説明

多孔質の金属有機骨格材料としてのアルミニウム−ナフタレンジカルボキシラート

本発明は、金属イオンに配位結合された、二座の有機化合物を有し、ここで金属イオンがAl3+であり、かつ二座の化合物が2,6−ナフタレンジカルボキシラートである、多孔質の金属有機骨格材料に関する。さらに、本発明は、そのような骨格材料を有する成形体、この骨格材料の製造方法並びにこの骨格材料もしくは提案された成形体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質の金属有機骨格材料、この骨格材料を含有する成形体、この骨格材料の製造方法並びに前記の骨格材料又は成形体の、貯蔵、分離、制御された放出、化学反応のための又は担体としての使用に関する。
【0002】
多孔質の金属有機骨格材料は、技術水準から知られている。これらの骨格材料は、特にそれらの多孔度により特徴付けられており、かつしばしば、無機ゼオライトにより知られ、かつ比肩する用途に供給可能である。
【0003】
金属有機骨格材料は、通常、金属イオンに配位結合され、かつこの金属イオンと共に金属有機骨格材料の骨格を形成する、少なくとも二座の有機化合物を有する。
【0004】
金属及び/又は有機化合物の適した選択は、所望の適用分野のための最適化を可能にする。この場合に、例えば、有機化合物の選択は、細孔径分布に影響を及ぼしうる。さらにまた、金属は吸着過程の際に寄与しうる。
【0005】
すなわち、金属並びに有機化合物の選択に帰因されうる特に際立った性質を有する特殊な金属有機骨格材料を提供することへの需要が絶え間なく存在する。
【0006】
興味深い金属として、アルミニウムを挙げることができる、それというのも、強い配位結合に基づいて、比較的頑丈な金属有機骨格材料が得られることができるからである。そのうえ、Al3+イオンは、その八面体配位に基づいて、三次元の骨格化合物を合成するのに原則的に適している。さらに、装入原料として使用可能なアルミニウムの塩は、容易に入手可能であり、かつ安価である。
【0007】
興味深い二座の有機化合物として、2,6−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。ナフタレン骨格並びに2つのカルボン酸官能基の位置に基づいて、個々の金属中心は、多孔質の金属有機骨格材料中で比較的大きな間隔をおいて配置されることができ、その際に硬い(starren)ナフタレン骨格によって、金属有機骨格材料はそれ自体として同様に比較的剛性であり(rigide)、かつ頑丈である。2,6−ナフタレンジカルボン酸自体は、化学的にかつ熱的に比較的安定であり、かつアルミニウムの塩のように大量に入手可能である。
【0008】
T. Loiseau他, C.R. Chimie 8 (2005), 765-772には、三次元的に合成され、かつアルミニウムイオン及び2,6−ナフタレンジカルボキシラートから合成されている、アルミニウム−有機骨格材料"MIL−69"の水熱合成及び結晶構造が記載されている。この際に、前記骨格材料の結晶構造並びにさらに物理的性質が研究された。
【0009】
その際に、構造"MIL−69"については、大きくゆがんでおり、しかしそれ以外は"MIL−53"(アルミニウムテレフタラート)に類似した構造が見出されたが、その際にしかしながら、典型的にこの構造中に侵入した(eingelagerte)水分子は、前記構造を変えることなく除去されることができる。
【0010】
しかしながら前記の骨格材料の再現は、比較的低い比表面積をもたらすので、ガスの貯蔵又は分離のような用途へのそれらの適性は比較的低い。
【0011】
故に、特にガスの貯蔵及び分離に関して優れた性質を有する、選択的なアルミニウム−ナフタレンジカルボキシラート骨格材料の需要が存在する。
【0012】
それゆえ、本発明の課題は、そのような骨格材料を提供することにある。
【0013】
前記課題は、金属イオンに配位結合された二座の有機化合物を有し、ここで金属イオンがAlIIIであり、かつ二座の有機化合物が2,6−ナフタレンジカルボキシラートである、多孔質の金属有機骨格材料により解決され、
前記骨格材料のX線回折図(XRD)が、6.5°<2Θ<7.5°の範囲内で第一の反射を、及び13.8°<2Θ<15.0°の範囲内で第二の反射を、有し、その際に2°<2Θ<70°の範囲内の全ての反射の面積を基準として、第一の反射の面積が一番大きく、かつ第二の反射の面積が二番目に大きく、かつ2°<2Θ<70°の範囲内の全ての反射の全面積を基準として第一及び第二の反射の面積の総和が少なくとも50%になることにより特徴付けられる。
【0014】
製造条件を変えることにより、技術水準において公知の構造"MIL−69"のようにアルミニウムイオン及び2,6−ナフタレンジカルボキシラートから合成されているが、しかしながら、これとは異なるX線回折図を有し、かつさらにまた比較的高い比表面積を有する新規の金属有機骨格材料を得ることが可能であることが見出された。
【0015】
この場合に、特定の値を下回るようにして、反応混合物の全質量に対する出発物質(アルミニウム及び2,6−ナフタレンジカルボキシラート)の質量割合の選択が、新規の構造の形成を可能にすることが特に示されている。
【0016】
既に上記で述べたように、新規構造は、明らかにそのX線回折図が相違する。
【0017】
図1には、本発明による多孔質の金属有機骨格材料のX線回折図が示されている。ここで、 − これらの図中に示されている全ての回折図の場合のように − 2シータスケール(2θ)の相関関係としての強度I(Lin(カウント))が示されている。
【0018】
それに対して、図2は、技術水準から公知の骨格構造"MIL−69"を示す。
【0019】
明らかに異なるX線回折図に基づいて、双方の構造は互いに区別されることができる。同じように、本発明による多孔質の金属有機骨格材料が、技術水準からの金属有機骨格材料との混合物で存在することが可能であり、その際に、相応して、双方の回折図の重なり合いが起こる。そのような一例は図3に示されている。
【0020】
本発明による多孔質の金属有機骨格材料の構造は、特に、X線回折図(XRD)が、6.5°<2Θ<7.5°の範囲内で第一の反射を、及び13.8°<2Θ<15.0°の範囲内で第二の反射を、有し、その際に2°<2Θ<70°の範囲内での全ての反射の面積を基準として、第一の反射の面積が一番大きく、かつ第二の反射の面積が二番目に大きく、かつ2°<2Θ<70°の範囲内での全ての反射の全面積を基準として第一及び第二の反射の面積の総和が少なくとも50%になることで識別されることができる。
【0021】
好ましくは、第一の反射は6.7°<2Θ<7.3°の範囲内であり、かつ第二の反射は13.9°<2Θ<14.8°の範囲内、特に14.0°<2Θ<14.5°の範囲内である。
【0022】
