説明

多剤式毛髪化粧料

【課題】安全性に優れ、用時に容易且つ迅速に毛髪化粧料を調製でき、環境上に問題が無く、長期保存経過後でも優れた乳化状態とすることができ且つ用時調製後でも優れた乳化安定性を有し、更には個々の需要者の嗜好等に柔軟に対応可能な毛髪化粧料(ヘアトリートメント剤等)を提供する。
【解決手段】粉・粒状の粉・粒体相と、液状の油相と、液状の水相とから少なくとも成る毛髪化粧料において、粉・粒体相中に水膨潤性粘土鉱物又はカチオン化高分子を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多剤式毛髪化粧料に関する。特に、本発明は、用時調製に適した多剤式ヘアトリートメント剤(ヘアクリーム等)に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアトリートメント剤としては、ヘアクリームとヘアオイルが知られる。ヘアクリームは、乳化型であるため、ヘアオイルに比し、使用の際に手にべたつくことが無く、比較的さっぱりとした使用感を持ち、更には、油分によるコンディショニング効果、並びに水分の補給(保湿)効果を持つという有利性がある。
【0003】
従来、へアクリームには、適度の粘度と乳化安定性を付与するため、界面活性剤、増粘剤(カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、グァーガム等)、或いは高級アルコール(セタノール等)が配合されている。
【0004】
しかしながら、界面活性剤を使用した場合は、皮膚刺激の発生等、安全上、問題がある。増粘剤を使用した場合は、その溶解に時間を要し、更には粘度が高くなり、均一なクリームを迅速且つ容易に調製するのが難しいという問題がある。特に、美容院等にて毛髪の施術処理を行う場合は、迅速な調合・調製が強く要求される。更に、高級アルコールを多量に使用した場合は、環境上、問題がある。
【0005】
乳化安定性を得る別の方法としては、特許文献1に、粉体相と、液状の油相と、液状の水相とから成る化粧料が提案されている。この化粧料は、上記3相をそれぞれ別々の容器に入れて保存し、用時(即ち、化粧料を使用しようとする時)に、これら3相を混合・乳化して化粧料を調製するものである。これにより、長期(保存)経過後であっても、使用時には乳化形態を成すことができるものである。別言すれば、長期の乳化安定性を、配合成分(界面活性剤等)によるのでなく、用時調製という調製方法によって達成しようとするものであるため、界面活性剤や増粘剤等の配合量を或る程度、減らせることが期待される。
【0006】
しかし、この用時調製化粧料においても、用時調製後の十分な乳化安定性を得るためには、界面活性剤及び増粘剤(カルボキシビニルポリマー等)を使用しなければならず、結局、これらの使用に因り前述の問題が発生する。
【0007】
ところで、近年においては、個々の需要者(被施術者)の、髪質や髪の風合い等に対する嗜好に応じて、各別に毛髪化粧料を調製・製造することが要望されている。しかしながら、従来の毛髪化粧料は、所謂「レディメイド」のものであるため、個々の需要者の嗜好に合わせて調製・製造することが困難であった。
【特許文献1】特開2003−206216号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、安全性に優れ、用時に容易且つ迅速に毛髪化粧料を調製でき、環境上に問題が無く、長期保存経過後でも優れた乳化状態とすることができ且つ用時調製後でも優れた乳化安定性を有し、更には個々の需要者の嗜好等に柔軟に対応可能な毛髪化粧料(ヘアトリートメント剤等)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者が鋭意、検討した結果、以下の本発明を成すに到った。
【0010】
即ち、本願第1発明は、粉・粒状の粉・粒体相と、液状の油相と、液状の水相とから少なくとも成る毛髪化粧料において、粉・粒体相中に水膨潤性粘土鉱物又はカチオン化高分子を含有する毛髪化粧料を提供する。
【0011】
本願第2発明は、水膨潤性粘土鉱物がベントナイトであり、カチオン化高分子がメタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド重合体である本願第1発明の毛髪化粧料を提供する。
【0012】
本願第3発明は、粉・粒体相中に、更に界面活性剤をも含有する本願第1発明又は第2発明の毛髪化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、安全性に優れ、用時に容易且つ迅速に毛髪化粧料を調製でき、環境上にも問題が無く、長期保存経過後でも優れた乳化状態とすることができ且つ用時調製後でも優れた乳化安定性を有し、更には個々の需要者の嗜好等に柔軟に対応可能な毛髪化粧料(ヘアトリートメント剤等)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明における最良の実施形態について詳述する。
本発明の毛髪化粧料においては、粉・粒体(粉体及び/又は粒体)相を含む。本発明の粉・粒体相は、少なくとも用時調製時の周囲温度において、粉・粒状(粉状若しくは粒状、又は粉体物と粒体物との混合物)形態であるのが好ましい。具体的には、本発明の粉・粒体相は、0〜40(特に10〜30)℃において粉・粒状であるのが好ましい。
