説明

多孔性シート

【課題】柔軟性及び成形加工性に優れた、脂肪族ポリエステル樹脂を原料樹脂とする多孔性シートを提供すること。
【解決手段】脂肪族ポリエステル樹脂、充填剤及び可塑剤を含む樹脂組成物を、溶融成形して原反シートとし、該原反シートを少なくとも1軸延伸してなる多孔性シートであって、前記充填剤の配合量が、前記脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して20〜300重量部であり、前記可塑剤が、脂肪族リン酸エステルであり、該可塑剤の配合量が、前記脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して0.5〜100重量部であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品の裏面シートとして、着用中におけるムレを防止する観点から、熱可塑性樹脂からなり、液不透過性で且つ水蒸気透過性の多孔性シートが広く用いられている。この種の多孔性シートは、熱可塑性樹脂と無機充填剤とを主とした組成物をTダイを用いた押出成形法やインフレーション法により溶融成形して原反シートとし、該原反シートを一軸又は二軸延伸することで、シートに連通孔が形成されて透湿性を発現するものである。このような多孔性シートの製造には、原反シートへの成形性が良好であることや強度と柔軟性の良好なシートが得られることから、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂が汎用されている。
【0003】
ところで、近年、二酸化炭素排出量の削減による温暖化対策や環境保全等の観点から、植物由来の樹脂や生分解性の樹脂が注目されている。このような植物由来及び/又は生分解性の樹脂として、脂肪族ポリエステル樹脂が知られているが、脂肪族ポリエステル樹脂、例えばポリ乳酸樹脂を、前述のような多孔性シートの材料として用いた場合には、柔軟性に劣るという問題がある。
【0004】
脂肪族ポリエステル樹脂を用いた多孔性シートとして、脂肪族ポリエステル樹脂と無機充填剤とよりなり、最大細孔径が5μ以下の連通孔よりなる網状構造を有し、空隙率が10〜70%であり、延伸により分子配向してなる多孔性フィルムが提案されている(特許文献1参照)。
また、ポリ乳酸又は乳酸―ヒドロキシカルボン酸コポリマー、及び可塑剤を含むポリ乳酸系樹脂組成物に、微粉状充填剤を添加した混合物を溶融製膜した後、少なくとも一軸方向に延伸してなる多孔性フィルムが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−209073号公報
【特許文献2】特開平5−247245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の多孔性フィルムにおいては、柔軟性に劣るという前述の問題が解決されていない。
また、特許文献2の多孔性フィルムも、可塑剤を使用してはいるものの、柔軟性が十分でなく、特に吸収性物品に使用する際は、さらなる柔軟性が必要である。
【0007】
従って本発明の目的は、柔軟性に優れ、かつ成形加工性にも優れた、脂肪族ポリエステル樹脂を原料樹脂とする多孔性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、脂肪族ポリエステル樹脂、充填剤及び可塑剤を含む樹脂組成物を、溶融成形して原反シートとし、該原反シートを少なくとも1軸延伸してなる多孔性シートであって、前記充填剤の配合量が、前記脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して20〜300重量部であり、前記可塑剤が、脂肪族リン酸エステルであり、該可塑剤の配合量が、前記脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して0.5〜100重量部であることを特徴とする多孔性シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柔軟性及び成形加工性に優れた、脂肪族ポリエステル樹脂を原料樹脂とする多孔性シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の多孔性シートは、脂肪族ポリエステル樹脂、充填剤及び可塑剤を含む樹脂組成物を原料とするものである。
【0011】
本発明で使用される脂肪族ポリエステル樹脂としては、環境負荷への対応の観点から、芳香環を含む単量体を50%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは0%共重合した公知のポリエステル樹脂を用いることができる。「0%共重合」は、共重合させないことを意味する。好ましい例としては、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリエート、ポリヒドロキシヘキサノエート等のポリヒドロキシアルカノエート等、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2−オキセタノン)等が挙げられる。
【0012】
脂肪族ポリエステル樹脂は、生分解性の樹脂であることが、自然環境に対する負荷を軽減して環境保全に役立つ点で好ましい。生分解性の樹脂としては、脂肪族ポリエステル樹脂の好ましい例として記載した上記の各樹脂を用いることができる。生分解性の樹脂は、自然界において微生物が関与して低分子化合物に分解され得る樹脂であり、例えば、JIS K6953(ISO14855)「制御された好気的コンポスト条件の好気的かつ究極的な生分解度及び崩壊度試験」に基づいた生分解性を有するものである。
