説明

多剤式毛髪化粧料および毛髪の処理方法

【課題】 頭皮のやわらかさを高め、かつ毛髪の感触を向上させ得る多剤式毛髪化粧料と、該多剤式毛髪化粧料を用いた毛髪の処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明の多剤式毛髪化粧料は、ポリアルキレングリコールが配合されており、水の含有量が1質量%以下の毛髪化粧料(A)と、少なくとも、高級アルコール、カチオン性界面活性剤および水が配合されている毛髪化粧料(B)とを有することを特徴とするものである。本発明の毛髪の処理方法は、本発明の多剤式毛髪化粧料を用い、濡れた状態の毛髪に毛髪化粧料(A)、毛髪化粧料(B)の順で塗布するか、または濡れた状態の毛髪に毛髪化粧料(B)、毛髪化粧料(A)の順で塗布する工程を有する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮のやわらかさを高め、かつ毛髪の感触を向上させ得る多剤式毛髪化粧料と、該多剤式毛髪化粧料を用いた毛髪の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているように、従来から、多価アルコールや無機塩を含む非水系の毛髪化粧料が知られている。このような非水系の毛髪化粧料では、使用の際に水と触れることで発熱するため、毛髪化粧料中の有効成分の皮膚や毛髪への吸着性が向上するとされている。
【0003】
ところが、上記のような毛髪化粧料は、発熱特性を確保する観点から、実質的には無水である程度に水の量を極力減らす必要があるため、配合可能な成分が極めて限定的であり、例えば毛髪の感触を向上させ得るのに有効な各種の成分の多くは、配合しても析出などしてしまうといった問題がある。このようなことから、上記のような発熱特性を有する毛髪化粧料では、仕上がり後の毛髪の状態改善効果には限界がある。
【0004】
その一方で、毛髪化粧料には、配合組成の異なる毛髪化粧料を組み合わせ、それらの相乗効果を狙った多剤式の毛髪化粧料も開発されている(例えば、特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−77216号公報
【特許文献2】特開平11−228332号公報
【特許文献3】特開2006−306823号公報
【特許文献4】特開2008−133227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在では、毛髪の感触のみならず、ユーザーの頭皮の状態への関心も高く、例えば、一度の処理で、頭皮の状態と毛髪の感触の両者を改善する技術へのニーズが高まっている。
【0007】
水と触れることで発熱する非水系の毛髪化粧料は、毛髪への有効成分の吸着性を高め得るのみならず、その発熱による温感効果によって頭皮をやわらかくする作用を有しており、例えば頭皮マッサージによる頭皮をやわらかにする操作による効果を高めることもできる点で、こうしたニーズに対応できる毛髪化粧料として期待できる。しかしながら、その一方で、非水系であるが故に配合成分が限定的となることから、実際には、頭皮および毛髪の両者を所望の状態に改善するための毛髪化粧料としては、改良の余地がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、頭皮のやわらかさを高め、かつ毛髪の感触を向上させ得る多剤式毛髪化粧料と、該多剤式毛髪化粧料を用いた毛髪の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成し得た本発明の多剤式毛髪化粧料は、ポリアルキレングリコールが配合されており、水の含有量が1質量%以下の毛髪化粧料(A)と、少なくとも、高級アルコール、カチオン性界面活性剤および水が配合されている毛髪化粧料(B)とを有することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の毛髪の処理方法は、本発明の多剤式毛髪化粧料を用いた処理方法であって、濡れた状態の毛髪に毛髪化粧料(A)を塗布する工程と、毛髪化粧料(A)が付着した状態の毛髪に毛髪化粧料(B)を塗布する工程とを有するか、または、濡れた状態の毛髪に毛髪化粧料(B)を塗布する工程と、毛髪化粧料(B)が付着した状態の毛髪に毛髪化粧料(A)を塗布する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、頭皮のやわらかさを高め、かつ毛髪の感触を向上させ得る多剤式毛髪化粧料を提供することができる。そして、本発明の多剤式毛髪化粧料を用いた本発明の毛髪の処理方法によれば、頭皮のやわらかさを高めると同時に、毛髪の感触を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の多剤式毛髪化粧料は、ポリアルキレングリコールが配合されており、水の含有量が1質量%以下の毛髪化粧料(A)と、少なくとも、高級アルコール、カチオン性界面活性剤および水が配合されている毛髪化粧料(B)とを有しており、例えば、これらの毛髪化粧料(A)と毛髪化粧料(B)とが、それぞれ別の容器などに充填された製品形態を取る。
【0013】
