説明

多孔質シリコン粒子及びその製造方法、並びにリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池

【課題】高容量と良好なサイクル特性を実現するリチウムイオン二次電池用の負極材料を得る。
【解決手段】連続する空孔を有し、三次元網目構造を有する多孔質シリコン粒子であって、前記空孔が、前記多孔質シリコン粒子を貫通し、前記空孔内に、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cのいずれか1つ以上の導電性元素の単体又は合金を有することを特徴とする多孔質シリコン粒子である。前記導電性元素の単体又は合金が、前記空孔内の表面の少なくとも一部を被覆するか、前記空孔内の少なくとも一部に充填されていることが好ましい。また、このような多孔質シリコン粒子は、多孔質シリコン粒子への無電解メッキ、置換メッキ、炭素コーティングにより作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の負極用材料として有用な多孔質シリコン粒子などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負極活物質としてグラファイトを用いるリチウムイオン二次電池が実用化されている。このリチウムイオン二次電池の負極は、一般に、負極活物質と、カーボンブラック等の導電助剤と、樹脂の結着剤とを混練してスラリーを調製し、銅箔等の集電体上に塗布・乾燥して形成されている。
【0003】
一方で、高容量化を目指し、負極活物質としての理論容量の大きな金属や合金、特にシリコンおよびその合金を用いるリチウムイオン二次電池用の負極の開発が進められている。
【0004】
このシリコンを使用したリチウムイオン二次電池用の負極の製造方法としては、活物質である金属シリコンを機械的にナノメートルサイズにまで粉砕し、造粒して、カーボンブラック等の導電助剤と樹脂の結着剤と共に混練してスラリーを調製し、銅箔上に塗布する方法が挙げられる。また、プラズマ法による直接ナノサイズの粒子を製造する方法もある。このナノメートルサイズのシリコン粒子は、粒子表面に粘結剤をコーティングし、銅箔へ均一に塗布することを目的に造粒される。しかし、シリコン粒子がたいへん小さいことから、造粒体中におけるシリコンの体積比率は50%を下回ることが頻繁に発生する。その為に、電池容量が大きくならないという欠点が生じている。
【0005】
また、リチウム電池で充放電を繰返すことで、例えばシリコンは約4倍もの体積膨張収縮を繰返す。シリコン粒子間の結合力は小さく、その体積変化を防止することができないことからシリコン粒子の微粉化が進み、サイクル特性が急激に劣化する。
これらの理由から、ナノメートルサイズのシリコンを造粒せずに多孔質体を直接製造する製法が提案されている。具体的には、(1)シリコン基板に陽極酸化を施しスリットなどの溝を形成する方法や、(2)リボン状のバルク金属中に微細なシリコンを晶出させる方法(例えば、特許文献1を参照)などが知られている。また、同様に急冷凝固技術を応用した技術(例えば、特許文献2を参照)や、シリコン粒子をフッ酸処理して多孔質シリコンを得る方法(例えば、特許文献3、4を参照)が知られている。
【0006】
これらの多孔質体でも、(1)充放電に伴う微粉化、(2)導電性の劣化、が課題として存在する。これらの課題をクリアーする為に、特許文献5〜10に示すようなシリコン表面をスズや銅などで被覆する複合材が提案されている。
これらの先行技術では、シリコン塊から微細なシリコン粒子を作製し、その粒子径は10nm〜60μmが提案されている。具体的には、平均粒径0.1〜5μmのシリコン粒子の積層物の表面をメッキする方法(特許文献5)、平均粒径0.5〜60μmのシリコンと電子伝導補助材を混合する方法(特許文献6)、平均粒子径0.1〜50μmのシリコンと炭素を混合する方法(特許文献7)、粒径0.01〜0.5μmのシリコンを炭素と共にメカニカルアロイングで作製する方法(特許文献8)、平均粒子径0.1〜5μmのシリコンに炭素を化学蒸着処理する方法(特許文献9)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−135364号公報
【特許文献2】特許第3827642号公報
【特許文献3】米国出願公開第2006/0251561号明細書
【特許文献4】米国出願公開第2009/0186267号明細書
【特許文献5】特開2009−164014号公報
【特許文献6】特開平11−242954号公報
【特許文献7】特開2000−215887号公報
【特許文献8】特開2002−216751号公報
【特許文献9】特開2004−349056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、負極活物質と導電助剤と結着剤とのスラリーを塗布・乾燥して形成される従来の負極は、負極活物質と集電体とを導電性の低い樹脂の結着剤で結着するため、内部抵抗が大きくならないように樹脂の使用量を最小限に抑える必要があり、負極活物質と集電体の結合力は強いものではなかった。そのため、充放電時の負極の体積膨張を抑制できないと、負極活物質の微粉化や剥離、負極の亀裂の発生、負極活物質間の導電性の低下等が発生して容量が低下してしまう。また、この負極活物質同士もしくは集電体との結着を強固にする為に、樹脂を増加させると、樹脂の体積比率が増加し電池の容量が低下する、導電性低下により応答性が低下するなどの問題が発生する。
【0009】
これらのことから、この微粉化を防止するために、負極活物質のナノ化が挙げられている。しかし、そのナノ粒子そのものを使用してスラリーにした場合に、スラリー内に均一分散しないなどの問題点があった。その為に、このナノ粒子を用いて造粒する手法が広く用いられている。しかし、この造粒物の中での活物質同士の接合力は極めて小さい為に、造粒物は充放電時の活物質の体積膨張に伴い崩壊する。また、連結する空隙を有するポーラス体もあるが、スラリー製造時にポーラス体の空隙に導電助剤が入り込まないことから充放電効率が低下するという問題があった。
それゆえ、従来のシリコンを用いた負極には、サイクル特性が悪く、二次電池の寿命が短いという問題点があった。特に、負極用材料としての実用化が期待されているシリコンは、リチウムイオン吸蔵時の体積変化が約4倍と大きいため、負極活物質に割れや剥離が発生しやすく、また充放電サイクル特性が悪いという問題点があり、従来のグラファイト負極と比較して極めて寿命が短いという欠点があった。
