多回転アブソリュート回転角検出装置
【課題】モータ出力軸に連結されたモータ回転軸の多回転アブソリュート回転角を高精度に計算する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る計算方法を用いる回転角検出装置は、モータ回転軸の回転角θ1に対して第n回転軸の回転角θnがθn=(−(m±1)/m)n−1×θ1を満たすことを特徴とする。この関係を満たすギア機構において、第1回転軸の多回転回転角を第1回転軸の回転角度である第1回転軸の検出値p1と第1回転軸の回転数に対応するR0×m0+R1×m1+・・・Rn−2×mn−2とに展開し、各軸の角度検出器の検出値に基づいて係数R0〜Rn−2を求め、第1回転軸の多回転回転角を計算する。第2回転軸以降の角度検出器で生じた検出誤差を有効に抑圧することができ、高精度な多回転回転角を計算することができる。また、複数系列のギア機構を並列に設け、それらのギア機構から得られる検出値に基づき、より広い回転角検出範囲を達成することができる。
【解決手段】本発明に係る計算方法を用いる回転角検出装置は、モータ回転軸の回転角θ1に対して第n回転軸の回転角θnがθn=(−(m±1)/m)n−1×θ1を満たすことを特徴とする。この関係を満たすギア機構において、第1回転軸の多回転回転角を第1回転軸の回転角度である第1回転軸の検出値p1と第1回転軸の回転数に対応するR0×m0+R1×m1+・・・Rn−2×mn−2とに展開し、各軸の角度検出器の検出値に基づいて係数R0〜Rn−2を求め、第1回転軸の多回転回転角を計算する。第2回転軸以降の角度検出器で生じた検出誤差を有効に抑圧することができ、高精度な多回転回転角を計算することができる。また、複数系列のギア機構を並列に設け、それらのギア機構から得られる検出値に基づき、より広い回転角検出範囲を達成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転角を検出する装置およびその回転角の計算方法に関し、さらに詳しくは、バッテリのバックアップ等の手段を用いなくても、多回転アブソリュート回転角を検出することのできる改良された回転角検出装置およびその回転角の計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転角検出装置は、例えば、モータ回転軸の回転角を検出し、その検出値に応答してそのモータにより駆動される工作機械等の移動体の位置を制御する。移動体の位置を広範囲かつ高精度に制御するために、回転角検出装置は、モータ回転軸を多回転かつ絶対回転角で検出できることが望ましい。
【0003】
このような回転角検出装置として、特開2010−44055号公報(米国特許出願番号第12/168,151号に対応)は、誘導性マルチターン式エンコーダを開示する。この誘導性マルチターン式エンコーダ10は、直列にかつ多段に接続されたギア付の円形ディスク41−46を具備し、それらの内のディスク42,44,46の回転角を検出することにより多回転の角度検出を実現する。この先行技術文献における多回転の角度を検出することのできる範囲は、入力回転軸に対する最終段のディスク46の減速比で決定される。入力回転軸である回転シャフト20は、円形ディスク41と1:4のギア減速比で機械的に接続され、後続のギア付の円形ディスク41と42、42と43、43と44、44と45、及び、45と46も、それぞれ1:4のギア減速比で機械的に接続される。このような1:4のギア減速を6段実行することにより、このマルチターン式エンコーダ10は、4096回転の多回転の検出範囲を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−440558号公報
【特許文献2】特開2002−107178号公報
【特許文献3】特許第3967963号明細書
【特許文献4】特公平05−38243号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】林幸一、外4名、「バッテリレス多回転検出方式の超高分解能小型アブソリュート・エンコーダの開発」、精密工学会誌、2000年、Vol.66、No.8、p1177−1180
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した誘導性マルチターン式エンコーダ10は、減速された円形ディスクの回転角から多回転回転角を直接に求めるので、多回転検出範囲を広く設定するために、減速比を大きくする必要がある。その結果、このような誘導性マルチターン式エンコーダ10は、その機構が複雑でかつ大きくなるとともに、コストが上昇するという課題を有する。
【0007】
上記課題を改善するために、「バッテリレス多回転検出方式の超高分解能小型アブソリュート・エンコーダの開発」(精密工学会誌、2000年、Vol.66、No.8、p1177−1180)に紹介されたエンコーダ、及び、特開2002−107178号公報に開示されたレゾルバは、回転入力軸に対して並列に異なる変速比で接続された回転軸の回転角を検出するための角度検出器をそれぞれ設け、それらから得られる回転角情報を基に多回転絶対位置を検出する。
【0008】
しかしながら、並列的に異なる変速比で接続された複数軸の回転角の関係から多回転情報を求める方式では、多回転の角度検出範囲は、一般に各軸の角度検出信号を処理して得られる周期信号の最小公倍数で決まる。上記先行文献に記載されたような多回転アブソリュート回転角を検出する方式では、多回転の角度検出範囲を広く取るために、互いに素となる変速を選択する必要があり、その結果ギアの種類が多くなるという問題がある。また、互いに素となる数は限られているため、設計できる多回転の角度検出範囲の自由度が制約されるという問題もある。さらに、他のアプリケーションに適応する多回転の角度検出範囲は様々であるので、実際に実現できる多回転の角度検出範囲は、互いに素となる値の最小公倍数という特殊な値に限定されるという不便さが残る。さらにまた、上述の方式では、各軸の回転角情報から多回転絶対位置が求められるが、その演算が複雑であるという問題がある。
【0009】
多回転絶対位置を求める演算が複雑となる上記問題に対処するために、特開2002−107178号公報は、各回転軸の回転角から求められた値と主回転軸の回転数との関係を示すテーブル(図9)をメモリに予め記憶しておき、各回転軸の回転角から求められた値に対応する主回転軸の回転数をそのテーブルから選択する絶対位置検出方法を開示する。しかしながら、多回転検出範囲を広く取るためには、その多回転検出範囲(0から20357)に対応する多くのメモリが消費されるという問題が存在する。
【0010】
また、特許第3967963号公報は、2つの周期の内の一方のみの演算結果をメモリに記憶することにより、メモリの消費を節約する演算方法を開示する。しかしながら、この方法においても、メモリを使用することに関し、上述の検出方法と同じ問題を有する。
【0011】
さらに、多回転アブソリュート回転角を求める演算方法に関して、特公平05−38243号公報は、軸の回転角に対する複数の回転角検出器からの検出値の関係式をつくり、各軸の検出値を同時に満足する、軸の回転角を逐次代入し判別するプログラムを使って、多回転アブソリュート回転角を探索する。多回転検出範囲が広くなると、探索する組み合わせが多くなるため計算に時間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するためになされ、第1回転軸から第nmax回転軸へ回転を伝達する伝達機構であって、第1回転軸の回転角θ1に対して、第n回転軸の回転角θnが
【数1】
の関係を満たす伝達機構を具備する多回転アブソリュート回転角検出装置に適用されることを特徴とする。ここで、nmax及びmは3以上の整数であり、かつnは1≦n≦nmaxである。
【0013】
本発明に係る多回転アブソリュート回転角検出装置は、各回転軸に取り付けられた角度検出器によって第n回転軸の1回転内の角度検出値pnを検出する。検出された角度検出値pn基づいて係数Rn−2を決定し、その決定された係数Rn−2を次の回転角計算式に代入して回転角計算値θ1(mn−1)’を求める。回転角計算値θ1(mn−1)’は、第1回転軸の多回転回転角を表し、回転角の検出範囲は、0〜mn−1回転である。
【数2】
上記回転角計算式の数値nを2からnmaxまで繰り返すことにより、係数R0から係数Rnmax−2までの値を順次決定し、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mn−1)’を求める。ここで、係数R0〜Rnmax−2は0およびm−1を含む0からm−1の整数、uは基本単位量、および回転角計算値θ1(m0)’は第1回転軸の角度検出値p1である。
【0014】
上記係数Rn−2は、回転軸数がnである場合に、第1回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’を求める回転角計算式の計算結果が以下に示す第1回転軸の回転角検出値θ1(mn−1)に近似するように決定される。回転角検出値θ1(mn−1)は、第n回転軸までの角度検出値p1〜pnから以下の式で求められる周期信号S(mn−1)にmn−1を乗じて求められる。回転角検出値θ1(mn−1)の回転角検出範囲は、0〜mn−1回転である。
【数3】
により求めることができ、ここで、k1,k2,・・・knは、(x+1)n−1の展開式k1×x0+k2×x1+k3×x2・・・knxn−1におけるxのn−1次項の係数であり、mod(x,a)は、xをaで割ったときの余りを求める剰余演算であり、Jは、隣接する回転軸間の変速比が−(m−1)/mのとき、J=1であり、変速比が−(m+1)/mのとき、J=−1である符号調整項である。また角度補正値pn’は、計算された回転角計算値θ1(mn−1)’を、次式の角度補正値計算式、
【数4】
に代入して計算することができる。
【0015】
また、係数Rn−2は、
【数5】
の計算結果に最も近似した整数を決定することより求めることができる。
【0016】
さらに、係数Rn−2は、
【数6】
を演算することにより求めることができ、INT(x)は、数値xの小数点以下を切り捨てる演算である。
【0017】
また本発明は、上記係数Rn−2を以下の式で示される角度補正値pn’が第n回転軸の角度検出値pnに最も近似するように決定し、回転角計算値θ1(mn−1)’を求めものである。
【数7】
上記角度補正値計算式の数値nを2からnmaxまで繰り返すことにより、係数R0から係数Rnmax−2までの値が順次決定される。
【0018】
これらの決定された係数R0〜Rnmax−2を次式の回転角計算式、
【数8】
に代入して第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を求める。ここで、係数R0〜Rnmax−2は0およびm−1を含む0からm−1の整数、uは基本単位量、および角度補正値p1’は第1回転軸の角度検出値p1である。
【0019】
上記係数Rn−2は、
【数9】
の計算結果に最も近似した整数を決定することにより求めることができる。
【0020】
さらに、係数Rn−2は、
【数10】
を演算することにより求めることができ、INT(x)は、数値xの小数点以下を切り捨てる演算である。
【0021】
さらに、本発明は、上述した伝達機構を複数系列設け、それぞれの系列から周期信号、角度補正値を求め、多回転アブソリュート回転角を演算する方法、および装置である。特に、周期信号の周期を互いに素となるようにmが設定される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、角度検出器の検出値に誤差を含んでいても、角度検出器で生じた検出誤差を抑圧し、高精度な多回転回転角検出値を計算することが可能となる。特に、この計算により、第2回転軸以降に取り付けられた角度検出器で生じた検出誤差を打ち消し、第1回転軸の角度検出器で生じた検出誤差内に抑えることができる。その結果、回転軸を増やすことにより多回転回転角の検出範囲を拡大しても、計算された多回転回転角検出値は、第1回転軸の検出誤差内に抑えることが可能となる。
【0023】
また、本発明の角度検出器に要求される精度は、係数Rn−2の判別に必要な精度を有していれば良い。各軸の検出値を直接的に計算して多回転角度を得るのに較べて、精度を低くできるので多回転角度検出装置のコストを低減させることが可能になる。
【0024】
さらに、本発明が用いられる多回転角度検出装置は、互いに素となる関係の変速を必要としないため、使用するギアの種類が少なくてすむ。また、多回転回転角の検出範囲を自由に設計することできる。さらに、多回転の周期計算において、メモリ参照を必要としないため、多くのメモリを消費してメモリ部品のコストの上昇やサイズの増大を招くことがない。
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明するが、図面及びその図面に対応する説明は、あくまで本発明を実施するための例示的な記述であり、請求項に係る発明が本実施例に限定されることを意図するものではない。また、本発明は、請求項で定義された用語によってのみ解釈され、その用語は、その一般的な解釈に従うものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例に係る多回転アブソリュート回転角を求める原理を説明するための回転角検出装置の伝達機構の構成ブロック図である。
【図2】本発明の一実施例である多回転アブソリュート回転角を検出するための回転角検出装置の構成図である。
【図3】本発明の一実施例において、モータ回転軸の多回転アブソリュート回転角を算出するための回転角検出装置のブロック図を示す。
【図4】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角と第1〜第4回転角との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角と各軸の検出値p1,p2,p3,p4との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角に対する周期信号の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角と各軸の回転角との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角に対する各軸の角度検出器から出力される角度検出値を示す。
【図9】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角に対する周期信号の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角と係数R0〜R2との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角計算値における整数部分の構成を説明するためのグラフである。
【図12】本発明の第1の実施例において、第1回転軸の回転角計算値を計算処理する手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施例において、第1回転軸の回転角計算値を計算処理する手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第3の実施例に係る回転角検出装置の伝達機構の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照して、本発明の第1の実施例に係る多回転アブソリュート回転角を求める原理を説明する。図1に示される回転角検出装置の伝達機構10の構成ブロック図において、モータ出力軸に結合された第1回転軸11は、角度検出器S1に接続され、第1回転軸11の1回転内の角度を示す回転角θ1に対応する検出値p1を検出する。同様に、角度検出器S2−Snは、第2〜第n回転軸12〜15の角度を示す回転角θ2〜θnに対応する検出値p2〜pnをそれぞれ検出する。第1〜第n回転軸11〜15には、歯数m−1(あるいはm+1)及び歯数mのギアがそれぞれ固定されており、第1回転軸11のギア11aは、第2回転軸12のギア12bに噛み合わされる。さらに第2回転軸12に固定されているギア12aは、第3回転軸13のギア13bに噛み合わされる。このように、伝達機構10は、隣接する回転軸間において、歯数m−1(あるいはm+1)を有するギアが歯数mを有するギアに噛み合うギア機構を形成する。
【0028】
本発明に係る実施例は、伝達手段としてギア機構を用いて説明するが、本発明に係る伝達機構は、ギアに限定されるものではなく、回転軸の回転力を伝達することができるあらゆる要素を含む。上述ように配置されたギア機構において、第1回転軸11の多回転アブソリュート回転角は、角度検出器S2−Snによって検出された第1〜第n回転軸11〜15の検出値p1〜pnから以下の計算式を実行することにより算出される。
【0029】
図1において、第1〜第n回転軸11〜15に、歯数m−1及び歯数mのギアがそれぞれ噛み合わされている場合を想定すると、ギア変速比は、(m−1)/mで表される。第1回転軸11から第n回転軸15へ直列に配置されるギア機構において、噛み合わされるギア対が同一のギア変速比(m−1)/mを有するので、第1回転軸11の回転角をθ1とすると、第n回転軸15の回転角θnは、式(1)で表される。
【0030】
【数11】
なお、式(1)において(m−1)/mの前のマイナス記号は、第1回転軸11の回転方向をプラス(正)で表現し、その回転と逆の回転方向をマイナス(負)で表現する。
【0031】
図1に示す伝達機構が第1回転軸から第4回転軸によって形成されるギア機構で、モータ出力軸に結合された第1回転軸の回転角をθ1と仮定すると、第2回転軸の回転角θ2、第3回転軸の回転角θ3、及び、第4回転軸の回転角θ4は、式(1)からそれぞれ次のように求められる。
【0032】
【数12】
【0033】
さて、角度検出器S1〜Snは、第1〜第n回転軸11〜15の回転角度(例えば、0(°)から360(°)を表す検出値)を検出する検出器であるから、第n回転軸がθnだけ回転すると、角度検出器Snの検出値pnは、式(6)で表現することができる。
【数13】
ここで、式y=mod(x,a)は、一般にxをaで割ったときの余りyを算出する剰余演算と定義される。すなわち、ある回転軸の回転角の単位を度(°)とし、1周期の回転角を表す数値(基本単位量)であるuを360(°)とする場合、検出値pnは、回転角に応じて0から360(°)の値を示す。たとえば、回転角θnが90(°),510(°)である場合、検出値pnは、それぞれ90(°),150(°)となる。なお、回転角θ=−1(°)とする場合は、検出値pは−1(°)ではなく、359(°)として扱う。回転角θnとuは、単位が一致してればどのような単位を採用してもよい。たとえば、単位量を1(回転)とすると、検出値pnは、回転角に応じて0から1の値を示す。
【0034】
角度検出器の検出値についてさらに敷衍すると、第1回転軸11から第n回転軸15の回転角を検出する角度検出器S1〜Snは、回転軸が1回転すると1周期の検出値を出力する。例えば、角度検出器S1〜Snは、1周期の単位量をuとすると、回転軸の回転角に応じて検出値0から検出値uまで単調に増加し、回転軸が1回転すると検出値0に戻るのこぎり歯状の検出信号を出力する。単位量uの単位は、1周期当たりの回転角を表す数値であり、回転角の単位と同じであれば、どのような単位であってもよいことは上述したとおりである。
