説明

多孔シート及び多孔シートの製造方法

【課題】シート上に印刷領域と非印刷領域とを形成した平面シートをドリルで穿孔することでシートの加工性を確保し、かつ、平面シートに印刷領域と非印刷領域とを形成することにより、シート裏面側の視覚情報もシート表面側から視認できるシートを提供する。
【解決手段】合成樹脂製のベースシート1上に不透明な印刷層2が形成された印刷領域2aと前記印刷層が形成されない非印刷領域2bとを有する平面シートをドリルにより多数の孔3を穿孔した多孔シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面シートに多数の孔を開口した、産業基礎製品に広く用いられる多孔シート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔シートは主として金属シートを型抜きして多数の孔を穿孔することにより製造される。多孔シートの代表的な製造方法は、例えば特開2000−135524号公報に開示されるものであって、金型上の所定方向に配列された複数のパンチを上下運動させ、同時にワークピースである単体の平板材料を前記所定方向に直交する方向に搬送することにより穿孔作業を行うものであった。かかる従来例の製造方法の場合は、一部のパンチの打ち抜きを停止することにより、穿孔の有無により模様を形成することができる。
【0003】
また、パンチを用いず、ドリルで金属板を穿孔して、多孔シートを形成する方法は、特開平8−252827号公報に開示される。
【0004】
【特許文献1】特開2000−135524
【特許文献2】特開平8−252827
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される従来例ではパンチがワークピースの表面から裏面に向けて孔を押し抜くことになり、隣接する孔が近接していると複数の孔を同時に押し抜くために、孔間の領域に両側(もしくは四方)からストレスがかかってしまう。特にワークピースとしてペットやビニル系の合成樹脂シートを用いた場合は、剛性がないために変形しやすく、製造した多孔シートの平面性が失われてしまう、という問題点があった。
【0006】
また、特許文献2のようにパンチの代わりにドリルを用いて孔を開口することにより、孔間の領域の変形問題を解決することができるが、特許文献2においてはその対象は湾曲した金属パネルであって、穿孔される孔はシート表面に対して垂直に開口させることができず、変形可能な樹脂製の平面シートをシート表面に対して垂直にドリルによって穿孔し、その後変形させるという発想を有するものではなかった。
【0007】
加えて、これら特許文献には、本発明のように透明シート上に印刷領域と非印刷領域を混在させることにより、シートを配置した場合に、穿孔された孔を介してのみならず、透明な非印刷領域を介してもシート裏側の情報を視認させるという技術思想はなかった。
【0008】
本発明の目的は、透明シート上に印刷領域と非印刷領域とを形成した平面シートをドリルで穿孔することでシートの加工性を確保し、かつ、平面シートに印刷領域と非印刷領域とを形成することにより、シート裏面側の視覚情報もシート表面側から視認できるようにした多孔シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための、本発明の代表的な多孔シートは、合成樹脂製のベースシート上に不透明な印刷層が形成された印刷領域と前記印刷層が形成されない非印刷領域とを有する平面シートをドリルにより多数の孔を穿孔した多孔シートである。
【0010】
また、前記非印刷領域は多数の小円であって透明穴となり、前記ドリルにより穿たれた穿孔と穿孔されていない透明穴とが混在する構成としてもよい。
【0011】
また、前記透明穴は前記穿孔に比べて小径である構成としてもよい。
【0012】
さらに、前記ベースシートとして可撓性を有するベースシートを用いてもよい。
【0013】
本発明の多孔シートの製造方法は、複数のドリルを一連に配置したドリル装置と前記ドリルが加工するワークピースを載置する架台とを有する穿孔装置を用い、合成樹脂製のベースシート上に不透明な印刷層が形成された印刷領域と前記印刷層が形成されない非印刷領域とを有する平面シートを、仮固定したシート束を前記ドリルの対応位置に対応させるように架台上に配置し、前記ドリル装置または前記架台を移動させることによって前記ドリルと前記シート束との相対位置を変化させて穿孔作業を行い、その後、仮固定を解除して複数の多孔シートを製造する。
【0014】
また、本発明の多孔シートの製造方法は、前記非印刷領域は多数の小円であって透明穴とすることで、前記ドリルにより穿たれた穿孔と穿孔されていない透明穴とが混在する多孔シートの製造方法に用いることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の多孔シーによれば、従来の同様の多孔シートとは違い、合成樹脂シートをワークピースとし多数の孔をより近接させて穿孔する場合であっても変形することがなく、平面性の良好な多孔シートとなる。また、穿孔とともに不透明な印刷領域と透明な非印刷領域をコントロールすることにより、孔によって連通はしないものの裏面側を一部視認することができる多孔シートを提供することができる。
【0016】
また、本発明の多孔シートの製造方法によれば、上記の、複数枚の平面シートを一度に穿孔することができるために、生産効率を良好なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第一実施形態〕
図を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は第一実施形態の多孔シートの部分断面図であり、図2は同多孔シートの平面図である。
