説明

多反応二官能性ポリマー系触媒

【課題】アルドール縮合、脱水、ダイマー化、還元、酸化、アルキル化等の反応に適するワンステップ多反応二官能性ポリマー系触媒を提供する。
【解決手段】560μm未満の粒子サイズおよび樹脂に含浸された金属を有するモノスルホン化イオン交換樹脂、モノスルホン化ゲルおよび巨大網状樹脂を含むポリマー系触媒、その触媒の使用方法であり、この金属はパラジウム、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、銅、金および/または銀である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー系触媒に関する。より具体的には、本発明はワンステップ多反応二官能性ポリマー系触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒は典型的には600〜1100μmの大きな粒子サイズを有し、反応温度でのケトン収率は低い。より小さな粒子が開示されているが、必ずしも高い収率をもたらすものではなく、または特定の触媒に限定される。例えば、米国特許第6,977,314号においては、100μm〜2mmの粒子サイズを有するビーズの金属ドープポリスルホン化カチオン交換樹脂触媒が110〜150℃の温度でケトンを製造するのに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,977,314号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の触媒は選択された触媒材料から造られ、小さな粒子の均一な分布を有し、これは向上した収率かつ低温での望ましくない生成物の形成の低減をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の形態においては、560μm未満の粒子サイズを有し、樹脂内に金属が含浸されたモノスルホン化イオン交換樹脂、モノスルホン化ゲル、および巨大網状樹脂の少なくとも1種を含むポリマー系触媒が提供される。金属はパラジウム、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、銅、金および/または銀である。
本発明の第2の形態においては、アルキン、アルケン、アルデヒド、ケトン、アルコール、ニトリル、アミンおよびニトログループの少なくとも1種のアルドール縮合、脱水、ダイマー化、還元、酸化、アルキル化、エーテル化、エステル化、アルキル化並びに水素化から選択される反応のための本発明のポリマー系触媒の使用が提供される。
本発明の第3の形態においては、400μm未満の粒子サイズを有し、樹脂内に金属が含浸されたモノスルホン化イオン交換樹脂、モノスルホン化ゲル、および巨大網状樹脂の少なくとも1種のポリマー系触媒を提供し、ケトンを合成して、5〜60%の収率および90〜99%の選択性を生じさせることを含むケトンを製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明はポリマー系触媒に関する。この触媒はモノスルホン化イオン交換樹脂、モノスルホン化ゲル、および/もしくは巨大網状(macroreticular)樹脂、またはマクロポーラスポリマー樹脂、並びに金属を含む。モノスルホン化イオン交換樹脂は、35〜85%の水分保有能力および1リットルあたり0.5〜2.5当量を含む樹脂である。1つの典型的な樹脂はザダウケミカルカンパニーから入手可能なDOWEX商標MONOSPHERE商標545C(H)である。モノスルホン化ゲルは0.1m/g未満の表面積および1〜10重量%の架橋剤を含む。巨大網状樹脂は1〜60m/gの表面積および5〜25重量%の架橋剤を含み、かつ1以下のスルホン基を有する。このゲルおよび樹脂の表面積はBrunauer−Emmer−Teller(BET)モデルに基づく。
【0007】
従来の巨大網状樹脂は、非溶媒の存在下でのジビニルベンゼン(DVB)含有モノマー混合物の懸濁重合から製造される。これらの樹脂は広範囲の孔サイズ分布および表面積を有するポリマーを表す。例えば、ある巨大網状樹脂は150〜560ミクロンの平均粒子直径を有し、モノマーの全重量を基準にして少なくとも60%のポリビニル芳香族モノマー、50〜300%の有機補助溶媒を用いてこのモノマーを重合することを含む。ある実施形態においては、平均粒子直径は400ミクロン未満である。
【0008】