【0013】
また、脂肪族ポリエステル樹脂は、植物由来の樹脂であることが、製造時に排出される二酸化炭素も考慮した総二酸化炭素排出量を低減できる点で好ましい。植物由来の脂肪族ポリエステル樹脂としては、例えば、上記のポリヒドロキシアルカノエート、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等を用いることができる。
【0014】
上述した各種の樹脂の中でも、加工性、経済性、大量に入手でき、かつ物性の点からポリ乳酸樹脂が好ましい。ここで、ポリ乳酸樹脂とは、ポリ乳酸、又は乳酸とヒドロキシカルボン酸とのコポリマーである。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。好ましいポリ乳酸の分子構造は、L−乳酸又はD−乳酸いずれかの単位20〜100モル%とそれぞれの対掌体の乳酸単位0〜80モル%からなるものである。また、乳酸とヒドロキシカルボン酸とのコポリマーは、L−乳酸又はD−乳酸いずれかまたは混合物の単位70〜100モル%とヒドロキシカルボン酸単位0〜30モル%からなるものである。これらのポリ乳酸樹脂は、L−乳酸、D−乳酸及びヒドロキシカルボン酸の中から必要とする構造のものを選んで原料とし、脱水重縮合することにより得ることができる。好ましくは、乳酸の環状二量体であるラクチド、グリコール酸の環状二量体であるグリコリド及びカプロラクトン等から必要とする構造のものを選んで開環重合することにより得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸とが環状二量化したメソ−ラクチド及びD−ラクチドとL−ラクチドとのラセミ混合物であるDL−ラクチドがある。本発明ではいずれのラクチドも用いることができる。但し、主原料は、D−ラクチド又はL−ラクチドが好ましい。
市販されているポリ乳酸樹脂としては、三井化学(株)製の商品名レイシア、カーギル・ダウ・ポリマーズ社製の商品名Nature works等が挙げられる。
【0015】
上述した各種の脂肪族ポリエステル樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる樹脂組成物中の、脂肪族ポリエステル樹脂の含有量は、本発明の目的を達成する観点から、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上であり、更に好ましくは100重量%である。
【0016】
本発明で使用される充填剤は、本発明の多孔性シートを多孔質にし、透湿性を有するものとするために使用される。充填剤としては、ポリスチレンビーズ等の有機充填剤を用いることもできるが、無機充填剤を用いることが好ましい。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、石膏、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、カーボンブラック、アルミニウム粉、鉄粉などの粉粒体が挙げられる。
これらの各充填剤のうち、炭酸カルシウムや硫酸バリウムを用いることが好ましく、特に炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
上述した各種の充填剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
得られる多孔性シートの強度確保や製造時のシート破れの防止の点から、無機充填剤はその平均粒径が0.1〜20μmで最大粒径が100μm以下であることが好ましく、平均粒径が0.3〜5μmで最大粒径が50μm以下であることが更に好ましい。充填剤として炭酸カルシウムを用いる場合、その比表面積が300〜100000cm2/g、特に2000〜60000cm2/gであるものを用いることが、透湿性が高く耐水性も高いシート、即ち、緻密な孔が多数開いていて液がにじみにくく、且つ十分な強度のシートが得られること点から好ましい。
【0018】
樹脂組成物中の充填剤の配合量は、脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して20〜300重量部であり、好ましくは50〜230重量部、更に好ましくは80〜180重量部である。充填剤の量が20重量部未満であると得られるシートの透湿性が不十分となってしまい、300重量部超であるとシートの耐水性が低下し、液がにじみやすくなり、更には、強度が低下してしまう。
【0019】
本発明で使用される可塑剤は、脂肪族リン酸エステルである。
本発明の多孔性シートは、この特定の可塑剤を用いることで、柔軟性及び成形加工性に優れたものとなる。
【0020】
本発明で可塑剤として使用される脂肪族リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステル等が挙げられるが、柔軟性の向上の観点から、リン酸トリエステルが好ましい。
リン酸トリエステルとしては、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン原子含有トリアルキルホスフェート 、トリブトキシエチルホスフェート等の、トリアルコキシホスフェート等が挙げられる。
脂肪族リン酸エステルは、保存安定性の向上の観点から、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に成形加工性の観点点から、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートが好ましい。
