説明

多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの製造方法

【課題】粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーをベースとする成分、材料、添加剤及び/又は材料組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーは有機ブランチを有する無機コアの形態である。コアは最初に、構造:X−B−Si(−Y)(式中、XはNRであり、R、Rは水素、アルキル及びアリールから選ばれ、有機ブランチは、X−B基上のN−H水素原子を、第一級及び第二級アミンに典型的な反応によって置換させること、及び/又は、コア中のX−B基のN原子に付加することができる酸を添加することによって成長される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前文によって規定されるとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの製造に関する。別の態様によると、本発明は、請求項11の前文によって規定されるとおりのシランの制御された加水分解及び縮合によって製造される少なくとも部分的に加水分解されたアミノシランをベースとするゾルゲル法による結果物の変性に関する。さらに別の態様によると、本発明は上記のとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーに関する。最後に、本発明はこのような多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ポリマー材料は益々多くのカテゴリーの製品において使用されており、たとえば、車、船舶、飛行機用部品、電子産業及び他の先進産業、ならびに、塗料及び他のコーティング、特殊包装などにおいて使用されている。製品の新規のカテゴリーでのポリマー材料の使用は製品特性によってのみ制限される。このため、高められた耐スクラッチ性、改良された耐候性、高められたUV耐性、高められた耐薬品性、ならびに、酸化防止、耐腐食性に関する改良された特性などの改良された特性を有するポリマーを開発することが継続的に求められている。
【0003】
純粋なポリマー材料に加えて、無機コアと有機ブランチを有することができるマクロ分子であることを意味する、無機及び有機材料のハイブリッドとして記載されうる材料をベースとする製品も開発されている。
【0004】
枝分かれ構造を有する有機ポリマー分子は大きな経済的成長の可能性を有し、特に新材料における成分としての可能性を有する。いわゆるデンドリマーは完全に枝分かれした構造を有するこのようなポリマー分子の重要な例であり、統計的累進的枝分かれを有する超枝分かれポリマーも同様である。デンドリマーと超枝分かれポリマーとの両方は、明示的な樹枝状ポリマーである。樹枝状(Greec:デンドロン=木)は大体において完全な累進的枝分かれの原則を特徴とする(G.R.Newkome, C.N. Moorefield, F.Vogtle, "Dendrimers and Dendrons: Concepts, Syntheses, Applications", Wiley-VCH, Weinheim, (2001))。
式Iは直鎖ポリマーと樹枝状ポリマーとの根本的な相違を示す。
【0005】
【化1】

【0006】
樹枝状ポリマーは特に興味深い。というのは、T単位は官能基を有することができ、ポリマーの重量もしくは体積単位当たりの利用可能な官能基の密度が直鎖ポリマーの場合よりずっと大きいからである。官能基Tは材料中に機能を付与し、たとえば、WO公報第02092668号に記載されるような酸化防止剤、UV吸収剤、又はラジカル掃去剤の機能を付与するように使用することができる。
【0007】
又は、T基はエポキシ樹脂又はポリウレタンなどの有機材料の非常に効率的な架橋剤、又は、熱可塑性樹脂のための架橋剤として使用することができる。樹枝状ポリマーとこのような有機化合物との間の高い架橋度のために、樹枝状ポリマーは、ポリアミン、多価アルコール又は多官能アクリレートなどの慣用の架橋剤と比較して優れた架橋剤である。架橋熱可塑性樹脂などの有機材料のより高度な架橋は耐薬品性、耐候性及び耐磨耗性などの特性を改良し、材料をより高温での用途に有用にさせる(Hans Zweifel編, Plastic Additives Handbook, Carl Hanser Verlag, Munchen (2001), 725-811)。T基は、また、ネットワーク中に樹枝状ポリマーを組織するために使用されうる。材料中の成分として、樹枝状ポリマーは改良されたバリア特性を誘起しうる。又は、このような樹枝状ポリマーは熱硬化プラスチック中のバインダー又は成分として使用されうる。
【0008】
デンドリマーは、通常、幾つかの工程を含む比較的に複雑でかつ高価な合成方法で製造される。完全な累進的枝分かれ構造を達成するために、プロセス条件を非常に正確に維持しなければならない。それゆえ、工業用途は限定されている。
【0009】
超枝分かれポリマーの一般的な製造方法は早くはFloryによって説明された(P.J.. Flory, Principles of Polymer Chemistry, Cornell University, (1953))。AはBと反応しうるが、AとA及びBとBの反応が妨げられるABモノマーの重合は超枝分かれポリマーをもたらす。
【0010】
超枝分かれポリマーの別の製造方法は開始剤をも有する反応性モノマー、いわゆる「イニマー」を利用することを含む。1つの例は、イニマーグリシドールとgermトリメチロールプロパンとの塩基触媒反応であり、式2に示すとおりである。
【0011】
【化2】