毛髪化粧料(A)は、ポリアルキレングリコールが配合されており、かつ、水の含有量が1質量%以下の、いわゆる非水系のものである。この毛髪化粧料(A)は、濡れた状態の毛髪に塗布されると発熱するため、その温感効果によって頭皮をやわらかにする効果が高まり、更に、毛髪化粧料(B)中の成分の毛髪への吸着性も良好となって、毛髪化粧料(B)中の各種有効成分がより効果的に機能するようになる。
【0014】
毛髪化粧料(A)に係るポリアルキレングリコールは、濡れた状態の毛髪に毛髪化粧料(A)を塗布した際に発熱する作用を有しており、その温感効果によって頭皮のやわらかさを高める作用を有している。
【0015】
ポリアルキレングリコールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられ、その平均重合度が4以上12以下のものが好ましい。ポリアルキレングリコールには、上記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記例示のポリアルキレングリコールの中でも、発熱作用がより高いことから、ポリエチレングリコールが好ましい。また、ポリアルキレングリコールの平均重合度は、発熱作用がより高いことから4以上8以下のものが好ましい。よって、ポリアルキレングリコールとしては、平均重合度が4以上8以下のポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0016】
毛髪化粧料(A)におけるポリアルキレングリコールの配合量[毛髪化粧料(A)の全量100質量%中の量。毛髪化粧料(A)における各成分の配合量について、以下同じ。]は、発熱作用がより良好に発揮できるようにする観点から、44質量%以上であることが好ましく、また、99質量%以下であることが好ましい。
【0017】
毛髪化粧料(A)は、非水系の毛髪化粧料であり、発熱作用が良好に発揮できるようにする観点から、水の含有量を1質量%以下とする。毛髪化粧料(A)における水の含有量は0質量%であることが特に好ましい。
【0018】
また、毛髪化粧料(A)には、毛髪へ塗布する際の操作性を高める観点から、ポリアルキレングリコール以外の多価アルコールまたはポリオキシエチレンポリオキシプロピレン誘導体を更に配合することが好ましい。
【0019】
ポリアルキレングリコール以外の多価アルコールの具体例としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどの粘稠性の多価アルコールが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
毛髪化粧料(A)におけるポリアルキレングリコール以外の多価アルコールの配合量は、毛髪化粧料(A)に望まれる塗布性および発熱性を確保できるように適宜設定すればよいが、具体的には、1〜40質量%であることが好ましい。
【0021】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン誘導体の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンヘキシレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
毛髪化粧料(A)におけるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン誘導体の配合量は、毛髪化粧料(A)に望まれる塗布性および発熱性を確保できるように適宜設定すればよいが、具体的には、0.5〜2質量%であることが好ましい。
【0023】
また、毛髪化粧料(A)には、上記の各成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の非水系の化粧料に使用されている各種成分を、必要に応じて適宜配合することができる。このような成分としては、例えば、常温(25℃。本明細書における常温について、以下同じ。)で液状の油性成分、タンパク質誘導体、植物抽出物、防腐剤、香料、有機酸、低級アルコールなどが挙げられる。
【0024】
常温で液状の油性成分としては、例えば、エステル、高級アルコール、植物油が好ましい。常温で液状のエステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシルなどの直鎖状飽和脂肪酸エステル;イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ネオペンタン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸2−ヘキシルデシル、2−エチルヘキサン酸イソステアリル、イソノナン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ジメチルオクタン酸2−ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸2−オクチルドデシル、イソパルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸2−オクチルドデシルなどの分岐状飽和脂肪酸エステル;オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸2−オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、リシノール酸セチル、リシノール酸2−オクチルドデシル、エルカ酸オレイルなどの不飽和脂肪酸エステル;N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ−2−ヘキシルデシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジイソステアリル、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、ステアロイルグルタミン酸ジオクチルドデシルなどのアシルアミノ酸エステル;などが挙げられる。
【0025】
常温で液状の高級アルコールとしては、例えば、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの分岐状の飽和アルコール;オレイルアルコールなどの不飽和アルコール;などの、炭素数が12〜22の分岐状アルコールまたは不飽和アルコールが挙げられる。常温で液状の植物油としては、例えば、ホホバ油、メドウフォーム油、ツバキ油、チャ実油、オリーブ油、グレープシード油、アボカド油、サフラワー油、マカデミアナッツ油、米胚芽油などが挙げられる。
【0026】
タンパク質誘導体としては、例えば、ケラチンタンパク誘導体(加水分解ケラチンなど)、コラーゲンタンパク誘導体(加水分解コラーゲンなど)、シルクタンパク誘導体、大豆タンパク誘導体などが挙げられる。
【0027】
植物抽出物としては、例えば、トウキセンカエキス、ビターオレンジ果皮エキス(トウヒエキス)、ショウガエキス、甘草エキスなどが挙げられる。防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、フェノキシエタノール、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、クエン酸、グリコール酸、酒石酸、乳酸などが挙げられる。低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの炭素数が1以上6以下のアルコールが挙げられる。
【0028】
毛髪化粧料(B)は、仕上がり後の毛髪の感触を高めるためのものであり、少なくとも、高級アルコール、カチオン性界面活性剤および水が配合されている。毛髪化粧料(A)の作用によって発熱した状態の毛髪には、毛髪化粧料(B)に配合された各成分が毛髪に良好に吸着するようになるため、毛髪化粧料(B)のみを毛髪に塗布した場合よりも、仕上がり後の毛髪の感触を高めることができる。
【0029】
毛髪化粧料(B)において、高級アルコールは、油性成分の一種として使用される他、毛髪化粧料の粘度を高くしたり、毛髪化粧料の毛髪への塗布性や塗布後の毛髪の感触を高めたりする作用も有している。
【0030】
毛髪化粧料(B)に係る高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状の飽和アルコール;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの分岐状の飽和アルコール;オレイルアルコールなどの不飽和アルコール;などの、炭素数が12〜22のアルコールが挙げられる。毛髪化粧料(B)には、これらの高級アルコールのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
毛髪化粧料(B)における高級アルコールの配合量[毛髪化粧料(B)の全量100質量%中の量。毛髪化粧料(B)における各成分の配合量について、以下同じ。]は、上記の作用を良好に発揮させる観点から、0.2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。ただし、毛髪化粧料中の高級アルコールの量が多すぎると、毛髪と馴染み難くなったり、仕上がり時に毛髪に硬さを感じるようになる傾向があることから、毛髪化粧料における高級アルコールの配合量は、10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
毛髪化粧料(B)において、カチオン性界面活性剤は、毛髪に吸着して毛髪を柔軟にし、その感触向上に寄与する成分である。また、毛髪化粧料(B)は、油性成分である高級アルコールと、水とを配合することから、水中油滴型エマルションの形態を取ることが通常であるが、カチオン性界面活性剤は、毛髪化粧料(B)のエマルションの状態を維持する作用も有している。