【0010】
また、特許文献2の技術は、非晶質リボンや微粉末などを製造する際に適応するものであり、冷却速度は専ら10K/秒以上で凝固させるものである。
一般的な合金の凝固に於いては、一次デンドライトが成長しながら2次デンドライトが成長する樹枝状結晶をとる。
特殊な合金系(Cu−Mg系、Ni−Ti系など)では、10K/秒以上で非晶質金属を形成させることができるが、その他の系(例えばSi−Ni系)では冷却速度は専ら10K/秒以上で凝固させても非晶質金属を得ることができず、結晶相が形成される。
この結晶相が形成される場合の結晶のサイズは、冷却速度(R:K/秒)とデンドライト・アーム・スペーシング(DAS:μm)の関係に順ずる。
DAS=A×R (一般に、A:40〜100、B:−0.3〜−0.4)
そのために、結晶相を有する場合、例えばA:60、B:−0.35の場合に、R:10K/秒でDASは1μmとなる。結晶相もこのサイズに準ずるもので、10nmなどの微細な結晶相を得ることはできない。これらの理由から、Si−Ni系などの材料では、この急冷凝固技術単独で微細な結晶相からなる多孔質を得ることができない。
【0011】
また、メッキしたシリコン粒子の微粉化を回避する為に、シリコン粒子を小さくすると相対的に被覆材の比率が大きくなりリチウム電池容量が小さくなるというトレード・オフが生じている。また、シリコンと導電材(炭素等)でメカニカルアロイングする方法で体積変化を緩和する方法(例えば、特許文献8)もあるが、空隙率が小さく電池内の電解液の浸入が困難となるというトレード・オフも生じており、実用化には至っていない。
【0012】
また、シリコンの微粉化を回避する上で、連結したナノサイズの空隙を有するポーラス体も提案されている(例えば、特許文献3、4)。しかし、このポーラス状のシリコンを用いてスラリーを作製しても、ナノサイズの空隙に導電助剤が入り込まないことから充放電効率が低下するという課題があり、実用化に至っていない。
【0013】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、高容量と良好なサイクル特性を実現するリチウムイオン二次電池の負極用材料に好適な多孔質シリコン粒子を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、連続した空隙を有する三次元的網目構造の多孔質シリコン粒子の空孔内に導電性物質を析出させることで、これらの導電性物質が導電パスとなり、導電性を改善でき、さらに微粉化を防止できることを見出した。本発明は、この知見に基づきなされたものである。
【0015】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)連続する空孔を有し、三次元網目構造を有する多孔質シリコン粒子であって、前記空孔が、前記多孔質シリコン粒子を貫通し、前記空孔内に、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cのいずれか1つ以上の導電性元素の単体又は合金を有することを特徴とする多孔質シリコン粒子。
(2)前記導電性元素の単体又は合金が、前記空孔内の表面の少なくとも一部を被覆することを特徴とする(1)に記載の多孔質シリコン粒子。
(3)前記導電性元素の単体又は合金が、前記空孔内の少なくとも一部に充填されていることを特徴とする(1)に記載の多孔質シリコン粒子。
(4)前記多孔質シリコン粒子内に、As、Ba、C、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Er、Fe、Gd、Hf、Lu、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、P、Pd、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素とのシリサイドを有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔質シリコン粒子。
(5)前記多孔質シリコン粒子の平均粒径が、0.1μm〜1000μmであり、前記多孔質シリコン粒子の平均空隙率が、15〜93%であり、前記多孔質シリコン粒子の平均空孔径が、5nm〜2μmであり、前記多孔質シリコン粒子の平均粒径と平均空孔径の比が、5以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の多孔質シリコン粒子。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の多孔質シリコン粒子が負極活物質として用いられることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
(7)リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、(6)に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、前記正極と前記負極との間に配置されるセパレータとを有し、リチウムイオン伝導性を有する電解質中に、前記正極、前記負極および前記セパレータとが配設されることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
(8)連続する空孔を有し、三次元網目構造を有する多孔質シリコン粒子の前記空孔内部に、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cのいずれか1つ以上の導電性元素の単体又は合金を析出させることを特徴とする多孔質シリコン粒子の製造方法。
(9)前記多孔質シリコン粒子の空孔内の少なくとも一部に、Cu、Ni、Sn、Zn、Agのいずれか1つ以上の導電性元素で無電解メッキを行い、前記導電性元素を析出させることを特徴とする(8)に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