【0035】
次に、式(2)から(5)で表される回転角θ1からθ4を式(6)に代入すると、角度検出器S1〜Snの検出値p1〜p4は、第1回転軸の回転角θ1から式(7)〜(10)によって算出される。
【0036】
【数14】
【0037】
さて、第1回転軸のm回転を1周期とする周期信号を想定すると、その周期信号S(m1)を表す剰余式は、
【数15】
と表現できるので、mod(a+b,u)=mod(mod(a,u)+mod(b,u),u)の関係から、第1回転軸の検出値p1、及び、第2回転軸の検出値p2を用いて、上記周期信号を表す剰余式を式(11)のように変形することができる。
【数16】
【0038】
また、第1回転軸のm2回転を1周期とする周期信号を想定すると、その周期信号S(m2)を表す剰余式は、
【数17】
と表現できるので、第1〜3回転軸の検出値p1,p2,p3を用いて上記周期信号S(m2)を表す剰余式を式(12)のように変形することができる。
【数18】
【0039】
さらに、第1回転軸のm3回転を1周期とする周期信号を想定すると、その周期信号S(m3)を表す剰余式は、
【数19】
と表現できるので、第1〜4回転軸の検出値p1,p2,p3,p4を用いて上記周期信号S(m3)を表す剰余式を式(13)のように変形することができる。
【数20】
【0040】
一般に、第1回転軸のmn−1回転を1周期とする周期信号を想定すると、その周期信号を表す剰余式は、
【数21】
と表現できるので、式(11)から式(13)を演繹すると、周期信号S(mn−1)は、式(14)の周期信号計算式として表すことができる。ここで、nは、回転軸の数である。
【数22】
ただし、k1,k2,・・・,knは、(x+1)n−1の展開式の係数に対応する。すなわち、二項定理から、(x+1)n−1は、k1×x0+k2×x1+・・・+kn×xn−1に展開される。
【0041】
したがって、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角検出値θ1(mn−1)は、式(14)の周期信号にmn−1を乗じることにより計算され、式(15)として表される。
【数23】
式(15)に示されるように、各回転軸の角度検出器の検出値p1〜pnを代入することにより、第1軸の多回転回転角検出値θ1(mn−1)を求めることができる。nは、回転軸の軸数である。
【0042】
なお、上述の計算は、ギア変速比が(m−1)/mであるギア機構を想定しているが、本発明は、ギア変速比が(m+1)/mであるギア機構に対しても適用可能である。上述した周期関数は、以下説明するように符号調整項を導入することによりそれらを区別することができる。
【0043】
上述と同様に、ギア変速比が(m+1)/mであるギア機構に対する場合の周期関数を求めると次のようになる。すなわち、第n回転軸の角度検出値pnは、次のように表される。
【数24】
従って、第1〜4回転軸の角度検出値p1〜p4は、次のように求められる。
【数25】
【0044】
次に、周期関数S(m1)〜S(m3)を求めると次のとおりとなる。
【数26】
上式において、p1+p2の演算結果が−(1/m)となるので、−1が乗じられる。
【数27】
【数28】
【0045】
上式において、p1+3p2+3p3+p4の演算結果が−(1/m3)となるので、−1が乗じられる。このように、ギア変速比が(m+1)/mの場合、nが偶数の場合、剰余式内の演算結果がマイナスとなるので、Jを−1とする符号調整項Jn−1が周期関数内に導入される。すなわち、周期関数S(mn−1)は、次式のように表される。
【数29】
ここで、Jは、隣接する回転軸間の変速比が−(m−1)/mのとき、J=1であり、前記変速比が−(m+1)/mのとき、J=−1である。
【0046】
ここで、図1に示されるギア機構において、例えば、回転軸の軸数を4、歯数mを32(駆動側回転軸の歯数をm−1、受動側回転軸の歯数をmとする)、単位量uを131072(uは、角度検出器S1の検出値p1が17ビット(=217)の分解能を有することに対応する。)と仮定すると、式(14)は、
【数30】
となり、第1回転軸の回転角検出値θ1(m3)は、式(16)により求められる。
【数31】
【0047】
したがって、第1〜第4回転軸の回転角度を示す検出値p1〜p4を検出することにより、上記式(16)から、32768(=323)回転で1周期となる第1回転軸の多回転回転角の検出を131072の分解能で実行することが可能となる。
【0048】
上述した原理に基づいて、多回転アブソリュート回転角を検出する実施例について、以下詳細に述べる。
【0049】
図2は、本発明の第1の実施例である多回転アブソリュート回転角を検出するための回転角検出装置20の構成図である。サーボモータ21の出力回転軸(図示せず)の反対側に設けられた第1回転軸23には、光学式アブソリュート・エンコーダ22が連結されると共に、歯数31を有するギア23aが固定される。ギア23aは、第2回転軸24に固定された歯数32を有するギア24bと噛み合わされる。また、第2回転軸24に固定された歯数31を有するギア24aは、第3回転軸25に固定された歯数32を有するギア25bと噛み合わされる。さらに、第3回転軸25に固定された歯数31を有するギア25aは、第4回転軸26に固定された歯数32を有するギア26bと噛み合わされる。ギア24aとギア24b、ギア25aとギア25b、及び、ギア26aとギア26bは、一体成型された同一形状の樹脂製ギアであり、回転軸とともに一体成型されてもよい。このように、回転角検出装置20は、サーボモータ21の回転が直列に接続されたギア機構を介して第1回転軸23から第4回転軸26に伝達される構造を有する。
【0050】
光学式アブソリュート・エンコーダ22は、第1回転軸23の1回転内の絶対角度θ1を17ビットの分解能(217=131072P/Rev)で検出する。光学式アブソリュート・エンコーダ22は、プリント基板27に実装された信号処理回路28と電気的に接続されており、光学式アブソリュート・エンコーダ22によって検出された第1回転軸23の回転角情報である検出値p1は、信号処理回路28に送られる。
【0051】
また、第2〜第4回転軸24,25,26の軸端には、ギア24a,25a,26aの径方向と同一方向に2極の着磁された磁石29a,29b,29cがそれぞれ取り付けられ、軸の回転とともに回転する。磁石29a,29b,29cと対向する位置にMR素子を使ったMR回転角センサ30a,30b,30cが基板27上に実装される。MRセンサ30a,30b,30cは、磁石29a,29b,29cが1回転すると、90°位相のずれた2つの正弦波状の電圧が1周期出力する。MRセンサ30a,30b,30cで検出された検出電圧は、それぞれ信号処理回路28に送られる。
【0052】
スペーサ31を用いて形成された樹脂製の構造体32は、上述した第2〜第4回転軸24〜26を保持する。図2に示される第1〜第4回転軸23〜26は、説明を簡易にするために、構造体32内に直線状に保持されているが、構造体32内の空間を有効に利用するために、第1〜第4回転軸23〜26の中心軸が曲線上に配置されてもよい。
【0053】
次に、図3は、サーボモータ21の多回転アブソリュート回転角θ1(mn−1)を算出するための回転角検出装置20のブロック図を示す。図3において、図2に示される要素と同一又は類似の要素は、同一の参照番号が付される。
【0054】
図3において、サーボモータ21の回転軸である第1回転軸23の1周期の回転角を示す検出値p1がエンコーダ22によって検出され、信号線33を経由して信号処理回路28内の通信ポート34に送られる。エンコーダ22から出力される検出値p1は、17ビットの分解能を有する。通信ポート34によって受信された検出値p1は、第1回転軸23の絶対角度を算出するためにさらに多回転演算回路35に送られる。
【0055】
第1回転軸23の回転は、ギア機構によって第2〜第4回転軸24〜26に伝達される。第1〜第4回転軸23〜26の回転角θ1〜θ4は、例えばmを32とし、また回転角を回転数で表すと仮定すると、第1回転軸の回転数と第1〜第4回転角θ1〜θ4との関係は、図4に示されるとおりとなる。ここで、図4の横軸は、第1回転軸の回転数を示し、縦軸は、各軸の回転角θ1〜θ4を表す。縦軸のマイナスは、軸の回転方向が第1回転軸と逆向きであることを示す。例えば、第1回転軸の回転数が32であるすると、第2回転軸は、θ2=−31となり、第1回転軸とは逆に31回転することが分かる。これらの関係は、式(2)から(5)に示されるとおりである。
【0056】
図3に戻り、第1〜第4回転軸23〜26の回転角は、MR素子角度検出器30a,30b,30cによってそれぞれ検出され、90°位相のずれた2つの正弦波状の検出電圧(sin成分,cosin成分)が信号線33a,33b,33cを経由してAD変換器37にそれぞれ送られる。2つの検出電圧は、AD変換器37でアナログ値から例えば12ビットのデジタル値へ変換され、それぞれRD変換演算回路38へ送られる。RD変換演算回路38は、受信した2つのデジタル値(sin成分,cosin成分)から角度が算出される。この角度は、12ビットの分解能を有するが、エンコーダ22の検出値p1の分解能に合わせるために17ビットに拡張された検出値p2,p3,p4が求められる。具体的には、12ビットの下位に5ビットに0を加え、17ビットの検出値とする。なお、MR素子角度検出器30a,30b,30cの検出電圧は、MR素子自体のばらつきや、磁気・回路・機械精度などの様々な要因で誤差を含むため、検出電圧をそのまま角度に変換するのではなく、電圧信号のオフセット補正、振幅補正を施し、実際の回転角に対する誤差補正や、各回転軸の検出値に関連する補正など様々な精度補正が施される。このような処理が施された検出値p2,p3,p4は、多回転演算回路35に送られる。図5に、上述のようにして求められた検出値p1,p2,p3,p4の第1回転軸の回転数に対する変化を示す。なお、多回転演算回路35が受け取る検出値p1,p2,p3,p4は、17ビットの分解能を有するので、図5の縦軸に示されるように、各軸の検出値は、各軸が1回転する毎に、0と131072との間を変化する。
【0057】
多回転演算回路35は、通信ポート34及びRD変換演算回路38から検出値p1,p2,p3,p4を受け取り、それらの値を式(16)に代入することにより、mが32、分解能が17ビット(217=131072)、及び、多回転範囲が15ビット(215=32768)とする場合の多回転アブソリュート回転角を算出し、出力することができる。
【0058】
図6は、式(11)〜(13)によって求められるそれぞれの周期信号を表すグラフである。ここで、横軸は、第1回転軸23の回転数を表し、回転数0から32768に亘るが、簡略にするため途中を一部省略している。図6下段のグラフは、式(11)に対応し、32回転を1周期とする周期信号である。第1,2回転軸23,24の検出値p1,p2を式(11)に代入して求められる周期信号は、第1回転軸23の回転数が0から32までのアブソリュート回転角を検出することができることを示す。また、図6中段のグラフは、式(12)に対応し、1024回転を1周期とする周期信号である。第1〜3回転軸23〜25の検出値p1,p2,p3を式(12)に代入して求められる周期信号は、第1回転軸23の回転数が0から1024までのアブソリュート回転角を検出することができることを示す。さらに、図6上段のグラフは、式(13)に対応し、32768回転を1周期とする周期信号である。第1〜4回転軸23〜26の検出値p1,p2,p3,p4を式(13)に代入して求められる周期信号は、第1回転軸23の回転数が0から32768までのアブソリュート回転角を検出することができることを示す。
【0059】
上述した多回転アブソリュート回転角検出装置は、回転軸を増やすことにより、広い多回転検出範囲を達成することができるが、以下説明するように、正確な多回転の回転角検出値を算出するためには、回転軸の検出値を測定する各角度検出器に対して高い精度を要求する。一般に、各角度検出器によって測定された検出値は誤差を含んでいる。そこで、第1回転軸の多回転回転角の計算値を一定の精度に保つために、各角度検出器がどの程度の誤差を許容できるのかを以下検討する。例えば、n軸で構成される多回転アブソリュート回転角検出装置の第1回転軸の回転角検出値θ1(mn−1)は、式(15)に示されるように、回転軸数nを2,3,4とする場合、式(11)〜(13)で表される周期信号S(m)〜S(m3)に回転角検出範囲m1,m2,m3をそれぞれ乗じることにより算出され、式(17)〜(19)で表される。
【0060】
軸数が2である場合
【数32】
軸数が3である場合
【数33】
軸数が4である場合
【数34】
ここで、mは第1回転軸の歯数であり、式(11)〜(13)中の単位量uは、1とする。すなわち、各周期関数は、第1回転軸の回転角に応じて、0から1の値をとる。
【0061】
各回転軸の検出誤差の絶対値をenとすると、第1回転軸の回転角検出値θ1(mn−1)が1回転(±0.5rev)以下の精度を保つためには、次式(20)〜(22)を満たす必要がある。
軸数2の場合
【数35】
軸数3の場合
【数36】
軸数4の場合
【数37】
【0062】
各回転軸の検出誤差がほぼ等しいeと仮定すると、検出誤差は、以下の範囲に入らなければならない。
軸数2の場合
【数38】
軸数3の場合
【数39】
軸数4の場合
【数40】
【0063】
式(23)〜(25)から、軸数nの場合の誤差範囲を演繹すると、次式(26)のように表される。
【数41】
式(26)から理解されるように、軸数nが増加すると、多回転検出範囲は広くなるが、その増加に伴って各検出軸の角度検出器に対して要求される検出精度も指数的の高くなる。要求される高い検出精度を角度検出器に求めることは、多回転検出装置のコストを上昇させる原因となる。そこで、各回転軸の角度検出器に対して要求される検出精度を抑えつつ、角度検出器の検出誤差に起因する影響を低減させる多回転回転角を求めるための演算処理が必要となる。
【0064】
そこで、図1に示される伝達機構10を用いて、角度検出器の検出誤差に起因する影響を低減させる多回転角度計算値を求める計算方法を以下説明する。一般に、整数Iは、mのべき乗mnの列に展開することができる。具体的には、kを0からnの整数、かつaiを0≦ak<nの整数とすると、
I=a0m0+a1m1+a2m2+・・・aimi+・・・+anmn
と表現することができる。例えば、mが10である場合、整数1056は、6×100+5×101+0×102+1×103のように展開することができる。この表現は、10進数と呼ばれる。以下の説明において、多回転アブソリュート回転角の回転数の部分は、このようなm進数の展開を利用する。
【実施例1】
【0065】
さて、図1において、第1回転軸11の多回転アブソリュート回転角は、第1回転軸11の1回転内の角度検出値p1と第1回転軸11の多回転回転数との和で数学的に表現することができる。そして、この多回転回転数をm進数(理由は以下に示される)で表すと、第1回転軸の多回転回転角計算値θ1(mn−1)’は、次式(27)の回転角計算式で表現することができる。
【数42】
ここで、mは第1回転軸の歯数に対応し、nは軸数であり、係数R0〜Rn−2は、0およびm−1を含む0からm−1の整数であり(0≦R0〜Rn−2<m)、そしてuは、基本単位量とする。図1に示される伝達機構10の構造では、回転軸が1軸増加する毎に多回転を検出することのできる範囲がm倍拡大するので、m進数を用いて式(27)の多回転回転数部を表現すると都合が良い。
【0066】
第1回転軸11の多回転回転角検出値θ1(mn−1)は、各回転軸で検出された各検出値p1〜pnを式(15)に代入することにより求められるが、本質的に回転角検出値θ1(mn−1)と回転角計算値θ1(mn−1)’は、係数R0〜Rn−2を適切に選択することにより、ほぼ等しくすることができる。すなわち、回転角計算値θ1(mn−1)’の多回転回転数の部分が回転角検出値θ1(mn−1)の回転数の部分と等しくなるように、係数R0〜Rn−2を適切に選択すると、回転角計算値θ1(mn−1)’に含まれる回転角計算値の誤差は、第1回転軸の検出値p1に起因する検出誤差のみにすることができる。以下、各回転軸の検出器により検出した検出値p1〜pnから回転角計算値θ1(mn−1)’を求めるために、係数R0〜Rn−2を算出する方法について説明する。
【0067】
説明を簡略にするために、図1に示される伝達機構10において、回転軸数nmaxを4、第1回転軸の歯数mを4、基本単位量uを1と仮定する場合、第1回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’は、式(27)から次式(28)のように表現することができる。
【数43】
上記の条件の下で、係数R0〜R2の算出方法について説明する。
【0068】
まず、第1回転軸の回転角θ1と第2,第3,第4回転軸の回転角θ2,θ3,θ4は、式(1)に示される関係から明らかなように、次式(29)〜(31)に示される関係をそれぞれ有する。
【数44】
したがって、第1回転軸の回転角θ1に対する第2,第3,第4回転軸の回転角θ2,θ3,θ4は、図7に示される。
【0069】
次に、検出値pnが第n回転軸における1回転内の検出値を示すから(この例では、基本単位量uが1であるから、0から1の値)、第n回転軸の回転角θnと検出値pnは、厳密には式(6)に示されるが、実際には角度検出器に誤差を含むためpnは、mod(θn,u)にほぼ等しい関係を有する。したがって、各回転軸の検出値p1,p2,p3,p4は、各回転軸の回転角θ2,θ3,θ4に上記式(29)〜(31)を代入すると、第1回転軸の回転角θ1と各回転軸の検出値p1,p2,p3,p4との関係は、次式(32)〜(35)のとおりとなる。
【数45】
したがって、第1回転軸の回転角θ1に対する各回転軸の検出値p1,p2,p3,p4は、図8に示される。
【0070】
周期信号S(mn−1)は、角度検出値pnに誤差が含まれない場合、式(14)で示される関係を有する。誤差を含む角度検出値pnを使用して周期信号S(mn−1)を求めると、それらの誤差が演算に影響し、拡大する。そこで、式(27)で求めた回転角計算値θ1(mn−1)’は、第1回転軸の角度検出値p1以外の項には誤差を含んでいないので、誤差を含む角度検出値pnの代わりに、次式(36)の角度補正値計算式で計算される誤差を含まない角度補正値pn’が周期信号S(mn−1)を算出するために用いられる。
【数46】
【0071】
各回転軸の角度補正値と周期信号との関係は、次式(37)のように表される。
【数47】
ここで、角度補正値p2’〜pn−1’は、角度検出値p2〜pn−1に対する補正値であり、Jは、隣接する回転軸間の変速比が−(m−1)/mのとき、J=1とし、変速比が−(m+1)/mのとき、J=−1とする符号調整項である。
【0072】
第1回転軸の4(=m1),16(=m2),64(=m3)回転をそれぞれ1周期とする周期信号S(m),S(m2),S(m3)を、角度補正値pn’を考慮に入れて、式(11)〜(13)から求めると、次式(38)〜(41)のように表現される。なお、第1回転軸の周期信号S(m0)は、角度検出値p1そのものである。また、剰余計算では、mod(a,c)+mod(b,c)=mod((a+b),c)、およびb×mod(a,c)=mod(a×b,c)の関係が成立するので、周期信号S(m1)〜S(m3)は、次式(38)〜(41)のように変形される。
【数48】
【0073】
