説明

多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、有機化学、特に、ポリマー化学の分野において幾つかの用途に適する成分又は添加剤を提供することである。
【解決手段】式(I)の基本構造を有するゾルゲル製品の形態の多分枝の粒状の有機/無機ハイブリッドポリマーで、XはC1−C18アルキレン又はアリーレンであり、R1からR6は水素、C1−C18アルキル、アリール、ホルミル、脂肪族もしくは芳香族カルボニル、カルバモイル、スルホニル、スルホキシル、ホスホニル、スルフィニル又はホスフィニルから選ばれ、又はR1からR6は、酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドの縮合生成物又は付加生成物から選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前文によって規定されるとおりの多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ポリマー材料は益々多くのカテゴリーの製品において使用されており、たとえば、車、船舶、飛行機用部品、電子産業及び他の先進産業、ならびに、塗料及び他のコーティング、特殊包装などにおいて使用されている。製品の新規のカテゴリーでのポリマー材料の使用は製品特性によってのみ制限される。このため、高められた耐スクラッチ性、改良された耐候性、高められたUV耐性、高められた耐薬品性、ならびに、酸化防止、耐腐食性に関する改良された特性などの改良された特性を有するポリマーを開発することが継続的に求められている。
【0003】
純粋なポリマー材料に加えて、無機コアと有機ブランチを有することができるマクロ分子であることを意味する、無機及び有機材料のハイブリッドとして記載されうる材料をベースとする製品も開発されている。
【0004】
枝分かれ構造を有する有機ポリマー分子は大きな経済的成長の可能性を有し、特に新材料における成分としての可能性を有する。いわゆるデンドリマーは完全に枝分かれした構造を有するこのようなポリマー分子の重要な例であり、統計的累進的枝分かれを有する超枝分かれポリマーも同様である。デンドリマーと超枝分かれポリマーとの両方は、明示的な樹枝状ポリマーである。樹枝状(Greec:デンドロン=木)は大体において完全な累進的枝分かれの原則を特徴とする(G.R.Newkome, C.N. Moorefield, F.Vogtle, "Dendrimers and Dendrons: Concepts, Syntheses, Applications", Wiley-VCH, Weinheim, (2001))。式Iは直鎖ポリマーと樹枝状ポリマーとの根本的な相違を示す。
【0005】
【化1】

【0006】
樹枝状ポリマーは特に興味深い。というのは、T単位は官能基を有することができ、ポリマーの重量もしくは体積単位当たりの利用可能な官能基の密度が直鎖ポリマーの場合よりずっと大きいからである。官能基Tは材料中に機能を付与し、たとえば、WO公報第02092668号に記載されるような酸化防止剤、UV吸収剤、又はラジカル掃去剤の機能を付与するように使用することができる。又は、T基はエポキシ樹脂又はポリウレタンなどの有機材料の非常に効率的な架橋剤、又は、熱可塑性樹脂のための架橋剤として使用することができる。樹枝状ポリマーとこのような有機化合物との間の高い架橋度のために、樹枝状ポリマーは、ポリアミン、多価アルコール又は多官能アクリレートなどの慣用の架橋剤と比較して優れた架橋剤である。架橋熱可塑性樹脂などの有機材料のより高度な架橋は耐薬品性、耐候性及び耐磨耗性などの特性を改良し、材料をより高温での用途に有用にさせる(Hans Zweifel編, Plastic Additives Handbook, Carl Hanser Verlag, Munchen (2001), 725-811)。T基は、また、ネットワーク中に樹枝状ポリマーを組織するために使用されうる。材料中の成分として、樹枝状ポリマーは改良されたバリア特性を誘起しうる。又は、このような樹枝状ポリマーは熱硬化プラスチック中のバインダー又は成分として使用されうる。
【0007】
デンドリマーは、通常、幾つかの工程を含む比較的に複雑でかつ高価な合成方法で製造される。完全な累進的枝分かれ構造を達成するために、プロセス条件を非常に正確に維持しなければならない。それゆえ、工業用途は限定されている。
【0008】
超枝分かれポリマーの一般的な製造方法は早くはFloryによって説明された(P.J.. Flory, Principles of Polymer Chemistry, Cornell University, (1953))。AはBと反応しうるが、AとA及びBとBの反応が妨げられるAB2モノマーの重合は超枝分かれポリマーをもたらす。
