説明

多剤耐性緑膿菌検出用培地およびそれを用いた検出方法

【課題】本発明の課題は、複数の抗菌剤を含み、用時調製を必要としない多剤耐性緑膿菌の検出用培地を提供することである。
【解決手段】本発明は、基礎培地にフルオロキノロン系抗菌剤、アミノ配糖体系抗菌剤およびセフェム系抗菌剤を含んでなる、多剤耐性緑膿菌検出用培地およびそれを用いた多剤耐性緑膿菌を検出する方法ならびに感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に定められる薬剤耐性緑膿菌感染症の病原体を検出する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多剤耐性緑膿菌(MDRP: Multi-Drug-Resistance-Pseudomonas aeruginosa)検出用培地およびそれを用いた検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性結核菌(MDR−TB)など、複数の抗菌剤に対して耐性を有する病原体が問題となっている。
我が国では、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症法という)において、一類感染症から五類感染症までが規定されており、多剤耐性緑膿菌に関しては、「薬剤耐性緑膿菌感染症」が五類感染症の1つとされている(感染症法6条6項9号、感染症法施行規則1条30号)。
【0003】
感染症法に基づく薬剤耐性緑膿菌感染症の報告件数は、2006年の段階でMRSA感染症やVRE感染症に比べ低い値となっているが、毎月平均50件前後の報告があり、年間の報告総件数は646件に達している。カルバペネムなどに耐性を獲得した緑膿菌は、血液疾患や悪性腫瘍の手術後、骨髄移植を含む臓器移植後などの患者から分離される事例も多く、患者が術後に感染症に対する抵抗力が低下し、敗血症や腹膜炎などを起こした場合、化学療法の効果が得られ難く、予後の悪化や死亡率を増加させる要因の1つとなっていることから、耐性の有無の確認は、的確な治療方法を早期に選択するために極めて重要な意味を持つ。また、病院内は清浄に保たれるべき場所であり、常に院内に耐性菌が存在しないことを確認する必要もある。
【0004】
厚生労働省では、薬剤耐性緑膿菌感染症を「広域β−ラクタム剤、アミノ配糖体、フルオロキノロンの3系統の薬剤に対して耐性を示す緑膿菌による感染症」と定義し、その病原体となる緑膿菌の判定基準として、各抗菌剤を個別に添加した培地に接種して、各抗菌剤に対する最小発育阻止濃度を確認する方法(MIC法)、または、培地に一定量の菌を接種した後、各抗菌剤を含ませた感受性ディスクを置き、得られる発育阻止円の大きさを調査する方法(DISC法)を用い、以下のア〜ウの条件を全て満たした場合としている(非特許文献1)。
ア. イミペネムのMIC≧16μg/mL又は、イミペネムの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が13mm以下
イ. アミカシンのMIC≧32μg/mL又は、アミカシンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が14mm以下
ウ. シプロフロキサシンのMIC≧4μg/mL又は、シプロフロキサシンの感受性ディスク(KB)の阻止円の直径が15mm以下
【0005】
上記の感染症法上の薬剤耐性緑膿菌か否かの判定を簡便にするため、緑膿菌選択培地に直接、イミペネム、アミカシン、シプロフロキサシンの3種類の抗菌剤を添加し、多剤耐性緑膿菌を検出する方法が提案されている。かかる方法では、緑膿菌の選択培養とMIC法を同時に実施することができ、多剤耐性の有無を1日で判定可能であるとされる(特許文献1、非特許文献2)。しかしながら、緑膿菌選択培地に前記の3種類の抗菌剤を添加した培地の有効期間は培地調製後1日程度であることから、該培地を用時調製する必要があって、結局、判定を行うためには培地を調製する時間が余分にかかることとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−159837号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】厚生労働省、「感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について 42 薬剤耐性緑膿菌感染症」、<URL:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-42.html>