【0033】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミドアミン塩、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。脂肪酸アミドアミン塩としては、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドなどが挙げられる。モノアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。ジアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。ベンザルコニウム型4級アンモニウムとしては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどが挙げられる。毛髪化粧料(B)には、これらのカチオン性界面活性剤のうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
毛髪化粧料(B)におけるカチオン性界面活性剤の配合量は、毛髪化粧料のエマルションの状態を安定に保ち、また、毛髪に吸着して毛髪の柔軟性を良好に高め得るようにする観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。なお、毛髪化粧料(B)中のカチオン性界面活性剤の量をあまり多くしても、それに見合うだけの効果を確保し得ないことから、毛髪化粧料(B)におけるカチオン性界面活性剤の配合量は、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
毛髪化粧料(B)は、水を媒体とする。また、毛髪化粧料(B)における水の配合量は、例えば、70〜98質量%であることが好ましい。
【0036】
毛髪化粧料(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の毛髪化粧料に配合されている各種成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、動植物油脂、ロウ、炭化水素、脂肪酸、エーテル、ノニオン性界面活性剤、水溶性高分子、保湿剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、香料などが挙げられ、このような成分の中から好ましいものを、適宜選択して配合することができる。
【0037】
動植物油脂としては、例えば、エミュー油、馬油、ミンク油などの動物油脂;アボカド油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、ローズヒップ油、マカデミアナッツ油、パーシック油、綿実油、月見草油、メドウホーム油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、パーム油、ヒマシ油、グレープシード油、ヤシ油、硬化油、シア脂などの植物油脂;が挙げられる。ロウとしては、例えば、ホホバ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ラノリン、ミツロウ、オレンジラフィー油などが挙げられる。
【0038】
炭化水素としては、例えば、α−オレフィンオリゴマー、セレシン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸などが挙げられる。エーテルとしては、例えば、イソステアリルグリセリルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリンモノセチルエーテル、モノオレイルグリセリルエーテルなどが挙げられる。
【0039】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられる。なお、上記の各ノニオン性界面活性剤におけるエチレンオキサイドの平均付加モル数は2〜50モルであることが好ましい。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどが挙げられる。更に、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、例えば、ウンデシレン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、リノール酸などが挙げられる。
【0040】
水溶性高分子としては、例えば、天然高分子、天然高分子誘導体、合成高分子などが挙げられる。カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチン、タマリンド種子多糖類、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、トラガカントガム、ヒアルロン酸またはその塩、キトサンなどの天然高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、デンプンリン酸エステル、デンプングルコール酸ナトリウム、両性デンプン、カチオン化グアーガム、カルボキシメチル・ヒドロキシプロピル化グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガムなどの天然高分子誘導体;カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体などの合成高分子;が挙げられる。