この場合に、回折図は次のように算出されることができる:試料は粉末として、商業的に入手可能な装置(Siemens D-5000回折計又はBruker D8-Advance)の試料容器中に組み込まれる。放射線源として、可変の一次絞り及び二次絞り(Primaer- und Sekundaerblenden)及び二次モノクロメーターを有するCu−Kα線を利用する。信号の検出は、シンチレーション検出器(Siemens)又はSolex-半導体検出器(Bruker)により行われる。2θの測定範囲は、典型的には2°〜70°で選択される。角度段階は、0.02°であり、角度段階あたりの測定時間は典型的には2〜4sである。評価の際に、反射は、背景ノイズとは、少なくとも3倍大きい信号強度により区別される。面積分析は、個々の反射にベースラインを引くことによって、手で行われることができる。選択的に、Bruker社の例えば"Topas-Profile"のようなプログラムが使用されることができ、その際に背景の適合はついで好ましくは、ソフトウエア中の一次多項式により自動的に行われる。
【0023】
本発明による骨格材料の構造は、好ましくは、一次元チャネル構造を有し、前記構造の場合にAlIIIイオン及びOH基からなる線状鎖が、有機2,5−ナフタレンジカルボキシラートを介して橋かけされて三次元斜方晶構造を形成し、その際にオープニング角(Oeffnungswinkel)α(Al−Al−Al)は、78°〜90°の範囲内、好ましくは80°〜90°の範囲内、より好ましくは82.5°±1.5°又は88.5°±1.5°である。
【0024】
さらに、本発明による骨格材料の構造は、16〜18.5Åの格子定数b(単位セルの高さ)を有する。
【0025】
本発明による金属有機骨格材料は、粉末状でもしくは凝集物(Agglomerat)として存在していてよい。
【0026】
本発明による多孔質の金属有機骨格材料は、そのものとして粉末形で使用されることができるか、又は成形体へ変換される。
【0027】
それに応じて、本発明のさらなる態様は、本発明による多孔質の金属有機骨格材料が粉末として存在することである。
【0028】
従って、本発明のさらなる態様は、本発明による多孔質の金属有機骨格材料を有する成形体である。
【0029】
金属有機骨格材料からの成形体の製造は、例えば、国際公開(WO-A)第03/102000号に記載されている。
【0030】
成形体の好ましい製造方法は、この場合に押出し(Verstrangung)又は錠剤化である。成形体製造の際に、前記骨格材料は、製造の間に添加される別の材料、例えば結合剤、滑剤又はその他の添加剤を含有していてよい。同じように、前記骨格材料が別の成分、例えば吸収剤、例えば活性炭等を含有することが考えられる。
【0031】
これらの成形体の可能な幾何学的形状に関して、本質的に制限は存在しない。例えば、とりわけペレット、例えばディスク状ペレット、ピル、球、グラニュール、押出物、例えばビレット、ハニカム、格子又は中空体を挙げることができる。
【0032】
これらの成形体の製造のためには、原則的に全ての適した方法が可能である。特に次の処理手順が好ましい:
・前記骨格材料を、単独で又は少なくとも1つの結合剤及び/又は少なくとも1つのペースト化剤(Anteigungsmittel)及び/又は少なくとも1つのテンプレート化合物と共に混練/エッジミル粉砕して(Kneten/Kollern)、混合物を得る;得られた混合物を、適した少なくとも1つの方法、例えば押出しにより成形する;場合により押出物を洗浄する及び/又は乾燥する及び/又はか焼する;場合により仕上げ加工する(Konfektionieren)。
・少なくとも1つの結合剤及び/又は他の助剤と共に錠剤化する。
・前記骨格材料を、少なくとも1つの場合により多孔質の担持材料上に施与する。得られた材料は、ついで、前記の方法に従い、成形体にさらに加工されることができる。
・前記骨格材料を、少なくとも1つの場合により多孔質の基体上に施与する。
【0033】
混練/エッジミル粉砕及び成形は、各々適した方法により、例えばUllmanns Enzyklopaedie der Technischen Chemie、第4版、第2巻、p.313以降(1972)に記載されているように、行われることができる。
【0034】
例えば、混練/エッジミル粉砕及び/又は成形は、ピストンプレス、少なくとも1つの結合剤材料の存在又は不在でのロールプレス、コンパウンディング、ペレット化、錠剤化、押出し、同時押出し、発泡、スピニング、コーティング、造粒、好ましくは噴霧造粒、噴霧、噴霧乾燥又はこれらの方法の2つ又はそれ以上の組合せを用いて、行われることができる。
【0035】
ペレット及び/又は錠剤が極めて特に好ましくは製造される。
【0036】
混練及び/又は成形は、高められた温度で、例えば室温から300℃までの範囲内で及び/又は高められた圧力で、例えば常圧から数百barの範囲内で及び/又は保護ガス雰囲気中で、例えば、少なくとも1つの希ガス、窒素又はそれらの2つ又はそれ以上の混合物の存在で行われることができる。
【0037】
混練及び/又は成形は、別の一実施態様によれば、少なくとも1つの結合剤の添加下に実施され、その際に結合剤として原則的に、混練すべき及び/又は成形すべき材料の混練及び/又は成形のために望ましい粘度を保証する各々化合物が使用されることができる。それに応じて、結合剤は、本発明の範囲内で、粘度を高める化合物並びに粘度を低下させる化合物であってよい。
【0038】
例えば、とりわけ好ましい結合剤として、例えば国際公開(WO)第94/29408号パンフレットに記載されているような酸化アルミニウム又は酸化アルミニウムを含有する結合剤、例えば欧州特許出願公開(EP-A1)第0 592 050号明細書に記載されているような二酸化ケイ素、例えば国際公開(WO)第94/13584号パンフレットに記載されているような二酸化ケイ素及び酸化アルミニウムからなる混合物、例えば特開平(JP-A)第03-037156号公報に記載されているような粘土鉱物類、例えばモンモリロナイト、カオリン、ベントナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト及びアナウキサイト(Anauxit)、例えば欧州特許(EP-B1)第0 102 544号明細書に記載されているようなアルコキシシラン、例えばテトラアルコキシシラン、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、又は例えばトリアルコキシシラン、例えばトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリブトキシシラン、アルコキシチタナート、例えばテトラアルコキシチタナート、例えばテトラメトキシチタナート、テトラエトキシチタナート、テトラプロポキシチタナート、テトラブトキシチタナート、又は例えばトリアルコキシチタナート、例えばトリメトキシチタナート、トリエトキシチタナート、トリプロポキシチタナート、トリブトキシチタナート、アルコキシジルコナート、例えばテトラアルコキシジルコナート、例えばテトラメトキシジルコナート、テトラエトキシジルコナート、テトラプロポキシジルコナート、テトラブトキシジルコナート、又は例えばトリアルコキシジルコナート、例えばトリメトキシジルコナート、トリエトキシジルコナート、トリプロポキシジルコナート、トリブトキシジルコナート、シリカゾル、両親媒性物質及び/又はグラファイトを挙げることができる。
【0039】