【非特許文献2】川村久美子、「多剤耐性緑膿菌の検出方法およびそのキット」、名古屋大学医学・バイオ系特許フェア、平成20年11月21日、D7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、複数の抗菌剤を含み、用時調製を必要としない多剤耐性緑膿菌の検出用培地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねる中で、カルバペネム系抗菌剤(広域β−ラクタム剤)、アミノ配糖体、フルオロキノロンの3系統の薬剤を含む培地において、カルバペネム系抗菌剤が容易に分解してしまうことが検出用培地の有効期間を短くする原因であるとの知見を得た。かかる知見に基づき検討したところ、カルバペネム系抗菌剤に替えてセフェム系抗菌剤を用いた場合であっても同一または近似の検出結果が得られること、またセフェム系抗菌剤は生培地中で比較的安定であることを究明し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、基礎培地にフルオロキノロン系抗菌剤、アミノ配糖体系抗菌剤およびセフェム系抗菌剤を含んでなる、多剤耐性緑膿菌検出用培地に関する。
また本発明は、基礎培地が、緑膿菌選択培地である、前記の多剤耐性緑膿菌検出用培地に関する。
さらに本発明は、フルオロキノロン系抗菌剤が、シプロフロキサシンおよび/またはレボフロキサシンである、請求項1または2に記載の多剤耐性緑膿菌検出用培地に関する。
また本発明は、アミノ配糖体系抗菌剤が、アミカシン、トブラマイシンおよびアルベカシからなる群から選択される1種または2種以上である、前記の多剤耐性緑膿菌検出用培地に関する。
さらに本発明は、セフェム系抗菌剤が、セフェピムおよび/またはセフタジジムである、前記の多剤耐性緑膿菌検出用培地に関する。
【0011】
また本発明は、フルオロキノロン系抗菌剤が、シプロフロキサシンであり、アミノ配糖体系抗菌剤がアミカシンであり、セフェム系抗菌剤がセフェピムである、前記の多剤耐性緑膿菌検出用培地に関する。
さらに本発明は、検出される多剤耐性緑膿菌が、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に定められる薬剤耐性緑膿菌感染症の病原体である、前記の緑膿菌検出用培地に関する。
また本発明は、少なくとも3ヵ月の有効期間を有する、前記の多剤耐性緑膿菌検出用培地に関する。
さらに本発明は、前記の多剤耐性緑膿菌検出用培地を用いて、多剤耐性緑膿菌を検出する方法に関する。
また本発明は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に定められる薬剤耐性緑膿菌感染症の病原体を検出する方法であって、前記の多剤耐性緑膿菌検出用培地を用いて検出する、前記方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発育阻害機構が異なる3種類の抗菌剤を含むことから、治療において大きな障害となる多剤耐性緑膿菌を簡便に検出することができる。また、病院内の検査室等での用時調製を必要とすることがなく、生培地中では容易に分解してしまうカルバペネム系抗菌剤を含まないことから、長期保存が可能になり、工業的に大量生産して商品化することができ、生培地のまま市場に流通させても十分な有効期間を確保することができる。さらに、感染症法上の薬剤耐性緑膿菌感染症の病原体(薬剤耐性緑膿菌)を短時間で正確に判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多剤耐性緑膿菌検出用培地は、基礎培地に、フルオロキノロン系抗菌剤、アミノ配糖体系抗菌剤、セフェム系抗菌剤が含まれている。このことから、これら添加した3種の抗菌剤のすべてに対して耐性を有する多剤耐性緑膿菌のみが発育する。
基礎培地は、ミューラーヒントン寒天培地やトリプトンソーヤ寒天培地といった一般的な細菌培養培地のほか、緑膿菌のみが発育するように選択剤(セトリミド、ナリジクス酸、セファロリジン、フシジンなど)が添加された緑膿菌選択培地であってもよい。かかる緑膿菌選択培地としては、セトリミド寒天培地、NAC寒天培地、CHROMagar Pseudomonas(CHROMagar社製)などがあげられる。
