説明

多孔体及び製造方法

【課題】 強固かつねばりがある多孔体、及び、多くのエネルギーと高額の設備を必要としない、その多孔体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、セル膜が除去されセル骨格のみを備える三次元網状構造のウレタンフォームに、無機バインダーと導電性フィラーを含むスラリーを含浸し、前記スラリーを含浸したウレタンフォームを乾燥させることにより、前記セル骨格表面上に無機層を形成し、前記無機層を有するウレタンフォームのポリウレタン樹脂が熱分解する温度以上であって、前記無機層が熱分解する温度未満の温度において、前記ウレタンフォームを熱分解し、前記無機層からなる三次元網状構造の多孔体に電気めっきを行うことにより、前記無機層表面上に金属層を形成し、導電性を有する無機層と金属層を有する骨格を備える三次元網状構造の多孔体の製造方法及びその多孔体に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔体及びその製造方法に関し、特に、無機組成物と金属の複合からなる三次元網状構造を有する多孔体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウレタンフォームなどの三次元網状構造体で通気性の高い樹脂骨格に、金属粉をバインダーで付着させてから不活性雰囲気中高温に昇温して、粉末冶金法に従い金属粉同士を焼結する方法、又は電気めっきにより樹脂骨格表面を析出させる方法により、三次元網状構造を有する金属多孔体を得る方法が知られている。これらは、ニッケル水素電池などの2次電池集電体、オイルミスト、煤煙、又は内燃機関からの排気ガス中の有害成分を捕捉する耐熱フィルターなどとして利用されている。
【0003】
これらに関連する先行技術として、特許文献1、2、3などがある。特許文献1では、電気めっきを利用するものの内、樹脂骨格に無電解メッキを施してから電気めっきを行うことが開示されている。
また、特許文献2では、複合多孔質構造に対し導電性を付与できるようにする導電性重合体の化学的被着方法において、その構造の厚み全体の中で、その多孔性をふさぐことなくこの構造の内部で実施され、この構造に対しその展開した表面全体の上で連続的な導電性を付与することが開示されている。
また、特許文献3では、連続気孔構造を有する合成樹脂製多孔質体の表面に、ニッケル化合物を含む水溶液からチタン化合物を含む還元剤を用いて析出したニッケルの導電性層が形成され、この導電性多孔質体を陰極とする電気めっきにより、当該導電性多孔質体の表面に連続した金属めっき層が形成された金属多孔質体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−174484号公報
【特許文献2】特表2002−507660号公報
【特許文献3】特開2000−353527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の先行技術では、電池電極として利用する場合、ウレタンフォームなどの樹脂成分の残留は充放電寿命の低下などの電気特性悪化につながることが見いだされ、また、耐熱フィルターとして利用する場合、多孔性骨格の内部に残されたウレタン等の樹脂成分は高温時に熱分解し、可燃性ガスを発生するため、火災などの災害につながる危険があることが見いだされた。そのため、三次元網状構造のテンプレートとなるウレタンフォーム等の連通多孔性樹脂は、熱分解して酸化し二酸化炭素等の気体成分として除去する必要がある。上記の先行技術では、ニッケル等の耐熱金属の表面の酸化物層を還元雰囲気下、高温で処理することで再生する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、金属被覆後ウレタンフォームを熱分解する時が強度的に最も不安定となり、熱分解速度が速いと発生したガスにより金属層が割れたり、熱分解で発生した炭素元素が高温でも残留して金属と反応したりする。また、樹脂成分の酸化除去後、金属も表面から酸化するため、体積膨張により金属層自体にも割れが発生する場合がある。このような金属層の劣化はその後の還元処理工程でも再生は困難である。また、そもそも、還元処理工程は、1000°Cにも及ぶ高温で、かつ酸素を遮断して水素ガスなどの還元性気体雰囲気を必要とするため、多くのエネルギーと高額の設備が必要である。