【0009】
超枝分かれポリマーの別の製造方法は開始剤をも有する反応性モノマー、いわゆる「イニマー」を利用することを含む。1つの例は、イニマーグリシドールとgermトリメチロールプロパンとの塩基触媒反応であり、式2に示すとおりである。
【0010】
【化2】

【0011】
このように製造される超枝分かれポリマーは対応するデンドリマーと非常に類似の特性を有する(A.Sunder, R. Hanselmann, H. Frey, R. Muhlhaupt; Macromolecules, (1998), 32, 4240)。これは同等の数の遊離HO−基を有する直鎖ポリマーよりもずっと低い粘度を有することを意味する。製造方法における特徴は、イニマーグリシドールをgermに対して非常にゆっくりと、非常に薄く希釈された状態で加えなければならないことである。このため、プロセスのコスト効率はひどく低下し、そのため、産業用途での超枝分かれポリマーの利用性は非常に制限されている。
【0012】
超枝分かれポリマーのT−基にある変性を行なうことが以前から知られている。J.-P. Majoral,A.-M. Caminade and R. Kraemer, Anales de Quimica Int. Ed., (1997), 93, 415-421はリンを含むデンドリマーの官能化を記載している。T−基の官能化は同一/類似の化学基又は異なる化学基で行なうことができる。
【0013】
FR2761691は環式チオエステルとの反応で変性した官能基を表面に有するデンドリマーについて議論している。その反応はアミドもしくはアミン結合によってデンドリマーに結合したチオール基を有するデンドリマー表面をもたらす。その生成物は酸化防止剤として使用されうる。記載のデンドリマーはポリアミドアミンデンドリマー(PAMAMデンドリマー)タイプである。PAMAMデンドリマーは第三級アミンを含み、それは第四級アンモニウム塩もしくはアミンオキシドに転化した後に比較的容易に分解されうる(A. W. Hofmann, Justus Liebigs Ann. Chem. (1851), 78, 253-286; A.C. Cope, E.R. Trumbull, Org. React. (1960), 11, 317-493; A.C. Cope, T.T. Foster, p. H. Towle, J. Am. Chem.Soc. (1949), 71, 3929-3935)。アミンベースのデンドリマーからの第四級アンモニウム塩又はアミンオキシドは、アミンベースのデンドリマーの添加剤を熱可塑性樹脂に取り込み/配合し、次いで、熱可塑性樹脂の加工(たとえば、フィルムブロー、押出、キャスティングなど)を続いて行なうときに形成されうる。このような分解は、一方で、デンドリマーコアの部分的崩壊をもたらし、他方で、分解生成物の形成をもたらし、この分解生成物は漏れ出し、それにより、ポリマー製品の表面品質を低下しうる。さらに、第三級アミンは熱可塑性樹脂の加工の間にヒドロペルオキシドの分解によってフリーラジカルを形成することがある(A. V. Tobolsky, R.B. Mesrobian, Organic Peroxides, (1954), Interscience Publishers, New York, p. 104-106)。それによって、第三級アミンを含むデンドリマー及び超枝分かれポリマーはその加工、貯蔵又は使用の間に熱可塑性樹脂の意図しない分解を誘発しうる。
【0014】
WO01/48057は第三級アミンを含むコア構造をベースとする熱酸化分解に対する多官能安定剤について議論している。上記のとおり、熱可塑性樹脂の加工、貯蔵又は使用の間にコア構造の意図しない分解を生じることがある。WO01/48057により製造した典型的な安定剤のモル比は1246g/モルである。
【0015】
WO97/19987は、ポリマー材料中に使用されうる、ポリマー添加剤と変性デンドリマーとの組み合わせについて議論している。WO97/199987の例示において、デンドリマーは、第3、4及び5世代のポリプロピレンイミン(PPI)で、16、32及び64の末端アミン基を含むものをベースとする。コア構造は第三級アミンを含み、それは熱可塑性樹脂の加工、貯蔵又は使用の間にコア構造の意図しない分解をもたらすことがある。多官能脂肪酸アミドを生成する脂肪酸によるPPIの変性は適切な溶剤中での加熱の手段によって行なわれることができる。デンドリマーのコア構造中の第三級アミン基及びデンドリマー表面での第一級アミン基は、酸素の存在下で、デンドリマー構造の部分的分解に寄与することができる。上記での説明のとおり、フリーラジカルはヒドロペルオキシドの分解によって生成しうる。