【0015】
本発明の粉・粒体相においては、水膨潤性粘土鉱物又はカチオン化高分子を含有することを特徴とする。本発明者は、水膨潤性粘土鉱物又はカチオン化高分子が、界面活性剤と増粘剤の両方の機能を有することを見出した。即ち、水膨潤性粘土鉱物又はカチオン化高分子を配合することによって、毛髪化粧料の粘度を増加させることができ、しかも乳化させることができ、且つその乳化状態を安定に保持することができる。そのため、従来の添加成分(例えば界面活性剤、増粘剤、高級アルコール等)の配合量の一部若しくは全部を省くことができるので、安全性及び環境上に優れた毛髪化粧料とすることができる。
【0016】
更に、水膨潤性粘土鉱物を配合した場合は、毛髪化粧料にチキソトロピー性を付与することができる。その結果、毛髪化粧料を、例えば用時に調製・製造する際の混合工程において、そして手に取る際にも、毛髪化粧料の粘度を低下させることができるので、混合作業が迅速且つ容易になり、手にも取りやすく髪へも延びがよく均一に塗布しやすくなる。その上、水膨潤性粘土鉱物は、水系成分及び/又は油系成分と、迅速且つ容易に均一混合することができ、油剤等のべたつきの発生を抑えることもできる。
【0017】
更に、本発明者は、カチオン化高分子が、増粘機能を有する種々の高分子の中でも、極めて迅速に水等に溶解するものであることを見出した。従って、カチオン化高分子を使用した場合は、従来の増粘剤を使用した場合に比し、極めて迅速且つ容易に均一に溶解することができ、その結果、毛髪化粧料の調製作業性を大きく向上させることができる。更に、カチオン化高分子を配合することにより、優れた風合い・機能(柔軟感、帯電防止効果等)を毛髪に付与することができる。
【0018】
本発明の粉・粒体相に含有される水膨潤性粘土鉱物としては、例えばスメクタイト属粘土、水膨潤性雲母等が挙げられる。スメクタイト属粘土としては、具体的にはモンモリロナイト系(ベントナイト等)、バイデライト系、ノントロナイト系、サポナイト系、ヘクトライト系、ソーコナイト系、スチーブンサイト系等が挙げられ、これらの一種以上使用してよい。好ましくは、ベントナイト、スメクタイト等である。尚、水膨潤性粘土鉱物は、天然品及び合成品の何れであってもよい。市販品としては、ベンゲル−FW(ホージュン社製)、クニピアF、スメクトンSA(以上、クニミネ工業)等が挙げられる。
【0019】
本発明の粉・粒体相に含有されるカチオン化高分子としては、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド重合体、塩化o−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム、塩化o−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられ、これらの一種以上使用してよい。好ましくは、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド重合体等である。
【0020】
本発明の毛髪化粧料においては、液状の油相を含む。液状の油相を含有することにより、毛髪に所望の風合い(例えば、しっとり感、サラサラ感等)を付与することができる。更に、毛髪化粧料に、所望の効能・効果(毛髪のまとまり、帯電防止効果等)を付与することができる。
【0021】
本発明の液状の油相は、少なくとも用時調製時の周囲温度において、液状形態であるのが好ましい。具体的には、本発明の液状の油相は、0〜40(特に10〜30))℃において液状形態であるのが好ましい。
【0022】
本発明の液状の油相において、その配合成分としては、液状油が挙げられる。液状油としては、例えば炭化水素[流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン等]、脂肪酸エステル[ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトール、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、コハク酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、ジオクチルエーテル等]、シリコーン油[メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、メチルハイドロジェンポリシロキサン等]、油脂[オリブ油、ヒマシ油、アボカド油、ヒマワリ油、サフラワー油、小麦胚芽油、マカデミアナッツ油、グレープシード油、ローズヒップ油、パーム油、パーム核油、ホホバ油等]、脂肪酸[オレイン酸、イソステアリン酸等]が挙げられ、これらの一種以上使用してよい。
【0023】
本発明の液状の油相においては、固体油を配合することもできる。その場合は、液状の油相から、固体が析出していないのが好ましい。固体油としては、例えばシア脂、ラノリン、オレイン酸フィトステリル、ワセリン等が挙げられ、これらの一種以上使用してよい。
【0024】
本発明の毛髪化粧料においては、液状の水相を含む。液状の水相を含有することにより、乳化化粧料(特にO/W型乳化化粧料)とすることができる。更に、毛髪に所望の風合い(保湿感等)を付与することができる。
【0025】