【0012】
このように製造される超枝分かれポリマーは対応するデンドリマーと非常に類似の特性を有する(A.Sunder, R. Hanselmann, H. Frey, R. Muhlhaupt; Macromolecules, (1998), 32, 4240)。これは同等の数の遊離HO−基を有する直鎖ポリマーよりもずっと低い粘度を有することを意味する。製造方法における特徴は、イニマーグリシドールをgermに対して非常にゆっくりと、非常に薄く希釈された状態で加えなければならないことである。このため、プロセスのコスト効率はひどく低下し、そのため、産業用途での超枝分かれポリマーの利用性は非常に制限されている。
【0013】
超枝分かれポリマーのT−基にある変性を行なうことが以前から知られている。J.-P. Majoral,A.-M. Caminade and R. Kraemer, Anales de Quimica Int. Ed., (1997), 93, 415-421はリンを含むデンドリマーの官能化を記載している。T−基の官能化は同一/類似の化学基又は異なる化学基で行なうことができる。
【0014】
FR2761691は環式チオエステルとの反応で変性した官能基を表面に有するデンドリマーについて議論している。その反応はアミドもしくはアミン結合によってデンドリマーに結合したチオール基を有するデンドリマー表面をもたらす。その生成物は酸化防止剤として使用されうる。記載のデンドリマーはポリアミドアミンデンドリマー(PAMAMデンドリマー)タイプである。PAMAMデンドリマーは第三級アミンを含み、それは第四級アンモニウム塩もしくはアミンオキシドに転化した後に比較的容易に分解されうる(A. W. Hofmann, Justus Liebigs Ann. Chem. (1851), 78, 253-286; A.C. Cope, E.R. Trumbull, Org. React. (1960), 11, 317-493; A.C. Cope, T.T. Foster, p. H. Towle, J. Am. Chem.Soc. (1949), 71, 3929-3935)。アミンベースのデンドリマーからの第四級アンモニウム塩又はアミンオキシドは、アミンベースのデンドリマーの添加剤を熱可塑性樹脂に取り込み/配合し、次いで、熱可塑性樹脂の加工(たとえば、フィルムブロー、押出、キャスティングなど)を続いて行なうときに形成されうる。このような分解は、一方で、デンドリマーコアの部分的崩壊をもたらし、他方で、分解生成物の形成をもたらし、この分解生成物は漏れ出し、それにより、ポリマー製品の表面品質を低下しうる。さらに、第三級アミンは熱可塑性樹脂の加工の間にヒドロペルオキシドの分解によってフリーラジカルを形成することがある(A. V. Tobolsky, R.B. Mesrobian, Organic Peroxides, (1954), Interscience Publishers, New York, p. 104-106)。それによって、第三級アミンを含むデンドリマー及び超枝分かれポリマーはその加工、貯蔵又は使用の間に熱可塑性樹脂の意図しない分解を誘発しうる。
【0015】
WO01/48057は第三級アミンを含むコア構造をベースとする熱酸化分解に対する多官能安定剤について議論している。上記のとおり、熱可塑性樹脂の加工、貯蔵又は使用の間にコア構造の意図しない分解を生じることがある。WO01/48057により製造した典型的な安定剤のモル比は1246g/モルである。
【0016】
WO97/19987は、ポリマー材料中に使用されうる、ポリマー添加剤と変性デンドリマーとの組み合わせについて議論している。WO97/199987の例示において、デンドリマーは、第3、4及び5世代のポリプロピレンイミン(PPI)で、16、32及び64の末端アミン基を含むものをベースとする。コア構造は第三級アミンを含み、それは熱可塑性樹脂の加工、貯蔵又は使用の間にコア構造の意図しない分解をもたらすことがある。多官能脂肪酸アミドを生成する脂肪酸によるPPIの変性は適切な溶剤中での加熱の手段によって行なわれることができる。デンドリマーのコア構造中の第三級アミン基及びデンドリマー表面での第一級アミン基は、酸素の存在下で、デンドリマー構造の部分的分解に寄与することができる。上記での説明のとおり、フリーラジカルはヒドロペルオキシドの分解によって生成しうる。このような部分分解は、WO97/19987中の例I、XI及びXIIのように、変性PPIデンドリマーの薄褐色又は黄色によって示される。WO97/19987中の変性PPIデンドリマーの典型的な分子量は10,000〜40,000g/モルの範囲内にある。WO02/092668において、少なくとも1つの添加剤基と超枝分かれもしくは樹枝状コアを含む表面活性化超枝分かれもしくは樹枝状安定剤が議論されている。WO02/092668の例示において、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピレン酸をベースとする樹枝状コアのみが使用されている。樹枝状コア及び添加剤基への結合は、エステル結合を主としてベースとし、エステル結合は安定剤を加水分解に感受性にする。さらに、調製された安定剤の分子量は、WO02/092668の例示はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって決定して、1000〜1500g/モルである。
【0017】
超枝分かれポリマーの特性に対応する特性を有する1つのタイプの粒状ポリマーは無機Si(1.5)xコアと、Si原子1個当たりに1個のT基を含み、POSS(ポリヘドラルオリゴシレスキノキサン)として知られている。このクラスの最も一般的な化合物はxが8であるPOSSであり、実質的に立方体構造である(C. Sanchez, G.J. de A.A. Soler-Illia, F. Ribot, T. Lalot, T. Lalot, C.R. Mayer, V. Cabuil; Chem. Mater., (2001), 13, 3066)。POSSの製造は高価であり(M.C. Gravel, C. Zhang, M. Dinderman, R.M. Laine; Appl. Organometal. Chem., (1999), 13, 329-336 and WO01/10871)、その産業上の利用性はそれゆえ制限されている。超枝分かれポリマーの特性に対応する特性を有する別のタイプの粒状ポリマーはSi原子1個当たりに1個のT基を有する無機Si(1.5)xコアからなり、下記構造のシランの制御された加水分解及び縮合
によってゾルゲル法で製造されうる。
X−B−Si(−Y)
(式中、Yは加水分解性残基から選ばれ、X−Bは基本的にT基に対応する)。この方法はたとえば、本願の出願人のWO公報第0208343号に記載されている。ゾルゲル法はコスト効率がよく、そのため、好ましい原料からマイルドな条件下で、すなわち、高圧や高温を使用せずに、極端な希釈などの特別の注意を要しないで、工業規模で行なうことができる。このように、ゾルゲル法によって製造される超枝分かれポリマーの特性に対応する特性を有する粒状ポリマーは多くの分野で産業上利用可能である。
【0018】
ポリマー製品中のゾルゲル製品の利用の多くの例は知られている(DE 19933098、EP666290)。通常、ナノメートル範囲のサイズを有する無機Si(1.5)xコアに主たる焦点が置かれており、それにより、無機ナノ粒子としてのゾルゲル製品に焦点が置かれている(cf.DE19933098及びEP486469)。無機残基X−Bは、通常、ゾルゲル製品を有機マトリックス中に投錨するために使用されている(cf.EP486469)。X−B基が1個以上のアミド基を含むシランの加水分解及び縮合を伴うゾルゲル法は特に単純である。というのは、外部触媒が必要なく、プロセスは周囲温度で又は緩やかな加熱下で行うことができるからである。1つの例は、本願の出願人の特許出願のWO公報第0208343号に記載されるとおりのγ−アミノプロピルトリアルコキシシランの制御された加水分解及び縮合である。X−B基が1個以上のアミド基を含むシランの制御された加水分解及び縮合は、通常、得られる粒状ポリマー製品が有機/無機構造(ハイブリッドポリマー)を有するゾルをもたらし、それはT基中に多少の遊離アミン基を有する超枝分かれポリマー製品に匹敵する。このような有機/無機ハイブリッドポリマーはその重量及び/又は体積と比較して多数の官能性T基を示す。同時に、直鎖ポリマーの構造と比較してそのコンパクトな構造は低い粘度及び熱硬化プラスチック及び熱可塑性プラスチックとの良好な混合特性などの望ましい特性を確保する。超枝分かれポリマーに対応する特性を有する有機/無機ハイブリッドポリマーの例は式3に示される。
【0019】
【化3】