したがって、周期関数S(m1),S(m2),S(m3)と第1回転軸の回転角θ1との関係は、図9に示される。図9に示されるように、周期信号S(m1)は、第1回転軸が4回転角毎に、また周期信号S(m2)は、16回転角毎に、さらに周期信号S(m3)は、64回転角毎にそれぞれ0から1へ単調に増加するのこぎり波となる。
【0074】
上述した周期信号の性質から、次式(42)のように、周期関数S(mn−1)にmn−1を乗じると、mn−1までの第1回転軸の回転角検出値S(mn−1)を算出することができる。
【数49】
従って、nが1から4である場合の周期関数と第1回転軸の回転角θ1(mn−1)との関係は、式(43)〜(46)によって表される。
【数50】
【0075】
式(44)は、第1回転軸が4回転する毎に0から4に変化するのこぎり波を示す。また、式(45)は、第1回転軸が16回転する毎に0から16に変化するのこぎり波を示す。さらに、式(46)は、第1回転軸が64回転する毎に0から64に単調に増加するのこぎり波を示す。
【0076】
次に、上述された関係式から、式(27)に示される係数R0〜Rn−2を算出する算出方法を説明する。式(27)で示される回転角計算値θ1(mn−1)’と式(42)で示される回転角検出値θ1(mn−1)は、式(42)における係数R0〜Rn−2が自然数しかとらないので完全には一致しないが、近似する。すなわち、次式(47)
【数51】
が成立する。
【0077】
式(47)の回転角計算値θ1(mn−1)’に式(27)を代入すると、次式(48)が導出される。
【数52】
nが1〜4の場合、回転角計算値θ1(m0)’,θ1(m1)’,θ1(m2)’,θ1(m3)’は、それぞれ次式(49)〜(52)のように表される。
【数53】
【0078】
式(49)〜(52)に示される関係を演繹すると、回転角計算値θ1(mn−1)’は、次式(53)のように表現される。
【数54】
【0079】
回転角計算値θ1(mn−1)’は回転角検出値θ1(mn−1)とほぼ等しいことを考慮して、上式(47),(53)の関係から、次式(54)が得られる。式(54)の関係を満たす係数Rn−2を選択することにより、以下のとおり係数Rn−2が決定される。
【数55】
まず、式(54)右辺のθ1(mn−2)’を左辺に移動すると、式(55)が得られる。
【数56】
ここで、nを2、基本単位量uを1とすると、
【数57】
が得られる。ここで、式(44)に示される関係からθ1(m1)にmod(θ1,4)を、またθ1(m0)’は、式(47)に示されるように、θ1(m0)にほぼ等しいので、式(43)に示されるmod(θ1,1)を式(56)にそれぞれ代入すると、
【数58】
が成立する。ただし、mは4である。
【0080】
式(57)中のmod(θ1,4)は、高さが0から4まで上昇する周期4ののこぎり波であり、またmod(θ1,1)は、高さが0から1まで上昇する周期1ののこぎり波であるから、式(57)の係数R0は、図10の下段に示されるように、周期4である高さ1の3段の階段状波形を形成する。
【0081】
また、式(52)おいて、uを1、nを3として、上述と同様の処理を施すと、
【数59】
が成立する。
【0082】
式(58)中のmod(θ1,16)は、高さ16で周期16ののこぎり波であり、またmod(θ1,4)は、高さ4で周期4ののこぎり波であるから、式(58)で示される係数R1は、図10の中段に示されるように、周期16である高さ1の3段の階段状波形を形成する。
【0083】
さらに、式(54)おいてuを1、nを3として、上述と同様の処理を施すと、
【数60】
が成立する。
【0084】
式(59)中のmod(θ1,64)は、高さ64で周期64ののこぎり波であり、またmod(θ1,16)は、高さ16で周期16ののこぎり波であるから、式(59)の係数R2は、図10の上段に示されるように、周期64である高さ1の3段の階段状波形を形成する。
【0085】
式(28)で計算される回転角計算値θ1(m3)’の整数部分は、係数R0〜R2にそれぞれ1,4,16を乗じた合計であるから、その波形は図11に示されるとおりとなる。すなわち、回転角計算値θ1(m3)’は、この整数部分に第1回転軸の角度検出値p1を合計することにより求められることになる。
【0086】
ここで、式(54)から係数Rn−2を導出すると、次式(60)に変形される。
【数61】
uが1、nが2〜4の場合、係数R0〜R2は次式で示される。
【数62】
【0087】
係数R0〜Rn−2は整数であるので、例えば、次式(64)に示されるように、式(60)の右辺に0.5を加え、小数点以下を切り捨てることにより、係数Rn−2の整数が計算される。そして、式(64)のθ1(mn−1)にS(mn−1)×mn−1(式(42))を代入すると、式(65)が得られる。
【数63】
ここで、INT(x)は、数値xを小数点以下で切り捨てる演算を意味する。また、単位量をmとする剰余演算を行っているのは、係数Rn−2が0〜m−1の有効な範囲の計算結果を得るためである。以上のように、式(65)により係数R0〜Rn−2を計算するための一般式が得られた。
【0088】
次に、係数R0〜Rn−2を算出する式(65)を用いて、第1回転軸の多回転回転角計算値θ1(mn−1)’を具体的に求める。ここで、計算手順の説明を簡易にするために、回転軸の軸数nmaxを4、変速比を3/4(m=4)、基本単位量uを1として、第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’を求める。最初に、第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’を算出するに際して、第1回転軸の回転角θ1が53.5(rev)である場合の、各回転軸の理論的な角度検出値p1,p2,p3,p4を求める。
【0089】
第1回転軸の回転角θ1に対する第2,3,4回転軸の回転角θ2,θ3,θ4は、式(1)から次式のように表される。
【数64】
【0090】
また、軸倍角1の角度検出器(回転軸が1回転した場合、角度検出器は1周期の検出信号を出力する。)を使用した場合、各回転軸の角度検出値pnは、pn=mod(θn,1)で表されるから、各回転軸の理論的な角度検出値p1,p2,p3,p4は、次式で求められる数値を示す。
【数65】
【0091】
しかしながら、実際の角度検出器からの出力信号は誤差を含んでいるため、上記理論的な角度検出値p1,p2,p3,p4に例えば0.05(rev)の誤差を加えた以下の角度検出値が検出されたと仮定して、回転角計算値θ1(m3)’を算出する。
p1=0.500+0.05=0.550
p2=0.875+0.05=0.925
p3=0.094+0.05=0.144
p4=0.430+0.05=0.480
【0092】
回転軸の軸数nmaxを4、m=4、基本単位量uを1とすると、式(27)から明らかなように、回転角計算値θ1(m3)’は、次式(66)のように表される。
【数66】
したがって、回転角計算値θ1(m3)’を求めるために、式(37)、式(65)、式(27)、式(36)、をn=2,3,4に対して適用し、係数R0,R1,R2を順次計算する。
【0093】
係数R0,R1,R2を算出するための手順は、以下のとおりである。図12のフローチャートに示されるように、まず、回転軸数nmax(以下の例では、4)が設定され、カウンタ値nに2が設定される(ステップ121)。カウンタ値nが2のとき、角度検出値p1,p2から、式(39)により周期信号値S(m1)が算出される(ステップ122)。次に、その周期信号S(m1)に対応する係数R0を式(65)により求める(ステップ123)。係数R0は、次の回転角計算値を算出する際に使用するために、メモリに格納される。係数R0が求められると、その係数R0からカウンタ値nが2のときの回転角計算値θ1(m1)’が式(50)により算出され、メモリに格納される(ステップ124)。次に、カウンタ値nを1だけ増加せ、nmaxより大きくなる場合、回転角計算値を求める計算は終了し、そうでない場合、ステップ126に進む(ステップ125)。算出された回転角計算値θ1(m1)’は、式(50)における角度検出値p1以外の項(この場合は、R0×m0の項)には検出誤差は含まれていないので、その算出された回転角計算値θ1(m1)’に対応する角度補正値p2’が式(36)によって求められ、メモリに格納される(ステップ126)。この角度補正値p2’は、次の回転角計算値θ1(m2)’を算出する際に使用される。回転軸数nが3,4に対しても以上のステップを繰り返し実行して、係数R1,R2を順次求める。最終的に、回転角計算値θ1(m3)’が算出され(ステップ124)、本フローは終了する(ステップ125)。以上は、回転軸数が4の場合における回転角計算値を計算する各ステップを概略したが、回転軸数が4を超える場合に対しても同様の処理が繰り返され、係数R0〜Rn−2を順次求め、最終的に回転角計算値θ1(mn−1)’を計算する。以下、上述した各ステップをさらに詳細に説明する。
【0094】
最初に、回転軸数nmaxを4に設定し、カウンタ値nを2とする(ステップ121)。このとき周期信号S(m1)は、次式(67)にp1=0.550、p2=0.925を代入すると、以下の計算により周期信号S(m1)の値は、0.475となる(ステップ122)。
【数67】
ここで、k1,k2は、1である。
【0095】
次に、係数R0は、次式(68)にS(m1)=0.475、m=4、θ1(m0)’=p1=0.550を代入すると、以下の計算により係数R0は、1となる(ステップ123)。
【数68】
この係数R0は、最終的に求める回転角検出値を算出するときに使用するためにメモリに格納される。
【0096】
R0が求められると、回転角計算値θ1(m1)’は、式(50)から次式(69)のように求められる(ステップ124)。
【数69】
【0097】
カウンタ値nを1だけ増加させ、そのカウンタ値nが4に達していない場合、次のステップに進む(ステップ125)。ステップ126では、この回転角計算値θ1(m1)’に対応する第2回転軸の角度補正値p2’が式(36)によって求められる(ステップ126)。
【数70】
この角度補正値p2’は、カウンタ値nが3の場合の係数R1を求める際に使用される。
【0098】
次に、処理フローは、ステップ126からステップ122に戻り、上述と同様の処理が繰り返される。すなわち、カウンタ値nが3のとき、周期関数S(m2)は、式(37)から次のように求められる(ステップ122)。
【数71】
ここで、k1=1,k2=2,k3=1である。
【0099】
また、係数R1は、式(65)にS(m2)=0.370、m=4、θ1(m1)’=1.55を代入することにより算出される。以下の計算のように、係数R1は、1となる(ステップ123)。
【数72】
【0100】
R1が求められると、回転角計算値θ1(m2)’は、式(51)から次式のように求められる(ステップ124)。
【数73】
【0101】
この回転角計算値θ1(m2)’に対応する第3回転軸の角度補正値p3’は、式(36)から次のように求められ、メモリに記憶される(ステップ126)。この角度補正値p3’は、カウンタ値nが4の場合の係数R2を求める際に使用される。
【数74】
【0102】
次に、回転軸数nが4のとき、周期関数S(m3)は、式(37)から次のように求められる(ステップ122)。
【数75】
ここで、k1=1,k2=3,k3=3,k4=1である。
【0103】
また、係数R2は、式(65)にS(m3)=0.91、m=4、θ1(m2)’=5.55を代入することにより算出される。以下の計算により係数R2は、3となる(ステップ123)。
【数76】
【0104】
R2が求められると、回転角計算値θ1(m3)’は、式(52)から次のように求められる(ステップ124)。
【数77】
【0105】
カウンタ値nは、4であるので、回転角計算値を求める処理は終了する(ステップ125)。以上の計算から、第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’が53.55と算出された。上記段落0088において述べているように、第1回転軸の回転角が53.5(rev)であることを前提として計算しているので、計算結果である回転角計算値θ1(m3)’の誤差は、第1回転軸の角度検出値に与えた0.05のみであり、第2回転軸以降の角度検出器の検出誤差は累積されていない。
【実施例2】
【0106】
次に、式(27)における係数R0〜Rn−2を求める別の計算方法を説明する。本方法は、各回転軸の角度検出値pnおよび式(27)で求められる多回転回転角計算値θ1(mn−1)’から求められた各回転軸の補正された角度補正値pn’(式(36)を求め、角度検出値pnと角度補正値pn’とがほぼ等しいことを前提に、角度補正値pn’が角度検出値pnに最も近似するように係数R0〜Rn−2を決定する方法である。
【0107】
第1回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’は、式(27)で表されるように第1回転軸の角度検出値p1と第1回転軸の多回転回転数との和で数学的に表現することができることは、上述したとおりである。式(36)中の回転角計算値θ1(mn−1)’に式(27)を代入すると、角度補正値pn’は、次式(74)で表すことができる。また、角度補正値pn’は、角度検出値pnに近似する。
【数78】
なお、上式(74)における剰余計算中の右の括弧内は、式(27)の回転角計算値θ1(mn−1)に相当する。
【0108】
上記式(74)において、角度検出値pnは、各回転軸に取り付けられた角度検出器によって検出された1回転内の角度であり、係数R0〜Rn−2は、0およびm−1を含む0からm−1の整数であるので、角度検出値pnに最も近似するように係数R0〜Rn−2を適切に選択することにより、角度補正値pn’を決定することができる。例えば、第2回転軸の角度補正値p2’は角度検出値p2から次のように決めることができる。すなわち、式(74)から、角度補正値計算式は、
【数79】
と表され、この角度補正計算式の計算結果が角度検出値p2に最も近くになるように0≦R0<mである整数の係数R0を適切に選択すればよい。このように決定した係数R0を式(74)に代入することにより、角度補正値p2’が求められる。このようにして、nを2からnmaxまで繰り返して、係数R0〜Rnmax−2を決定し、式(27)に代入することにより、最終的に第1回転軸の多回転回転角計算値θ1(mnmax−1)’を求めることができる。
【0109】
次に、式(74)から係数R0〜Rnmax−2を計算する方程式を以下求める。式(74)に式(53)で表される変形を代入すると、角度補正値pn’は、次式(75)の角度補正値計算式で表される。
【数80】
【0110】
さらに式(75)内を展開すると、角度補正値pn’は、次式(76)のように表される。
【数81】
【0111】
さらに式(76)を変形すると、角度補正値pn’は、次式(77)のように表される。
【数82】
【0112】
剰余演算において、除数を整数倍した数値を加減算しても、剰余演算の結果は、影響されないので、その数値が剰余演算から除かれる。すなわち、bを整数とすると、y=mod(a+b×c,c)=mod(a,c)の関係が成立する。したがって、式(77)において、Rn−2,mm−2は、共に自然数であるので、−1×Rn−2×mm−2×uの項が削除される。その結果、式(77)は、次式(78)のように変形される。
【数83】
【0113】
角度検出値pnは、角度補正値pn’とほぼ等しいので、角度検出値pnは、次式(79)のように表される。
【数84】
【0114】
上式(79)のように、角度検出値pnと係数Rn−2との関係が導き出されたので、剰余演算の定義に従って、以下のように係数Rn−2を求めることが可能になる。一般に、a±bをcで除したときの余りyを求める剰余演算は、y=mod(a±b,c)と表わされるから、数式a±b=n×c+yが成立する。ここで、nは整数であり、yは0≦y<cである。aを右辺へ移動すると、上記数式は、±b=n×c+y−aとなる。この数式の両辺をcで除したときの余りを求める剰余演算は、mod(±b,c)=mod(n×c+y−a,c)と表現することができる。段落0112で説明されるように、括弧内のn×cの項を削除することができるので、上式は、mod(±b,c)=mod(y−a,c)に整理することができる。ここで、bが0≦b<cである場合、b=mod(±(y−a),c)が成立する。この関係を利用して、式(79)から係数Rn−2を求める式は、以下に示されるように導き出される。
【0115】
式(79)中の係数Rn−2は、段落0065で説明されるように、0≦Rn−2<mであるので、0≦(1/m)×Rn−2×u<uが成立する。したがって、定式(79)において、pn’をy、(−(m±1)/m)n−1×θ1(mn−2)’をa,(1/m)×Rn−2×uをb、uをcと捉えると、上述のように、mod(±b,c)=mod(y−a,c)は、bが0≦b<cである場合、b=mod(±(y−a),c)として演算することができる。すなわち、式(79)の剰余演算内の(1/m)×Rn−2×uは、次式(80)で求められる。
【数85】
【0116】
剰余演算において、mod(a,c)×b=mod(a×b,c×b)が成立するので、上式(80)の右辺は、さらに次式(81)のように変形することができる。
【数86】
係数Rn−2は、式(81)によって求められるが、係数Rn−2は整数であるので、上式(81)の演算結果を四捨五入する。その整数化は、次式(82)に示されるように、演算結果に0.5を加え、剰余演算によって桁上がり処理を行なうことにより達成できる。なお、INT(X)は、Xの小数点以下を切り捨てる演算子である。
【数87】
【0117】
実際には、mod(mod(a,c)+b,c)=mod(a+b,c)が成立するので、式(82)は、次式(83)のように変形され、剰余演算が1回削減することができる。
【数88】
【0118】
さて、上式(83)によって、係数Rn−2を算出する計算式が得られたので、実施例1と同様な各回転軸の検出値(段落0091)を用いて、式(83)からR0,R1,R2を求め、それらを式(27)に代入して、第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’を算出する。以下の計算例では、基本単位数u=1000、各回転軸の検出値p1=550,p2=925,p3=144,p4=480とする。
【0119】
係数R0,R1,R2を算出するための手順は、以下のとおりである。図13のフローチャートに示されるように、まず、回転軸数nmax(以下の例では、4)が設定され、カウンタ値nに2が設定される(ステップ131)。カウンタ値nが2のとき、回転角計算値θ1(m0)’(=p1)および角度検出値p2が式(83)に代入され、係数R0が算出され、その係数R0を次の回転角計算値を算出する際に使用するために、メモリに格納される(ステップ132)。係数R0が求められると、角度検出値p1および係数R0が式(27)に代入され、回転角計算値θ1(m1)’が算出され、メモリに格納される(ステップ133)。次に、カウンタ値nを1だけ増加させ、ステップ132に戻る(ステップ134)。以上の計算処理がカウンタ値n=3,4に対しても繰り返し実行され、係数R1,R2が求められる。最終的に、回転角計算値θ1(m3)’が算出される(ステップ133)。カウンタ値nがnmaxより大きい場合、回転角計算値を求める計算は終了する(ステップ134)。以上は、回転軸数が4の場合の各ステップを概略したが、回転軸数が4を超える場合に対しても同様の処理が繰り返され、係数R0〜Rn−2を順次求め、最終的に第1回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’を計算する。以下、上述した各ステップをさらに詳細に説明する。