このような部分分解は、WO97/19987中の例I、XI及びXIIのように、変性PPIデンドリマーの薄褐色又は黄色によって示される。WO97/19987中の変性PPIデンドリマーの典型的な分子量は10,000〜40,000g/モルの範囲内にある。WO02/092668において、少なくとも1つの添加剤基と超枝分かれもしくは樹枝状コアを含む表面活性化超枝分かれもしくは樹枝状安定剤が議論されている。WO02/092668の例示において、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピレン酸をベースとする樹枝状コアのみが使用されている。樹枝状コア及び添加剤基への結合は、エステル結合を主としてベースとし、エステル結合は安定剤を加水分解に感受性にする。さらに、調製された安定剤の分子量は、WO02/092668の例示はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって決定して、1000〜1500g/モルである。
【0016】
超枝分かれポリマーの特性に対応する特性を有する1つのタイプの粒状ポリマーは無機Six(1.5)xコアと、Si原子1個当たりに1個のT基を含み、POSS(ポリヘドラルオリゴシレスキノキサン)として知られている。このクラスの最も一般的な化合物はxが8であるPOSSであり、実質的に立方体構造である(C. Sanchez, G.J. de A.A. Soler-Illia, F. Ribot, T. Lalot, T. Lalot, C.R. Mayer, V. Cabuil; Chem. Mater., (2001), 13, 3066)。POSSの製造は高価であり(M.C. Gravel, C. Zhang, M. Dinderman, R.M. Laine; Appl. Organometal. Chem., (1999), 13, 329-336 and WO01/10871)、その産業上の利用性はそれゆえ制限されている。
【0017】
超枝分かれポリマーの特性に対応する特性を有する別のタイプの粒状ポリマーはSi原子1個当たりに1個のT基を有する無機Six(1.5)xコアからなり、下記構造のシランの制御された加水分解及び縮合によってゾルゲル法で製造されうる。X−B−Si(−Y)3(式中、Yは加水分解性残基から選ばれ、X−Bは基本的にT基に対応する)。この方法はたとえば、本願の出願人のWO公報第0208343号に記載されている。ゾルゲル法はコスト効率がよく、そのため、好ましい原料からマイルドな条件下で、すなわち、高圧や高温を使用せずに、極端な希釈などの特別の注意を要しないで、工業規模で行なうことができる。このように、ゾルゲル法によって製造される超枝分かれポリマーの特性に対応する特性を有する粒状ポリマーは多くの分野で産業上利用可能である。
【0018】
ポリマー製品中のゾルゲル製品の利用の多くの例は知られている(DE 19933098、EP666290)。通常、ナノメートル範囲のサイズを有する無機Six(1.5)xコアに主たる焦点が置かれており、それにより、無機ナノ粒子としてのゾルゲル製品に焦点が置かれている(cf.DE19933098及びEP486469)。無機残基X−Bは、通常、ゾルゲル製品を有機マトリックス中に投錨するために使用されている(cf.EP486469)。
【0019】
X−B基が1個以上のアミド基を含むシランの加水分解及び縮合を伴うゾルゲル法は特に単純である。というのは、外部触媒が必要なく、プロセスは周囲温度で又は緩やかな加熱下で行うことができるからである。1つの例は、本願の出願人の特許出願のWO公報第0208343号に記載されるとおりのγ−アミノプロピルトリアルコキシシランの制御された加水分解及び縮合である。X−B基が1個以上のアミド基を含むシランの制御された加水分解及び縮合は、通常、得られる粒状ポリマー製品が有機/無機構造(ハイブリッドポリマー)を有するゾルをもたらし、それはT基中に多少の遊離アミン基を有する超枝分かれポリマー製品に匹敵する。このような有機/無機ハイブリッドポリマーはその重量及び/又は体積と比較して多数の官能性T基を示す。同時に、直鎖ポリマーの構造と比較してそのコンパクトな構造は低い粘度及び熱硬化プラスチック及び熱可塑性プラスチックとの良好な混合特性などの望ましい特性を確保する。超枝分かれポリマーに対応する特性を有する有機/無機ハイブリッドポリマーの例は式3に示される。
【0020】
【化3】

【0021】
超枝分かれポリマーの特性に対応する特性を有する有機/無機ハイブリッドポリマーは、たとえば、熱硬化性プラスチックのようなポリマー製品のための添加剤として、また、表面保護のためのラッカー及び他のタイプのコーティングに用途を見いだす。適切な量と便利な粒子サイズで使用すると、このようなハイブリッドポリマーは問題のプラスチック材料又はラッカーの特性の有意な改良に寄与することができ、増大した耐磨耗性/耐スクラッチ性及び/又は耐候性に寄与することができる。
