説明

多孔性の金属焼結成形体の製造方法

【課題】多くの応用のために十分な機械的特性を有する、多孔性の焼結成形金属体を提供すること
【解決手段】上記課題は、多孔性の焼結成形金属体を製造する方法であって、易焼結性の金属粉末が分散した発泡性高分子粒子を発泡させて成形体を形成し、当該成形体を前記高分子が除去される熱処理に付し、且つ前記易焼結性の金属粉末を焼結して多孔性の焼結成形金属体を得ることを特徴とする方法により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性の焼結成形金属体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属フォームはいくつかの興味深い特性:固体の金属と比較してその密度が非常に低減されるという特性を有する。しかしながら、それらはまだ高い比剛性と強度を有する。衝撃の場合には、セル状構造が多量の運動エネルギーを変形エネルギーと熱に変換するので、金属フォームは衝突要素の取り込みに非常に適している。高分子フォームと比較して、金属フォームは著しく高い強度及び耐熱性を有する。さらなる潜在的な応用は、熱シールド、フィルター、触媒担体、吸音クラッド、又は印刷若しくは紙産業のための、非常に軽くフォームで満たされたローラーの製造を含む。
【0003】
様々な方法で金属フォームを製造することができる。“粉体のルート”では、金属粉末と水素化チタン粉(TIH3)等の粉末状の発泡剤とが混合され、一軸加圧成形又は押出成形により加工して発泡性の半完成部品が成形され、そしてその金属の融点へと加熱される。発泡剤はガス及びフォームを溶融した金属に放出する。その温度が維持される時間に依存して、相対的な密度、細孔径その他同種類のもの等のフォームの構造が変化する。“メルト(melt)ルート”では、ガスが金属メルトに吹き込まれ、そして発泡した金属が固化する。メルト中の気泡を安定させるために、SiC粒子等をそのメルト中に添加することもできる。
【0004】
有機結合剤としての高分子と共に金属粉末を含む熱可塑性組成物の射出成形により成形された金属体を製造することができる。これらは高度に充填された有機高分子の成形組成物である。グリーン体(green body)を形成するための熱可塑性組成物の射出成形、押出し又はプレス成形の後、有機結合剤が除去され、得られた結合剤の無いグリーン体が焼結される。また、多孔性の成形された金属体を発泡剤の併用により得ることができる。
【0005】
例えば、WO2004/067476は、金属粉末が結合剤組成物と混合され、且つ発泡性ポリスチレン粒子(EPS)が発泡剤として組み込まれた、セル状の焼結成形体の製造方法を開示している。この熱可塑的に流動する組成物は成形組成物の膨張のためにハウジング型に導入され、溶融した状態へと変換され、そして発泡される。発泡した成形組成物は固化され、有機組成物は除去され、そしてこのように処理された成形体は焼結される。発泡工程は、その成形組成物中で閉じた三次元空間を占有すると共に狭い直径分布を有するそれぞれの膨張したポリスチレンフォーム粒子の形成を伴って起こるべきである。この方法では、結合剤及び発泡性材料は、お互いに異なることが必要である。成形組成物の製造は複雑であり、且つ多数の連続する工程を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2004/067476
【特許文献2】DE10328047B3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
WO2004/067476によると、プレス加工体を形成するための粉末状のEPS含有成形組成物のプレス成形と後に続く孔あき型中での蒸気による発泡とにより、単純な形状を有する成形体が得られる。幾何学的に複雑な成形品が、公知の射出成形法を用いた成形組成物の成形及び発泡により得ることができると言われている。その方法は、EPS粒子により製造される細孔が非常に大きく、その結果としてほんのわずかしか安定化させる支材(struts)が成形体中に残らず、及びまたこれらの支材が不均一に分布されるという不具合を有する。挙句、多くの応用のためには機械的特性が不満足である材料が得られる。
【0008】
DE10328047B3には、エネルギーの導入により、及び金属粉末と金属水素化物等の発泡剤粉末とを含むペレットの少なくとも部分的な発泡により得られる金属フォームの構成要素の過半数が三次元に配置される、金属フォームからなる組成物の製造方法が記載されている。このように配置されたその金属フォーム構成要素は、隣接する金属フォーム構成要素がポジティブロック、融合により、及び/又は接着してお互いに結合されるように後処理を受ける。この方法の不具合は、その金属フォーム構成要素の製造中に、このように製造された構成要素の内部における高密度領域の制御できない形成と低い再現精度をもたらす、形成された金属フォームの部分的な崩壊が生じ得ることである。接着結合なしでは、個々の金属フォーム構成要素はお互いに接着しない。