粘度を増大させる化合物として、例えば、場合により前記の化合物に加えて、有機化合物及び/又は親水性ポリマー、例えばセルロース又はセルロース誘導体、例えばメチルセルロース及び/又はポリアクリラート及び/又はポリメタクリラート及び/又はポリビニルアルコール及び/又はポリビニルピロリドン及び/又はポリイソブテン及び/又はポリテトラヒドロフラン及び/又はポリエチレンオキシドが使用されることもできる。
【0040】
ペースト化剤として、とりわけ好ましくは、水又は少なくとも1つのアルコール、例えば、炭素原子1〜4個を有するモノアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール又は2−メチル−2−プロパノール又は水と少なくとも1つの前記のアルコールとからなる混合物又は多価アルコール、例えばグリコール、好ましくは単独で又は水及び/又は少なくとも1つの前記の一価アルコールとの混合物としての水混和性の多価アルコールが使用されることができる。
【0041】
混練及び/又は成形に使用されることができる別の添加剤は、とりわけ、アミン又はアミン誘導体、例えばテトラアルキルアンモニウム化合物又はアミノアルコール及び炭酸塩を含有する化合物、例えば炭酸カルシウムである。そのような別の添加剤は、例えば、欧州特許出願公開(EP-A1)第0 389 041号明細書、欧州特許出願公開(EP-A1)第0 200 260号明細書又は国際公開(WO)第95/19222号に記載されている。
【0042】
テンプレート化合物、結合剤、ペースト化剤、成形及び混練の際に粘度を増大させる物質のような添加剤の順序は、原則的に重要でない。
【0043】
好ましい別の一実施態様によれば、混練及び/又は成形により得られた成形体は、一般的に25〜500℃の範囲内、好ましくは50〜500℃の範囲内及び特に好ましくは100〜350℃の範囲内の温度で実施される少なくとも1つの乾燥にかけられる。同じように、真空中で又は保護ガス雰囲気下に又は噴霧乾燥により乾燥させることが可能である。
【0044】
特に好ましい一実施態様によれば、この乾燥過程の範囲内で、添加剤として添加された少なくとも1つの化合物が、少なくとも部分的に成形体から除去される。
【0045】
本発明による金属有機骨格材料は、細孔、特にミクロ孔及び/又はメソ孔を有する。ミクロ孔は、2nm又はそれ以下の直径を有するものとして定義されており、かつメソ孔は、2〜50nmの範囲内の直径により定義されている(Pure & Appl. Chem. 57 (1985) 603-619)。ミクロ孔及び/又はメソ孔の存在は、収着測定を用いて調べることができ、その際にこれらの測定は、DIN 66131及び/又はDIN 66134に従い(ラングミュアによる)77Kで窒素についての金属有機骨格材料の吸収容量を決定する。
【0046】
好ましくは、細孔は、10Åを上回るがしかし25Å未満、特に好ましくは15〜20Å、特に16〜18Åの直径を有する一次元チャネルの形で存在する。
【0047】
好ましくは、ラングミュアモデル(DIN 66131、66134)に従い算出される比表面積は粉末形の本発明による金属有機骨格材料については、少なくとも1000m2/g、より好ましくは少なくとも1200m2/g、より好ましくは少なくとも1400m2/g、さらにより好ましくは少なくとも1600m2/g、さらにより好ましくは少なくとも1800m2/g及び特に好ましくは少なくとも1950m2/gである。
【0048】
本発明による金属有機骨格材料からの成形体は、より低い比表面積を有してもよいが;しかしながら好ましくは少なくとも500m2/g、より好ましくは少なくとも600m2/g、さらにより好ましくは少なくとも700m2/g、特に少なくとも800m2/gである。
【0049】
本発明のさらなる対象は、本発明による多孔質の金属有機骨格材料の製造方法であり、前記方法は、
・アルミニウム化合物、2,6−ナフタレンジカルボン酸又はその塩及び有機溶剤を含有する反応混合物を、100℃〜200℃の範囲内の温度で撹拌しながら反応させる
工程を含み、その際に、アルミニウム化合物及び2,6−ナフタレンジカルボン酸又はその塩の割合の総和が、反応混合物の全質量を基準として20質量%未満である。
【0050】
本発明による多孔質の金属有機骨格材料の有機成分として、アルミニウム化合物と反応されることができる2,6−ナフタレンジカルボン酸が使用される。同じように、2,6−ナフタレンジカルボン酸の誘導体を使用することが可能である。すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸がその塩の形で使用されることが例えば考えられる。2,6−ナフタレンジカルボン酸が完全に又は部分的に脱プロトン化されたアニオンとして存在する塩は、任意に適したカチオンを有していてよい。
【0051】
そのようなカチオンは、例えば一価又は二価の、好ましくは一価の金属イオンであってよい。これらの例は、特にナトリウム塩及びカリウム塩である。同じように、アンモニウム化合物のカチオンが使用可能である。この場合に、特にアンモニウム自体並びにアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。
【0052】
前記アルミニウム化合物は、金属アルミニウムのアノード酸化により製造されることができる。そのような場合に、本発明による多孔質の金属有機骨格材料は、少なくとも部分的に電気化学的経路で製造される。多孔質の金属有機骨格材料の電気化学的製造方法は、国際公開(WO-A)第2005/049892号に記載されている。また、本発明による多孔質の金属有機骨格材料用のアルミニウム化合物は、この経路で製造されることができる。
【0053】
本発明による多孔質の金属有機骨格材料の電気化学的製造の際に、アルミニウムイオンのカソード再析出が、次の措置の少なくとも1つにより少なくとも部分的に防止されることが好ましい:
(i)水素のカソード形成を促進する電解液の使用;
(ii)カソード減極をもたらす少なくとも1つの化合物の添加;
(iii)適した水素過電圧を有するカソードの使用。
【0054】
前記方法は、非分離電解セル中で実施されることができる。特別に適したセルは、ギャップセル又はプレートスタックセルである。これらはバイポーラ接続されていてよい。反応媒体として、例えばメタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド又はこれらの2又はそれ以上の溶剤の混合物が適している。
【0055】
反応混合物中に、さらに、1種の支持電解質又は複数の支持電解質が存在していてよい。この場合に、支持電解質は、カチオン成分として第四級アンモニウムを、及びアニオン成分としてアルコキシスルファートを、有していてよい。全固体含量は、0.5質量%又はそれ以上の範囲内であるべきである。
【0056】
本発明による金属有機骨格材料の本発明による製造方法における反応は、古典的な経路でも行われることができる。この場合に、アルミニウム化合物は典型的にはアルミニウム塩である。
【0057】
アルミニウム塩は、アルコラート、アセトナート、ハロゲン化物、亜硫酸塩の形で、酸素を有する有機酸又は無機酸又はそれらの混合物の塩として存在していてよい。
【0058】
アルコラートは、例えば、メタノラート、エタノラート、n−プロパノラート、イソプロパノラート、n−ブタノラート、イソブタノラート、t−ブタノラート又はフェノラートである。
