説明

多孔率測定のための装置

【課題】単一の超音波変換器によって複合構造を非破壊検査する方法を提供する。
【解決手段】単一の超音波変換器から流体充填された浸水タンク(312)中の反射体へと発されて単一の超音波変換器において再度受信される超音波伝送の較正振幅を決定する工程を含む。この方法は、前記反射体と前記単一の超音波変換器との間の前記流体充填された浸水タンク中に前記複合構造(306)を挿入する工程も含む。さらに方法は、前記単一の超音波変換器によって前記複合構造を走査して、前記複合構造内を移動して前記反射板(302)から反射した後前記構造内を移動して前記単一の超音波変換器へと到達する音波の測定超音波振幅を測定する工程も含む。前記測定された超音波振幅は、前記較正振幅及び他の測定された伝送損失を用いて修正され、前記修正された超音波振幅を用いて、前記複合構造の多孔率又は多孔率の測定を示すデジタル画像のいずれか又は両方を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、複合構造中の多孔率を非破壊的に測定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模構造中の内部傷の特定は、当該構造の安全利用にとって極めて重要である。金属構造の場合、溶融関連含有物及びクラックの特定及び特徴付けは、これらの部分の寿命にとって極めて重要である。大規模金属要素の検査の結果、表面欠陥及び容積欠陥を検出するための高度技術が発展した。これらの技術には、X線方法、浸透方法及び超音波方法が含まれる。
【0003】
新規の製品方法設計及び製造方法では、大規模金属構造の製造時に精製される欠陥よりもより多様な種類の欠陥が発生し得る。これらの新規技術の一例としてポリマーマトリクス複合材料に基づいた新規構造の設計がある。複合構造は、金属構造の製造には存在しない、製造工程に関連するいくつかの固有の傷を有する。これらの傷種類のうちの1つが容積多孔率である。多孔率が検出されない場合、重要要素の早期故障に繋がり得る。
【0004】
複合構造中の多孔率を測定するための1つの公知の方法として、酸分解法の利用がある。酸分解法では、マトリクス材及び繊維材料の重量パーセントを酸を用いて個別測定し、構成物質の1つを溶解させる。これら別個の材料のデータ及び密度情報を用いて、多孔率のパーセントを容易に判定することができる。しかし、酸分解法方法の場合、多孔率の量を測定するために複合材料を溶解させる必要があるため、破壊的である。酸分解法は、全体部分又は部分の一部のいずれかを犠牲にして製造プロセス能力を測定する際のプロセス制御ツールとして有用である。安全運転が適切に機能する各要素に依存する多くの重要要素の場合、このような破壊的試験方法を用いると、安全運転を保証する必要レベルの多孔率検出を提供することができない。すなわち、実際の構造を測定する必要が有る。
【0005】
数人の研究者により、音響減衰を用いて、複合材料中の多孔質物質を推定する研究が行われている(非特許文献l、2、3)。Nair、Hsu及びRose(非特許文献1)により、複合構造中の孔に起因する音響散乱の計算が行われた。Nair、Hsu及びRoseは、多孔率を推定するための減衰傾度測定の利用を提案している。Nair、Hsu及びRoseはまた、多孔率の実験推定と、散乱理論に基づいた減衰の理論計算と、酸分解法方法を用いて収集された実際の多孔率の測定結果との間の整合性を示す実験結果も提供している。
【0006】
Jeong及びHsu(非特許文献2)は、多孔率を推定するための減衰傾度測定の実験分析に継続的に取り組んでいる。Jeongらは、浸水ベースの減衰測定技術を開発した。この減衰測定技術では、変換器回折及び音響透過損失について収集を行った。これらの研究者は、減衰傾度測定が孔の形状又はアスペクト比に対して高感度であることも発見した。その結果、複合構造の構築技術に依存する減衰傾度から多孔質物質を推定するための3つの異なる係数が得られた。
【0007】
Reed、Batzinger、Reed及びJonsson(非特許文献3)は、強制浸水変換器を用いて行われる減衰測定に必要なさらなる修正を発見した。表面粗さ損失の修正及び周波数依存焦点効果の修正のための空間フィルタリング方法について議論された。実験データは、多孔率の減衰推定と、サンプルの破壊的切片法によって決定された実価との間の整合性を示した。