【0020】
超枝分かれポリマーの特性に対応する特性を有する有機/無機ハイブリッドポリマーは、たとえば、熱硬化性プラスチックのようなポリマー製品のための添加剤として、また、表面保護のためのラッカー及び他のタイプのコーティングに用途を見いだす。適切な量と便利な粒子サイズで使用すると、このようなハイブリッドポリマーは問題のプラスチック材料又はラッカーの特性の有意な改良に寄与することができ、増大した耐磨耗性/耐スクラッチ性及び/又は耐候性に寄与することができる。
【0021】
ゾルゲルプロセス/製品の分野の従来技術は、幾つかの例及び文献を参照して、以下においてより詳細に記載されるとおり4つの主なカテゴリーに分類されうる。
【0022】
第一のカテゴリーは非加水分解アミン含有シランの変性(DE2023968、WO03/029361、EP0253770、EP666290)に関し、一般に二官能性エポキシ化合物によるものであり(たとえば、JP2001192485)、また、熱可塑性樹脂又はコーティングにおけるその使用に関する。加水分解及び縮合はある場合には後で行なわれるが、問題の熱可塑性樹脂又はコーティングに添加する前に行なわれる。一般に、この方法は多くの大きい分子を伴う未規定の分子サイズの分布をもたらす。このことは、続いて行なう加水分解が非常にうまくいくのを困難にすることを意味する。というのは、水が非常に大きな分子の全てのサイトに到達しないであろうからである。低い加水分解度は、製品のより低い耐スクラッチ性とより低い耐候性を意味する。さらなる欠点は、分子の有機部分の存在下に加水分解のために使用される水が前記有機部分の活性基と所望されないやりかたで反応することがあることである。加水分解されていないアルコキシシラン化合物の熱可塑性もしくは熱硬化性プラスチック材料中での使用は、次いで生じるシラン化合物のゆっくりとした加水分解の間に、すなわち、プラスチック材料が水に暴露された後に、エタノール又はメタノールなどのアルコールが生成されることを意味する。これによって、熱可塑性プラスチック又はコーティングの機械特性が低減されることになりうる。さらに、エタノール及び/又はメタノールなどのアルコールの生成は熱可塑性プラスチック又はコーティングの表面への添加剤及び/又は分解生成物の移行を生じさせることができることを意味し、それで、表面品質を大きく低減することがある。
【0023】
従来技術の方法の別のカテゴリーは化学反応による窒素含有ゾルゲル製品の変性に関し、アミン基が直接的に関わらないか(S. kar, P. Joly, M. Granier, O. Melnyk, J.-O. Durand, Eur. J. Org. Chem.;(2003), 4132-4139)、又は重要でない(US5744243)。後者の文献はa)酸触媒で加水分解し、そして縮合したシラン及びモノマーと、b)シランモノマーと適合性のある官能基を含む有機ポリマーの重合済み溶液とを混合することで得られるコーティング組成物を記載している。コーティングは光反射のために使用される。
【0024】
第三のカテゴリーは、SiO粒子、すなわち、必ずしも限定されないが、ゾルゲル法によって製造されうるシリカの粒子のみを用い、たとえば、表面変性に関する。特許出願第9603174−5は、たとえば、硬度を高めるために使用される、様々なポリマー中のシリカ粒子の水性分散体を記載している。
【0025】
WO9407948及び00/22039は酸化物粒子の表面変性がシラン化(シラナイゼーション)によって行なわれる、この既知の技術を記載している。幾つかの場合に、酸化物粒子は加水分解されたシリカからなることができる。表面変性のために使用されるシランは加水分解されていない。これらの粒子はフィラーとして使用され、また、ポリマー及びホイルの変性のために使用される。このような粒子を有する製品の欠点は硬化後に溶融しえず、それゆえ、超枝分かれポリマーとしてのその使用が制限されることである。この技術の欠点は、各々のシランが幾つかの官能基を有し、それらが必ずしも1つの同一の粒子を結合していないことである。シランが別の粒子に結合しているならば、又は、結合しているときには、これは粒子の凝集に寄与し、好ましくない。このことは即座に生じ又は経時とともに生じることがあり、それはこの系が不安定であることを意味する。シランのサイズのために、あまり多くの官能基が各粒子に結合しえず、それは超枝分かれの程度が比較的に低いことを意味する。EP0786499には、湿分の存在下に硬化されうる組成物であって、a)多官能アクリレート、b)少なくとも1つのアルコキシ官能性有機金属成分(TEOS)又は加水分解物、及び、c)少なくとも1つのトリアルコキシアミノシランを含む組成物が記載されている。
【0026】
従来技術の第四のカテゴリーは加水分解されたシランをベースとするゾルゲル法であって、有機モノマー、プレポリマー又はポリマーによって変性が行なわれるゾルゲル法である。
【0027】
EP486469は部分的に又は完全に加水分解されたシランをベースとするゾルの存在下に有機モノマーを重合することによって製造される無機/有機ハイブリッドポリマーを記載している。EP486469からの典型的な例は、メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシランの使用によって製造されるゾルの存在下におけるメチルメタクリレートの重合である。得られる組成物の使用は耐磨耗性コーティングとしての使用であるといわれている。
【0028】
米国特許第5,674,941号明細書において、a)エポキシド含有シラン、b)有機アミノ官能性シラン、c)アクリレートモノマー、エポキシモノマー、有機シランから選ばれる2つの成分のコポリマー及び/又は上記3種のモノマーのターポリマー、d)硬化触媒、e)多官能性アクリレート、及び、f)ラジカル重合開始剤の加水分解物/縮合物を含むコーティング組成物が記載されている。組成物は非常に複雑であり、多分枝の有機/無機ハイブリッドポリマーを生成するためのアミン基の化学置換は記載されていない。
【0029】
米国特許第5,096,942号明細書は、加水分解されたシラン、いわゆる無機コアをベースとしたポリマーを最初に製造し、それをポリスチレンなどのポリマー鎖に結合させる方法に関する。シランの加水分解はSi−OH基の間の縮合が実際に抑制されるように行なわれる。その後、加水分解されたシランは、加水分解された金属酸化物又はシランに添加され、モル重量1000〜100000グラム/モルの超枝分かれポリマーに対応する特性を有する有機/無機ハイブリッドポリマーとなる。シランは窒素を含まず、ゾル中の遊離アミン基の意図的な置換は米国特許第5,096,942号明細書に記載されていない。
【0030】
米国特許第5,110,863号明細書はオルガノシラン(イミダゾールを有する)及び金属アルコキシドを含むゾルの製造を記載しており、そのゾルは加水分解して、独立コーティングを形成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
目的
本発明の目的は、粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーをベースとする成分、材料、添加剤及び/又は材料組成物の製造方法を提供することである。
【0032】
本発明のさらなる目的は、有機部分が単純な化学置換によって変化されうる、上記のとおりの方法を提供することである。
【0033】
本発明のなおもさらなる目的はこのような成分、材料、添加剤及び/又は材料組成物の少なくとも1つの特性、たとえば、制限するわけではないが、使用分野によって、耐候性、耐スクラッチ性、バリア特性などを調節する変性を行なうことである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明
上記の目的は請求項1に規定のとおりの方法によって達成される。別の態様によると、本発明は請求項2に規定されるとおりの方法に関する。
【0035】
さらなる態様によると、本発明は請求項21に規定されるとおりの粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーに関する。
【0036】
さらなる態様によると、本発明は請求項25〜29に規定されるとおりの上記の方法によって製造された製品の使用に関する。
【0037】
本発明の種々の態様の好ましい実施形態は従属請求項に開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0038】
