説明

多分岐光導波路基板及びこの基板を用いた多分岐光導波路チップの製造方法

【解決手段】本発明の多分岐光導波路基板1は、基板上において個々の多分岐光導波路2が1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐された扇状に広がる向きとその反対向きにそれぞれ交互に複数配置された一つの多分岐光導波路ユニット3と、前記一つの多分岐光導波路ユニット4に対して1本の光導波路入出力端面5同士及び複数本の光導波路入出力端面6同士が対向配置された他の多分岐光導波路ユニット4が形成されており、前記一つの多分岐光導波路ユニット3と前記他の多分岐光導波路ユニット4とが離間して配置されている。また、本発明の多分岐光導波路チップ7の製造方法は、前記多分岐光導波路基板1から個々の多分岐光導波路チップ7をダイシングソーにて直線的に切り出すようにする。
【効果】本発明によれば、基板上における多分岐光導波路の配置効率がよく、しかも多分岐光導波路基板からダイシングソーを用いて直線的に多分岐光導波路チップを切り出すことが可能であるので効率的に多分岐光導波路チップを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々の多分岐光導波路チップを製造するために複数の多分岐光導波路が配置された多分岐光導波路基板及びこの基板から多分岐光導波路チップを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)システムに代表される光通信システムがますます発展してきているが、このような光通信システムには様々な光デバイスが用いられている。種々の光デバイスの中の一つに光を分岐・結合する多分岐光導波路があり、この多分岐光導波路は例えばPON(Passive Optical Network)システムなどで多数適用されている。
【0003】
多分岐光導波路を製造するに際しては、複数の多分岐光導波路を配置した多分岐光導波路基板から個々の基板上に形成された多分岐光導波路、即ち多分岐光導波路チップを切り出し、この個々の多分岐光導波路チップを光通信システム内で例えば図2に示すような1×N導波路スプリッタに形成して適用している。
【0004】
図2において、1×N型の多分岐導波路チップ21はV溝22を介して1本の光ファイバ23及び複数本の光ファイバ24と接続されている。ここで、多分岐光導波路25とは基板上の多分岐の光導波路そのもののことをいい、個々に切り出された基板上に形成された多分岐光導波路のことを多分岐光導波路チップという。
【0005】
このような多分岐光導波路の適用は今後さらに増える傾向にあり、また多分岐光導波路チップの製造コストも低減傾向にある。従って、市場におけるシェアを確保若しくは増大しようとするとさらに安価なコストでこの多分岐光導波路チップを提供する必要があるという課題が重要なものとなってくる。
【0006】
従来から多分岐光導波路チップを製造する場合には図3に示すように、一本の光導波路から複数本の光導波路に分岐される多分岐光導波路(1×N導波路スプリッタ)の配置方向を例えば扇状に広がるような方向に一様に統一して多分岐光導波路基板を作成し、この基板から波線で示す切り出し線に沿って個々の多分岐光導波路チップを切り出していた。
【0007】
図3において、多分岐光導波路基板31は多分岐光導波路32が複数個配置されて形成されている。多分岐光導波路基板31から切り出された場合の多分岐光導波路チップ33は長方形の形状をしており、多分岐光導波路チップ33における一本の光導波路入出力端面34と複数本の光導波路入出力端面35がそれぞれ接するように縦横に配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
このような多分岐光導波路基板31から多分岐光導波路チップ33を切り出して製造する場合、多分岐光導波路32の配置状況からダイシングソーにて例えばX1→X1´、X2→X2´、・・・、X6→X6´のようなX方向、またY1→Y1´、・・・、Y4→Y4´のようなY方向に直線的に切り出すことも可能であるので製造効率としては不都合はないが、多分岐光導波路32が扇形の形状であるのに対してチップ基板は長方形であるために基板上の空間部の無駄が多く、基板上における多分岐光導波路32の配置効率が悪いという欠点があった。しかもこのような配置状況の影響は多分岐光導波路の分岐数が多くなるほど顕著になってくる。
【0009】
そこで、基板上の多分岐光導波路の配置効率を上げるために図4に示すように多分岐光導波路が1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐された扇状に広がる向きとその反対向きにそれぞれ交互に配置するような多分岐光導波路基板も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
図4において、多分岐光導波路基板41は多分岐光導波路42が複数個配置されて形成されているが、多分岐光導波路基板41から切り出された場合の多分岐光導波路チップ43は多分岐光導波路が1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐された扇状に広がる向きとその反対向きにそれぞれ交互に配置されている。そして、多分岐光導波路チップ43における1本の光導波路入出力端面44と複数本の光導波路入出力端面45とは、1本の光導波路入出力端面44同士及び複数本の光導波路入出力端面45同士がそれぞれ接するように配置されている。