(10)前記多孔質シリコン粒子が、Cu、Ni、Sn、Zn、Agのいずれか1つ以上の導電性元素よりも析出電位が卑な元素を1原子%以上含み、前記卑な元素を、前記導電性元素で置換する置換メッキを行い、前記多孔質シリコン粒子の空孔内の少なくとも一部に、前記導電性元素を析出させることを特徴とする(8)に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
(11)前記多孔質シリコン粒子を、フィルター上に置き、前記無電解メッキまたは前記置換メッキを、平均流速0.1cm/秒以上の流れ場で行うことを特徴とする(9)または(10)に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
(12)前記多孔質シリコン粒子を、10体積%以上の炭化水素系ガスを含有する雰囲気中で、100K/分以上の昇温速度で600℃以上に加熱し、前記空孔内で、前記炭化水素系ガスを熱分解させることで、前記多孔質シリコン粒子の前記空孔内の少なくとも一部に、炭素を析出させることを特徴とする(8)に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高容量と良好なサイクル特性を実現するリチウムイオン二次電池の負極用材料に好適な多孔質シリコン粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る多孔質シリコン粒子1の概略断面図。
【図2】(a)、(b)本発明に係る多孔質シリコン粒子1a、1bの概略断面図。
【図3】(a)〜(d)本発明に係る無電解メッキ工程を説明する図。
【図4】(a)〜(c)本発明に係る炭素コーティング工程を説明する図。
【図5】(a)〜(d)本発明に係る置換メッキ工程を説明する図。
【図6】本発明に係るリチウムイオン二次電池の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(多孔質シリコン粒子)
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る多孔質シリコン粒子1の一例を示す図である。多孔質シリコン粒子1は、連続する空孔3を有し、三次元網目構造を有し、空孔3が、多孔質シリコン粒子1を貫通し、空孔3内に、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cのいずれか1つ以上の導電性元素の単体又は合金7を有することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る多孔質シリコン粒子1での三次元網目構造は、空孔が互いに連接している構造を意味する。図1では、多数のシリコン微粒子5が接合し、シリコン微粒子5の間の空間が空孔3である多孔質シリコン粒子1を図示しているが、他に、多孔質シリコン粒子の空孔が互いに連接している構造で、その空孔が多孔質シリコン粒子を貫通していれば、そのような多孔質シリコン粒子も用いることができる。例えば、チューブ状の空孔が形成されているシリコン粒子を用いることもできる。なお、図1などでは、シリコン微粒子5が互いに接触していないが、これは、多孔質シリコン粒子1を模式的に描いたためであり、実際は、隣接するシリコン微粒子5と接合したり、奥または手前の別のシリコン微粒子5と接合したりして、互いのシリコン微粒子5は接合し、一体化している。
【0020】
本発明に係る多孔質シリコン粒子1、後述する1a、1bは、前記導電性元素の単体又は合金を析出させる前は、平均粒径が0.1μm〜1000μmであり、平均空隙率が15〜93%であり、平均空孔が5nm〜2μmであり、平均粒径と平均空孔の比が5以上で、連続した空隙を有する三次元網目構造を有する多孔質シリコン粒子である。これら多孔質シリコン粒子の平均粒径または平均支柱径は、0.1μm〜1000μmであり、好ましくは1〜50μm、より好ましくは、5〜20μmである。また、平均空隙率が15〜93%であり、好ましくは30〜80%である。平均空孔が5nm〜2μmであり、好ましくは10〜500nm、より好ましくは、20〜200nmである。
【0021】
シリコン微粒子5は、平均粒径または平均支柱径が2nm〜2μmであり、好ましくは10〜500nm、より好ましくは、20〜300nmである。そして、一つ一つのシリコン微粒子5の結晶構造は、結晶性を有する単結晶であることが好ましい。また、シリコン微粒子5は、酸素を除く元素の比率でシリコンを80原子%以上含む中実な微粒子であることが好ましい。
【0022】
導電性元素の単体又は合金7は、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cのいずれか1つ以上の導電性元素の単体又は合金である。図1では、粒子状の導電性元素の単体又は合金7が、空孔3内に析出しているが、析出形態は特に限定されず、後述する第1の実施形態や第2の実施形態のように、空孔3の表面を被覆しても、空孔3内を充填してもよい。
【0023】
また、多孔質シリコン粒子1内に、As、Ba、C、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Er、Fe、Gd、Hf、Lu、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、P、Pd、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、シリコンとのシリサイドを有してもよい。これらの元素は、シリコンに比べてリチウムイオンを吸蔵しにくい元素であるため、リチウムイオンの吸蔵時にこのシリサイドは膨張し難く、多孔質シリコン粒子全体の膨張も抑制され、より長寿命の負極活物質を得ることができる。
【0024】
(本発明に係る多孔質シリコン粒子の効果)
本発明に係る多孔質シリコン粒子は、シリコンを使用しているため、リチウムイオン二次電池の負極に用いると、高容量の負極活物質となる。
【0025】
また、本発明に係る多孔質シリコン粒子は、導電性元素の単体又は合金を有するので、この導電性元素が、多孔質シリコン粒子の内部のシリコンへの導電パスとなる。さらに、本発明に係る多孔質シリコン粒子は、連続する空孔を有し、三次元網目構造を有するため、多孔質シリコン粒子内部のシリコンにまで電解液が接触することができる。そのため、多孔質シリコン粒子の内部のシリコンまでが、充放電反応に参加することができ、シリコンの利用効率が高く、本発明に係る多孔質シリコン粒子は、高容量の負極活物質となる。
【0026】