請求項1及び2は本発明の2つの態様を示し、そして2つの唯一の相違は使用される有機アミノ官能性シランが加水分解されそして縮合されるか、又は、加水分解されないかに関することを当業者は容易に理解するであろう。前者の場合、加水分解及び縮合は少なくとも2つの工程を含む方法の第一の工程を形成する。後者の場合、このような工程は余分であり、それゆえ、省略している。さらに、当業者は基X−B基は方法に適用される条件下に加水分解されないように選択される。
【0039】
いずれの場合も、遊離アミン基は完全なシランの加水分解及び縮合の後に化学置換によって変性される。適切な化学置換は、T基中の遊離アミン基と反応性化合物との間で行なわれ、この反応性化合物は好ましくは、典型的に470K未満の温度及び0.3MPa未満の圧力で実際には大体定量的に遊離アミン基と反応する。
【0040】
特に興味深いのは、加水分解及び縮合が完了した直後に1つ以上の工程においてT基が化学変性されることができ、そのために、シランの加水分解及び縮合に使用される反応装置が用いられることができるゾルゲル法である。このようなバッチ法は粒状の有機/無機多分枝ポリマーの非常にコスト効率的な製造のためのベースとなり、そのポリマーは多くの異なるT基を有し、それゆえさまザなの多くの産業用途の分野に使用されうる。
【0041】
第一級及び第二級アミンに典型的な反応とは、適切な反応体を用いた付加反応、置換反応及びこのような反応の組み合わせであり、反応体が、制限するわけではないが、エポキシ基、イソシアネート基、反応性二重結合、置換可能な基、及び、プロトン供与性基を含む化合物である反応を意味する。
【0042】
制御された加水分解及び縮合は、本明細書中、適切なシラン化合物の加水分解及び縮合を意味する。
【0043】
第一の工程は、R’基が加水分解又は縮合反応に参加しない適切なシラン化合物R’−Si(OR)nの加水分解である。アルコキシドリガンドはヒドロキシル基によって置換される。
Si−OR+H−OH Si−OH+ROH
【0044】
制御された量の水及び制御された量のグリコールベースの溶剤はこの工程の間に添加される。反応温度及び反応時間も制御される。
【0045】
第二の工程は、ヒドロキシル基が他の珪素中心からのヒドロキシル基又はアルコキシ基と反応し、Si−O−Si結合と、それぞれ水又はアルコールを生成することができる縮合である。
Si−OH+HO−Si Si−O−Si+H
又は
Si−OR+HO−Si Si−O−Si+ROH
【0046】
あるサイズの粒子を製造するために、2つの反応、すなわち、縮合と加水分解の反応速度論の正確なバランスを確保する化学条件を確立する必要がある。縮合は(単一の)モノマー分子からのポリマー鎖の形成に寄与するが、加水分解は多結晶沈殿又はオキソヒドロキシド沈殿に寄与する。アミノ官能性シランの組み合わせ及びアルコキシド基の強リガンドによる交換は加水分解反応を緩和し、それにより、ポリマー鎖が長くなりすぎず、オリゴマーサイズを維持することを確保するであろう。実際には、粒子は数ナノメートルのサイズで製造され、より典型的には10nm未満で製造されるであろう。適切な安定剤は、通常、加水分解及び縮合ならびに続いて行なう変性の間に反応体及び反応生成物の酸化分解を回避するために反応組成物中に添加される。得られる溶液は溶剤中に分散された無機ポリマー粒子を含む。
【0047】
さらなる詳細な好ましい態様における本発明
本発明によると、多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーは規定されるとおりの順序で少なくとも2つの工程を含むゾルゲル法によって製造される。
【0048】
第一の工程において、請求項1に記載される規定のとおりのX−B−Si(−Y)のシランの制御された加水分解及び縮合によって製造される。
【0049】
少なくとも1つの続いて行なう工程において、ブランチが発達される。
i)R、Rの少なくとも1つがHであるときに、第一級及び第二級アミンに典型的な反応によって、X−B基中のN−H水素原子を置換することができる少なくとも1つの反応体を添加すること、及び/又は
ii)コアのX−B基中のN原子に付加して、N原子を完全に又は部分的に第四級ニトロニウムイオンに転化させることができる酸を添加すること。
【0050】
工程ii)において使用される酸はブロンステッド酸又はルイス酸であることができる。
【0051】
工程i)における特徴的かつ好ましい反応は付加反応及び置換反応又は少なくとも1つの付加反応と少なくとも1つの置換反応の組み合わせである。
【0052】
このような反応において、使用されうる反応性化合物は、制限するわけではないが、エポキシド、環式及び非環式酸誘導体、ブロックト及び非ブロックトイソシアネート、反応性二重結合を有する化合物、アルデヒド、ケトン及びプロトン供与性化合物を含む。
【0053】
特に置換反応において、a)適切な原子又は原子基Xとb)基Rとを含む化合物R−Xを用いることができ、ここで、R−Xは置換反応において多かれ少なかれ遊離したアミンと反応することができ、ここで、原子又は原子基Xはアミン基によって置換され(Endre Berner, "Laerebok i organisk kjemi", Aschehoug & Co., Oslo(1964), s.144-147)、基Rは非置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、非置換もしくは置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルから選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、又は、酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化合物の縮合生成物又は付加生成物から選ばれる基から選ばれ、ここで、原子もしくは原子基Xは好ましくは、ハロゲン、置換もしくは非置換アルコキシ、フェノキシル、アミン、カルボキシレート、スルホネート、スルフィネート、ホスホネート又はホスフィネートから選ばれる。
【0054】
工程i)が付加反応である場合に、N−H水素原子をA=B二重結合で置換することで行なうことが便利かつ好ましく、A,Bは元素C,O,N,S及びPから選ばれる。好ましい別の態様によると、付加反応はエポキシド基の開環を含み、場合により、ケトン又はアルデヒドとの反応(置換)が次いで行なわれてよい。付加反応を行なうための別の好ましい態様は、N−H水素原子でのブロックトもしくは非ブロックトイソシアネートとの反応からなる。環状酸無水物又はその誘導体、たとえば、炭酸誘導体の開環反応を含む。上記のような反応の組み合わせは望ましい付加反応のために使用されうる。
【0055】
このような付加反応において、所望ならば、モル過剰の反応体は繰り返しの付加反応を可能にするように加えられてよく、それは実際、有機ブランチの重合をもたらす。
【0056】
工程i)における少なくとも1つの置換反応の代わりの反応体として、一官能性カルボン酸、又は、スルフィン酸又はスルホン酸の誘導体を使用することが好ましい。
【0057】
工程ii)において、使用される酸はルイス酸又はブロンステッド酸であることができる。
【0058】
本発明による方法は、特定のタイプの反応媒体に依存せず、水性及び有機性分散剤の両方の中で行なわれることができる。環境にも好ましい水性媒体中でも方法が適用可能であることは特に驚くべきことであり、そして有利である。
【0059】
ある目的では、粒状の多分枝の有機/無機ハイブリッドポリマーの特定の性質をもたらす特に選択された反応体を使用することが好ましい。たとえば、難燃性を有する製品を得るために、付加反応又は置換反応として例示された反応のためにハロゲンを含む反応体を使用することが有利である。もし、特に疎水性の最終製品が望まれるならば、本発明による方法の工程i)及び/又はii)において少なくとも1つのフッ素化反応体を使用することが有利でありうる。
【0060】
粒状の多分枝の有機/無機ハイブリッドポリマーのさらなる使用又は処理のために、それは、たとえば、アクリル基、ビニル基又は不飽和脂肪酸の一部として少なくとも1つの重合性二重結合を有することが便利である。
【0061】
以下において、反応体及び反応条件の選択を反応体及び反応条件の例示及び行なった実験を参照することによってさらに詳細に行う。
【0062】
付加反応のための安定なエポキシドの例は、以下の式で示されることができるモノグリシジル化合物である。
【0063】
【化4】