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、骨格が無機組成物と金属の複合からなり、強固かつねばりがある多孔体、及び、多くのエネルギーと高額の設備を必要としない、その多孔体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、セル膜が除去されセル骨格のみを備える三次元網状構造のウレタンフォームに、無機バインダーと導電性フィラーを含むスラリーを含浸し、前記スラリーを含浸したウレタンフォームを乾燥させることにより、前記セル骨格表面上に無機層を形成し、前記無機層を有するウレタンフォームのポリウレタン樹脂が熱分解する温度以上であって、前記無機層が熱分解する温度未満の温度において、前記ウレタンフォームを熱分解し、前記無機層からなる三次元網状構造の多孔体に電気めっきを行うことにより、前記無機層表面上に金属層を形成し、導電性を有する無機層と金属層を有する骨格を備える三次元網状構造の多孔体の製造方法が提供される。
これによれば、多くのエネルギーと高額の設備を必要とせず、骨格が無機組成物と金属の複合からなり、強固かつねばりがある多孔体の製造方法を提供することができる。
【0009】
さらに、前記スラリーは、骨材をさらに含むことを特徴としてもよい。
これによれば、確実に無機層を形成することができる、多孔体の製造方法を提供することができる。
【0010】
さらに、前記ウレタンフォームを熱分解する前に、前記無機層に含まれる水分が5%以下になるまで前記ウレタンフォームを乾燥することを特徴としてもよい。
これによれば、強固な無機層を形成した後ウレタンフォームを熱分解するため、強度的に安定した状態でウレタンフォームを熱分解することができるので、結果として強固な骨格を備える多孔体の製造方法を提供することができる。
【0011】
さらに、前記導電性フィラーは、ポリウレタン樹脂が熱分解する温度未満の温度において焼失又は膨張しない成分からなることを特徴としてもよい。
これによれば、無機層の導電性が維持され、また、電気めっき浴中で導電性フィラーから核成長させる電気メッキを行うことにより、無機層と強固に結びついた金属層を形成した多孔体の製造方法を提供することができる。
【0012】
別の観点によれば、上記課題を解決するために、骨格のみを備える三次元網状構造を有する多孔体であって、前記骨格は、中空部と、前記中空部の周囲に無機層と、前記無機層の周囲に金属層と、を備えたことを特徴とする多孔体が提供される。
この構成によれば、骨格が無機層と金属層の複合からなることにより、さらに中空であることにより、強固かつねばりがある多孔体を提供することができる。
【0013】
別の観点によれば、上記課題を解決するために、セル膜が除去されセル骨格のみを備える三次元網状構造のウレタンフォームに、無機バインダーと導電性フィラーを含むスラリーを含浸し、前記スラリーを含浸したウレタンフォームを乾燥させることにより、前記セル骨格表面上に無機層を形成し、前記無機層を備えたウレタンフォームのポリウレタン樹脂が熱分解する温度以上であって、前記無機層が熱分解する温度未満の温度において、前記ウレタンフォームを熱分解し、前記無機層からなる三次元網状構造の多孔体に電気めっきを行うことにより、前記無機層表面上に金属層を形成することによって得られる、三次元網状構造を有する骨格は中空であって、前記骨格の断面は、内層に導電性を有する前記無機層を、外層に前記金属層を備える多孔体が提供される。
この構成によれば、骨格が無機層と金属層の複合からなることにより、さらに中空であることにより、強固かつねばりがある多孔体を提供することができる。
【0014】
別の観点によれば、上記課題を解決するために、上記多孔体を使用したことを特徴とする電池用電極基板が提供される。
この構成によれば、電導性及び強度が高く、製造費用も安価な多孔体を使用した電池用電極基板を提供することができる。
【0015】
別の観点によれば、上記課題を解決するために、上記多孔体を使用したことを特徴とする耐熱性フィルターが提供される。
この構成によれば、耐熱性及び強度が高く、製造費用も安価な多孔体を使用した耐熱性フィルターを提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、骨格が無機組成物と金属の複合からなり、強固かつねばりがある多孔体、及び、多くのエネルギーと高額の設備を必要としない、その多孔体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を更に詳細に説明する。まず、本発明に係る製造方法について説明する。