また、本発明に係る多孔質シリコン粒子は、連続する空孔を有し、三次元網目構造を有するため、多孔質シリコン粒子を構成するシリコンが、膨張または収縮しても、多孔質シリコン粒子の内部に係る応力が小さく分散され、多孔質シリコン粒子の微粉化を防止することができる。つまり、本発明に係る多孔質シリコン粒子を、リチウムイオン二次電池の負極に用いると、サイクル特性に優れる長寿命の負極活物質となる。
【0027】
また、本発明に係る多孔質シリコン粒子は、導電性元素の単体又は合金を有するので、この導電性元素が、多孔質シリコン粒子を構成するシリコンへの導電パスとなり、多孔質シリコン粒子の導電性が高くなる。さらには、高率での充放電特性に優れる。
【0028】
また、本発明に係る多孔質シリコン粒子は、導電性元素の単体又は合金を有するので、空孔3の内部の導電性元素の単体又は合金が、多孔質シリコン粒子の微粉化を抑えることができる。
【0029】
(本発明に係る多孔質シリコン粒子の第1の実施形態)
以下の実施形態で、同一の様態を果たす要素には同一の番号を付し、重複した説明は避ける。
図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る多孔質シリコン粒子1aの一例を示す図である。多孔質シリコン粒子1aは、多数のシリコン微粒子5が接合して形成され、シリコン微粒子5の間の空間が空孔3である。空孔3は連続し、多孔質シリコン粒子1aを貫通する。多孔質シリコン粒子1aは、三次元網目構造を有する。また、空孔3の表面、すなわち、シリコン微粒子5の表面の少なくとも一部は、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cのいずれか1つ以上の導電性元素の単体又は合金7aにより被覆される。
【0030】
被覆する導電性元素の単体又は合金7aの厚さは、0.005〜1.0μm程度である。
【0031】
本発明の第1の実施形態に係る多孔質シリコン粒子1aは、後述する、無電解メッキや炭素コーティングにより得られる。また、後述する置換メッキでも、卑な元素19を空孔3の表面に被覆させておけば、卑な元素19を導電性元素で置換させ、空孔3の表面を導電性元素の単体または合金7aで被覆することができる。
【0032】
第1の実施形態に係る多孔質シリコン粒子によれば、前述の本発明に係る多孔質シリコン粒子1の効果に加えて、導電性元素の単体又は合金7aが、空孔3の少なくとも一部を被覆しているので、多孔質シリコン粒子1aを構成するシリコンの微粉化を防ぐことができる。そのため、第1の実施形態に係る多孔質シリコン粒子は、長寿命の負極活物質となる。
【0033】
(本発明に係る多孔質シリコン粒子の第2の実施形態)
図2(b)は、本発明の第2の実施形態に係る多孔質シリコン粒子1bの一例を示す図である。多孔質シリコン粒子1bは、多数のシリコン微粒子5が接合して形成され、シリコン微粒子5の間の空間が空孔3である。空孔3は連続し、多孔質シリコン粒子1bを貫通する。多孔質シリコン粒子1bは、三次元網目構造を有する。また、少なくとも一部の空孔3の内部に、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cのいずれか1つ以上の導電性元素の単体又は合金7bが充填される
【0034】
本発明の第2の実施形態に係る多孔質シリコン粒子1bは、後述する、置換メッキにより得られる。また、後述する無電解メッキや炭素コーティングでも、条件により導電性元素が、多孔質シリコン粒子1b内で、部分的に析出することで、少なくとも一部の空孔3の内部を導電性元素で充填させることができる。
【0035】
第2の実施形態に係る多孔質シリコン粒子によれば、前述の本発明に係る多孔質シリコン粒子1の効果に加えて、導電性元素の単体又は合金7bが、空孔3の少なくとも一部に充填されているので、多孔質シリコン粒子1bを構成するシリコンの微粉化を防ぐことができる。そのため、第2の実施形態に係る多孔質シリコン粒子は、長寿命の負極活物質となる。
【0036】
(本発明に係る多孔質シリコン粒子の製造方法)
本発明に係る多孔質シリコン粒子の製造方法を説明する。多孔質シリコン粒子を貫通する、連続する空孔を有し、三次元網目構造を有する多孔質シリコン粒子の空孔内部に、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cのいずれか1つ以上の導電性元素の単体又は合金を析出させることができれば、どのような方法でも良いが、図3〜5に示す、無電解メッキ、置換メッキ、炭素コーディングなどの用法を行うことが好ましい。
【0037】
(無電解メッキによる製造方法)
図3(a)〜(d)は、本発明に係る無電解メッキ工程を示す図である。処理前の多孔質シリコン粒子8に、無電解メッキを行い、空孔3内に金属の導電性元素を析出させ、多孔質シリコン粒子1aを得る。
【0038】
まず、図3(a)に示すとおり、三次元網目構造を有する処理前の多孔質シリコン粒子8を用意する。
図3(a)では、多孔質シリコン粒子8は、多数のシリコン微粒子5が接合して形成されているが、このような形状に限定されない。他に、多孔質シリコン粒子の空孔が互いに連接している構造で、その空孔が多孔質シリコン粒子を貫通していれば、どのような多孔質シリコン粒子も用いることができる。
【0039】
多孔質シリコン粒子8としては、シリコン粉末をフッ酸などで処理して多孔質化した粒子を用いることができる。フッ酸処理すると、結晶の粒界がフッ酸でエッチングされ、結晶性の高いシリコン微粒子5が接合した構造となる。なお、フッ酸でエッチングする場合、表面には細孔構造が発達するが、粒子の内部に細孔構造が発達しにくいため、フッ酸でエッチングしただけでは、粒子全体が三次元網目構造とはなりにくい。そのため、エッチングした後、粒子を粉砕することにより、細孔構造が発達した、粉砕前の粒子の表面部分のみからなる粒子を得ることができ、三次元網目構造を有する多孔質シリコン粒子8を得ることができる。
また、超高温プラズマ法によって、微粒子の凝集・合体を促進して得られる粒子を、多孔質シリコン粒子8として用いることもできる。
【0040】
次に、図3(b)に示すとおり、メッキ液11にて、Cu、Ni、Sn、Zn、Agのどれか1つ以上を無電解メッキする。
多孔質シリコン粒子8の内部へ、確実に無電解メッキをするために、多孔質シリコン粒子8をフィルター9の上に堆積させ、メッキ液11を、0.1cm/秒以上、好ましくは1cm/秒以上の流速を持つ流れ場にして、無電解メッキを行う。