【0008】
これら3つのグループ全てが、超音波減衰を用いた研究室設定中の多孔率の推定の適用性を証明した。上記データは、多孔率測定の超音波推定結果と、酸分解法又は切片に基づいた実価との間の整合性をほぼ示した。
【0009】
一般的に、公知の方法では、複数の周波数におけるデータを収集する2つの変換器の精度走査が必要となる。多孔率分析に必要な超音波情報を収集するには、使用される減衰傾度計算方法に依存する部分を2回以上走査する必要が発生し、生産性が著しく限定される。その上、これらの測定の際にその位置決め軸のために変換器が2台必要となる。金属検査用に設計された多くの浸水タンクに設けられた変換器マニピュレータは1個しか無いため、これらの方法を実施するためには、完全制御可能変換器マニピュレータを2個備えた新規の浸水タンクが必要となる。
【0010】
これらの3つのグループによって開発された方法の別の問題として、較正及び測定が複雑であるため、研究室での訓練を受けていない技術者には検査実施が困難である点がある。Jeongら(非特許文献2)によって議論された回折修正技術の場合、複雑な数学を含む高度な数学スキルが必要となる。Reedら(非特許文献3)によって用いられるフォーカシング修正技術の場合、焦点効果を修正するために減衰画像の空間コンボリューションが必要となる。これらの計算の場合、これらの技術を製造環境へ移転するのは極めて困難である。
【非特許文献1】H.JEONG et al., “Experimental Analysis of Porosity−Induced Ultrasonic Attenuation and Velocity Change in Carbon Composites,”Ultrasonics,33(3):195−203(1995年)
【非特許文献2】NAIR, et al.,“Porosity Estimation Using the Frequency Dependence of the Ultrasonic Attenuation,”J. of Nondestructive Eval.,8(1):13−26(1989年)
【非特許文献3】REED, et al.,“Porosity Measurement in Composites Using Ultrasonic Attenuation Methods,” Rev. of Progress in Quantitative Nondestructive Eval.,第12巻,p.1265−72(1993年)
【非特許文献4】Krautkramer, et al.,“Ultrasonic Testing of Materials,”3d.Ed., Springer−Verlag,p.23−26(1983年)
【非特許文献5】Krautkramer, et al.,“Ultrasonic Testing of Materials,”3d. Ed.,Springer−Verlag,p.90−96(1983年)
【発明の開示】
【0011】
よって、本明細書により、単一の超音波変換器によって非破壊的に検査する方法が開示される。前記方法は、単一の超音波変換器から流体充填された浸水タンク中の反射に発出され、前記単一の超音波変換器において再度受信される超音波伝送の較正振幅を決定する工程を含む。前記方法はまた、前記反射体と前記単一の超音波変換器との間の前記流体充填された浸水タンク中に前記複合構造を挿入する工程も含む。前記方法はまた、前記複合構造を前記単一の超音波変換器で走査して、前記複合構造内を移動して、前記反射板から反射した後前記構造内を通過して前記単一の超音波変換器へと戻る音波の超音波振幅を測定する工程も含む。前記較正振幅及び他の測定された伝送損失を用いて、前記測定された超音波振幅が修正され、前記修正された超音波振幅を用いて、前記複合構造の多孔率及び/又は多孔率測定のデジタル画像を生成する。
【0012】
