル基から選択される官能基を含むことを特徴とする請求項17〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
官能基化ポルフィリンまたはポルフィリン誘導体は5,10,15,20−置換ポルフィリンであることを特徴とする請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
官能基化ポルフィリンまたはポルフィリン誘導体は5,10,15,20−テトラフェノールポルフィリンであることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
官能基化ポルフィリンまたはポルフィリン誘導体は脱プロトン化剤との反応で活性化されることを特徴とする請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ABモノマーが重合して、伸張するポリマー分子の中心または核を占めるポルフィリン部分から放射状に広がる多分岐ポリマー鎖を形成するような重合条件下で、官能基化ポルフィリンまたは誘導体はABモノマーと反応することを特徴とする請求項17〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
有機溶媒中で還流下、40〜180℃の温度で行われることを特徴とする請求項17〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
実質的に実施例に記載の通りであることを特徴とする請求項17〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
実質的に上記に記載の通りであることを特徴とする多分岐ポリマーを製造するための方法。
【請求項30】
金属イオンが挿入されているポルフィリン部分を含むことを特徴とする水溶性で多分散性の多分岐ポリマー。
【請求項31】
金属イオンはFe(II)イオンであることを特徴とする請求項30に記載の水溶性の多分岐ポリマー。
【請求項32】
ポリマーは請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリマーであることを特徴とする請求項30または31に記載の水溶性の多分岐ポリマー。
【請求項33】
金属イオンは軸配位子に会合していることを特徴とする請求項30〜32のいずれか一項に記載の水溶性の多分岐ポリマー。
【請求項34】
軸配位子は窒素供与体配位子であることを特徴とする請求項33に記載の水溶性の多分岐ポリマー。
【請求項35】
軸配位子はピリジン、イミダゾールまたはヒスチジンであることを特徴とする請求項33または34に記載の水溶性の多分岐ポリマー。
【請求項36】
軸配位子は1,2−ジメチルイミダゾールであることを特徴とする請求項33〜35のいずれか一項に記載の水溶性の多分岐ポリマー。
【請求項37】
酸素を可逆的に結合できることを特徴とする請求項33〜36のいずれか一項に記載の水溶性の多分岐ポリマー。
【請求項38】
実質的に実施例に記載の通りであることを特徴とする請求項30〜37のいずれか一項に記載の水溶性の多分岐ポリマー。
【請求項39】
酸素を可逆的にでき、実質的に上記に記載の通りであることを特徴とする水溶性の多分岐ポリマー。
【請求項40】
請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリマーが金属塩と反応することを特徴とする、請求項30〜39のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項41】
金属塩は鉄(II)塩であることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
反応は軸配位子の存在下で行われることを特徴とする請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
軸配位子は1,2−ジメチルイミダゾールであることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
実質的に実施例に記載の通りであることを特徴とする請求項38〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
実質的に上記に記載の通りであることを特徴とする請求項38〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
可逆的に酸素を結合できるFe(II)原子が挿入されているポルフィリン部分を含み、水溶性の多分岐ポリマーの水溶液を含むことを特徴とする合成血液製剤または代用血液。
【請求項47】
多分岐ポリマーは請求項30〜39のいずれか一項に記載のポリマーであることを特徴とする請求項46に記載の合成血液製剤。
【請求項48】
請求項30〜39のいずれか一項に記載のポリマーの、ヘモグロビンの代替品として使用する方法。
【請求項49】
請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリマーの、触媒としての、または光線力学療法において使用する方法。

【公表番号】特表2007−526933(P2007−526933A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540583(P2006−540583)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004841
【国際公開番号】WO2005/052023
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(500413582)ザ ユニバーシティー オブ シェフィールド (9)
【Fターム(参考)】