【0059】
アセトナートは、例えば、アセチルアセトナートである。
【0060】
ハロゲン化物は、例えば、塩化物、臭化物又はヨウ化物である。
【0061】
酸素を有する有機酸は、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸又は他のアルキルモノカルボン酸である。
【0062】
酸素を有する無機酸は、例えば硫酸、亜硫酸、リン酸又は硝酸である。
【0063】
さらに好ましいアルミニウム化合物は、無機アルミニウム塩、例えば塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸水素アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、リン酸一水素アルミニウム、リン酸アルミニウム、硝酸アルミニウムである。
【0064】
前記アルミニウム化合物は、場合により水和水を含有していてよい。アルミニウム化合物として、塩化物、硝酸塩並びに硫酸塩の水和物が好ましい。
【0065】
本発明による多孔質の金属有機骨格材料の本発明による製造方法における反応は、少なくとも有機溶剤の存在で行われる。この場合に、ソルボサーマル条件(Solvothermalbedingungen)が使用されることができる。"サーマル(thermal)"という概念は、本発明の範囲内で、本発明による多孔質の金属有機骨格材料のための反応が、圧力容器中で、この容器が反応中に密閉されており、かつ高められた温度が適用されるので、存在している溶剤の蒸気圧に基づいて、圧力容器中で反応媒体内で圧力が発生されるようにして実施される製造方法であると理解されるべきである。
【0066】
好ましくは、前記反応は、水を含有する媒体中では行われず、かつ同じようにソルボサーマル条件下では行われない。
【0067】
したがって、本発明による方法における反応は、好ましくは非水溶剤の存在で行われる。
【0068】
前記反応は、高くとも2bar(絶対)の圧力で好ましくは行われる。しかしながら好ましくは、圧力は高くとも1230mbar(絶対)である。特に好ましくは、反応は大気圧で行われる。この場合に、しかしながら、装置により制約されて、軽度の加圧又は減圧となりうる。故に、本発明の範囲内で、"大気圧"という概念は、実際の当該大気圧から±150mbarとなる圧力範囲であると理解されるべきである。
【0069】
前記反応は、100℃〜200℃の温度範囲内で行われる。好ましくは、温度は110℃〜170℃の範囲内である。さらに好ましくは、温度は120℃〜150℃の範囲内である。
【0070】
反応混合物はさらに塩基を含有していてよい。これは、少なくとも二座の有機化合物としてのカルボン酸の使用の際にこのカルボン酸を易溶にするために特に役立つ。有機溶剤の使用により、そのような塩基を使用することはしばしば不要である。それにも関わらず、本発明による方法のための溶剤は、これがそれ自体として塩基性で反応するように選択されることができるが、しかしながらこのことは、本発明による方法の実施のために絶対に必要ではない。
【0071】
同じように、塩基が使用されることができる。しかしながら、付加的な塩基が使用されないことが好ましい。
【0072】
反応を撹拌しながら行うことができることはさらに有利であり、このことはスケールアップの際にも有利である。
【0073】
(非水系)有機溶剤は、好ましくは、C1-6−アルカノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトニトリル、トルエン、ジオキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン(MEK)、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチルエステル、場合によりハロゲン化されたC1-200−アルカン、スルホラン、グリコール、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、脂環式アルコール、例えばシクロヘキサノール、ケトン、例えばアセトン又はアセチルアセトン、シクロケトン、例えばシクロヘキサノン、スルホレン又はそれらの混合物である。
【0074】
1-6−アルカノールは、炭素原子1〜6個を有するアルコールを意味する。これらの例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール並びにそれらの混合物である。
【0075】
場合によりハロゲン化されたC1-200−アルカンは、炭素原子1〜200個を有するアルカンを意味し、その際に水素原子の1つ又は複数から全てまでが、ハロゲン、好ましくは塩素又はフッ素、特に塩素により、置換されていてよい。これらの例は、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン並びにそれらの混合物である。
【0076】
好ましい溶剤はDMF、DEF、DMAc及びNMPである。DMFが特に好ましい。
【0077】
"非水系"という概念は、好ましくは、溶剤の全質量を基準として、10質量%、より好ましくは5質量%、さらにより好ましくは1質量%、さらに好ましくは0.1質量%、特に好ましくは0.01質量%の最高含水量を上回らない溶剤を指す。
【0078】
好ましくは、反応の間の最高含水量は、10質量%、より好ましくは5質量%及びさらにより好ましくは1質量%である。
【0079】
"溶剤"という概念は、純粋な溶剤並びに多様な溶剤の混合物に該当する。
【0080】
さらに好ましくは、少なくとも1つの金属化合物と少なくとも二座の少なくとも1つの有機化合物との反応の処理工程に続いて、か焼工程が行われる。この際に調節される温度は、典型的には250℃を上回り、好ましくは300〜400℃である。
【0081】
か焼工程に基づき、細孔中に存在している少なくとも二座の有機化合物は除去されることができる。
【0082】
これに補充して又は選択的に、多孔質の金属有機骨格材料の細孔からの少なくとも二座の有機化合物(配位子)の除去は、形成された骨格材料を非水系溶剤で処理することにより行われることができる。この場合に、"抽出法"のやり方で前記配位子は除去され、かつ場合により前記骨格材料中で溶剤分子により置換される。
【0083】
前記処理は、好ましくは少なくとも30分間行われ、かつ典型的には7日間まで実施されることができる。これは、室温又は高められた温度で行われることができる。好ましくは、これは高められた温度下に、例えば少なくとも40℃、好ましくは60℃で行われる。さらに好ましくは、抽出は、使用される溶剤の沸騰温度で行われる(還流下)。
【0084】
前記処理は、単純な釜中で、前記骨格材料のスラリー化及び撹拌により行われることができる。抽出装置、例えばソックスレー装置、特に工業用抽出装置も使用されることができる。
【0085】