また、本明細書によって、単一の超音波変換器によって複合構造を非破壊検査する方法が開示される。前記方法は、前記単一の超音波変換器から流体充填された浸水タンク中の複合構造の前表面へと発されて前記単一の超音波変換器において再度受信される超音波伝送の較正振幅を決定する工程を含む。前記方法は、前記流体充填された浸水タンク中に前記複合構造を挿入し、前記単一の超音波変換器によって前記複合構造を走査して、前記複合構造内を移動して前記複合構造の後壁から反射した後に前記構造内を再度移動して前記単一の超音波変換器へと到達する音波の超音波振幅を測定する。前記測定された超音波振幅は、前記較正振幅及び他の測定された伝送損失を用いて修正され、前記修正された超音波振幅を用いて、前記複合構造の多孔率及び/又は多孔率測定のデジタル画像を生成する。
【0013】
ひとつの態様において、本発明は、単一の超音波変換器によって複合構造を非破壊検査する装置を提供する。前記装置は、超音波の送受信を行うように構成された単一の超音波変換器と、前記単一の超音波変換器を動作させて、前記超音波の生成及び増幅を行うように構成された電子装置とを含む。前記装置は、流体が充填されているか又は流体充填可能な浸水タンクと、前記単一の超音波変換器及び複合構造を配置して、超音波情報を入手するように構成された走査システムと、コンピュータを含むデータ収集システムであって、前記データ収集システムは、超音波情報の収集及び前記超音波情報のデジタル画像への変換を行うように構成される、データ収集システムと、をさらに含む。前記装置は、単一の超音波変換器から流体充填された浸水タンク中の少なくとも1つの反射体及び前記複合構造の後側に発出され、前記単一の超音波変換器において再度受信される超音波伝送の較正振幅を決定する工程を行うように構成される。前記装置はまた、前記流体充填された浸水タンク中に挿入された複合構造を前記単一の超音波変換器で走査して、前記複合構造内を移動して、前記反射板又は前記複合構造の後側から反射した後前記構造内を通過して前記単一の超音波変換器へと戻る音波の超音波振幅を測定する工程を行うようにもさらに構成される。前記装置は、前記較正振幅及び他の測定された伝送損失を用いて、前記測定された超音波振幅を修正する工程と、前記修正された超音波振幅を用いて、前記複合構造の多孔率及び/又は多孔率測定のデジタル画像を生成する工程とを行うようにさらに構成される。
【0014】
本発明の多様な構成により、製造プロセスにおける複合構造中の多孔質物質を測定するための非破壊的方法が得られ、かつ、この方法はこれらの成分の設計及び寿命に対して有利であることが、理解される。また、本発明の多様な構成は、容易に入手可能な超音波装置を用いて複合構造中の多孔率体積を非破壊的に測定する。本発明の構成は、超音波減衰測定において、従来技術において必要とされたような多数回走査の代わりに、走査を1回だけ必要とする。また、本発明の構成は、変換器1台だけで実施可能であるため、較正手順及び検査手順を簡素化することができる。本発明の方法構成は、比較的簡単で直接的であり、ほとんどの超音波検査官が保持しない非凡なスキルを必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の技術的効果は、複合構造の多孔率の非破壊的測定及び/又は複合構造の多孔率を示すデジタル画像生成を含む。
【0016】
本発明のいくつかの構成は、金属鍛造の検査に用いられる装置と同様の標準的超音波浸水装置を用いた多孔率測定方法を用いる。このような装置は、複合構造の検査用途において容易に入手可能であり、多くの企業によって製造されている。しかし、この容易に入手可能な装置のコンピュータサブシステムは、本明細書中記載のように事前構成されていない。いくつかの構成において、図1の例示的構成ブロック100及び図2の写真図を参照して、超音波浸水装置200は、以下の3つのサブセクションによって構成される。
【0017】
(a)超音波データの送信及び収集のための変換器108を配置するように構成された走査システム102。
【0018】
(b)超音波の送受信を行うように構成された超音波変換器108を有する超音波変換器システム106。この超音波変換器システム106は、これらの信号の生成及び増幅を行うように構成された電子装置110も有する。
【0019】
(c)コンピュータインプリメントされたデータ収集システム112。このデータ収集システム112は、超音波情報の収集及び当該収集情報(すなわち、データ)のデジタル画像への変換を行うように構成されたコンピュータ114を含む。
【0020】
