説明

多孔体とその製造方法

【課題】
微細かつ均一な多孔構造を活かして、分離膜や電池用セパレータとして有用に用いることができる、ナノメーターオーダーからマイクロメーターオーダーに孔径制御可能なポリアリーレンスルフィドを主成分とする多孔体およびその製造方法を提供すること
【解決手段】
繰り返し単位(R)を主成分とするポリマー(P)を1重量%以上80重量%以下と、繰り返し単位(R)を主成分とするオリゴマー(O)および/または繰り返し単位(R)を与えるモノマー(M)を20重量%以上99重量以下を含む混合物からオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することで、平均孔径が0.1nm以上100nm以下であるポリアリーレンスルフィドを主成分とする多孔体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた構造均一性を活かして、分離膜として有用に用いることができるナノメーターオーダーからマイクロメーターオーダーに構造制御可能なポリアリーレンスルフィドを主成分とする多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔体は分離膜、電池セパレータ、低誘電率材料、吸着体、触媒担体等に利用されている。中でも分離膜は電子工業、化学工業、機械工業におけるプロセス用水製造、海水淡水化による飲料水の製造、医薬品、食品、化粧品製造における有用物質の分離・濃縮、人工腎臓や血漿分離膜などの医療分野をはじめとして幅広い分野で活用されている。最近では、化石燃料から発生した炭酸ガスの回収といった環境エネルギー分野においても利用されつつある。また、膜分離プロセスは液体から気体などの相転移を伴わないため、蒸留等と比較してエネルギー負荷が小さい分離プロセスとしても注目されており、高温・高圧下など過酷な使用環境に耐えうる、耐熱性、耐薬品性に優れた分離膜の要求がますます高まっている。
【0003】
従来の分離膜の材質としては、有機膜としては、例えば酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン等が、無機膜としては、例えばゼオライト、セラミック、ガラス、金属等が挙げられる。
【0004】
例えば、特許文献1には水処理用途として優れた加工性を有する酢酸セルロースを用いた限外濾過膜が記載されている。しかし、耐熱性、耐薬品性に関して満足する性能を得ることができない問題があった。また、特許文献2にはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンを用いた有機液体混合物用分離膜が記載されている。いずれの膜も酢酸セルロースと比較し、耐熱性、耐薬品性に優れており、実用的な多孔質膜が提供されているが、ポリアクリロニトリルやポリフッ化ビニリデンを用いた多孔質膜は十分な耐熱性を満たしていない。また、ポリスルホンを用いた多孔質膜は比較的耐熱性に優れており、加工性も良いが有機溶媒に侵されるといった耐薬品性に課題を残している。 一方、無機膜は耐熱性や耐薬品性は高い物の、中空糸状に加工することが困難であり、単位体積あたりの膜面積が小さいといった問題点の他、コストが高いこと、膜性能が安定しないといった課題がある(非特許文献1)。
【0005】
耐熱性、耐薬品性に非常に優れた分離膜として、ポリアリーレンスルフィドの一つである、ポリフェニレンスルフィドを用いた多孔質膜が提案されている。特許文献3及び4にはポリフェニレンスルフィドを用い、延伸法によって、微多孔質を形成する方法が記載されている。しかし延伸法では精密に孔径を制御することが困難である。また、特許文献5には250℃のN−メチルピロリドン、ジエチレングリコールをポリフェニレンスルフィドの溶媒として用い、溶液製膜する方法が記載されている。しかし、本法ではポリフェニレンスルフィドの高い結晶性のため、使用可能な溶媒が極めて限られており、しかも加圧状態、200℃以上の高温といった過酷な条件でしか溶解できず、製膜が非常に困難であり、規則的な周期構造を得ることが困難であるといった問題があった。また、特許文献6、7にポリフェニレンスルフィドからなるポリマーアロイから、ポリフェニレンスルフィド以外の少なくとも1成分のポリマーを溶媒で溶解除去し、ポリフェニレンスルフィド多孔体を得る方法が提案されている。しかし、本方法ではポリマーを有機溶媒で除去するため、細孔径が小さくなるにしたがいポリマーの除去が困難となり、細孔径100nm以下の多孔体を得るには溶媒でのポリマー除去に長時間を要するという課題があった。さらに細孔径10nm以下の場合は溶媒によるポリマーの除去が事実上不可能であり、多孔体を得ることは不可能という問題があった。
【0006】
また、特許文献8にはアルミニウム等の酸化物、セラミック、ガラス等を用いた無機膜の製造方法が提案されているが、無機膜は有機膜とは異なり、中空糸膜等に加工することが困難であるため、単位体積あたりの膜面積を増やすことが困難であること、連続生産が困難なため、生産性が低く、高コストであるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−343842号公報
【特許文献2】特開2001−321643号公報
【特許文献3】特開昭58−67733号公報
【特許文献4】特開昭59−59917号公報
【特許文献5】特開昭60−248202号公報
【特許文献6】特開2003−64214号公報
【特許文献7】特開2010−254943号公報
