多孔性医療用具を用いた治療物質の組織部位への塗布
半径方向に拡張可能な多孔性のインターベンション医療用具に塗布した非ポリマーの生物学的コーティングが、コーティングとそれに混合した治療薬の、体内の標的治療域内への均一な薬剤分散と浸透をもたらす。コーティングは減菌されており、滅菌した医療用具の半径方向拡張に続き、この用具により体内の標的組織部位まで移送可能である。この治療コーティングは医療用具から移着するが、この移転は、部分的には組織の生物学的誘引により、部分的にはこの医療用具からその用具に接触している標的組織部位への物理的移転による。従って、局所組織への非外傷性の移転送達が行われ、治療薬は、非炎症性コーティングにより患者体内に配置された後、均一に分散され、組織内で制御生体吸収される。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2003年9月15日付けの同時係属中の米国仮出願第60/503,357号の優先権及びその利益を、両出願に共通する全ての主題に関して主張する。本願は現在、2003年9月15日付けの同時係属中の米国仮出願第60/503,359号の優先権を主張する米国特許仮出願第 号と同時出願されている。上述した全ての出願の開示内容は、引用してその全体をここに援用する。
【技術分野】
【0002】
本願は治療薬の送達に関し、より詳細には、患者体内の標的組織における薬剤の分散及び細胞取り込みを非外傷的に最大化するため、治療薬を標的組織部位へ送達する多孔性装置及び/又はシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
薬剤及び作動薬を機械的に送達する装置は、多くの生物学的用途を含む広範囲にわたる用途で使用されている。こうした生物学的用途には、体内で治療的又は他の生物学的効果を及ぼすためのカテーテルインターベンション及び他の植え込み型装置などが含まれる。こうした送達装置は、閉塞した又は狭くなった血管を機械的に開くために用いる半径方向に拡張可能な装置の形態を取ることが多い。例えば、可膨張性の非エラストマーバルーンは、疾患により閉塞した体内導管の治療や、ステントなどのカテーテルで送達した医療用具をこうした体内導管内で適切な位置に保つために使用されてきた。ステントに塗布した薬剤担持ポリマーを用いて薬剤溶出ステントが作製されており、こうしたステントを体内の管腔内部に配置して、内部に埋め込まれた薬剤又は作動薬を体内で放出させる。
【0004】
インターベンション・バルーンカテーテルによっては、カテーテルシャフトに沿ったある長さ地点に位置した開放カテーテル内腔すなわちチャンネルを用いて、薬剤を含んだ液体又は気体の全身性巨丸剤を、体内の標的組織部位まで送達するものもある。残念なことに、こうした全身送達手段を用いて調節した量の薬物を所望の組織部位まで送達すると、薬剤が局所組織に素早く浸透できないため、その大部分は全身の循環系に失われてしまう。液体巨丸剤によって標的組織部位に送達される薬剤又は作動薬を含む、ほとんどの液体製剤は、有意な治療効果に至るほど十分に標的組織部位で組織に浸透せず、結果的に体液によって洗い流されてしまう。この全身性の希釈作用は、こうした送達装置により投与された薬剤又は作動薬の効果を大幅に減少させ、血流に流れ込む大量の薬剤又は作動薬による全身性の影響を増加させる確率が高まる。こうした非効率的な送達を補うため、薬剤又は作動薬の投与量は、これらが局所的又は標的組織部位に治療的効果を及ぼす前に概ね洗い流されてしまうことを考慮して増やす必要がある。しかし、全身性の影響及び身体に毒性物質の過大な負荷がかかる危険が増大する理由から、薬剤又は作動薬の量が、全身性希釈及びそれに続く患者体内にわたる全身性分散による暴露に関しても安全と考えられるレベルを超過してはならない。こうしたインターベンション送達方法で使用される薬剤又は作動薬は、希釈状態で患者身体の他の部位まで洗い流されても安全で、又、望ましくない治療的或いはその他の有害作用を及ぼさない程度に安全でなければならない。こうした薬剤又は作動薬を標的組織部位において治療的特性を維持するような濃度にしつつ、身体の全身循環系に流入した後も有害作用を及ぼさないような希釈度を確保するには微妙な釣り合いが必要となる。
【0005】
別の薬剤及び作動薬送達賦形剤は、従来から薬剤溶出ステントを含む。組織へ透過する薬剤の局所的濃度は、使用する既存ステント送達賦形剤により変動があり、又、薬物保持量、薬剤投与量、及びステント装置の永久展開後に治療薬を担持し放出するのに使われるポリマーステントコーティングの放出特性に左右されることが証明されている。ステントのストラットにおける薬剤濃度は、ステントのストラットとストラットの間の領域における薬剤濃度に比べて高い。これによって、薬剤の治療効果に好ましくない影響を及ぼすことがある。より具体的には、組織の部分によっては薬剤濃度が有害レベルまで高くなったり、他の部分では不十分な濃度となったりすることがある。更に、ステントは、そのストラットに沿った箇所でしか薬剤を組織へ分散しない。ステントの略円筒形状が全表面積の100%だとすると、拡張展開後にステントを形成するストラットの実際の箇所は、一般的に全円筒形状の表面積のうち20%未満を占めるにすぎない。仮にストラットの表面積が半径方向の拡張後に20%を越えたとしても、円筒形状の残り部分は多孔性状態となってしまい、大多数の大きな開口部は円筒状のステント形状内に位置するはずである。薬剤は、ストラットが位置する部位でしか伝達されない。従って、従来のステントでは、薬剤が存在できず、組織と直接的に接触できない大きな区間が存在することになる。第1の小径スロット付きチューブを標的器官空間に挿入して、大径状態まで拡張することによって従来の薬剤希釈ステントを展開した後、スロット付きチューブは、ストラットが塑性変形する際に概ね開いた状態となる。従って、展開したステントの大きな開放区間は、複数ストラット間に薬物を送達する手段としては機能しないし、薬剤を組織に伝達する手段ともならない。
発明の概要
【0006】
多孔性の医療用具に用いる治療コーティングであって、炎症反応を引き起こすことなく、治療薬の送達時に該治療コーティングを治療用具から体内の標的組織部位へ非外傷的に伝達可能にする治療コーティングへの必要性が存在する。本発明は、この必要性に対処するための新たな解決策に関するものである。
【0007】
本発明の例示的な一実施形態によれば、半径方向に拡張可能な医療用具は、内部と多孔性の外面とを備えた本体を含む。治療コーティングが、前記拡張可能な医療用具の拡張時点で、前記本体の前記外面の少なくとも一部に配置される。前記治療コーティングの少なくとも一部は、前記本体の前記内部から前記本体の前記外面まで通過して、前記治療コーティングを少なくとも部分的に形成する。前記治療コーティングは、標的組織部位まで移動し且つ付着して、非外傷性の治療効果を及ぼすよう組成されている。
【0008】
本発明の幾つかの様態によれば、前記治療コーティングは、オメガ3脂肪酸を含む脂肪酸から構成されている。任意の治療薬を前記治療コーティング内で乳化させてもよい。任意の治療薬を前記治療コーティング内で懸濁させてもよい。前記治療コーティングは、少なくとも部分的には水素化してもよい。前記治療コーティングには、更に、この治療混合物を安定化するため非高分子物質、結合剤、及び粘度上昇剤の少なくとも一つを含めてもよい。前記治療コーティングは、更に溶剤を含むこともできる。配置に先立って、前記治療コーティングは固体でも柔らかな固体でもよい。配置した時点で、前記治療コーティングは、柔らかな固体、ゲル、又は強粘液の粘稠度を保持できるので、前記治療コーティングは前記標的組織部位に非外傷的に塗沫できるが、洗い流されない。
【0009】
本発明の更なる様態によれば、前記医療用具は、血管内プロテーゼ、腔内プロテーゼ、シャント、カテーテル、外科用具、縫合ワイヤ、ステント、及び局所的薬物送達装置のうち少なくとも1つを含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、治療コーティングを標的組織部位に塗布する一方法は、前記医療用具を患者体内の標的組織部位の近位に位置決めする段階を含む。治療液体を半径方向に拡張可能な医療用具に供給し、この医療用具を拡張する。治療コーティングは、前記拡張可能な医療用具の外面の少なくとも一部に形成且つ/或いは再供給される。前記治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫されるので、前記治療コーティングの少なくとも一部は前記標的組織部位に移着する。
【0011】
本発明の上述した方法の幾つかの様態によれば、この方法は前記医療用具を除去する段階を更に含む。別法としては、前記医療用具を、前記標的組織部位にインプラントとして留置してもよい。
【0012】
本発明の幾つかの別の様態によれば、前記治療コーティングは、オメガ3脂肪酸を含む脂肪酸を含む。任意の治療薬を前記治療コーティング内で乳化させてもよい。任意の治療薬を前記治療コーティング内で懸濁させてもよい。前記治療コーティングは、少なくとも部分的には水素化してもよい。前記治療コーティングには、更に、この治療混合物を安定化するため非高分子物質、結合剤、及び粘度上昇剤の少なくとも一つを含めてもよい。前記治療コーティングは、更に溶剤を含むこともできる。配置に先立って、前記治療コーティングは固体でも柔らかな固体でもよい。配置した時点で、前記治療コーティングは、柔らかな固体、ゲル、又は強粘液の粘稠度を保持できるので、前記治療コーティングは前記標的組織部位に非外傷的に塗沫できるが、洗い流されない。
【0013】
本発明の方法の更なる様態によれば、前記半径方向に拡張可能な医療用具は、血管内プロテーゼ、腔内プロテーゼ、シャント、カテーテル、外科用具、ステント、及び局所的薬物送達装置のうち少なくとも1つを含む。処置においては、前記治療コーティングを塗布するために半径方向に拡張可能な複数の医療用具を用いてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、第1治療コーティング、第2治療コーティング、及び第3治療コーティングを患者体内の標的組織部位に塗布する一方法は、第1医療用具を提供する段階を含む。前記第1医療用具は、前記標的組織部位の近傍に位置決めされる。前記第1医療用具は、この医療用具を加圧する第1治療液体を用いて半径方向に拡張されて前記標的組織部位に押しつけられる。前記第1治療コーティングは、前記第1治療液体を前記第1医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより形成される。前記第1治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫される。前記第1医療用具は収縮して、除去する。前記第2治療コーティングを備えた第2医療用具を提供する。前記第2医療用具はバルーン部分とステント部分を含む。前記第2医療用具は、この医療用具を加圧する第2治療液体を用いて半径方向に拡張され前記標的組織部位に押しつけられる。前記第2治療コーティングは、前記第2治療液体を前記第2医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより形成される。前記第2治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫される。前記第2治療コーティングはステント・ストラットの箇所に塗布されるだけでなく、前記バルーン部分が該第2治療コーティングを前記標的組織部位まで押しつける中間ストラット位置にも塗布されることに注目されたい。前記第2医療用具の前記バルーン部分は収縮、除去される。前記第3治療コーティングを備えた第3医療用具を提供する。前記第3医療用具は、前記標的組織部位の近傍に位置決めされる。前記第3医療用具は、この医療用具を加圧する第3治療液体を用いて半径方向に拡張され前記標的組織部位に押しつけられる。前記第3治療コーティングは、前記第3治療液体を前記第3医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより形成される。前記第3治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫される。前記第3医療用具は収縮して、除去する。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、多孔性バルーンカテーテルは外面を備えた本体を含む。治療コーティングが、前記外面の少なくとも一部に配置されている。前記治療コーティングは、患者体内の標的組織部位の近位に前記バルーンカテーテルが位置決めされている間に前記バルーンカテーテルの前記外面に付着するように組成されており、次に、半径方向への拡張時に前記治療コーティングと前記標的組織部位とが接触すると、前記コーティングが前記標的組織部位に移着して非外傷性治療効果をもたらす。前記バルーンカテーテルはPTFEバルーンカテーテルでよい。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、治療コーティングを標的組織部位に塗布する一方法は、第1インターベンション処置において、多孔性バルーンカテーテルを患者体内の標的組織部位の近位に位置決めする段階を含む。治療流体が前記多孔性バルーンカテーテルの壁部を通って滲み出し、前記多孔性バルーンカテーテル上に治療コーティングを形成する。 前記治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫されるので、前記治療コーティングの少なくとも一部は、前記多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位に移着する。前記多孔性バルーンカテーテルは前記患者から除去される。
【0017】
本発明の幾つかの様態では、上述の方法は、第2多孔性バルーンカテーテル及び前記ステントを、第2インターベンション処置において、前記患者体内の前記標的組織部位の近位に位置決めする段階を更に含む。治療流体が前記第2多孔性バルーンカテーテルの壁部を通って滲み出し、前記第2多孔性バルーンカテーテル上に治療コーティングを形成する。前記治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫されるので、前記治療コーティングの少なくとも一部は、前記第2多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位に移着する。前記治療コーティングはステント・ストラットの箇所に塗布されるだけでなく、前記バルーン部分が該治療コーティングを前記標的組織部位まで押しつける中間ストラット箇所にも塗布されることに再度注目されたい。前記第2多孔性バルーンカテーテルは前記患者から除去され、前記ステントが留置される。
【0018】
本発明の別の様態によれば、上述の方法は、前記治療コーティングを第3多孔性バルーンカテーテルに塗布する段階を更に含む。前記第3多孔性バルーンカテーテルは、第3インターベンション処置において、前記患者体内の前記標的組織部位の近位に位置決めされる。前記治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫するので、前記治療コーティングの少なくとも一部は、前記第3多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位及び展開した前記ステントに移着する。前記第3多孔性バルーンカテーテルは前記患者から除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の例示的な一実施形態は、多孔性のインターベンション医療用具に塗布した場合、治療薬又は治療剤を送達するよう構成された非ポリマー又は生物学的コーティングの使用に関し、こうした薬剤は体内で均一に分散され、標的組織部位により細胞取り込みされる。本発明は、滅菌した医療用具の半径方向拡張に続き、この用具により体内の標的組織部位まで移送されうる滅菌非ポリマーコーティングを利用する。この治療コーティングは、その医療用具から処置を受けている局所組織に外傷を引き起こすことなく移着する。コーティングの移着は、部分的には生物学的誘引によるものであり、部分的にはこの医療用具からその用具に接触している標的組織部位への物理的移転によるものである。従って、本発明は治療薬の局所組織への移転送達を行うものであり、患者の体腔、器官、又は組織内で、治療薬を標的組織箇所に非外傷性と考えられる様態で配置した後、治療薬が均一に分散され、組織内に制御生体吸収される。更に、この生物学的コーティングは、再吸収又は薬剤放出後に組織に慢性炎症反応を引き起こさない。この治療物質を塗布するタイプの医療用具には様々なものがあり、非ポリマー生物学的コーティングを医療用具に塗布する方法も様々である。又、医療用具の担体から身体組織内への物質移転方法や、生物学的物質から治療薬が放出され組織に入る運動特性(原語:kinetics)も様々である。更に、本発明は、血管形成術、ステント展開、経カテーテルバルーン洗浄、血管造影、塞栓性保護、及びカテーテルインターベンションを含む、多種多様な治療的血管再灌流手法に応用できる。
【0020】
図1A乃至11では類似した部品には類似した参照番号が付加されており、本発明に従って、医療用具を用いた治療コーティングの患者体内の標的組織部位への塗布に関わる例示的実施形態を示す。図示した代表的な実施形態を参照して本発明を説明するが、本発明は多くの代替形式で実施できることは理解すべきである。通常の技能を備えた当業者であれば、本発明の精神及び範囲と調和させつつ、開示した実施形態のパラメータを変更する様々な方法があることも理解するはずである。
【0021】
本明細書では「治療剤及び/又は治療薬」、「治療被覆剤」、及びそれに類する語句は、単一の薬剤又は複数の治療剤、単一又は複数の治療薬、或いは単一又は複数の薬剤、作動薬、若しくは生物活性物質の任意の組合せを表すため交換可能に使用されている。こうした薬剤又は作動薬は、本明細書に記載された表1に掲げたものを含むがそれらに限定されない。従って、上述の語句を僅かに変えたとしても、異なる意味を示したり、異なる組合せの薬剤又は作動薬を指したりするものと解釈すべきでない。本発明は、当業者が理解する、治療薬及び/又は治療剤、或いはそれらの任意の組み合わせたものの改良型移転送達に関する。
【0022】