巨大網状樹脂は0〜50パーセントのモノビニル芳香族モノマー並びに50〜100パーセントのポリビニル芳香族モノマーを、疎水性ポロゲンおよび親水性ポロゲンを含むポロゲン混合物100〜170パーセント、並びに0.5〜10パーセントのフリーラジカル重合開始剤の存在下で、水性懸濁物中で重合することにより製造される。全てのパーセント量はモノマーの全重量を基準にし、親水性ポロゲンは疎水性ポロゲンに対して、1.2/1を超えて3/1までの重量比で存在し、親水性ポロゲンは1種以上の(C4−C10)アルカノールから選択され、並びに疎水性ポロゲンは1種以上の(C7−C10)芳香族炭化水素および(C6−C12)飽和炭化水素から選択される。
【0009】
架橋剤の例には、ジビニルベンゼン、ジビニルピリジン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタラート、エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ジビニルスルホン、グリコールの、グリセロールの、ペンタエリスリトールの、ジエチレングリコールの、グリコールのモノチオもしくはジチオ誘導体の、およびレゾルシノールのポリビニルもしくはポリアリルエーテル、ジビニルケトン、ジビニルスルフィド、アクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、コハク酸ジアリル、炭酸ジアリル、マロン酸ジアリル、シュウ酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、セバシン酸ジアリル、セバシン酸ジビニル、酒石酸ジアリル、ケイ酸ジアリル、トリカルバリル酸トリアリル、アコニット酸トリアリル、クエン酸トリアリル、リン酸トリアリル、N,N’−メチレンジアクリルアミド、N,N’−メチレンジメタクリルアミド、N,N’−エチレンジアクリルアミド、トリビニルベンゼン、トリビニルナフタレンおよびポリビニルアントラセンが挙げられる。
【0010】
ゲル樹脂は560μm未満の粒子サイズを含む。ある実施形態においては、平均粒子直径は400ミクロン未満である。別の実施形態においては、粒子サイズは300〜350μmである。
【0011】
巨大網状樹脂は架橋マクロポーラスコポリマーから製造されることができ、この架橋マクロポーラスコポリマーは、全モノマー重量を基準にして少なくとも1重量パーセントのポリビニル不飽和モノマーを含むモノマーもしくはモノマーの混合物から重合される。ポロシティーは、ポロゲン(すなわち、モノマーのための溶媒であるがポリマーのための非溶媒である)の存在下での懸濁重合によってコポリマービーズに導入される(「層エキステンダー」または「沈殿剤」としても知られる)。
【0012】
架橋マクロポーラスコポリマー製造は、例えば、懸濁助剤(例えば、分散剤、保護コロイドおよび緩衝剤)を含む連続水性相溶液の製造と、その後に、1〜85%のポリビニル芳香族モノマー、フリーラジカル開始剤、および1部のモノマーあたり好ましくは約0.2〜5,より好ましくは約0.3〜3、最も好ましくは約0.4〜1部のポロゲン(例えば、トルエン、キシレン、(C−C10)アルカノール、(C−C12)飽和炭化水素またはポリアルキレングリコール)を含むモノマー混合物と混合することを含むことができる。モノマーおよびポロゲンの混合物は、次いで、高温で重合されて、その後、得られたポリマービーズから様々な手段によってポロゲンが除去され、例えば、トルエン、キシレンおよび(C−C10)アルコールは蒸留もしくは溶媒洗浄によって除去されることができ、およびポリアルキレングリコールは水洗浄によって除去されることができる。得られたマクロポーラスコポリマーは、次いで、従来の手段、例えば、脱水によって単離され、次いで、乾燥させられる。
【0013】
架橋コポリマーの製造に使用されうる好適なポリビニル芳香族モノマーには、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレンおよびジビニルキシレン、並びにその混合物から選択される1種以上のモノマーが挙げられ;上記架橋剤のそれぞれの様々な位置異性体のいずれかが好適であることが理解される。好ましい実施形態においては、ポリビニル芳香族モノマーはジビニルベンゼンである。好ましくは、架橋コポリマーは約1〜85%、より好ましくは約5〜55%、最も好ましくは約10〜25%のポリビニル芳香族モノマー単位を含む。
【0014】
場合によっては、非芳香族架橋性モノマー、例えば、エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ジエチレングリコールジビニルエーテル、およびトリビニルシクロヘキサンが、ポリビニル芳香族架橋剤と共に使用されうる。使用される場合には、非芳香族架橋性モノマーは重合単位として、マクロポーラスコポリマーを形成するために使用される全モノマー重量を基準にして、マクロポーラスポリマーの好ましくは約0〜10%、より好ましくは約0〜5%、最も好ましくは約0〜2%を構成する。