本発明の液状の水相は、少なくとも用時調製時の周囲温度において、液状形態であるのが好ましい。具体的には、本発明の液状の水相は、0〜40(特に10〜30))℃において液状形態であるのが好ましい。液状形態としては、溶液、乳濁液、及び分散液が挙げられる。
【0026】
本発明の液状の水相において、その配合成分としては、水溶性成分が挙げられる。水溶性成分としては、例えばPPT(蛋白)[カゼイン、ホエイ等]、多価アルコール[グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール等]、糖類[ソルビトール、マンニトール等]が挙げられ、これらの一種以上使用してよい。
【0027】
本発明の毛髪化粧料においては、前述のように、必ずしも、界面活性剤、増粘剤、高級アルコール等を添加しなくとも、十分な粘度と乳化安定性を有する。しかしながら、これら添加剤成分の一種以上と併用してもよく、その場合には、極めて大きな粘度及び/又は乳化安定性を発現させることができる。
【0028】
特に、界面活性剤を配合することによって、水膨潤性粘土鉱物又はカチオン化高分子中の空隙内に他相成分(水等)が容易に入り込むことができるようになる結果、より一層、迅速且つ容易に均一な毛髪化粧料を調製することが可能となる。
【0029】
本発明の毛髪化粧料において、添加剤の界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及びアニオン界面活性剤が挙げられ、これらの一種以上添加してよい。好ましくは、本発明の毛髪化粧料において、水膨潤性粘土鉱物を使用した場合、添加剤の界面活性剤としては非イオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤が挙げられ、カチオン化高分子を使用した場合、添加剤の界面活性剤としては非イオン界面活性剤及び/又はカチオン界面活性剤が挙げられる。
【0030】
本発明の毛髪化粧料において、添加剤の非イオン界面活性剤としては、具体的にはソルビタン脂肪酸エステル[モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン等]、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル[POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEベヘニルエーテル等]、POEソルビトールテトラ脂肪酸エステル[POEヒマシ油テトラオレイン酸POEソルビット等]、POEソルビタン脂肪酸エステル[モノラウリン酸POE(特に20EO(20モルエチレンオキサイド付加))ソルビタン、モノオレイン酸POE(特に20EO)ソルビタン等]、POE硬化ヒマシ油等が挙げられ、これらの一種以上使用してよい。好ましくは、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン等である。
【0031】
本発明の毛髪化粧料において、添加剤のカチオン界面活性剤としては、具体的には、塩化若しくは臭化C10〜C25アルキルトリメチルアンモニウム[塩化若しくは臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化若しくは臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化若しくは臭化ステアリルトリメチルアンモニウム等]、塩化若しくは臭化C10〜C25ジアルキルジメチルアンモニウム[塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等]、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム等が挙げられ、これらの1種以上使用してよい。好ましくは臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等である。
【0032】
本発明の毛髪化粧料において、添加剤のアニオン界面活性剤としては、具体的にはラウリル硫酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、イセチオン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等が挙げられ、これらの一種以上使用してよい。
【0033】
本発明の毛髪化粧料において、添加剤の増粘剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム等が挙げられ、これらの一種以上使用してよい。
【0034】
本発明の毛髪化粧料において、添加剤の高級アルコールとしては、C12〜C22脂肪族アルコール[ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール等]が挙げられ、これらの一種以上使用してよい。
【0035】
本発明の毛髪化粧料において、他の添加剤としては、粉・粒体成分[顔料(カオリン、セリサイト、タルク、マイカ、シリカ等)]、香料等が挙げられ、これらの一種以上を含有してよい。
【0036】
本発明の毛髪化粧料において、添加成分は、適宜、粉・粒体相、液状の油相、及び液状の水相の一相以上に添加してよく、或いはこれらの相とは別の独立した相としてもよい。尚、独立した相は、一相以上から成ってもよい。