適した溶剤として、前記のもの、すなわち、例えばC1-6−アルカノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトニトリル、トルエン、ジオキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン(MEK)、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチルエステル、場合によりハロゲン化されたC1-200−アルカン、スルホラン、グリコール、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、脂環式アルコール、例えばシクロヘキサノール、ケトン、例えばアセトン又はアセチルアセトン、シクロケトン、例えばシクロヘキサノン又はそれらの混合物が使用されることができる。
【0086】
メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、MEK及びそれらの混合物が好ましい。
【0087】
極めて特に好ましい抽出溶剤はメタノールである。
【0088】
抽出に使用される溶剤は、少なくとも1つの金属化合物と少なくとも二座の少なくとも1つの有機化合物との反応のための溶剤と同じか又は異なっていてよい。"抽出"の際に溶剤が水不含であることが、どうしても必要であるというわけではないが、しかし好ましい。
【0089】
本発明による方法によれば、アルミニウム化合物及び2,6−ナフタレンジカルボン酸又はその塩の割合の総和(x1)は、反応混合物の全質量を基準として20質量%未満である。好ましくは、この割合は15質量%未満、特に12質量%未満である。しかしながらこの割合は、2質量%を上回り、好ましくは2.7質量%を上回るべきである。
【0090】
本発明による方法において、2,6−ナフタレンジカルボン酸又はその塩に対するアルミニウム化合物のモル比(x2)が0.3〜1.5の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、この比は0.4〜0.8の範囲内である。この比の別の好ましい範囲は、2以上、特に2.6以上の範囲であり;しかしながらこの値は5を上回るべきではない。
【0091】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1つの物質の吸収のため、その貯蔵、分離、制御された放出、化学反応のための又は担体としての、本発明による多孔質の金属有機骨格材料の使用である。
【0092】
好ましくは少なくとも1つの前記物質は気体又は気体混合物である。
【0093】
金属有機骨格材料を用いて貯蔵する方法は一般的に、国際公開(WO-A)第2005/003622号、国際公開(WO-A)第2003/064030号、国際公開(WO-A)第2005/049484号、国際公開(WO-A)第2006/089908号並びに独国特許出願公開(DE-A)第10 2005 012 087号明細書に記載されている。それらに記載された方法は、本発明による金属有機骨格材料についても使用されることができる。
【0094】
金属有機骨格材料を用いて分離もしくは精製する方法は一般的に、欧州特許出願公開(EP-A)第1 674 555号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第10 2005 000938号明細書及び出願番号DE-A 10 2005 022 844を有する独国特許出願明細書に記載されている。それらに記載された方法は、本発明による金属有機骨格材料についても使用されることができる。
【0095】
本発明による多孔質の金属有機骨格材料が貯蔵に使用される場合は、これは好ましくは−200℃〜+80℃の温度範囲内で行われる。−40℃〜+80℃の温度範囲がより好ましい。
【0096】
本発明の範囲内で、単純化して"気体"及び"液体"という概念が使用されるが、しかしながらその際にここでは、同じように気体混合物並びに液体混合物もしくは液状溶液が"気体"もしくは"液体"の概念であると理解されるべきである。
【0097】
好ましい気体は、水素、天然ガス、都市ガス、炭化水素、特にメタン、エタン、エテン、アセチレン、プロパン、n−ブタン並びにイソブタン、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、酸素、硫黄酸化物、ハロゲン、ハロゲン化された炭化水素、NF3、SF6、アンモニア、ボラン、ホスファン、硫化水素、アミン、ホルムアルデヒド、希ガス、特にヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン並びにキセノンである。
【0098】
特に好ましくは、前記気体は、二酸化炭素を含有する気体混合物から分離される二酸化炭素である。好ましくは、その場合に、前記気体混合物は、二酸化炭素に加え少なくともH2、CH4又は一酸化炭素を含有する。特に、その場合に前記気体混合物は、二酸化炭素に加え一酸化炭素を含有する。二酸化炭素を少なくとも10体積%及び多くとも45体積%及び一酸化炭素を少なくとも30体積%及び多くとも90体積%を含有する混合物が極めて特に好ましい。
【0099】
好ましい一実施態様は、複数の並列の吸着材反応器を用いる圧力スイング吸着であり、その際に吸着材床は、完全にか又は部分的に本発明による材料からなる。吸着段階は、CO2/CO分離のためには、好ましくは0.6〜3barのCO2分圧及び少なくとも20℃、しかしながら高くとも70℃の温度で行われる。吸着された二酸化炭素の脱着のためには、当該吸着材反応器中の全圧は、通常100mbar〜1barの値に低下される。
【0100】
さらに好ましくは、100bar(絶対)の最小圧で気体を貯蔵するための、本発明による骨格材料の使用である。より好ましくは、最小圧は200bar(絶対)、特に300bar(絶対)である。この場合に、特に好ましくは、前記気体は水素又はメタンである。
【0101】
しかしながら、少なくとも1つの前記物質は液体であってもよい。そのような液体の例は、消毒剤、無機溶剤又は有機溶剤、燃料 − 特にベンジン又はディーゼル −、作動液、冷却器液、ブレーキ液又は油、特に機械油である。さらに、液体は、ハロゲン化された脂肪族又は芳香族の、環状又は非環状の炭化水素又はそれらの混合物であってよい。特に、液体は、アセトン、アセトニトリル、アニリン、アニソール、ベンゼン、ベンゾニトリル、ブロモベンゼン、ブタノール、t−ブタノール、キノリン、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、氷酢酸、無水酢酸、酢酸エチルエステル、エタノール、エチレンカーボナート、二塩化エチレン、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ホルムアミド、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メトキシプロパノール、3−メチル−1−ブタノール、塩化メチレン、メチルエチルケトン、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、ピペリジン、プロパノール、プロピレンカーボナート、ピリジン、二硫化炭素、スルホラン、テトラクロロエテン、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、トルエン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリエチルアミン、トリエチレングリコール、トリグリメ(Triglyme)、水又はこれらの混合物であってよい。