【特許文献8】特開平2−31822号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】未来材料 Vol. 10,No. 7,p.18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、微細かつ均一な多孔構造を活かして、分離膜や電池用セパレータとして有用に用いることができる、ナノメーターオーダーからマイクロメーターオーダーに孔径制御可能なポリアリーレンスルフィドを主成分とする多孔体およびその製造方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を有するものである。
1.ポリアリーレンスルフィドを主成分とする多孔体であって、平均孔径が0.1nm以上100nm以下であることを特徴とする多孔体
2.多孔体におけるポリアリーレンスルフィドの占める体積を(A)とし、多孔体の空孔体積を(B)とするとき、(C)=(B)/((A)+(B))で計算される空孔率(C)が0.20以上0.99以下であることを特徴とする1に記載の多孔体。
3.前記多孔体の平均孔径の10倍以上100倍以下の長さを一辺とする正方形の視野で撮影された顕微鏡画像をフーリエ変換して得られる、横軸が波数、縦軸が強度からなるグラフの曲線において、ピーク半値幅(a)、該ピークの極大波長(b)とするとき0<(a)/(b)≦1.2であることを特徴とする1または2に記載の多孔体。
4.前記多孔体が厚さが0.1μm以上5mm以下であることを特徴とする1から3のいずれかに記載の多孔体。
5.多孔体の形状が中空糸状であることを特徴とする1から4のいずれかに記載の多孔体。
6.1から5のいずれかに記載の多孔体からなる分離膜。
7.分離対象物質が気体であることを特徴とする6に記載の分離膜。
8.気体が炭酸ガスであることを特徴とする7に記載の分離膜。
9.ポリマー(P)、オリゴマー(O)、モノマー(M)の合計を100重量%としたとき、繰り返し単位(R)を主成分とするポリマー(P)を1重量%以上80重量%以下と、繰り返し単位(R)を主成分とするオリゴマー(O)および/または繰り返し単位(R)を与えるモノマー(M)を20重量%以上99重量以下を含む混合物から、オリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することを特徴とする多孔体の製造方法
10.繰り返し単位(R)がポリアリーレンスルフィドを構成する繰り返し単位であることを特徴とする9に記載の多孔体の製造方法。
11.ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする9または10に記載の多孔体の製造方法。
12.オリゴマー(O)の繰り返し単位(R)の数が2以上100以下であることを特徴とする9〜11のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
13.オリゴマー(O)が環状化合物であることを特徴とする9〜12のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
14.ポリマー(P)とオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を含む混合物におけるオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)の体積を(D)、ポリマー(P)の体積を(E)とするとき、(F)=(D)/((D)+(E))で計算されるオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)の体積比率(F)が0.20以上0.99以下であることを特徴とする9〜13のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
15.オリゴマー(O)および/またはモノマー(M)には可溶で、かつポリマー(P)には不溶の成分(L)をオリゴマー(O)およびモノマー(M)に対して0.001〜50重量%の割合で混合物へ添加することを特徴とする9〜14のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
16.ポリマー(P)とオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を含む混合物を成形した後にオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することを特徴とする9〜15のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
17.ポリマー(P)とオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を含む混合物を膜厚0.1μm以上5mm以下の平膜または中空糸膜に成形した後にオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することを特徴とする16に記載の多孔体の製造方法。
18.スピノーダル分解により相分離構造を形成した成形品から、オリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することを特徴とする16または17に記載の多孔体の製造方法。