本発明の構成は、超音波信号を収集する変換器108を1台のみ用いる。この単一の変換器108を用いて、金属検査において一般に行われるように超音波の生成及び受信を行う。金属検査の場合、内部欠陥から直接反射された超音波信号が測定及び特徴付けされる。しかし、本発明の構成において、金属部分の評価に用いられる較正方法と異なる較正方法が必要となり、コンピュータ114は、異なる様式(例えば、較正方法に対応するための適切なソフトウェア又はファームウェアの使用による様式)で構成される。
【0021】
金属構造の検査において行われるような内部欠陥からの超音波反射の振幅の測定を行う代わりに、本発明の多孔率測定構成では、音波が構造内を通過する際の当該音波の減衰の測定を用いる。
【0022】
いくつかの本発明の構成において、図3及び図4を参照して、反射板302を用いて減衰を測定する。構造306への進入前及び構造306からの退出後について、超音波信号304の振幅を測定する。これら2つの測定振幅の比により、構造306を通じた移動と関連付けられた音減衰が得られる。
【0023】
構造306に入る超音波304の振幅は、反射板302から反射された超音波304を測定した後この値を伝送損失について修正することにより、較正工程において決定することができる。水又は他の浸水流体308を移動する波304の振幅は、反射板302の前表面310から反射した超音波304の振幅を測定することにより、決定される。
【0024】
これらの較正データを修正した後、複合構造306を評価するために浸水タンク312中に配置する。変換器108が構造306上で走査されるにつれ、複合構造306内を移動し、反射板302から反射された後に構造306を通じて変換器108へと戻る超音波304の振幅が測定及び記録される。これらの波304は、多孔率による重要な影響だけでなく構造306の2つの水複合材料界面表面314及び316を横断する音と関連付けられた音響透過損失によっても振幅が低減するため、これらの波の振幅を修正して、これらの伝送損失を補償する必要が有る。反射板302を用いた本発明の構成において、必要な修正を以下に示す。
【0025】
【数1】

測定された振幅は、複合材料306内を移動する超音波304の信号振幅である。
【0026】
修正された振幅は、伝送損失について修正を行った超音波振幅である。
【0027】
は、浸水流体308の音響インピーダンスである。
【0028】
は、複合構造306の音響インピーダンスである。
【0029】
この修正率の導出は、Krautkramer(非特許文献4)において発見できる。流体308(通常は水)の音響インピーダンスは既知であり、複合構造306の音響インピーダンスは、既知であるか又は検査前に測定されるため、この計算は、多くの構成において、収集された振幅データの定値による簡単な乗算である。
【0030】
複合構造306が肉厚である場合、回折効果のためのさらなる修正率が必要になり得る。Distance Gain Size(DGS)図による修正は、回折効果修正率が用いられる構成において、用いることができる。DGS図は、ほとんどの変換器製造業者から入手可能であり、また、ジェネリックDGS図を用いた非集束プローブ又は変換器108について簡単に導出が可能である。この修正により、複合構造306が反射板302と変換器108との間に導入された際に超音波304が移動する近接場長さ中で測定された長さの増加を補償する。近接場長さ中での移動長さは、実際の複合材料測定において複合材料306が移動する較正測定の水経路及び音経路の水経路について計算する。複合材料測定において、近接場中の音経路距離は、近接場長さ中の水経路距離及び近接場長さ中の複合構造306中の移動距離の合計である。DGS図を用いて、経路長さ増加に起因する振幅低下を、後壁又は無限反射線(非特許文献5)に関する振幅データから直接決定することができる。
【0031】
較正距離及び多孔率測定距離両方に関する後壁ゲイン値は、DGS曲線から決定することができる。回折−修正振幅値は、以下のようにして計算することができる。
【0032】
【数2】

振幅は、複合構造内を移動する音波の回折−修正振幅である。
【0033】
修正された振幅は、上記にて計算した伝送損失について計算された音振幅である。
【0034】
dBcompは、多孔率測定経路長さにおける信号に関するDGSプロットを用いて決定されたゲインである。
【0035】