【0022】
ゾルゲルプロセス/製品の分野の従来技術は、幾つかの例及び文献を参照して、以下においてより詳細に記載されるとおり4つの主なカテゴリーに分類されうる。
【0023】
第一のカテゴリーは非加水分解アミン含有シランの変性(DE2023968、WO03/029361、EP0253770、EP666290)に関し、一般に二官能性エポキシ化合物によるものであり(たとえば、JP2001192485)、また、熱可塑性樹脂又はコーティングにおけるその使用に関する。加水分解及び縮合はある場合には後で行なわれるが、問題の熱可塑性樹脂又はコーティングに添加する前に行なわれる。一般に、この方法は多くの大きい分子を伴う未規定の分子サイズの分布をもたらす。このことは、続いて行なう加水分解が非常にうまくいくのを困難にすることを意味する。というのは、水が非常に大きな分子の全てのサイトに到達しないであろうからである。低い加水分解度は、製品のより低い耐スクラッチ性とより低い耐候性を意味する。さらなる欠点は、分子の有機部分の存在下に加水分解のために使用される水が前記有機部分の活性基と所望されないやりかたで反応することがあることである。加水分解されていないアルコキシシラン化合物の熱可塑性もしくは熱硬化性プラスチック材料中での使用は、次いで生じるシラン化合物のゆっくりとした加水分解の間に、すなわち、プラスチック材料が水に暴露された後に、エタノール又はメタノールなどのアルコールが生成されることを意味する。これによって、熱可塑性プラスチック又はコーティングの機械特性が低減されることになりうる。さらに、エタノール及び/又はメタノールなどのアルコールの生成は熱可塑性プラスチック又はコーティングの表面への添加剤及び/又は分解生成物の移行を生じさせることができることを意味し、それで、表面品質を大きく低減することがある。
【0024】
従来技術の方法の別のカテゴリーは化学反応による窒素含有ゾルゲル製品の変性に関し、アミン基が直接的に関わらないか(S. kar, P. Joly, M. Granier, O. Melnyk, J.-O. Durand, Eur. J. Org. Chem.;(2003), 4132-4139)、又は重要でない(US5744243)。後者の文献はa)酸触媒で加水分解し、そして縮合したシラン及びモノマーと、b)シランモノマーと適合性のある官能基を含む有機ポリマーの重合済み溶液とを混合することで得られるコーティング組成物を記載している。コーティングは光反射のために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
目的
本発明の目的は、有機化学、特に、ポリマー化学の分野において幾つかの用途に適する成分又は添加剤を提供することである。
【0026】
さらなる目的は、成分、材料、添加剤及び/又は化学組成物(混合物)の製造方法を提供し、限定するわけではないが、たとえば、問題の用途によって、耐候性、耐スクラッチ性、粘度などの1つ以上の特性を適合させることである。
【0027】
以下のとおり、既知のモノ官能性安定剤が示すよりも広い範囲での有用性を有する熱可塑性樹脂用の安定剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明
第一の態様によると、本発明は請求項1に規定されるとおりの多分枝の粒状の有機/無機ハイブリッドポリマーに関する。
【0029】
別の態様によると、本発明は請求項2に規定されるとおりの多分枝の粒状の有機/無機ハイブリッドポリマーの製造方法に関する。
【0030】
第三の態様によると、本発明は請求項3〜5に規定されるとおりの多分枝の有機/無機ハイブリッドポリマーの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明による多分枝の有機/無機ハイブリッドポリマーはその生来の構造のために、上記のとおりの多くに目的に適する。構造中、要素SiO1.5はシランの完全な加水分解及び縮合の後の理想的な珪素と水素との比率を示す。結合基Xへの結合は珪素原子から結合されていることが理解される。
【0032】
本発明の第二の態様をなす製造は、加水分解及び縮合が完了した直後に、シランの加水分解及び縮合のための反応装置と同一の反応装置を用いて、1つ以上の追加の工程においてT基が化学変性されるゾルゲル法を含む。このようなバッチ処理は多数の異なるT基を含みうる粒状の有機/無機多分枝ポリマーの非常にコスト効率の高い製造の基礎となる。それゆえ、それは多数の異なる産業用途に使用されうる。
【0033】