19.オリゴマー(O)および/またはモノマー(M)の除去を有機溶媒による溶出により行うことを特徴とする9〜18のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、繰り返し単位(R)を主成分とするポリマー(P)を1重量%以上80重量%以下と、繰り返し単位(R)を主成分とするオリゴマー(O)および/または繰り返し単位(R)を与えるモノマー(M)を20重量%以上99重量以下を含む混合物からオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することで、ポリフェニレンスルフィドなどの従来の溶液製膜や溶融製膜での製膜が困難なポリマーでも、微細な細孔を有する多孔体を形成することが可能となる。
【0012】
本発明の方法で得られる多孔体は、微細かつ均一な多孔構造を有することから、分離膜や電池用セパレータとして有用に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明における多孔体とは、基材の表面および/または内部に複数の空孔を有するものを指す。多孔体を分離膜として用いるには、多孔体の空孔は膜の表面から裏面まで貫通した連続孔である必要があり、この連続孔を篩いとして活用することで分離膜として利用することが可能である。
【0015】
空孔のサイズ、すなわち孔径は分離対象物質のサイズにより所望のサイズを設定できる。特に本発明では、オリゴマーおよび/またはモノマーといった比較的低分子量の化合物を溶媒で除去することから、ナノメートルオーダーの微細な多孔構造を形成することが可能である。本発明の多孔体の平均孔径は、0.1nm以上100nm以下が好ましく、0.3nm以上50nm以下がより好ましく、0.5nm以上20nm以下がさらに好ましい。
【0016】
平均孔径の測定方法について、具体的な方法を次に示す。まず、多孔体を液体窒素で冷却し、応力を加え割断する。次に該断面を電子顕微鏡で観察し、得られた電子顕微鏡写真をフーリエ変換し、波数を横軸に強度を縦軸にプロットした際の極大値波数を求め、その逆数から平均孔径を得るものとする。このとき、電子顕微鏡写真の画像サイズは平均孔径の5倍以上100倍以下の長さを一辺とする正方形とする。ここで、膜の構造サイズが膜厚方向で孔径が変化する場合は、例えば中空糸膜で膜の内表面側が緻密で外表面側に粗大化するような傾斜構造の膜の場合、内表面側で平均孔径を測定し(これを平均孔径<1>とする)、一方で外表面側でも同様に平均孔径を測定し(これを平均孔径<2>とする)、(平均孔径<1>+平均孔径<2>)/2を平均孔径として取り扱うこととする。
【0017】
多孔体を構成する孔径は均一であることが好ましく、大小さまざまな孔径の連続孔があるような不均一な場合は分離特性が低下するおそれがあり好ましくない。孔径の均一性は横軸に孔径、縦軸にその孔径を有する細孔の数をプロットした曲線のピーク半値幅で判断できる。すなわち、孔径が均一な膜の場合、曲線はシャープなピークを形成し、半値幅は狭くなる。一方、孔径が不均一な場合は曲線はブロードなピークを形成し、半値幅は広くなる。この、横軸に孔径、縦軸に細孔数をプロットしたグラフのピーク半値幅による孔径均一性評価は、横軸である孔径の逆数、すなわち波数としても同様の評価が可能であることから、前記電子顕微鏡写真をフーリエ変換したグラフを用いて評価するものとする。ただし、ピークの半値幅はピーク極大波数の増加に伴い増大する傾向にあるので、ピークの半値幅(a)、ピーク極大波数(b)とから計算される(a)/(b)の値を孔径の均一性評価の指標とした。優れた分離特性を発現するためには、孔径均一性は高い方が好ましく、前記(a)/(b)の値においては1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。また、ポリマーアロイの構造は均一である程良いので、(a)/(b)の下限値は特に限定されないが、通常0.1以上の値となる。本発明におけるピークの半値幅とはピークの頂点(点A)からグラフ縦軸に平行な直線を引き、該直線とスペクトルのベースラインとの交点(点B)としたとき、(点A)と(点B)を結ぶ線分の中点(点C)におけるピークの幅である。なお、ここで言うピークの幅とは、ベースラインに平行で、かつ(点C)を通る直線上の幅のことである。ここで、膜の構造サイズが膜厚方向で孔径が変化する場合は、例えば中空糸膜で膜の内表面側が緻密で外表面側に粗大化するような傾斜構造の膜の場合、内表面側でのピーク半値幅と外表面側のピーク半値幅に分けて評価することとし、両ピーク半値幅から計算した(a)/(b)の値が1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。
【0018】
多孔体を分離膜として用いる場合、その厚さが薄すぎると分離特性が低下するだけでなく強度が低下し使用時に破壊する可能性があり好ましくない。逆に厚すぎると分離に長時間要するため好ましくない。したがって、多孔体の厚さは0.1μm以上5mm以下が好ましく、1μm以上2mm以下がより好ましく、5μm以上1mm以下がさらに好ましい。
【0019】
多孔体の形状としては特に限定されるものではないが、分離膜として用いる場合はシート状の平膜やコイル状の膜、中空繊維状の中空糸膜が好ましい。このうち中空糸膜は分離膜の面積を大きくとることができるため特に好ましい。
【0020】