【0014】
添加する抗菌剤のうち少なくとも一つの抗菌剤の濃度が適正な濃度よりも低い場合、かかる抗菌剤による発育阻止能が適正な濃度の抗菌剤を添加した場合よりも弱くなり、多剤耐性を持たない緑膿菌も発育してしまうことから、多剤耐性緑膿菌と多剤耐性を持たない緑膿菌とが培地上で同様に発育する結果となり、培地上の発育から多剤耐性緑膿菌を検出することは困難となる。
【0015】
一方、添加する抗菌剤のうち少なくとも一つの抗菌剤の濃度が適正な濃度よりも高い場合、かかる抗菌剤による発育阻止能が適正な濃度の抗菌剤を添加した場合よりも強くなり、多剤耐性緑膿菌のうち中度耐性のものが培地上で発育しない結果となり、培地上の発育からこれら中度耐性の多剤耐性緑膿菌を検出することは困難となる。
これらのことから、多剤耐性緑膿菌を検出するために適した抗菌剤添加濃度は、多剤耐性緑膿菌の発育を抑制せず、多剤耐性を持たない緑膿菌の発育を抑制する濃度となる。
【0016】
かかる観点から最適化を行った場合、各抗菌剤において添加に適した濃度は下記のとおりである。すなわち、各抗菌剤において添加に適した濃度は、一致率が85〜100%となる濃度であることが好ましく、さらに好ましくは、一致率が95〜100%となる濃度である。なお、ここで「一致率」とは、CLSIのディスク拡散法に基づく判定と本発明の多剤耐性緑膿菌検出用培地を用いた判定が一致した株数を試験菌株の総数で割った値を百分率で表した数値を示す。
【0017】
フルオロキノロン系抗菌剤としては、シプロフロキサシン(CPFX)、レボフロキサシン、オフロキサシンなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができるが、シプロフロキサシンおよび/またはレボフロキサシンを用いることが好ましく、とくにシプロフロキサシンを用いることが好ましい。フルオロキノロン系抗菌剤の添加量は、一致率の観点から、0.5〜4μg/mLが好ましく、さらに好ましくは0.5〜2μg/mLである。
【0018】
アミノ配糖体系抗菌剤としては、アミカシン(AMK)、トブラマイシン、アルベカシンなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができるが、アミカシンを用いることが好ましい。アミノ配糖体系抗菌剤の添加量は、一致率の観点から、0.5〜16μg/mLが好ましい。
【0019】
セフェム系の抗菌剤としては、セフェピム(CFPM)、セフタジジムなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができるが、セフェピムを用いることが好ましい。セフェム系の抗菌剤の添加量は、一致率の観点から、0.03〜8μg/mLが好ましく、さらに好ましくは0.06〜8μg/mLである。
【0020】
本発明においては、多剤耐性緑膿菌として、感染症法に定められる薬剤耐性緑膿菌感染症の病原体(薬剤耐性緑膿菌)を検出することも可能である。なお、薬剤耐性緑膿菌は、感染症法上、イミペネム、アミカシン、シプロフロキサシンの3種の抗菌剤に対する耐性を指標として判定されるものであり、本発明の検出用培地によって検出されたものが直ちに厳密な意味での薬剤耐性緑膿菌と結論付けることはできない。しかしながら、本発明の検出用培地は、基礎培地、フルオロキノロン系抗菌剤、アミノ配糖体系抗菌剤、セフェム系抗菌剤の3種の抗菌剤の種類および各添加量を調整することによって、相当の確度で薬剤耐性緑膿菌と判定されるべき多剤耐性緑膿菌を検出することが可能である。すなわち本発明においては、フルオロキノロン系抗菌剤、アミノ配糖体系抗菌剤、セフェム系抗菌剤の3種の抗菌剤を、シプロフロキサシン(CPFX)、アミカシン(AMK)、セフェピム(CFPM)の組み合わせで用いることが好ましい。
【0021】
本発明において、検体としては、通常検体とされるものであればとくに限定されないが、例えば、尿、血漿などの臨床検体、病院内で汚染されたドアノブ、手すり、壁ぬぐい液や器具ぬぐい液などの院内検体などが挙げられる。
本発明の多剤耐性緑膿菌検出用培地は、少なくとも3ヵ月、好ましくは少なくとも4ヵ月の有効期間を有する。
【0022】