dBcalは、較正測定経路長さにおける信号に関するDGSプロットを用いて決定されたゲインである。
【0036】
肉薄の複合構造306の場合、この修正は小さく、測定の簡素化のために無視してもよい。
【0037】
ここで、較正振幅及び複合材料修正振幅又は回折修正振幅を用いて減衰を決定することができる。減衰をデシベル単位で以下のように計算することができる。
α(dB)=20log10(複合材料振幅/較正振幅)
α(dB)は、デシベル単位の減衰である。
【0038】
複合材料振幅は、複合構造306内を移動する超音波304の振幅を、必要ならば伝送損失及び回折について修正したものである。
【0039】
較正振幅は、浸水流体308内を移動し、反射板302から反射される超音波304の振幅である。
【0040】
いくつかの本発明の構成において、図5を参照して、流体308中に浸水された複合構造306の減衰が、反射板302を用いずに決定される。
【0041】
較正振幅を、複合構造306の前表面314からの反射と交換し、複合材料測定振幅を、複合構造306の後壁316からの反射と交換する。いくつかの構成において、後壁振幅を用いて構造306を通じて伝送される振幅を決定しつつ、前表面反射の振幅を用いて、構造306に入る超音波振幅を決定する。これらの場合両方において、伝送損失及び反射損失について振幅を修正する。図5は、この多孔率測定のレイアウトを示す。
【0042】
いくつかの構成において、反射板302を用いた構成において行われる修正と同様の様式で、後壁反射の回折修正を達成する。より詳細には、較正距離は、変換器108と、複合構造306の前表面314との間の近接場長さ中の距離である。多孔率測定距離は、近接場長さ中の較正距離と、近接場長さ中の複合構造306の厚さとの合計である。その後、上述した方法において議論した方程式を用いて、修正された後壁振幅を決定する。この修正は、肉厚の複合構造306のみに対して重要であり、肉薄の複合構造306との使用においては不要である。
【0043】
いくつかの構成において、多孔率測定の減衰を、前表面反射と、後壁反射又は回折について修正された後壁反射のいずれかとから直接決定する。この測定を行うために、以下のように書かれた方程式を用いることができる。
【0044】
【数3】

ここで、
α(dB)は、デシベル単位の減衰である。
【0045】
後壁振幅は、複合構造306の表面316から反射された超音波304の振幅又は後壁反射の回折修正値である。
【0046】
前壁振幅は、複合構造306の前表面314から反射された超音波304の振幅である。
【0047】
は、浸水流体308の音響インピーダンスである。
【0048】
は、複合構造306の音響インピーダンスである。
【0049】
超音波測定からの減衰傾度を用いて、以下のように書かれた方程式を用いて多孔率を推定することができる。
多孔率(%)=係数×減衰傾度+オフセット
【0050】
多孔率は、超音波測定位置における複合構造306中の体積パーセント多孔率である。
【0051】
係数は、理論的又は実験試験において計算された縮尺項である。
【0052】
減衰傾度は、周波数に対する厚さ単位の減衰変化である。
【0053】
オフセットは、ゼロ減衰傾度測定における多孔率値に等しいフィッティング項である。
【0054】
係数値は、理論的に計算され、実験的に検証されてきた(非特許文献1、2、3)。一方向レイアップ又は二方向レイアップでのグラファイト繊維/エポキシマトリクス材上での使用のために、係数値が0.45(パーセント多孔率cmMHz/dB)である。他の複合構造の値が公開されている(非特許文献1、2)。
【0055】
減衰傾度は、厚さ単位及び測定周波数に対する減衰にフィッティングされた線の傾度である。上記した係数項について、減衰がデシベル単位で与えられ、厚さがセンチメートル単位で測定される。傾度計算の周波数は、メガヘルツ(MHz)単位で測定される。複合材料に関する研究室試験では複数の周波数での減衰データが収集されたが、製造検査のため、この試験は簡略化されている。全ての理論計算及びほとんどの実験試験の場合、周波数点に対する既知の減衰が存在しており、これを用いて減衰傾度を計算することができる。この点は、0.0MHzにおける減衰値である。この点における減衰値は0.0dB/単位長さである。この値及び複合構造上で測定された1つのさらなる減衰値を用いて、超音波データから多孔率を推定することができる。この簡略化により、従来公開された文献と比較して、測定時間が50%以上低減される。