【0120】
最初に、回転軸数nmaxを4に設定し、カウンタ値nを2とする(ステップ131)。式(83)にn=2を代入すると、係数R0は、次式(84)により求められる(ステップ132)。
【数89】
さらに、回転軸間の歯車は減速すると想定し、p2=925、θ1(m0)’=550(=p1)、m=4、u=1000を上式(84)に代入すると、次式(85)となる。
【数90】
算出された係数R0は、後続の処理のためにメモリに格納される。
【0121】
次に、回転角計算値θ1(m1)’は、式(50)から
【数91】
と表されるので、式(86)にp1=550,R0=1,m=4、u=1000を代入すると、回転角計算値θ1(m1)’は、次式のように計算される、メモリに格納される(ステップ133)。
【数92】
【0122】
次に、カウンタ値nを1だけ増加させ(n=3)、処理はステップ132に戻る(ステップ134)。式(83)にn=3を代入すると、係数R1は次式(87)によって求められる(ステップ132)。
【数93】
さらに、上式にp3=144、θ1(m1)’=1550、m=4、u=1000を代入すると、係数R1は次式(88)によって求められる(ステップ132)。
【数94】
係数R1は1となり、その値は後続の処理のためにメモリに格納される(ステップ132)。
【0123】
また、回転角計算値θ1(m2)’は、式(51)から
【数95】
と表されるので、式(89)にθ1(m1)’=1550,R1=1,m=4、u=1000を代入すると、回転角計算値θ1(m2)’は、次式のように計算される(ステップ133)。
【数96】
【0124】
次に、カウンタ値nを1だけ増加させ(n=4)、処理はステップ132に戻る(ステップ134)。式(83)にn=4を代入すると、係数R2は次式(90)によって求められる。
【数97】
さらに、上式にp4=480、θ1(m2)’=5550、m=4、u=1000を代入すると、係数R2は次式(91)によって求められる(ステップ132)。
【数98】
係数R2は3となり、その値は後続の処理のためにメモリに格納される(ステップ132)
【0125】
また、θ1(m3)’は、式(52)から
【数99】
と表されるので、式(92)にθ1(m2)’=5550,R2=3,m=4、u=1000を代入すると、回転角計算値θ1(m3)’は、次式のように計算される(ステップ133)。
【数100】
この結果、実施例2における方法によって計算された第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’は、53550(基本単位量u=1000)となる。この回転角計算値は、実施例1において求めた第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’=53.55(基本単位量u=1)と同等である。
【実施例3】
【0126】
図14は、本発明の第3の実施例に係る回転角検出装置の伝達機構140の構成ブロック図である。この伝達機構140は、図1に示される伝達機構10を並列に設けた伝達機構であり、第1系列の歯車機構141および第2系列の歯車機構142によって形成される。モータ143のモータ回転軸144に取り付けられた歯車144aは、第1回転軸145に取り付けられた歯車145aに噛み合わされ、モータ回転軸144と第1回転軸145の歯車比は1:Nである。図1に示される実施例では、第1回転軸145は、第1,2系列の歯車機構141,142の共通する歯車機構であるが、必ずしも共通する必要はない。
【0127】
第1系列の歯車機構141は、第1回転軸145から第2、3回転軸146,147へモータの回転を伝達する。第1回転軸145の歯車145bは、第2回転軸146の歯車146aと噛み合い、さらに第2回転軸146の歯車146cは、第3回転軸147の歯車147aと噛み合う。第1〜第3回転軸の回転角度は、角度検出器S1〜S3によってそれぞれ検出される。第1系列の歯車機構141の噛み合わされた歯車の変速比は、(m1±1)/m1に設定される。
【0128】
第2系列の歯車機構142は、図示されるように第4、5回転軸148,149に歯車148a,148b,149aが取り付けられ、モータ143の回転は、第1回転軸145の歯車145cから歯車148a,148bを経由して歯車149aに伝達される。第1、2回転軸の回転角度は、角度検出器S3,S4によってそれぞれ検出される。第2系列の歯車機構142の噛み合わされた歯車の変速比は、(m2±1)/m2に設定される。
【0129】
モータ143の回転は、歯車144aおよび歯車145aを介して1/Nに減速され、第1回転軸145に伝達される。第1回転軸145の回転は、歯車145bから第1系列の歯車機構141へ、また歯車145cから第2系列の歯車機構142へ伝達される。第1系列の歯車機構141の角度検出器S1〜S3、および第2系列の歯車機構142の角度検出器S1,S4,S5によって検出された角度検出値に基づいて求められる周期信号は、第1実施例において説明された周期信号の算出方法と同じである。各系列で求められた周期が互いに素である場合、それらの周期の最小公倍数の周期の回転数を検出することができることは特許文献2,3に記載されているとおりである。したがって、例えば、第1,2系列の周期信号がそれぞれC1,C2周期であると、C1,C2の最小公倍数の周期信号を生成することにより、その最小公倍数の多回転検出が可能となる。
【0130】
図14の伝達機構140において、m1を15、m2を16とし、Nを10とすると、伝達機構140が検出することのできる多回転回転数は、次のとおりとなる。すなわち、第1系列の歯車機構141および第2系列の歯車機構142は、3段の回転軸により形成されているので、段落0038に記載されているように、それぞれm12=225周期,m22=256周期の周期信号を作成することができる。それらの周期は互いに素であるので、それらの最小公倍数は、225周期×256周期=57,600周期となる。さらに、第1回転軸145はモータ回転軸144に対して1/10に減速されているので、モータ回転軸の検出可能な多回転検出範囲は、その10倍である576,000回転となる。
【0131】
以上のように、上記第3実施例では、第1実施例の伝達機構を並列に設け、しかも並列に設けた各伝達機構から求められる回転数の検出範囲あるいは周期信号の周期を互いに素とすることにより、回転角検出装置の多回転検出範囲を容易に拡大することができる。また、上記第3実施例は、2つの並列な伝達機構を設けるが、さらに並列な伝達機構を設けることにより、より広い多回転回転角検出範囲を有する回転角検出装置を実現することができる。
【0132】
なお、上記実施例では、第1回転軸の角度検出器として光学式エンコーダが、第2回転軸から第4回転軸の角度検出器としてMR素子を使ったMR回転角センサが使用されているが、本発明を実施するためには、角度検出器のタイプに制限されるものではない。また、伝達手段として、ギアが使用されているが、回転角を変速する手段は、ギアに限定されるものではなく、ベルト、チェーン、トラクションドライブなどの変速機を含む。さらに、上述した(m±1)/mは、変速比を意味しており、実施例では伝達手段としてギアを用いて説明しているので、m,m±1はギアの歯数に対応しているが、必ずしもギアの歯数に限定されるものではない。
【0133】
また、上記本実施例では、回転角を検出するための基本単位量をu=1(REV)
あるいはu=1000(Pulse/REV)の例を示したが、各回転軸の基本単位量を揃えている限り、u=360(°)やその他どのような単位量を使用してもよい。
【0134】
さらに、上記本実施例では、軸倍角1Xの検出器を使った場合の例を示したが、軸倍角nXの検出器(回転軸が1回転すると、n周期の信号を出力する)を使った場合でも同様に多回転回転角の計算が可能である。その場合、多回転回転角の検出範囲は1/nとなる。なお、軸倍角の異なる検出器を使用しても、基本単位量を合わせる計算処理を行なえば、軸倍角の異なる検出器を用いても多回転回転角を計算することができる。
【符号の説明】
【0135】
11〜15,23〜26,73〜75 回転軸
11a,12a,12b,13a,13b,14a,14b,23a,24a,24b,25a,25b,26a,26b,73a,74a,74b,75a ギア
21,71 モータ
22 光学式アブソリュート・エンコーダ
28,82 信号処理回路
29a,29b,29c 磁石
30a,30b,30c MR回転角センサ
S1〜Sn 角度検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転角を検出する装置およびその回転角の計算方法に関し、さらに詳しくは、バッテリのバックアップ等の手段を用いなくても、多回転アブソリュート回転角を検出することのできる改良された回転角検出装置およびその回転角の計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転角検出装置は、例えば、モータ回転軸の回転角を検出し、その検出値に応答してそのモータにより駆動される工作機械等の移動体の位置を制御する。移動体の位置を広範囲かつ高精度に制御するために、回転角検出装置は、モータ回転軸を多回転かつ絶対回転角で検出できることが望ましい。
【0003】
このような回転角検出装置として、特開2010−44055号公報(米国特許出願番号第12/168,151号に対応)は、誘導性マルチターン式エンコーダを開示する。この誘導性マルチターン式エンコーダ10は、直列にかつ多段に接続されたギア付の円形ディスク41−46を具備し、それらの内のディスク42,44,46の回転角を検出することにより多回転の角度検出を実現する。この先行技術文献における多回転の角度を検出することのできる範囲は、入力回転軸に対する最終段のディスク46の減速比で決定される。入力回転軸である回転シャフト20は、円形ディスク41と1:4のギア減速比で機械的に接続され、後続のギア付の円形ディスク41と42、42と43、43と44、44と45、及び、45と46も、それぞれ1:4のギア減速比で機械的に接続される。このような1:4のギア減速を6段実行することにより、このマルチターン式エンコーダ10は、4096回転の多回転の検出範囲を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−440558号公報
【特許文献2】特開2002−107178号公報
【特許文献3】特許第3967963号明細書
【特許文献4】特公平05−38243号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】林幸一、外4名、「バッテリレス多回転検出方式の超高分解能小型アブソリュート・エンコーダの開発」、精密工学会誌、2000年、Vol.66、No.8、p1177−1180
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した誘導性マルチターン式エンコーダ10は、減速された円形ディスクの回転角から多回転回転角を直接に求めるので、多回転検出範囲を広く設定するために、減速比を大きくする必要がある。その結果、このような誘導性マルチターン式エンコーダ10は、その機構が複雑でかつ大きくなるとともに、コストが上昇するという課題を有する。
【0007】
上記課題を改善するために、「バッテリレス多回転検出方式の超高分解能小型アブソリュート・エンコーダの開発」(精密工学会誌、2000年、Vol.66、No.8、p1177−1180)に紹介されたエンコーダ、及び、特開2002−107178号公報に開示されたレゾルバは、回転入力軸に対して並列に異なる変速比で接続された回転軸の回転角を検出するための角度検出器をそれぞれ設け、それらから得られる回転角情報を基に多回転絶対位置を検出する。
【0008】
しかしながら、並列的に異なる変速比で接続された複数軸の回転角の関係から多回転情報を求める方式では、多回転の角度検出範囲は、一般に各軸の角度検出信号を処理して得られる周期信号の最小公倍数で決まる。上記先行文献に記載されたような多回転アブソリュート回転角を検出する方式では、多回転の角度検出範囲を広く取るために、互いに素となる変速を選択する必要があり、その結果ギアの種類が多くなるという問題がある。また、互いに素となる数は限られているため、設計できる多回転の角度検出範囲の自由度が制約されるという問題もある。さらに、他のアプリケーションに適応する多回転の角度検出範囲は様々であるので、実際に実現できる多回転の角度検出範囲は、互いに素となる値の最小公倍数という特殊な値に限定されるという不便さが残る。さらにまた、上述の方式では、各軸の回転角情報から多回転絶対位置が求められるが、その演算が複雑であるという問題がある。
【0009】
多回転絶対位置を求める演算が複雑となる上記問題に対処するために、特開2002−107178号公報は、各回転軸の回転角から求められた値と主回転軸の回転数との関係を示すテーブル(図9)をメモリに予め記憶しておき、各回転軸の回転角から求められた値に対応する主回転軸の回転数をそのテーブルから選択する絶対位置検出方法を開示する。しかしながら、多回転検出範囲を広く取るためには、その多回転検出範囲(0から20357)に対応する多くのメモリが消費されるという問題が存在する。
【0010】
また、特許第3967963号公報は、2つの周期の内の一方のみの演算結果をメモリに記憶することにより、メモリの消費を節約する演算方法を開示する。しかしながら、この方法においても、メモリを使用することに関し、上述の検出方法と同じ問題を有する。
【0011】
さらに、多回転アブソリュート回転角を求める演算方法に関して、特公平05−38243号公報は、軸の回転角に対する複数の回転角検出器からの検出値の関係式をつくり、各軸の検出値を同時に満足する、軸の回転角を逐次代入し判別するプログラムを使って、多回転アブソリュート回転角を探索する。多回転検出範囲が広くなると、探索する組み合わせが多くなるため計算に時間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するためになされ、第1回転軸から第nmax回転軸へ回転を伝達する伝達機構であって、第1回転軸の回転角θ1に対して、第n回転軸の回転角θnが
【数1】
の関係を満たす伝達機構を具備する多回転アブソリュート回転角検出装置に適用されることを特徴とする。ここで、nmax及びmは3以上の整数であり、かつnは1≦n≦nmaxである。
【0013】
本発明に係る多回転アブソリュート回転角検出装置は、各回転軸に取り付けられた角度検出器によって第n回転軸の1回転内の角度検出値pnを検出する。検出された角度検出値pn基づいて係数Rn−2を決定し、その決定された係数Rn−2を次の回転角計算式に代入して回転角計算値θ1(mn−1)’を求める。回転角計算値θ1(mn−1)’は、第1回転軸の多回転回転角を表し、回転角の検出範囲は、0〜mn−1回転である。
【数2】
上記回転角計算式の数値nを2からnmaxまで繰り返すことにより、係数R0から係数Rnmax−2までの値を順次決定し、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mn−1)’を求める。ここで、係数R0〜Rnmax−2は0およびm−1を含む0からm−1の整数、uは基本単位量、および回転角計算値θ1(m0)’は第1回転軸の角度検出値p1である。
【0014】
上記係数Rn−2は、回転軸数がnである場合に、第1回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’を求める回転角計算式の計算結果が以下に示す第1回転軸の回転角検出値θ1(mn−1)に近似するように決定される。回転角検出値θ1(mn−1)は、第n回転軸までの角度検出値p1〜pnから以下の式で求められる周期信号S(mn−1)にmn−1を乗じて求められる。回転角検出値θ1(mn−1)の回転角検出範囲は、0〜mn−1回転である。
【数3】
により求めることができ、ここで、k1,k2,・・・knは、(x+1)n−1の展開式k1×x0+k2×x1+k3×x2・・・knxn−1におけるxのn−1次項の係数であり、mod(x,a)は、xをaで割ったときの余りを求める剰余演算であり、Jは、隣接する回転軸間の変速比が−(m−1)/mのとき、J=1であり、変速比が−(m+1)/mのとき、J=−1である符号調整項である。また角度補正値pn’は、計算された回転角計算値θ1(mn−1)’を、次式の角度補正値計算式、
【数4】
に代入して計算することができる。
【0015】
また、係数Rn−2は、
【数5】
の計算結果に最も近似した整数を決定することより求めることができる。
【0016】
さらに、係数Rn−2は、
【数6】
を演算することにより求めることができ、INT(x)は、数値xの小数点以下を切り捨てる演算である。
【0017】
また本発明は、上記係数Rn−2を以下の式で示される角度補正値pn’が第n回転軸の角度検出値pnに最も近似するように決定し、回転角計算値θ1(mn−1)’を求めものである。
【数7】
上記角度補正値計算式の数値nを2からnmaxまで繰り返すことにより、係数R0から係数Rnmax−2までの値が順次決定される。
【0018】
これらの決定された係数R0〜Rnmax−2を次式の回転角計算式、
【数8】
に代入して第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を求める。ここで、係数R0〜Rnmax−2は0およびm−1を含む0からm−1の整数、uは基本単位量、および角度補正値p1’は第1回転軸の角度検出値p1である。
【0019】
上記係数Rn−2は、
【数9】
の計算結果に最も近似した整数を決定することにより求めることができる。
【0020】
さらに、係数Rn−2は、
【数10】
を演算することにより求めることができ、INT(x)は、数値xの小数点以下を切り捨てる演算である。
【0021】
さらに、本発明は、上述した伝達機構を複数系列設け、それぞれの系列から周期信号、角度補正値を求め、多回転アブソリュート回転角を演算する方法、および装置である。特に、周期信号の周期を互いに素となるようにmが設定される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、角度検出器の検出値に誤差を含んでいても、角度検出器で生じた検出誤差を抑圧し、高精度な多回転回転角検出値を計算することが可能となる。特に、この計算により、第2回転軸以降に取り付けられた角度検出器で生じた検出誤差を打ち消し、第1回転軸の角度検出器で生じた検出誤差内に抑えることができる。その結果、回転軸を増やすことにより多回転回転角の検出範囲を拡大しても、計算された多回転回転角検出値は、第1回転軸の検出誤差内に抑えることが可能となる。
【0023】
また、本発明の角度検出器に要求される精度は、係数Rn−2の判別に必要な精度を有していれば良い。各軸の検出値を直接的に計算して多回転角度を得るのに較べて、精度を低くできるので多回転角度検出装置のコストを低減させることが可能になる。
【0024】
さらに、本発明が用いられる多回転角度検出装置は、互いに素となる関係の変速を必要としないため、使用するギアの種類が少なくてすむ。また、多回転回転角の検出範囲を自由に設計することできる。さらに、多回転の周期計算において、メモリ参照を必要としないため、多くのメモリを消費してメモリ部品のコストの上昇やサイズの増大を招くことがない。