【0009】
本発明の目的は、上述の不具合を有さない、多孔性の焼結金属成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その目的は、易焼結性の金属粉末が分散した発泡性高分子粒子が発泡して成形体を形成し、この成形されたグリーン体が、高分子が除去される熱処理に付され、且つその易焼結性の金属粉末を焼結して多孔性の焼結成形金属体を得ることを特徴とする、多孔性の焼結成形金属体を製造する方法により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
有利な実施の形態では、発泡性高分子粒子が、充填され、そして発泡性高分子粒子が蒸気及び/又は熱風を伴う処理等により発泡された後に、密閉型、好ましくは全ての面が密閉された密閉型に導入される。その型の形状(三次元形状)は、通常、将来の成形品の所望の形状に対応する。
【0012】
多くの場合には、型への導入の前に発泡性高分子粒子を予備発泡させることが好ましい。予備発泡の間、発泡性高分子粒子は高温ガス、特に、空気及び/又は蒸気の高温ガスを用いた流動化等の機械的撹拌と共に加熱される。この目的のために好適な予備発泡剤は、EPS保温材の製造から当業者にとって公知である。例えば、60〜120℃の温度が通常好適である。これらの条件下では、その粒子は、発泡剤の気化の結果として、及びまた、それらに浸透してそのビーズの内部に独立気泡構造を形成する蒸気の部分的な結果として、膨張する。予備発泡の間、その高分子粒子はお互いに溶解せず、控え目な粒子として残存する。
【0013】
将来の成形体の密度は、主に熱処理の持続期間に依存する発泡の程度によって影響を受け得る。予備発泡における熱処理の持続時間は典型的に5〜100秒である。
【0014】
予備発泡工程無しでは、その型内での発泡性高分子粒子の発泡の間に、その発泡性高分子粒子がその型内の熱せられた壁の付近で、その型の内部における粒子より大きい程度に膨張することで、その型の不均一な膨張及び充填が生じ得る。
【0015】
一般的に、型は(任意に予備発泡された)発泡性高分子粒子で部分的に充填されるのみである。発泡の間、その高分子粒子は膨張し、そして最初に不完全に充填された型をフォームで積極的に満たす。この操作の間に、その高分子粒子はお互いに融合する。
【0016】
特に、複雑な形状の場合には、型中の空の容積を有利に低く維持し、任意にその型に導入される(任意に予備発泡された)発泡性高分子粒子の層を圧縮し、そしてこのようにして好ましくない空隙を排除することもまた可能である。圧縮は、その型を振盪、転がり動作することにより、又は他の好適な手段等によって達成することができる。
【0017】
発泡は、通常、その充填された型の蒸気、熱風、熱湯又は他の熱伝達媒体を用いた加熱等により、例えば、60〜120℃、好ましくは70〜110℃への加熱により実施される。発泡はその粒子の高分子成分の容積を発泡性高分子粒子により充填された層の間隙で増大させ、そしてその粒子の容積の間の力の相互作用の結果として生じる個々の粒子の形状を生成する集合体が増大している。その高分子粒子は相互接触面で融解するので、その高分子粒子がお互いに融合して成形体(グリーン体)をもたらす。その型はグリーン体の形状と容積を排斥する。十分な圧粉体強度を有する成形体をその型から得ることができる。
【0018】
発泡の間の圧力は通常重要ではなく、一般に0.005〜0.2MPa(0.05〜2bar)である。完全な発泡の期間は、とりわけ、成形品の大きさと形状、及びまた成形品の所望の密度に依存し、広い範囲で変更可能である。
【0019】
本発明の方法は、易焼結性の金属粉末が分散した発泡性高分子粒子から出発する。発泡性高分子粒子は、好ましくは自由流動性であるか、又は容易に流れる。高分子と易焼結性の金属粉末の合計質量に対する分散した易焼結性の金属粉末の質量割合は、好ましくは60〜95質量%、特に、65〜90質量%である。高分子粒子中では、その高分子は易焼結性の金属粉末が分散する連続(粘着)層を形成する。
【0020】
発泡性高分子粒子は、好ましくは、2〜7個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、アルコール、ケトン、エーテル、ハロゲン化炭化水素、二酸化炭素、水、又はこれらの混合物等の物理的な発泡剤を含む。イソブタン、n−ブタン、イソペンタン、n−ペンタン又はこれらの混合物を用いることが好ましい。通常、発泡性高分子粒子は、その発泡性高分子粒子中のその高分子に対して2〜20質量%の、好ましくは3〜15質量%の発泡剤を含む。その発泡剤は、その発泡性高分子粒子中にその高分子の分子性溶液として、及び/又は包含された液滴として存在する。
【0021】
その発泡性高分子粒子は好ましくは実質的に球状であるが、棒状又はレンズ形のペレット等の他の形状もまた可能である。発泡性高分子粒子は、通常、0.5〜30mmの、特に、0.7〜10mmの直径(又は非球状粒子の場合には最大寸法の方向の長さ)を有する。