かかる構造を有する多孔体を得る好ましい方法として、本発明によれば、ポリマー(P)、オリゴマー(O)、モノマー(M)の合計量を100重量%としたとき、繰り返し単位(R)を主成分とするポリマー(P)を1重量%以上80重量%以下と、繰り返し単位(R)を主成分とするオリゴマー(O)および/または繰り返し単位(R)を与えるモノマー(M)を20重量%以上99重量以下を含む混合物からオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することで、平均孔径が0.1nm以上100nm以下に制御された多孔体を得ることができる。本方法により、ポリフェニレンスルフィドなど溶媒への溶解性が極めて低く、溶液製膜が事実上不可能なポリマーでもナノオーダーに孔径が均一に制御された多孔体を得ることができる。例えば、ポリアリーレンスルフィドを主成分とする多孔体の場合は、ポリアリーレンスルフィドとオリゴアリーレンスルフィドおよび/またはアリーレンスルフィドモノマーの混合物からオリゴアリーレンスルフィドおよび/またはアリーレンスルフィドモノマーを除去することで、平均孔径が0.1nm以上100nm以下に制御されたポリアリーレンスルフィドを主成分とする多孔体を得ることができる。異なる種類の繰り返し単位(R)を主成分とするポリマーとオリゴマーおよび/またはモノマーの組み合わせの場合、混合物の相溶性が悪く粗大相分離してしまうため、微細な多孔体を得ることが困難である。
【0021】
ここで、繰り返し単位(R)を主成分とするポリマー(P)、繰り返し単位(R)を主成分とするオリゴマー(O)とは、ポリマー(P)またはオリゴマー(O)に含まれる当該繰り返し単位(R)が50重量%以上であるポリマー(P)またはオリゴマー(O)をさし、当該繰り返し単位の含有量は80重量%以上であることが好ましい。
【0022】
ポリアリーレンスルフィドを主成分とする多孔体とは、オリゴアリーレンスルフィドおよび/またはアリーレンスルフィドモノマーを除去した後の多孔体の全重量の50重量%以上がポリアリーレンスルフィドおよび/またはポリアリーレンスルフィド共重合体で構成される多孔体を指す。
【0023】
ポリマーの分子量については特に限定はないが、低すぎると溶媒によるオリゴマーおよび/またはモノマー除去の過程で溶解する危険性がある他、多孔体の強度が低くなり分離膜に用いることができなくなるため好ましくない。逆に分子量が高すぎると溶融時の粘度が高くなり溶融製膜が困難となるため、例えばポリフェニレンスルフィドの場合、重量平均分子量は1万以上100万以下が好ましく、1.5万以上50万以下がより好ましく、2万以上10万以下がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィーから得られる重量平均分子量である。
【0024】
一方、オリゴマーの分子量については、高すぎると、オリゴマーおよび/またはモノマー除去の過程で溶解するのが困難となるため好ましくないことから、繰り返し単位(R)数は80以下が好ましく、60以下がより好ましく、40以下がさらに好ましい。ここで、繰り返し単位(R)数は、マススペクトル分析により行うこととし、マススペクトル分析が困難な場合はゲルパーミュエーションクロマトグラフィーから得られる数平均分子量を繰り返し単位(R)数で除した値とする。一方、分子量が低い場合はオリゴマーおよび/またはモノマー除去の過程での溶解性に支障をきたさないことから、低分子量側の分子量は限定されない。また、オリゴマーの分子形体は直鎖化合物、グラフト化合物、環状化合物が好ましいが、このうち環状化合物は末端官能基の影響が無いためより好ましい。
【0025】
本発明の多孔体の製造方法においては、オリゴマーおよび/またはモノマーには可溶で、かつポリマーには不溶の成分(L)を混合物へ添加することで、ポリマーとオリゴマーおよび/またはモノマーの相溶性を低下させることで、スピノーダル分解を誘発させ、相分離構造サイズを制御することが可能となる。成分(L)はポリマー系により異なるが、ポリフェニレンスルフィドの場合、ポリエーテルイミド、ポリエチレングリコール、セルロースアセテートプロピオネート、ポリビニルブチラール、ポリα−メチルスチレン、ポリイソブチルメタクリレート等が挙げられる。また、成分(L)の濃度は、高すぎると除去が困難となり、逆に低すぎるとスピノーダル分解を誘発する効果が低下するため好ましくない。したがって、オリゴマーおよびモノマーに対して0.001〜50重量%の割合で添加することが好ましく、0.005〜25重量%の割合で添加することがより好ましく、0.01〜10重量%の割合で添加することがさらに好ましい。ここで、成分(L)添加量は、混合物におけるポリマー(P)、オリゴマー(O)、モノマー(M)の比率計算((P)+(O)+(M)=100重量%)には含めないものとする。なお、成分(L)は最終的に除去されることが好ましいが、多孔体の使用上不都合が生じない限り多孔体中に残存していても良い。
【0026】
次に、スピノーダル分解について説明する。
【0027】
一般に、2成分以上の樹脂からなるポリマーアロイには、これらの組成に対して、ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な全領域において相溶する相溶系や、逆に全領域で非相溶となる非相溶系や、ある領域で相溶し、別の領域で相分離状態となる、部分相溶系があり、さらにこの部分相溶系には、その相分離状態の条件によってスピノーダル分解によって相分離するものと、核生成と成長によって相分離するものがある。
【0028】
スピノーダル分解による相分離とは、異なる2成分以上の樹脂組成および温度に対する相図においてスピノーダル曲線の内側の不安定状態で生じる相分離のことを指し、また核生成と成長による相分離とは、該相図においてバイノーダル曲線の内側であり、かつスピノーダル曲線の外側の準安定状態で生じる相分離のことを指す。
【0029】