驚くべきことに、一定の生物油及び脂肪は、一時的或いは永久的に配置した腔内医療用具に十分強く付着するので、患者の腔内医療用具を体腔、導管、又は組織空間に挿入する際に、生物コーティングのほとんどの部分がこの医療用具から外れないことが発見された。一旦、こうした医療用具が患者体内に配置されると、治療薬又は成分を含んだ生物油及び脂肪が、生物油及び脂肪の親油性吸収作用によって、標的組織に直接移着する。組織によるこうした油脂の自然誘引及び細胞取り込みは、体内における標的治療域への効率的な薬剤透過及び送達にとって予期していた以上に有益となる。あらゆる局所的薬剤送達システムに当てはまることだが、細胞膜の外表面に大きな投与量の全身性負荷を掛けることなく、組織の治療域への薬剤浸透を最大化することが理想的な方法と考えられる。薬剤成分と注意深く混合させた生物油又は脂肪を使用すると、この油脂薬剤複合体(原語:complex)の生体吸収によって薬剤成分が局所組織により効果的に透過することが発見された。この油脂薬剤複合体は、体内の多くの組織に対して高い生物学的誘引力を備えているので、化学的に完全なまま医療用具から容易に移着し、その際に、これら油脂を医療用具から移転させる2次的な生化学的又は生物学的反応を必要としない。この治療的油脂薬剤の複合体が、標的組織部位に十分な滞留時間にわたり緊密に係合すると、被覆された医療用具が短時間にわたって組織と密着し、複合体が、その医療用具から標的組織部位に移着する。薬剤を被覆した医療用具が標的治療域に適切に係合した時点で、医療用具が半径方向に拡張する間に、大規模な全身性作用を及ぼすことなく油又は脂肪複合体が接触した組織に容易且つ直接的に移着する。
【0023】
更に、ある種の油脂は、他の物質より迅速に患者の組織に浸透することも分かっている。より具体的には、体腔内の標的組織部位が治療薬の塗布を必要とする場合、この治療薬を様々な方法で標的組織部位に塗布できる。標的組織部位における組織への治療薬の浸透を向上させるには、治療薬を生物油又は脂肪と混合すればよく、ほとんどの治療薬を単独で用いるより効率的に組織に浸透する。治療薬を油又は脂肪に重合させることなく注意深く可溶化、飽和化、又は混合すると、こうした治療的複合体は、薬物の組織への適切な浸透を促し、組織に対する治療的反応を引き起こす。油、脂肪、及び/又は薬剤成分を化学的に重合させることなく、有効成分を油又は脂肪内に化学的に安定化することで、この複合体は任意投与量の薬物又は薬剤を組織に直接送達できる。油又は脂肪と治療薬とを混合し、しかもそれらの間で化学結合が形成されないようにすると、非重合油又は脂肪複合体が存在しない局部薬物送達に比べ、患者体内で係合した際に組織への浸透に適した様態でより効率的に薬物が送達される。
【0024】
薬剤成分と担体との間の化学結合に依存するのでなく、選択した生物油脂によって、治療薬が可溶化し、混合し、当該油又は脂肪内で完全な状態で移送されるので、非外傷性の治療送達複合体が形成される。更に、この治療薬はナノ粒子化、溶解、乳化、又はそれ以外の方法でこの油又は脂肪内に懸濁でき、組織による油脂吸収と同時にこの治療薬も組織による吸収が可能となる。
【0025】
油又は脂肪を使用すると、組織を油脂複合体に暴露したとき、治療薬を細胞に導入することによる炎症反応発生の可能性が低下することも実験的に発見されている。一定の脂肪、例えばオメガ3脂肪酸は身体組織による吸収が優れているだけでなく、それ自身が治療的且つ生物活性的利点を備えることが知られている。こうした油脂によって、機械的送達用具、プロテーゼ、及び/又は治療薬又は薬物の導入による局所組織との機械的接触によってしばしば発生する炎症反応の頻度が低下する。治療薬をこれら油又は脂肪と混合することによって、こうした炎症反応が大幅に減少し、薬物の細胞による組織への取り込みの効果及びこの薬物の生物学的作用が向上する。更に、こうした油又は脂肪送達システムは、塗沫した治療コーティングの吸収時に治療薬の細胞による取り込みを向上させる。
【0026】
こうした油又は脂肪が上述のように作用することを考慮して、本発明は、標的治療領域における係合域全体を治療的に処置するための方法及び装置を含む。代表的な組織は、血管、器官、食道、尿道、前立腺管腔、及び/又は体内における任意の係合組織内の治療領域を含むことができる。この局所治療方法は、非ポリマー物質を含む有効治療薬又は一連の薬物と組み合わせた、移着可能な生物油又は脂肪を係合する段階を含み、これらは、カテーテルインターベンション段階又は半径方向に拡張する用具のインターベンション処置において使用される用具展開方法によって体内で標的組織部位に係合させる。更に、本発明は、一般的には体内における医療用具のインターベンション処置と、こうしたインターベンション処置において治療コーティングの標的治療領域への局所塗布とに適用される。
【0027】
本発明の代表的な一実施形態によると、治療コーティングが塗布された医療用具10が提供される。この医療用具は、患者の体内で使用される任意の用具でよい。例えば、図1A乃至1Gに示したように、医療用具10には、カテーテル12(フォーリーカテーテル、吸引用カテーテル、尿道カテーテル、灌流カテーテル、PCTAカテーテルなど)、ステント14,半径方向に拡張可能な用具16(例えば、カテーテルバルーン、又はステント)、移植片18、プロテーゼ20、外科用具22、縫合ワイヤ24、又は体腔若しくは管腔内で標的組織部位と接触するか又は近位となる他の用具又は器具が含まれる。
【0028】
これ以降の記載に関しては、本発明の特定の実施形態は、カテーテル12に結合した半径方向に拡張可能な用具16を、ステント14との組合せで血管形成に関わる処置のために利用する。しかし、本発明は、上述のようにこのシステム及び方法に限定されず、上述したように様々な医療用具10にも適用されることは注目すべきである。更に、これ以降の記載は、治療コーティングと組み合わせた上述の医療用具を血管形成術への用途に焦点を当てることを注目すべきである。しかし、本発明は同様に血管形成処置に限定されず、上述した医療用具10を使用する様々な医療手法に適用できる。
【0029】
本発明の代表的な一実施形態によると、半径方向に拡張可能な用具16は、図2及び3に示した一般に非弾性のポリエステル・ナイロン混合材料から作製されている。カテーテル12及び半径方向に拡張可能な用具16は、図2に示したとおりに提供する。カテーテル12は、カテーテル12及び半径方向に拡張可能な用具16を体内管腔に案内するための案内ワイヤ26を含む。カテーテル12は半径方向に拡張可能な用具16を膨張させるために流体を提供する多数の開口部28を含む。図3は、膨張状態にある半径方向に拡張可能な用具16を示す。
【0030】
本発明により提供される半径方向に拡張可能な用具は、例えば体内の医療用途などを含む広範囲にわたる用途に適している。代表的な生物学的用途には、移植人工血管、ステント、永久若しくは一時的人工補填物、又は体内の標的組織を治療するために用いる他の種類の医療インプラントを扱うためのカテーテルバルーンとしての利用が含まれ、更に、血管、尿路、腸管、鼻腔、神経鞘、骨小腔、腎臓管、移植人工血管、ステント、プロテーゼ、他の種類の医療インプラントを移植した介入済みの体内腔などの内腔、体腔、及び中空体内導管を処置するためのカテーテルバルーンとしての利用も含まれる。このカテーテルバルーンは、カテーテルがバルーンの全長を貫通するタイプのものでも、バルーンがカテーテルの一端に配置されたタイプのものでもよい。付加的な例としては、血管から塞栓や血栓などの閉塞を除去するための用具として、閉塞した体内導管を再開通させるための拡張用具として、導管又は空間を遮断又は充填する手段を選択的に送達するための閉塞用具として、経腔的用具及びカテーテル用の心出し機構としての利用が含まれる。半径方向に拡張可能な用具16は、従来のカテーテルバルーンの拡張を制御するためそうしたバルーンを覆う外筒としても使用できる。更に、半径方向に拡張可能な用具16は、用途に従って多孔性でも非多孔性でもよい。
【0031】
代表的な半径方向に拡張可能な用具16の本体は、拡張力を加えることにより図2に示した第1の小径形状から図3に示した第2の大径形状に展開できる。半径方向に拡張可能な用具16の本体は、一体式の構成(すなわち、概ね同質材料からなる単一の一体品)とするのが好ましい。代表的な半径方向に拡張可能な用具16は、例えば押出及び伸張工程を用いて製造できる。更に、この半径方向に拡張可能な用具16は例示的な実施形態にすぎない。通常の技能を備えた当業者なら理解できるはずだが、後述するように所望の高圧状態を維持可能な任意の治療剤又は治療薬送達用具であれば用途に従って利用可能である。又、こうした送達用具には加圧状態で治療剤又は治療薬を含む流体を隔離位置まで送達できるものもある。図示したように、半径方向に拡張可能な用具16は、流体(流体送達が望ましく且つ用具が多孔性である場合は、ナノ粒子のスラリー、半流動体、固体、ゲル、液体、又は気体)をその用具16に供給できるカテーテル又は他の構造体に結合可能な拡張可能形状である。半径方向に拡張可能な用具16が多孔性でなければ、カテーテルは(幾つかの異なる種類の)流体を送達して、半径方向に拡張可能な用具16を膨張させ、所望の圧力を維持できる。半径方向に拡張可能な用具16に用いる材料は用途にもよるが、例えばPTFE又はPETが可能であり、これらは当業者には公知の様々な材料の一部である。
【0032】
上述の代表的工程により、非弾性のポリエステル・ナイロン混合材料からなる無孔シームレス構成を特徴とする半径方向に拡張可能な用具16が得られる。ナイロン混合材料は、第2の大径形状部に所定の形状及び大きさを備える。半径方向に拡張可能な用具16は、用具16拡張に使用される膨張力に関わりなく所定の固定最大径で所定形状まで確実且つ安定的に拡張できる。
【0033】
半径方向に拡張可能な用具16は、拡張時には概ね管状であることが好ましいが、長方形、長円、楕円、多角形などの他の断面形状も用途に従って使用できる。半径方向に拡張可能な用具16の断面は、本体の全長にわたって連続的且つ均一とするのが好ましい。しかし、代替的な実施形態では、この断面は、本体の全長にわたって大きさ及び/又は形状が変化してもよい。図2は、第1の小径形状で弛緩状態にある半径方向に拡張可能な用具16を示す。半径方向に拡張可能な用具16は、該用具の2つの端部間で長手軸に沿って延伸する中央内腔を備えている。
【0034】
カテーテル12のような長尺中空チューブ形状の展開機構が、図示したように半径方向に拡張可能な用具16の中央内腔内に配置されていて、半径方向への展開すなわち膨張力を半径方向に拡張可能な用具16に供給する。この半径方向の展開力が、半径方向に拡張可能な用具16を、第1形状から図3に示した第2の大径形状へと半径方向に拡張させる。半径方向に拡張可能な用具16は、熱的接着又は接着結合により形成でき、或いは望ましくない位置での流体漏れを防ぐための他の適切な手段により取り付けできる。
【0035】
カテーテル12は、その内部に延伸する長手方向内腔及びカテーテル12の外部と内腔との間に流体連通を実現する多くの開口部28を備える。カテーテル12は1つ又は複数の流体源に結合して、開口部28を介して流体を半径方向に拡張可能な用具16に選択的に供給できる。流体からの圧力が本体12に半径方向拡張力を掛けて、本体12を第2の大径形状へ半径方向に拡張させる。本体12は非弾性材料から作製されているので、チューブ20を流体源から切り離すか、その他の方法で本体12の内腔13内の流体圧力を大きく減圧しても、一般的には本体12が第1の小径形状に復帰することはない。しかし、本体12は自重によって小径状態まで縮小するはずである。例えば真空源からの負圧を掛けて、本体12を第1の小径形状まで完全に収縮可能である。
【0036】
通常の技能を備えた当業者であれば、半径方向に拡張可能な用具16はカテーテル12などの流体展開力を用いた展開機構との組合せに限定されないことは理解するはずである。例えば、機械駆動部材又はニチノールなどの温度作動材料から作製された機械的要素などの機械作動拡張要素を含む、他の公知の展開機構を用いて半径方向に拡張可能な用具16を半径方向に展開できる。
【0037】
様々なフルオロポリマー材料も本発明での使用に適している。適切なフルオロポリマー材料には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)が含まれ、テトラフルオロエチレンと他の単量体との共重合体を使用してもよい。こうした単量体には、エチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ四フッ化エチレン、又はヘキサフルオロプロピレンのようなフッ化プロピレンが含まれる。PTFEが最も頻繁に使用される。従って、半径方向に拡張可能な用具16は様々なフルオロポリマー材料から製造でき、本発明の製造方法は様々なフルオロポリマー材料を使用できるが、本明細書の説明は特にPTFEに関わるものである。更に、所望の材料特性によっては、PET又はポリエステル・ナイロン混合材料を使用してもよい。
【0038】
ここで本発明の方法に適用する例を取り上げ、本発明に従った血管形成術を以下に説明する。一般に、血管形成術は、狭窄、再狭窄、又は閉塞により狭くなった血管を拡張するために用いる処置である。様々な種類の血管形成術がある。アテローム性動脈硬化症などの閉塞性血管症を発病している患者は、心臓などの臓器や、腕又は脚などの遠位部位への血流が損なわれている。又、その原因は、不安定プラーク、脂肪沈着、又はカルシウム蓄積などにより損なわれた一定の管腔細胞型の増殖によって血管の内腔が狭くなったことによるものである。血管形成術は、血管の断面領域を半径方向に開くすなわち広げるための機械的な半径方向への拡張処置である。再灌流が完了した時点で、機械的に開いた領域で所望の血流が復帰する。
【0039】
時間の経過と共に、この血管が再び狭窄することもありうる(例えば、再狭窄と呼ばれる細胞増殖により)。血管形成術を施してこの血管の断面領域を再び開いて拡大できる。再収縮(原語:recoil)を防止したり、再狭窄の発生又は進行速度を制限するため、ステントを血管に設置できる。このステントは、典型的には半径方向に拡張可能な多孔性メタルメッシュ・チューブの形状を備えており、拡張すると足場組み様の支持構造体を形成する。ステント又はポリマーコーティングのような非生物或いは異物が体内に存在すると、急性及び慢性炎症及び血栓症の危険性が必ず増大する。炎症は、部分的には異物に対する急性自然反応によるものである。異物反応による炎症が、ステント配置を含むインターベンション処置の前後及び処置の最中に患者が全身性薬物(消炎、増殖抑制、及び抗凝固薬剤を含む)の投与を受ける主たる理由である。しかし、再灌流外傷の発生時或いは血管壁内への半径方向ステント展開時に、こうした薬剤が特に血管の外傷箇所に送達されるわけではない。
【0040】
一般に、ステントの配置は血管形成術の後に行うが、必ずしもそうでなくてもよい。多くの患者にとっては、血管の灌流を素早く実行し、一段階技法でのインプラント送達を向上するために、ダイレクトステンティング法が好ましい。いずれの場合も、ステントは、収縮状態にある半径方向に拡張可能なバルーンカテーテルを用いることで血管内の標的組織部位に配置する。この半径方向に拡張可能なカテーテル装置は膨張させ、ステントを拡張させて血管壁に押しつける。半径方向に拡張可能なカテーテル装置は除去して、ステントを拡張した状態で内部に残して血管を機械的に開いた状態とする。時として半径方向に拡張可能な別のバルーンカテーテル装置を、既にステントで拡張した血管内でそのステントの位置に完全に又は部分的に挿入し、ステントが適切に完全に拡張するように膨張させて、血管壁に沿って転位又は移動しないようにし、拡張したステントの下に隙間ができないようにする。完全に拡張しない場合は過剰な血餅発生の原因となる。
【0041】
半径方向に拡張可能な用具16に加え、図3はこの用具16に塗布した治療コーティング30も示している。治療コーティング30は医療用具10としての半径方向に拡張可能な用具16に塗布して、患者体内の標的部位における組織に対して治療効果を及ぼす。治療コーティング30を含めることにより、医療用具10と接触する組織に医療又は治療効果を与えることになる。治療コーティング30に含める治療薬によって、この治療効果は変化させることができる。治療コーティング30を医療用具10に被覆する際は、その有効量が医療用具10を通過する体液によって洗い流されないようにする。又、患者の標的組織部位が医療用具10と十分に接触した時点で、治療コーティング30は医療用具10から標的組織部位へ移着し、その部位に留まることで組織内へ透過する。この治療コーティングは、製造段階において或いは半径方向に拡張可能な用具16を体腔に挿入する直前にこの用具16に塗布すればよい。
【0042】
図4、5、及び6に関する次の説明では、半径方向に拡張可能な用具16及び治療コーティング30の利用法を説明する。それぞれのフローチャートは、より包括的な方法の異なる部分を表すものである。それぞれの異なるフローチャートとして示した各部分は別の方法であって、これら3つのフローチャートで表した3つの方法を併せて或いは記載した順序で実行する必要性はない。更に、これら方法及びフローチャートに対応した説明は、半径方向に拡張可能な用具16、治療コーティング30、カテーテル12、及びステント14の異なる例を示す。これら要素の各例を別個に図示するのは煩雑な繰り返しとなるので、付加的な参照番号を各例に使用しない。従って、これら方法の説明において、半径方向に拡張可能な用具16は各方法で同一用具としてもよく、又、図2及び3に示した半径方向に拡張可能な用具16に類似した用具の様々な変形としてもよい。同様に、通常の技能を備えた当業者なら理解できるように、他の構成要素の説明も同一装置の異なる例と考えることもできる。
【0043】
図4は、血管形成及びステント処置に応用した本発明の代表的な実例を示すフローチャートである。半径方向に拡張可能な第1用具を血管に挿入する前に、この用具に第1の治療コーティングを塗布する(ステップ100)。第1カテーテル及び半径方向に拡張可能な第1用具を、狭くなった器官通路に配置する(ステップ102)。第1の治療コーティングは、半径方向に拡張可能な第1用具に担持され、半径方向に拡張可能な第1用具が拡張する地点となる標的組織部位まで送達される(ステップ106)。この通路は、第1の小径から半径方向に拡張可能な第1用具(例えばバルーンカテーテルなど)を用いて第2の大径まで拡張される(ステップ106)。半径方向に拡張可能な第1用具が半径方向に拡張する過程で、第1の治療コーティングは、標的組織上及び内部に概ね均一に塗布又は塗沫される(ステップ108)。次に、半径方向に拡張可能な第1用具は収縮、除去され(ステップ110)、同時に、第1の治療コーティングの一部は、第1用具の除去に続いて標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0044】