【0056】
公開データに基づいたオフセット値は、一方向プライグラファイトエポキシ構造及び二方向プライグラファイトエポキシ構造の0.4%の多孔率である。他の値を用いて、超音波データから多孔率を推定することができる。
【0057】
この多孔率データを用いて、構造中の局所的多孔率をレビューすることが可能な多孔率画像又はマップを形成することができる。このさらなる画像は、破壊的技術を用いては形成することができない。この画像を用いて、構造の品質と、当該構造が重要用途における使用に受容可能か否かとについて決定することができる。
【0058】
実験として、グラファイト複合材料板のサンプルから減衰走査を行い、その後このグラファイト複合材料板のサンプルを用いて体積多孔率を推定した。超音波減衰値は、隣接材料からの酸分解法データと整合した。サンプルの2つの端部は、1.5%オーダーの多孔率値であり、複合材料の中央は、4%により近い。
【0059】
収集された減衰データを用いて、減衰傾度の単一の周波数測定の検証も行った。試験結果は、単一の周波数測定多孔率推定と複数回の周波数測定との間の整合性を示した。
【0060】
多孔率測定システムとの使用のためのカスタム画像生成及び多孔率計算ソフトウェアを開発した。このソフトウェアにより、本明細書中に記載の計算を行った。この計算は、入力情報(例えば、部品厚さ、検査周波数、伝送損失(グラファイトエポキシ複合材料の場合4.8dB)及び較正音レベル)のみを必要とする。このソフトウェアを用いて、複合材料シリンダを成功裏に分析した。
【0061】
よって、上記記載により、多様な本発明の構成により、製造プロセス時の複合構造中の多孔質物質の非破壊的測定方法が得られ、また、この方法はこれらの成分の設計及び寿命に有利であることが分かった。多様な本発明の構成はまた、容易に入手可能な超音波装置を用いて複合構造中の多孔率体積も非破壊的に測定する。本発明の構成では、従来技術技術において必要な複数回の走査の代わりに、超音波減衰測定において走査を1回行うだけですむ。本発明の構成では、変換器が1台だけあればよく、これにより、較正手順及び検査手順が簡略化される。本発明の方法構成は比較的簡単で直接的であり、ほとんどの超音波検査官が保持しない非凡なスキルを必要としない。
【0062】
本発明について多様な特定の実施形態について説明してきたが、当業者であれば、本発明は、請求項の意図及び範囲内であれば、改変して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明の構成との使用に適した超音波浸水装置の構成のブロック図である。
【図2】図2は、図1の超音波浸水装置の写真図である。
【図3】図3は、いくつかの本発明の構成において用いられる較正測定方法を示す。
【図4】図4は、図3に示す本発明の構成において用いられる複合構造を評価する方法を示す。
【図5】図5は、他のいくつかの本発明の構成において用いられる複合構造の較正及び評価のための方法を示す。
【符号の説明】
【0064】
100 構成ブロック
102 走査システム
106 超音波変換器システム
108 変換器
110 電子装置
112 データ収集システム
114 コンピュータ
200 超音波浸水装置
302 反射板
304 超音波
306 構造
308 浸水流体
310 前表面
312 浸水タンク
314 前表面
316 後壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の超音波変換器(108)によって複合構造を非破壊的に検査する装置であって、
超音波の送受信を行うように構成された単一の超音波変換器(304)と、
前記単一の超音波変換器を動作させて、前記超音波の生成及び増幅を行うように構成された電子装置(110)と、
流体が充填されているか又は流体充填可能な浸水タンク(312)と、
前記単一の超音波変換器及び複合構造を配置して、超音波情報を入手するように構成された走査システム(102)と、
超音波情報の収集及び前記超音波情報のデジタル画像への変換を行うよう構成された、コンピュータ(114)を含むデータ収集システム(112)と、
を備え、
前記装置は、