【0041】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸などが挙げられる。防腐剤としては、例えば、毛髪化粧料(A)に配合可能なものとして先に例示した各種防腐剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、dl−α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、エリソルビン酸、無水亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸またはその塩、ジエチレントリアミン五酢酸またはその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸またはその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸またはその塩などが挙げられる。
【0042】
毛髪化粧料(B)の剤型は、例えば、クリーム状や乳液状が好ましい。
【0043】
本発明の毛髪の処理方法は、上記本発明の多剤式毛髪化粧料を使用して毛髪を処理する方法である。本発明の毛髪の処理方法には、2つの態様がある。第一の態様は、以下の工程(1−1)および工程(1−2)を有している。
【0044】
工程(1−1):濡れた状態にした毛髪(例えば、シャンプーを用いて洗浄し、水で洗い流すなどした毛髪)に、適量の毛髪化粧料(A)を塗布する。これにより、毛髪化粧料(A)が付着した毛髪や頭皮が発熱することで、その温感効果によって頭皮のやわらかさが高まると共に、その後に塗布される毛髪化粧料(B)中の成分が毛髪に吸着しやすい状態になる。
【0045】
工程(1−2):毛髪化粧料(A)が付着した状態の毛髪に、適量の毛髪化粧料(B)を塗布する。上記の通り、毛髪化粧料(A)によって処理された毛髪は、毛髪化粧料(B)中の成分が吸着・浸透しやすい状態となっている。よって、この状態の毛髪に毛髪化粧料(B)を塗布することで、毛髪化粧料(B)中の成分がより有効に機能して、毛髪の感触を高めることができる。
【0046】
工程(1−2)の後には、毛髪を水で洗い流し、ドライヤーを用いて乾燥したり、風乾させるなどして仕上げる。
【0047】
なお、工程(1−1)と工程(1−2)との間には、頭皮のマッサージを行うことが好ましい。これにより、頭皮のやわらかさを更に高めることができる。
【0048】
また、上記第1の態様においては、工程(1−1)の前や、工程(1−1)と工程(1−2)との間、工程(1−2)と水洗との間に、公知のヘアトリートメント(ヘアリンス、ヘアコンディショナーを含む)などを毛髪に塗布する工程を加えてもよい。
【0049】
本発明の毛髪の処理方法の第2の態様は、以下の工程(2−1)および工程(2−2)を有している。
【0050】
工程(2−1):濡れた状態にした毛髪(例えば、シャンプーを用いて洗浄し、水で洗い流すなどした毛髪)に、適量の毛髪化粧料(B)を塗布する。
【0051】
工程(2−2):毛髪化粧料(B)が付着した状態の毛髪に、適量の毛髪化粧料(A)を塗布する。毛髪化粧料(A)と毛髪の水分との作用によって、毛髪化粧料(A)が付着した毛髪および頭皮が発熱するため、その温感効果によって頭皮のやわからかさが高まると共に、既に毛髪に付着していた毛髪化粧料(B)中の成分の、毛髪中への浸透が促進されて、毛髪の感触が向上する。
【0052】
工程(2−2)の後には、毛髪を水で洗い流し、ドライヤーを用いて乾燥したり、風乾させるなどして仕上げる。
【0053】
なお、工程(2−2)と上記水洗との間には、頭皮のマッサージを行うことが好ましい。これにより、頭皮のやわらかさを更に高めることができる。
【0054】
また、上記第2の態様においては、工程(2−1)の前や、工程(2−1)と工程(2−2)との間、工程(2−2)と水洗との間に、公知のヘアトリートメント(ヘアリンス、ヘアコンディショナーを含む)などを毛髪に塗布する工程を加えてもよい。
【0055】
なお、本発明の毛髪の処理方法に係る第1の態様と第2の態様とでは、頭皮をやわらかにする効果や毛髪の感触を向上させる効果がより良好に確保できることから、第1の態様の方がより好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。なお、以下の表1および表2では、毛髪化粧料(A)全体および毛髪化粧料(B)全体で、それぞれ100%となるように各成分の配合量を%で示すが、その%はいずれも質量%であり、また、表1および表2中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。
【0057】
実施例1〜7および比較例1〜3
実施例1〜7および比較例1〜3の多剤式毛髪化粧料に係る毛髪化粧料(A)および毛 髪化粧料(B)を、表1および表2に示す組成で調製した[比較例1は毛髪化粧料(A)のみで構成されており、比較例3は毛髪化粧料(B)のみで構成されているが、便宜上、これらも多剤式毛髪化粧料という。]。なお、調製後の実施例1〜7および比較例2、3に係る毛髪化粧料(B)は、いずれも水中油滴型エマルションの形態を有するクリーム状であった。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