図5は、図4の実施後に行うことができる更なる代表例を示すフローチャートであるが、図4の処置実行の有無にかかわらず行うこともできる。図5では治療インターベンションを実行する。半径方向に拡張可能な第2用具及びステントを体内管腔に挿入する前に、この用具及びステントに第2の治療コーティングを塗布する(ステップ120)。この半径方向に拡張可能なクリンプステントと共に半径方向に拡張可能な第2用具の少なくと一部を、第1インターベンションの標的組織部位の内部又は部分的に内部に配置する(ステップ122)。第2の治療コーティングは、半径方向に拡張可能な第2用具と半径方向に拡張可能なステントとに担持され、標的組織位置まで送達される(ステップ124)。半径方向に拡張可能な第2用具及び半径方向に拡張可能なステントが半径方向に拡張且つ展開することで、ステントが展開して血管に押しつけられると、第2治療コーティングが標的組織部位の治療部位上とその内部に均一に塗布且つ/或いは塗沫される(ステップ126)。次に、半径方向に拡張可能な第2用具は収縮、除去され(ステップ128)、同時に、半径方向に拡張可能なステントと第2の治療コーティングの一部は、標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0045】
図6は、図4及び5の方法の一方又は両方と組み合わせて実行できる第3の方法を示す。第3の治療インターベンションを実行する。半径方向に拡張可能な第3用具を体内管腔に挿入する前に、この用具に第3の治療コーティングを塗布する(ステップ140)。半径方向に拡張可能な第3用具の少なくとも一部を、仮にステントが配置されていればその近傍で、第1インターベンションの標的組織部位の内部に完全に又は部分的に配置する(ステップ142)。第3の治療コーティングは、半径方向に拡張可能な第3用具に担持され、標的組織位置まで送達される(ステップ144)。半径方向に拡張可能な第3用具が半径方向に拡張且つ展開することで、ステント径の拡張が所望の最終拡張量まで調節され、第3治療コーティングが標的組織部位の治療部位上とその内部に均一に塗布且つ/或いは塗沫される(ステップ146)。次に、半径方向に拡張可能な第3用具は収縮、除去され(ステップ148)、同時に、第3の治療コーティングの一部は、標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0046】
図4、5、及び6の方法は組み合わせてもよいし、それぞれ完結した方法として別個に行うこともできる。本明細書に記載したように、治療薬を治療コーティング30として第1、第2、及び第3の塗布を行うことで、治療コーティング30で使用した1つ又は複数の治療薬から最大の効果が得られる。具体的には、血管形成術の後にステントを配置する実例では、治療コーティング30を最初に塗布するのは、標的組織部位への一回目のインターベンション実行時点である。動脈が広げられると、治療コーティング30は患部動脈に塗布され、直接的な治療効果を及ぼす。又、治療コーティング30が塗沫された、半径方向に拡張可能な用具を用いてステントを導入且つ拡張する場合は、治療コーティング30が患部動脈の標的組織部位に再度塗布される。このステントは血管内での拡張に続き、治療コーティング30の少なくとも一部を支持する。こうした処置では、ステント14及び半径方向に拡張可能な用具16(例えばバルーンカテーテル)の円筒形状の100%にわたって治療コーティング30が塗布されている。これは、ステントに薬剤溶出ポリマーコーティングを塗布して、薬剤をポリマー表面から転位させるのみで、展開時における治療薬を移着させる効果がない従来の方法とは異なる。半径方向に拡張可能な用具を膨張させ、ステントを配置した後は、この半径方向に拡張可能な用具は取り除かれる。所望であれば、次に、第3のインターベンションにより、治療コーティング30をここでも塗布したバルーンカテーテルのような別の半径方向に拡張可能な用具を導入でき、展開済みのステントを更に半径方向に拡張する。この場合も、展開後に、半径方向に拡張可能な用具は治療コーティング30を、標的組織部位における組織及びステントに塗沫/塗布する。
【0047】
本発明の方法に従って標的組織部位にインターベンションを何回施したかに関わらず、最終的には所定投与量の治療コーティングを送達すべきである。従って、インターベンションを1回しか行わなければ、3回以上の灌流段階で必要となるよりも多くのコーティング投与量が必要となる可能性がある。
【0048】
例示的な血管形成術に適用したように、本発明は、公知のインターベンション薬剤溶出又は全身送達手法に比べて標的組織の表面をより効果的にその対象範囲に含めるので、効果的且つ効率的な治療薬剤送達を可能とする。本発明の半径方向に拡張可能な用具は、移着可能な非ポリマー治療コーティングを保持しつつ、第1の小径から第2の大径まで拡張する。更に、治療コーティング、作動薬、又は生物学的物質の使用により、第1インターベンション又は第2インターベンションにおける、(同一の標的治療部位の内部か、少なくとも部分的には内部で)半径方向への拡張時に、標的治療部位の表面或いは内部へ直接塗布される物質の移着及び組織付着特性を向上させる。
【0049】
3回の異なるインターベンション処置を行う間に、治療コーティングを標的組織部位に塗布する機会が三度ある。従って、半径方向の拡張を伴う血管形成術/ステント治療の3段階それぞれで所望の標的組織又は細胞反応を得るため、異なる3種の混合治療薬を調製してもよい。同様に、通常の技能を備えた当業者なら理解できるように、本発明は同一の標的組織部位で実行する3回のインターベンション処置には限定されない。それ以外に、任意回数の異なる半径方向に拡張可能なインターベンションカテーテル処置を行って、それぞれの処置で非外傷性治療コーティング30を付着した医療用具10を導入して、標的組織部位で所望の生物学的又は治療的効果をもたらすようにしてもよい。
【0050】
治療コーティング30を医療用具10に塗布するには多くの異なる手順が利用できる。例えば、治療コーティング30は医療用具10に塗布、スプレー、又は塗沫して、臨床的に利用又は使用する前に滅菌処理できる。滅菌した医療用具10の一部又は全体を、滅菌した治療コーティングを含む容器内に沈める方法もある。滅菌した医療用具10を治療コーティングが入った滅菌トレー内で転がしてもよい。治療コーティングを医療用具に塗布する他の方法には、加熱、乾燥、又はそれらの組合せを含むことができる。通常の技能を備えた当業者であれば、本発明は、滅菌した治療コーティング30を塗布した滅菌医療用具10を作製する上述の方法に限定されないことは理解するはずである。これ以外にも、医療用具10によるインターベンションに引き続いて、患者体内の標的組織部位への治療コーティング30の移着が促進されれば、多種多様な方法を用いて治療コーティング30を医療用具10に塗布してよい。
【0051】
代替的な医療用具とその使用による治療コーティング30の塗布には、洗浄用造形品などの半径方向に拡張可能な多孔性用具を利用できる。血管形成術及びステント設置の例では、上述した3つのインターベンションの何れかの実行時に半径方向に拡張可能な用具を使用できる。従って、本発明に従った半径方向に拡張可能な多孔性用具の構造及び製造に関してより詳細に説明する。
【0052】
図7A及び7Bに示したような半径方向に拡張可能な多孔性用具50の形式のエラストマー洗浄用造形品は、代表的な治療コーティング送達用具という例示的な目的に適している。半径方向に拡張可能な多孔性用具50は、膨張用流体を半径方向に拡張可能な多孔性用具50に供給するための複数の開口部78備えたカテーテル72を含んでいる。半径方向に拡張可能な多孔性用具50は、主として微孔性壁部76から形成されている。案内ワイヤ74を半径方向に拡張可能な用具50と共に用いて、この装置を所望箇所に位置決めできる。図7Aは、縮小状態にある半径方向に拡張可能な多孔性用具50を示し、図7Bは、拡張状態にある半径方向に拡張可能な多孔性用具50を示す。更に、図7Bでは、治療コーティング30が、半径方向に拡張可能な多孔性用具50の外面上に塗布されていることも示す。
【0053】
通常の技能を備えた当業者なら理解できるように、半径方向に拡張可能な多孔性用具50は幾つかの他の材料から製作できる。例えば、適切なフルオロポリマー材料には、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)が含まれ、テトラフルオロエチレンと他の単量体との共重合体を使用してもよい。こうした単量体には、エチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ四フッ化エチレン、又はヘキサフルオロプロピレンのようなフッ化プロピレンが含まれる。PTFEが最も頻繁に使用される。半径方向に拡張可能な多孔性用具50は、様々なフッ化ポリマーからも製作できる。
【0054】
図8は、伸展ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を用いて製作された半径方向に拡張可能な多孔性用具50の壁部の微細構造を概略図で示す。説明のため、半径方向に拡張可能な多孔性用具50の微細構造は誇張して示した。従って、微細構造の寸法は拡大されているが、図示した微細構造の一般的特性は、半径方向に拡張可能な多孔性用具50内に広く存在する微細構造を表すものである。
【0055】
半径方向に拡張可能なePTFE多孔性用具50の微細構造は、微小繊維54により連結された結節点52を特徴とする。これら結節点52は、半径方向に拡張可能な多孔性用具50の長手方向軸56に概ね直交して配向されている。微小繊維54により連結された結節点52の微細構造は、微小繊維空間を備えた微孔性構造を形成する。又、この微小繊維空間は、半径方向に拡張可能な多孔性用具50の内壁60から外壁62までの全体にわたって貫通孔すなわちチャンネル58を画定する。貫通孔58は、(長手方向軸56に対して)直交して配向されており、内壁60から外壁62を横断する結節点間の空間である。貫通孔58の寸法及び形状は押出及び伸張工程により変更できる。これは1999年10月1日付けの本願出願人の米国特許出願第09/411797号に詳しく記載されており、不浸透性、半浸透性、又は浸透性の微細構造を形成するためのものである。この出願の内容はここで参照して本明細書に援用する。しかし、本発明は、この製造方法に限定されないことに注目されたい。すなわち、言及した出願は拡張可能な用具を製造する例示的な一方法にすぎない。
【0056】
貫通孔58の寸法及び形状は、様々な配向となるよう変更できる。例えば、押出及び/又は伸張工程の実行時に、半径方向に拡張可能なePTEF多孔性用具50を捻るか回転させることにより、微小チャンネルを、半径方向に拡張可能な多孔性用具50の長手方向軸56に対する直交軸に角度をつけて配向できる。半径方向に拡張可能な多孔性用具50を製造するには、押出工程を実行し、次にポリマーを伸張し、且つポリマーを焼結して貫通孔58の伸張構造を固定化する。
【0057】
半径方向に拡張可能な多孔性用具50の形成材料における貫通孔58の微孔性構造によって、半径方向に拡張可能な多孔性用具50に穿孔することなく、この多孔性用具50の壁部が浸透性となる。半径方向に拡張可能な多孔性用具50の微孔性構造によって、この多孔性用具の壁部を通過する流体の均一的分散を制御できる。
【0058】
流体が半径方向に拡張可能な多孔性用具50を膨張させる際には、この流体は加圧滲み出しによって半径方向に拡張可能な多孔性用具50を通過し、上述したように患者体内の標的位置に塗布できる。こうした場合、この流体は、患部である標的組織部位を治癒する治療特性を備えた1つ又は複数の薬剤を含むことができる。
【0059】
例えば、半径方向に拡張可能な多孔性用具50は、血管形成術及びステント設置処置に関連して述べた何れかのインターベンション実行時に、半径方向に拡張可能な用具16の代わりに使用できる。図9、10、及び11はこうした代替的実施形態の更なる詳細を示す。
【0060】
図9は、血管形成及びステント処置に応用した本発明の代表的な実例を示すフローチャートである。半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具を血管に挿入する前に、第1の治療コーティングをこの用具に塗布できる(ステップ200)。しかし、後述するように、このステップはこの治療コーティングの分散には必要ではない。第1カテーテル及び半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具を、狭くなった器官通路に配置する(ステップ202)。第1の治療コーティングは、半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具に担持され、半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具が拡張する地点となる標的組織部位まで送達される(ステップ204)。この通路は、第1の小径から半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具(例えば微孔性のバルーンカテーテルなど)を用いて第2の大径まで拡張される(ステップ206)。半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具の拡張時及び後は、半径方向に拡張可能なこの多孔性用具を加圧する流体が治療液体を含んでいるため、第1治療コーティングが、半径方向に拡張可能な多孔性用具の外面に形成され且つ/又はその外面上に再供給される(ステップ207)。従って、血管へのインターベンション実行前に半径方向に拡張可能な多孔性用具上に治療コーティングが設けられていれば、半径方向に拡張可能な多孔性用具は、拡張時及び後に治療コーティングを再供給する。初期治療コーティングが施されていなければ、この半径方向に拡張可能な用具を通過する上記流体によって施される。初期治療コーティングが施されていれば、流体がコーティングを再供給する。半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具が半径方向に拡張する過程で、第1治療コーティングは、標的組織上及び内部に概ね均一に塗布又は塗沫される(ステップ208)。次に、半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具は収縮、除去され(ステップ210)、同時に、第1治療コーティングの一部は、第1の多孔性用具の除去に続いて標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0061】
図10は、図9の実施後に行うことができる更なる代表例を示すフローチャートであるが、図9の処置実行の有無にかかわらず行うこともできる。図10では治療インターベンションを実行する。半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具及びステントを体内管腔に挿入する前に、この用具及びステントに第2の治療コーティングを塗布する(ステップ220)。この初期コーティングは実行可能だが、上述したように、半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具上に治療コーティングが次に施されるため、必須ではない。この半径方向に拡張可能なクリンプステントと共に半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具の少なくとも一部を、第1インターベンションの標的組織部位の内部又は部分的に内部に配置する(ステップ222)。第2の治療コーティング(塗布されている場合)は、半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具と半径方向に拡張可能なステントとに担持され、標的組織位置まで送達される(ステップ224)。半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具の拡張時及び後は、半径方向に拡張可能なこの多孔性用具を加圧する流体が治療液体を含んでいるため、第2治療コーティングが、半径方向に拡張可能な多孔性用具の外面に形成され且つ/又はその外面上に再供給される(ステップ225)。初期治療コーティングが施されていなければ、この半径方向に拡張可能な用具を通過する上記流体によって施される。初期治療コーティングが施されていれば、流体がコーティングを再供給する。
【0062】
半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具及び半径方向に拡張可能なステントが半径方向に拡張且つ展開することで、ステントが展開して血管に押しつけられると、第2治療コーティングが標的組織部位の治療部位上とその内部に均一に塗布且つ/或いは塗沫される(ステップ226)。次に、半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具は収縮、除去され(ステップ228)、同時に、半径方向に拡張可能なステントと第2の治療コーティングの一部は、標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0063】
図11は、図9及び10の方法の一方又は両方と組み合わせて実行できる第3の方法を示す。第3の治療インターベンションを実行する。半径方向に拡張可能な第3の多孔性用具を体内管腔に挿入する前に、この用具に所望なら第3の治療コーティングを塗布する(ステップ240)。上述したように、このステップは随意選択である。半径方向に拡張可能な第3の多孔性用具の少なくとも一部を、仮にステントが留置されていればその近傍で、第1インターベンションの標的組織部位の内部に又は部分的に内部に配置する(ステップ242)。第3の治療コーティングは、半径方向に拡張可能な第3の多孔性用具に担持され、標的組織位置まで送達される(ステップ244)。半径方向に拡張可能な第3の多孔性用具の拡張時及び後は、半径方向に拡張可能なこの多孔性用具を加圧する流体が治療液体を含んでいるため、第3治療コーティングが、半径方向に拡張可能な多孔性用具の外面に形成され、或いはその外面上に再供給される(ステップ245)。初期治療コーティングが施されていなければ、この半径方向に拡張可能な用具を通過する上記流体によって施される。初期治療コーティングが施されていれば、流体がコーティングを再供給する。