【0015】
架橋コポリマーの製造に使用されうる好適なモノ不飽和ビニル芳香族モノマーには、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、(C−C)アルキル置換スチレン、ハロ置換スチレン(例えば、ジブロモスチレンおよびトリブロモスチレン)、ビニルナフタレン、およびビニルアントラセンが挙げられる。好ましくは、モノ不飽和ビニル芳香族モノマーはスチレン、(C−C)アルキル置換スチレン、およびその混合物から選択される。好適な(C−C)アルキル置換スチレンに含まれるものとしては、例えば、エチルビニルベンゼン、ビニルトルエン、ジエチルスチレン、エチルメチルスチレン、およびジメチルスチレンが挙げられる。上記ビニル芳香族モノマーのそれぞれの様々な位置異性体のいずれか好適であると理解される。好ましくは、コポリマーは約15〜99%、より好ましくは約75〜90%のモノ不飽和ビニル芳香族モノマー単位を含む。
【0016】
場合によっては、非芳香族モノ不飽和ビニルモノマー、例えば、脂肪族不飽和モノマー、例えば、塩化ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、および(メタ)アクリル酸アルキルがビニル芳香族モノマーに加えて使用されうる。使用される場合には、非芳香族モノ不飽和ビニルモノマーは重合単位として、マクロポーラスコポリマーを形成するのに使用される全モノマー重量を基準にしてマクロポーラスコポリマーの好ましくは約0〜10%、より好ましくは約0〜5%、最も好ましくは約0〜2%を構成することができる。
【0017】
マクロポーラスコポリマーを製造するのに有用なポロゲンには、疎水性ポロゲン、例えば、(C−C10)芳香族炭化水素および(C−C12)飽和炭化水素、および親水性ポロゲン、例えば、(C−C10)アルカノールおよびポリアルキレングリコールが挙げられる。好適な(C−C10)芳香族炭化水素には、例えば、トルエン、エチルベンゼン、オルト−キシレン、メタ−キシレンおよびパラ−キシレンが挙げられ;上記炭化水素のそれぞれの様々な位置異性体のいずれかが好適であると理解される。好ましくは、芳香族炭化水素はトルエンもしくはキシレンまたはキシレンの混合物、またはトルエンとキシレンとの混合物である。好適な(C−C12)飽和炭化水素には、例えば、1種以上のヘキサン、ヘプタン、およびイソオクタンが挙げられ;好ましくは、飽和炭化水素はイソオクタンである。好適な(C−C10)アルカノールには、例えば、イソブチルアルコール、tert−アミルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、メチルイソブチルカルビノール(4−メチル−2−ペンタノール)、ヘキサノールおよびオクタノールの1種以上が挙げられ;好ましくはアルカノールは1種以上の(C−C)アルカノール、例えば、メチルイソブチルカルビノールおよびオクタノールから選択される。
【0018】
コポリマーを製造するのに有用な重合開始剤には、モノマー可溶性開始剤、例えば、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、および関連する開始剤、例えば、ベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンペルオキシド、テトラリンペルオキシド、アセチルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオクトアート(tert−ブチルペルオキシ−2−エチルへキサノアートとしても知られている)、tert−アミルペルオクトアート、tert−ブチルペルベンゾアート、tert−ブチルジペルフタラート、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボナート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナート、およびメチルエチルケトンペルオキシドが挙げられる。また有用なのはアゾ開始剤、例えば、アゾジイソブチロニトリル、アゾジイソブチルアミド、2,2’−アゾ−ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾ−ビス(α−メチルブチロニトリル)およびジメチル−、ジエチル−もしくはジブチルアゾ−ビス(メチルバレラート)である。好ましいペルオキシド開始剤は、ジアシルペルオキシド、例えば、ベンゾイルペルオキシド、およびペルオキシエステル、例えば、tert−ブチルペルオクトアートおよびtert−ブチルペルベンゾアートであり;より好ましくは、開始剤はベンゾイルペルオキシドである。ペルオキシド開始剤の使用量は、ビニルモノマーの全重量を基準にして、好ましくは約0.3%〜5%、より好ましくは約0.5〜3%、最も好ましくは約0.7〜2%である。