【0011】
【特許文献1】特開平6−250034号公報
【特許文献2】特開2002−250826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記のような従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
【0013】
即ち、特許文献1や図3に開示されている従来技術は多分岐光導波路チップの製造効率はともかく基板上における多分岐光導波路の配置効率が悪いという問題があった。一方、特許文献2や図4に示すような従来技術は配置効率は改善されているものの製造効率が悪いという問題があった。即ち、図4により説明すれば、Y方向はY1→Y1´、・・・というように直線的に切り出しが可能だとしてもX方向は例えばX1、X2、・・・から切り出した後にX1´、X2´、・・・から切り出さなければならず、どうしても切り出し工程が増加してしまうからである。
【0014】
本発明は上記のような課題を解決したもので、基板上における多分岐光導波路の配置効率がよく、しかも個々の多分岐光導波路チップを効率よく製造できる多分岐光導波路基板及びこの基板を用いた多分岐光導波路チップの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以上の点を解決するため次のような構成からなるものである。
【0016】
即ち、本発明はまず第1の態様として、基板上に1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐される多分岐光導波路が複数個配置され、前記基板から個々の多分岐光導波路チップが切り出されるための多分岐光導波路基板であって、前記基板上において前記個々の多分岐光導波路が1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐された扇状に広がる向きとその反対向きにそれぞれ交互に複数配置された一つの多分岐光導波路ユニットと、前記一つの多分岐光導波路ユニットに対して1本の光導波路入出力端面同士及び複数本の光導波路入出力端面同士が対向配置された他の多分岐光導波路ユニットが形成されており、前記一つの多分岐光導波路ユニットと前記他の多分岐光導波路ユニットとが離間して配置されている。
【0017】
また、第2の態様として、前記第1の態様において、前記基板上の多分岐光導波路ユニットは3個以上配置されている。
【0018】
さらに、第3の態様として、前記第1または第2の態様において、前記多分岐光導波路は8分岐以上の分岐数を有するものである。
【0019】
また、第4の態様として、基板上に1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐される多分岐光導波路が複数個配置され、前記基板から個々の多分岐光導波路チップを切り出す多分岐光導波路チップの製造方法であって、前記基板上において前記個々の多分岐光導波路が1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐された扇状に広がる向きとその反対向きにそれぞれ交互に複数配置された一つの多分岐光導波路ユニットと、前記一つの多分岐光導波路ユニットに対して1本の光導波路入出力端面同士及び複数本の光導波路入出力端面同士が対向配置された他の多分岐光導波路ユニットを前記一つの多分岐光導波路ユニットと前記他の多分岐光導波路ユニットとが離間して配置するように形成し、前記基板から個々の多分岐光導波路チップを切り出すものである。
【0020】
さらに、第5の態様として、前記第4の態様において、前記基板上の多分岐光導波路ユニットは3個以上配置されている。
【0021】
また、第6の態様として、前記第4または第5の態様において、前記多分岐光導波路は8分岐以上の分岐数を有するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の多分岐光導波路基板及びこの基板を用いた多分岐光導波路チップの製造方法によれば、基板上における多分岐光導波路の配置効率がよく、しかも多分岐光導波路基板からダイシングソーを用いて直線的に多分岐光導波路チップを切り出すことが可能であるので効率的に多分岐光導波路チップを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について具体例を用いて説明する。
【0024】
図1は本発明の多分岐光導波路基板の一実施の形態を表した図である。図1において、本発明の多分岐光導波路基板1は、複数の多分岐光導波路2が1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐された扇状に広がる向きとその反対向きにY方向に交互に配置された多分岐光導波路ユニット3と、この多分岐光導波路ユニット3に対してX方向に多分岐光導波路ユニット3と同様に複数の多分岐光導波路2が1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐された扇状に広がる向きとその反対向きにやはりY方向に交互に配置された多分岐光導波路ユニット4とで形成されている。そして、一方の多分岐光導波路ユニット3と他方の多分岐光導波路ユニット4は1本の光導波路の入出力端面5同士、及び複数本の光導波路の入出力端面6同士が対向するように、即ち多分岐光導波路ユニット3と多分岐光導波路ユニット4とが中心線Cに対して対称的に配置されており、しかもこれらの多分岐光導波路ユニット3と多分岐光導波路ユニット4はX方向に所定間隔Lだけ離間されて配置されている。間隔Lは多分岐光導波路チップを最も効率よく切り出すための適宜な値を選択すればよい。