かかるスピノーダル曲線とは、組成および温度に対して、異なる2成分以上の樹脂を混合した場合、相溶した場合の自由エネルギーと相溶しない2相以上における自由エネルギーの合計との差(ΔGmix)を濃度(φ)で二回偏微分したもの(∂ΔGmix/∂φ)が0となる曲線のことであり、またスピノーダル曲線の内側では、∂ΔGmix/∂φ<0の不安定状態であり、外側では∂ΔGmix/∂φ>0である。
【0030】
またかかるバイノーダル曲線とは、組成および温度に対して、系が相溶する領域と相分離する領域の境界の曲線のことである。
【0031】
ここで本発明における相溶する場合とは、分子レベルで均一に混合している状態のことであり、具体的には異なる2成分以上の樹脂を主成分とする相がいずれも0.1nm以上の相構造を形成していない場合を指し、また、非相溶の場合とは、相溶状態でない場合のことであり、すなわち異なる2成分以上の樹脂を主成分とする相が互いに0.1nm以上の相構造を形成している状態のことを指す。相溶するか否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanser Publishers,Munich Viema New York,P64,に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。
【0032】
詳細な理論によると、スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶した混合系の温度を、不安定領域の温度まで急速にした場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長に単色化され、構造周期(Λm)で両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った両相連続構造を形成する。この両相連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
さらに上述のスピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)は熱力学的に下式のような関係がある。
Λm〜[│Ts−T│/Ts]−1/2
(ここでTsはスピノーダル曲線上の温度)
【0033】
ここで本発明でいうところの両相連続構造とは、混合する樹脂の両成分がそれぞれ連続相を形成し、互いに三次元的に絡み合った構造を指す。この両相連続構造の模式図は、例えば「ポリマーアロイ 基礎と応用(第2版)(第10.1章)」(高分子学会編:東京化学同人)に記載されている。
【0034】
スピノーダル分解では、この様な初期過程を経た後、波長の増大と濃度差の増大が同時に生じる中期過程、濃度差が共存組成に達した後、波長の増大が自己相似的に生じる後期過程を経て、最終的には巨視的な2相に分離するまで進行するが、本発明においては、最終的に巨視的な2相に分離する前の所望の構造周期に到達した段階で構造を固定すればよい。また中期過程から後期過程にかける波長の増大過程において、組成や界面張力の影響によっては、片方の相の連続性が途切れ、上述の両相連続構造から分散構造に変化する場合もある。本発明においては、共連続構造から完全に分散構造となってしまうと、オリゴマーおよび/またはモノマー除去による多孔構造形成が困難となるため好ましくない。
【0035】
スピノーダル分解を実現させるためには、2成分以上からなる樹脂を相溶状態とした後、スピノーダル曲線の内側の不安定状態とすることが必要である。本発明では、同一の繰り返し単位(R)を主成分とするポリマーとオリゴマーおよび/またはモノマーの混合物を相溶状態とした後、成分(L)を混合物へ添加することでスピノーダル曲線の内側の不安定状態とし、スピノーダル分解を誘発させることが可能となる。
【0036】
部分相溶系において、溶融混練により相溶化させるには、通常の押出機が用いられるが、2軸押出機を用いることが好ましい。相溶化のための温度は、部分相溶系の樹脂が相溶する条件である必要がある。溶融混練により相溶状態としたポリマーアロイをスピノーダル曲線の内側の不安定状態として、スピノーダル分解せしめるに際し、不安定状態とするための温度、その他の条件は樹脂の組み合わせによっても異なり、一概にはいえないが、相図に基づき、簡単な予備実験をすることにより設定することができる。本発明においては前記の如く、初期過程の構造周期を特定の範囲に制御した後、中期過程以降でさらに構造発展させて本発明で規定する特定の両相連続構造とすることが好ましい。
【0037】
多孔体の性能は、空孔率が大きく左右する。特に分離膜として使用する場合は、空孔率が低すぎると物質をふるい分けする速度が低下し、十分な性能を発現できないおそれや、連続孔を形成できないおそれがある。逆に空孔率が高すぎると、構造体としての強度が低下するため使用することが困難となる。したがって、本発明における空孔率は、多孔体におけるポリマー(P)の占める体積を(A)とし、多孔体の空孔体積を(B)とするとき、(C)=(B)/((A)+(B))で計算される空孔率(C)が0.20以上0.99以下が好ましく、0.30以上0.90以下がより好ましく、0.50以上0.85以下がさらに好ましい。
【0038】
空孔は混合物からオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することで形成されるため、空孔率は混合物におけるオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)の割合とほぼ等しい。したがって、混合物におけるオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)は、ポリマー(P)、オリゴマー(O)、モノマー(M)の合計量を100重量%として、20重量%以上99重量以下が好ましく、30重量%以上90重量%以下がより好ましく、50重量%以上85重量%以下がさらに好ましい。