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明するが、図面及びその図面に対応する説明は、あくまで本発明を実施するための例示的な記述であり、請求項に係る発明が本実施例に限定されることを意図するものではない。また、本発明は、請求項で定義された用語によってのみ解釈され、その用語は、その一般的な解釈に従うものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例に係る多回転アブソリュート回転角を求める原理を説明するための回転角検出装置の伝達機構の構成ブロック図である。
【図2】本発明の一実施例である多回転アブソリュート回転角を検出するための回転角検出装置の構成図である。
【図3】本発明の一実施例において、モータ回転軸の多回転アブソリュート回転角を算出するための回転角検出装置のブロック図を示す。
【図4】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角と第1〜第4回転角との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角と各軸の検出値p1,p2,p3,p4との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角に対する周期信号の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角と各軸の回転角との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角に対する各軸の角度検出器から出力される角度検出値を示す。
【図9】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角に対する周期信号の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角と係数R0〜R2との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の一実施例において、第1回転軸の回転角計算値における整数部分の構成を説明するためのグラフである。
【図12】本発明の第1の実施例において、第1回転軸の回転角計算値を計算処理する手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施例において、第1回転軸の回転角計算値を計算処理する手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第3の実施例に係る回転角検出装置の伝達機構の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照して、本発明の第1の実施例に係る多回転アブソリュート回転角を求める原理を説明する。図1に示される回転角検出装置の伝達機構10の構成ブロック図において、モータ出力軸に結合された第1回転軸11は、角度検出器S1に接続され、第1回転軸11の1回転内の角度を示す回転角θ1に対応する検出値p1を検出する。同様に、角度検出器S2−Snは、第2〜第n回転軸12〜15の角度を示す回転角θ2〜θnに対応する検出値p2〜pnをそれぞれ検出する。第1〜第n回転軸11〜15には、歯数m−1(あるいはm+1)及び歯数mのギアがそれぞれ固定されており、第1回転軸11のギア11aは、第2回転軸12のギア12bに噛み合わされる。さらに第2回転軸12に固定されているギア12aは、第3回転軸13のギア13bに噛み合わされる。このように、伝達機構10は、隣接する回転軸間において、歯数m−1(あるいはm+1)を有するギアが歯数mを有するギアに噛み合うギア機構を形成する。
【0028】
本発明に係る実施例は、伝達手段としてギア機構を用いて説明するが、本発明に係る伝達機構は、ギアに限定されるものではなく、回転軸の回転力を伝達することができるあらゆる要素を含む。上述ように配置されたギア機構において、第1回転軸11の多回転アブソリュート回転角は、角度検出器S2−Snによって検出された第1〜第n回転軸11〜15の検出値p1〜pnから以下の計算式を実行することにより算出される。
【0029】
図1において、第1〜第n回転軸11〜15に、歯数m−1及び歯数mのギアがそれぞれ噛み合わされている場合を想定すると、ギア変速比は、(m−1)/mで表される。第1回転軸11から第n回転軸15へ直列に配置されるギア機構において、噛み合わされるギア対が同一のギア変速比(m−1)/mを有するので、第1回転軸11の回転角をθ1とすると、第n回転軸15の回転角θnは、式(1)で表される。
【0030】
【数11】
なお、式(1)において(m−1)/mの前のマイナス記号は、第1回転軸11の回転方向をプラス(正)で表現し、その回転と逆の回転方向をマイナス(負)で表現する。
【0031】
図1に示す伝達機構が第1回転軸から第4回転軸によって形成されるギア機構で、モータ出力軸に結合された第1回転軸の回転角をθ1と仮定すると、第2回転軸の回転角θ2、第3回転軸の回転角θ3、及び、第4回転軸の回転角θ4は、式(1)からそれぞれ次のように求められる。
【0032】
【数12】
【0033】
さて、角度検出器S1〜Snは、第1〜第n回転軸11〜15の回転角度(例えば、0(°)から360(°)を表す検出値)を検出する検出器であるから、第n回転軸がθnだけ回転すると、角度検出器Snの検出値pnは、式(6)で表現することができる。
【数13】
ここで、式y=mod(x,a)は、一般にxをaで割ったときの余りyを算出する剰余演算と定義される。すなわち、ある回転軸の回転角の単位を度(°)とし、1周期の回転角を表す数値(基本単位量)であるuを360(°)とする場合、検出値pnは、回転角に応じて0から360(°)の値を示す。たとえば、回転角θnが90(°),510(°)である場合、検出値pnは、それぞれ90(°),150(°)となる。なお、回転角θ=−1(°)とする場合は、検出値pは−1(°)ではなく、359(°)として扱う。回転角θnとuは、単位が一致してればどのような単位を採用してもよい。たとえば、単位量を1(回転)とすると、検出値pnは、回転角に応じて0から1の値を示す。
【0034】
角度検出器の検出値についてさらに敷衍すると、第1回転軸11から第n回転軸15の回転角を検出する角度検出器S1〜Snは、回転軸が1回転すると1周期の検出値を出力する。例えば、角度検出器S1〜Snは、1周期の単位量をuとすると、回転軸の回転角に応じて検出値0から検出値uまで単調に増加し、回転軸が1回転すると検出値0に戻るのこぎり歯状の検出信号を出力する。単位量uの単位は、1周期当たりの回転角を表す数値であり、回転角の単位と同じであれば、どのような単位であってもよいことは上述したとおりである。
【0035】
次に、式(2)から(5)で表される回転角θ1からθ4を式(6)に代入すると、角度検出器S1〜Snの検出値p1〜p4は、第1回転軸の回転角θ1から式(7)〜(10)によって算出される。
【0036】
【数14】
【0037】
さて、第1回転軸のm回転を1周期とする周期信号を想定すると、その周期信号S(m1)を表す剰余式は、
【数15】
と表現できるので、mod(a+b,u)=mod(mod(a,u)+mod(b,u),u)の関係から、第1回転軸の検出値p1、及び、第2回転軸の検出値p2を用いて、上記周期信号を表す剰余式を式(11)のように変形することができる。
【数16】
【0038】
また、第1回転軸のm2回転を1周期とする周期信号を想定すると、その周期信号S(m2)を表す剰余式は、
【数17】
と表現できるので、第1〜3回転軸の検出値p1,p2,p3を用いて上記周期信号S(m2)を表す剰余式を式(12)のように変形することができる。
【数18】
【0039】
さらに、第1回転軸のm3回転を1周期とする周期信号を想定すると、その周期信号S(m3)を表す剰余式は、
【数19】
と表現できるので、第1〜4回転軸の検出値p1,p2,p3,p4を用いて上記周期信号S(m3)を表す剰余式を式(13)のように変形することができる。
【数20】
【0040】
一般に、第1回転軸のmn−1回転を1周期とする周期信号を想定すると、その周期信号を表す剰余式は、
【数21】
と表現できるので、式(11)から式(13)を演繹すると、周期信号S(mn−1)は、式(14)の周期信号計算式として表すことができる。ここで、nは、回転軸の数である。
【数22】
ただし、k1,k2,・・・,knは、(x+1)n−1の展開式の係数に対応する。すなわち、二項定理から、(x+1)n−1は、k1×x0+k2×x1+・・・+kn×xn−1に展開される。
【0041】
したがって、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角検出値θ1(mn−1)は、式(14)の周期信号にmn−1を乗じることにより計算され、式(15)として表される。
【数23】
式(15)に示されるように、各回転軸の角度検出器の検出値p1〜pnを代入することにより、第1軸の多回転回転角検出値θ1(mn−1)を求めることができる。nは、回転軸の軸数である。
【0042】
なお、上述の計算は、ギア変速比が(m−1)/mであるギア機構を想定しているが、本発明は、ギア変速比が(m+1)/mであるギア機構に対しても適用可能である。上述した周期関数は、以下説明するように符号調整項を導入することによりそれらを区別することができる。
【0043】
上述と同様に、ギア変速比が(m+1)/mであるギア機構に対する場合の周期関数を求めると次のようになる。すなわち、第n回転軸の角度検出値pnは、次のように表される。
【数24】
従って、第1〜4回転軸の角度検出値p1〜p4は、次のように求められる。
【数25】
【0044】
次に、周期関数S(m1)〜S(m3)を求めると次のとおりとなる。
【数26】
上式において、p1+p2の演算結果が−(1/m)となるので、−1が乗じられる。
【数27】
【数28】
【0045】
上式において、p1+3p2+3p3+p4の演算結果が−(1/m3)となるので、−1が乗じられる。このように、ギア変速比が(m+1)/mの場合、nが偶数の場合、剰余式内の演算結果がマイナスとなるので、Jを−1とする符号調整項Jn−1が周期関数内に導入される。すなわち、周期関数S(mn−1)は、次式のように表される。
【数29】
ここで、Jは、隣接する回転軸間の変速比が−(m−1)/mのとき、J=1であり、前記変速比が−(m+1)/mのとき、J=−1である。
【0046】
ここで、図1に示されるギア機構において、例えば、回転軸の軸数を4、歯数mを32(駆動側回転軸の歯数をm−1、受動側回転軸の歯数をmとする)、単位量uを131072(uは、角度検出器S1の検出値p1が17ビット(=217)の分解能を有することに対応する。)と仮定すると、式(14)は、
【数30】
となり、第1回転軸の回転角検出値θ1(m3)は、式(16)により求められる。
【数31】
【0047】
したがって、第1〜第4回転軸の回転角度を示す検出値p1〜p4を検出することにより、上記式(16)から、32768(=323)回転で1周期となる第1回転軸の多回転回転角の検出を131072の分解能で実行することが可能となる。
【0048】
上述した原理に基づいて、多回転アブソリュート回転角を検出する実施例について、以下詳細に述べる。
【0049】
図2は、本発明の第1の実施例である多回転アブソリュート回転角を検出するための回転角検出装置20の構成図である。サーボモータ21の出力回転軸(図示せず)の反対側に設けられた第1回転軸23には、光学式アブソリュート・エンコーダ22が連結されると共に、歯数31を有するギア23aが固定される。ギア23aは、第2回転軸24に固定された歯数32を有するギア24bと噛み合わされる。また、第2回転軸24に固定された歯数31を有するギア24aは、第3回転軸25に固定された歯数32を有するギア25bと噛み合わされる。さらに、第3回転軸25に固定された歯数31を有するギア25aは、第4回転軸26に固定された歯数32を有するギア26bと噛み合わされる。ギア24aとギア24b、ギア25aとギア25b、及び、ギア26aとギア26bは、一体成型された同一形状の樹脂製ギアであり、回転軸とともに一体成型されてもよい。このように、回転角検出装置20は、サーボモータ21の回転が直列に接続されたギア機構を介して第1回転軸23から第4回転軸26に伝達される構造を有する。
【0050】
光学式アブソリュート・エンコーダ22は、第1回転軸23の1回転内の絶対角度θ1を17ビットの分解能(217=131072P/Rev)で検出する。光学式アブソリュート・エンコーダ22は、プリント基板27に実装された信号処理回路28と電気的に接続されており、光学式アブソリュート・エンコーダ22によって検出された第1回転軸23の回転角情報である検出値p1は、信号処理回路28に送られる。
【0051】
また、第2〜第4回転軸24,25,26の軸端には、ギア24a,25a,26aの径方向と同一方向に2極の着磁された磁石29a,29b,29cがそれぞれ取り付けられ、軸の回転とともに回転する。磁石29a,29b,29cと対向する位置にMR素子を使ったMR回転角センサ30a,30b,30cが基板27上に実装される。MRセンサ30a,30b,30cは、磁石29a,29b,29cが1回転すると、90°位相のずれた2つの正弦波状の電圧が1周期出力する。MRセンサ30a,30b,30cで検出された検出電圧は、それぞれ信号処理回路28に送られる。
【0052】
スペーサ31を用いて形成された樹脂製の構造体32は、上述した第2〜第4回転軸24〜26を保持する。図2に示される第1〜第4回転軸23〜26は、説明を簡易にするために、構造体32内に直線状に保持されているが、構造体32内の空間を有効に利用するために、第1〜第4回転軸23〜26の中心軸が曲線上に配置されてもよい。
【0053】
次に、図3は、サーボモータ21の多回転アブソリュート回転角θ1(mn−1)を算出するための回転角検出装置20のブロック図を示す。図3において、図2に示される要素と同一又は類似の要素は、同一の参照番号が付される。
【0054】
図3において、サーボモータ21の回転軸である第1回転軸23の1周期の回転角を示す検出値p1がエンコーダ22によって検出され、信号線33を経由して信号処理回路28内の通信ポート34に送られる。エンコーダ22から出力される検出値p1は、17ビットの分解能を有する。通信ポート34によって受信された検出値p1は、第1回転軸23の絶対角度を算出するためにさらに多回転演算回路35に送られる。
【0055】
第1回転軸23の回転は、ギア機構によって第2〜第4回転軸24〜26に伝達される。第1〜第4回転軸23〜26の回転角θ1〜θ4は、例えばmを32とし、また回転角を回転数で表すと仮定すると、第1回転軸の回転数と第1〜第4回転角θ1〜θ4との関係は、図4に示されるとおりとなる。ここで、図4の横軸は、第1回転軸の回転数を示し、縦軸は、各軸の回転角θ1〜θ4を表す。縦軸のマイナスは、軸の回転方向が第1回転軸と逆向きであることを示す。例えば、第1回転軸の回転数が32であるすると、第2回転軸は、θ2=−31となり、第1回転軸とは逆に31回転することが分かる。これらの関係は、式(2)から(5)に示されるとおりである。
【0056】
図3に戻り、第1〜第4回転軸23〜26の回転角は、MR素子角度検出器30a,30b,30cによってそれぞれ検出され、90°位相のずれた2つの正弦波状の検出電圧(sin成分,cosin成分)が信号線33a,33b,33cを経由してAD変換器37にそれぞれ送られる。2つの検出電圧は、AD変換器37でアナログ値から例えば12ビットのデジタル値へ変換され、それぞれRD変換演算回路38へ送られる。RD変換演算回路38は、受信した2つのデジタル値(sin成分,cosin成分)から角度が算出される。この角度は、12ビットの分解能を有するが、エンコーダ22の検出値p1の分解能に合わせるために17ビットに拡張された検出値p2,p3,p4が求められる。具体的には、12ビットの下位に5ビットに0を加え、17ビットの検出値とする。なお、MR素子角度検出器30a,30b,30cの検出電圧は、MR素子自体のばらつきや、磁気・回路・機械精度などの様々な要因で誤差を含むため、検出電圧をそのまま角度に変換するのではなく、電圧信号のオフセット補正、振幅補正を施し、実際の回転角に対する誤差補正や、各回転軸の検出値に関連する補正など様々な精度補正が施される。このような処理が施された検出値p2,p3,p4は、多回転演算回路35に送られる。図5に、上述のようにして求められた検出値p1,p2,p3,p4の第1回転軸の回転数に対する変化を示す。なお、多回転演算回路35が受け取る検出値p1,p2,p3,p4は、17ビットの分解能を有するので、図5の縦軸に示されるように、各軸の検出値は、各軸が1回転する毎に、0と131072との間を変化する。
【0057】
多回転演算回路35は、通信ポート34及びRD変換演算回路38から検出値p1,p2,p3,p4を受け取り、それらの値を式(16)に代入することにより、mが32、分解能が17ビット(217=131072)、及び、多回転範囲が15ビット(215=32768)とする場合の多回転アブソリュート回転角を算出し、出力することができる。
【0058】
図6は、式(11)〜(13)によって求められるそれぞれの周期信号を表すグラフである。ここで、横軸は、第1回転軸23の回転数を表し、回転数0から32768に亘るが、簡略にするため途中を一部省略している。図6下段のグラフは、式(11)に対応し、32回転を1周期とする周期信号である。第1,2回転軸23,24の検出値p1,p2を式(11)に代入して求められる周期信号は、第1回転軸23の回転数が0から32までのアブソリュート回転角を検出することができることを示す。また、図6中段のグラフは、式(12)に対応し、1024回転を1周期とする周期信号である。第1〜3回転軸23〜25の検出値p1,p2,p3を式(12)に代入して求められる周期信号は、第1回転軸23の回転数が0から1024までのアブソリュート回転角を検出することができることを示す。さらに、図6上段のグラフは、式(13)に対応し、32768回転を1周期とする周期信号である。第1〜4回転軸23〜26の検出値p1,p2,p3,p4を式(13)に代入して求められる周期信号は、第1回転軸23の回転数が0から32768までのアブソリュート回転角を検出することができることを示す。
【0059】
上述した多回転アブソリュート回転角検出装置は、回転軸を増やすことにより、広い多回転検出範囲を達成することができるが、以下説明するように、正確な多回転の回転角検出値を算出するためには、回転軸の検出値を測定する各角度検出器に対して高い精度を要求する。一般に、各角度検出器によって測定された検出値は誤差を含んでいる。そこで、第1回転軸の多回転回転角の計算値を一定の精度に保つために、各角度検出器がどの程度の誤差を許容できるのかを以下検討する。例えば、n軸で構成される多回転アブソリュート回転角検出装置の第1回転軸の回転角検出値θ1(mn−1)は、式(15)に示されるように、回転軸数nを2,3,4とする場合、式(11)〜(13)で表される周期信号S(m)〜S(m3)に回転角検出範囲m1,m2,m3をそれぞれ乗じることにより算出され、式(17)〜(19)で表される。
【0060】