【0022】
その発泡性高分子粒子は様々な方法で得ることができる。
【0023】
その発泡性高分子粒子は、高分子メルト中に発泡剤と易焼結性の金属粉末を混合し、そのメルトをペレット化して発泡性の熱可塑性高分子ペレットを製造すること等により得ることができる。その発泡性高分子粒子は、好ましくは押出し法を用いて製造される。ここで、発泡剤は押出機を介して高分子メルトへと混合され、易焼結性の金属粉末が混合され、そしてその高分子メルトは型板を通して押され、ペレット化されて粒子をもたらす。そのメルトは、通常、発泡剤の導入後に冷やされる。これらの工程のそれぞれは、プラスチック加工に公知の装置又は装置の組み合わせを用いて実施することができる。その高分子メルトは重合反応器から直接取り出し、又は混合押出機若しくは別々の溶融押出機中で高分子ペレットの溶融により製造することができる。静的又は動的な混合器が発泡剤と易焼結性の金属粉末の混合のために好適である。そのメルトの冷却は混合装置中で、又は別の冷却器中で実施することができる。可能なペレット化法は、例えば、加圧した水中ペレット化、回転するナイフを用いたペレット化と冷却液のスプレー噴霧による冷却、又は噴霧によるペレット化である。
【0024】
易焼結性の金属粉末はサイド押出機を介して適切に混合される。例えば、最初に得られたそのメルト流のサブストリームを、型板を通過する前にメルト弁を介してサイドストリームに分岐させることができる。その金属粉末はサイドストリームに添加され、そしてメルト流へと均一に混合される。最後に、本流及び添加剤を含有するサイドストリームが混合され、型板を介して排出される。金属粉末を十分な精度でメルト流中に計量投入することができるようにするために、その粉末を前もって糊状にすることができる。これは、好ましくは高い粘度を有するペーストが形成されるように、その粉末がそのメルト及びその金属粉末と親和性のある液体に組み込まれることを意味する。
【0025】
好適な方法がDE10358786A1等に記載されており、これにより、参照によって完全に組み込まれている。
【0026】
もし発泡性高分子粒子の製造の間にその金属粉末の引火点を超える温度に達する場合、窒素やアルゴン等の好適な保護ガスが好ましくはその装置を通過する。
【0027】
代替として、まず、ペレットを、易焼結性の金属粉末を高分子メルト中に混合し、そのメルトをペレット化することにより製造することができる。それから、これらのペレットは加熱された水性懸濁液中でビーズに再形成され、軟化点の付近の温度で圧力容器で撹拌され、同時に発泡剤に含浸される。ビーズへのこの変換は、通常、120〜160℃、例えば、約140℃で、1〜24時間の期間、例えば、12〜16時間に亘って実施される。好適な方法は、DE−A2534833、DE−A2621448、EP−A53333及びEP−B95109等に記載されており、それらは完全に参照により組み込まれている。
【0028】
代替として、その高分子の軟化点を下回る温度で、超大気圧下でそのペレットを発泡剤で含浸させることができる。2.5〜7MPa絶対圧力(25〜70bar絶対圧力)、例えば、約5MPa絶対圧力(約50bar絶対圧力)の圧力がこの目的のために好適である。その温度は25〜60℃、例えば、約40℃である。0.5〜20時間、例えば、約8時間の時間が通常好適である。この目的のために、圧力定格の装置、例えば、オートクレーブにそのペレットを充填し、発泡剤が好ましくはそのペレットを完全に覆うような量で添加され、そしてその装置は密閉される。空気は窒素等の不活性ガスにより置換される。それから、その装置は加熱され、所望の圧力が設定される。圧力は処理温度での発泡剤の自生圧力として、又は不活性ガスの注入により設定される。
【0029】
易焼結性の金属粉末として、アルミニウム、鉄、特に、鉄カルボニル粉末の鉄、コバルト、銅、ニッケル、シリコン、チタン及びタングステンを用いてもよく、これらの中では、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル及びチタンが好ましい。粉末状の金属合金として、例として、高合金鋼若しくは低合金鋼を用いても良く、及びまた、アルミニウム、鉄、チタン、銅、ニッケル、コバルト又はタングステンを基礎とする金属合金を用いても良い。ここで、最終合金の粉末、又は個々の合金成分の粉末混合物の何れかを用いることができる。その金属粉末、金属合金粉末及び金属カルボニル粉末を混和材料で用いることもまた可能である。混合された金属粉末が用いられる場合、その混合物の成分の融点はお互いに大きく異なるものとすべきではない。さもなければ、低融点成分は流れ、高融点成分は留まるからである。最大の融点の差は、好ましくは800℃以下、特に、500℃以下、及び最も好ましくは300℃以下である。
【0030】
好適な金属粉末は、液状の金属の圧縮ガスでの噴霧により得られる噴霧金属粉末等である。
【0031】