【0064】
半径方向に拡張可能な第3の多孔性用具が半径方向に拡張且つ展開することで、ステント径の拡張が所望の最終拡張量まで調節され、第3治療コーティングが標的組織部位の治療部位上とその内部に均一に塗布且つ/或いは塗沫される(ステップ246)。次に、半径方向に拡張可能な第3用具は収縮、除去され(ステップ248)、同時に、第3の治療コーティングの一部は、標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0065】
図9、10、及び1の方法は組み合わせてもよいし、それぞれ完結した方法として別個に行うこともできる。本明細書に記載したように、治療薬を治療コーティング30として第1、第2、及び第3の塗布を行うことで、治療コーティング30で使用した1つ又は複数の治療薬から最大の効果が得られる。半径方向に拡張可能な多孔性用具の付加的特徴により、この多孔性用具の拡張時に治療コーティングがこの多孔性用具の外面上に形成される。展開後に、半径方向に拡張可能な多孔性用具は、治療コーティング30を標的組織部位における組織に塗沫/塗布する。半径方向に拡張可能な多孔性用具を標的組織部位に位置決めした後で治療コーティングを形成することができるので、より大量の治療コーティングを標的組織部位まで送達する能力が向上する。これは、半径方向に拡張可能な多孔性用具が標的組織部位まで移動する間に、治療コーティングがその多孔性用具からぬぐい取られたり、洗い流されたりしないためである。更に、追加の治療コーティングが所望なら、ユーザは、半径方向に拡張可能な多孔性用具を加圧するカテーテルを介して付加的流体を供給するだけでよい。こうすることで、流体は多孔性用具の壁部から滲み出し、付加的な治療コーティングを標的組織部位に塗布することになる。
【0066】
治療コーティング30を多くの異なる作動薬や構成物から調合できる。治療コーティングは、非ポリマー性の生体適合性コーティングでよい。このコーティングは単一物質だけで形成してもよいし、1つ又はそれ以上の治療薬ナノ粒子を含む、2つ以上の物質からなる混合物、凝集体、集成体、構成物などを用いて形成できる。これらナノ粒子の少なくとも何れかは、標的組織部位に対して治療特性及び/又は生物学的作用を備えた治療薬とすることができる。
【0067】
例示的な一実施形態によれば、この治療コーティングは、非ポリマー性の生体適合性の油脂で形成できる。親油性を示すか、油脂類に反発する多種多様な治療薬が存在する。本発明の教示に従ってこうした治療薬を、化学結合を起こさないように油脂と混合し、患者体内の標的組織部位に送達できる。下記の表1は、半径方向に拡張可能なインターベンション用具を使って標的組織部位に送達するための、油脂と混合できる治療薬の少なくとも一部を列挙したものである。
【0068】
【表1】
【0069】
こうした治療薬を油脂と混合することにより医療用具10に治療コーティングとして塗布する治療混合物が得られる。この治療混合物は、送達装置やプロテーゼとしての医療用具に十分接着するので、用具の半径方向拡張に続いて、治療コーティングを患者体内の標的組織部位に移着可能となる。標的組織部位でこれら油脂による組織への浸透性が向上することによって、治療薬の浸透も向上する。更に、これら油脂に元々備わった親油性の組織付着特性により、標的組織部位に用具を配置した後で、ほとんどの治療混合物が流動体液により洗い流される可能性を低下させる。従って、治療混合物は標的組織部位の治療域に好適に留まり、この混合物による組織浸透性が向上し、従って体内の標的治療域への治療効果が向上する。
【0070】
本発明との使用に適した幾つかの油脂が存在する。良好な効果を奏する脂肪酸の一例として、魚油などのオメガ3脂肪酸がある。これとは別の油脂で、本発明と組み合わせると優れた効果を奏することが分かっているものにはα‐トコフェノールがある。これ以外にも幾つかの油脂及び他の構成成分があり、下記の表2に列挙した。
【0071】
【表2】
【0072】
更に、治療コーティングと油脂との混合物には溶剤などの他の構成成分を含ませてもよい。こうした溶剤は混合物の粘度を調整、調節する役割を果たす。高分子物質、結合剤、及び粘度上昇剤などの他の構成成分を付加して、治療コーティングを安定化させたり、混合物の他の特性を変化させたりしてもよい。更に、この混合物自体を例えば水素化などにより調整してもよい。
【0073】
本発明は、治療コーティングを支持する医療用具の使用時に、治療コーティングを何らかの治療的様態で標的組織部位の表面及び内部に塗布することを含んだ幾つかの組合せに関する。こうした組合せには、半径方向ステント展開手法などの、同じ領域部位への(同一治療部位の内部か、部分的にその内部における)植え込み手法を含むことができる。この技法及び装置技術により、カテーテルを用いた単一段階の手段又は薬剤溶出ステント手段のみを用いた単一段階の手段のみに比べ、コーティング、薬用剤若しくは治療薬、又は生物学的製剤を、より大きな表面積にわたり送達する多段階塗布手段が実行できる。典型的には、薬剤溶出ステントの表面積は血管壁の20%にすぎないため、コーティング、薬用剤、又は生物学的製剤を、20%を上回る標的組織部位に送達できない。本発明の方法は、より大きい治療域により多くの治療を施すための手段を提供する。更に、半径方向に拡張可能な多孔性用具の使用により、標的組織部位へ送達される治療コーティングの量を更に調節可能となり、このコーティングの治療効果が増大する。
【0074】
本発明の多くの修正及び代替実施形態は、上述の記載を考慮すれば通常の技能を備えた当業者には明白となるはずである。従って、この記載は、例示的なものとしてのみ解釈されるべきであり、又、これは、本発明を実施するための最良の様態を、通常の技能を備えた当業者に教示するためのものである。上述の構成の詳細は、本発明の精神から逸脱することなく実質的に変更することができ、開示した発明の範囲内に入る全ての修正の排他的使用権は、保持されている。
【図面の簡単な説明】
【0075】
本発明は、次の説明及び添付の図面を参照すればより明確に理解されるはずである。
【図1】(A乃至G) 本発明の様々な様態に従った多様な医療用具の透視図である。
【図2】本発明の一様態に従った、収縮状態にある半径方向に拡張可能な用具の概略断面図である。
【図3】本発明の一様態に従った、図2の半径方向に拡張可能な用具を拡張状態で示した概略断面図である。
【図4】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する一方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する別の方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する別の方法を示すフローチャートである。
【図7】(A) 本発明の一様態に従った、収縮状態にある半径方向に拡張可能な多孔性用具の概略断面図である。 (B) 本発明の一様態に従った、拡張状態にある半径方向に拡張可能な多孔性用具の概略断面図である。
【図8】(A) 本発明の一様態に従った、半径方向に拡張可能な多孔性用具の微孔性構造を示す概略断面図である。
【図9】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する一方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する別の方法を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する別の方法を示すフローチャートである。
【関連出願】
【0001】
本願は、2003年9月15日付けの同時係属中の米国仮出願第60/503,357号の優先権及びその利益を、両出願に共通する全ての主題に関して主張する。本願は現在、2003年9月15日付けの同時係属中の米国仮出願第60/503,359号の優先権を主張する米国特許仮出願第 号と同時出願されている。上述した全ての出願の開示内容は、引用してその全体をここに援用する。
【技術分野】
【0002】
本願は治療薬の送達に関し、より詳細には、患者体内の標的組織における薬剤の分散及び細胞取り込みを非外傷的に最大化するため、治療薬を標的組織部位へ送達する多孔性装置及び/又はシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
薬剤及び作動薬を機械的に送達する装置は、多くの生物学的用途を含む広範囲にわたる用途で使用されている。こうした生物学的用途には、体内で治療的又は他の生物学的効果を及ぼすためのカテーテルインターベンション及び他の植え込み型装置などが含まれる。こうした送達装置は、閉塞した又は狭くなった血管を機械的に開くために用いる半径方向に拡張可能な装置の形態を取ることが多い。例えば、可膨張性の非エラストマーバルーンは、疾患により閉塞した体内導管の治療や、ステントなどのカテーテルで送達した医療用具をこうした体内導管内で適切な位置に保つために使用されてきた。ステントに塗布した薬剤担持ポリマーを用いて薬剤溶出ステントが作製されており、こうしたステントを体内の管腔内部に配置して、内部に埋め込まれた薬剤又は作動薬を体内で放出させる。
【0004】
インターベンション・バルーンカテーテルによっては、カテーテルシャフトに沿ったある長さ地点に位置した開放カテーテル内腔すなわちチャンネルを用いて、薬剤を含んだ液体又は気体の全身性巨丸剤を、体内の標的組織部位まで送達するものもある。残念なことに、こうした全身送達手段を用いて調節した量の薬物を所望の組織部位まで送達すると、薬剤が局所組織に素早く浸透できないため、その大部分は全身の循環系に失われてしまう。液体巨丸剤によって標的組織部位に送達される薬剤又は作動薬を含む、ほとんどの液体製剤は、有意な治療効果に至るほど十分に標的組織部位で組織に浸透せず、結果的に体液によって洗い流されてしまう。この全身性の希釈作用は、こうした送達装置により投与された薬剤又は作動薬の効果を大幅に減少させ、血流に流れ込む大量の薬剤又は作動薬による全身性の影響を増加させる確率が高まる。こうした非効率的な送達を補うため、薬剤又は作動薬の投与量は、これらが局所的又は標的組織部位に治療的効果を及ぼす前に概ね洗い流されてしまうことを考慮して増やす必要がある。しかし、全身性の影響及び身体に毒性物質の過大な負荷がかかる危険が増大する理由から、薬剤又は作動薬の量が、全身性希釈及びそれに続く患者体内にわたる全身性分散による暴露に関しても安全と考えられるレベルを超過してはならない。こうしたインターベンション送達方法で使用される薬剤又は作動薬は、希釈状態で患者身体の他の部位まで洗い流されても安全で、又、望ましくない治療的或いはその他の有害作用を及ぼさない程度に安全でなければならない。こうした薬剤又は作動薬を標的組織部位において治療的特性を維持するような濃度にしつつ、身体の全身循環系に流入した後も有害作用を及ぼさないような希釈度を確保するには微妙な釣り合いが必要となる。
【0005】
別の薬剤及び作動薬送達賦形剤は、従来から薬剤溶出ステントを含む。組織へ透過する薬剤の局所的濃度は、使用する既存ステント送達賦形剤により変動があり、又、薬物保持量、薬剤投与量、及びステント装置の永久展開後に治療薬を担持し放出するのに使われるポリマーステントコーティングの放出特性に左右されることが証明されている。ステントのストラットにおける薬剤濃度は、ステントのストラットとストラットの間の領域における薬剤濃度に比べて高い。これによって、薬剤の治療効果に好ましくない影響を及ぼすことがある。より具体的には、組織の部分によっては薬剤濃度が有害レベルまで高くなったり、他の部分では不十分な濃度となったりすることがある。更に、ステントは、そのストラットに沿った箇所でしか薬剤を組織へ分散しない。ステントの略円筒形状が全表面積の100%だとすると、拡張展開後にステントを形成するストラットの実際の箇所は、一般的に全円筒形状の表面積のうち20%未満を占めるにすぎない。仮にストラットの表面積が半径方向の拡張後に20%を越えたとしても、円筒形状の残り部分は多孔性状態となってしまい、大多数の大きな開口部は円筒状のステント形状内に位置するはずである。薬剤は、ストラットが位置する部位でしか伝達されない。従って、従来のステントでは、薬剤が存在できず、組織と直接的に接触できない大きな区間が存在することになる。第1の小径スロット付きチューブを標的器官空間に挿入して、大径状態まで拡張することによって従来の薬剤希釈ステントを展開した後、スロット付きチューブは、ストラットが塑性変形する際に概ね開いた状態となる。従って、展開したステントの大きな開放区間は、複数ストラット間に薬物を送達する手段としては機能しないし、薬剤を組織に伝達する手段ともならない。
発明の概要
【0006】
多孔性の医療用具に用いる治療コーティングであって、炎症反応を引き起こすことなく、治療薬の送達時に該治療コーティングを治療用具から体内の標的組織部位へ非外傷的に伝達可能にする治療コーティングへの必要性が存在する。本発明は、この必要性に対処するための新たな解決策に関するものである。
【0007】
本発明の例示的な一実施形態によれば、半径方向に拡張可能な医療用具は、内部と多孔性の外面とを備えた本体を含む。治療コーティングが、前記拡張可能な医療用具の拡張時点で、前記本体の前記外面の少なくとも一部に配置される。前記治療コーティングの少なくとも一部は、前記本体の前記内部から前記本体の前記外面まで通過して、前記治療コーティングを少なくとも部分的に形成する。前記治療コーティングは、標的組織部位まで移動し且つ付着して、非外傷性の治療効果を及ぼすよう組成されている。
【0008】
本発明の幾つかの様態によれば、前記治療コーティングは、オメガ3脂肪酸を含む脂肪酸から構成されている。任意の治療薬を前記治療コーティング内で乳化させてもよい。任意の治療薬を前記治療コーティング内で懸濁させてもよい。前記治療コーティングは、少なくとも部分的には水素化してもよい。前記治療コーティングには、更に、この治療混合物を安定化するため非高分子物質、結合剤、及び粘度上昇剤の少なくとも一つを含めてもよい。前記治療コーティングは、更に溶剤を含むこともできる。配置に先立って、前記治療コーティングは固体でも柔らかな固体でもよい。配置した時点で、前記治療コーティングは、柔らかな固体、ゲル、又は強粘液の粘稠度を保持できるので、前記治療コーティングは前記標的組織部位に非外傷的に塗沫できるが、洗い流されない。
【0009】
本発明の更なる様態によれば、前記医療用具は、血管内プロテーゼ、腔内プロテーゼ、シャント、カテーテル、外科用具、縫合ワイヤ、ステント、及び局所的薬物送達装置のうち少なくとも1つを含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、治療コーティングを標的組織部位に塗布する一方法は、前記医療用具を患者体内の標的組織部位の近位に位置決めする段階を含む。治療液体を半径方向に拡張可能な医療用具に供給し、この医療用具を拡張する。治療コーティングは、前記拡張可能な医療用具の外面の少なくとも一部に形成且つ/或いは再供給される。前記治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫されるので、前記治療コーティングの少なくとも一部は前記標的組織部位に移着する。
【0011】
本発明の上述した方法の幾つかの様態によれば、この方法は前記医療用具を除去する段階を更に含む。別法としては、前記医療用具を、前記標的組織部位にインプラントとして留置してもよい。
【0012】
本発明の幾つかの別の様態によれば、前記治療コーティングは、オメガ3脂肪酸を含む脂肪酸を含む。任意の治療薬を前記治療コーティング内で乳化させてもよい。任意の治療薬を前記治療コーティング内で懸濁させてもよい。前記治療コーティングは、少なくとも部分的には水素化してもよい。前記治療コーティングには、更に、この治療混合物を安定化するため非高分子物質、結合剤、及び粘度上昇剤の少なくとも一つを含めてもよい。前記治療コーティングは、更に溶剤を含むこともできる。配置に先立って、前記治療コーティングは固体でも柔らかな固体でもよい。配置した時点で、前記治療コーティングは、柔らかな固体、ゲル、又は強粘液の粘稠度を保持できるので、前記治療コーティングは前記標的組織部位に非外傷的に塗沫できるが、洗い流されない。
【0013】