本発明に用いられるウレタンフォームにおいては、多孔体の目的や用途等に応じて、その密度やセル数は適宜選択される。また、その大きさや形状も、同様に適宜選択される。
【0018】
ウレタンフォームは、通常、多面体構造を備えるセルからなり、セル骨格とセル膜からなるが、本発明に用いられるウレタンフォームは、溶解処理等によりセル膜の除去(除膜処理)を行い、実質的に、三次元網状構造を有する骨格のみからなるものである。
【0019】
また、無機バインダーの溶液を準備し、それに導電性フィラーを、好ましくはさらに骨材を混合、撹拌し、導電性のあるスラリーを作成しておく。無機バインダーとしては、リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、低融点ガラス、水溶性アルカリケイ酸塩、チタンポリマ、シロキサンポリマなどを用いることができるが、これに限定されない。
【0020】
導電性フィラーとしては、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維(粉)、耐熱金属粉(ニッケル、クロム、ステンレス、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、タングステン、モリブデンなど)、炭化チタン、炭化クロムなどの導電性金属炭化物、耐熱金属めっきガラス粒子などを用いることができるが、これに限定されない。なお、これらは骨材の機能も兼ねることができる。なお、導電性フィラーは、後述のポリウレタン樹脂が熱分解する温度未満の温度において焼失又は膨張しない成分からなることが好ましい。例えば、黒鉛、ニッケル、クロムなどである。
【0021】
骨材としては、導電性が確保できる限り、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化鉄などの絶縁性のセラミック粒子、ガラス粒子などを用いることができるが、これに限定されない。また、含水塩や加熱により脱水重合反応を起こす無機組成物を利用する場合、過熱とともに変化に伴う体積収縮が大きいので、無機層が形成されなかったり、割れたりすることがある。これを避けるためには、導電性を付与するフィラーとの兼用又は導電性フィラーと共存させる絶縁性固体を配合することが望ましい。
【0022】
まず、そのスラリーを、上記の三次元網状構造のウレタンフォームに含浸し、例えば、そのウレタンフォームをロールなどで絞ることにより、ウレタンフォームに所定量のスラリーを付着させる。付着させるスラリーの量は、ウレタンフォームの重量を基準として2〜5倍とされ、付着量が少ないと、取り扱えないほどに強度が低くなる。また、付着量が多いと重量が重くなる。
なお、所定量は、多孔体の目的や用途等に応じて、適宜選択される。この量により、次工程で形成される無機層の厚さが規定される。
【0023】
次に、上記スラリーを含浸したウレタンフォームを乾燥させ、付着したスラリーに含まれる水分を脱水し、ウレタンフォームのセル骨格表面上に無機層を形成する。なお、好ましくは、次工程であるウレタンフォームを熱分解する前に、無機層に含まれる水分が5%以下になるまでウレタンフォームを乾燥(脱水)するとよい。乾燥後の水分は少ないほど無機層が強固になるので好ましいが、乾燥時間、乾燥にかかるエネルギー等を考慮すると5%程度が妥当である。
【0024】
また、次工程であるウレタンフォームを熱分解する工程での温度上昇過程で、水分を脱水することができる場合には、この工程は、次工程と併せて一連の工程として行うことができる。この場合、60〜200℃で乾燥することができ、さらにウレタンフォームの分解温度以下の60〜150℃とすることが好ましい。
【0025】
次に、無機層が形成されたウレタンフォームを加熱することにより、ポリウレタンの樹脂成分を熱分解する。加熱する温度は、ウレタンフォームのポリウレタン樹脂が熱分解する温度以上であって、ウレタンフォームのセル骨格表面上に形成された無機層が熱分解する温度未満の温度である。この温度で加熱することにより、ウレタンフォームのポリウレタン樹脂のみが熱分解し、無機層が強固に焼結されることとなる。この段階で、結果として、骨格自体が、導電性を有する無機成分からなり、中空パイプ形状をなす、三次元網状構造の多孔体が作成された。なお、この工程における温度は、例えば、350〜600℃、好ましくは400〜600℃である。この温度範囲は、ウレタンフォームを短時間に分解し、無機層の緻密化が速やかに進む範囲である。