上述した各種の脂肪族リン酸エステルは、1種を単独で又は2以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
脂肪族リン酸エステルの配合量は、脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して0.5〜100重量部であり、好ましくは2〜70重量部、更に好ましくは5〜30重量部である。可塑剤の配合量が0.5重量部未満であると、柔軟性が不十分であり、可塑剤の配合量が100重量部超であると、成形加工性が悪くなり、かつ得られたシートの強度が大きく低下し好ましくない。
【0022】
本発明で用いる樹脂組成物には、前述した脂肪族ポリエステル樹脂、充填剤及び可塑剤に加え、必要に応じて、分散剤、核材、加水分解防止剤等の第三成分を加えることができる。
分散剤は、樹脂組成物中における充填剤の分散性を良くするもので、例えば炭素数10〜30の脂肪酸が用いられる。前記脂肪酸は、充填剤100重量部に対して0.1〜30重量部、特に0.5〜10重量部配合することが好ましい。
【0023】
核材は、樹脂の結晶化度ならびに結晶サイズを制御するもので、有機核剤及び/又は無機核剤が用いられる。有機核剤としては、有機核剤分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物が好ましく、水酸基を2つ以上有し、アミド基を2つ以上有する脂肪族化合物であることがより好ましい。
【0024】
有機核剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸モノアミド、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド等が挙げられ、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドが好ましい。
無機核剤としては、タルク、スメクタイト、カオリン、マイカ、モンモリロナイト等のケイ酸塩、シリカ、酸化マグネシウム等の無機化合物が挙げられ、分散性の観点から平均粒径が0.1〜20μmの無機化合物が好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。無機化合物の中でも、ケイ酸塩が好ましく、タルクがより好ましい。
これらの核剤は、脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.05〜7重量部、特に0.1〜4重量部配合することが好ましい。
【0025】
加水分解防止剤は、得られたシートが加水分解により起こる強度低下を抑制するもので、例えばポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物が挙げられる。ポリカルボジイミド化合物としてはポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられ、モノカルボジイミド化合物としては、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。
加水分解防止剤は、脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部が好ましく、0.2〜8重量部が更に好ましい。
【0026】
上述した分散剤、核材及び加水分解防止剤は、それぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられる樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で上記以外の他の成分を含有させることができ、例えば、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、無機充填剤、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、難燃剤等を含有させることができる。
【0027】
本発明の多孔性シートは、前述した樹脂組成物を、溶融成形して原反シートとし、該原反シートを少なくとも1軸方向に延伸して得られる。
本発明の多孔性シートは、例えば次の方法によって効率よく製造することができる。
先ず、前述した樹脂組成物を構成する各成分を、ヘンシェルミキサやスーパーミキサ等を用いて予備混合した後、一軸又は二軸押出機で混練してペレット化する。次に、得られたペレットを用い成形機によって成膜しフィルム(原反シート)を得る。成形機としてはTダイ型及びインフレーション型のものを用いることができ、Tダイ型の成形機を用いることが好ましい。
得られたフィルム(原反シート)を一軸又は二軸延伸して、樹脂と充填剤との界面剥離を生じさせ多孔質化する。この延伸にはロール法やテンター法などが用いられる。このようにして本発明の多孔性シートが得られる。原反シートの延伸は、少なくとも一軸方向に、1.1倍以上に延伸することが好ましく、1.5〜5倍に延伸することが好ましい。面積延伸倍率で言えば、1.1倍以上に延伸することが好ましく、1.3〜4倍に延伸することが好ましい。
【0028】
本発明の多孔性シートの坪量は、例えば5〜100g/m2程度とすることができ、その厚みは、例えば4〜90μm程度とすることができる。
【0029】