本発明の方法の更なる様態によれば、前記半径方向に拡張可能な医療用具は、血管内プロテーゼ、腔内プロテーゼ、シャント、カテーテル、外科用具、ステント、及び局所的薬物送達装置のうち少なくとも1つを含む。処置においては、前記治療コーティングを塗布するために半径方向に拡張可能な複数の医療用具を用いてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、第1治療コーティング、第2治療コーティング、及び第3治療コーティングを患者体内の標的組織部位に塗布する一方法は、第1医療用具を提供する段階を含む。前記第1医療用具は、前記標的組織部位の近傍に位置決めされる。前記第1医療用具は、この医療用具を加圧する第1治療液体を用いて半径方向に拡張されて前記標的組織部位に押しつけられる。前記第1治療コーティングは、前記第1治療液体を前記第1医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより形成される。前記第1治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫される。前記第1医療用具は収縮して、除去する。前記第2治療コーティングを備えた第2医療用具を提供する。前記第2医療用具はバルーン部分とステント部分を含む。前記第2医療用具は、この医療用具を加圧する第2治療液体を用いて半径方向に拡張され前記標的組織部位に押しつけられる。前記第2治療コーティングは、前記第2治療液体を前記第2医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより形成される。前記第2治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫される。前記第2治療コーティングはステント・ストラットの箇所に塗布されるだけでなく、前記バルーン部分が該第2治療コーティングを前記標的組織部位まで押しつける中間ストラット位置にも塗布されることに注目されたい。前記第2医療用具の前記バルーン部分は収縮、除去される。前記第3治療コーティングを備えた第3医療用具を提供する。前記第3医療用具は、前記標的組織部位の近傍に位置決めされる。前記第3医療用具は、この医療用具を加圧する第3治療液体を用いて半径方向に拡張され前記標的組織部位に押しつけられる。前記第3治療コーティングは、前記第3治療液体を前記第3医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより形成される。前記第3治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫される。前記第3医療用具は収縮して、除去する。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、多孔性バルーンカテーテルは外面を備えた本体を含む。治療コーティングが、前記外面の少なくとも一部に配置されている。前記治療コーティングは、患者体内の標的組織部位の近位に前記バルーンカテーテルが位置決めされている間に前記バルーンカテーテルの前記外面に付着するように組成されており、次に、半径方向への拡張時に前記治療コーティングと前記標的組織部位とが接触すると、前記コーティングが前記標的組織部位に移着して非外傷性治療効果をもたらす。前記バルーンカテーテルはPTFEバルーンカテーテルでよい。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、治療コーティングを標的組織部位に塗布する一方法は、第1インターベンション処置において、多孔性バルーンカテーテルを患者体内の標的組織部位の近位に位置決めする段階を含む。治療流体が前記多孔性バルーンカテーテルの壁部を通って滲み出し、前記多孔性バルーンカテーテル上に治療コーティングを形成する。 前記治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫されるので、前記治療コーティングの少なくとも一部は、前記多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位に移着する。前記多孔性バルーンカテーテルは前記患者から除去される。
【0017】
本発明の幾つかの様態では、上述の方法は、第2多孔性バルーンカテーテル及び前記ステントを、第2インターベンション処置において、前記患者体内の前記標的組織部位の近位に位置決めする段階を更に含む。治療流体が前記第2多孔性バルーンカテーテルの壁部を通って滲み出し、前記第2多孔性バルーンカテーテル上に治療コーティングを形成する。前記治療コーティングは前記標的組織部位に塗沫されるので、前記治療コーティングの少なくとも一部は、前記第2多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位に移着する。前記治療コーティングはステント・ストラットの箇所に塗布されるだけでなく、前記バルーン部分が該治療コーティングを前記標的組織部位まで押しつける中間ストラット箇所にも塗布されることに再度注目されたい。前記第2多孔性バルーンカテーテルは前記患者から除去され、前記ステントが留置される。
【0018】
本発明の別の様態によれば、上述の方法は、前記治療コーティングを第3多孔性バルーンカテーテルに塗布する段階を更に含む。前記第3多孔性バルーンカテーテルは、第3インターベンション処置において、前記患者体内の前記標的組織部位の近位に位置決めされる。前記治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫するので、前記治療コーティングの少なくとも一部は、前記第3多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位及び展開した前記ステントに移着する。前記第3多孔性バルーンカテーテルは前記患者から除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の例示的な一実施形態は、多孔性のインターベンション医療用具に塗布した場合、治療薬又は治療剤を送達するよう構成された非ポリマー又は生物学的コーティングの使用に関し、こうした薬剤は体内で均一に分散され、標的組織部位により細胞取り込みされる。本発明は、滅菌した医療用具の半径方向拡張に続き、この用具により体内の標的組織部位まで移送されうる滅菌非ポリマーコーティングを利用する。この治療コーティングは、その医療用具から処置を受けている局所組織に外傷を引き起こすことなく移着する。コーティングの移着は、部分的には生物学的誘引によるものであり、部分的にはこの医療用具からその用具に接触している標的組織部位への物理的移転によるものである。従って、本発明は治療薬の局所組織への移転送達を行うものであり、患者の体腔、器官、又は組織内で、治療薬を標的組織箇所に非外傷性と考えられる様態で配置した後、治療薬が均一に分散され、組織内に制御生体吸収される。更に、この生物学的コーティングは、再吸収又は薬剤放出後に組織に慢性炎症反応を引き起こさない。この治療物質を塗布するタイプの医療用具には様々なものがあり、非ポリマー生物学的コーティングを医療用具に塗布する方法も様々である。又、医療用具の担体から身体組織内への物質移転方法や、生物学的物質から治療薬が放出され組織に入る運動特性(原語:kinetics)も様々である。更に、本発明は、血管形成術、ステント展開、経カテーテルバルーン洗浄、血管造影、塞栓性保護、及びカテーテルインターベンションを含む、多種多様な治療的血管再灌流手法に応用できる。
【0020】
図1A乃至11では類似した部品には類似した参照番号が付加されており、本発明に従って、医療用具を用いた治療コーティングの患者体内の標的組織部位への塗布に関わる例示的実施形態を示す。図示した代表的な実施形態を参照して本発明を説明するが、本発明は多くの代替形式で実施できることは理解すべきである。通常の技能を備えた当業者であれば、本発明の精神及び範囲と調和させつつ、開示した実施形態のパラメータを変更する様々な方法があることも理解するはずである。
【0021】
本明細書では「治療剤及び/又は治療薬」、「治療被覆剤」、及びそれに類する語句は、単一の薬剤又は複数の治療剤、単一又は複数の治療薬、或いは単一又は複数の薬剤、作動薬、若しくは生物活性物質の任意の組合せを表すため交換可能に使用されている。こうした薬剤又は作動薬は、本明細書に記載された表1に掲げたものを含むがそれらに限定されない。従って、上述の語句を僅かに変えたとしても、異なる意味を示したり、異なる組合せの薬剤又は作動薬を指したりするものと解釈すべきでない。本発明は、当業者が理解する、治療薬及び/又は治療剤、或いはそれらの任意の組み合わせたものの改良型移転送達に関する。
【0022】
驚くべきことに、一定の生物油及び脂肪は、一時的或いは永久的に配置した腔内医療用具に十分強く付着するので、患者の腔内医療用具を体腔、導管、又は組織空間に挿入する際に、生物コーティングのほとんどの部分がこの医療用具から外れないことが発見された。一旦、こうした医療用具が患者体内に配置されると、治療薬又は成分を含んだ生物油及び脂肪が、生物油及び脂肪の親油性吸収作用によって、標的組織に直接移着する。組織によるこうした油脂の自然誘引及び細胞取り込みは、体内における標的治療域への効率的な薬剤透過及び送達にとって予期していた以上に有益となる。あらゆる局所的薬剤送達システムに当てはまることだが、細胞膜の外表面に大きな投与量の全身性負荷を掛けることなく、組織の治療域への薬剤浸透を最大化することが理想的な方法と考えられる。薬剤成分と注意深く混合させた生物油又は脂肪を使用すると、この油脂薬剤複合体(原語:complex)の生体吸収によって薬剤成分が局所組織により効果的に透過することが発見された。この油脂薬剤複合体は、体内の多くの組織に対して高い生物学的誘引力を備えているので、化学的に完全なまま医療用具から容易に移着し、その際に、これら油脂を医療用具から移転させる2次的な生化学的又は生物学的反応を必要としない。この治療的油脂薬剤の複合体が、標的組織部位に十分な滞留時間にわたり緊密に係合すると、被覆された医療用具が短時間にわたって組織と密着し、複合体が、その医療用具から標的組織部位に移着する。薬剤を被覆した医療用具が標的治療域に適切に係合した時点で、医療用具が半径方向に拡張する間に、大規模な全身性作用を及ぼすことなく油又は脂肪複合体が接触した組織に容易且つ直接的に移着する。
【0023】
更に、ある種の油脂は、他の物質より迅速に患者の組織に浸透することも分かっている。より具体的には、体腔内の標的組織部位が治療薬の塗布を必要とする場合、この治療薬を様々な方法で標的組織部位に塗布できる。標的組織部位における組織への治療薬の浸透を向上させるには、治療薬を生物油又は脂肪と混合すればよく、ほとんどの治療薬を単独で用いるより効率的に組織に浸透する。治療薬を油又は脂肪に重合させることなく注意深く可溶化、飽和化、又は混合すると、こうした治療的複合体は、薬物の組織への適切な浸透を促し、組織に対する治療的反応を引き起こす。油、脂肪、及び/又は薬剤成分を化学的に重合させることなく、有効成分を油又は脂肪内に化学的に安定化することで、この複合体は任意投与量の薬物又は薬剤を組織に直接送達できる。油又は脂肪と治療薬とを混合し、しかもそれらの間で化学結合が形成されないようにすると、非重合油又は脂肪複合体が存在しない局部薬物送達に比べ、患者体内で係合した際に組織への浸透に適した様態でより効率的に薬物が送達される。
【0024】
薬剤成分と担体との間の化学結合に依存するのでなく、選択した生物油脂によって、治療薬が可溶化し、混合し、当該油又は脂肪内で完全な状態で移送されるので、非外傷性の治療送達複合体が形成される。更に、この治療薬はナノ粒子化、溶解、乳化、又はそれ以外の方法でこの油又は脂肪内に懸濁でき、組織による油脂吸収と同時にこの治療薬も組織による吸収が可能となる。
【0025】
油又は脂肪を使用すると、組織を油脂複合体に暴露したとき、治療薬を細胞に導入することによる炎症反応発生の可能性が低下することも実験的に発見されている。一定の脂肪、例えばオメガ3脂肪酸は身体組織による吸収が優れているだけでなく、それ自身が治療的且つ生物活性的利点を備えることが知られている。こうした油脂によって、機械的送達用具、プロテーゼ、及び/又は治療薬又は薬物の導入による局所組織との機械的接触によってしばしば発生する炎症反応の頻度が低下する。治療薬をこれら油又は脂肪と混合することによって、こうした炎症反応が大幅に減少し、薬物の細胞による組織への取り込みの効果及びこの薬物の生物学的作用が向上する。更に、こうした油又は脂肪送達システムは、塗沫した治療コーティングの吸収時に治療薬の細胞による取り込みを向上させる。
【0026】
こうした油又は脂肪が上述のように作用することを考慮して、本発明は、標的治療領域における係合域全体を治療的に処置するための方法及び装置を含む。代表的な組織は、血管、器官、食道、尿道、前立腺管腔、及び/又は体内における任意の係合組織内の治療領域を含むことができる。この局所治療方法は、非ポリマー物質を含む有効治療薬又は一連の薬物と組み合わせた、移着可能な生物油又は脂肪を係合する段階を含み、これらは、カテーテルインターベンション段階又は半径方向に拡張する用具のインターベンション処置において使用される用具展開方法によって体内で標的組織部位に係合させる。更に、本発明は、一般的には体内における医療用具のインターベンション処置と、こうしたインターベンション処置において治療コーティングの標的治療領域への局所塗布とに適用される。
【0027】
本発明の代表的な一実施形態によると、治療コーティングが塗布された医療用具10が提供される。この医療用具は、患者の体内で使用される任意の用具でよい。例えば、図1A乃至1Gに示したように、医療用具10には、カテーテル12(フォーリーカテーテル、吸引用カテーテル、尿道カテーテル、灌流カテーテル、PCTAカテーテルなど)、ステント14,半径方向に拡張可能な用具16(例えば、カテーテルバルーン、又はステント)、移植片18、プロテーゼ20、外科用具22、縫合ワイヤ24、又は体腔若しくは管腔内で標的組織部位と接触するか又は近位となる他の用具又は器具が含まれる。
【0028】
これ以降の記載に関しては、本発明の特定の実施形態は、カテーテル12に結合した半径方向に拡張可能な用具16を、ステント14との組合せで血管形成に関わる処置のために利用する。しかし、本発明は、上述のようにこのシステム及び方法に限定されず、上述したように様々な医療用具10にも適用されることは注目すべきである。更に、これ以降の記載は、治療コーティングと組み合わせた上述の医療用具を血管形成術への用途に焦点を当てることを注目すべきである。しかし、本発明は同様に血管形成処置に限定されず、上述した医療用具10を使用する様々な医療手法に適用できる。
【0029】
本発明の代表的な一実施形態によると、半径方向に拡張可能な用具16は、図2及び3に示した一般に非弾性のポリエステル・ナイロン混合材料から作製されている。カテーテル12及び半径方向に拡張可能な用具16は、図2に示したとおりに提供する。カテーテル12は、カテーテル12及び半径方向に拡張可能な用具16を体内管腔に案内するための案内ワイヤ26を含む。カテーテル12は半径方向に拡張可能な用具16を膨張させるために流体を提供する多数の開口部28を含む。図3は、膨張状態にある半径方向に拡張可能な用具16を示す。
【0030】
本発明により提供される半径方向に拡張可能な用具は、例えば体内の医療用途などを含む広範囲にわたる用途に適している。代表的な生物学的用途には、移植人工血管、ステント、永久若しくは一時的人工補填物、又は体内の標的組織を治療するために用いる他の種類の医療インプラントを扱うためのカテーテルバルーンとしての利用が含まれ、更に、血管、尿路、腸管、鼻腔、神経鞘、骨小腔、腎臓管、移植人工血管、ステント、プロテーゼ、他の種類の医療インプラントを移植した介入済みの体内腔などの内腔、体腔、及び中空体内導管を処置するためのカテーテルバルーンとしての利用も含まれる。このカテーテルバルーンは、カテーテルがバルーンの全長を貫通するタイプのものでも、バルーンがカテーテルの一端に配置されたタイプのものでもよい。付加的な例としては、血管から塞栓や血栓などの閉塞を除去するための用具として、閉塞した体内導管を再開通させるための拡張用具として、導管又は空間を遮断又は充填する手段を選択的に送達するための閉塞用具として、経腔的用具及びカテーテル用の心出し機構としての利用が含まれる。半径方向に拡張可能な用具16は、従来のカテーテルバルーンの拡張を制御するためそうしたバルーンを覆う外筒としても使用できる。更に、半径方向に拡張可能な用具16は、用途に従って多孔性でも非多孔性でもよい。
【0031】
代表的な半径方向に拡張可能な用具16の本体は、拡張力を加えることにより図2に示した第1の小径形状から図3に示した第2の大径形状に展開できる。半径方向に拡張可能な用具16の本体は、一体式の構成(すなわち、概ね同質材料からなる単一の一体品)とするのが好ましい。代表的な半径方向に拡張可能な用具16は、例えば押出及び伸張工程を用いて製造できる。更に、この半径方向に拡張可能な用具16は例示的な実施形態にすぎない。通常の技能を備えた当業者なら理解できるはずだが、後述するように所望の高圧状態を維持可能な任意の治療剤又は治療薬送達用具であれば用途に従って利用可能である。又、こうした送達用具には加圧状態で治療剤又は治療薬を含む流体を隔離位置まで送達できるものもある。図示したように、半径方向に拡張可能な用具16は、流体(流体送達が望ましく且つ用具が多孔性である場合は、ナノ粒子のスラリー、半流動体、固体、ゲル、液体、又は気体)をその用具16に供給できるカテーテル又は他の構造体に結合可能な拡張可能形状である。半径方向に拡張可能な用具16が多孔性でなければ、カテーテルは(幾つかの異なる種類の)流体を送達して、半径方向に拡張可能な用具16を膨張させ、所望の圧力を維持できる。半径方向に拡張可能な用具16に用いる材料は用途にもよるが、例えばPTFE又はPETが可能であり、これらは当業者には公知の様々な材料の一部である。
【0032】
上述の代表的工程により、非弾性のポリエステル・ナイロン混合材料からなる無孔シームレス構成を特徴とする半径方向に拡張可能な用具16が得られる。ナイロン混合材料は、第2の大径形状部に所定の形状及び大きさを備える。半径方向に拡張可能な用具16は、用具16拡張に使用される膨張力に関わりなく所定の固定最大径で所定形状まで確実且つ安定的に拡張できる。
【0033】
半径方向に拡張可能な用具16は、拡張時には概ね管状であることが好ましいが、長方形、長円、楕円、多角形などの他の断面形状も用途に従って使用できる。半径方向に拡張可能な用具16の断面は、本体の全長にわたって連続的且つ均一とするのが好ましい。しかし、代替的な実施形態では、この断面は、本体の全長にわたって大きさ及び/又は形状が変化してもよい。図2は、第1の小径形状で弛緩状態にある半径方向に拡張可能な用具16を示す。半径方向に拡張可能な用具16は、該用具の2つの端部間で長手軸に沿って延伸する中央内腔を備えている。
【0034】
カテーテル12のような長尺中空チューブ形状の展開機構が、図示したように半径方向に拡張可能な用具16の中央内腔内に配置されていて、半径方向への展開すなわち膨張力を半径方向に拡張可能な用具16に供給する。この半径方向の展開力が、半径方向に拡張可能な用具16を、第1形状から図3に示した第2の大径形状へと半径方向に拡張させる。半径方向に拡張可能な用具16は、熱的接着又は接着結合により形成でき、或いは望ましくない位置での流体漏れを防ぐための他の適切な手段により取り付けできる。
【0035】
カテーテル12は、その内部に延伸する長手方向内腔及びカテーテル12の外部と内腔との間に流体連通を実現する多くの開口部28を備える。カテーテル12は1つ又は複数の流体源に結合して、開口部28を介して流体を半径方向に拡張可能な用具16に選択的に供給できる。流体からの圧力が本体12に半径方向拡張力を掛けて、本体12を第2の大径形状へ半径方向に拡張させる。本体12は非弾性材料から作製されているので、チューブ20を流体源から切り離すか、その他の方法で本体12の内腔13内の流体圧力を大きく減圧しても、一般的には本体12が第1の小径形状に復帰することはない。しかし、本体12は自重によって小径状態まで縮小するはずである。例えば真空源からの負圧を掛けて、本体12を第1の小径形状まで完全に収縮可能である。