【0041】
図3(c)は、図3(b)でのA領域の拡大図である。処理前の多孔質シリコン粒子8の空孔3の内部を、メッキ液11が流れることが分かる。また、多孔質シリコン粒子8は、連続する空孔3があり、三次元網目構造を有しているため、メッキ液11は、空孔3を通過して、多孔質シリコン粒子8の内部を通過することができる。特に、多孔質シリコン粒子8をフィルター9上において、さらにメッキ液11を流れ場としているため、メッキ液11は、多孔質シリコン粒子8の空孔3の内部を所定の流速で流れることとなる。そのため、多孔質シリコン粒子8の空孔3の表面に、常に新しいメッキ液11が供給され、空孔3の表面に無電解メッキをすることができる。
【0042】
一方、多孔質シリコン粒子8を、フィルター上に固定せず、例えば攪拌されているメッキ液中に多孔質シリコン粒子8を入れると、多孔質シリコン粒子8は、空孔3中のメッキ液ごと移動するため、実際の空孔3中ではメッキ液がほとんど流れず、空孔3の内部には新しいメッキ液が供給されない。そのため、空孔3の表面よりも多孔質シリコン粒子8の外表面に、より多くメッキされ、空孔3の表面は被覆されにくい。
【0043】
無電解メッキのメッキ液11は、特に限定されず、Cu、Ni、Sn、Zn、Agのどれか1つ以上を無電解メッキする際に通常に用いられるメッキ液を使用することができる。
【0044】
図3(d)に示すとおり、処理前の多孔質シリコン粒子8に無電解メッキを施すことで、シリコン微粒子5の周囲を導電性元素(金属)の単体または合金7aが被覆する多孔質シリコン粒子1aが得られる。被覆する導電性元素の単体又は合金7aの厚さは、0.005〜1.0μm程度である。
【0045】
(炭素コーティングによる製造方法)
図4(a)〜(c)は、本発明に係る炭素コーティング工程を示す図である。処理前の多孔質シリコン粒子8に、炭素コーティングを行い、空孔3に炭素を析出させ、多孔質シリコン粒子1aを得る。
【0046】
まず、図4(a)に示すとおり、三次元網目構造を有する処理前の多孔質シリコン粒子8を用意する。
【0047】
図4(b)に示すとおり、多孔質シリコン粒子8を炉13内に置き、炉13に炭化水素系ガス17を供給し、炭化水素系ガス17を10体積%以上の含有する雰囲気中で、ヒーター15にて、100K/分以上の昇温速度で600℃以上に加熱して、炭化水素系ガス17を空孔3内で熱分解させることで、多孔質シリコン粒子8の表面及び空孔3の内部の少なくとも一部に、厚さ0.005〜0.5μmの炭素のコーティングを施す。炭化水素系ガス濃度は、好ましくは20〜90体積%で、より好ましくは30〜50体積%である。また、昇温速度は、100K/分以上で、好ましくは200〜1000K/分である。1000K/分の昇温速度を付与すると、多孔質シリコン粒子内で大きな温度分布が生じ、多孔質シリコン粒子が崩壊することから望ましくない。
【0048】
図4(c)に示すとおり、多孔質シリコン粒子8に炭素のコーティングを施すことで、シリコン微粒子5の周囲を導電性元素(炭素)の単体7cが被覆する多孔質シリコン粒子1aが得られる。
【0049】
(置換メッキによる製造方法)
図5(a)〜(d)は、本発明に係る置換メッキ工程を示す図である。卑な元素を含む多孔質シリコン粒子18に、置換メッキを行い、空孔3に導電性元素を析出させ、多孔質シリコン粒子1bを得る。
【0050】
まず、図5(a)に示すとおり、卑な元素を含む多孔質シリコン粒子18を用意する。多孔質シリコン粒子18は、少なくとも一部の空孔3が、卑な元素19で充填されている。また、卑な元素19の含有量は、多孔質シリコン粒子18の1原子%以上であり、10原子%以上が好ましく、30原子%以上がより好ましい。なお、卑な元素の含有量の上限は事実上40原子%である。
【0051】
多孔質シリコン粒子18は、シリコンと卑な元素の合金の粉末を、フッ酸等で多孔質化したものを用いることができる。
【0052】
また、多孔質シリコン粒子18としては、卑な元素19のマトリクス中に、互いに接合する多数のシリコン微粒子5が存在する材料から、卑な元素19を一部除去した材料を用いることもできる。
【0053】
析出電位が卑な元素19とは、置換メッキにより析出する、Cu、Ni、Sn、Zn、Agのどれか1つ以上の導電性元素よりも、析出電位が卑な元素である。
例えば置換メッキが硫酸浴、硝酸浴で行われる場合の各元素の析出電位(左側:卑<貴:右側)は以下のような順番になり、
Be<Al<Zn<Ga<Cd<In<Tl<Ni<Sn<Pb<Bi<Sb<Cu<Ag<Au
例えば、Agを析出させる場合、卑な元素19には、Cuより左側の元素を使用できる。
また、置換メッキがシアン浴で行われる場合は、以下のようになる。
Zn<Cd<Cu<Ag<Au
【0054】
次に、図5(b)に示すように、多孔質シリコン粒子18をフィルター9の上に堆積させたところに、メッキ液20にて、Cu、Ni、Sn、Zn、Agのどれか1つ以上を置換メッキにより析出させる。
多孔質シリコン粒子18の内部へ置換メッキをするために、メッキ液20が0.1cm/秒以上、好ましくは1cm/秒以上の流速を持つ流れ場で置換メッキを行う。
【0055】
メッキ液20としては、Cu、Ni、Sn、Zn、Agのどれか1つ以上を置換メッキする際に通常用いられるメッキ液を用いることができ、通常は、これらの元素の硝酸塩、硫酸塩、シアン化合物の溶液を用いることができる。
【0056】
図5(c)は、図5(b)でのB領域の拡大図である。多孔質シリコン粒子18の空孔3の内部を、メッキ液20が流れることが分かる。また、多孔質シリコン粒子18は、連続する空孔3があり、三次元網目構造を有しているため、メッキ液20は、空孔3を通過して、多孔質シリコン粒子18の内部を通過することができる。
【0057】
その結果、図5(d)に示すように、卑な元素19は、導電性元素(金属)の単体または合金7bにより置換され、空孔3の少なくとも一部が導電性元素(金属)の単体または合金7bにより充填された多孔質シリコン粒子1bが得られる。導電性元素の単体又は合金7bの厚さは、0.005〜0.5μm程度である。
【0058】
置換メッキにより、例えば卑な元素19としてBiが残存している多孔質シリコン粒子18に対して、Agを置換メッキすることで充放電時のシリコンの微粉化を回避でき、更に多孔質体内部に導電パスを付与することができる。また、諸特性がPbに類似しており、今後RoHS規制等の対象になる可能性があるBiを安価に精錬・除去することができる。