軸数が2である場合
【数32】
軸数が3である場合
【数33】
軸数が4である場合
【数34】
ここで、mは第1回転軸の歯数であり、式(11)〜(13)中の単位量uは、1とする。すなわち、各周期関数は、第1回転軸の回転角に応じて、0から1の値をとる。
【0061】
各回転軸の検出誤差の絶対値をenとすると、第1回転軸の回転角検出値θ1(mn−1)が1回転(±0.5rev)以下の精度を保つためには、次式(20)〜(22)を満たす必要がある。
軸数2の場合
【数35】
軸数3の場合
【数36】
軸数4の場合
【数37】
【0062】
各回転軸の検出誤差がほぼ等しいeと仮定すると、検出誤差は、以下の範囲に入らなければならない。
軸数2の場合
【数38】
軸数3の場合
【数39】
軸数4の場合
【数40】
【0063】
式(23)〜(25)から、軸数nの場合の誤差範囲を演繹すると、次式(26)のように表される。
【数41】
式(26)から理解されるように、軸数nが増加すると、多回転検出範囲は広くなるが、その増加に伴って各検出軸の角度検出器に対して要求される検出精度も指数的の高くなる。要求される高い検出精度を角度検出器に求めることは、多回転検出装置のコストを上昇させる原因となる。そこで、各回転軸の角度検出器に対して要求される検出精度を抑えつつ、角度検出器の検出誤差に起因する影響を低減させる多回転回転角を求めるための演算処理が必要となる。
【0064】
そこで、図1に示される伝達機構10を用いて、角度検出器の検出誤差に起因する影響を低減させる多回転角度計算値を求める計算方法を以下説明する。一般に、整数Iは、mのべき乗mnの列に展開することができる。具体的には、kを0からnの整数、かつaiを0≦ak<nの整数とすると、
I=a0m0+a1m1+a2m2+・・・aimi+・・・+anmn
と表現することができる。例えば、mが10である場合、整数1056は、6×100+5×101+0×102+1×103のように展開することができる。この表現は、10進数と呼ばれる。以下の説明において、多回転アブソリュート回転角の回転数の部分は、このようなm進数の展開を利用する。
【実施例1】
【0065】
さて、図1において、第1回転軸11の多回転アブソリュート回転角は、第1回転軸11の1回転内の角度検出値p1と第1回転軸11の多回転回転数との和で数学的に表現することができる。そして、この多回転回転数をm進数(理由は以下に示される)で表すと、第1回転軸の多回転回転角計算値θ1(mn−1)’は、次式(27)の回転角計算式で表現することができる。
【数42】
ここで、mは第1回転軸の歯数に対応し、nは軸数であり、係数R0〜Rn−2は、0およびm−1を含む0からm−1の整数であり(0≦R0〜Rn−2<m)、そしてuは、基本単位量とする。図1に示される伝達機構10の構造では、回転軸が1軸増加する毎に多回転を検出することのできる範囲がm倍拡大するので、m進数を用いて式(27)の多回転回転数部を表現すると都合が良い。
【0066】
第1回転軸11の多回転回転角検出値θ1(mn−1)は、各回転軸で検出された各検出値p1〜pnを式(15)に代入することにより求められるが、本質的に回転角検出値θ1(mn−1)と回転角計算値θ1(mn−1)’は、係数R0〜Rn−2を適切に選択することにより、ほぼ等しくすることができる。すなわち、回転角計算値θ1(mn−1)’の多回転回転数の部分が回転角検出値θ1(mn−1)の回転数の部分と等しくなるように、係数R0〜Rn−2を適切に選択すると、回転角計算値θ1(mn−1)’に含まれる回転角計算値の誤差は、第1回転軸の検出値p1に起因する検出誤差のみにすることができる。以下、各回転軸の検出器により検出した検出値p1〜pnから回転角計算値θ1(mn−1)’を求めるために、係数R0〜Rn−2を算出する方法について説明する。
【0067】
説明を簡略にするために、図1に示される伝達機構10において、回転軸数nmaxを4、第1回転軸の歯数mを4、基本単位量uを1と仮定する場合、第1回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’は、式(27)から次式(28)のように表現することができる。
【数43】
上記の条件の下で、係数R0〜R2の算出方法について説明する。
【0068】
まず、第1回転軸の回転角θ1と第2,第3,第4回転軸の回転角θ2,θ3,θ4は、式(1)に示される関係から明らかなように、次式(29)〜(31)に示される関係をそれぞれ有する。
【数44】
したがって、第1回転軸の回転角θ1に対する第2,第3,第4回転軸の回転角θ2,θ3,θ4は、図7に示される。
【0069】
次に、検出値pnが第n回転軸における1回転内の検出値を示すから(この例では、基本単位量uが1であるから、0から1の値)、第n回転軸の回転角θnと検出値pnは、厳密には式(6)に示されるが、実際には角度検出器に誤差を含むためpnは、mod(θn,u)にほぼ等しい関係を有する。したがって、各回転軸の検出値p1,p2,p3,p4は、各回転軸の回転角θ2,θ3,θ4に上記式(29)〜(31)を代入すると、第1回転軸の回転角θ1と各回転軸の検出値p1,p2,p3,p4との関係は、次式(32)〜(35)のとおりとなる。
【数45】
したがって、第1回転軸の回転角θ1に対する各回転軸の検出値p1,p2,p3,p4は、図8に示される。
【0070】
周期信号S(mn−1)は、角度検出値pnに誤差が含まれない場合、式(14)で示される関係を有する。誤差を含む角度検出値pnを使用して周期信号S(mn−1)を求めると、それらの誤差が演算に影響し、拡大する。そこで、式(27)で求めた回転角計算値θ1(mn−1)’は、第1回転軸の角度検出値p1以外の項には誤差を含んでいないので、誤差を含む角度検出値pnの代わりに、次式(36)の角度補正値計算式で計算される誤差を含まない角度補正値pn’が周期信号S(mn−1)を算出するために用いられる。
【数46】
【0071】
各回転軸の角度補正値と周期信号との関係は、次式(37)のように表される。
【数47】
ここで、角度補正値p2’〜pn−1’は、角度検出値p2〜pn−1に対する補正値であり、Jは、隣接する回転軸間の変速比が−(m−1)/mのとき、J=1とし、変速比が−(m+1)/mのとき、J=−1とする符号調整項である。
【0072】
第1回転軸の4(=m1),16(=m2),64(=m3)回転をそれぞれ1周期とする周期信号S(m),S(m2),S(m3)を、角度補正値pn’を考慮に入れて、式(11)〜(13)から求めると、次式(38)〜(41)のように表現される。なお、第1回転軸の周期信号S(m0)は、角度検出値p1そのものである。また、剰余計算では、mod(a,c)+mod(b,c)=mod((a+b),c)、およびb×mod(a,c)=mod(a×b,c)の関係が成立するので、周期信号S(m1)〜S(m3)は、次式(38)〜(41)のように変形される。
【数48】
【0073】
したがって、周期関数S(m1),S(m2),S(m3)と第1回転軸の回転角θ1との関係は、図9に示される。図9に示されるように、周期信号S(m1)は、第1回転軸が4回転角毎に、また周期信号S(m2)は、16回転角毎に、さらに周期信号S(m3)は、64回転角毎にそれぞれ0から1へ単調に増加するのこぎり波となる。
【0074】
上述した周期信号の性質から、次式(42)のように、周期関数S(mn−1)にmn−1を乗じると、mn−1までの第1回転軸の回転角検出値S(mn−1)を算出することができる。
【数49】
従って、nが1から4である場合の周期関数と第1回転軸の回転角θ1(mn−1)との関係は、式(43)〜(46)によって表される。
【数50】
【0075】
式(44)は、第1回転軸が4回転する毎に0から4に変化するのこぎり波を示す。また、式(45)は、第1回転軸が16回転する毎に0から16に変化するのこぎり波を示す。さらに、式(46)は、第1回転軸が64回転する毎に0から64に単調に増加するのこぎり波を示す。
【0076】
次に、上述された関係式から、式(27)に示される係数R0〜Rn−2を算出する算出方法を説明する。式(27)で示される回転角計算値θ1(mn−1)’と式(42)で示される回転角検出値θ1(mn−1)は、式(42)における係数R0〜Rn−2が自然数しかとらないので完全には一致しないが、近似する。すなわち、次式(47)
【数51】
が成立する。
【0077】
式(47)の回転角計算値θ1(mn−1)’に式(27)を代入すると、次式(48)が導出される。
【数52】
nが1〜4の場合、回転角計算値θ1(m0)’,θ1(m1)’,θ1(m2)’,θ1(m3)’は、それぞれ次式(49)〜(52)のように表される。
【数53】
【0078】
式(49)〜(52)に示される関係を演繹すると、回転角計算値θ1(mn−1)’は、次式(53)のように表現される。
【数54】
【0079】
回転角計算値θ1(mn−1)’は回転角検出値θ1(mn−1)とほぼ等しいことを考慮して、上式(47),(53)の関係から、次式(54)が得られる。式(54)の関係を満たす係数Rn−2を選択することにより、以下のとおり係数Rn−2が決定される。
【数55】
まず、式(54)右辺のθ1(mn−2)’を左辺に移動すると、式(55)が得られる。
【数56】
ここで、nを2、基本単位量uを1とすると、
【数57】
が得られる。ここで、式(44)に示される関係からθ1(m1)にmod(θ1,4)を、またθ1(m0)’は、式(47)に示されるように、θ1(m0)にほぼ等しいので、式(43)に示されるmod(θ1,1)を式(56)にそれぞれ代入すると、
【数58】
が成立する。ただし、mは4である。
【0080】
式(57)中のmod(θ1,4)は、高さが0から4まで上昇する周期4ののこぎり波であり、またmod(θ1,1)は、高さが0から1まで上昇する周期1ののこぎり波であるから、式(57)の係数R0は、図10の下段に示されるように、周期4である高さ1の3段の階段状波形を形成する。
【0081】
また、式(52)おいて、uを1、nを3として、上述と同様の処理を施すと、
【数59】
が成立する。
【0082】
式(58)中のmod(θ1,16)は、高さ16で周期16ののこぎり波であり、またmod(θ1,4)は、高さ4で周期4ののこぎり波であるから、式(58)で示される係数R1は、図10の中段に示されるように、周期16である高さ1の3段の階段状波形を形成する。
【0083】
さらに、式(54)おいてuを1、nを3として、上述と同様の処理を施すと、
【数60】
が成立する。
【0084】
式(59)中のmod(θ1,64)は、高さ64で周期64ののこぎり波であり、またmod(θ1,16)は、高さ16で周期16ののこぎり波であるから、式(59)の係数R2は、図10の上段に示されるように、周期64である高さ1の3段の階段状波形を形成する。
【0085】
式(28)で計算される回転角計算値θ1(m3)’の整数部分は、係数R0〜R2にそれぞれ1,4,16を乗じた合計であるから、その波形は図11に示されるとおりとなる。すなわち、回転角計算値θ1(m3)’は、この整数部分に第1回転軸の角度検出値p1を合計することにより求められることになる。
【0086】
ここで、式(54)から係数Rn−2を導出すると、次式(60)に変形される。
【数61】
uが1、nが2〜4の場合、係数R0〜R2は次式で示される。
【数62】
【0087】
係数R0〜Rn−2は整数であるので、例えば、次式(64)に示されるように、式(60)の右辺に0.5を加え、小数点以下を切り捨てることにより、係数Rn−2の整数が計算される。そして、式(64)のθ1(mn−1)にS(mn−1)×mn−1(式(42))を代入すると、式(65)が得られる。
【数63】
ここで、INT(x)は、数値xを小数点以下で切り捨てる演算を意味する。また、単位量をmとする剰余演算を行っているのは、係数Rn−2が0〜m−1の有効な範囲の計算結果を得るためである。以上のように、式(65)により係数R0〜Rn−2を計算するための一般式が得られた。
【0088】
次に、係数R0〜Rn−2を算出する式(65)を用いて、第1回転軸の多回転回転角計算値θ1(mn−1)’を具体的に求める。ここで、計算手順の説明を簡易にするために、回転軸の軸数nmaxを4、変速比を3/4(m=4)、基本単位量uを1として、第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’を求める。最初に、第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’を算出するに際して、第1回転軸の回転角θ1が53.5(rev)である場合の、各回転軸の理論的な角度検出値p1,p2,p3,p4を求める。
【0089】
第1回転軸の回転角θ1に対する第2,3,4回転軸の回転角θ2,θ3,θ4は、式(1)から次式のように表される。
【数64】
【0090】
また、軸倍角1の角度検出器(回転軸が1回転した場合、角度検出器は1周期の検出信号を出力する。)を使用した場合、各回転軸の角度検出値pnは、pn=mod(θn,1)で表されるから、各回転軸の理論的な角度検出値p1,p2,p3,p4は、次式で求められる数値を示す。
【数65】
【0091】
しかしながら、実際の角度検出器からの出力信号は誤差を含んでいるため、上記理論的な角度検出値p1,p2,p3,p4に例えば0.05(rev)の誤差を加えた以下の角度検出値が検出されたと仮定して、回転角計算値θ1(m3)’を算出する。
p1=0.500+0.05=0.550
p2=0.875+0.05=0.925
p3=0.094+0.05=0.144
p4=0.430+0.05=0.480
【0092】
回転軸の軸数nmaxを4、m=4、基本単位量uを1とすると、式(27)から明らかなように、回転角計算値θ1(m3)’は、次式(66)のように表される。
【数66】
したがって、回転角計算値θ1(m3)’を求めるために、式(37)、式(65)、式(27)、式(36)、をn=2,3,4に対して適用し、係数R0,R1,R2を順次計算する。
【0093】
係数R0,R1,R2を算出するための手順は、以下のとおりである。図12のフローチャートに示されるように、まず、回転軸数nmax(以下の例では、4)が設定され、カウンタ値nに2が設定される(ステップ121)。カウンタ値nが2のとき、角度検出値p1,p2から、式(39)により周期信号値S(m1)が算出される(ステップ122)。次に、その周期信号S(m1)に対応する係数R0を式(65)により求める(ステップ123)。係数R0は、次の回転角計算値を算出する際に使用するために、メモリに格納される。係数R0が求められると、その係数R0からカウンタ値nが2のときの回転角計算値θ1(m1)’が式(50)により算出され、メモリに格納される(ステップ124)。次に、カウンタ値nを1だけ増加せ、nmaxより大きくなる場合、回転角計算値を求める計算は終了し、そうでない場合、ステップ126に進む(ステップ125)。算出された回転角計算値θ1(m1)’は、式(50)における角度検出値p1以外の項(この場合は、R0×m0の項)には検出誤差は含まれていないので、その算出された回転角計算値θ1(m1)’に対応する角度補正値p2’が式(36)によって求められ、メモリに格納される(ステップ126)。この角度補正値p2’は、次の回転角計算値θ1(m2)’を算出する際に使用される。回転軸数nが3,4に対しても以上のステップを繰り返し実行して、係数R1,R2を順次求める。最終的に、回転角計算値θ1(m3)’が算出され(ステップ124)、本フローは終了する(ステップ125)。以上は、回転軸数が4の場合における回転角計算値を計算する各ステップを概略したが、回転軸数が4を超える場合に対しても同様の処理が繰り返され、係数R0〜Rn−2を順次求め、最終的に回転角計算値θ1(mn−1)’を計算する。以下、上述した各ステップをさらに詳細に説明する。
【0094】
最初に、回転軸数nmaxを4に設定し、カウンタ値nを2とする(ステップ121)。このとき周期信号S(m1)は、次式(67)にp1=0.550、p2=0.925を代入すると、以下の計算により周期信号S(m1)の値は、0.475となる(ステップ122)。
【数67】
ここで、k1,k2は、1である。
【0095】
次に、係数R0は、次式(68)にS(m1)=0.475、m=4、θ1(m0)’=p1=0.550を代入すると、以下の計算により係数R0は、1となる(ステップ123)。
【数68】
この係数R0は、最終的に求める回転角検出値を算出するときに使用するためにメモリに格納される。
【0096】
R0が求められると、回転角計算値θ1(m1)’は、式(50)から次式(69)のように求められる(ステップ124)。
【数69】
【0097】
カウンタ値nを1だけ増加させ、そのカウンタ値nが4に達していない場合、次のステップに進む(ステップ125)。ステップ126では、この回転角計算値θ1(m1)’に対応する第2回転軸の角度補正値p2’が式(36)によって求められる(ステップ126)。
【数70】
この角度補正値p2’は、カウンタ値nが3の場合の係数R1を求める際に使用される。
【0098】
次に、処理フローは、ステップ126からステップ122に戻り、上述と同様の処理が繰り返される。すなわち、カウンタ値nが3のとき、周期関数S(m2)は、式(37)から次のように求められる(ステップ122)。
【数71】
ここで、k1=1,k2=2,k3=1である。
【0099】
また、係数R1は、式(65)にS(m2)=0.370、m=4、θ1(m1)’=1.55を代入することにより算出される。以下の計算のように、係数R1は、1となる(ステップ123)。
【数72】
【0100】
R1が求められると、回転角計算値θ1(m2)’は、式(51)から次式のように求められる(ステップ124)。
【数73】
【0101】
この回転角計算値θ1(m2)’に対応する第3回転軸の角度補正値p3’は、式(36)から次のように求められ、メモリに記憶される(ステップ126)。この角度補正値p3’は、カウンタ値nが4の場合の係数R2を求める際に使用される。
【数74】
【0102】
次に、回転軸数nが4のとき、周期関数S(m3)は、式(37)から次のように求められる(ステップ122)。
【数75】
ここで、k1=1,k2=3,k3=3,k4=1である。
【0103】
また、係数R2は、式(65)にS(m3)=0.91、m=4、θ1(m2)’=5.55を代入することにより算出される。以下の計算により係数R2は、3となる(ステップ123)。
【数76】
【0104】
R2が求められると、回転角計算値θ1(m3)’は、式(52)から次のように求められる(ステップ124)。
【数77】
【0105】
カウンタ値nは、4であるので、回転角計算値を求める処理は終了する(ステップ125)。以上の計算から、第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’が53.55と算出された。上記段落0088において述べているように、第1回転軸の回転角が53.5(rev)であることを前提として計算しているので、計算結果である回転角計算値θ1(m3)’の誤差は、第1回転軸の角度検出値に与えた0.05のみであり、第2回転軸以降の角度検出器の検出誤差は累積されていない。
【実施例2】
【0106】