【0102】
さらに、少なくとも1つの前記物質は、におい物質であってよい。
【0103】
好ましくは、におい物質は、窒素、リン、酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素の少なくとも1つの元素を含有する揮発性の有機又は無機の化合物、又は不飽和又は芳香族の炭化水素、又は飽和又は不飽和のアルデヒド、又はケトンである。より好ましい元素は、窒素、酸素、リン、硫黄、塩素、臭素であり;窒素、酸素、リン及び硫黄が特に好ましい。
【0104】
特に、におい物質は、アンモニア、硫化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物、オゾン、環状又は非環状のアミン、チオール、チオエーテル並びにアルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、酸又はアルコールである。アンモニア、硫化水素、有機酸(好ましくは酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、ヘプチル酸、ラウリン酸、ペラルゴン酸)並びに窒素又は硫黄を有する環状又は非環状の炭化水素並びに飽和又は不飽和のアルデヒド、例えばヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、オクテナール又はノネナール及び特に揮発性のアルデヒド、例えばブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒド及びさらに燃料、例えばベンジン、ディーゼル(成分)が特に好ましい。
【0105】
におい物質は、例えば香水の製造に使用される香料であってもよい。例示的に、香料又はそのような香料を遊離する油として、次のものを挙げることができる:精油、バジル油、ゼラニウム油、ミント油、イランイラン油、カルダモン油、ラベンダー油、ペパーミント油、マスカット油、カミツレ油、ユーカリ油、ローズマリー油、レモン油、ライム油、オレンジ油、ベルガモット油、マスカテルセージ油、コリアンダー油、サイプレス油、1,1−ジメトキシ−2−フェリルエタン、2,4−ジメチル−4−フェニルテトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、2,6−ジメチル−7−オクテン−2−オール、1,2−ジエトキシ−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン、フェニルアセトアルデヒド、ローズオキシド(Rosenoxid)、エチル 2−メチルペンタノアート、1−(2,6,6−トリメチル−1,3−シクロヘキサジエン−1−イル)−2−ブテン−1−オン、エチルバニリン、2,6−ジメチル−2−オクテノール、3,7−ジメチル−2−オクテノール、t−ブチルシクロヘキシルアセタート、酢酸アニシル類、アリルシクロヘキシルオキシアセタート、エチルリナロール、オイゲノール、クマリン、アセト酢酸エチル、4−フェニル−2,4,6−トリメチル−1,3−ジオキサン、4−メチレン−3,5,6,6−テトラメチル−2−ヘプタノン、エチルテトラヒドロサフラナート、ゲラニルニトリル、シス−3−ヘキセン−1−オール、シス−3−ヘキセニルアセタート、シス−3−ヘキセニルメチルカーボナート、2,6−ジメチル−5−ヘプテン−1−アール、4−(トリシクロ[5.2.1.0]デシリデン)−8−ブタナール、5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテニル)−3−メチルペンタン−2−オール、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナムアルデヒド、エチル[5.2.1.0]トリシクロデカンカルボキシラート、ゲラニオール、シトロネロール、シトラール、リナロール、酢酸リナリル、イオノン類、フェニルエタノール又はこれらの混合物。
【0106】
本発明の範囲内で、揮発性のにおい物質は好ましくは、300℃未満の沸点又は沸点範囲を有する。より好ましくは、におい物質は、易揮発性の化合物又は混合物である。特に好ましくは、におい物質は、250℃未満、より好ましくは230℃未満、特に好ましくは200℃未満の沸点又は沸点範囲を有する。
【0107】
同様に、高い揮発性を有するにおい物質が好ましい。揮発性の尺度として、蒸気圧が採用されることができる。本発明の範囲内で、揮発性のにおい物質は、好ましくは0.001kPa(20℃)を上回る蒸気圧を有する。より好ましくは、におい物質は、易揮発性の化合物又は混合物である。殊に好ましくは、におい物質は、0.01kPa(20℃)を上回る蒸気圧、より好ましくは0.05kPa(20℃)を上回る蒸気圧を有する。特に好ましくは、複数のにおい物質は、0.1kPa(20℃)を上回る蒸気圧を有する。
【0108】
本発明による金属有機骨格材料の存在で化学反応を行うことができる例は、モノオール並びにポリオールのアルコキシル化である。そのようなアルコキシル化の手法は、国際公開(WO-A)第03/035717号並びに国際公開(WO-A)第2005/03069号に記載されている。同じように、本発明による多孔質の金属有機骨格材料は、エポキシ化並びにポリアルキレンカーボナート及び過酸化水素の製造に使用されることができる。そのような反応は、国際公開(WO-A)第03/101975号、国際公開(WO-A)第2004/037895号並びに米国特許出願公開(US-A)第2004/081611号明細書に記載されている。
【0109】
触媒反応が特に好ましい。
【0110】
さらにまた、本発明による金属有機骨格材料は、担体、特に触媒の担体として、使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】例1のAl−2,6−ナフタレンジカルボン酸−金属有機骨格材料のXRD。
【図2】比較例1のAl−NDC−MOFsのXRD。
【図3】比較例2の混合物のXRD。
【図4】例1の骨格材料(上)と独国特許出願公開(DE-A)第10 2005 039 623号明細書の例1に類似して製造されたAl−テレフタラート(下)とのH2吸収A(ml/g)の比較を示す図。
【図5】例3からの材料のCO2及びCOの純物質等温線を示す図。
【図6】平面a、cの構造提案を示す図。
【図7】平面a、bの構造提案を示す図。
【実施例】
【0112】
例1:本発明によるAl−2,6−ナフタレンジカルボン酸−金属有機骨格材料(Al−NDC)の製造
AlCl3・6H2O 5g及び2,6−ナフタレンジカルボン酸6.72g(モル比:Al:リンカー比、x2、=0.66)を、ガラスフラスコ中でDMF 300ml中に懸濁させ(反応混合物の全質量に対する出発物質割合の総和[単位:質量%]、x1、3.9)、還流(130℃)下に17h撹拌する。生じた固体をろ別し、DMF 3×50ml及びメタノール4×50mlで洗浄する。引き続き、この物質を真空乾燥器中で110℃で20時間乾燥させる。白色中間体6.89gが得られる。N2表面積は269m2/g(ラングミュア)と測定される。