【0059】
なお、Cu、Ni、Sn、Zn、Agの導電性元素は、シリコンとシリサイドを形成しやすいため、導電性元素を含む多孔質シリコン粒子を作製すると、導電性元素はシリサイドを形成し、導電パスとはなりにくくなる。一方で、卑な元素は、シリサイドを形成しにくい元素であるため、卑な元素を含む多孔質シリコン粒子を作製しても、卑な元素はシリコンと化合物を形成せずに、金属状態で残存する。そのため、多孔質シリコン粒子を形成する際には卑な元素を加え、その後、卑な元素を導電性元素で置換することで、金属状態での導電性元素を多孔質シリコン粒子の内部に導入することができる。
【0060】
(造粒)
なお、上記の多孔質シリコン粒子の粒径がスラリー作製時に大き過ぎる場合には、ボールミルなどで所望の粒径に粉砕した後に、造粒することで、簡便に粒度調整を行うことができる。
また、造粒する工程で、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cのうちから選ばれる少なくとも1種からなる導電助剤を含めてもよい。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのフッ素樹脂やゴム系材料などが用いられる。造粒する工程は、乾式と湿式の一般的な造粒方法を用いることができるが、例えば、乾式では圧縮とせん断力をかけるメカニカルアロイング法や、気流中で粉体同士を高速で衝突させるハイブリダイゼーション法がある。さらに、湿式ではスプレードライヤー法を用いることができる。例えば、多孔質シリコン粒子または多孔質シリコン複合体粒子を、PVdF等の結着剤を含むノルマルメチルピロリドン(NMP)等の溶媒に分散させて、サスペンションとして所定のサイズとなるようにスプレードライ法により造粒する方法がある。
【0061】
(リチウムイオン二次電池)
本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、本発明に係る多孔質シリコン粒子が負極活物質として用いられているリチウムイオン二次電池用負極と、前記正極と前記負極との間に配置されるセパレータとを有し、リチウムイオン伝導性を有する電解質中に、前記正極、前記負極および前記セパレータとが配設されていることを特徴としている。以下に、その構成について、製造方法も併せて詳しく説明する。
【0062】
(リチウムイオン二次電池用負極)
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、本発明に係る多孔質シリコン粒子が負極活物質として用いられていることを特徴としている。負極活物質である多孔質シリコン粒子が、導電助剤、結着剤、増粘剤等と混合された状態で集電体の表面に配設され、リチウムイオン二次電池用負極が構成される。
【0063】
このようなリチウムイオン二次電池用負極は、例えば、多孔質シリコン粒子、導電助剤、結着剤、増粘剤、溶媒等のスラリー原料をミキサーに投入し、混練してスラリーを形成し、これを集電体に塗布することで製造することができる。
【0064】
スラリー中の固形分配合は、多孔質シリコン粒子25〜90質量%、導電助剤0〜70質量%、結着剤1〜30質量%、増粘剤0〜25質量%を目安に適宜調整することができる。
【0065】
ミキサーは、スラリーの調製に用いられる一般的な混練機を用いることができ、ニーダー、撹拌機、分散機、混合機などと呼ばれるスラリーを調製可能な装置を用いてもよい。また、水系スラリーを調整するときは、結着剤としてスチレン・ブタジエン・ラバー(SBR)等のラテックス(微粒子のゴム分散体)を使用することができ、増粘剤としてはカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることが適している。また、有機系スラリーを調製するときは、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用することができ、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いることができる。
【0066】
導電助剤は、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性物質からなる粉末である。Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cの単体の粉末でもよいし、それぞれの合金の粉末でもよい。例えば、ファーネスブラックやアセチレンブラックなどの一般的なカーボンブラックを使用することができる。特に、多孔質シリコン粒子の表面でシリコンが露出している場合は導電性が低くなるため、カーボンナノホーンを導電助剤として加えることが好ましい。ここで、カーボンナノホーン(CNH)とは、グラフェンシートを円錐形に丸めた構造をしており、実際の形態は多数のCNHが頂点を外側に向けて、放射状のウニの様な形態の集合体として存在する。CNHのウニ様集合体の外径は50nm〜250nm程度である。特に、平均粒径80nm程度のCNHを用いるのが好ましい。
【0067】
導電助剤の平均粒径も一次粒子の平均粒径を指す。アセチレンブラック(AB)のような高度にストラクチャー形状が発達している場合にも、ここでは一次粒径で平均粒径を定義し、SEM写真の画像解析で平均粒径を求めることができる。
【0068】
また、粒子状の導電助剤とワイヤー形状の導電助剤の両方を用いても良い。ワイヤー形状の導電助剤は導電性物質のワイヤーであり、粒子状の導電助剤に挙げられた導電性物質を用いることができる。ワイヤー形状の導電助剤は、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、銅ナノワイヤー、ニッケルナノワイヤーなどの外径が300nm以下の線状体を用いることができる。ワイヤー形状の導電助剤を用いることで、負極活物質や集電体などと電気的接続が保持しやすくなり集電性能が向上するとともに、ポーラス膜状の負極に繊維状物質が増え、負極にクラックが生じにくくなる。例えば粒子状の導電助剤としてABや銅粉末を用い、ワイヤー形状の導電助剤として気相成長炭素繊維(VGCF:Vapor Grown Carbon Fiber)を用いることが考えられる。なお、粒子状の導電助剤を加えずに、ワイヤー形状の導電助剤のみを用いても良い。