単一の超音波変換器から流体充填された浸水タンク中の少なくとも1つの反射体及び前記複合構造(306)の後側(316)に発出され、前記単一の超音波変換器において再度受信される超音波伝送の較正振幅を決定し、
前記流体充填された浸水タンク中に挿入された複合構造を前記単一の超音波変換器で走査して、前記複合構造内を移動して、前記反射板(302)の1つ又は前記複合構造の後側から反射した後に前記構造内を移動して前記単一の超音波変換器へと戻る音波の超音波振幅を測定し、
前記較正振幅及び他の測定された伝送損失を用いて、前記測定された超音波振幅を修正し、
前記修正された超音波振幅を用いて、前記複合構造の多孔率又は多孔率測定を示す少なくとも1つのデジタル画像を生成するように構成されている装置。
【請求項2】
前記測定された超音波振幅を修正するために、前記コンピュータ(114)は、前記測定された超音波振幅をスケーリングするための定値を用いるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記測定された超音波振幅を修正するために、前記コンピュータ(114)は、さらなる修正を適用して、前記流体充填されたタンク中の反射体と前記単一の超音波変換器(108)との間の前記流体充填されたタンク(312)中に前記複合構造(306)が導入されたとき、前記超音波信号が移動する長さの増加を補償するように、さらに構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
さらなる修正を適用するために、前記コンピュータ(114)は、距離粒径図を用いて前記さらなる修正を決定するようにさらに構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
超音波伝送の較正振幅を決定するために、前記システムは、前記単一の超音波変換器(108)から前記複合構造(306)の後側へと発されて前記単一の超音波変換器において再度受信される較正振幅を決定するように構成され、前記流体充填された浸水タンク(312)中に挿入された前記複合構造を走査するために、前記装置は、前記流体充填された浸水タンクに挿入された複合構造を前記単一の超音波変換器によって走査して、前記複合構造内を移動して前記複合構造の後側(316)から反射された後に再度前記構造内を移動して前記単一の超音波変換器へと到達する音波の超音波振幅を測定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記測定された超音波振幅を測定する工程は、前記流体の既知の音響インピーダンス又は事前測定された音響インピーダンスを用いて、前記測定された超音波振幅のスケーリングに用いられる定値を決定するように構成された前記装置をさらに含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記測定された超音波振幅を修正するために、前記装置は、さらなる修正を適用して、前記後壁(316)において反射した超音波信号の回折を補償するようにさらに構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記超音波信号の減衰傾度を決定し、前記減衰傾度を用いて、前記複合材料物の多孔率を推定するようにさらに構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記超音波信号の減衰傾度を決定するために、前記装置は、厚さ及び測定周波数当たりの減衰にフィッティングされた線の傾度を決定するように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
減衰傾度を決定するために、前記装置は、0.0MHzにおける減衰の0.0dB/単位長さ値を用いて、前記複合構造上でのさらなる減衰値を測定するように構成される、請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−218915(P2007−218915A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34515(P2007−34515)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】