【0064】
は水素、非置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換もしくは非置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルなどの基から選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、又は、Rは酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化合物の縮合生成物又は付加生成物から選ばれる。
【0065】
適切なエポキシドの例は以下の式で示されることができるエポキシ化C=C二重結合を有する化合物を含む。
【化5】

【0066】
−Rは水素、非置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換もしくは非置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルなどの基から選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、Rは酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化合物の縮合生成物又は付加生成物から選ばれる。
【0067】
反応性二重結合の例はA=B二重結合であり、A,Bは元素C,O,N.S及びPから選ばれる。
【0068】
酸の例は以下のとおり。
【化6】

【0069】
は水素、非置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換もしくは非置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルなどの基から選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、又は、Rは酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化合物の縮合生成物又は付加生成物から選ばれ、Xはハロゲン、置換もしくは非置換アルコキシ、フェノキシ、アミン、カルボキシレート、スルホネート、スルフィネート、ホスホネート、又はホスフィネートなどの出口基(exit group)である。
【0070】
適切なイソシアネートの例は以下の式によって示すことができる。
【化7】

【0071】
は水素、非置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換もしくは非置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルなどの基から選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、又は、Rは酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化合物の縮合生成物又は付加生成物から選ばれ、イソシアネート基は既知の化学物質によってブロックされてよい。
【0072】
適切なアルデヒド及びケトンの例は以下の式で示されることができる。
【化8】

【0073】
は水素、非置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換もしくは非置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルなどの基から選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、Rは酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化合物の縮合生成物又は付加生成物から選ばれる。
【0074】
反応の組み合わせの例は以下のとおり。
a)非加水分解性置換基X−B基でのエポキシドによるN−H水素原子の置換であって、アミノアルコールを形成する。
b)ケトン又はアルデヒドによるアミノアルコールの置換であって、オキサゾリジンを形成する。
【0075】
多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーで、無機コアと有機ブランチの形態を有するハイブリッドポリマーのゾルゲル法による製造において、適切な安定剤は、通常、X−B−Si(−Y)の加水分解及び続いて行なう変性の間に、反応体及び反応生成物の酸化分解を防止するように反応組成物に添加される。適切な安定剤は、ヒンダードアミンをベースとするラジカル掃去剤、1つ以上の酸化防止剤又はそれらの組み合わせである(Has Zweifel(編), Plastics Additives Handbook, Carl Hanser Verlag, Munchen, (2001), 10-19)。
【0076】
有機コアを含む分子を最初に加水分解し、その後、適切な反応の付加反応で有機ブランチを結合させることで、本発明の方法は、このように製造されたゾル中で特に高度な枝分かれ及び粒子サイズの制御を与え、かかるゾルはこれまで達成しえなかった。これは幾つかの利点をもたらす。まず、粒子組成物がある量の非常に大きな粒子を含む場合よりも完全に加水分解が行なわれることができる。第二に、ある程度の加水分解のために使用される水が意図せずに分枝の有機部分の活性基と反応する危険が避けられる。
【0077】
本発明は、このように、単純な2工程バッチ法で緩慢な条件(T<470K、及び圧力P<0.3MPa)で、超枝分かれポリマーの性質に対応する性質を有する、多くの異なるように官能化された有機/無機ハイブリッドポリマーを製造する可能性を提供する。
【0078】
このような有機/無機ハイブリッドポリマーは有機超枝分かれポリマーの特性と同等の特性を有し、多くの用途、たとえば、酸化防止剤、UV吸収剤又はラジカル掃去剤などの熱可塑性プラスチック及び熱硬化プラスチック中の機能性添加剤、熱可塑性プラスチック及び熱硬化プラスチック中のクロスバインダーとして、接着剤、ラッカー及びコーティング製品中の成分として、他の関係における機能性材料として使用されうる。添加剤として使用されるときに、本発明により製造される超枝分かれハイブリッドポリマーは耐スクラッチ性における持続的な増加及び使用される製品の耐候性に寄与する。
【0079】
本発明による有機/無機ハイブリッドポリマーの加水分解の間の温度及び安定性は有機超枝分かれポリマーのコア中の安定なSi−O結合及び非常に高度の架橋によるコアの緻密構造による有機超枝分かれポリマーのものよりも良好である。
【0080】
粒子構造が安定な無機コアを有し、該無機コアに結合した有機基を有する官能基のために加熱/冷却の間に可逆的な粘度変化が観測される。上記官能基は本発明をベースとする製品の次の処理/加工に関して重要である。
【0081】
本発明による材料の製造方法及び製品の選択はコスト効率よく、本発明を工業利用することを可能にする。本発明による材料及び製品の製造は、穏やかな条件下(T<470K及び圧力P<0.3MPa)にてバッチ法を基礎とする。ここで、原料は安価なシランやポリマーの工業使用に多量に使用されるバルク化学品の不特定の群から選ばれる。
【0082】
本発明による方法のための原料の便利な選択によって、安定剤、コーティング形成剤又は他の添加剤は製造されうる。このような安定剤又は他の添加剤は、既知の一官能性安定剤よりも広い範囲の用途を提供し、ラッカー、ペイント、熱硬化プラスチック及び熱可塑性プラスチックに使用されうる。原料の便利な選択によって、たとえば、適切なポリマーと組み合わせて、ガス及び液体の形態の分子、たとえば、水、O、CO及び炭化水素の優れたバリア層を得ることができる。さらに、添加剤及び/又は分解生成物の漏れを回避するための添加剤の製造に本発明の方法を用いることも可能である。対応して、接着剤又は機能性材料に用途を見いだす熱安定性/熱可逆性ネットワークなどにおいて自己組織化ネットワークが形成されうる。
【実施例】
【0083】
実施例
実験1
超枝分かれ有機/無機ハイブリッドポリマーのゾルゲル法による製造
a)221.4g(1.00モル)のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(A−1100、GE Silicones, USA)を、ホースクーラ及びマグネティックスターラを有する1000ml丸底フラスコに入れた。93.6g(0.60モル)のブチルジグリコール(BDG)及び22.5g(1.30モル)の水及び1.00gのTinuvin 123 (Ciba Specialty Chemicals, Switzerland)の混合物を添加した。混合物を還流下で110℃のオイルバス中で45分間加熱した。その後、オイルバス温度110〜160℃で約1000ミリバールから20ミリバール未満の真空勾配で、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留で除去した。丸底フラスコ中の圧力が10分間20ミリバール以下に達したときに蒸留を止めた。約192mlの蒸留物を回収した。反応生成物は透明で、無色の液体であり、ガードナーカラーは1であった(ガードナーカラースケール/ASTM D1544)。
【0084】
b)a)からの反応生成物を70℃に加熱して透明な液体を得た。その後、256.4g(1.00モル)のAradite DY-E(C12−C14アルコールのグリシジルエーテル、Vantico SG(Huntsman AG)、Switzerland)を添加し、反応混合物を70℃に1時間保持した。ガードナーカラーが1であり、20℃で粘性ゲルの状態であり、そして90℃で非粘性の液体である透明な生成物が得られた。
【0085】
a)における蒸留物は有意でない量の揮発性アミンを含む。製造プロセスの間に安定剤(たとえば、Tinuvin 123)を使用しない対応する実験において、a)における蒸留物は比較的に多量の揮発性アミン生成物を含み、それは合成の間のA−1100の分解によるものである。
【0086】
実験2〜6
実験1と同様のゾルゲル法による多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの製造であるが、工程b)においてたのエポキシド化合物又はエポキシド化合物の混合物を用いた。以下の生成物が調製された。
【0087】
【表1】