次に、式(27)における係数R0〜Rn−2を求める別の計算方法を説明する。本方法は、各回転軸の角度検出値pnおよび式(27)で求められる多回転回転角計算値θ1(mn−1)’から求められた各回転軸の補正された角度補正値pn’(式(36)を求め、角度検出値pnと角度補正値pn’とがほぼ等しいことを前提に、角度補正値pn’が角度検出値pnに最も近似するように係数R0〜Rn−2を決定する方法である。
【0107】
第1回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’は、式(27)で表されるように第1回転軸の角度検出値p1と第1回転軸の多回転回転数との和で数学的に表現することができることは、上述したとおりである。式(36)中の回転角計算値θ1(mn−1)’に式(27)を代入すると、角度補正値pn’は、次式(74)で表すことができる。また、角度補正値pn’は、角度検出値pnに近似する。
【数78】
なお、上式(74)における剰余計算中の右の括弧内は、式(27)の回転角計算値θ1(mn−1)に相当する。
【0108】
上記式(74)において、角度検出値pnは、各回転軸に取り付けられた角度検出器によって検出された1回転内の角度であり、係数R0〜Rn−2は、0およびm−1を含む0からm−1の整数であるので、角度検出値pnに最も近似するように係数R0〜Rn−2を適切に選択することにより、角度補正値pn’を決定することができる。例えば、第2回転軸の角度補正値p2’は角度検出値p2から次のように決めることができる。すなわち、式(74)から、角度補正値計算式は、
【数79】
と表され、この角度補正計算式の計算結果が角度検出値p2に最も近くになるように0≦R0<mである整数の係数R0を適切に選択すればよい。このように決定した係数R0を式(74)に代入することにより、角度補正値p2’が求められる。このようにして、nを2からnmaxまで繰り返して、係数R0〜Rnmax−2を決定し、式(27)に代入することにより、最終的に第1回転軸の多回転回転角計算値θ1(mnmax−1)’を求めることができる。
【0109】
次に、式(74)から係数R0〜Rnmax−2を計算する方程式を以下求める。式(74)に式(53)で表される変形を代入すると、角度補正値pn’は、次式(75)の角度補正値計算式で表される。
【数80】
【0110】
さらに式(75)内を展開すると、角度補正値pn’は、次式(76)のように表される。
【数81】
【0111】
さらに式(76)を変形すると、角度補正値pn’は、次式(77)のように表される。
【数82】
【0112】
剰余演算において、除数を整数倍した数値を加減算しても、剰余演算の結果は、影響されないので、その数値が剰余演算から除かれる。すなわち、bを整数とすると、y=mod(a+b×c,c)=mod(a,c)の関係が成立する。したがって、式(77)において、Rn−2,mm−2は、共に自然数であるので、−1×Rn−2×mm−2×uの項が削除される。その結果、式(77)は、次式(78)のように変形される。
【数83】
【0113】
角度検出値pnは、角度補正値pn’とほぼ等しいので、角度検出値pnは、次式(79)のように表される。
【数84】
【0114】
上式(79)のように、角度検出値pnと係数Rn−2との関係が導き出されたので、剰余演算の定義に従って、以下のように係数Rn−2を求めることが可能になる。一般に、a±bをcで除したときの余りyを求める剰余演算は、y=mod(a±b,c)と表わされるから、数式a±b=n×c+yが成立する。ここで、nは整数であり、yは0≦y<cである。aを右辺へ移動すると、上記数式は、±b=n×c+y−aとなる。この数式の両辺をcで除したときの余りを求める剰余演算は、mod(±b,c)=mod(n×c+y−a,c)と表現することができる。段落0112で説明されるように、括弧内のn×cの項を削除することができるので、上式は、mod(±b,c)=mod(y−a,c)に整理することができる。ここで、bが0≦b<cである場合、b=mod(±(y−a),c)が成立する。この関係を利用して、式(79)から係数Rn−2を求める式は、以下に示されるように導き出される。
【0115】
式(79)中の係数Rn−2は、段落0065で説明されるように、0≦Rn−2<mであるので、0≦(1/m)×Rn−2×u<uが成立する。したがって、定式(79)において、pn’をy、(−(m±1)/m)n−1×θ1(mn−2)’をa,(1/m)×Rn−2×uをb、uをcと捉えると、上述のように、mod(±b,c)=mod(y−a,c)は、bが0≦b<cである場合、b=mod(±(y−a),c)として演算することができる。すなわち、式(79)の剰余演算内の(1/m)×Rn−2×uは、次式(80)で求められる。
【数85】
【0116】
剰余演算において、mod(a,c)×b=mod(a×b,c×b)が成立するので、上式(80)の右辺は、さらに次式(81)のように変形することができる。
【数86】
係数Rn−2は、式(81)によって求められるが、係数Rn−2は整数であるので、上式(81)の演算結果を四捨五入する。その整数化は、次式(82)に示されるように、演算結果に0.5を加え、剰余演算によって桁上がり処理を行なうことにより達成できる。なお、INT(X)は、Xの小数点以下を切り捨てる演算子である。
【数87】
【0117】
実際には、mod(mod(a,c)+b,c)=mod(a+b,c)が成立するので、式(82)は、次式(83)のように変形され、剰余演算が1回削減することができる。
【数88】
【0118】
さて、上式(83)によって、係数Rn−2を算出する計算式が得られたので、実施例1と同様な各回転軸の検出値(段落0091)を用いて、式(83)からR0,R1,R2を求め、それらを式(27)に代入して、第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’を算出する。以下の計算例では、基本単位数u=1000、各回転軸の検出値p1=550,p2=925,p3=144,p4=480とする。
【0119】
係数R0,R1,R2を算出するための手順は、以下のとおりである。図13のフローチャートに示されるように、まず、回転軸数nmax(以下の例では、4)が設定され、カウンタ値nに2が設定される(ステップ131)。カウンタ値nが2のとき、回転角計算値θ1(m0)’(=p1)および角度検出値p2が式(83)に代入され、係数R0が算出され、その係数R0を次の回転角計算値を算出する際に使用するために、メモリに格納される(ステップ132)。係数R0が求められると、角度検出値p1および係数R0が式(27)に代入され、回転角計算値θ1(m1)’が算出され、メモリに格納される(ステップ133)。次に、カウンタ値nを1だけ増加させ、ステップ132に戻る(ステップ134)。以上の計算処理がカウンタ値n=3,4に対しても繰り返し実行され、係数R1,R2が求められる。最終的に、回転角計算値θ1(m3)’が算出される(ステップ133)。カウンタ値nがnmaxより大きい場合、回転角計算値を求める計算は終了する(ステップ134)。以上は、回転軸数が4の場合の各ステップを概略したが、回転軸数が4を超える場合に対しても同様の処理が繰り返され、係数R0〜Rn−2を順次求め、最終的に第1回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’を計算する。以下、上述した各ステップをさらに詳細に説明する。
【0120】
最初に、回転軸数nmaxを4に設定し、カウンタ値nを2とする(ステップ131)。式(83)にn=2を代入すると、係数R0は、次式(84)により求められる(ステップ132)。
【数89】
さらに、回転軸間の歯車は減速すると想定し、p2=925、θ1(m0)’=550(=p1)、m=4、u=1000を上式(84)に代入すると、次式(85)となる。
【数90】
算出された係数R0は、後続の処理のためにメモリに格納される。
【0121】
次に、回転角計算値θ1(m1)’は、式(50)から
【数91】
と表されるので、式(86)にp1=550,R0=1,m=4、u=1000を代入すると、回転角計算値θ1(m1)’は、次式のように計算される、メモリに格納される(ステップ133)。
【数92】
【0122】
次に、カウンタ値nを1だけ増加させ(n=3)、処理はステップ132に戻る(ステップ134)。式(83)にn=3を代入すると、係数R1は次式(87)によって求められる(ステップ132)。
【数93】
さらに、上式にp3=144、θ1(m1)’=1550、m=4、u=1000を代入すると、係数R1は次式(88)によって求められる(ステップ132)。
【数94】
係数R1は1となり、その値は後続の処理のためにメモリに格納される(ステップ132)。
【0123】
また、回転角計算値θ1(m2)’は、式(51)から
【数95】
と表されるので、式(89)にθ1(m1)’=1550,R1=1,m=4、u=1000を代入すると、回転角計算値θ1(m2)’は、次式のように計算される(ステップ133)。
【数96】
【0124】
次に、カウンタ値nを1だけ増加させ(n=4)、処理はステップ132に戻る(ステップ134)。式(83)にn=4を代入すると、係数R2は次式(90)によって求められる。
【数97】
さらに、上式にp4=480、θ1(m2)’=5550、m=4、u=1000を代入すると、係数R2は次式(91)によって求められる(ステップ132)。
【数98】
係数R2は3となり、その値は後続の処理のためにメモリに格納される(ステップ132)
【0125】
また、θ1(m3)’は、式(52)から
【数99】
と表されるので、式(92)にθ1(m2)’=5550,R2=3,m=4、u=1000を代入すると、回転角計算値θ1(m3)’は、次式のように計算される(ステップ133)。
【数100】
この結果、実施例2における方法によって計算された第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’は、53550(基本単位量u=1000)となる。この回転角計算値は、実施例1において求めた第1回転軸の回転角計算値θ1(m3)’=53.55(基本単位量u=1)と同等である。
【実施例3】
【0126】
図14は、本発明の第3の実施例に係る回転角検出装置の伝達機構140の構成ブロック図である。この伝達機構140は、図1に示される伝達機構10を並列に設けた伝達機構であり、第1系列の歯車機構141および第2系列の歯車機構142によって形成される。モータ143のモータ回転軸144に取り付けられた歯車144aは、第1回転軸145に取り付けられた歯車145aに噛み合わされ、モータ回転軸144と第1回転軸145の歯車比は1:Nである。図1に示される実施例では、第1回転軸145は、第1,2系列の歯車機構141,142の共通する歯車機構であるが、必ずしも共通する必要はない。
【0127】
第1系列の歯車機構141は、第1回転軸145から第2、3回転軸146,147へモータの回転を伝達する。第1回転軸145の歯車145bは、第2回転軸146の歯車146aと噛み合い、さらに第2回転軸146の歯車146cは、第3回転軸147の歯車147aと噛み合う。第1〜第3回転軸の回転角度は、角度検出器S1〜S3によってそれぞれ検出される。第1系列の歯車機構141の噛み合わされた歯車の変速比は、(m1±1)/m1に設定される。
【0128】
第2系列の歯車機構142は、図示されるように第4、5回転軸148,149に歯車148a,148b,149aが取り付けられ、モータ143の回転は、第1回転軸145の歯車145cから歯車148a,148bを経由して歯車149aに伝達される。第1、2回転軸の回転角度は、角度検出器S3,S4によってそれぞれ検出される。第2系列の歯車機構142の噛み合わされた歯車の変速比は、(m2±1)/m2に設定される。
【0129】
モータ143の回転は、歯車144aおよび歯車145aを介して1/Nに減速され、第1回転軸145に伝達される。第1回転軸145の回転は、歯車145bから第1系列の歯車機構141へ、また歯車145cから第2系列の歯車機構142へ伝達される。第1系列の歯車機構141の角度検出器S1〜S3、および第2系列の歯車機構142の角度検出器S1,S4,S5によって検出された角度検出値に基づいて求められる周期信号は、第1実施例において説明された周期信号の算出方法と同じである。各系列で求められた周期が互いに素である場合、それらの周期の最小公倍数の周期の回転数を検出することができることは特許文献2,3に記載されているとおりである。したがって、例えば、第1,2系列の周期信号がそれぞれC1,C2周期であると、C1,C2の最小公倍数の周期信号を生成することにより、その最小公倍数の多回転検出が可能となる。
【0130】
図14の伝達機構140において、m1を15、m2を16とし、Nを10とすると、伝達機構140が検出することのできる多回転回転数は、次のとおりとなる。すなわち、第1系列の歯車機構141および第2系列の歯車機構142は、3段の回転軸により形成されているので、段落0038に記載されているように、それぞれm12=225周期,m22=256周期の周期信号を作成することができる。それらの周期は互いに素であるので、それらの最小公倍数は、225周期×256周期=57,600周期となる。さらに、第1回転軸145はモータ回転軸144に対して1/10に減速されているので、モータ回転軸の検出可能な多回転検出範囲は、その10倍である576,000回転となる。
【0131】
以上のように、上記第3実施例では、第1実施例の伝達機構を並列に設け、しかも並列に設けた各伝達機構から求められる回転数の検出範囲あるいは周期信号の周期を互いに素とすることにより、回転角検出装置の多回転検出範囲を容易に拡大することができる。また、上記第3実施例は、2つの並列な伝達機構を設けるが、さらに並列な伝達機構を設けることにより、より広い多回転回転角検出範囲を有する回転角検出装置を実現することができる。
【0132】
なお、上記実施例では、第1回転軸の角度検出器として光学式エンコーダが、第2回転軸から第4回転軸の角度検出器としてMR素子を使ったMR回転角センサが使用されているが、本発明を実施するためには、角度検出器のタイプに制限されるものではない。また、伝達手段として、ギアが使用されているが、回転角を変速する手段は、ギアに限定されるものではなく、ベルト、チェーン、トラクションドライブなどの変速機を含む。さらに、上述した(m±1)/mは、変速比を意味しており、実施例では伝達手段としてギアを用いて説明しているので、m,m±1はギアの歯数に対応しているが、必ずしもギアの歯数に限定されるものではない。
【0133】
また、上記本実施例では、回転角を検出するための基本単位量をu=1(REV)
あるいはu=1000(Pulse/REV)の例を示したが、各回転軸の基本単位量を揃えている限り、u=360(°)やその他どのような単位量を使用してもよい。
【0134】
さらに、上記本実施例では、軸倍角1Xの検出器を使った場合の例を示したが、軸倍角nXの検出器(回転軸が1回転すると、n周期の信号を出力する)を使った場合でも同様に多回転回転角の計算が可能である。その場合、多回転回転角の検出範囲は1/nとなる。なお、軸倍角の異なる検出器を使用しても、基本単位量を合わせる計算処理を行なえば、軸倍角の異なる検出器を用いても多回転回転角を計算することができる。
【符号の説明】
【0135】
11〜15,23〜26,73〜75 回転軸
11a,12a,12b,13a,13b,14a,14b,23a,24a,24b,25a,25b,26a,26b,73a,74a,74b,75a ギア
21,71 モータ
22 光学式アブソリュート・エンコーダ
28,82 信号処理回路
29a,29b,29c 磁石
30a,30b,30c MR回転角センサ
S1〜Sn 角度検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸から第nmax回転軸へ回転を伝達する伝達機構であって、前記第1回転軸の回転角θ1に対して、数値nmax及びmは3以上の整数であり、かつ数値nが1≦n≦nmaxであるとすると、第n回転軸の回転角θnは、
【数101】
の関係を満たす、前記伝達機構、および、前記第1回転軸から前記第nmax回転軸の1回転内の角度検出値p1〜pnmaxを検出する角度検出器を有する多回転アブソリュート回転角検出装置において、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角を計算する方法は、
(1)前記角度検出器によって第n回転軸の1回転内の前記角度検出値pnを検出する段階と、
(2)回転角計算値θ1(mn−2)’および前記角度検出値pnから係数Rn−2を決定する段階と、
(3)前記決定された係数Rn−2を回転角計算式、
【数102】
に代入して回転角計算値θ1(mn−1)’を求める段階と、
からなる回転角を計算する段階を、前記数値nを2からnmaxまで繰り返すことにより、係数R0から係数Rnmax−2までの値を順次決定し、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を求める段階を含み、
ここで、係数R0〜Rnmax−2は0およびm−1を含む0からm−1の整数、uは基本単位量、および回転角計算値θ1(m0)’は第1回転軸の角度検出値p1である、
ことを特徴とする多回転アブソリュート回転角を計算する方法。
【請求項2】
前記係数Rn−2を決定する段階は、
n軸の検出値より求められる周期信号S(mn−1)を、
【数103】
により求める段階であって、k1,k2,・・・knは、(x+1)n−1の展開式k1×x0+k2×x1+k3×x2・・・knxn−1におけるxのn−1次項の係数であり、mod(x,a)は、xをaで割ったときの余りを求める剰余演算であり、Jは、隣接する回転軸間の変速比が−(m−1)/mのとき、J=1であり、前記変速比が−(m+1)/mのとき、J=−1である符号調整項である、段階と、
前記第n回転軸の周期信号S(mn−1)にmn−1を乗じて、回転角検出値θ1(mn−1)を求める段階と、
第n回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’を求める前記回転角計算式の計算結果が前記回転角検出値θ1(mn−1)に近似する係数Rn−2を決定する段階と、からなり、
前記第n回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’は、前記決定された係数Rn−2を前記回転角計算式に代入して求められ、また、
角度補正値pn’は、前記求められた回転角計算値θ1(mn−1)’を、
【数104】
に代入して求められる、
ことを特徴とする請求項1記載の多回転アブソリュート回転角を計算する方法。
【請求項3】
前記係数Rn−2を決定する段階は、
【数105】
の計算結果に最も近似した整数を決定する段階を含む、
ことを特徴とする請求項1または2記載の多回転アブソリュート回転角計算値を計算する方法。
【請求項4】
前記係数Rn−2を決定する段階は、
【数106】
を演算する段階を含み、INT(x)は、数値xの小数点以下を切り捨てる演算である、
ことを特徴とする請求項2記載の多回転アブソリュート回転角を計算する方法。
【請求項5】