【0036】
通常の技能を備えた当業者であれば、半径方向に拡張可能な用具16はカテーテル12などの流体展開力を用いた展開機構との組合せに限定されないことは理解するはずである。例えば、機械駆動部材又はニチノールなどの温度作動材料から作製された機械的要素などの機械作動拡張要素を含む、他の公知の展開機構を用いて半径方向に拡張可能な用具16を半径方向に展開できる。
【0037】
様々なフルオロポリマー材料も本発明での使用に適している。適切なフルオロポリマー材料には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)が含まれ、テトラフルオロエチレンと他の単量体との共重合体を使用してもよい。こうした単量体には、エチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ四フッ化エチレン、又はヘキサフルオロプロピレンのようなフッ化プロピレンが含まれる。PTFEが最も頻繁に使用される。従って、半径方向に拡張可能な用具16は様々なフルオロポリマー材料から製造でき、本発明の製造方法は様々なフルオロポリマー材料を使用できるが、本明細書の説明は特にPTFEに関わるものである。更に、所望の材料特性によっては、PET又はポリエステル・ナイロン混合材料を使用してもよい。
【0038】
ここで本発明の方法に適用する例を取り上げ、本発明に従った血管形成術を以下に説明する。一般に、血管形成術は、狭窄、再狭窄、又は閉塞により狭くなった血管を拡張するために用いる処置である。様々な種類の血管形成術がある。アテローム性動脈硬化症などの閉塞性血管症を発病している患者は、心臓などの臓器や、腕又は脚などの遠位部位への血流が損なわれている。又、その原因は、不安定プラーク、脂肪沈着、又はカルシウム蓄積などにより損なわれた一定の管腔細胞型の増殖によって血管の内腔が狭くなったことによるものである。血管形成術は、血管の断面領域を半径方向に開くすなわち広げるための機械的な半径方向への拡張処置である。再灌流が完了した時点で、機械的に開いた領域で所望の血流が復帰する。
【0039】
時間の経過と共に、この血管が再び狭窄することもありうる(例えば、再狭窄と呼ばれる細胞増殖により)。血管形成術を施してこの血管の断面領域を再び開いて拡大できる。再収縮(原語:recoil)を防止したり、再狭窄の発生又は進行速度を制限するため、ステントを血管に設置できる。このステントは、典型的には半径方向に拡張可能な多孔性メタルメッシュ・チューブの形状を備えており、拡張すると足場組み様の支持構造体を形成する。ステント又はポリマーコーティングのような非生物或いは異物が体内に存在すると、急性及び慢性炎症及び血栓症の危険性が必ず増大する。炎症は、部分的には異物に対する急性自然反応によるものである。異物反応による炎症が、ステント配置を含むインターベンション処置の前後及び処置の最中に患者が全身性薬物(消炎、増殖抑制、及び抗凝固薬剤を含む)の投与を受ける主たる理由である。しかし、再灌流外傷の発生時或いは血管壁内への半径方向ステント展開時に、こうした薬剤が特に血管の外傷箇所に送達されるわけではない。
【0040】
一般に、ステントの配置は血管形成術の後に行うが、必ずしもそうでなくてもよい。多くの患者にとっては、血管の灌流を素早く実行し、一段階技法でのインプラント送達を向上するために、ダイレクトステンティング法が好ましい。いずれの場合も、ステントは、収縮状態にある半径方向に拡張可能なバルーンカテーテルを用いることで血管内の標的組織部位に配置する。この半径方向に拡張可能なカテーテル装置は膨張させ、ステントを拡張させて血管壁に押しつける。半径方向に拡張可能なカテーテル装置は除去して、ステントを拡張した状態で内部に残して血管を機械的に開いた状態とする。時として半径方向に拡張可能な別のバルーンカテーテル装置を、既にステントで拡張した血管内でそのステントの位置に完全に又は部分的に挿入し、ステントが適切に完全に拡張するように膨張させて、血管壁に沿って転位又は移動しないようにし、拡張したステントの下に隙間ができないようにする。完全に拡張しない場合は過剰な血餅発生の原因となる。
【0041】
半径方向に拡張可能な用具16に加え、図3はこの用具16に塗布した治療コーティング30も示している。治療コーティング30は医療用具10としての半径方向に拡張可能な用具16に塗布して、患者体内の標的部位における組織に対して治療効果を及ぼす。治療コーティング30を含めることにより、医療用具10と接触する組織に医療又は治療効果を与えることになる。治療コーティング30に含める治療薬によって、この治療効果は変化させることができる。治療コーティング30を医療用具10に被覆する際は、その有効量が医療用具10を通過する体液によって洗い流されないようにする。又、患者の標的組織部位が医療用具10と十分に接触した時点で、治療コーティング30は医療用具10から標的組織部位へ移着し、その部位に留まることで組織内へ透過する。この治療コーティングは、製造段階において或いは半径方向に拡張可能な用具16を体腔に挿入する直前にこの用具16に塗布すればよい。
【0042】
図4、5、及び6に関する次の説明では、半径方向に拡張可能な用具16及び治療コーティング30の利用法を説明する。それぞれのフローチャートは、より包括的な方法の異なる部分を表すものである。それぞれの異なるフローチャートとして示した各部分は別の方法であって、これら3つのフローチャートで表した3つの方法を併せて或いは記載した順序で実行する必要性はない。更に、これら方法及びフローチャートに対応した説明は、半径方向に拡張可能な用具16、治療コーティング30、カテーテル12、及びステント14の異なる例を示す。これら要素の各例を別個に図示するのは煩雑な繰り返しとなるので、付加的な参照番号を各例に使用しない。従って、これら方法の説明において、半径方向に拡張可能な用具16は各方法で同一用具としてもよく、又、図2及び3に示した半径方向に拡張可能な用具16に類似した用具の様々な変形としてもよい。同様に、通常の技能を備えた当業者なら理解できるように、他の構成要素の説明も同一装置の異なる例と考えることもできる。
【0043】
図4は、血管形成及びステント処置に応用した本発明の代表的な実例を示すフローチャートである。半径方向に拡張可能な第1用具を血管に挿入する前に、この用具に第1の治療コーティングを塗布する(ステップ100)。第1カテーテル及び半径方向に拡張可能な第1用具を、狭くなった器官通路に配置する(ステップ102)。第1の治療コーティングは、半径方向に拡張可能な第1用具に担持され、半径方向に拡張可能な第1用具が拡張する地点となる標的組織部位まで送達される(ステップ106)。この通路は、第1の小径から半径方向に拡張可能な第1用具(例えばバルーンカテーテルなど)を用いて第2の大径まで拡張される(ステップ106)。半径方向に拡張可能な第1用具が半径方向に拡張する過程で、第1の治療コーティングは、標的組織上及び内部に概ね均一に塗布又は塗沫される(ステップ108)。次に、半径方向に拡張可能な第1用具は収縮、除去され(ステップ110)、同時に、第1の治療コーティングの一部は、第1用具の除去に続いて標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0044】
図5は、図4の実施後に行うことができる更なる代表例を示すフローチャートであるが、図4の処置実行の有無にかかわらず行うこともできる。図5では治療インターベンションを実行する。半径方向に拡張可能な第2用具及びステントを体内管腔に挿入する前に、この用具及びステントに第2の治療コーティングを塗布する(ステップ120)。この半径方向に拡張可能なクリンプステントと共に半径方向に拡張可能な第2用具の少なくと一部を、第1インターベンションの標的組織部位の内部又は部分的に内部に配置する(ステップ122)。第2の治療コーティングは、半径方向に拡張可能な第2用具と半径方向に拡張可能なステントとに担持され、標的組織位置まで送達される(ステップ124)。半径方向に拡張可能な第2用具及び半径方向に拡張可能なステントが半径方向に拡張且つ展開することで、ステントが展開して血管に押しつけられると、第2治療コーティングが標的組織部位の治療部位上とその内部に均一に塗布且つ/或いは塗沫される(ステップ126)。次に、半径方向に拡張可能な第2用具は収縮、除去され(ステップ128)、同時に、半径方向に拡張可能なステントと第2の治療コーティングの一部は、標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0045】
図6は、図4及び5の方法の一方又は両方と組み合わせて実行できる第3の方法を示す。第3の治療インターベンションを実行する。半径方向に拡張可能な第3用具を体内管腔に挿入する前に、この用具に第3の治療コーティングを塗布する(ステップ140)。半径方向に拡張可能な第3用具の少なくとも一部を、仮にステントが配置されていればその近傍で、第1インターベンションの標的組織部位の内部に完全に又は部分的に配置する(ステップ142)。第3の治療コーティングは、半径方向に拡張可能な第3用具に担持され、標的組織位置まで送達される(ステップ144)。半径方向に拡張可能な第3用具が半径方向に拡張且つ展開することで、ステント径の拡張が所望の最終拡張量まで調節され、第3治療コーティングが標的組織部位の治療部位上とその内部に均一に塗布且つ/或いは塗沫される(ステップ146)。次に、半径方向に拡張可能な第3用具は収縮、除去され(ステップ148)、同時に、第3の治療コーティングの一部は、標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0046】
図4、5、及び6の方法は組み合わせてもよいし、それぞれ完結した方法として別個に行うこともできる。本明細書に記載したように、治療薬を治療コーティング30として第1、第2、及び第3の塗布を行うことで、治療コーティング30で使用した1つ又は複数の治療薬から最大の効果が得られる。具体的には、血管形成術の後にステントを配置する実例では、治療コーティング30を最初に塗布するのは、標的組織部位への一回目のインターベンション実行時点である。動脈が広げられると、治療コーティング30は患部動脈に塗布され、直接的な治療効果を及ぼす。又、治療コーティング30が塗沫された、半径方向に拡張可能な用具を用いてステントを導入且つ拡張する場合は、治療コーティング30が患部動脈の標的組織部位に再度塗布される。このステントは血管内での拡張に続き、治療コーティング30の少なくとも一部を支持する。こうした処置では、ステント14及び半径方向に拡張可能な用具16(例えばバルーンカテーテル)の円筒形状の100%にわたって治療コーティング30が塗布されている。これは、ステントに薬剤溶出ポリマーコーティングを塗布して、薬剤をポリマー表面から転位させるのみで、展開時における治療薬を移着させる効果がない従来の方法とは異なる。半径方向に拡張可能な用具を膨張させ、ステントを配置した後は、この半径方向に拡張可能な用具は取り除かれる。所望であれば、次に、第3のインターベンションにより、治療コーティング30をここでも塗布したバルーンカテーテルのような別の半径方向に拡張可能な用具を導入でき、展開済みのステントを更に半径方向に拡張する。この場合も、展開後に、半径方向に拡張可能な用具は治療コーティング30を、標的組織部位における組織及びステントに塗沫/塗布する。
【0047】
本発明の方法に従って標的組織部位にインターベンションを何回施したかに関わらず、最終的には所定投与量の治療コーティングを送達すべきである。従って、インターベンションを1回しか行わなければ、3回以上の灌流段階で必要となるよりも多くのコーティング投与量が必要となる可能性がある。
【0048】
例示的な血管形成術に適用したように、本発明は、公知のインターベンション薬剤溶出又は全身送達手法に比べて標的組織の表面をより効果的にその対象範囲に含めるので、効果的且つ効率的な治療薬剤送達を可能とする。本発明の半径方向に拡張可能な用具は、移着可能な非ポリマー治療コーティングを保持しつつ、第1の小径から第2の大径まで拡張する。更に、治療コーティング、作動薬、又は生物学的物質の使用により、第1インターベンション又は第2インターベンションにおける、(同一の標的治療部位の内部か、少なくとも部分的には内部で)半径方向への拡張時に、標的治療部位の表面或いは内部へ直接塗布される物質の移着及び組織付着特性を向上させる。
【0049】
3回の異なるインターベンション処置を行う間に、治療コーティングを標的組織部位に塗布する機会が三度ある。従って、半径方向の拡張を伴う血管形成術/ステント治療の3段階それぞれで所望の標的組織又は細胞反応を得るため、異なる3種の混合治療薬を調製してもよい。同様に、通常の技能を備えた当業者なら理解できるように、本発明は同一の標的組織部位で実行する3回のインターベンション処置には限定されない。それ以外に、任意回数の異なる半径方向に拡張可能なインターベンションカテーテル処置を行って、それぞれの処置で非外傷性治療コーティング30を付着した医療用具10を導入して、標的組織部位で所望の生物学的又は治療的効果をもたらすようにしてもよい。
【0050】
治療コーティング30を医療用具10に塗布するには多くの異なる手順が利用できる。例えば、治療コーティング30は医療用具10に塗布、スプレー、又は塗沫して、臨床的に利用又は使用する前に滅菌処理できる。滅菌した医療用具10の一部又は全体を、滅菌した治療コーティングを含む容器内に沈める方法もある。滅菌した医療用具10を治療コーティングが入った滅菌トレー内で転がしてもよい。治療コーティングを医療用具に塗布する他の方法には、加熱、乾燥、又はそれらの組合せを含むことができる。通常の技能を備えた当業者であれば、本発明は、滅菌した治療コーティング30を塗布した滅菌医療用具10を作製する上述の方法に限定されないことは理解するはずである。これ以外にも、医療用具10によるインターベンションに引き続いて、患者体内の標的組織部位への治療コーティング30の移着が促進されれば、多種多様な方法を用いて治療コーティング30を医療用具10に塗布してよい。
【0051】
代替的な医療用具とその使用による治療コーティング30の塗布には、洗浄用造形品などの半径方向に拡張可能な多孔性用具を利用できる。血管形成術及びステント設置の例では、上述した3つのインターベンションの何れかの実行時に半径方向に拡張可能な用具を使用できる。従って、本発明に従った半径方向に拡張可能な多孔性用具の構造及び製造に関してより詳細に説明する。
【0052】
図7A及び7Bに示したような半径方向に拡張可能な多孔性用具50の形式のエラストマー洗浄用造形品は、代表的な治療コーティング送達用具という例示的な目的に適している。半径方向に拡張可能な多孔性用具50は、膨張用流体を半径方向に拡張可能な多孔性用具50に供給するための複数の開口部78備えたカテーテル72を含んでいる。半径方向に拡張可能な多孔性用具50は、主として微孔性壁部76から形成されている。案内ワイヤ74を半径方向に拡張可能な用具50と共に用いて、この装置を所望箇所に位置決めできる。図7Aは、縮小状態にある半径方向に拡張可能な多孔性用具50を示し、図7Bは、拡張状態にある半径方向に拡張可能な多孔性用具50を示す。更に、図7Bでは、治療コーティング30が、半径方向に拡張可能な多孔性用具50の外面上に塗布されていることも示す。
【0053】
通常の技能を備えた当業者なら理解できるように、半径方向に拡張可能な多孔性用具50は幾つかの他の材料から製作できる。例えば、適切なフルオロポリマー材料には、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)が含まれ、テトラフルオロエチレンと他の単量体との共重合体を使用してもよい。こうした単量体には、エチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ四フッ化エチレン、又はヘキサフルオロプロピレンのようなフッ化プロピレンが含まれる。PTFEが最も頻繁に使用される。半径方向に拡張可能な多孔性用具50は、様々なフッ化ポリマーからも製作できる。
【0054】
図8は、伸展ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を用いて製作された半径方向に拡張可能な多孔性用具50の壁部の微細構造を概略図で示す。説明のため、半径方向に拡張可能な多孔性用具50の微細構造は誇張して示した。従って、微細構造の寸法は拡大されているが、図示した微細構造の一般的特性は、半径方向に拡張可能な多孔性用具50内に広く存在する微細構造を表すものである。
【0055】
半径方向に拡張可能なePTFE多孔性用具50の微細構造は、微小繊維54により連結された結節点52を特徴とする。これら結節点52は、半径方向に拡張可能な多孔性用具50の長手方向軸56に概ね直交して配向されている。微小繊維54により連結された結節点52の微細構造は、微小繊維空間を備えた微孔性構造を形成する。又、この微小繊維空間は、半径方向に拡張可能な多孔性用具50の内壁60から外壁62までの全体にわたって貫通孔すなわちチャンネル58を画定する。貫通孔58は、(長手方向軸56に対して)直交して配向されており、内壁60から外壁62を横断する結節点間の空間である。貫通孔58の寸法及び形状は押出及び伸張工程により変更できる。これは1999年10月1日付けの本願出願人の米国特許出願第09/411797号に詳しく記載されており、不浸透性、半浸透性、又は浸透性の微細構造を形成するためのものである。この出願の内容はここで参照して本明細書に援用する。しかし、本発明は、この製造方法に限定されないことに注目されたい。すなわち、言及した出願は拡張可能な用具を製造する例示的な一方法にすぎない。
【0056】
貫通孔58の寸法及び形状は、様々な配向となるよう変更できる。例えば、押出及び/又は伸張工程の実行時に、半径方向に拡張可能なePTEF多孔性用具50を捻るか回転させることにより、微小チャンネルを、半径方向に拡張可能な多孔性用具50の長手方向軸56に対する直交軸に角度をつけて配向できる。半径方向に拡張可能な多孔性用具50を製造するには、押出工程を実行し、次にポリマーを伸張し、且つポリマーを焼結して貫通孔58の伸張構造を固定化する。
【0057】
半径方向に拡張可能な多孔性用具50の形成材料における貫通孔58の微孔性構造によって、半径方向に拡張可能な多孔性用具50に穿孔することなく、この多孔性用具50の壁部が浸透性となる。半径方向に拡張可能な多孔性用具50の微孔性構造によって、この多孔性用具の壁部を通過する流体の均一的分散を制御できる。