【0019】
好ましくは、架橋コポリマーは、触媒のための基材として使用するための、ジビニルベンゼンコポリマー、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、ジビニルベンゼン−エチルビニルベンゼンコポリマーおよびスチレン−エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼンコポリマーから選択される。これら架橋コポリマーは、当業者に知られているモノスルホン化のための従来の方法に従って官能基で官能化されうる。
【0020】
樹脂またはゲルは金属で含浸される。典型的な金属には、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、およびその混合物が挙げられる。ある実施形態においては、金属はパラジウムである。金属は触媒の乾燥重量を基準にして0.1〜15パーセントの金属イオンを含む。
【0021】
バッチもしくは連続反応器において金属イオンの水溶液を水素形態のイオン交換樹脂と接触させることにより樹脂またはゲルに所望の金属イオンが添加されうる。金属イオンは金属塩、例えば、塩化物、臭化物、硝酸塩、硫酸塩、アセチルアセトナートおよび酢酸塩の形態で提供されうる。添加されたイオン交換樹脂はすすがれることができ、残留する塩もしくは酸をなくすことができる。使用される金属塩の量は、金属もしくは金属イオンが最終的にイオン交換樹脂の約0.1〜2%添加、好ましくは約0.5〜1.5%添加、より好ましくは約0.8〜1.2%添加の量で存在するであろうように選択される。好ましい実施形態においては、イオン交換樹脂触媒は触媒の乾燥重量を基準にして0.1〜15%の金属を含む。
【0022】
ケトンもしくは溶媒は合成されて、約5〜60%の収率、約90〜99%の選択性を生じさせる。ある実施形態においては、触媒は20〜50%の収率、94〜99%の選択性を含む。収率は生成したケトンの量を基準にし、選択性は全生成物に対する生成したケトンの量を基準にする。触媒は1.6未満の多分散度または均等係数も有する。均等係数は粒子サイズの分布を説明する統計学的数値であり、1.0は単分散粒子サイズ物質である。
【0023】
この触媒を用いた可能な反応には、これに限定されないが、アルキン、アルケン、アルデヒド、ケトン、アルコール、ニトリル、アミンおよびニトログループの少なくとも1種のアルドール縮合、脱水、ダイマー化、還元、酸化、アルキル化、エーテル化、エステル化、アルキル化および水素化から選択される反応が挙げられる。触媒を製造するある実施形態においては、水素(H)形態のイオン交換樹脂1リットルが、0.5〜2リットルの酸性化蒸留水中の1〜50グラムの酢酸パラジウムの溶液に注がれ、約1〜4時間でこのパラジウムがイオン交換樹脂に吸収させられ、次いで、この溶液が樹脂からデカントして除かれる。あるいは、所望の量の金属イオンが樹脂によって保持されるまで、イオン交換樹脂のカラムに金属塩の水溶液を通過させることによりイオン交換樹脂に金属を添加することができる。これは、その後に、水で徹底的に洗浄されることができ、残留塩および添加プロセス中に生じる酸を除去することができる。
【0024】
触媒を使用するある実施形態においては、ポリマー系触媒は容器内に収容されているビーズの物理的形態であり、このビーズは触媒の床を形成する。ケトン反応物質または溶媒、例えばアセトンの供給流れが、水素の存在下で(別の供給流れとして)、ケトンの縮合反応が起こるのに充分な時間および温度で触媒床と接触させられる。反応生成物(飽和ケトン付加物)、副生成物(不飽和ケトン付加物)、および存在しうる未反応ケトン反応物質を含む縮合液体流れが触媒床から分離されて、その液体流れから従来の分離手段(例えば蒸留)によって所望のケトン付加物が回収される。
【0025】
当業者は、(1)バッチ操作、例えば、その操作においては触媒床に水素の存在下で液体流れが添加される、または(2)より好ましい連続操作、例えば、その操作においては、所望の反応が起こるのに充分な触媒床における滞留時間を可能にする速度で、液体流れが連続的にカラム反応器の一方の端に(水素と共に)供給され、その床の別の端から縮合液体流れが連続的に取り出されるなどの、好適な条件を選択することができるであろう。同様に、反応装置、床を通る反応物質流れの移動の方向についての上向流もしくは下向流の選択、反応時間および温度、具体的な反応物質、並びにケトン付加物の回収方法は、本明細書に提供される案内および当業者の利用可能な知識に基づいて容易に選択される。