【0025】
このような多分岐光導波路基板1から個々の多分岐光導波路チップ7を切り出す際には、Y方向はY1→Y1’、・・・、Y4→Y4’のようにダイシングソーにて直線的に切り出すことができるのに加えて、X方向もX1→X2’、X2→X1’、X2→X3’、X3→X2’、・・・のようにダイシングソーにより斜めに直線的に切り出すことができるので、従来技術に比べて工程の煩雑さが改善される。
【0026】
以上のように本発明の多分岐光導波路基板1はこの基板1から切り出される多分岐光導波路チップ7において多分岐光導波路2を基板上での空間部の無駄がなく効率よく配置できるとともに、多分岐光導波路チップ7を製造する際に工程が簡略化できるので、大幅なコスト低減を図ることができる。
【0027】
なお、上記した本実施の形態では2個の多分岐光導波路ユニットについて説明したが、多分岐光導波路ユニットの個数は特に限定されるものではなく、3個以上形成してもよい。多分岐光導波路ユニットを多数個形成すればそれだけ配置効率や製造効率が向上する。また、本実施の形態で説明した多分岐光導波路は1×16導波路スプリッタであるので分岐数が16であるが、この分岐数についても特に限定はなく、少なくとも8分岐、できればそれ以上の分岐数を有する多分岐光導波路に適用することが望ましい。これは分岐数が多ければ多いほど本発明の効果を奏することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の多分岐光導波路基板の一実施の形態を説明する図である。
【図2】多分岐光導波路チップの適用状況を説明する図である。
【図3】従来の多分岐光導波路基板の一例を説明する図である。
【図4】従来の多分岐光導波路基板の他の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0029】
1 多分岐光導波路基板
2 多分岐光導波路
3 多分岐光導波路ユニット
4 多分岐光導波路ユニット
5 1本の光導波路入出力端面
6 複数本の光導波路入出力端面
7 多分岐光導波路チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐される多分岐光導波路が複数個配置され、前記基板から個々の多分岐光導波路チップが切り出されるための多分岐光導波路基板であって、前記基板上において前記個々の多分岐光導波路が1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐された扇状に広がる向きとその反対向きにそれぞれ交互に複数配置された一つの多分岐光導波路ユニットと、前記一つの多分岐光導波路ユニットに対して1本の光導波路入出力端面同士及び複数本の光導波路入出力端面同士が対向配置された他の多分岐光導波路ユニットが形成されており、前記一つの多分岐光導波路ユニットと前記他の多分岐光導波路ユニットとが離間して配置されていることを特徴とする多分岐光導波路基板。
【請求項2】
前記基板上の多分岐光導波路ユニットは3個以上配置されていることを特徴とする請求項1記載の多分岐光導波路基板。
【請求項3】
前記多分岐光導波路は8分岐以上の分岐数を有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の多分岐光導波路基板。
【請求項4】
基板上に1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐される多分岐光導波路が複数個配置され、前記基板から個々の多分岐光導波路チップを切り出す多分岐光導波路チップの製造方法であって、前記基板上において前記個々の多分岐光導波路が1本の光導波路から複数本の光導波路に分岐された扇状に広がる向きとその反対向きにそれぞれ交互に複数配置された一つの多分岐光導波路ユニットと、前記一つの多分岐光導波路ユニットに対して1本の光導波路入出力端面同士及び複数本の光導波路入出力端面同士が対向配置された他の多分岐光導波路ユニットを前記一つの多分岐光導波路ユニットと前記他の多分岐光導波路ユニットとが離間して配置するように形成し、前記基板から個々の多分岐光導波路チップを切り出すことを特徴とする多分岐光導波路チップの製造方法。
【請求項5】
前記基板上の多分岐光導波路ユニットは3個以上配置されていることを特徴とする請求項4記載の多分岐光導波路チップの製造方法。
【請求項6】
前記多分岐光導波路は8分岐以上の分岐数を有するものであることを特徴とする請求項4または請求項5記載の多分岐光導波路チップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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