【0039】
本発明の多孔体を成形する際には、通常、ポリマーとオリゴマーおよび/またはモノマーを含む混合物とする際と同時もしくは混合した後であってかつ、多孔を形成する前に成形し、その後オリゴマーおよび/またはモノマーを除去して多孔を形成する方法が採用される。成形形状は、任意の形状が可能である。成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形などを挙げることができるが、中でも押出成形は様々な形状の口金を活用して中空糸状やフィルム状に成形でき、その後中空糸分離膜や平膜とすることができるため好ましい。また、射出成形も射出時の可塑化工程で相溶解させ、射出後、スピノーダル分解し金型内で熱処理と構造固定化が同時にできることから好ましい。オリゴマーおよび/またはモノマーの除去のしやすさの点から、成形形状は厚みを0.1μm以上5mm以下とすることが好ましい。
【0040】
繰り返し単位(R)を主成分とするポリマー(P)を1重量%以上80重量%以下と、繰り返し単位(R)を主成分とするオリゴマー(O)および/または繰り返し単位(R)を与えるモノマー(M)を20重量%以上99重量以下含む混合物からオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去する方法としては、溶媒を用いてオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を選択的に溶解させて除去する方法や、オリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を分解させて除去する方法がある。このうち、オリゴマー(O)および/またはモノマー(M)の分解による方法は、ポリマー(P)も分解する危険性があり、分解反応の選択には注意が必要である。一方、溶媒を用いてオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を選択的に溶解除去する方法は、除去対象物質が比較的低分子量であるため、ナノスケールの微細な細孔径性も可能であり、好ましい。好適な溶媒は、ポリマー(P)は溶解せずにオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)溶解する溶媒、またはポリマー(P)は溶解しにくくオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を溶解しやすい溶媒が好ましいため、ポリマー系により異なるが、簡単な溶解性試験で適宜選択可能である。例えば、ポリフェニレンスルフィドの場合は、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、1−クロロナフタレン、クロロホルム、パラキシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が好適である。
【0041】
本発明の多孔体は、その微細かつ均一な連続多孔を活かして分離膜またはその支持体として利用できる。分離膜またはその支持体の例として、化石燃料から発生した炭酸ガスの回収用分離膜および分離膜支持体といった環境エネルギー分野、電子工業・化学工業・機械工業におけるプロセス用水製造、海水淡水化による飲料水の製造、医薬品、食品、化粧品製造における有用物質の分離・濃縮、人工腎臓や血漿分離膜などの医療分野等が挙げられる。
【0042】
多孔体の分離膜以外に電池セパレータや低誘電率材料としてプリント回路基材および積層板に利用できるほか、インバーターやスイッチング電源から高周波成分の漏洩電流を防ぐカバーやシール部材などにも利用できる。また、広い表面積を活かして吸着体、触媒担体等にも利用可能である。
【0043】
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
(ポリフェニレンスルフィド樹脂の分子量測定)
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (サンプル濃度:約0.2重量%)
標準物質:ポリスチレン(PSS製 ps8124,ps12034,ps18074,ps23025)。
【0045】
(環状PPSオリゴマーの準備)
攪拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2.96kg(71.0モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を11.44kg(116モル)、酢酸ナトリウム1.72kg(21.0モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水14.8kgおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
【0046】
次に、p−ジクロロベンゼン10.3kg(70.3モル)、NMP9.00kg(91.0モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで攪拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水1.26kg(70モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー<1>を得た。このスラリー<1>を20.0kgのNMPで希釈しスラリー<2>を得た。80℃に加熱したスラリー<2>10kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、メッシュオン成分としてスラリーを含んだ顆粒状PPS樹脂を、濾液成分としてスラリー<3>を約7.5kg得た。