【0058】
流体が半径方向に拡張可能な多孔性用具50を膨張させる際には、この流体は加圧滲み出しによって半径方向に拡張可能な多孔性用具50を通過し、上述したように患者体内の標的位置に塗布できる。こうした場合、この流体は、患部である標的組織部位を治癒する治療特性を備えた1つ又は複数の薬剤を含むことができる。
【0059】
例えば、半径方向に拡張可能な多孔性用具50は、血管形成術及びステント設置処置に関連して述べた何れかのインターベンション実行時に、半径方向に拡張可能な用具16の代わりに使用できる。図9、10、及び11はこうした代替的実施形態の更なる詳細を示す。
【0060】
図9は、血管形成及びステント処置に応用した本発明の代表的な実例を示すフローチャートである。半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具を血管に挿入する前に、第1の治療コーティングをこの用具に塗布できる(ステップ200)。しかし、後述するように、このステップはこの治療コーティングの分散には必要ではない。第1カテーテル及び半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具を、狭くなった器官通路に配置する(ステップ202)。第1の治療コーティングは、半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具に担持され、半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具が拡張する地点となる標的組織部位まで送達される(ステップ204)。この通路は、第1の小径から半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具(例えば微孔性のバルーンカテーテルなど)を用いて第2の大径まで拡張される(ステップ206)。半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具の拡張時及び後は、半径方向に拡張可能なこの多孔性用具を加圧する流体が治療液体を含んでいるため、第1治療コーティングが、半径方向に拡張可能な多孔性用具の外面に形成され且つ/又はその外面上に再供給される(ステップ207)。従って、血管へのインターベンション実行前に半径方向に拡張可能な多孔性用具上に治療コーティングが設けられていれば、半径方向に拡張可能な多孔性用具は、拡張時及び後に治療コーティングを再供給する。初期治療コーティングが施されていなければ、この半径方向に拡張可能な用具を通過する上記流体によって施される。初期治療コーティングが施されていれば、流体がコーティングを再供給する。半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具が半径方向に拡張する過程で、第1治療コーティングは、標的組織上及び内部に概ね均一に塗布又は塗沫される(ステップ208)。次に、半径方向に拡張可能な第1の多孔性用具は収縮、除去され(ステップ210)、同時に、第1治療コーティングの一部は、第1の多孔性用具の除去に続いて標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0061】
図10は、図9の実施後に行うことができる更なる代表例を示すフローチャートであるが、図9の処置実行の有無にかかわらず行うこともできる。図10では治療インターベンションを実行する。半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具及びステントを体内管腔に挿入する前に、この用具及びステントに第2の治療コーティングを塗布する(ステップ220)。この初期コーティングは実行可能だが、上述したように、半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具上に治療コーティングが次に施されるため、必須ではない。この半径方向に拡張可能なクリンプステントと共に半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具の少なくとも一部を、第1インターベンションの標的組織部位の内部又は部分的に内部に配置する(ステップ222)。第2の治療コーティング(塗布されている場合)は、半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具と半径方向に拡張可能なステントとに担持され、標的組織位置まで送達される(ステップ224)。半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具の拡張時及び後は、半径方向に拡張可能なこの多孔性用具を加圧する流体が治療液体を含んでいるため、第2治療コーティングが、半径方向に拡張可能な多孔性用具の外面に形成され且つ/又はその外面上に再供給される(ステップ225)。初期治療コーティングが施されていなければ、この半径方向に拡張可能な用具を通過する上記流体によって施される。初期治療コーティングが施されていれば、流体がコーティングを再供給する。
【0062】
半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具及び半径方向に拡張可能なステントが半径方向に拡張且つ展開することで、ステントが展開して血管に押しつけられると、第2治療コーティングが標的組織部位の治療部位上とその内部に均一に塗布且つ/或いは塗沫される(ステップ226)。次に、半径方向に拡張可能な第2の多孔性用具は収縮、除去され(ステップ228)、同時に、半径方向に拡張可能なステントと第2の治療コーティングの一部は、標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0063】
図11は、図9及び10の方法の一方又は両方と組み合わせて実行できる第3の方法を示す。第3の治療インターベンションを実行する。半径方向に拡張可能な第3の多孔性用具を体内管腔に挿入する前に、この用具に所望なら第3の治療コーティングを塗布する(ステップ240)。上述したように、このステップは随意選択である。半径方向に拡張可能な第3の多孔性用具の少なくとも一部を、仮にステントが留置されていればその近傍で、第1インターベンションの標的組織部位の内部に又は部分的に内部に配置する(ステップ242)。第3の治療コーティングは、半径方向に拡張可能な第3の多孔性用具に担持され、標的組織位置まで送達される(ステップ244)。半径方向に拡張可能な第3の多孔性用具の拡張時及び後は、半径方向に拡張可能なこの多孔性用具を加圧する流体が治療液体を含んでいるため、第3治療コーティングが、半径方向に拡張可能な多孔性用具の外面に形成され、或いはその外面上に再供給される(ステップ245)。初期治療コーティングが施されていなければ、この半径方向に拡張可能な用具を通過する上記流体によって施される。初期治療コーティングが施されていれば、流体がコーティングを再供給する。
【0064】
半径方向に拡張可能な第3の多孔性用具が半径方向に拡張且つ展開することで、ステント径の拡張が所望の最終拡張量まで調節され、第3治療コーティングが標的組織部位の治療部位上とその内部に均一に塗布且つ/或いは塗沫される(ステップ246)。次に、半径方向に拡張可能な第3用具は収縮、除去され(ステップ248)、同時に、第3の治療コーティングの一部は、標的組織部位上及び内部に付着した状態となる。
【0065】
図9、10、及び1の方法は組み合わせてもよいし、それぞれ完結した方法として別個に行うこともできる。本明細書に記載したように、治療薬を治療コーティング30として第1、第2、及び第3の塗布を行うことで、治療コーティング30で使用した1つ又は複数の治療薬から最大の効果が得られる。半径方向に拡張可能な多孔性用具の付加的特徴により、この多孔性用具の拡張時に治療コーティングがこの多孔性用具の外面上に形成される。展開後に、半径方向に拡張可能な多孔性用具は、治療コーティング30を標的組織部位における組織に塗沫/塗布する。半径方向に拡張可能な多孔性用具を標的組織部位に位置決めした後で治療コーティングを形成することができるので、より大量の治療コーティングを標的組織部位まで送達する能力が向上する。これは、半径方向に拡張可能な多孔性用具が標的組織部位まで移動する間に、治療コーティングがその多孔性用具からぬぐい取られたり、洗い流されたりしないためである。更に、追加の治療コーティングが所望なら、ユーザは、半径方向に拡張可能な多孔性用具を加圧するカテーテルを介して付加的流体を供給するだけでよい。こうすることで、流体は多孔性用具の壁部から滲み出し、付加的な治療コーティングを標的組織部位に塗布することになる。
【0066】
治療コーティング30を多くの異なる作動薬や構成物から調合できる。治療コーティングは、非ポリマー性の生体適合性コーティングでよい。このコーティングは単一物質だけで形成してもよいし、1つ又はそれ以上の治療薬ナノ粒子を含む、2つ以上の物質からなる混合物、凝集体、集成体、構成物などを用いて形成できる。これらナノ粒子の少なくとも何れかは、標的組織部位に対して治療特性及び/又は生物学的作用を備えた治療薬とすることができる。
【0067】
例示的な一実施形態によれば、この治療コーティングは、非ポリマー性の生体適合性の油脂で形成できる。親油性を示すか、油脂類に反発する多種多様な治療薬が存在する。本発明の教示に従ってこうした治療薬を、化学結合を起こさないように油脂と混合し、患者体内の標的組織部位に送達できる。下記の表1は、半径方向に拡張可能なインターベンション用具を使って標的組織部位に送達するための、油脂と混合できる治療薬の少なくとも一部を列挙したものである。
【0068】
【表1】
【0069】
こうした治療薬を油脂と混合することにより医療用具10に治療コーティングとして塗布する治療混合物が得られる。この治療混合物は、送達装置やプロテーゼとしての医療用具に十分接着するので、用具の半径方向拡張に続いて、治療コーティングを患者体内の標的組織部位に移着可能となる。標的組織部位でこれら油脂による組織への浸透性が向上することによって、治療薬の浸透も向上する。更に、これら油脂に元々備わった親油性の組織付着特性により、標的組織部位に用具を配置した後で、ほとんどの治療混合物が流動体液により洗い流される可能性を低下させる。従って、治療混合物は標的組織部位の治療域に好適に留まり、この混合物による組織浸透性が向上し、従って体内の標的治療域への治療効果が向上する。
【0070】
本発明との使用に適した幾つかの油脂が存在する。良好な効果を奏する脂肪酸の一例として、魚油などのオメガ3脂肪酸がある。これとは別の油脂で、本発明と組み合わせると優れた効果を奏することが分かっているものにはα‐トコフェノールがある。これ以外にも幾つかの油脂及び他の構成成分があり、下記の表2に列挙した。
【0071】
【表2】
【0072】
更に、治療コーティングと油脂との混合物には溶剤などの他の構成成分を含ませてもよい。こうした溶剤は混合物の粘度を調整、調節する役割を果たす。高分子物質、結合剤、及び粘度上昇剤などの他の構成成分を付加して、治療コーティングを安定化させたり、混合物の他の特性を変化させたりしてもよい。更に、この混合物自体を例えば水素化などにより調整してもよい。
【0073】
本発明は、治療コーティングを支持する医療用具の使用時に、治療コーティングを何らかの治療的様態で標的組織部位の表面及び内部に塗布することを含んだ幾つかの組合せに関する。こうした組合せには、半径方向ステント展開手法などの、同じ領域部位への(同一治療部位の内部か、部分的にその内部における)植え込み手法を含むことができる。この技法及び装置技術により、カテーテルを用いた単一段階の手段又は薬剤溶出ステント手段のみを用いた単一段階の手段のみに比べ、コーティング、薬用剤若しくは治療薬、又は生物学的製剤を、より大きな表面積にわたり送達する多段階塗布手段が実行できる。典型的には、薬剤溶出ステントの表面積は血管壁の20%にすぎないため、コーティング、薬用剤、又は生物学的製剤を、20%を上回る標的組織部位に送達できない。本発明の方法は、より大きい治療域により多くの治療を施すための手段を提供する。更に、半径方向に拡張可能な多孔性用具の使用により、標的組織部位へ送達される治療コーティングの量を更に調節可能となり、このコーティングの治療効果が増大する。
【0074】
本発明の多くの修正及び代替実施形態は、上述の記載を考慮すれば通常の技能を備えた当業者には明白となるはずである。従って、この記載は、例示的なものとしてのみ解釈されるべきであり、又、これは、本発明を実施するための最良の様態を、通常の技能を備えた当業者に教示するためのものである。上述の構成の詳細は、本発明の精神から逸脱することなく実質的に変更することができ、開示した発明の範囲内に入る全ての修正の排他的使用権は、保持されている。
【図面の簡単な説明】
【0075】
本発明は、次の説明及び添付の図面を参照すればより明確に理解されるはずである。
【図1】(A乃至G) 本発明の様々な様態に従った多様な医療用具の透視図である。
【図2】本発明の一様態に従った、収縮状態にある半径方向に拡張可能な用具の概略断面図である。
【図3】本発明の一様態に従った、図2の半径方向に拡張可能な用具を拡張状態で示した概略断面図である。
【図4】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する一方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する別の方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する別の方法を示すフローチャートである。
【図7】(A) 本発明の一様態に従った、収縮状態にある半径方向に拡張可能な多孔性用具の概略断面図である。 (B) 本発明の一様態に従った、拡張状態にある半径方向に拡張可能な多孔性用具の概略断面図である。
【図8】(A) 本発明の一様態に従った、半径方向に拡張可能な多孔性用具の微孔性構造を示す概略断面図である。
【図9】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する一方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する別の方法を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一様態による、治療コーティングを標的組織部位に塗布する別の方法を示すフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向に拡張可能な医療用具であって、
内部と多孔性外面とを備えた本体と、
前記拡張可能な医療用具の拡張時点で、前記本体の前記外面の少なくとも一部に配置される治療コーティングとを含み、
前記治療コーティングの少なくとも一部が、前記本体の前記内部から前記本体の前記外面まで通過して、前記治療コーティングを少なくとも部分的に形成し、
前記治療コーティングが、標的組織部位まで移動し且つ付着して非外傷性の治療効果を及ぼすよう組成されている、半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項2】
前記治療コーティングが、オメガ3脂肪酸を含む脂肪酸を含む、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項3】
医療薬が前記治療コーティング内で乳化されている、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項4】
医療薬が前記治療コーティング内で懸濁されている、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項5】
前記治療コーティングが少なくとも部分的に水素化されている、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項6】
前記治療コーティングが、この治療混合物を安定化するため非高分子物質、結合剤、及び粘度上昇剤のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項7】
前記治療コーティングが、配置された時点で柔らかな固体、ゲル、及び強粘液の粘稠度を保持する、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項8】
前記治療コーティングが溶剤を更に含む、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項9】
前記医療用具が、血管内プロテーゼ、腔内プロテーゼ、シャント、カテーテル、外科用具、縫合ワイヤ、ステント、及び局所的薬物送達装置のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項10】
治療コーティングを標的組織部位に塗布する方法であって、
前記医療用具を、患者体内の標的組織部位の近位に位置決めする段階と、
治療液体を半径方向に拡張可能な医療用具に供給し、この医療用具を拡張する段階と、
前記拡張可能な医療用具の外面の少なくとも一部への、治療コーティングの形成及び再供給のうち少なくとも一方を行う段階と、
前記治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫して、前記治療コーティングの少なくとも一部を前記標的組織部位に移着させる段階とを含む、方法。
【請求項11】
前記医療用具を除去する段階を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記医療用具を、前記標的組織部位にインプラントとして留置する段階を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記治療コーティングが、オメガ3脂肪酸を含む脂肪酸を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
医療薬が前記治療コーティング内で乳化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