【0018】
本実施形態の多孔シートAは、スピーカーコーンや内部機器を覆うために使用されるシートである。図1に示すように、多孔シートAの機材となる平面シートは透明なベースシート1の裏面に黒色等の不透明な印刷層2を形成している。
【0019】
このベースシート1は、PETやアクリルなどの合成樹脂シートであって、厚さは、1枚当たり0.2mm〜0.3mmのものが使用され、可撓性を有し、湾曲させたり捻ったりして立体的に変形させることができる。尚、ベースシート1の材質は、可撓性を持つプラスチックシートであれば、PETやアクリル以外でもよい。
【0020】
また、印刷層2はスクリーン印刷(シルク印刷)やオフセット印刷により形成される。この印刷層2は、印刷層が形成される印刷領域2aと印刷層が形成されない非印刷領域2bが選択的に設けられており、非印刷領域2bでは透明なベースシート1を介して、表面側から裏面側を覗くことができる構造となっている。なお、印刷層2の色は黒色などの暗色系に限られず、例えば白色のような明度の高い色でも顔料が多く十分な遮光性を有すれば色は問わない。
【0021】
また、多孔シートAの一部には、ベースシート1が印刷層2とともにドリルによって穿たれた多数の穿孔3が形成されている。また、前述の非印刷領域は、多数の小円となるように形成されて透明穴4となっている。
【0022】
これを図2に示すように平面的に説明すると、多孔シートAには多数の孔(穴)がマトリクス状に形成されているが、表裏が貫通している穿孔3と、表裏が貫通しておらず、透明なベースシートが覗く透明穴4とが混在していることとなる。具体的には、図2における多孔シートAのうち、上部のダミー領域Sの孔(穴)は穿孔されておらず、透明穴4となっている。
【0023】
孔(孔)は下部から上部に向かって徐々に小径となるグラテーション状となっているが、すなわち相対的に上部に形成される、より小径の穴が透明穴4となり、下部に形成される穿孔3の方が大径の孔となっている。
【0024】
また、透明穴4のほか、裏面側に配置される表示装置などを視認させる表示窓5や、後ろの発光装置により発光させるサイン表示6など多孔シートAの非印刷領域2bとなり、透明部分となる。なお、多孔シートAの輪郭はそれがはめ込まれる部位にあわせて多様な形状を採ることができる。
【0025】
図3を用いて、本実施形態の多孔シートAの製造方法を説明する。まず、多孔シートAの製造に使用する穿孔装置は、複数のドリル22a〜22fを一連に保持するドリル装置21と、その下方に配置され、上述の平面シート(多孔シートA)を各ドリル22a〜22fに対応するようにベースシート1上に並べて保持することができる架台23とによって構成される。
【0026】
ドリル装置21は、図示しない駆動装置により各ドリル22a〜22f毎に昇降を制御することができる。また、架台23はワークピースとしての平面シート(多孔シートA)を仮固定することができる固定フレーム23aを複数有しており、平面シート(多孔シートA)を載置した状態で、水平方向に(上下左右に)移動させることができる。
【0027】
このように、ドリル22a〜22fの昇降制御と、架台23の水平方向の移動制御を組み合わせ、複数の平面シート(多孔シートA)を並べて一度に加工することにより、多孔シートAを量産することができる。穿孔径は、ドリル22a〜22fのドリル径を換えることによって多様に選択することができる。
【0028】
図4を用いて、多孔シートAの使用方法について説明する。本実施形態の多孔シートAは、携帯型音楽プレーヤー50の外部スピーカー装置51のスピーカーカバーに用いられるものである。
【0029】
同図に示すように、2枚の多孔シートAは外部スピーカー装置51の左右の前面開口部51aにそれぞれ取り付けられる。外部スピーカー装置51の前面は中央部が水平方向に張り出す湾曲面となってるため、多孔シートAも同様に湾曲させた状態で取り付けられ、前面開口部51aを覆うことで、外部スピーカー装置51の本体と一体化させる。
【0030】
それぞれの多孔シートAが外部スピーカー装置51に固定されると、前面開口部51aに配置されたスピーカーコーン52が覆われるが、上述のように形成された多数の穿孔3(図2参照)を介して外部にスピーカーコーンから発せられる音は伝達される。また、多孔シートAに形成された透明な表示窓5を介して、前面開口部51aに配置された電光カウンター53の表示が視認される。
【0031】
多孔シートAの上部のダミー領域Sにある穴(孔)は透明穴4(図2参照)である。透明穴4は穿孔3(図2参照)に連続して形成されているが、透明穴4を通して裏面側のスピーカーコーン52を視認することができ、視覚的には穿孔3と相違ない。
【0032】
以上のように、多孔シートAによれば透明な合成樹脂製のベースシートをドリルで多数の孔を穿孔したために、この穿孔3と非印刷領域2bにより形成される透明部分により裏面側の機材を視認させることができる。
【0033】
特に非印刷領域2bとして透明穴4を形成した本実施形態では、透明穴4を現実に孔が開口している穿孔3のダミーとすることができ、美感にすぐれた多孔シートAを提供することができる。特に、孔(穴)の径を小さくすると、小径のドリル刃を用いることによる破損の問題や穿孔数が増えることによる作業時間増加の問題から多孔シートAの生産効率が悪くなるが、これをダミーの透明穴4に置き換えることにより、この問題を解決することができる。
【0034】
また、本実施形態の多孔シートAは可撓性を有するために、平面シート状態で穿孔加工したうえで、装置本体に取り付ける際にこれを変形させることができ、またシート形状の加工も容易なので、金属板のパンチングメタルに比べて応用範囲の広い素材となる。
【0035】
〔第二実施形態〕