本明細書中、制御された加水分解及び縮合とは、出願人の公開WO0208343中に記載されるとおりの適切なシラン化合物の加水分解及び縮合と理解されるべきであるが、異なるのは、反応混合物は適切な安定剤を含み、この安定剤は加水分解及び縮合ならびに続いて行なう変性の間に反応体及び反応生成物の酸化分解を防止する。
【0034】
第一の工程は、R’基が加水分解又は縮合反応に参加しない適切なシラン化合物R’−Si(OR)nの加水分解である。アルコキシドリガンドはヒドロキシル基によって置換される。
Si−OR+H−OH Si−OH+ROH
【0035】
制御された量の水及び制御された量のグリコールベースの溶剤はこの工程の間に添加される。反応温度及び反応時間も制御される。
【0036】
第二の工程は、ヒドロキシル基が他の珪素中心からのヒドロキシル基又はアルコキシ基と反応し、Si−O−Si結合と、それぞれ水又はアルコールを生成する縮合である。
Si−OH+HO−Si Si−O−Si+H2
又は、
Si−OR+HO−Si Si−O−Si+ROH
【0037】
あるサイズの粒子を製造するために、2つの反応、すなわち、縮合と加水分解の反応速度論の正確なバランスを確保する化学条件を確立する必要がある。縮合は(単一の)モノマー分子からのポリマー鎖の形成に寄与するが、加水分解は多結晶沈殿又はオキソヒドロキシド沈殿に寄与する。アミノ官能性シランの組み合わせ及びアルコキシド基の強リガンドによる交換は加水分解反応を緩和し、それにより、ポリマー鎖が長くなりすぎず、オリゴマーサイズを維持することを確保するであろう。実際には、粒子は数ナノメートルのサイズで製造され、より典型的には10nm未満で製造されるであろう。適切な安定剤は、通常、加水分解及び縮合ならびに続いて行なう変性の間に反応体及び反応生成物の酸化分解を回避するために反応組成物中に添加される。得られる溶液は溶剤中に分散された無機ポリマー粒子を含む。
【0038】
本発明による多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーを製造するための方法は以下のとおり。
a)−X結合基上でのエポキシドによるN−H水素原子の置換であって、アミノアルコールを形成する。
b)ケトン又はアルデヒドとアミノアルコールの反応であって、オキサゾリジンを形成する。
【0039】
付加反応のための安定なエポキシドの例は、以下の式で示されることができるモノグリシジル化合物である。
【0040】
【化4】

【0041】
1は水素、非置換飽和もしくは不飽和C1−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C1−C24アルキル、置換もしくは非置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルなどの基から選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、R1は酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化合物の縮合生成物又は付加生成物から選ばれる。
【0042】
適切なエポキシドの例は以下の式で示されることができるエポキシ化C=C二重結合を有する化合物を含む。
【化5】

【0043】
3−R6は水素、非置換飽和もしくは不飽和C1−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C1−C24アルキル、置換もしくは非置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルなどの基から選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、R3−R6は酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化合物の縮合生成物又は付加生成物か
ら選ばれる。
【0044】
適切なアルデヒド及びケトンの例は以下の式で示されることができる。
【化6】

【0045】
1及びR2は水素、非置換飽和もしくは不飽和C1−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C1−C24アルキル、置換もしくは非置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルなどの基から選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、R1及びR2は酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化合物の縮合生成物又は付加生成物から選ばれる。
【0046】