【0037】
例えば、本発明の毛髪化粧料において、水膨潤性粘土鉱物を使用した場合、添加剤の非イオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤を粉・粒体相に添加するのが好ましく、カチオン化高分子を使用した場合、添加剤の非イオン界面活性剤及び/又はカチオン界面活性剤を粉・粒体相に添加するのが好ましい。
【0038】
更に、本発明の毛髪化粧料において、添加剤の増粘剤、油剤成分、及び粉・粒体成分は、例えば粉・粒体相中にそれぞれ添加してよい。
【0039】
本発明の毛髪化粧料は、少なくとも、粉・粒体相、液状の油相、及び液状の水相とから成る。それ故、個々の需要者の、髪質や髪の風合いに対する嗜好等に応じて、用時に、粉・粒体相、液状の油相、及び液状の水相の配合量・配合比率等を自由に変更することができ、需要者に最適の毛髪化粧料を調製・製造することができる。
【0040】
更に、本発明の毛髪化粧料において、粉・粒体相、液状の油相、及び液状の水相は、それぞれ一相のみから成ってもよく、或いは複数相から成ってもよい。例えば、液状の油相を、種々の風合いを付与する成分毎の複数相から構成することにより、用時に、個々の需要者の、髪の風合いに対する嗜好に応じて、これらの複数相から適宜、必要な風合い付与成分相を選んで配合することができ、その結果、需要者に最適の毛髪化粧料を容易に調製・製造することができる。例えば、液状の油相が、炭化水素相、脂肪酸エステル相、シリコーン油相、油脂相、及び脂肪酸相等の一相以上を独立の相として含有していてもよい。
【0041】
本発明の毛髪化粧料は、用時に混合・調製することができる。その結果、混合・調製後に直ちに毛髪化粧料を使用することもできる。その場合は、毛髪化粧料には必ずしも非常に長期の乳化安定性を必要としないので、液状の油相を非常に多量に配合することができる。
【0042】
本発明の毛髪化粧料の組成(重量%)において、毛髪化粧料全体につき、粉・粒体相は1〜20(特に3〜10)、液状の油相は0.1〜30(特に3〜20)、液状の水相は40〜95(特に60〜90)が、それぞれ好ましい。
【0043】
本発明に係る粉・粒体相の組成(重量%)において、粉・粒体相全体につき、水膨潤性粘土鉱物は60〜100(特に70〜90)、カチオン化高分子は50〜100(特に60〜80)、界面活性剤は0〜40(特に5〜30)が、それぞれ好ましい。
【0044】
粉・粒体相が1重量%未満だと、均一な乳化物が得られないことがあり、逆に20重量%を超過すると、粘度が高くなりすぎて油相及び水相と均一に混合出来なくなることがある。液状の油相が1重量%未満だと、使用時に十分な風合いを得ることが出来ないことがあり、逆に30重量%を超過すると、使用した際にべたつきが生じることがある。液状の水相が40重量%未満だと、配合される粉・粒体相及び/又は油相が多くなり、使用時にこれらの相を均一に混合できなくなることがあり、逆に95重量%を超過すると、目的とする風合いが得られないことがある。
【0045】
粉・粒体相中の水膨潤性粘土鉱物が60重量%未満だと、毛髪化粧料が十分な粘度並びに乳化形態及び乳化安定性を得ることができなくなることがある。カチオン化高分子が50重量%未満だと、毛髪化粧料が十分な粘度並びに乳化形態及び乳化安定性を得ることができなくなることがある。尚、水膨潤性粘土鉱物とカチオン化高分子とを併用した場合は、均一なトリートメント剤を得ることが出来なくなることがある。界面活性剤が40重量%を超過すると、粉・粒体相全体が粉・粒状を採れなくなることがあり、その結果、粉体相と他の相を均一に混合出来なくなることがある。
【0046】
本発明の毛髪化粧料は、粉・粒体相、液状の油相、液状の水相、及び(存すれば)他の相を、それぞれ別々の容器に充填して保存するのが好ましい。
【0047】
本発明の毛髪化粧料は、以下のようにして用時に調製することができる。即ち、先ず、粉・粒体相と液状の油相とを均一に混合する。その後、この混合相と液状の水相とを混合すれば、均一な毛髪化粧料を容易且つ迅速(通常、3分以内)に調製することができる。混合は、特別な装置は必要なく、例えば適当な容器に単に各相を投入し、この容器を振盪することにより、容易に行うことができる。即ち、本発明により、いつでも、どこでも、誰でも、各自の好みに合った、各自に適した、毛髪化粧料を調製できる。
【0048】
このようにして用時に調製した本発明の毛髪化粧料にて毛髪を処理するが、必要であれば、その後、この処理毛を他の毛髪化粧料(ヘアトリートメント剤等)にて更に処理してもよい。
【0049】
上記他の毛髪化粧料において、ヘアトリートメント剤としては、シリコーン油(メチルハイドロジェンポリシロキサン等)、アルコール類(エタノール等)を含有するものが挙げられる。本発明の毛髪化粧料にて毛髪を先ず処理した後、更にトリートメント剤にて毛髪を処理することにより、仕上がりの手触りをより一層、良くすることができる。
【実施例】
【0050】
[ヘアクリームの調製]
・実施例1〜5、並びに比較例1〜6
表1及び表2に示す組成に従って、常温下、各相中の各配合成分を均一に撹拌混合して、紛・粒体相、液状の油相、及び液体の水相等から成る各多剤式用時調製化粧料を調製した。
【0051】
尚、紛・粒体相は、ベントナイト、キサンタンガム、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、又はカルボキシビニルポリマーに、他成分を配合して調製した。