【0113】
中間体1.71gを、抽出装置中で4日間、沸騰メタノールを用いて抽出する。引き続き、生成物(1.09g)を150℃で16h真空乾燥器中で乾燥させる。この生成物はラングミュアによる1988m2/gの比表面積を有する。XRDは図1に示されている。この場合に、前記回折図並びに他の回折図中で、Iは強度(Lin(カウント))及び2Θは2シータスケールを説明する。
【0114】
構造提案は、図6(平面a、c)もしくは7(平面a、b)に示されている。これは斜方晶構造である。オープニング角αは、この構造の場合に、82.5°である(MIL−69の約35°と比較して)。
【0115】
技術水準において知られた構造に基づいて、Al−NDCセルのbベクトルの走査は0.5Å段階で14から18Åまで実施される。全ての他のセルパラメーター(a、b、c)及び分子構造は、C2c空間群内部の各b値に関して最適化され、その際にCeriusプログラムシーケンスにおいて実施されたような、"OFFフォースフィールド"が変換される。再最適化された走査点の各点でのXRDパターンは、ソフトウェアパッケージMaterials Studio V2.1の"反射粉末回折(Reflex powder diffraction)"モジュール(Acceloys Inc.、San Diego、US)を用いて生成される。
【0116】
こうして得られたXRDパターンは、実験的に得られたXRD構造との重なり合いにより比較され、かつx軸の適した範囲が選択される。y軸はついで、最も強い反射の強度が一致するように再スケーリングされる。
【0117】
これに基づいて、最初に、"b"=18Åを有する構造が実験データと最も良く相関することが視覚的に見出された。それにも関わらず、18〜16.5Åの範囲内の値を有する全ての構造は、相対的に幅広い反射に基づいて、実験値と良く一致する。
【0118】
このことは、適したb長さの選択のための特定のあそびを可能にする。反射及び強度の双方の位置が顧慮される場合に、16.5Å長さのbベクトルを有する構造が実験的なXRDと最も良く一致することが分かる。bの16.5Åよりも小さい値を有する構造は、高すぎるΘ値へ方向がシフトし、その際に強度及び位置はもはや一致しない。これら全ての構造は、考えられる解として無視されることができる。
【0119】
"可能とされる"bの長さ範囲を有して得られる構造は、次の内部Al−Al−Al角度に相当する(MIL−69*の実験的な及びアルミニウムテレフタラートのht**−構造もしくはas***−構造と比較される):
【表1】

【0120】
この比較は、本発明による骨格材料のセル寸法並びに内部構造が、技術水準からのそれらとは相違することを示している。新規構造中で、技術水準と比較してよりオープンなチャネル構造が見出されることができる。
【0121】
実験的なXRDパターンとシミュレーションパターンとの間の反射及び強度の位置の一致に基づいて、極めて可能性のある構造として次の座標を有するものが提案される:
【表2】

【0122】
これは、理論的にシミュレートした構造であり、前記構造は、実験的に特定されたXRDパターンと最も良く一致し、かつ走査される潜在的なエネルギー表面での最小値も有する。しかしながら、最小値を有する別の構造も、この構造(b=18)近くで見出され、その際にそれらのパラメーターはより低い一致にも関わらず、以下に記載されている:
【表3】

【0123】
比較例1:Al−NDC−MOFs("MIL−69")の製造
Al(NO33・9H2O 15.31g及び2,6−ナフタレンジカルボン酸15.04g(x2=0.58)を、ガラスフラスコ中で、DMF 102g中に懸濁させ(x1=29)、Berghoffオートクレーブ("Teflon-Liner")中で170℃で24h保持する。生じた固体をろ別し、DMF 2×50ml及びメタノール3×100mlで洗浄する。引き続き、この物質を真空乾燥器中で200℃で5時間乾燥させる。その後、中間体を大過剰量のメタノール中で数時間、還流下に抽出し、ろ別し、何度もメタノールで後洗浄し、再び200℃で5h、真空乾燥器中で乾燥させる。わずかに238m2/gに過ぎないN2表面積(ラングミュア)を有する白色生成物が取得される。XRDは図2に示されている。反射の位置に基づいて、この生成物は、文献から公知の"MIL−69"相と同定されることができる。
【0124】
比較例2:本発明による骨格材料Al−NDC及び公知の骨格材料Al−NDCの混合物の本発明によらない製造
AlCl3・6H2O 59.2g及び2,6−ナフタレンジカルボン酸90.3g(x2=0.59)を、ガラスフラスコ中で、DMF 645ml中に懸濁させ(x1=23)、還流(130℃)下に17h撹拌する。生じた固体をろ別し、DMF 2×150ml及びメタノール4×150mlで洗浄する。引き続き、この物質を真空乾燥器中で110℃で16時間乾燥させる。その後、中間体を大過剰量のメタノール中で数時間、還流下に抽出し、ろ別し、何度もメタノールで後洗浄し、再び110℃で16h、真空乾燥器中で乾燥させる。わずかに510m2/gに過ぎないN2表面積(ラングミュア)を有する白色生成物が取得される。XRDは図3に示されている。これはおそらく、本発明による構造及びMIL−69の混合物である。
【0125】
例2:77Kでの水素等温線(水素の貯蔵)
図4には、H2吸収A(ml/g)の比較が相対圧p/p0の相関関係として示されている。名称Autosorb-1を有するQuantachrome社の商業的に入手可能な装置で測定する。測定温度は77.4Kである。試料を、測定前に、その都度室温で4h及び引き続きさらに200℃で4h、真空中で前処理する。
【0126】
図4中の上方の曲線は、例1からの骨格材料のH2吸収を示す。下方の曲線は、独国特許出願公開(DE-A)第10 2005 039 623号明細書の例1により製造され、かつ沈殿後に、か焼される代わりに前記の例1に類似してメタノールで抽出されるAl−テレフタラートを指す。
【0127】
例3:本発明による骨格材料の製造
AlCl3・6H2O 10g及び2,6−ナフタレンジカルボン酸13.44g(x2=0.66)を、ガラスフラスコ中で、DMF 600ml中に懸濁させ(x1=3.9)、還流(130℃)下に17h撹拌する。生じた固体をろ別し、何度もアセトンで洗浄する。その後、中間体を大過剰量のメタノール中で数時間、還流下に抽出し、ろ別し、何度もメタノールで後洗浄する。引き続き、この物質を真空乾燥器中で110℃で16時間乾燥させる。白色中間体11.5gが得られる。この生成物は2085m2/gのN2表面積(ラングミュア)を有する。XRDは、例1からのXRDに類似している。
【0128】
例4:CO2分離の適性
42℃で、例3からの材料のCO2及びCOの純物質等温線がプロットされる(図5)。
【0129】
図5において、上方の曲線は、42℃での二酸化炭素の吸着された量A(mg/g)及び下方の曲線は、一酸化炭素の吸着された量を、それぞれ絶対圧(mbar)の相関関係として示す。明らかに異なる曲線位置に基づいて、本発明による骨格材料は原則的に、一酸化炭素をさらに含有する気体混合物からのCO2の分離に適している。
【0130】