本発明による有機/無機ハイブリッドポリマーは有機超枝分かれポリマーの特性と同等の特性を有し、多くの用途、たとえば、酸化防止剤、UV吸収剤又はラジカル掃去剤などの熱可塑性プラスチック及び熱硬化プラスチック中の機能性添加剤、熱可塑性プラスチック及び熱硬化プラスチック中のクロスバインダーとして、接着剤、ラッカー及びコーティング製品中の成分として、他の関係における機能性材料として使用されうる。添加剤として使用されるときに、本発明により製造される超枝分かれハイブリッドポリマーは耐スクラッチ性における持続的な増加及び使用される製品の耐候性に寄与する。
【0047】
本発明による有機/無機ハイブリッドポリマーの加水分解の間の温度及び安定性は有機超枝分かれポリマーのコア中の安定なSi−O結合及び非常に高度の架橋によるコアの緻密構造による有機超枝分かれポリマーのものよりも良好である。
【0048】
粒子構造が安定な無機コアを有し、該無機コアに結合した有機基を有する官能基のために加熱/冷却の間に可逆的な粘度変化が観測される。上記官能基は本発明をベースとする製品の次の処理/加工に関して重要である。
【0049】
本発明による製品及び製造方法は工業利用においてコスト効率がよく、それは原料の値段及び製造を行なう条件が安いからである。本発明による材料及び製品の製造は、穏やかな条件下(T<470K及び圧力P<0.3MPa)にてバッチ法を基礎とする。
【0050】
本発明による方法では、添加剤及び/又は分解製品の漏れを回避するための添加剤を製造することもさらに可能である。対応して、自己組織化ネットワーク及び熱安定性もしくは熱可逆性機能性材料が形成されることができ、たとえば、接着剤である。
【実施例】
【0051】
実施例
実験1
超枝分かれ有機/無機ハイブリッドポリマーのゾルゲル法による製造及び次の2工程変性
a)221.4g(1.00モル)のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(A−1100、GE Silicones, USA)を、ホースクーラ及びマグネティックスターラを有する1000ml丸底フラスコに入れた。93.6g(0.60モル)のブチルジグリコール(BDG)及び22.5g(1.30モル)の水及び1.00gのTinuvin 123 (Ciba Specialty Chemicals, Switzerland)の混合物を添加した。混合物を還流下で110℃のオイルバス中で45分間加熱した。その後、オイルバス温度110〜160℃で約1000ミリバールから20ミリバール未満の真空勾配で、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留で除去した。丸底フラスコ中の圧力が10分間20ミリバール以下に達したときに蒸留を止めた。約192mlの蒸留物を回収した。反応生成物は透明で、無色の液体であり、ガードナーカラーは1であった(ガードナーカラースケール/ASTM D1544)。
【0052】
b)a)からの反応生成物を70℃に加熱して透明な液体を得た。その後、130.2g(1.00モル)のtert-ブチルグリシジルエーテルを添加し、反応混合物を70℃に1時間保持した。その後、100mlトルエン中98.1g(1.00モル)のシクロヘキサノンの溶液を加えた。反応混合物を15分間にわたって還流下に沸騰させ、揮発性反応生成物及び反応体を真空蒸留によって除去した。ガードナーカラーが2であり、20℃で粘性ゲルの状態であり、そして90℃で非粘性の液体である透明な生成物が得られた。
【0053】
実験2
実験1に対応する方法で、トリアセトンアミン(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノン、CAS[826−36−8]、Sigma-Aldrich Norway AS)から、ヒンダードアミンのタイプの官能基を有する超枝分かれ有機/無機ハイブリッドポリマーを調製した。
【0054】
実験3
実験1に対応する方法で、3−ヒドロキシベンズアルデヒド(CAS[100−83−4]、Sigma-Aldrich Norway AS)から、フェノールのタイプの官能基を有する超枝分かれ有機/無機ハイブリッドポリマーを調製した。
【0055】
実験4
実験2及び3の生成物を、ポリプロピレンホモポリマー(HG430MO,Borealis AS)中に、Clextral の特別装備のダブルヘリックス押出機によって配合した。超枝分かれの有機/無機ハイブリッドポリマーの量は全ての場合に5%であった。配合された製品をBattenfeld射出成形装置によって2mmの厚さのシートに射出成形した。シートは均一であり、超枝分かれ有機/無機ハイブリッドポリマーを含まない、射出成形されたポリプロピレンホモポリマーと同じくらい透明であった。
【0056】
実験5