【0026】
次に、前工程で作成された、無機成分からなる三次元網状構造の多孔体に電気めっきを行うことにより、無機層の表面上にニッケルなどの金属層を形成する。多孔体の骨格を形成する無機層は導電性を有するので、多孔体を電気めっきすることができる。金属層の厚さは、多孔体の目的や用途等に応じて、適宜選択される。
上記無機層の密度は、30kg/m3以上が必要であり、上記金属層は、100kg/m3以上が必要である。後工程でウレタンフォームが熱分解処理された後も、多孔体が形状を保持するためには、上記密度以上の付着量が必要である。
【0027】
上述の工程を経て得られた多孔体は、通常、洗浄・乾燥の後、さまざまな用途に用いられることとなり、最終的に、導電性を有する無機層と金属層を有する骨格を備える三次元網状構造の多孔体が得られた。かかる製造方法によれば、製造収率も高い。なお、三次元網状構造を有するこの多孔体の骨格は中空であって、この骨格の断面は、中空の周りに、内側の層に導電性を有する無機層を備え、外側の層に金属層を備える多孔体であると言うこともできる。
【0028】
また、本発明に係る多孔体は、骨格のみを備える三次元網状構造を有する多孔体であって、この骨格は、中空部と、その中空部の周囲に無機層と、その無機層の周囲に金属層とを備える多孔体である。無機層の無機組成物は、上述の無機バインダーと導電性フィラーの成分から構成され、場合によっては、上述の骨材の成分も含み構成される。また、金属層はニッケルなどの金属から成る。この構成によれば、骨格が無機層と金属層の複合からなることにより、金属層がたとえ薄くても、強固かつねばりがある多孔体を提供することができる。即ち、無機層は高い硬度を有するものの脆弱性を有する場合があるが、その脆弱性を金属層の塑性により補完することができる。さらに骨格が中空であることによっても、三次元網状構造を強固なものとしている。
【実施例】
【0029】
<実施例1>
バインダーは、モノリン酸アルミニウム20%水溶液20gと炭酸水素ナトリウム2gをイオン交換水10gに添加し溶解したものである。導電性フィラーとして、黒鉛(昭和電工製、人造黒鉛微粉末UF−G5)10gを加えた。さらに、骨材として、焼成カオリン(白石カルシウム製)10gを加えて、10分間ラボミキサーにて300rpmで撹拌した。セル数8個/25mmのエステル系ウレタンフォーム(密度30kg/m3、セル膜溶解処理品)200×250×10mmにウェット状態で100g重量増するように含浸して室温で24時間放置して乾燥させた。この段階で、手で取り扱える強度を持っていた。
【0030】
電気炉を用い、大気中250°C30分間保持して乾燥を完全に行い、次いで10°C/分で昇温して大気中400°C30分間保持しウレタンフォームの熱分解処理を行った。炉から取り出し、室内で室温へ放冷した。この段階で、見かけ密度は98Kg/m3であった。
【0031】
外形寸法200×250mm、枠幅10mm、厚さ1.5mmのステンレス製のめっき用枠2枚で挟んで、スルファミン酸ニッケル450g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸40g/L及びピット防止剤(日本化学産業製、ピットレス−S)5ml/Lからなるスルファミン酸ニッケル浴に陰極としてデポラライズニッケルを用いて、40°C、電流密度5A/dm2(陽極)でめっきして、重量増が約100gになるまで析出させた。
【0032】
<実施例2>
バインダーは、コロイダルシリカ(日産化学製、20%濃度)20g、分散剤(中京油脂製)、ポリカルボン酸アンモニウム(50%濃度)0.4g、消泡剤(第一工業製薬製)0.1gをイオン交換水1gに添加し溶解したものである。導電性フィラーとして、黒鉛(昭和電工製、人造黒鉛微粉末UF−G5)10gを加えた。さらに、骨材として、酸化アルミニウム(昭和電工製、純度99.7%、平均粒径2μm)4gを混合して10分間ラボミキサーで撹拌する。
【0033】
セル数13個/25mmのエステル系ウレタンフォーム(密度30Kg/m3、セル膜溶解処理品)200×250×10mmにウェット状態で100g重量増するように含浸して室温で24時間放置して乾燥させた。この段階で、手で取り扱える強度を持っていた。