以下に実施例によって本発明を詳述するが、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、本発明は記載される特徴や組み合わせなどに限定されるものではない。なお、以下、シプロフロキサシン、アミカシン、セフェピムを、夫々、CPFX、AMK、CFPMと略号により記載することがある。
【実施例】
【0023】
〔実施例1〕多剤耐性緑膿菌検出用培地1〜7の作製
以下の作製手順で、基礎培地としてCHROMagar Pseudomonasを用いた本発明の検出用培地1〜7を作製した。
1000mLの精製水にCHROMagar Pseudomonas(CHROMagar社製)33.2gを溶解させ、沸騰させた後に、50℃に冷ましてから、アミカシン二硫酸塩、シプロフロキサシン、セフェピム塩酸塩を表2に記載の濃度となるように添加し、ペトリ−シャーレ1枚に18mLずつ分注し、室温で放置して冷却し寒天を固めて検出用培地1〜7を作製した。作製した検出用培地1〜7は、半透明で淡白色の培地であった。
検出用培地1〜7を用いた検出は、検体を含む試料を塗沫し、36±1℃の恒温下で20〜24時間培養した後に培地上の緑色〜青緑色のコロニーの有無を確認することで行った。
検出用培地1〜7を用いた検出では、培地3および培地4が多剤耐性緑膿菌のみを選択的に検出できることが分かった。
【0024】
〔実施例2〕多剤耐性緑膿菌検出用培地8〜13の作製
以下の作製手順で、基礎培地としてNAC寒天培地を用いた本発明の検出用培地8〜13を作製した。
1000mLの精製水にNAC寒天培地(日水製薬株式会社)35.7gを溶解させ、沸騰させた後に、50℃に冷ましてから、アミカシン二硫酸塩、シプロフロキサシン、セフェピム塩酸塩を表3に記載の濃度となるように添加し、ペトリ−シャーレ1枚に18mLずつ分注し、室温で放置して冷却し寒天を固めて検出用培地8〜13を作製した。作製した検出用培地8〜13は、半透明で淡黄色の培地であった。
検出用培地8〜13を用いた検出は、検体を含む試料を塗沫し、36±1℃の恒温下で20〜24時間培養した後に培地上の黄色〜黄緑色のコロニーの有無を確認することで行った。
検出用培地8〜13を用いた検出では、培地10が多剤耐性緑膿菌のみを選択的に検出できることが分かった。
【0025】
〔実施例3〕多剤耐性緑膿菌検出用培地14〜19の作製
以下の作製手順で、基礎培地としてミューラーヒントン培地を用いた本発明の検出用培地14〜19を作製した。
1000mLの精製水にミューラーヒントン寒天培地(オキソイド社製)38gを懸濁させ、121℃で15分間高圧蒸気滅菌したのち、50℃に冷ましてから、アミカシン二硫酸塩、シプロフロキサシン、セフェピム塩酸塩を表4に記載の濃度となるように添加し、ペトリ−シャーレ1枚に18mLずつ分注し、室温で放置して冷却し寒天を固めて検出用培地14〜19を作製した。作製した検出用培地14〜19は、半透明で淡黄色の培地であった。
検出用培地14〜19を用いた検出は、検体を含む試料を塗沫し、36±1℃の恒温下で20〜24時間培養した後に培地上の白色〜緑色のコロニーの有無を確認することで行った。
検出用培地14〜19を用いた検出では、培地17が多剤耐性緑膿菌のみを選択的に検出できることが分かった。
【0026】
〔実施例4〕米国臨床検査標準化協会のディスク拡散法との比較
表1に示す臨床分離株である緑膿菌菌株1〜27を対象に、米国臨床検査標準化協会(CLSI:Clinical and Laboratory Standards Institute、旧NCCLS)のディスク拡散法に基づく判定結果と、本発明の多剤耐性緑膿菌検出用培地1〜19を用いた判定結果とを比較した。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
表2、3、4に示した結果から明らかなとおり、3種の抗菌剤の至適濃度は基礎培地との組み合わせにより変動するため、濃度を調整することが必要であり、多剤耐性緑膿菌検出用培地3、4、10、17は多剤耐性緑膿菌を検出するのに適した抗菌剤濃度で添加されていることが分かった。
【0032】
〔実施例5〕多剤耐性緑膿菌検出用培地3の長期保存安定性
下記の緑膿菌(1)〜(3)を用いて、多剤耐性緑膿菌検出用培地3の長期保存安定性について検討した。
(1)多剤耐性緑膿菌(MDRP)
(2)イミペネム感受性・シプロフロキサシン耐性・アミカシン耐性の緑膿菌(non−MDRP1)