カルボニル鉄粉末は金属粉末として好ましい。炭素鉄粉は、鉄カルボニル化合物の熱分解により製造される鉄粉末である。流動性を維持するため、そして凝集を未然に防ぐため、例えば、それをSiO2で覆うことも可能である。リン化鉄粉を好ましくは腐食抑制剤として付随して用いることができる。カルボニル鉄粉末は小さく、一定の粒径を有する:その粒子は実質的に球の形状を有する。高分子を有するその複合材料の溶融粘度はそれゆえ非常に小さく、その融点は一定である。好適なカルボニル鉄粉末は、DE102005062028等に記載されている。
【0032】
さらなる好ましい金属粉末は、アルミニウム及び銅からなる粉末である。
【0033】
その粉末の粒径は好ましくは0.1〜80μmであり、特に好ましくは1.0〜50μmである。
【0034】
好適な高分子は、スチレン重合体、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)若しくはポリエチレン−ポリプロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリアクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)若しくはポリブチレンテレフタラート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフィド(PES)、又はこれらの混合物等の、発泡剤に対する良好な吸収能力を有する熱可塑性高分子である。スチレン重合体を用いることが特に好ましい。
【0035】
スチレン重合体としては、透き通った、無色のポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アニオン重合ポリスチレン若しくは耐衝撃性ポリスチレン(A−IPS)、スチレン−α−メトスチレン共重合体(styrene-α-methstyrene copolymers)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(ABS)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルエステル(ASA)、メチルアクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(MABS)重合体若しくはこれらの混合物、又はこれらとポリフェニレンエーテル(PPE)との混合物を用いることが好ましい。
【0036】
高分子メルト中での粒子の良好な分散を達成するために、任意に分散剤を添加することができる。例えば、200〜600の平均分子量を有するオリゴマーのポリエチレンオキシド、ステアリン酸、ステアラミド、ヒドロキシステアリン酸、マグネシウム、カルシウム若しくはステアリン酸亜鉛、脂肪酸アルコール、エトキシル化脂肪酸アルコール、脂肪酸アルコールスルホネート、エトキシル化グリセリド、並びに、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの、及びまたポリイソブチレンのブロック共重合体である。
【0037】
その高分子は、熱処理を用いて除去される。易焼結性の金属粉末が焼結されて多孔性の焼結成形体が得られる。“除去する(drive off)”という用語は、上流の分解工程及び/又は熱分解工程を含む。熱処理は、一段工程又は多段工程で実施することができる。最初の工程の最初の温度でその高分子が除去され(結合剤の除去)、結果として生じる結合剤を含まない成形体が次の温度で焼結されることが好ましい。次の温度は、通常、最初の温度より高く、少なくとも100℃である。もしその成形体が直接焼結温度にさらされる場合、おそらくは極端に急激な熱分解に起因して、成形された金属体上に重度のすすの発生が頻繁に観察される。
【0038】
結合剤の除去及び焼結工程は同じ装置で実施することができる:しかしながら、異なる装置もまた用いることができる。結合剤の除去及び/又は焼結を実施するための好適な加熱炉は、対流ボックス炉、直立レトルト炉、対流シャトルキルン、フード型炉、エレベーター炉、マッフル炉及び管状炉である。ベルト炉、組み合わせチャンバー炉又はシャトルキルンが同じ装置内での結合剤除去及び焼結の工程の実施のために好適である。それらの炉は定められた結合剤除去の雰囲気及び/又は焼結雰囲気を設定するための設備と共に供給可能である。
【0039】
結合剤除去を実施するために、成形体はその結合剤除去温度にゆっくりと加熱されるのではなく、好ましくは急速にその結合剤除去温度へとさらされる。さもなくば、その高分子が流れ、フォーム構造が失われ得るからである。従って、一般に、加熱段階の間その炉の加熱区域に成形体を残しておくことは良い考えではない。研究室で結合剤除去を実施するために、例えば、長い内装管を有する管状炉を用い、そしてその加熱段階の間に試料を加熱区域の外側でその管内に配置することができる。目的温度に到達するとすぐに、その試料を加熱区域へと押し込むことができる。結合剤除去は、特に、ベルト炉等を工業的に使用して実施することができる。