本発明の第二実施形態を、図5を用いて説明する。本実施形態の多孔シートBは、左右両側に透明穴14が形成されるダミー領域Sが形成され、中央の部分に穿孔13が配列されている。
【0036】
かかる多孔シートBを、前面の中央が垂直方向に張り出したスピーカー61に取り付けることによって、スピーカーコーン62正面に穿孔3が対面し、その両脇に透明穴14が配置されることになる。
【0037】
このような構造により、スピーカーコーン62から発せられる音は正面の穿孔3から外部に直進するのに対して、両側の透明穴4は音をブロックするために音の直進を許さず、結果として、スピーカー61による音の指向性を高めることができる。
【0038】
このように、穿孔13と透明穴14の領域を多様に設定することにより、見かけ上、通常のシート全面に孔が成形されるように見せながら、音の伝達方向をコントロールすることができる。
【0039】
〔その他の実施形態〕
以上説明したように、第一実施形態及び第二実施形態は音楽機材に用いる多孔シートを説明したが、音の伝達方向に限らず、空気や水といった流体の方向制御に本発明の多孔シートを用いることもできる。
【0040】
また、上述した実施形態では、透明のベースシート上に直接、印刷層を形成した構成としたが、薄い透明シート上に印刷層を形成し、その透明シートをベースシートに貼着し、間接的に印刷層を形成するような構造としてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、平面シートを湾曲させて使用するとしたが、必ずしも平面シートとして用いることに限るものではない。即ち、平面シート状の樹脂に穿孔工程後に更にヒートプレス工程を入れることにより、湾曲した立体的なシート状の多孔シートとして使用することもできる。
【0042】
また、上述の実施形態では、ベースシートを透明としたが、これに限らず、半透明のものや不透明のものとしてもよい。
【0043】
また、上述の実施形態では、ドリルを架台上に固定配置し、架台を移動させることとしたが、これに限るものではない。即ち、ドリルと架台は相対的に移動する構成であればよいため、架台を固定し、ドリルを移動させることとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の多孔シート及び本発明の製造方法により製造される多孔シートは、音響製品、建築材料、文房具などの産業基礎製品に広く用いられる多孔シートに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる多孔シートの断面図である。
【図2】同実施形態にかかる多孔シートの平面図である。
【図3】同実施形態の多孔シートの製造方法を説明するための、穿孔装置の説明図である。
【図4】同実施形態の多孔シートの使用状態を図示した説明図である。
【図5】本発明の第二実施形態にかかる多孔シートの使用状態を図示した説明図である。
【符号の説明】
【0046】
A、B…多孔シート
1…ベースシート
2…印刷層 (1+2…平面シート)
2a…印刷領域
2b…非印刷領域
3、13…穿孔
4、14…透明孔
21…ドリル装置
22a〜22f…ドリル
23…架台(21+23…穿孔装置)
23a…固定フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のベースシート上に不透明な印刷層が形成された印刷領域と前記印刷層が形成されない非印刷領域とを有する平面シートをドリルにより多数の孔を穿孔したことを特徴とする多孔シート。
【請求項2】
請求項1に記載の多孔シートであって、
前記非印刷領域は多数の小円であって透明穴となり、前記ドリルにより穿たれた穿孔と穿孔されていない透明穴とが混在することを特徴とする多孔シート。
【請求項3】
請求項2に記載の多孔シートであって、
前記透明穴は前記穿孔に比べて小径であることを特徴とする多孔シート。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の多孔シートであって、
前記ベースシートは可撓性を有することを特徴とする多孔シート。
【請求項5】
複数のドリルを一連に配置したドリル装置と前記ドリルが加工するワークピースを載置する架台とを有する穿孔装置を用い、
合成樹脂製のベースシート上に不透明な印刷層が形成された印刷領域と前記印刷層が形成されない非印刷領域とを有する平面シートを、仮固定したシート束を前記ドリルの対応位置に対応させるように架台上に配置し、
前記ドリル装置または前記架台を移動させることによって前記ドリルと前記シート束との相対位置を変化させて穿孔作業を行い、
その後、仮固定を解除して複数の多孔シートを製造することを特徴とする多孔シートの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の多孔シートの製造方法であって、
前記非印刷領域は多数の小円であって透明穴となり、前記ドリルにより穿たれた穿孔と穿孔されていない透明穴とが混在することを特徴とする多孔シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−149365(P2010−149365A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329255(P2008−329255)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(592233347)シーレックス株式会社 (19)
【出願人】(301058067)株式会社大和マーク製作所 (2)
【出願人】(509000910)エヌシー産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】