【0088】
全ての生成物は20℃で粘性ゲルであり、90℃で非粘性液体であった。
【0089】
実験7
例4に対する比較例であり、エポキシド2として二官能エポキシドを用いる。
【0090】
【表2】

【0091】
生成物は透明なゲルであり、加熱時に粘性がより低くならない。200℃で、生成物は分解し、明らかな粘性変化がない。
【0092】
実験8
実験2に対する比較例であり、工程b)は工程a)の前に行なわれた。
【0093】
【表3】

【0094】
生成物は透明なゲルであったが、実験2の生成物よりもずっと濃い色であった。
【0095】
実験9
ゾルゲル法による多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの製造で、製造の間にUV吸収剤をも含む。
a)221.4g(1.00モル)のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(A−1100、GE Silicones, USA)を、ホースクーラ及びマグネティックスターラを有する1000ml丸底フラスコに入れた。93.6g(0.60モル)のブチルジグリコール(BDG)及び22.5g(1.30モル)の水及び1.00gのTinuvin 123 (Ciba Specialty Chemicals, Switzerland)の混合物を添加した。混合物を還流下で110℃のオイルバス中で45分間加熱した。まだ温かい反応生成物に、36mlのトルエン中に溶解した12.0gのCyasorb UV-1164(Cytec Inc., USA)の加熱された溶液を添加した。その後、オイルバス温度110〜160℃で約1000ミリバールから20ミリバール未満の真空勾配で、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留で除去した。丸底フラスコ中の圧力が10分間20ミリバール以下に達したときに蒸留を止めた。約226mlの蒸留物を回収した。反応生成物は透明の液体であり、ガードナーカラーは3であった(ガードナーカラースケール/ASTM D1544による)。
【0096】
b)a)からの反応生成物を70℃に加熱して透明な液体を得た。その後、512.8g(1.00モル)のAraldite DY-E(C12-C14アルコールのグリシジルエーテル、Vantico AG(Huntsman AG), Switzerland)を添加し、反応混合物を70℃に1時間保持した。得られた生成物はガードナーカラーが1であり、そして90℃で非粘性の液体であった。20℃で、数時間後の生成物は結晶化の兆候を示した。70℃に再加熱したときに、生成物は再び透明で非粘性となった。
【0097】
実験10
多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーのゾルゲル法による製造及び続いて行う2工程変性
a)221.4g(1.00モル)のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(A−1100、GE Silicones, USA)を、ホースクーラ及びマグネティックスターラを有する1000ml丸底フラスコに入れた。93.6g(0.60モル)のブチルジグリコール(BDG)及び22.5g(1.30モル)の水及び1.00gのTinuvin 123 (Ciba Specialty Chemicals, Switzerland)の混合物を添加した。混合物を還流下で110℃のオイルバス中で45分間加熱した。その後、オイルバス温度110〜160℃で約1000ミリバールから20ミリバール未満の真空勾配で、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留で除去した。丸底フラスコ中の圧力が10分間20ミリバール以下に達したときに蒸留を止めた。約192mlの蒸留物を回収した。反応生成物は無色透明の液体であり、ガードナーカラーは1であった(ガードナーカラースケール/ASTM D1544による)。
【0098】
b)a)からの反応生成物を70℃に加熱して透明な液体を得た。その後、130.2g(1.00モル)のtert-ブチルグリシジルエーテルを添加し、反応混合物を70℃に1時間保持した。100mlのトルエン中の98.1g(1.00モル)のシクロヘキサノンの溶液を加えた。反応混合物を還流下で15分間沸騰し、その後、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留によって除去した。ガードナーカラーが2であり、20℃で粘性ゲルの形態でありそして90℃で非粘性の液体である透明な生成物が得られた。
【0099】
実験11
実験10に対応する方法で、トリアセトンアミン(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノン、CAS[826−36−8]、Sigma-Aldrich Norway AS)から、ヒンダードアミンのタイプの官能基を有する多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーを調製した。
【0100】
実験12
実験10に対応する方法で、3−ヒドロキシベンズアルデヒド(CAS[100−83−4]、Sigma-Aldrich Norway AS)から、フェノールのタイプの官能基を有する多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーを調製した。
【0101】
実験13
エステルを用いた、ゾルゲル法による多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの製造
a)221.4g(1.00モル)のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(A−1100、GE Silicones, USA)を、ホースクーラ及びマグネティックスターラを有する1000ml丸底フラスコに入れた。93.6g(0.60モル)のブチルジグリコール(BDG)及び22.5g(1.30モル)の水及び1.00gの実験11からの生成物の混合物を添加した。混合物を還流下で110℃のオイルバス中で45分間加熱した。その後、オイルバス温度110〜160℃で約1000ミリバールから20ミリバール未満の真空勾配で、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留で除去した。丸底フラスコ中の圧力が10分間20ミリバール以下に達したときに蒸留を止めた。約192mlの蒸留物を回収した。反応生成物は無色透明の液体であり、ガードナーカラーは1であった(ガードナーカラースケール/ASTM D1544による)。
【0102】
b)a)からの反応生成物を70℃に加熱して透明な液体を得た。その後、150mlのトルエン中の136.2g(1.00モル)のメチルベンゾエート(CAS[93−58−3], Sigma-Aldrich Norway AS)及び0.5gの無水酢酸(CAS[108−24−7], Sigma-Aldrich Norway AS)を添加し、反応混合物を70℃に1時間保持した。その後、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留で除去した。ガードナーカラーが1であり、20℃で粘性ゲルの形態でありそして90℃で非粘性の液体である透明な生成物が得られた。
【0103】
実験14
イソシアネートを用いた、ゾルゲル法による多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの製造
a)221.4g(1.00モル)のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(A−1100、GE Silicones, USA)を、ホースクーラ及びマグネティックスターラを有する1000ml丸底フラスコに入れた。93.6g(0.60モル)のブチルジグリコール(BDG)及び22.5g(1.30モル)の水及び1.00gの実験11からの生成物の混合物を添加した。混合物を還流下で110℃のオイルバス中で45分間加熱した。その後、オイルバス温度110〜160℃で約1000ミリバールから20ミリバール未満の真空勾配で、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留で除去した。丸底フラスコ中の圧力が10分間20ミリバール以下に達したときに蒸留を止めた。約192mlの蒸留物を回収した。反応生成物は無色透明の液体であり、ガードナーカラーは1であった(ガードナーカラースケール/ASTM D1544による)。
【0104】
b)a)からの反応生成物を70℃に加熱して透明な液体を得た。その後、155.4g(1.00モル)のオクチルイソシアネート(CAS[3158−26−7], Sigma-Aldrich Norway AS)を添加し、反応混合物を70℃に1時間保持した。20℃で白色でワックス状であり、90℃でガードナーカラーが1で非粘性の液体である生成物が得られる。
【0105】
実験15
実験5からの生成物をプラズマ処理されたポリエチレンシート(Borealis AS, Norway)に塗布し、塗布した実験5からの生成物とともにシートを160℃に2時間及び80℃に16時間加熱することで硬化する。40℃で180時間キシレン中に放置したときに、塗膜はポリオレフィン表面から溶解しない。
【0106】
実験16
実験1、2及び9からの生成物を、ポリプロピレンホモポリマー(HG430MO,Borealis AS)中に、Clextral の特別装備のダブルヘリックス押出機によって配合した。多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの量は全ての場合に5%であった。配合された製品をBattenfeld射出成形装置によって2mmの厚さのシートに射出成形した。シートは均一であり、多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーを含まない、射出成形されたポリプロピレンホモポリマーと同じくらい透明であった。
【0107】
実験17
実験11からの製品の粘度をPhysika MCR 300のレオメータで20℃又は90℃で測定した。各サンプルで測定を3回行い、各温度での平均値を計算した。結果を下記の表に示す。比較のために、POSSコンパウンドであるイソオクチル−POSSの粘度(ケージ混合物;Sigma-Aldrich Norway AS, ref.nr.560383)の粘度も測定した。表は、また、同一の温度でのn−ブタノールの粘度値も示している(Handbook of Chemistry and Physics, CRC Press, 71. ed., (1990-1991))。
【0108】
【表4】