乾燥とウレタンフォーム熱分解工程は実施例1と同じように行った。その後の電気めっき工程も同様である。
【0034】
<実施例3>
バインダーとして、低融点ガラス(CY0019、日本フリット製)4gにケイ酸ナトリウム0.2g、水4.8g、アクリルエマルジョン(L×852、日本ゼオン製、固形分45%)1gを加えて撹拌する。導電性フィラーとして、ニッケル粉(住友金属鉱山製、SNP−YH(0.2μm品))10gを加え、10分間ラボミキサーにて300rpmで撹拌した。なお、骨材は混合しておらず、ニッケル粉で兼用した。その後、ウレタンフォームに含浸して室温で24時間放置した。
【0035】
セル数20個/25mmのエステル系ウレタンフォーム(密度30Kg/m3、セル膜溶解処理品)200×250×10mmにウェット状態で100g重量増するように含浸して室温で24時間放置して乾燥させた。この段階で、手で取り扱える強度を持っていた。
乾燥とウレタンフォーム熱分解工程は実施例1と同じように行った。その後電気めっき工程も実施例1と同様に行った。
【0036】
<実施例4>
バインダーとして、水溶性アルカリケイ酸塩ケイ酸リチウム水溶液(n=3.6、濃度23%)及びケイ酸ナトリウム(n=3.0、濃度39%)を混合して、(0.48Li2O・0.52Na2O)・3.4SiO2組成で、濃度が29%の混合アルカリケイ酸塩水溶液20gを調製した。導電性フィラーとして、ニッケル粉(住友金属鉱山製、SNP−YH(0.2μm品))10gと、ピッチ系炭素繊維粉(KGF−200 M−2007S、クレハ製、黒鉛タイプミルド品、φ14.5μm、長さ90μm)3gを添加して、10分間ラボミキサーにて300rpmで撹拌した。なお、骨材は混合しておらず、ニッケル粉でと炭素繊維粉で兼用した。
【0037】
セル数30個/25mmのエステル系ウレタンフォーム(密度30Kg/m3、セル膜溶解処理品)200×250×10mmにウェット状態で100g重量増するように含浸して室温で24時間放置して乾燥させた。この段階で、手で取り扱える強度を持っていた。
乾燥とウレタンフォーム熱分解工程は実施例1と同じように行った。その後電気めっき工程も実施例1と同様に行った。
【0038】
<実施例5>
バインダーとして、無水ケイ酸、酸化ナトリウム、酸化リチウムを、モル比1.28:1:0.28にて空気中1100°Cで溶解混合し粉砕したものを、蒸留水中でゆっくり撹拌し、完全に溶解させ、固形分38%に調製した。これから20gを取り、導電性フィラーとして、ニッケル粉(住友金属鉱山製、SNP−YH(0.2μm品))10gと、黒鉛(人造黒鉛微粉末UF−G5、昭和電工製)3gを加え、さらに、骨材として、酸化アルミニウム(昭和電工製、純度99.7%、平均粒径2μm)4gを添加し、10分間ラボミキサーにて300rpmで撹拌した。最後にホウ酸亜鉛をナトリウムに対しモル比0.075で加えて、1分間撹拌した。
【0039】
その後、ウレタンフォームにウェット状態で100g重量増するように含浸して室温で4時間放置すると硬化し、この段階で、手で取り扱える強度を持っていた。
乾燥とウレタンフォーム熱分解工程は実施例1と同じように行った。その後電気めっき工程も実施例1と同様に行った。
【0040】
<比較例>
粘結剤(アクリルエマルジョン(L×852、日本ゼオン製、固形分45%))22gと分散剤(ヘキサメタリン酸)2gと水26gのバインダーに、黒鉛(人造黒鉛微粉末UF−G5、昭和電工製)30gを混合して、10分間ラボミキサーにて300rpmで撹拌した。
【0041】
その後、ウレタンフォームにウェット状態で30g重量増するように含浸して100°Cで30分間乾燥させた。
その後、電気めっき工程を実施例1と同様に行い、次いで大気中400°C30分間処理で、ウレタンフォームの熱分解処理を行った。
なお、この比較例は、電気めっき後ウレタンフォームを熱分解し、酸化除去しただけのものであり、還元処理は行っていない。
【0042】
<実施例と比較例の密度と曲げ強度>
上述のようにして作成した実施例1〜5と比較例における多孔体は、以下のような密度と曲げ強度を有する。なお、曲げ強度の評価方法は後述する。
表1に示すように、実施例1〜5は、比較例に比べて、密度において1.5〜1.7倍弱の密度、曲げ強度においては10〜12倍の強度を有していることがわかる。これから、本発明は、密度が高く、骨格が無機組成物と金属の複合からなり、強固かつねばりがある多孔体、及び、多くのエネルギーと高額の設備を必要としない、その多孔体の製造方法を提供することができる。