【0040】
結合剤除去は好ましくは定められた雰囲気で実施することができる。一般に、不活性雰囲気又は還元性雰囲気が提供されることが好ましく、還元性雰囲気であることが特に好ましい。アルミニウム、亜鉛又は銅等の金属の場合は、圧粉体強度を増大させるために、わずかな酸化状態で結合剤除去を実施することが有利である。残留炭素の良好な除去及び金属粉末粒子の表面上の強度を増加させる酸化被膜はこのようにして達成される。
【0041】
150〜800℃の温度が通常、結合剤の除去のために好適である。鉄の場合は、約700℃の温度が有用であることがわかった。そして、アルミニウムの場合は、400〜600℃の温度が有用であることがわかった。持続期間は成形体の大きさに大きく依存する。
【0042】
結合剤除去の後に、焼結工程が続く。焼結工程は、250〜1500℃の温度で実施することができる。鉄の場合、焼結温度は900〜1100℃が有用であることがわかった。そして、アルミニウムの場合は、650℃以下の温度が有用であることがわかった。焼結雰囲気は使用される金属に合わせることができる。一般に、不活性雰囲気又は還元性雰囲気が好ましく、還元性雰囲気が特に好ましい。
【0043】
結合剤除去及び/又は焼結の間の還元性雰囲気としては、水素が、又は水素/窒素混合物等の水素と不活性ガスの混合物が有用であることがわかった。水素と不活性ガスの混合物は好ましくは少なくとも3容積%の水素を含む。
【0044】
成形体は時々熱分解の間に“後発泡(after-foaming)”を受ける。それは孔あき壁を有する型中で、その型より大きな充填量を伴い、及びまた圧縮及び膠着が行われる熱分解を実施するために有利である。
【0045】
高強度で多孔性の軽量金属体が本発明によって達成される。
【0046】
本発明は以下の実施例により説明される。
【実施例】
【0047】
実施例1:
a)カルボニル鉄粉末とのポリスチレンの押出し成形:
4.0kgのポリスチレン(BASF SE、Ludwigshafen、Germanyからの、158Kの名称下で得られる)を16kgのカルボニル鉄粉末(BASF SEから得られる、カルボニル鉄粉末EQ)と押出機中で混合し、そのメルトを型面ペレット化(die-face pelletization)によりペレット化して約3mmの平均粒径を有するペレットを得た。
【0048】
b)ペンタンでの加圧含浸:
それから、そのペレットをペンタンS(80%のn−ペンタン、20%のイソペンタン)中に浸漬し、圧力オートクレーブ中で5MPa(50bar)の圧力と40℃の温度下で4時間維持した。これは、約5質量%のペンタンを有する高分子メルトを得た。
【0049】
c)グリーン体の製造:
そのペレットを一辺4cmの辺の長さを有する密閉された立方体形状の鋼製鋳型に導入し、その型を、蒸気を用いて約10分間約100℃に加熱した。その高分子粒子はこの処理の間に膨張し、そして融解し、型から取りだされたグリーン体を得た。
【0050】
d)結合剤除去及び焼結:
グリーン体をのこぎりを用いてさいの目に切り取り、その後、溶融石英管中の磁器ボートに置いた。溶融石英管をヒンジ式高温管状炉(HTM Reetz、Berlin、GermanyからのLOBA11−50型)中に水平に導入した。溶融石英管の両端をその炉の外へ突き出した。まず、磁器ボートを溶融石英管の内部における外側の端部に、すなわち、加熱区域の外側に配置した。窒素は溶融石英管を通過させた。
【0051】
炉を700℃に設定した。炉が700℃の温度に到達するとすぐに、窒素流を20l/hから10l/hへと50%削減し、10l/hの水素流によって補った。その後、磁器ボートを溶融石英管の内側へと、炉の真ん中まで押した。試料が700℃まで到達した後、10分間加熱区域に残した。それから、試料を加熱区域から再び溶融石英管の末端まで引き出した。
【0052】
それから、炉を900℃に設定した。設定温度に到達した後、磁器ボートを炉の真ん中へと押し戻した。900℃の焼結温度へと到達した後、試料を15分間加熱区域に残した。それから、磁器ボートを加熱区域の外へと再び引き出し、炉を切った。冷却後、試料を取りだした。
【0053】
e)機械的特性の試験:
機械的特性の試験を、試験規格DIN EN826−断熱材の圧縮強度−に基づく方法により実施した。ここで、10−100%変形での圧縮強度、及びまたヤング率(E modulus)を決定した。700℃における10分間の結合剤除去を受けたものの、異なる温度(900℃及び1000℃)における異なる滞在時間で焼結された、同じ組成を有する試料を試験した。
【0054】
以下の結果を得た:
【0055】
【表1】

【0056】
実施例2:
カルボニル鉄粉末でのポリスチレンの捏和:
70gのポリスチレン158K(BASF SE、Ludwigshafen、Germanyからの)を捏和機(IKA Staufen、Germanyからの Messkneter H60型)中で溶融した。その後、280gのカルボニル鉄粉末EQを一度に少量添加した。その後、混合物を30分間捏和した。捏和後、生成物を排出し、粗くペレット化した。その後、粗いペレットを粉砕機中で約5mmの平均直径へと粉砕した。さらなる工程を実施例1と同様の方法で実施した。