【0047】
得られたスラリー<3>1000gをロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換してから、減圧下100〜150℃で1.5時間処理した後に、真空乾燥機で150℃、1時間処理して固形物を得た。この固形物にイオン交換水1200g(スラリー<3>の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分攪拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水1200gを加えて70℃で30分攪拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィド混合物1を11.0g得た。このポリフェニレンスルフィド混合物のGPC測定を行った結果、数平均分子量(Mn)は5200、質量平均分子量(Mw)は28900であり、クロマトグラムを解析した結果、分子量5000以下の成分の質量分率は39%、分子量2500以下の成分の質量分率は32%であった。ポリフェニレンスルフィド混合物1を5g分取し、溶剤としてクロロホルム120gを用いて、浴温約80℃でソックスレー抽出法により3時間ポリフェニレンスルフィド混合物と溶剤を接触させ、抽出液を得た。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。
【0048】
この抽出液スラリーからエバポレーターを用いてクロロホルムを留去した後、真空乾燥機70℃で3時間処理して固形物2.1g(ポリフェニレンスルフィド混合物1に対し、収率42%)を得た。このようにして得られた固形物は、赤外分光分析(装置;島津社製FTIR−8100A)、高速液体クロマトグラフィー(装置;島津社製LC−10,カラム;C18,検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この固形物は繰り返し単位数4〜12の環状ポリフェニレンスルフィドオリゴマー(環状PPSオリゴマーと略)を主要成分とする混合物であることがわかった。
【0049】
(実施例1〜3)
オリゴマー(O)として環状PPSオリゴマーを、ポリマー(P)として重量平均分子量5万のポリフェニレンスルフィド(PPSと略)を表1の組成で仕込み、リップ間隔0.2mmに調整したT−ダイ付き二軸溶融混練機HK−25D(パーカーコーポレーション社製)に供し、300℃で溶融製膜を実施した。ドラム温度を60℃とし、巻き取り速度を調整することにより、約150μm厚のPPSポリマー/環状PPSオリゴマー混合物フィルムを作製した。得られたフィルムを直径5cmの円形状に切り出し、100℃のN−メチル−2−ピロリドン100mlに12時間浸漬し、環状PPSオリゴマーを溶解除去した。N−メチル−2−ピロリドン20mlでリンスし、2Lの超純水1時間浸漬を3回繰り返し、溶媒を水に置換した。水を含浸した状態で凍結し、凍結乾燥を行い、PPS多孔質フィルムを得た。
【0050】
該PPS多孔質フィルムの断面を透過型電子顕微鏡を用い、倍率200,000倍で観察して得られた一片70nmの正方形の画像をフーリエ変換し、波数を横軸に強度を縦軸にプロットしたグラフのピーク波数と半値幅から平均孔径と均一性の指標である(a)/(b)を求めた。また、PPS多孔質フィルムの体積(A)を(フィルム面積)×(フィルム厚さ)から計算し、フィルム質量と密度からPPS体積(B)を導出し、計算式(C)=(B)/((A)+(B))空孔率(C)を求めた。なお、本実施例に使用したPPSの密度は1.34g/cmである。結果を表1に示す。均一な多孔構造を有するポリフェニレンスルフィドを主成分とする多孔体であった。
【0051】
【表1】

【0052】
(比較例1〜3)
窒素置換したオートクレーブに重量平均分子量5万のポリフェニレンスルフィド(PPSと略)、ジエチレングリコール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を表2の組成で投入し、250℃加圧条件下で溶解した。この溶液をオリフィス型二重円筒型口金の外側の管より235℃で吐出し、空気中を22mm通過した後、NMP60%の凝固浴中に導き中空糸を得た。この際、内部注入液体としてジエチレングリコール40重量%、NMP57重量%、水3重量%からなる液体を内側の管より吐出した。得られた中空糸の測定結果を表2に示す。
【0053】
中空系内裏面側に比較的微細な空孔を有するものの、外表面側に粗大な空孔があるため、平均孔径は100nm以上であった。
【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の製造方法で得られる多孔体は、孔径を微細かつ均一に制御することが可能であり、その結果、分離膜などとして用いたときに優れた特性を有する多孔体を得ることができる。特に、ポリフェニレンスルフィドなど溶媒への溶解性が極めて低く、溶液製膜が事実上不可能なポリマーでもナノオーダーに孔径が均一に制御された多孔体を得ることができる。さらに、微細で均一な多孔を有することを活かして、電池セパレータや低誘電率材料としてプリント回路基材および積層板に利用できるほか、インバーターやスイッチング電源から高周波成分の漏洩電流を防ぐカバーやシール部材などにも利用できる。また、広い表面積を活かして吸着体、触媒担体等にも利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンスルフィドを主成分とする多孔体であって、平均孔径が0.1nm以上100nm以下であることを特徴とする多孔体