前記伝達機構と並列に設けられた複数の伝達機構をさらに含み、前記伝達機構および前記複数の伝達機構の角度検出器によって検出された角度検出値に基づいて多回転アブソリュート回転角を計算する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記伝達機構と並列に設けられた複数の伝達機構をさらに含み、前記伝達機構および前記複数の伝達機構の角度検出器によって検出された角度検出値に基づいて前記周期信号を計算する段階をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記伝達機構および前記複数の伝達機構から求められた前記周期信号の周期は、互いに素であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記伝達機構および前記複数の伝達機構の第1回転軸は、同一の回転軸であることを特徴とする請求項5ないし7記載の方法。
【請求項9】
第1回転軸から第nmax回転軸へ回転を伝達する伝達機構であって、前記第1回転軸の回転角θ1に対して、数値nmax及びmは3以上の整数であり、かつ数値nが1≦n≦nmaxであるとすると、第n回転軸の回転角θnは、
【数107】
の関係を満たす、前記伝達機構と、
前記第1回転軸から前記第nmax回転軸の1回転内の角度検出値p1〜pnmaxを検出する角度検出器と、
前記角度検出値p1〜pnmaxに基づいて、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を計算する演算装置と、からなり、
前記演算装置は、
回転角計算値θ1(mn−2)’および第n回転軸の角度検出値pnから係数Rn−2を決定し、前記決定された係数Rn−2に基づいて回転角計算値θ1(mn−1)’を回転角計算式、
【数108】
によって計算し、数値nを2からnmaxまで繰り返すことにより、係数R0から係数Rnmax−2までの値を順次決定し、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を求め、ここで、係数R0〜Rnmax−2は0およびm−1を含む0からm−1の整数、uは基本単位量、および回転角計算値θ1(m0)’は前記第1回転軸の角度検出値p1である、
ことを特徴とする多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項10】
前記演算装置は、
n軸の検出値より求められる周期信号S(mn−1)を、
【数109】
により求める周期信号S(mn−1)を演算する手段であって、k1,k2,・・・knは、(x+1)n−1の展開式k1×x0+k2×x1+k3×x2・・・knxn−1におけるxのn−1次項の係数であり、mod(x,a)は、xをaで割ったときの余りを求める剰余演算であり、Jは、隣接する回転軸間の変速比が−(m−1)/mのとき、J=1であり、前記変速比が−(m+1)/mのとき、J=−1とする符号調整項である、周期信号を演算する手段と、
前記第n回転軸の周期信号S(mn−1)にmn−1を乗じて、回転角検出値θ1(mn−1)を求める手段と、
第n回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’を求める前記回転角計算式の計算結果が前記回転角検出値θ1(mn−1)’に近似する係数Rn−2を決定する手段と、
前記決定された係数Rn−2を前記回転角計算式に代入して、第n回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’を求める手段と、
前記求められた回転角計算値θ1(mn−1)’を、
【数110】
に代入して、角度補正値pn’を求める手段と、
を含むことを特徴とする請求項9記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項11】
前記係数Rn−2を決定する手段は、
【数111】
の計算結果に最も近似した整数を決定する段階を含む、
を含むことを特徴とする請求項9または10記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項12】
前記係数Rn−2を決定する手段は、
【数112】
を演算することにより前記係数Rn−2を決定し、
ここで、INT(x)は、数値xの小数点以下を切り捨てる演算であることを特徴とする請求項10記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項13】
前記伝達機構と並列に設けられた複数の伝達機構をさらに含み、前記伝達機構および前記複数の伝達機構の角度検出器によって検出された角度検出値に基づいて多回転アブソリュート回転角を計算することを特徴とする請求項9記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項14】
前記伝達機構と並列に設けられた複数の伝達機構をさらに含み、前記伝達機構および前記複数の伝達機構の角度検出器によって検出された角度検出値に基づいて前記周期信号を計算することを特徴とする請求項10記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項15】
前記伝達機構および前記複数の伝達機構から求められた前記周期信号の周期は、互いに素であることを特徴とする請求項14記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項16】
前記伝達機構および前記複数の伝達機構の第1回転軸は、同一の回転軸であることを特徴とする請求項13ないし15記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項17】
第1回転軸から第nmax回転軸へ回転を伝達する伝達機構であって、前記第1回転軸の回転角θ1に対して、数値nmax及びmは3以上の整数であり、かつ数値nが1≦n≦nmaxであるとすると、第n回転軸の回転角θnは、
【数113】
の関係を満たす、前記伝達機構、および、前記第1回転軸から前記第nmax回転軸の1回転内の角度検出値p1〜pnmaxを検出する角度検出器を有する多回転アブソリュート回転角検出装置において、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を計算する方法は、
前記角度検出器によって前記第1回転軸から前記第nmax回転軸の1回転内の前記角度検出値p1〜pnmaxを検出する段階と、
係数R0から係数Rnmax−2までの値を決定する段階であって、第n回転軸の回転角補正値pn’から係数Rn−2を決定し、前記決定された係数Rn−2は、次式の角度補正値計算式で求められる角度補正値pn’が第n回転軸の角度検出値pnに最も近似するように決定され、
【数114】
前記角度補正値計算式において数値nを2からnmaxまで繰り返すことにより、前記係数R0から係数Rnmax−2までの値を順次決定する段階と、
前記決定された係数R0〜Rnmax−2を回転角計算式、
【数115】
に代入して第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を求める段階であって、係数R0〜Rnmax−2は0およびm−1を含む0からm−1の整数、uは基本単位量、および角度補正値p1’は第1回転軸の角度検出値p1である、段階と、
から構成されることを特徴とする多回転アブソリュート回転角を計算する方法。
【請求項18】
前記係数Rn−2を決定する段階は、
【数116】
の計算結果に最も近似した整数を決定する段階を含む、
ことを特徴とする請求項17記載の多回転アブソリュート回転角を計算する方法。
【請求項19】
前記伝達機構と並列に設けられた複数の伝達機構をさらに含み、前記伝達機構および前記複数の伝達機構の角度検出器によって検出された角度検出値に基づいて多回転アブソリュート回転角を計算する段階をさらに含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記伝達機構および前記複数の伝達機構の第1回転軸は、同一の回転軸であることを特徴とする請求項17ないし19記載の方法。
【請求項1】
第1回転軸から第nmax回転軸へ回転を伝達する伝達機構であって、前記第1回転軸の回転角θ1に対して、数値nmax及びmは3以上の整数であり、かつ数値nが1≦n≦nmaxであるとすると、第n回転軸の回転角θnは、
【数101】
の関係を満たす、前記伝達機構、および、前記第1回転軸から前記第nmax回転軸の1回転内の角度検出値p1〜pnmaxを検出する角度検出器を有する多回転アブソリュート回転角検出装置において、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角を計算する方法は、
(1)前記角度検出器によって第n回転軸の1回転内の前記角度検出値pnを検出する段階と、
(2)回転角計算値θ1(mn−2)’および前記角度検出値pnから係数Rn−2を決定する段階と、
(3)前記決定された係数Rn−2を回転角計算式、
【数102】
に代入して回転角計算値θ1(mn−1)’を求める段階と、
からなる回転角を計算する段階を、前記数値nを2からnmaxまで繰り返すことにより、係数R0から係数Rnmax−2までの値を順次決定し、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を求める段階を含み、
ここで、係数R0〜Rnmax−2は0およびm−1を含む0からm−1の整数、uは基本単位量、および回転角計算値θ1(m0)’は第1回転軸の角度検出値p1である、
ことを特徴とする多回転アブソリュート回転角を計算する方法。
【請求項2】
前記係数Rn−2を決定する段階は、
n軸の検出値より求められる周期信号S(mn−1)を、
【数103】
により求める段階であって、k1,k2,・・・knは、(x+1)n−1の展開式k1×x0+k2×x1+k3×x2・・・knxn−1におけるxのn−1次項の係数であり、mod(x,a)は、xをaで割ったときの余りを求める剰余演算であり、Jは、隣接する回転軸間の変速比が−(m−1)/mのとき、J=1であり、前記変速比が−(m+1)/mのとき、J=−1である符号調整項である、段階と、
前記第n回転軸の周期信号S(mn−1)にmn−1を乗じて、回転角検出値θ1(mn−1)を求める段階と、
第n回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’を求める前記回転角計算式の計算結果が前記回転角検出値θ1(mn−1)に近似する係数Rn−2を決定する段階と、からなり、
前記第n回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’は、前記決定された係数Rn−2を前記回転角計算式に代入して求められ、また、
角度補正値pn’は、前記求められた回転角計算値θ1(mn−1)’を、
【数104】
に代入して求められる、
ことを特徴とする請求項1記載の多回転アブソリュート回転角を計算する方法。
【請求項3】
前記係数Rn−2を決定する段階は、
【数105】
の計算結果に最も近似した整数を決定する段階を含む、
ことを特徴とする請求項1または2記載の多回転アブソリュート回転角計算値を計算する方法。
【請求項4】
前記係数Rn−2を決定する段階は、
【数106】
を演算する段階を含み、INT(x)は、数値xの小数点以下を切り捨てる演算である、
ことを特徴とする請求項2記載の多回転アブソリュート回転角を計算する方法。
【請求項5】
前記伝達機構と並列に設けられた複数の伝達機構をさらに含み、前記伝達機構および前記複数の伝達機構の角度検出器によって検出された角度検出値に基づいて多回転アブソリュート回転角を計算する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記伝達機構と並列に設けられた複数の伝達機構をさらに含み、前記伝達機構および前記複数の伝達機構の角度検出器によって検出された角度検出値に基づいて前記周期信号を計算する段階をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記伝達機構および前記複数の伝達機構から求められた前記周期信号の周期は、互いに素であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記伝達機構および前記複数の伝達機構の第1回転軸は、同一の回転軸であることを特徴とする請求項5ないし7記載の方法。
【請求項9】
第1回転軸から第nmax回転軸へ回転を伝達する伝達機構であって、前記第1回転軸の回転角θ1に対して、数値nmax及びmは3以上の整数であり、かつ数値nが1≦n≦nmaxであるとすると、第n回転軸の回転角θnは、
【数107】
の関係を満たす、前記伝達機構と、
前記第1回転軸から前記第nmax回転軸の1回転内の角度検出値p1〜pnmaxを検出する角度検出器と、
前記角度検出値p1〜pnmaxに基づいて、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を計算する演算装置と、からなり、
前記演算装置は、
回転角計算値θ1(mn−2)’および第n回転軸の角度検出値pnから係数Rn−2を決定し、前記決定された係数Rn−2に基づいて回転角計算値θ1(mn−1)’を回転角計算式、
【数108】
によって計算し、数値nを2からnmaxまで繰り返すことにより、係数R0から係数Rnmax−2までの値を順次決定し、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を求め、ここで、係数R0〜Rnmax−2は0およびm−1を含む0からm−1の整数、uは基本単位量、および回転角計算値θ1(m0)’は前記第1回転軸の角度検出値p1である、
ことを特徴とする多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項10】
前記演算装置は、
n軸の検出値より求められる周期信号S(mn−1)を、
【数109】
により求める周期信号S(mn−1)を演算する手段であって、k1,k2,・・・knは、(x+1)n−1の展開式k1×x0+k2×x1+k3×x2・・・knxn−1におけるxのn−1次項の係数であり、mod(x,a)は、xをaで割ったときの余りを求める剰余演算であり、Jは、隣接する回転軸間の変速比が−(m−1)/mのとき、J=1であり、前記変速比が−(m+1)/mのとき、J=−1とする符号調整項である、周期信号を演算する手段と、
前記第n回転軸の周期信号S(mn−1)にmn−1を乗じて、回転角検出値θ1(mn−1)を求める手段と、
第n回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’を求める前記回転角計算式の計算結果が前記回転角検出値θ1(mn−1)’に近似する係数Rn−2を決定する手段と、
前記決定された係数Rn−2を前記回転角計算式に代入して、第n回転軸の回転角計算値θ1(mn−1)’を求める手段と、
前記求められた回転角計算値θ1(mn−1)’を、
【数110】
に代入して、角度補正値pn’を求める手段と、
を含むことを特徴とする請求項9記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項11】
前記係数Rn−2を決定する手段は、
【数111】
の計算結果に最も近似した整数を決定する段階を含む、
を含むことを特徴とする請求項9または10記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項12】
前記係数Rn−2を決定する手段は、
【数112】
を演算することにより前記係数Rn−2を決定し、
ここで、INT(x)は、数値xの小数点以下を切り捨てる演算であることを特徴とする請求項10記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項13】
前記伝達機構と並列に設けられた複数の伝達機構をさらに含み、前記伝達機構および前記複数の伝達機構の角度検出器によって検出された角度検出値に基づいて多回転アブソリュート回転角を計算することを特徴とする請求項9記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項14】
前記伝達機構と並列に設けられた複数の伝達機構をさらに含み、前記伝達機構および前記複数の伝達機構の角度検出器によって検出された角度検出値に基づいて前記周期信号を計算することを特徴とする請求項10記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項15】
前記伝達機構および前記複数の伝達機構から求められた前記周期信号の周期は、互いに素であることを特徴とする請求項14記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項16】
前記伝達機構および前記複数の伝達機構の第1回転軸は、同一の回転軸であることを特徴とする請求項13ないし15記載の多回転アブソリュート回転角を計算する装置。
【請求項17】
第1回転軸から第nmax回転軸へ回転を伝達する伝達機構であって、前記第1回転軸の回転角θ1に対して、数値nmax及びmは3以上の整数であり、かつ数値nが1≦n≦nmaxであるとすると、第n回転軸の回転角θnは、
【数113】
の関係を満たす、前記伝達機構、および、前記第1回転軸から前記第nmax回転軸の1回転内の角度検出値p1〜pnmaxを検出する角度検出器を有する多回転アブソリュート回転角検出装置において、第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を計算する方法は、
前記角度検出器によって前記第1回転軸から前記第nmax回転軸の1回転内の前記角度検出値p1〜pnmaxを検出する段階と、
係数R0から係数Rnmax−2までの値を決定する段階であって、第n回転軸の回転角補正値pn’から係数Rn−2を決定し、前記決定された係数Rn−2は、次式の角度補正値計算式で求められる角度補正値pn’が第n回転軸の角度検出値pnに最も近似するように決定され、
【数114】
前記角度補正値計算式において数値nを2からnmaxまで繰り返すことにより、前記係数R0から係数Rnmax−2までの値を順次決定する段階と、
前記決定された係数R0〜Rnmax−2を回転角計算式、
【数115】
に代入して第1回転軸の多回転アブソリュート回転角計算値θ1(mnmax−1)’を求める段階であって、係数R0〜Rnmax−2は0およびm−1を含む0からm−1の整数、uは基本単位量、および角度補正値p1’は第1回転軸の角度検出値p1である、段階と、
から構成されることを特徴とする多回転アブソリュート回転角を計算する方法。
【請求項18】
前記係数Rn−2を決定する段階は、
【数116】
の計算結果に最も近似した整数を決定する段階を含む、
ことを特徴とする請求項17記載の多回転アブソリュート回転角を計算する方法。
【請求項19】
前記伝達機構と並列に設けられた複数の伝達機構をさらに含み、前記伝達機構および前記複数の伝達機構の角度検出器によって検出された角度検出値に基づいて多回転アブソリュート回転角を計算する段階をさらに含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記伝達機構および前記複数の伝達機構の第1回転軸は、同一の回転軸であることを特徴とする請求項17ないし19記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−237633(P2012−237633A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106368(P2011−106368)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]