【0057】
実施例3:
アルミニウムでのポリスチレンの捏和:
200gのポリスチレン158K(BASF、Ludwigshafen、Germanyからの)を捏和機(Linden、Marienheide、Germany)中で溶融した。その後、622gの粗いアルミニウム粉末ASMEP123CL(ECKA、Fuerth、Germanyからの)を一度に少量添加し、そしてその後、その混合物を捏和機中で30分間捏和した。捏和後、生成物を排出し、粗くペレット化した。その後、その粗いペレットを粉砕機中で約5mmの平均直径へと粉砕した。さらなる工程を、結合剤除去及び焼結を600℃で5分間に亘って一段階で実施すると共に実施例1と同様の方法で実施した。
【0058】
実施例4:
銅でのポリスチレンの捏和
200gのポリスチレン158K(BASF、Ludwigshafen、Germanyからの)を捏和機(Linden、Marienheide、Germany)中で溶融した。その後、910gの銅Rogal GK0/50(ECKA、Fuerth、Germanyからの)を一度に少量添加し、その後、その混合物を30分間捏和した。捏和後、生成物を排出し、粗くペレット化した。その後、その粗いペレットを粉砕機中で約5mmの平均直径へと粉砕した。さらなる工程を、結合剤除去を700℃で5分間に亘って実施し、焼結を850℃で10分間に亘って実施すると共に、実施例1と同様の方法で実施した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性の焼結成形金属体を製造する方法であって、
易焼結性の金属粉末が分散した発泡性高分子粒子を発泡させて成形体を形成し、
当該成形体を前記高分子を除去するための熱処理に付し、且つ
前記易焼結性の金属粉末を焼結して多孔性の焼結成形金属体を得ることを特徴とする方法。
【請求項2】
発泡性高分子粒子を型に導入し、そして発泡させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記型への導入前に発泡性高分子粒子を予備発泡させる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
分散した易焼結性の金属粉末の質量割合が、高分子及び易焼結性の金属粉末の合計量に対して60〜95質量%である請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
発泡性高分子粒子が物理的発泡剤を含む請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
発泡性高分子粒子が、易焼結性の金属粉末が分散した高分子粒子を発泡剤に含浸することにより得られる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
発泡剤が脂肪族炭化水素及びハロゲン化炭化水素の中から選択される請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
発泡剤がペンタンである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
高分子がスチレンの重合体又は共重合体である請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
易焼結性の金属粉末が0.1〜80μmの平均粒径を有する請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
易焼結性の金属粉末がアルミニウム、鉄、銅、ニッケル又はチタンの中から選択される請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
易焼結性の金属粉末がカルボニル鉄粉末である請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
発泡性高分子粒子が実質的に球状である請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
発泡性高分子粒子が0.5〜30mmの直径を有する請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−528939(P2012−528939A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513595(P2012−513595)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057618
【国際公開番号】WO2010/139686
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】