【0052】
その後、常温下、先ず、紛・粒体相と、液状の油相及び必要に応じ添加剤(PPT、香料等)とを均一に撹拌混合した後、この均一混合相と液体の水相とを均一に撹拌混合して、各ヘアクリーム(実施例1〜5、並びに比較例2〜6)を調製した。尚、比較例1においては、ヘアクリームを調製することができなかった。
【0053】
[ヘアクリームの機能・特性評価試験]
上記のようにして得られた各調製物(実施例1〜5、並びに比較例1〜6)につき、混合調製時の乳化状態、乳化安定性、及び均一混合作業性について、下記のようにして試験・評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0054】
「混合調製時の乳化状態」は、混合調製直後の調製物の乳化状態を目視観察した。「◎」は「完全に均一に乳化されている」、「○」は「殆ど均一に乳化されている」、「△」は「一部、乳化にムラがある」、「×」は「乳化されていない」、をそれぞれ表す。
【0055】
「乳化安定性」は、混合調製後に調製物を室温で3日間放置した後に、調製物の乳化状態を目視観察した。「◎」は「完全に均一に乳化されている」、「○」は「殆ど均一に乳化されている」、「△」は「一部、二層分離している」、「×」は「完全に二層分離している」、をそれぞれ表す。
【0056】
「均一混合作業性」において、「◎」は「全相を、極めて容易且つ迅速(3分以内)に均一に混合できた」、「×」は「キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、又はカルボキシビニルポリマーを溶解させるのに5分以上の時間がかかり、全相を均一に混合するのが容易でなかった」、をそれぞれ表す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
表1及び表2から、以下のことが明らかである。
ベントナイト又はメタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド重合体を配合すれば、増粘剤及び界面活性剤を使用しなくとも、優れた混合調製時の乳化状態及び乳化安定性が得られる(実施例1及び2)。一方、紛・粒体相が欠如した場合は、そもそもクリームとならない(比較例1)。
【0060】
ベントナイト又はメタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド重合体と界面活性剤とを含有する場合は、極めて優れた混合調製時の乳化状態及び乳化安定性が得られる。更に、紛・粒体相と液状の水相とが非常に馴染み易くなって、その結果、全相を極めて容易且つ迅速に均一に混合できる(実施例3、4、及び5)。
【0061】
一方、増粘剤のみにより乳化させた場合は、増粘剤を溶解するのに、かなりの時間がかかってしまい、全相を迅速且つ容易に均一混合するのが困難となる(比較例2及び3)。
【0062】
界面活性剤のみにより乳化させた場合は、混合調製時(用時)以降の乳化安定性が十分には得られない(比較例4)。そのため、十分な乳化安定性を得るためには多量の界面活性剤が必要となる結果、安全上の問題が発生する。
【0063】
増粘剤と界面活性剤とを含有する場合は、増粘剤を溶解するのに、かなりの時間がかかってしまい、全相を迅速且つ容易に均一混合するのが困難となる。更に、増粘剤と界面活性剤とを使用することによる、安全上及び環境上の問題が発生する(比較例5及び6)。
【0064】
[毛髪処理]
先ず実施例5のヘアクリームを毛髪に塗布後、トリートメント剤1)を毛先に適量塗布し、その後、良くすすぎを行った。その結果、トリートメント剤にて、更に毛髪の後処理をすることにより、仕上がりの手触りをより一層、良くすることができた。
【0065】
1)(wt%):メチルハイドロジェンポリシロキサン(3)+エタノール(97)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉・粒状の粉・粒体相と、液状の油相と、液状の水相とから少なくとも成る毛髪化粧料において、粉・粒体相中に水膨潤性粘土鉱物又はカチオン化高分子を含有することを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】
水膨潤性粘土鉱物がベントナイトであり、カチオン化高分子がメタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド重合体であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
粉・粒体相中に界面活性剤を更に含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。

【公開番号】特開2006−77007(P2006−77007A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238002(P2005−238002)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(591028980)山栄化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】