本発明の多孔性シートは、例えば衛生材料、医療用材料、衣料用材料などとして用いられる。また、本発明の多孔性シートは、その一面に不織布などの繊維シートと貼り合わせた複合シートの形態で前記の材料として用いることもできる。特に、本発明の多孔性シートは、前述の通り透湿性を有しているので、これをそのまま、或いは繊維シートと貼り合わせた複合シートとして、使い捨ておむつや生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッドなどの吸収性物品の構成材料として用いると、着装内の湿度上昇を防止することができ、着用者の肌にかぶれが発生することなどを効果的に防止することができる。これらの吸収性物品は一般に液透過性の表面シート、液不透過性(難透過性も含む)の裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を備えており、本発明の多孔性シート又はこれを繊維シートと貼り合わせてなる複合シートは、特に前記裏面シートとして好ましく用いられる。また、本発明の多孔性シート又はこれを繊維シートと貼り合わせてなる複合シートは、その良好な柔軟性や透湿性を活かして、吸収性物品における、裏面シート以外の構成要素の材料として用いることもでき、例えば、立体ギャザーやウエストバリアシートなどの材料として用いることもできる。
【実施例】
【0030】
以下の例(表を含む)中、特に断らない限り「部」は「重量部」を意味する。
【0031】
〔実施例1〜4及び比較例1〜2〕
(1)樹脂組成物の調製
以下の表1に示す材料を表2に示す組成で配合し、ヘンシェルミキサー(250rpm、60秒)で予備混合し、次いで取り出しヘッドを180℃に設定した二軸押出機を用いて溶融混練してペレット化した樹脂組成物を得た。
(2)多孔性シートの製造
スクリュー径50mmの単軸押出機(L/D=28)と、幅500mmのTダイス(ダイリップクリアランス1.5mm)とからなるTダイフィルム成形装置を用い、上述のようにして得られた樹脂組成物を溶融成形し、厚み70μm、幅300mmのフィルム(原反シート)を得た。Tダイスの設定温度は、ポリ乳酸を用いた場合は170℃、ポリブチレンサクシネートの場合は200℃とし、成形速度は8m/minとした。得られたフィルムを、ロール一軸延伸機を用いて延伸し、多孔性シートを得た。延伸倍率は2.1とした。予熱温度は80℃とし、延伸温度は70℃、アニール温度は80℃とした。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた多孔性シートについて、(1)柔軟性、(2)延伸加工性、及び(3)透湿性を、それぞれ、下記の方法で測定した。それらの結果を表3に示した。
【0035】
(1)柔軟性
10人のパネラーに触手試験をしてもらい、やわらかいと回答した人数により、以下のように評価した。
やわらかいと回答した人が
全員(10人)の場合 ・・・◎
7〜9人の場合 ・・・○
4〜6人の場合 ・・・△
3人以下の場合 ・・・×
【0036】
(2)延伸加工性
成形により得られた原反シートに5cm×5cmの升目を5行、5列作成し、その後70℃下で2.1倍延伸したときの各升目の面積を測定した。最大面積と最小面積の比率により、延伸加工性を以下のように評価した。
比率が90〜100%の場合・・・◎
80〜90%の場合 ・・・○
70〜80%の場合 ・・・△
60〜70%の場合 ・・・×
【0037】
(3)透湿性
30℃、90%RH以外は、JIS−Z0208の手法に従い、透湿度を測定した。その透湿度を以下のように判断した。
透湿度(g/100cm2・h)が
2.0超の場合 ・・・◎
1.8〜2.0の場合・・・○
1.6〜1.8の場合・・・△
1.6未満の場合 ・・・×
なお、上記の性能評価において、本発明では○以上で効果があると判断した。
【0038】
【表3】

【0039】
表3に示す結果から、本発明の多孔性シートは、柔軟性及び成形加工性に優れていることが判る。それに対して、可塑剤を用いていない比較例1においては、柔軟性及び成形加工性が不十分であり、可塑剤として乳酸オリゴマーを用いた比較例2では、柔軟性が不十分であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル樹脂、充填剤及び可塑剤を含む樹脂組成物を、溶融成形して原反シートとし、該原反シートを少なくとも1軸延伸してなる多孔性シートであって、
前記充填剤の配合量が、前記脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して20〜300重量部であり、
前記可塑剤が、脂肪族リン酸エステルであり、該可塑剤の配合量が、前記脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して0.5〜100重量部であることを特徴とする多孔性シート。
【請求項2】
前記脂肪族リン酸エステルが、リン酸トリエステルである請求項1記載の多孔性シート。
【請求項3】
前記脂肪族リン酸エステルが、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2記載の多孔性シート。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステル樹脂が、生分解性及び/又は植物由来の樹脂である請求項1〜3の何れかに記載の多孔性シート。
【請求項5】
前記脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリ乳酸樹脂である請求項4記載の多孔性シート。


【公開番号】特開2007−112868(P2007−112868A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304354(P2005−304354)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】