なお、密度は、多孔体を洗浄した後、80°Cで30分間乾燥させた後の値である。
【0043】
【表1】

【0044】
<評価方法>
曲げ試験は、社団法人日本厨房工業会 業務用厨房設備に付属するグリス除去装置の技術基準(JAEA1994−9)記載の3点曲げ強度試験に従う。試験サンプルは、15cm×5cm×厚さ1cmとした。なお、表1における曲げ強度の単位は、10の5乗パスカルである。
【0045】
<電池用電極基板>
電池用電極基板においては、空孔率がパンチングメタル等と比較して大きくとれるために活物質の充填量を増加でき、また、空孔が三次元網状構造を有するために充填した活物質の保持力が大きいので、金属多孔体が電池用電極基板として好適に用いられる。
本発明に係る多孔体を電池用電極基板に使用すると、電導性及び強度が高く、製造費用も安価な多孔体を使用した電池用電極基板を提供することができる。
【0046】
<耐熱性フィルター>
例えば、厨房用の油除去フィルターや内燃機関の排気浄化装置などにおいては、三次元網状構造を有する金属多孔質フィルターが好適に用いられている。
本発明に係る多孔体をこのような耐熱性フィルターに使用すると、耐熱性及び強度が高く、製造費用も安価な多孔体を使用した耐熱性フィルターを提供することができる。
【0047】
尚、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル膜が除去されセル骨格のみを備える三次元網状構造のウレタンフォームに、無機バインダーと導電性フィラーを含むスラリーを含浸し、
前記スラリーを含浸したウレタンフォームを乾燥させることにより、前記セル骨格表面上に無機層を形成し、
前記無機層を有するウレタンフォームのポリウレタン樹脂が熱分解する温度以上であって、前記無機層が熱分解する温度未満の温度において、前記ウレタンフォームを熱分解し、
前記無機層からなる三次元網状構造の多孔体に電気めっきを行うことにより、前記無機層表面上に金属層を形成し、
導電性を有する無機層と金属層を有する骨格を備える三次元網状構造の多孔体の製造方法。
【請求項2】
前記スラリーは、骨材をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ウレタンフォームを熱分解する前に、前記無機層に含まれる水分が5%以下になるまで前記ウレタンフォームを乾燥することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記導電性フィラーは、ポリウレタン樹脂が熱分解する温度未満の温度において焼失又は膨張しない成分からなることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
骨格のみを備える三次元網状構造を有する多孔体であって、
前記骨格は、
中空部と、
前記中空部の周囲に無機層と、
前記無機層の周囲に金属層と、
を備えたことを特徴とする多孔体。
【請求項6】
セル膜が除去されセル骨格のみを備える三次元網状構造のウレタンフォームに、無機バインダーと導電性フィラーを含むスラリーを含浸し、
前記スラリーを含浸したウレタンフォームを乾燥させることにより、前記セル骨格表面上に無機層を形成し、
前記無機層を備えたウレタンフォームのポリウレタン樹脂が熱分解する温度以上であって、前記無機層が熱分解する温度未満の温度において、前記ウレタンフォームを熱分解し、
前記無機層からなる三次元網状構造の多孔体に電気めっきを行うことにより、前記無機層表面上に金属層を形成することによって得られる、
三次元網状構造を有する骨格は中空であって、前記骨格の断面は、内層に導電性を有する前記無機層を、外層に前記金属層を備える多孔体。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の多孔体を使用したことを特徴とする電池用電極基板。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の多孔体を使用したことを特徴とする耐熱性フィルター。

【公開番号】特開2012−111647(P2012−111647A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260226(P2010−260226)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】