実験2からの製品の粘度をPhysika MCR 300のレオメータで20℃又は90℃で測定した。各サンプルで測定を3回行い、各温度での平均値を計算した。結果を下記の表に示す。比較のために、POSSコンパウンドであるイソオクチル−POSSの粘度(ケージ混合物;Sigma-Aldrich Norway AS, ref.-nr.560383)の粘度も測定した。表は、また、同一の温度でのn−ブタノールの粘度値も示している(Handbook of Chemistry and Physics, CRC Press, 71. ed., (1990-1991))。
【0057】
【表1】

【0058】
実験2の結果について示した粘度の相対変化(本発明による)は1/1000であり、一方、比較では1/80(POSS)及び5未満(n−ブタノール)である。
【0059】
実験6
本発明によるアミノアルコール官能基を有する超枝分かれ有機/無機ハイブリッドポリマーの製造、対応する超枝分かれ有機/無機ハイブリッドポリマーの製造における中間製品
a)221.4g(1.00モル)のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(A−1100、GE Silicones, USA)を、ホースクーラ及びマグネティックスターラを有する1000ml丸底フラスコに入れた。93.6g(0.60モル)のブチルジグリコール(BDG)及び22.5g(1.30モル)の水及び1.00gのTinuvin 123 (Ciba Specialty Chemicals, Switzerland)の混合物を添加した。混合物を還流下で110℃のオイルバス中で45分間加熱した。その後、オイルバス温度110〜160℃で約1000ミリバールから20ミリバール未満の真空勾配で、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留で除去した。丸底フラスコ中の圧力が10分間20ミリバール以下に達したときに蒸留を止めた。約192mlの蒸留物を回収した。反応生成物は透明で、無色の液体であり、ガードナーカラーは1であった(ガードナーカラースケール/ASTM D1544)。
【0060】
b)a)からの反応生成物を70℃に加熱して透明な液体を得た。その後、256.4g(1.00モル)のAraldite DY-E(C12-C14アルコールのグリシジルエーテル、Vantico AG(Huntsman AG), Switzerland)を添加し、反応混合物を70℃に1時間保持した。ガードナーカラーが1であり、20℃で粘性ゲルの状態であり、そして90℃で非粘性の液体である透明な生成物が得られた。
【0061】
a)中の蒸留物は有意でない量の揮発性アミンしか含まなかった。製造方法の間に安定剤(たとえば、Tinuvin 123)を使用しなかった、対応する実験では、a)中の蒸留物は比較的に多量の揮発性アミン生成物を含んだ。それは主として合成の間のA−1100の分解によるものである。
【0062】
実験7
実験6に対する比較実験であって、シランの加水分解の前にエポキシド化合物で置換を行なった比較実験
【0063】
【表2】

【0064】
生成物は透明なゲルであるが、実験6の生成物よりもずっと濃い色を有した。
【0065】
実験8
5リットル反応器中での多分枝有機/無機ハイブリッドポリマーのゾルゲル法による製造2801g(12.7モル)のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(商標)AMEO,Degussa AG, Germany)を5リットル反応器(NORMAG Labor-und Prozesstechnik, Ilmenau, Germany)中に入れた。その反応器は温度制御されたヒートマントル、攪拌アセンブリ、温度計、滴下漏斗、還流及び蒸留の間の急速な変更のためのコラムヘッドを有する垂直冷却器、及び、真空コネクション(メンブレンポンプ)を有した。821g(7.6モル)の2−ブトキシエタノール(DOWANOL EB, Dow Chemical, USA)及び296g(16.4モル)の水及び16mgの実験2の反応生成物を還流下に45分間加熱した。その後、オイルバス温度110〜160℃で約1000ミリバールから20ミリバール未満の真空勾配で、揮発性反応生成物又は反応体を真空蒸留で除去した。丸底フラスコ中の圧力が10分間20ミリバール以下に達したときに蒸留を止めた。約2334mlの蒸留物を回収した。反応生成物は透明で、無色の液体であり、ガードナーカラーは1であった(ガードナーカラースケール/ASTM D1544)。
【0066】
実験9
実験8で調製した多分枝有機/無機ハイブリッドポリマー中の有機ブランチの成長