例5:本発明による骨格材料の製造
AlCl3・6H2O 7.5g及び2,6−ナフタレンジカルボン酸10g(x2=0.66)を、ガラスフラスコ中で、DMF 300ml中に懸濁させ(x1=5.8)、還流(130℃)下に17h撹拌する。生じた固体をろ別し、DMF 2×50ml及びメタノール4×50mlで洗浄する。引き続き、この物質を真空乾燥器中で110℃で16時間乾燥させる。その後、中間体を大過剰量のメタノール中で数時間、還流下に抽出し、ろ別し、何度もメタノールで後洗浄し、再び110℃で16h、真空乾燥器中で乾燥させる。1866m2/gのN2表面積(ラングミュア)を有する白色生成物が得られる。XRDは、例1からのXRDに類似している。
【0131】
例6:本発明による骨格材料の製造
AlCl3・6H2O 15g及び2,6−ナフタレンジカルボン酸5g(x2=2.66)を、ガラスフラスコ中で、DMF 300ml中に懸濁させ(x1=6.6)、還流(130℃)下に17h撹拌する。生じた固体をろ別し、DMF 2×50ml及びメタノール4×50mlで洗浄する。引き続き、この物質を真空乾燥器中で110℃で16時間乾燥させる。その後、中間体を大過剰量のメタノール中で数時間、還流下に抽出し、ろ別し、何度もメタノールで後洗浄し、再び110℃で16h、真空乾燥器中で乾燥させる。1517m2/gのN2表面積(ラングミュア)を有する白色生成物が得られる。XRDは、例1からのXRDに類似している。
【0132】
例7:本発明による骨格材料の製造
AlCl3・6H2O 1.25g及び2,6−ナフタレンジカルボン酸1.64g(x2=0.66)を、ガラスフラスコ中で、DMF 142g中に懸濁させ(x1=2)、Berghoffオートクレーブ("Teflon-Liner")中で170℃で24h保持する。生じた固体をろ別し、DMF 2×50ml及びメタノール4×50mlで洗浄する。引き続き、この物質を真空乾燥器中で110℃で16時間乾燥させる。その後、中間体を大過剰量のメタノール中で数時間、還流下に抽出し、ろ別し、何度もメタノールで後洗浄し、再び110℃で16h、真空乾燥器中で乾燥させる。わずかに1005m2/gに過ぎないN2表面積(ラングミュア)を有する白色生成物が取得される。XRDは、図1に類似しているが、しかしながら結晶性が極めて乏しい。
【0133】
例8:本発明による骨格材料の製造
AlCl3・6H2O 120.72g及び2,6−ナフタレンジカルボン酸183.76g(x2=0.59)を、ガラスフラスコ中で、DMF 2400ml中に懸濁させ(x1=12.7)、還流下に130℃で17h撹拌する。生じた固体をろ別し、DMF 3×400ml及びメタノール3×400mlで洗浄する。その後、中間体をメタノール2.5l中で24時間、還流下に抽出し、ろ別し、何度もメタノールで後洗浄する。引き続き、この物質を真空乾燥器中で100℃で24時間乾燥させる。1465m2/gのN2表面積(ラングミュア)を有する白色生成物が取得される。
【0134】
例9:本発明による骨格材料の製造
AlCl3・6H2O 181.07g及び2,6−ナフタレンジカルボン酸275.64g(x2=0.59)を、ガラスフラスコ中で、DMF 5000ml中に懸濁させ(x1=9.1)、還流下に130℃で17h撹拌する。生じた固体をろ別し、DMF 3×400ml及びメタノール3×400mlで洗浄する。その後、中間体をメタノール2.5l中で24時間、還流下に抽出し、ろ別し、何度もメタノールで後洗浄する。引き続き、この物質を真空乾燥器中で100℃で24時間乾燥させる。2019m2/gのN2表面積(ラングミュア)を有する白色生成物198gが取得される。
【符号の説明】
【0135】
I 強度(Lin(カウント))、 2θ 2シータスケール、 A H2吸収、p/p0 相対圧、 p 絶対圧、 α オープニング角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンに配位結合された二座の有機化合物を有し、ここで金属イオンがAlIIIであり、かつ二座の有機化合物が2,6−ナフタレンジカルボキシラートである、多孔質の金属有機骨格材料において、
前記骨格材料のX線回折図(XRD)が、6.5°<2Θ<7.5°の範囲内で第一の反射を、及び13.8°<2Θ<15.0°の範囲内で第二の反射を、有し、その際に2°<2Θ<70°の範囲内の全ての反射の面積を基準として、第一の反射の面積が一番大きく、かつ第二の反射の面積が二番目に大きく、かつ2°<2Θ<70°の範囲内の全ての反射の全面積を基準として第一及び第二の反射の面積の総和が少なくとも50%になる
ことを特徴とする、多孔質の金属有機骨格材料。
【請求項2】
第一の反射が6.7°<2θ<7.3°の範囲内であり、かつ第二の反射が13.9°<2θ<14.8°の範囲内である、請求項1記載の骨格材料。
【請求項3】
前記骨格材料が粉末として、77KでのN2吸着によりラングミュアに従い測定される、少なくとも1000m2/gの比表面積を有する、請求項1又は2記載の多孔質の金属有機骨格材料。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の多孔質の金属有機骨格材料を有する、成形体。
【請求項5】
成形体が、77KでのN2吸着によりラングミュアに従い測定される、少なくとも500m2/gの比表面積を有する、請求項4記載の成形体。
【請求項6】
多孔質の金属有機骨格材料の製造方法において、
・アルミニウム化合物、2,6−ナフタレンジカルボン酸又はその塩及び有機溶剤を含有する反応混合物を、100℃〜200℃の範囲内の温度で撹拌しながら反応させる
工程を含み、その際に、アルミニウム化合物及び2,6−ナフタレンジカルボン酸又はその塩の割合の総和が、反応混合物の全質量を基準として20質量%未満である
ことを特徴とする、多孔質の金属有機骨格材料の製造方法。
【請求項7】
2,6−ナフタレンジカルボン酸又はその塩に対するアルミニウム化合物のモル比が0.3〜1.5の範囲内である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの物質を、その貯蔵、分離、制御された放出又は化学反応のために吸収するための又は担体としての、請求項1から3までのいずれか1項記載の有機金属骨格材料又は請求項4又は5記載の成形体の使用。
【請求項9】
少なくとも1つの物質が二酸化炭素であり、これを二酸化炭素含有気体混合物から分離するための、請求項8記載の使用。
【請求項10】
少なくとも1つの物質が気体であり、これを100bar(絶対)の最小圧で貯蔵するための、請求項8記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−508321(P2010−508321A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535055(P2009−535055)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061386
【国際公開番号】WO2008/052916
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】