【0026】
カラム反応器内の温度および圧力は、ケトン反応物質が触媒床においてその沸点である様に選択されうる。ケトン反応物質の温度/圧力の変化が使用されて、縮合反応が触媒床において液相で起こるような反応温度および条件の所望の組み合わせを提供する。条件は変えられることができ、触媒床に気相条件を提供することができ、並びにこの条件は縮合反応が液相で行われるものであり得る。好ましい実施形態においては、触媒床を流れる液体および気体が存在しているトリクル床条件が使用される。ある実施形態においては、この気体は水素であり、平衡液体/蒸気はアセトンである。より高い圧力を選択すると、より多くの液体を提供しうる。
【0027】
本発明のポリマー系触媒は、ケトン反応物質および水素がバッチ反応条件下でまたは連続反応条件下で接触させられる縮合反応において使用されうる。ある実施形態においては、本方法は触媒蒸留プロセスをベースにした連続プロセスであり、ケトン反応物質の導入はリボイラーステージのすぐ上のカラム反応器の底部であり;この場合、生成物画分または流れは、さらなる処理のための蒸留装置のリボイラー部分から連続的に抜き出される。好ましくは、縮合反応を受けるケトン反応物質は触媒床を通って下向きに供給され、水素の流れは同じ方向に反応領域を通って流れる。しかし、反応物質供給流れを導入する他のバリエーション、例えば、並流および対向流水素流れ、フラッディングプロセス、および気相プロセスが使用されることができる。
【0028】
連続プロセスについては、反応物質の量に対して使用される触媒の量は、典型的には、LHSV(液体時間空間速度)で表される反応のスループット速度、または単位時間あたりの触媒の体積に対する反応物質の液体流速に関連する。装置利用および生成物発生を最大化するために高いLHSVが望ましい場合があるが、しかしこの目的を満たすことは原料の変換率%および所望の生成物に対する選択性%に対してバランスを取られなければならない。LHSVが低すぎる場合には、所望の生成物の生産速度(収率および選択性)が小さくなり、方法が経済的でない場合がある。LHSVが高すぎると、所望の量の変換率を提供するには触媒活性が不充分になる(プロセスが「反応速度論的に制限される」こととなる)であろう。LHSVの好適な値は、典型的には、好ましくは0.5〜10h−1、より好ましくは0.5〜8h−1、最も好ましくは0.5〜4h−1の範囲であろう。
【0029】
ケトン反応物質は触媒の存在下で、65〜200℃の温度で、1〜100bar(0.1〜10MPa)の水素の圧力で、水素と接触させられうる。典型的には、縮合反応は少なくとも1:1の水素/ケトン反応物質モル比で行われる。
【0030】
別の実施形態においては、本方法は、触媒蒸留装置のリボイラーセクションステージにおけるケトン反応物質の反応器カラムへの導入を伴うバッチ反応(上述のと同様)でありうる。リボイラーセクションにおいてケトン付加物の所望の生成物組成が達成されると、本方法は次いで停止させられうる。あるいは、バッチオートクレーブ反応器において特定の時間で縮合が行われることができ、次いで、冷却され、および蒸留もしくは他の従来の手段による所望の量のケトン付加物の回収が行われうる。
【実施例】
【0031】
以下の実施例は、本発明を例示するために示される。実施例においては、以下の略語が使用される。
重量%は重量パーセントである。
GCはガスクロマトグラフである。
IPAはイソプロピルアルコールである。
LHSVは液体時間空間速度である。
MIBKはメチルイソブチルケトンである。
MPaはメガパスカルである。
psiはポンド/平方インチである。
Cは摂氏であり;mlはミリリットルであり;minは分であり;hは時間であり;mmはミリメートルであり;並びにccは立方センチメートルである。
【0032】
試験方法
収率、変換率、および選択性:反応からの生成物はGCクロマトグラフにインジェクトされる。異なる反応生成物は分析され定量化された。アセトン変換率は反応して生成物を作るアセトンであり、生成物収率は得られた所望の生成物の量であり、選択性はGCによって決定された全ての生成物に対する目的生成物の割合である。
【0033】
二重カラムGC−FID法の説明:
キャリアガス:高圧室窒素からのN
インジェクター:0.2μl体積
インレット:フロント、モード:スプリット、温度:250℃、圧力:5.4psi(37kPa)
スプリット比:50.0対1、スプリットフロー73.0ml/分;合計フロー76.6ml/分