(3)イミペネム感受性・シプロフロキサシン感受性・アミカシン耐性の緑膿菌(non−MDRP2)
【0033】
本発明の多剤耐性緑膿菌検出用培地3を用いた。
また、対照として、1000mLの精製水にCHROMagar Pseudomonas33.2gを溶解させ、沸騰させた後に、50℃に冷ましてから、アミカシン二硫酸塩1mg、シプロフロキサシン1mg、イミペネム1mgを溶解し、ペトリ−シャーレ1枚に18mL分注し、室温で放置して冷却し寒天を固めて多剤耐性緑膿菌検出用培地(対照培地)を作製し用いた。
多剤耐性緑膿菌検出用培地3および対照培地を遮光状態で冷蔵保存し、0ヵ月後、1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後、4ヵ月後に上記緑膿菌(1)〜(3)を接種し、36℃±1℃の恒温下で20〜24時間培養し、各菌の発育を観察した。その結果、多剤耐性緑膿菌検出用培地3において、0ヵ月後の各菌の発育と4ヵ月後の各菌の発育は同等であった。
一方、対照培地では冷蔵保存1ヵ月後から非多剤耐性緑膿菌の発育が見られた。
【0034】
【表5】

【0035】
表5に示した結果から明らかなとおり、対照培地は冷蔵1ヵ月間で非多剤耐性緑膿菌が発育しているのに対して、本発明培地は冷蔵4ヵ月間は多剤耐性緑膿菌のみが選択的に発育する性能を有していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、多剤耐性緑膿菌の検出が必要な検査室において、必要時に短時間で判定できる培地を提供する。また、従来の技術では、生培地を市場に流通させることはできなかったが、本発明では、保存安定性の向上により、常に一定の性能を有する製品を市場に流通させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎培地にフルオロキノロン系抗菌剤、アミノ配糖体系抗菌剤およびセフェム系抗菌剤を含んでなる、多剤耐性緑膿菌検出用培地。
【請求項2】
基礎培地が、緑膿菌選択培地である、請求項1に記載の多剤耐性緑膿菌検出用培地。
【請求項3】
フルオロキノロン系抗菌剤が、シプロフロキサシンおよび/またはレボフロキサシンである、請求項1または2に記載の多剤耐性緑膿菌検出用培地。
【請求項4】
アミノ配糖体系抗菌剤が、アミカシン、トブラマイシンおよびアルベカシからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の多剤耐性緑膿菌検出用培地。
【請求項5】
セフェム系抗菌剤が、セフェピムおよび/またはセフタジジムである、請求項1〜4のいずれかに記載の多剤耐性緑膿菌検出用培地。
【請求項6】
フルオロキノロン系抗菌剤が、シプロフロキサシンであり、アミノ配糖体系抗菌剤がアミカシンであり、セフェム系抗菌剤がセフェピムである、請求項1〜5のいずれかに記載の多剤耐性緑膿菌検出用培地。
【請求項7】
検出される多剤耐性緑膿菌が、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に定められる薬剤耐性緑膿菌感染症の病原体である、請求項1〜6のいずれかに記載の緑膿菌検出用培地。
【請求項8】
少なくとも3ヵ月の有効期間を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の多剤耐性緑膿菌検出用培地。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の多剤耐性緑膿菌検出用培地を用いて、多剤耐性緑膿菌を検出する方法。
【請求項10】
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に定められる薬剤耐性緑膿菌感染症の病原体を検出する方法であって、請求項1〜8のいずれかに記載の多剤耐性緑膿菌検出用培地を用いて検出する、前記方法。

【公開番号】特開2011−120509(P2011−120509A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279747(P2009−279747)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(591045677)関東化学株式会社 (99)
【Fターム(参考)】