【0109】
実験11の結果について示した粘度の相対変化(本発明による)は1/1000であり、一方、比較では1/80(POSS)及び5未満(n−ブタノール)である。
【0110】
実験18
5リットル反応器中での多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーのゾルゲル法による製造
2824g(12.8モル)のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(商標)AMEO,Degussa AG, Germany)を5リットル反応器(NORMAG Labor-und Prozes
stechnik, Ilmenau, Germany)中に入れた。その反応器は温度制御されたヒートマントル、攪拌アセンブリ、温度計、滴下漏斗、還流及び蒸留の間の急速な変更のためのコラムヘッドを有する垂直冷却器、及び、真空コネクション(メンブレンポンプ)を有した。1241g(7.7モル)のブチルジグリコール(BDG)及び298g(16.6モル)の水及び20mgの(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノン、CAS[2564−83−2], Sigma-Aldrich Norway AS)の混合物を還流下に45分間加熱した。その後、オイルバス温度110〜160℃で約1000ミリバールから20ミリバール未満の真空勾配で、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留で除去した。丸底フラスコ中の圧力が10分間20ミリバール以下に達したときに蒸留を止めた。約2690mlの蒸留物を回収した。反応生成物は透明で、無色の液体であり、ガードナーカラーは1であった(ガードナーカラースケール/ASTM D1544)。
【0111】
実験19
5リットル反応器中での多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーのゾルゲル法による製造
2801g(12.7モル)のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(商標)AMEO,Degussa AG, Germany)を5リットル反応器(NORMAG Labor-und Prozesstechnik, Ilmenau, Germany)中に入れた。その反応器は温度制御されたヒートマントル、攪拌アセンブリ、温度計、滴下漏斗、還流及び蒸留の間の急速な変更のためのコラムヘッドを有する垂直冷却器、及び、真空コネクション(メンブレンポンプ)を有した。821g(7.6モル)の2−ブトキシエタノール(DOWANOL EB, Dow Chemical, USA)及び296g(16.4モル)の水及び16mgの実験11の反応生成物の混合物を還流下に45分間加熱した。その後、オイルバス温度110〜160℃で約1000ミリバールから20ミリバール未満の真空勾配で、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留で除去した。丸底フラスコ中の圧力が10分間20ミリバール以下に達したときに蒸留を止めた。約2334mlの蒸留物を回収した。反応生成物は透明で、無色の液体であり、ガードナーカラーは1であった(ガードナーカラースケール/ASTM D1544)。
【0112】
実験20
実験19で調製したとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー中の有機ブランチの成長
a)558gの実験19からの反応生成物を70℃に加熱した。その後、625g(4.8モル)のtert-ブチルグリシジルエーテル(BGE)を加え、そして反応混合物を100℃に加熱した。反応は非常に強い発熱性であり、制御可能なヒートマントルによって反応混合物の温度が160℃を超えないように確保した。反応混合物を80℃に冷却した。
b)621gのトリアセトンアミン(TAA)の552gのトルエン中の熱い溶液を加えた。反応混合物を還流下に20分間加熱した。その後、トルエン及び水の共沸混合物を約610g留去した。真空蒸留が20ミリバール以下で、反応混合物中の温度が160℃で手順を止めた。褐色であるが透明な生成物を得て、それは20℃で粘性のゲルであり、90℃で非粘性の液体であった。
【0113】
実験21
実験19で調製したとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー中の有機ブランチの成長
a)551gの実験19からの反応生成物を70℃に加熱した。その後、1460g(5.7モル)のAraldite DY-E(C12-C14アルコールのグリシジルエーテル、Huntsman AG, Switzerland)を加え、そして反応混合物を100℃に加熱した。反応は非常に強い発熱性であり、制御可能なヒートマントルによって反応混合物の温度が160℃を超えないように確保した。反応混合物を80℃に冷却した。
b)280gのヘキサン中の160gの樟脳(CAS[76−22−2], Sigma-Aldrich Norway AS)の160gのトルエン中の熱い溶液を加えた。反応混合物を還流下に20分間加熱した。その後、ヘキサン及び水の共沸混合物を約290g留去した。真空蒸留が20ミリバール以下で、反応混合物中の温度が160℃で手順を止めた。20℃で透明な粘性のゲルであり、90℃で透明な非粘性の液体である生成物を得た。
【0114】
実験22
実験19で調製したとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー中の有機ブランチの成長
480gの実験19からの反応生成物を80℃に加熱した。その後、1562g(12.0モル)のtert-ブチルグリシジルエーテル(BGE)を加え、そして反応混合物を100℃に加熱した。反応は非常に強い発熱性であり、制御可能なヒートマントルによって反応混合物の温度が160℃を超えないように確保した。真空蒸留が20ミリバール以下で、反応混合物中の温度が160℃で手順を止めた。褐色であるが、透明な生成物が得られ、それは20℃で非常に粘性のゲルであり、140℃で非粘性の液体であった。
【0115】
実験23
実験19で調製したとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー中の有機ブランチの成長
140gの実験19からの反応生成物を70℃に加熱した。その後、466g(4.1モル)のε−カプロラクトン(CAS[502−44−3], Sigma-Aldrich Norway AS)を加え、そして反応混合物を100℃に加熱した。2時間後に、627gのAraldite DY-E(C12-C14アルコールのグリシジルエーテル、Huntsman AG, Switzerland)を加え、そして反応混合物を160℃に加熱した。真空蒸留が20ミリバール以下で、反応混合物中の温度が160℃で手順を止めた。420gの蒸留物を留去した。20℃で粘性であり、90℃で非粘性(液体)の透明ゲルが得られた。
【0116】
実験24
実験19で調製したとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー中の有機ブランチの成長
70gの実験19からの反応生成物を、ボロシリケートガラスフラスコ(Schott AG, Germany)中で攪拌下にウォーターバスによって70℃に加熱した。その後、171g(1.5モル)のε−カプロラクトン(CAS[502−44−3], Sigma-Aldrich Norway AS)を加え、そして反応混合物を90℃に加熱した。2時間後に、154gのAraldite DY-E(C12-C14アルコールのグリシジルエーテル、Huntsman AG, Switzerland)を加え、そして反応混合物を攪拌下に4時間、90℃に保持した。その後、反応混合物を40℃で1週間攪拌した。20℃で粘性であり、90℃で非粘性(液体)の透明ゲルが得られた。
【0117】
実験25
実験19で調製したとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー中の有機ブランチの成長
28gの実験19からの反応生成物を、ボロシリケートガラスフラスコ(Schott AG, Germany)中で攪拌下にウォーターバスによって70℃に加熱した。その後、137g(1.5モル)のε−カプロラクトン(CAS[502−44−3], Sigma-Aldrich Norway AS)を加え、そして反応混合物を90℃に加熱した。2時間後に、57gのオレイン酸(CAS[112−80−1], Sigma-Aldrich Norway AS)を加え、そして反応混合物を40℃で16週間攪拌した。20℃で粘性であり、90℃で非粘性(液体)の透明ゲルが得られた。
【0118】
実験26
実験19で調製したとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー中の有機ブランチの成長
35gの実験19からの反応生成物を、ボロシリケートガラスフラスコ(Schott AG, Germany)中に入れた。攪拌下に、31gのプロピレンカーボネート(Hunstman AG, Switzerland)を加え、環境温度で反応混合物を攪拌した。反応は強い発熱性であり、そして20℃で粘性であり、120℃で非粘性(液体)の透明ゲルが得られた。
【0119】
実験27
実験19で調製したとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー中の有機ブランチの成長
14.0gの実験19からの反応生成物を、ボロシリケートガラスフラスコ(Schott AG, Germany)中に入れた。その後、攪拌下に12.3gのプロピレンカーボネート(Hunstman AG, Switzerland)を加え、環境温度で反応混合物を攪拌した。反応は強い発熱性であり、そして20℃で粘性であり、120℃で非粘性(液体)の透明ゲルが得られた。34.1gのラッカー(SZ-006, Rhenania GmbH, Germany)を添加した。この組成物を40℃で40時間攪拌した。変性されたラッカーが得られ、それは当初のラッカーとほぼ同一の貯蔵寿命を有した。
【0120】
実験28
実験19で調製したとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー中の有機ブランチの成長
14gの実験19からの反応生成物を、ボロシリケートガラスフラスコ(Schott AG, Germany)中に入れた。その後、49gのAraldite DY-P(p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、Huntsman AG, Switzerland)を攪拌下に添加し、環境温度で反応混合物を攪
拌した。反応は強い発熱性であり、そして20℃で粘性であり、120℃で非粘性(液体)の透明ゲルが得られた。
【0121】
実験29
実験19で調製したとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー中の有機ブランチの成長
15.4gの実験19からの反応生成物を40gの水中に分散させ、ボロシリケートガラスフラスコ(Schott AG, Germany)中に入れた。この分散体を40℃で2時間攪拌し、その後、最初にフィルター紙にとおしてろ過し、その後、テフロン(登録商標)膜フィルター(孔サイズ0.45μm)をとおしてろ過した。ろ液を別のボロシリケートフラスコに入れ、40℃に加熱した。その後、23gのグリシジルメタクリレートと8gのブトキシエタノールとの混合物を攪拌下に添加した。反応混合物を40℃で2時間攪拌した。その後、0.5gのドデシルベンゼンスルホン酸(CAS[25155−30−0], Sigma-Aldrich Norway AS)ナトリウム塩を加えた。非常に良好な貯蔵寿命を有する透明な分散体が得られた。
【0122】
実験30
ポリウレタンフォームの製造
イソシアネートのタイプ:4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)98%、MDI,[CAS[101−68−8],Sigma-Aldrich Norway AS)
ポリオールタイプ:テラサン650ポリエーテルグリコール(CAS[25190−06−1], Sigma-Aldrich Norway AS, DuPont製)
【0123】
【表5】