なお、表1および表2において、毛髪化粧料(B)における水の欄の「計100とする」とは、毛髪化粧料(B)を構成する水以外の各成分の合計量に、水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。また、上記実施例で用いた「ポリエチレングリコール」は、平均重合度が8のものであり、「ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンへキシレングリコール」は、オキシエチレンユニットの平均付加モル数が300で、オキシプロピレンユニットの平均付加モル数が75である。
【0061】
実施例1〜7および比較例1〜3の多剤式毛髪化粧料で処理した後の頭皮のやわらかさ、および毛髪の感触、並びに毛髪化粧料(A)を毛髪(人頭)に塗布した際の使用感を、以下の方法によって評価した。
【0062】
濡れた状態の人頭に多剤式毛髪化粧料に係る毛髪化粧料(A):25gを塗布し、頭皮をマッサージした後、毛髪化粧料(A)を洗い流さすことなく、多剤式毛髪化粧料に係る毛髪化粧料(B):80gを塗布し、毛髪にしっかりと馴染ませた後に水で洗い流し、乾燥させた。実施例1〜7および比較例1〜3の多剤式毛髪化粧料を用いて、上記の手順で人頭の頭皮および毛髪を処理し、処理前後の頭皮のやわらかさと毛髪の感触の変化を、専門の評価者3名が評価し、下記基準に従って点数付けした。
処理後の方がよい ・・・ 2点。
処理前後で同等 ・・・ 1点。
処理後の方が悪い ・・・ 0点。
【0063】
また、人頭に毛髪化粧料(A)を塗布した際の使用感(人頭に良好に付着するか、または、垂れ流れてしまうなどして、うまく付着させることができないか、など)についても、上記3名の評価者が評価し、下記基準に従って点数付けした。
使用感が良好 ・・・2点。
使用感が普通(悪くはないが、良好という程ではない) ・・・1点。
使用感が悪い ・・・0点。
【0064】
そして、全評価者の点数を合計して、各多剤式毛髪化粧料によって処理した後の頭皮のやわらかさ、および毛髪の感触、並びに毛髪化粧料(A)の使用感を評価した。これらの結果を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
表3から明らかなように、適正な成分組成の毛髪化粧料(A)と毛髪化粧料(B)とで構成された実施例1〜7の多剤式毛髪化粧料では、処理後の頭皮のやわらかさ、および毛髪の感触が良好である。
【0067】
これに対し、比較例1にあるように、毛髪化粧料(A)のみで処理した場合、頭皮のやわらかさは向上したものの、毛髪の感触は劣っている。また、ポリアルキレングリコールを配合していない毛髪化粧料(A)を有する比較例2の多剤式毛髪化粧料で処理した場合、頭皮のやわらかさ、毛髪の感触のいずれもが劣っている。更に、比較例3にあるように、毛髪化粧料(B)のみで処理した場合、毛髪の感触は維持できたが、頭皮のやわらかさは改善していない。
【0068】
なお、ポリアルキレングリコールの配合量をある程度高めると共に、粘稠性の多価アルコールやポリオキシエチレンポリオキシプロピレン誘導体も配合した実施例2、4〜7に係る毛髪化粧料(A)では、ポリアルキレングリコールのみで構成した実施例1に係る毛髪化粧料(A)に比べて使用感が向上しており、人頭に塗布した際に、垂れ流れが抑制されて、より良好に付着させることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレングリコールが配合されており、水の含有量が1質量%以下の毛髪化粧料(A)と、
少なくとも、高級アルコール、カチオン性界面活性剤および水が配合されている毛髪化粧料(B)
とを有することを特徴とする多剤式毛髪化粧料。
【請求項2】
毛髪化粧料(A)におけるポリアルキレングリコールは、平均重合度が4〜12である請求項1に記載の多剤式毛髪化粧料。
【請求項3】
毛髪化粧料(A)におけるポリアルキレングリコールの配合量が、44〜99質量%である請求項1または2に記載の多剤式毛髪化粧料。
【請求項4】
毛髪化粧料(A)は、ポリアルキレングリコール以外の多価アルコール、またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体が更に配合されている請求項1〜3のいずれかに記載の多剤式毛髪化粧料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の多剤式毛髪化粧料を用いた毛髪の処理方法であって、
濡れた状態の毛髪に毛髪化粧料(A)を塗布する工程と、
毛髪化粧料(A)が付着した状態の毛髪に毛髪化粧料(B)を塗布する工程
とを有するか、または、
濡れた状態の毛髪に毛髪化粧料(B)を塗布する工程と、
毛髪化粧料(B)が付着した状態の毛髪に毛髪化粧料(A)を塗布する工程
とを有することを特徴とする毛髪の処理方法。

【公開番号】特開2012−171913(P2012−171913A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35410(P2011−35410)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】