ガスセーバー:20.0ml/分、2.00分
カラム:
カラム1:Macherei Nagel 726600、Optima Wax.30m×250μm×0.25μm
定圧、インレット:フロント、アウトレット:フロント
窒素フロー:圧力5.4psi(37kPa)、フロー0.7ml/分、平均速度20cm/秒
カラム2:Varian CP9151 VF1701MS キャピラリー30.0m×250μm×0.25μm
定圧、インレット:フロント、アウトレット:バック
窒素フロー:圧力5.4psi(37kPa)、フロー0.7ml/分、平均速度20cm/秒
オーブン:
設定点:40℃
保持時間:5分
勾配1:5.0℃/分、115℃まで
勾配2:15.0℃/分、240℃まで
最終時間:6.67分、240℃
合計操作時間:35分
検出器:
フロントFID:ヒーター:250℃
フロー:H:30ml/分、空気:350ml/分、メイクアップN:30ml/分
シグナル1:データレート20Hz、ピーク幅0.01分、スタート0、エンド35分
バックFID:ヒーター:250℃
フロー:H:30ml/分、空気:350ml/分、メイクアップN:30ml/分
シグナル2:データレート20Hz、ピーク幅0.01分、スタート0、エンド35分
【0034】
実施例:連続反応器
樹脂XJT−88は320μmの粒子サイズで噴射されたゲル型強酸カチオン性樹脂であり、Pdが添加され、還元された。15mlの全樹脂(湿潤)がカラムに充填された。MIBKの製造に以下の条件が使用された:250cc/分での水素、30ml/時でのアセトン、100〜140℃の温度および300psi(2.07MPa)の圧力。3時間後に得られた生成物が集められ、GC装置で分析された。収率および選択性は表1に示される。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
560μm未満の粒子サイズを有し、樹脂内に金属が含浸されたモノスルホン化イオン交換樹脂、モノスルホン化ゲル、および巨大網状樹脂の少なくとも1種を含むポリマー系触媒であって、
金属がパラジウム、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、銅、金および銀の少なくとも1種から選択される、
ポリマー系触媒。
【請求項2】
1.6以下の多分散度をさらに含む、請求項1に記載のポリマー系触媒。
【請求項3】
金属が、触媒の乾燥重量を基準にして、触媒中に分布させられた0.1〜15パーセントの金属イオンを含む、請求項1に記載のポリマー系触媒。
【請求項4】
金属がパラジウムを含む請求項1に記載のポリマー系触媒。
【請求項5】
モノスルホン化イオン交換樹脂が、35〜85%の水分保有能力および1リットルあたり0.5〜2.5当量を含む請求項1に記載のポリマー系触媒。
【請求項6】
モノスルホン化ゲルが0.1m/g未満の表面積および1〜10重量%の架橋剤を含む、請求項1に記載のポリマー系触媒。
【請求項7】
巨大網状樹脂が1〜60m/gの表面積および5〜25重量%の架橋剤を含む請求項1に記載のポリマー系触媒。
【請求項8】
前記少なくとも1種のモノスルホン化イオン交換樹脂、モノスルホン化ゲルおよび巨大網状樹脂が300〜350μmの粒子サイズを有する請求項1に記載のポリマー系触媒。
【請求項9】
アルキン、アルケン、アルデヒド、ケトン、アルコール、ニトリル、アミンおよびニトログループの少なくとも1種のアルドール縮合、脱水、ダイマー化、還元、酸化、アルキル化、エーテル化、エステル化、アルキル化並びに水素化から選択される少なくとも1種の反応のための、請求項1に記載の方法により製造されたポリマー系触媒の使用。
【請求項10】
400μm未満の粒子サイズを有し、樹脂内に金属が含浸されたモノスルホン化イオン交換樹脂、モノスルホン化ゲル、および巨大網状樹脂の少なくとも1種のポリマー系触媒を提供し、ここで金属はパラジウム、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、銅、金および銀の少なくとも1種から選択され、触媒は触媒の乾燥重量を基準にして0.1〜15パーセントの金属を有する;並びに
ケトンを合成して、5〜60%の収率および90〜99%の選択性を生じさせる;
ことを含むケトンを製造する方法。

【公開番号】特開2012−11379(P2012−11379A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−132755(P2011−132755)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】