【0124】
高速で攪拌アセンブリーを運転しながら成分を60℃で混合した。試験50412−PU−6において、サンプルを数分間攪拌し、硬化したサンプルとならなかった。試験50412−PU−7において、攪拌の数分後に、サンプルは硬化し/発泡した。
【0125】
サンプルはホットキャビネット中で80℃で一晩ポスト硬化し、それはサンプル50412−PU−6の硬化をももたらした。
【0126】
実験31
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた分子量分析
5μmの粒子及び孔径10000Å〜100Åをベースとする一連のSECカラムを標準ポンプ及び屈折率検知器(RID)とともに用いた。シクロヘキサン又はテトラヒドロフランを移動相及び溶剤として用いた。分子量分析はポリスチレン標品をベースとした。本発明による幾つかの有機/無機ハイブリッドポリマーの結果を下記の表に示す。
【0127】
【表6】

【表7】

【0128】
実験32
PMMA(Plexiglass)をOプラズマで30秒間処理した(効果500W及びフラックス200標準cm/分)
実験29のラッカーの製造
塗布:ラッカーをバーコーティング(ロッド番号26)によって、プラズマ処理したPMMAに塗布した。塗布の直後に、シートを100℃のホットエアオーブンに10分間入れた。その後、シートをオーブンから取り出し、空気中で冷却した。
【0129】
試験:標準テープ試験で付着力を決定した。Erichsenの格子カッティング試験ツールを使用することで引っかきパターンを作った(Erichsenの格子カッティング試験ツールを用いて引っかきパターンを作った)。テープを均一な圧力でパターンに貼り付けた。シートからテープを除去し、接着剤に対向した表面を光学顕微鏡で観察した。表面にはコーティングの小さい残留物を有するか又は残留物を有しなった。
【0130】
実験33
PC
PC(Lexan)をOプラズマで30秒間処理した(効果500W及びフラックス200標準cm/分)
実験29のラッカーの製造
塗布:ラッカーをバーコーティング(ロッド番号26)によって、プラズマ処理したPCに塗布した。塗布の直後に、シートを150℃のホットエアオーブンに10分間入れた。その後、シートをオーブンから取り出し、空気中で冷却した。
【0131】
試験:標準テープ試験で付着力を決定した。Erichsenの格子カッティング試験ツールを使用することで引っかきパターンを作った。テープを均一な圧力でパターンに貼り付けた。シートからテープを除去し、接着剤に対向した表面を光学顕微鏡で観察した。表面にはコーティングの小さい残留物を有するか又は残留物を有しなった。
耐引っ掻き性はErichsen, Germanyからの硬度ペンを用いて試験した。多くの引っかき傷を示した未変性PCに対するのと同一の力(6N)を用いたときに、引っかき傷は観察されなかった。
【0132】
実験34
PP
PPをOプラズマで30秒間処理した(効果500W及びフラックス200標準cm/分)
実験29のラッカーの製造
塗布:ラッカーをバーコーティング(ロッド番号26)によって、プラズマ処理したPPに塗布した。塗布の直後に、シートを120℃のホットエアオーブンに10分間入れた。その後、シートをオーブンから取り出し、空気中で冷却した。
【0133】
試験:標準テープ試験で付着力を決定した。Erichsenの格子カッティング試験ツールを使用することで引っかきパターンを作った(Erichsenの格子カッティング試験ツールを用いて引っかきパターンを作った)。テープを均一な圧力でパターンに貼り付けた。シートからテープを除去し、接着剤に対向した表面を光学顕微鏡で観察した。表面にはコーティングの小さい残留物を有するか又は残留物を有しなった。
【0134】
実験35
木の処理:4層で木のサンプルにブラシ塗布することで多孔性の木をラッカーで処理した。塗布の直後に、木のプレートを80℃のホットエアオーブンに120分間入れた。その後、プレートをオーブンから取り出し、空気中で冷却した。その手順をもう一度繰り返した。
【0135】
試験:水による木のサンプルの湿潤化を木のボードの上に水滴を一滴落とすことで試験した。水滴は処理した木の中に散逸するのに室温で2分間を要したが、未処理の木では20秒以内に木に浸入した。
【0136】
多孔性の紙の含浸:紙の多孔質シートをラッカーで含浸させ、80℃のホットエアオーブンに120分間入れた。その後、シートをオーブンから取り出し、空気中で冷却した。
【0137】
試験:水による含浸紙シートの湿潤化を紙シート上に水滴を一滴落とすことで試験した。水滴は吸収されずに紙シート上に残ったが、未処理の紙シートによって水滴は即座に吸収された。
【0138】
アルミニウム上のラッカーの適用:
実験29のラッカーの製造
塗布:ラッカーをバーコーティング(ロッド番号26)によって、アルミニウムシートに塗布した。塗布の直後に、シートを250℃のホットエアオーブンに5分間入れた。その後、シートをオーブンから取り出し、空気中で冷却した。
【0139】
試験:耐引っ掻き性はErichsen, Germanyからの硬度ペンを用いて試験した。2.5Nを超える力を用いたときに、引っかき傷が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ブランチを有する無機コアの形態である、粒状の多分枝の有機/無機ハイブリッドポリマーのゾルゲル法による製造方法であって、
少なくとも以下の2つの工程をその順序で含む、
A)構造:X−B−Si(−Y)(式中、XはNRであり、R、Rは水素、飽和もしくは不飽和C−C18アルキル、置換もしくは非置換アリールから選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、及び/又は1つ以上の加水分解可能なシラン単位を含んでよく、又は、R、Rは酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化学物質の縮合生成物又は付加生成物から選ばれ、Bは飽和もしくは不飽和C−C18アルキレン、置換もしくは非置換アリーレンから選ばれる結合基であり、該物質の炭素鎖は1つ以上の分枝を含んでよく、及び/又は、酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、Yはアルコキシ、カルボキシル及びハロゲンなどの加水分解可能な残基から選ばれる)を有するシランの制御された加水分解及び縮合によってコアを調製し、
B)以下の工程によって有機ブランチを成長させる、
i)R、Rの少なくとも1つがHであるときに、前記コア中のX−B基上のN−H水素原子を、第一級及び第二級アミンに典型的な反応によって置換させることができる少なくとも1つの反応体を添加すること、及び/又は、
ii)前記コア中のX−B基のN原子に付加し、それによって、N原子を完全に又は部分的に第四級ニトロニウムイオンに転化することができる酸を添加すること、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
下記構造を有するシランの制御された加水分解及び縮合によって調製された、少なくとも部分的に加水分解された有機アミノ官能性シランをベースとするゾルゲル法の結果物の変性方法であって、前記シランは構造:X−B−Si(−Y)(式中、XはNRHであり、Rは水素、飽和もしくは不飽和C−C18アルキル、置換もしくは非置換アリールから選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、及び/又は1つ以上の加水分解可能なシラン単位を含んでよく、又は、Rは酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化学物質の縮合生成物又は付加生成物から選ばれ、Bは飽和もしくは不飽和C−C18アルキレン、置換もしくは非置換アリーレンから選ばれる結合基であり、該物質の炭素鎖は1つ以上の分枝を含んでよく、及び/又は、酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、Yはアルコキシ、カルボキシル及びハロゲンなどの加水分解可能な残基から選ばれる)を有し、加水分解及び縮合の後のハイブリッドポリマー中のN−H水素原子は有機残基によって置換され、
有機ブランチは、
i)R、Rの少なくとも1つがHであるときに、コア中のX−B基上のN−H水素原子を、第一級及び第二級アミンに典型的な反応によって置換させることができる少なくとも1つの反応体を添加すること、及び/又は、
ii)コアのX−B基のN原子に付加し、それによって、N原子を完全に又は部分的に第四級ニトロニウムイオンに転化することができる酸を添加すること、
によって調製されることを特徴とする、方法。
【請求項3】
工程i)におけるN−H水素原子の置換は付加反応によって行なわれることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
工程i)におけるN−H水素原子の置換は置換反応によって行なわれることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
工程i)におけるN−H水素原子の置換は少なくとも1つの付加反応と少なくとも1つの置換反応の組み合わせによって行なわれることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
前記付加反応はA=B二重結合によるN−H水素原子の置換を含み、A,BはC,O,N,S又はPの元素から選ばれることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記付加反応はエポキシ基の開環を含むことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項8】
エポキシ基の開環の後に、ケトン又はアルデヒドによる置換を行なう、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記付加反応はブロックトイソシアネート又は非ブロックトイソシアネートによるN−H水素原子の置換を含むことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項10】
前記付加反応は環状(酸)無水物又は環状酸誘導体の開環を含むことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項11】
前記酸誘導体はオレイン酸の誘導体であることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記付加反応はかかる付加を起こさせることができる反応体の適切な組み合わせによって行われることを特徴とする、請求項3、又は5〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記付加反応の後に、ブランチの重合を含めた、ある数の繰り返しの付加反応を行い、反応体はコアの窒素原子に対してモル過剰で添加されることを特徴とする、請求項3、又は5〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記置換反応は、少なくとも1つの化合物R−X(式中、Xはアミン基によって置換される原子又は原子基であり、R基は非置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C−C24アルキル、置換もしくは非置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルから選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、又は、酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化学物質の縮合生成物又は付加生成物から選ばれる基から選ばれ、原子又は原子基Xは好ましくは、ハロゲン、置換もしくは非置換アルコキシ、フェノキシル、アミン、カルボキシレート、スルホネート、スルフィネート、ホスホネート又はホスフィネートから選ばれる)による反応を含むことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項15】
前記置換反応は少なくとも1つの一官能性カルボン酸誘導体の反応を含むことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項16】
前記置換反応は少なくとも1つのスルフィン酸誘導体の反応を含むことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項17】
工程ii)において添加される酸はルイス酸又はブロンステッド酸であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
工程i)におけるN−H水素原子の置換は水性媒体中で行なわれ、及び/又は工程ii)における置換は水性媒体中で行なわれることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
工程i)及び/又は工程ii)における置換のために少なくとも1つのハロゲン化有機化合物が使用されることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
工程i)及び/又は工程ii)における置換のために少なくとも1つのフッ素化有機化合物が使用されることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
請求項1記載の方法又は請求項2記載の方法によって製造されることを特徴とする、有機ブランチを有する無機コアの形態である、ゾルゲル法による、粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー。
【請求項22】
前記多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーは水性媒体中に分散され又は溶解されていることを特徴とする、請求項21記載の粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー。
【請求項23】
少なくとも1つの重合性二重結合を含むことを特徴とする、請求項21記載の粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー。
【請求項24】
前記重合性二重結合は、アクリル基、ビニル基又は不飽和脂肪酸の一部であることを特徴とする、請求項23記載の粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー。
【請求項25】
請求項1又は2記載の方法によって製造された、粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの、熱可塑性プラスチック、熱硬化プラスチック、又は、化学組成物中での機能性添加剤としての使用。
【請求項26】
請求項1又は2記載の方法によって製造された、粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの、酸化防止剤、UV吸収剤又はラジカル掃去剤としての使用。
【請求項27】
請求項1又は2記載の方法によって製造された、粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの、熱可塑性プラスチック及び熱硬化プラスチック中の架橋剤としての使用。
【請求項28】
請求項1又は2記載の方法によって製造された、粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの、接着剤、ラッカー及びコーティング製品中の成分としての使用。
【請求項29】
請求項1又は2記載の方法によって製造された、粒状の多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーの、生体活性分子に対する抗体及び適切な分析法によって検知可能なマーカーを同時に担持させるための使用。

【公開番号】特開2012−211324(P2012−211324A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−116756(P2012−116756)
【出願日】平成24年5月22日(2012.5.22)
【分割の表示】特願2007−508293(P2007−508293)の分割
【原出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(506346945)シンベント アクティーゼルスカブ (9)
【Fターム(参考)】