【請求項2】
多孔体におけるポリアリーレンスルフィドの占める体積を(A)とし、多孔体の空孔体積を(B)とするとき、(C)=(B)/((A)+(B))で計算される空孔率(C)が0.20以上0.99以下であることを特徴とする請求項1に記載の多孔体。
【請求項3】
前記多孔体の平均孔径の10倍以上100倍以下の長さを一辺とする正方形の視野で撮影された顕微鏡画像をフーリエ変換して得られる、横軸が波数、縦軸が強度からなるグラフの曲線において、ピーク半値幅(a)、該ピークの極大波長(b)とするとき0<(a)/(b)≦1.2であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔体。
【請求項4】
前記多孔体が厚さが0.1μm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の多孔体。
【請求項5】
多孔体の形状が中空糸状であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の多孔体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の多孔体からなる分離膜。
【請求項7】
分離対象物質が気体であることを特徴とする請求項6に記載の分離膜。
【請求項8】
気体が炭酸ガスであることを特徴とする請求項7に記載の分離膜。
【請求項9】
ポリマー(P)、オリゴマー(O)、モノマー(M)の合計を100重量%としたとき、繰り返し単位(R)を主成分とするポリマー(P)を1重量%以上80重量%以下と、繰り返し単位(R)を主成分とするオリゴマー(O)および/または繰り返し単位(R)を与えるモノマー(M)を20重量%以上99重量以下を含む混合物から、オリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することを特徴とする多孔体の製造方法
【請求項10】
繰り返し単位(R)がポリアリーレンスルフィドを構成する繰り返し単位であることを特徴とする請求項9に記載の多孔体の製造方法。
【請求項11】
ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする請求項9または10に記載の多孔体の製造方法。
【請求項12】
オリゴマー(O)の繰り返し単位(R)の数が2以上100以下であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
【請求項13】
オリゴマー(O)が環状化合物であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
【請求項14】
ポリマー(P)とオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を含む混合物におけるオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)の体積を(D)、ポリマー(P)の体積を(E)とするとき、(F)=(D)/((D)+(E))で計算されるオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)の体積比率(F)が0.20以上0.99以下であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
【請求項15】
オリゴマー(O)および/またはモノマー(M)には可溶で、かつポリマー(P)には不溶の成分(L)をオリゴマー(O)およびモノマー(M)に対して0.001〜50重量%の割合で混合物へ添加することを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
【請求項16】
ポリマー(P)とオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を含む混合物を成形した後にオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
【請求項17】
ポリマー(P)とオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を含む混合物を膜厚0.1μm以上5mm以下の平膜または中空糸膜に成形した後にオリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することを特徴とする請求項16に記載の多孔体の製造方法。
【請求項18】
スピノーダル分解により相分離構造を形成した成形品から、オリゴマー(O)および/またはモノマー(M)を除去することを特徴とする請求項16または17に記載の多孔体の製造方法。
【請求項19】
オリゴマー(O)および/またはモノマー(M)の除去を有機溶媒による溶出により行うことを特徴とする請求項9〜18のいずれかに記載の多孔体の製造方法。

【公開番号】特開2012−233018(P2012−233018A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100283(P2011−100283)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】