a)558gの実験8からの反応生成物を70℃に加熱した。その後、625g(4.8モル)のtert-ブチルグリシジルエーテル(BGE)を加え、そして反応混合物を100℃に加熱した。反応は非常に強い発熱性であり、制御可能なヒートマントルによって反応混合物の温度が160℃を超えないように確保した。反応混合物を80℃に冷却した。
b)621gのトリアセトンアミン(TAA)の552gのトルエン中の熱い溶液を加えた。反応混合物を還流下に20分間加熱した。その後、トルエン及び水の共沸混合物を約610g留去した。褐色であるが透明な生成物を得て、それは20℃で粘性のゲルであり、90℃で非粘性の液体であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多分枝の粒状の有機/無機ハイブリッドポリマーであって、前記ポリマーは以下の化学基本構造
【化1】

(式中、R1−R6は水素、非置換飽和もしくは不飽和C1−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C1−C24アルキル、置換もしくは非置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルなどの基から選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、又は、R1−R6は酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化合物の縮合生成物又は付加生成物から選ばれ、Xは飽和もしくは不飽和C1−C18アルキレン、置換もしくは非置換アリーレンから選ばれる結合基であり、該化合物の炭素鎖は1つ以上の分枝を含んでよく、及び/又は、酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよい)を有するゾルゲル製品であることを特徴とするポリマー。
【請求項2】
請求項1記載の多分枝の粒状の有機/無機ハイブリッドポリマーのゾルゲル法による製造方法であって、前記方法は少なくとも以下の工程をその順序で含む方法。
i)構造:NH2−X−Si(−Y)3(式中、Xは飽和もしくは不飽和C1−C18アルキレン、置換もしくは非置換アリーレンから選ばれる結合基であり、該化合物の炭素鎖は1つ以上の分枝を含んでよく、及び/又は、酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよい)のシランの制御された加水分解及び縮合によって無機コアを形成させる。
ii)以下の2つの反応工程によってN−H水素原子の置換によって有機コア上に有機分枝を成長させる。
a)以下の式によって示すことができるエポキシドによる置換、
【化2】

次いで、b)以下の式によって示すことができる適切なカルボニル化合物による置換、
【化3】

(式中、R1−R6は水素、非置換飽和もしくは不飽和C1−C24アルキル、置換飽和もしくは不飽和C1−C24アルキル、置換もしくは非置換アリール、脂肪族もしくは芳香族カルボニルなどの基から選ばれ、該化合物の炭素鎖は酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよく、又は、R1−R6は酸、アルコール、フェノール、アミン、アルデヒド又はエポキシドなどの1つ以上のタイプの化合物の縮合生成物又は付加生成物から選ばれ、Xは飽和もしくは不飽和C1−C18アルキレン、置換もしくは非置換アリーレンから選ばれる結合基であり、該化合物の炭素鎖は1つ以上の分枝を含んでよく、及び/又は、酸素、窒素、硫黄、リン、珪素及びホウ素の1つ以上の元素を含んでよい)。
【請求項3】
請求項1記載の多分枝の粒状の有機/無機ハイブリッドポリマーの、熱可塑性プラスチック、熱硬化プラスチック、又は、化合物の組み合わせ中での機能性添加剤としての使用。
【請求項4】
請求項1記載の多分枝の粒状の有機/無機ハイブリッドポリマーの、熱可塑性プラスチック及び熱硬化プラスチック中での酸化防止剤、UV吸収剤又はラジカル掃去剤、又は、架橋剤としての使用。
【請求項5】
請求項1記載の多分枝の粒状の有機/無機ハイブリッドポリマーの、接着剤、ラッカー及びコーティング製品中の成分としての使用。

【公開番号】特開2012−180528(P2012−180528A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−116631(P2012−116631)
【出願日】平成24年5月22日(2012.5.22)
【分割の表示】特願2007−508292(P2007−508292)の分割
【原出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(506346945)シンベント アクティーゼルスカブ (9)
【Fターム(参考)】