【0069】
ワイヤー形状の導電助剤の長さは、好ましくは0.1μm〜2mmである。導電助剤の外径は、好ましくは4nm〜1000nmであり、より好ましくは25nm〜200nmである。導電助剤の長さが0.1μm以上であれば、導電助剤の生産性を上げるのには十分な長さであり、長さが2mm以下であれば、スラリーの塗布が容易である。また、導電助剤の外径が4nmより太い場合、合成が容易であり、外径が1000nmより細い場合、スラリーの混練が容易である。導電物質の外径と長さの測定方法は、SEMによる画像解析により行うことができる。
【0070】
結着剤は、樹脂の結着剤であり、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのフッ素樹脂やゴム系、さらには、ポリイミド(PI)やアクリルなどの有機材料を用いることができる。
【0071】
集電体へのスラリーの塗布は、例えば、コーターを用いて、集電体の片面にスラリーを塗布することができる。コーターとしては、スラリーを集電体に塗布可能な一般的な塗工装置を用いることができ、例えばロールコーターやドクターブレードによるコーター、コンマコーター、ダイコーターなどである。
【0072】
集電体は、銅、ニッケル、ステンレスからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなる箔である。それぞれを単独で用いてもよいし、それぞれの合金であってもよい。厚さは4μm〜35μm程度が好ましく、さらに8μm〜18μm程度であることがより好ましい。
【0073】
調整したスラリーを集電体に均一に塗布し、その後、50〜150℃程度で乾燥し、厚みを調整するためロールプレスを通すなどして、リチウムイオン二次電池用負極を得ることができる。
【0074】
(リチウムイオン二次電池用正極)
リチウムイオン二次電池用正極としては、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な各種の正極を用いることができる。このリチウムイオン二次電池用正極は、正極活物質、導電助剤、結着剤および溶媒等を混合して正極活物質の組成物を準備し、これをアルミ箔などの金属集電体上に直接塗布・乾燥することで製造することができる。
【0075】
正極活物質としては、一般的に使われるものであればいずれも使用可能であり、例えばLiCoO、LiMn、LiMnO、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiFePOなどの化合物を使用することができる。
【0076】
導電助剤としては、例えばカーボンブラックを使用し、結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、水溶性アクリル系バインダーを使用することができ、溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、水などを使用することができる。このとき、正極活物質、導電助剤、結着剤および溶媒の配合は、リチウムイオン二次電池で通常的に採用される範囲で適宜調整することができる。
【0077】
(セパレータ)
セパレータとしては、正極と負極の電子伝導を絶縁する機能を有し、リチウムイオン二次電池で通常的に使われるものであればいずれも使用可能である。例えば、微多孔性のポリオレフィンフィルムを使用できる。
【0078】
(電解質)
電解質としては、リチウムイオン伝導性を有する各種の電解液および電解質を使用することができる。例えば、電解質リチウムイオン二次電池、Liポリマー電池などにおける電解液および電解質には、有機電解液(非水系電解液)、無機固体電解質、高分子固体電解質等が使用できる。
【0079】
有機電解液の溶媒の具体例として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ―ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒、あるいはこれらの溶媒のうちの2種以上を混合した混合溶媒が挙げられる。
【0080】
有機電解液の電解質には、LiPF、LiClO、LiBF、LiAlO、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCl、LiCFSO、LiCFCO、LiCSO、LiN(CFSO等のリチウム塩からなる電解質の1種または2種以上を混合させたものを用いることができる。
【0081】
有機電解液には、添加剤として、負極活物質の表面に有効な固体電解質界面被膜を形成できる化合物を添加することが望ましい。例えば、分子内に不飽和結合を有し、充電時に還元重合できる物質、例えばビニレンカーボネート(VC)などを添加する。
【0082】
また、上記の有機電解液に代えて固体状のリチウムイオン伝導体を用いることができる。たとえばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン等からなるポリマーに前記リチウム塩を混合した固体高分子電解質や、高分子材料に電解液を含浸させゲル状に加工した高分子ゲル電解質を用いることができる。
【0083】
さらに、リチウム窒化物、リチウムハロゲン化物、リチウム酸素酸塩、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiSiO、LiSiS、LiPO−LiS−SiS、硫化リン化合物などの無機材料を無機固体電解質として用いてもよい。
【0084】
(リチウムイオン二次電池の組立て)
本発明のリチウムイオン二次電池は、前述したような正極と本発明のリチウムイオン二次電池用負極との間にセパレータを配置して、電池素子を形成している。このような電池素子を巻回、または積層して円筒形や角形の電池ケースに入れた後、電解質を注入して、リチウムイオン電池とする。
【0085】
本発明のリチウムイオン二次電池の一例(断面図)を図6に示す。リチウムイオン二次電池21は、正極23、負極25を、セパレータ27を介して、セパレータ−負極−セパレータ−正極の順に積層配置し、正極23が内側になるように巻回して極板群を構成し、これを電池缶37内に挿入する。そして正極23は正極リード33を介して正極端子31に、負極25は負極リード35を介して電池缶37にそれぞれ接続し、リチウムイオン二次電池21内部で生じた化学エネルギーを電気エネルギーとして外部に取り出し得るようにする。次いで、電池缶37内に非水系電解質29を極板群を覆うように充填した後、電池缶37の上端(開口部)に、円形蓋板とその上部の正極端子31からなり、その内部に安全弁機構を内蔵した封口体39を、環状の絶縁ガスケットを介して取り付けて、本発明のリチウムイオン二次電池21を製造することができる。