医療薬が前記治療コーティング内で懸濁されている、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記治療コーティングが少なくとも部分的に水素化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記治療コーティングは、この治療混合物を安定化するため非高分子物質、結合剤、及び粘度上昇剤のうち少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記治療コーティングが、配置された時点で柔らかな固体、ゲル、及び強粘液の粘稠度を保持する、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記治療コーティングが溶剤を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記半径方向に拡張可能な医療用具が、血管内プロテーゼ、腔内プロテーゼ、シャント、カテーテル、外科用具、ステント、及び局所的薬物送達装置のうち少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記治療コーティングを塗布するために、処置において半径方向に拡張可能な複数の医療用具が用いられる、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
第1治療コーティング、第2治療コーティング、及び第3治療コーティングを、患者体内の標的組織部位に塗布する方法であって、
第1医療用具を提供する段階と、
前記第1医療用具を前記標的組織部位の近傍に位置決めする段階と、
前記第1医療用具を加圧する第1治療液体を用いて、該第1医療用具を半径方向に拡張して前記標的組織部位に押しつける段階と、
前記第1治療液体を前記第1医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより、前記第1治療コーティングを形成する段階と、
前記第1治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫する段階と、
前記第1医療用具を収縮且つ除去する段階と、
前記第2治療コーティングを備えた第2医療用具を提供する段階であって、前記第2医療用具がバルーン部分とステント部分とを含む、提供する段階と、
前記第2医療用具を加圧する第2治療液体を用いて、該第2医療用具を半径方向に拡張して前記標的組織部位に押しつける段階と、
前記第2治療液体を前記第2医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより、前記第2治療コーティングを形成する段階と、
前記第2治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫する段階と、
前記第2医療用具の前記バルーン部分を収縮且つ除去する段階と、
前記第3治療コーティングを備えた第3医療用具を提供する段階と、
前記第3医療用具を前記標的組織部位の近傍に位置決めする段階と、
前記第3医療用具を加圧する第3治療液体を用いて、該第3医療用具を半径方向に拡張して前記標的組織部位に押しつける段階と、
前記第3治療液体を前記第3医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより、前記第3治療コーティングを形成する段階と、
前記第3治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫する段階と、
前記第3医療用具を収縮且つ除去する段階とを含む、方法。
【請求項23】
多孔性バルーンカテーテルであって、
外面を備えた本体と、
前記外面の少なくとも一部に配置された治療コーティングとを含み、
前記治療コーティングは、患者体内の標的組織部位の近位に前記バルーンカテーテルが位置決めされている間に前記バルーンカテーテルの前記外面に付着するように組成されており、次に、半径方向への拡張時に前記治療コーティングと前記標的組織部位とが接触すると、前記コーティングが前記標的組織部位に移着して非外傷性治療効果をもたらす、多孔性バルーンカテーテル。
【請求項24】
前記バルーンカテーテルが、PTFEバルーンカテーテルを含む、請求項23に記載の多孔性バルーンカテーテル。
【請求項25】
治療コーティングを標的組織部位に塗布する方法であって、
多孔性バルーンカテーテルを、第1インターベンション処置において患者体内の標的組織部位の近位に位置決めする段階と、
治療流体を前記多孔性バルーンカテーテルの壁部を通過して滲み出させ、前記多孔性バルーンカテーテル上に治療コーティングを形成する段階と、
前記治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫して、前記治療コーティングの少なくとも一部を、前記多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位に移着させる段階と、
前記多孔性バルーンカテーテルを前記患者から除去する段階とを含む、方法。
【請求項26】
第2多孔性バルーンカテーテル及び前記ステントを、第2インターベンション処置において前記患者体内の前記標的組織部位の近位に位置決めする段階と、
治療流体を前記第2多孔性バルーンカテーテルの壁部を通って滲み出させ、前記第2多孔性バルーンカテーテル上に治療コーティングを形成する段階と、
前記治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫して、前記治療コーティングの少なくとも一部を、前記第2多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位に移着させる段階と、
前記第2多孔性バルーンカテーテルを前記患者から除去し、前記ステントを留置する段階とを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記治療コーティングを第3多孔性バルーンカテーテルに塗布する段階と、
前記第3多孔性バルーンカテーテルを、第3インターベンション処置において前記患者体内の前記標的組織部位の近位に位置決めする段階と、
前記治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫して、前記治療コーティングの少なくとも一部を、前記第3多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位に移着させる段階と、
前記第3多孔性バルーンカテーテルを前記患者から除去する段階とを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項1】
半径方向に拡張可能な医療用具であって、
内部と多孔性外面とを備えた本体と、
前記拡張可能な医療用具の拡張時点で、前記本体の前記外面の少なくとも一部に配置される治療コーティングとを含み、
前記治療コーティングの少なくとも一部が、前記本体の前記内部から前記本体の前記外面まで通過して、前記治療コーティングを少なくとも部分的に形成し、
前記治療コーティングが、標的組織部位まで移動し且つ付着して非外傷性の治療効果を及ぼすよう組成されている、半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項2】
前記治療コーティングが、オメガ3脂肪酸を含む脂肪酸を含む、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項3】
医療薬が前記治療コーティング内で乳化されている、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項4】
医療薬が前記治療コーティング内で懸濁されている、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項5】
前記治療コーティングが少なくとも部分的に水素化されている、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項6】
前記治療コーティングが、この治療混合物を安定化するため非高分子物質、結合剤、及び粘度上昇剤のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項7】
前記治療コーティングが、配置された時点で柔らかな固体、ゲル、及び強粘液の粘稠度を保持する、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項8】
前記治療コーティングが溶剤を更に含む、請求項1に記載の半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項9】
前記医療用具が、血管内プロテーゼ、腔内プロテーゼ、シャント、カテーテル、外科用具、縫合ワイヤ、ステント、及び局所的薬物送達装置のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載半径方向に拡張可能な医療用具。
【請求項10】
治療コーティングを標的組織部位に塗布する方法であって、
前記医療用具を、患者体内の標的組織部位の近位に位置決めする段階と、
治療液体を半径方向に拡張可能な医療用具に供給し、この医療用具を拡張する段階と、
前記拡張可能な医療用具の外面の少なくとも一部への、治療コーティングの形成及び再供給のうち少なくとも一方を行う段階と、
前記治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫して、前記治療コーティングの少なくとも一部を前記標的組織部位に移着させる段階とを含む、方法。
【請求項11】
前記医療用具を除去する段階を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記医療用具を、前記標的組織部位にインプラントとして留置する段階を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記治療コーティングが、オメガ3脂肪酸を含む脂肪酸を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
医療薬が前記治療コーティング内で乳化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
医療薬が前記治療コーティング内で懸濁されている、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記治療コーティングが少なくとも部分的に水素化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記治療コーティングは、この治療混合物を安定化するため非高分子物質、結合剤、及び粘度上昇剤のうち少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記治療コーティングが、配置された時点で柔らかな固体、ゲル、及び強粘液の粘稠度を保持する、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記治療コーティングが溶剤を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記半径方向に拡張可能な医療用具が、血管内プロテーゼ、腔内プロテーゼ、シャント、カテーテル、外科用具、ステント、及び局所的薬物送達装置のうち少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記治療コーティングを塗布するために、処置において半径方向に拡張可能な複数の医療用具が用いられる、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
第1治療コーティング、第2治療コーティング、及び第3治療コーティングを、患者体内の標的組織部位に塗布する方法であって、
第1医療用具を提供する段階と、
前記第1医療用具を前記標的組織部位の近傍に位置決めする段階と、
前記第1医療用具を加圧する第1治療液体を用いて、該第1医療用具を半径方向に拡張して前記標的組織部位に押しつける段階と、
前記第1治療液体を前記第1医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより、前記第1治療コーティングを形成する段階と、
前記第1治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫する段階と、
前記第1医療用具を収縮且つ除去する段階と、
前記第2治療コーティングを備えた第2医療用具を提供する段階であって、前記第2医療用具がバルーン部分とステント部分とを含む、提供する段階と、
前記第2医療用具を加圧する第2治療液体を用いて、該第2医療用具を半径方向に拡張して前記標的組織部位に押しつける段階と、
前記第2治療液体を前記第2医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより、前記第2治療コーティングを形成する段階と、
前記第2治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫する段階と、
前記第2医療用具の前記バルーン部分を収縮且つ除去する段階と、
前記第3治療コーティングを備えた第3医療用具を提供する段階と、
前記第3医療用具を前記標的組織部位の近傍に位置決めする段階と、
前記第3医療用具を加圧する第3治療液体を用いて、該第3医療用具を半径方向に拡張して前記標的組織部位に押しつける段階と、
前記第3治療液体を前記第3医療用具の壁部を通過して滲み出させることにより、前記第3治療コーティングを形成する段階と、
前記第3治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫する段階と、
前記第3医療用具を収縮且つ除去する段階とを含む、方法。
【請求項23】
多孔性バルーンカテーテルであって、
外面を備えた本体と、
前記外面の少なくとも一部に配置された治療コーティングとを含み、
前記治療コーティングは、患者体内の標的組織部位の近位に前記バルーンカテーテルが位置決めされている間に前記バルーンカテーテルの前記外面に付着するように組成されており、次に、半径方向への拡張時に前記治療コーティングと前記標的組織部位とが接触すると、前記コーティングが前記標的組織部位に移着して非外傷性治療効果をもたらす、多孔性バルーンカテーテル。
【請求項24】
前記バルーンカテーテルが、PTFEバルーンカテーテルを含む、請求項23に記載の多孔性バルーンカテーテル。
【請求項25】
治療コーティングを標的組織部位に塗布する方法であって、
多孔性バルーンカテーテルを、第1インターベンション処置において患者体内の標的組織部位の近位に位置決めする段階と、
治療流体を前記多孔性バルーンカテーテルの壁部を通過して滲み出させ、前記多孔性バルーンカテーテル上に治療コーティングを形成する段階と、
前記治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫して、前記治療コーティングの少なくとも一部を、前記多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位に移着させる段階と、
前記多孔性バルーンカテーテルを前記患者から除去する段階とを含む、方法。
【請求項26】
第2多孔性バルーンカテーテル及び前記ステントを、第2インターベンション処置において前記患者体内の前記標的組織部位の近位に位置決めする段階と、
治療流体を前記第2多孔性バルーンカテーテルの壁部を通って滲み出させ、前記第2多孔性バルーンカテーテル上に治療コーティングを形成する段階と、
前記治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫して、前記治療コーティングの少なくとも一部を、前記第2多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位に移着させる段階と、
前記第2多孔性バルーンカテーテルを前記患者から除去し、前記ステントを留置する段階とを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記治療コーティングを第3多孔性バルーンカテーテルに塗布する段階と、
前記第3多孔性バルーンカテーテルを、第3インターベンション処置において前記患者体内の前記標的組織部位の近位に位置決めする段階と、
前記治療コーティングを前記標的組織部位に塗沫して、前記治療コーティングの少なくとも一部を、前記第3多孔性バルーンカテーテルの拡張時に前記標的組織部位に移着させる段階と、
前記第3多孔性バルーンカテーテルを前記患者から除去する段階とを更に含む、請求項26に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−505655(P2007−505655A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526423(P2006−526423)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/030173
【国際公開番号】WO2005/027994
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506087004)アトリウム メディカル コーポレーション (8)
【氏名又は名称原語表記】ATRIUM MEDICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】5 Wentworth Drive, Hudson, NH03051 (US).
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/030173
【国際公開番号】WO2005/027994
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506087004)アトリウム メディカル コーポレーション (8)
【氏名又は名称原語表記】ATRIUM MEDICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】5 Wentworth Drive, Hudson, NH03051 (US).
【Fターム(参考)】
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