【0086】
(リチウムイオン二次電池用負極の効果)
本発明によれば、負極活物質として本発明に係る多孔質シリコン粒子を用いているため、リチウムイオン吸蔵時の体積膨張が抑制され、負極活物質の微粉化や剥離、負極の亀裂の発生、負極活物質間の導電性の低下等の問題が解消された高容量で長寿命の負極が提供される。
【0087】
本発明によれば、負極活物質である多孔質シリコン粒子の空孔内にCu、Ni、Sn、Zn、AgまたはCの単体または合金が含まれているため、高い伝導性を備えており、導電助剤の量および結着剤の量を減らすことができるため、負極活物質と集電体の間の結合強度を高く、電極の内部抵抗を低くすることが可能となり、その結果、電極のサイクル特性を向上させることができる。
【0088】
(リチウムイオン二次電池の効果)
本発明によると、高容量で、サイクル特性が良好な長寿命のリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0090】
[サンプル1]
まず、表1のサンプル1として、シリコンとビスマスを溶解し、インゴットを鋳造した。このインゴットを機械的に粉砕してシリコン合金粉末を得た。このシリコン合金粉末を、20質量%のフッ化水素水と、25質量%の硝酸を混合した混酸を用いてエッチング処理を行い、ろ過した。さらに機械的に粉砕し、Biを含有し、連続した空隙を有する三次元網目構造を有する多孔質シリコン粒子(平均粒径:2.1μm、平均空隙率:49.7%、平均空孔径:0.061μm)を得た。この材料中のBi含有量は1.2原子%であった。
【0091】
表1の多孔質シリコン粒子の平均粒径は、SEMを用いて測定したところ、2.1μmであった。また、多孔質シリコン粒子の平均空隙率は、水銀圧入法(JIS R 1655)により15mLセルで測定したところ、約50%であった。
【0092】
この多孔質シリコン粒子の組成を、ICP発光分光分析計により調べたところ、Siが主であり、Biが1.2原子%、その他元素の元素は0.5原子%以下であった。
【0093】
[サンプル2〜7、A〜D]
含有元素の種類と割合とを変更し、さらにシリサイドを形成する元素の添加の有無を変更し、サンプル1と同様の方法でサンプル2〜7、A〜Dを作製した。
【0094】
[サンプル8〜10、E〜G]
サンプル8〜10、E〜Gは、市販のシリコン粉末に、サンプル1と同様のエッチング処理、粉砕処理を施し、連続した空隙を有する三次元網目構造を有する多孔質シリコン粒子を作製した。
各サンプルの特性を表1に示す。
【0095】
なお、サンプル5は、シリサイドとしてFeSiを含み、サンプル8と9は、NiSiを含み、サンプルD、Eは、FeSiを含む。
【0096】
【表1】

【0097】
[実施例1]
サンプル1の多孔質シリコン粒子を、メッシュ・サイズ1μmのフィルター上に2mm堆積させてpH=2の35℃の硝酸銀溶液を平均流速0.18cm/秒で10分間流し、置換メッキを施した。その結果、局部的にシリコンの空隙内部に厚さ5nmのAgメッキ層が形成された。
【0098】
この置換メッキ後のAgメッキ層は、局所的に観察された。このメッキ厚みは、FE−SEMやFE−TEMなどによって観察されたものを算術的に平均したものである。なお、観察されなかった部位は、無しとして平均値の算出には用いなかった。他の実施例・比較例のメッキ厚さ、炭素層厚さについても同様である。
【0099】
メッキ工程で、メッキ液を0.1cm/秒以上の平均流速で多孔質体内を通過させたが、このシリコン多孔質体は連続した空隙を有することからフィルターでの圧力は0.05MPaで十分であった。
【0100】
[実施例2〜7]
実施例1と同様に、サンプル2〜7について、メッキ元素、流速、メッキ時間を適宜変更し、置換メッキを施した。なお、各元素の置換メッキに用いる溶液は、硫酸銅、硫酸亜鉛、硫酸スズ、スルファミン酸ニッケルの水溶液である。
【0101】
[実施例8]
実施例8ではサンプル8の多孔質シリコン粒子に対し、以下のような一般的な触媒付与処理を行った。
触媒付与処理は、コンディショナー処理(処理液1:温度約55℃で1分間)によって基材表面を洗浄した後、プレディップ処理(処理液2:温度約20℃で30秒間)を行い、奥野製薬工業(株)製のキャタリストC−10(温度30℃で1分間)を使用して触媒を付与し、アクセラレーター(処理液3:温度約20℃で1分間)を用いて触媒を活性化した後、酸化剤(処理液4:温度約50℃で1分間)に浸漬し、残ったスズを酸化し、銅皮膜を析出しやすくした。工程ごとに水洗、乾燥を行った。
<処理液の組成>
処理液1 2−アミノエタノール 2ミリリットル/リットル
トリエタノールアミン 1ミリリットル/リットル
処理液2 塩酸 200ミリリットル/リットル
処理液3 塩酸 50ミリリットル/リットル
処理液4 亜塩素酸ナトリウム 3グラム/リットル
【0102】
下地金属層を形成するための銅の無電解メッキは、下記のメッキ浴組成とメッキ条件を用いて0.032μm厚の無電解銅メッキ層を形成した。
<無電解銅メッキ浴組成>
硫酸銅 5水和物 28.3グラム/リットル
次亜リン酸ナトリウム 17.5グラム/リットル
クエン酸ナトリウム 61.3グラム/リットル
ホウ酸 35.2グラム/リットル
<メッキ条件>
浴温 60〜85℃
pH 7.7〜9.2
メッキ時間 3分間
【0103】
[実施例9〜10]
実施例8と同様に無電解メッキを施した。
なお、実施例10の無電解銀メッキは、一般的な浴組成にて行った。
【0104】
[比較例1〜7]
前述の表1に示すサンプルA〜Gの多孔質シリコンを用いて比較例1〜7の条件で置換メッキまたは無電解メッキを行った。
【0105】
[比較例8]
前述の表1に示すサンプル1をメッキせずに活物質として使用した。
【0106】
[実施例11〜12]
次に、表1のサンプル8、9を用いて、表3に示す条件で炭素コーティングを施した。炭素コーティングは、原料ガスとしてアセチレンガスを用い、雰囲気ガス中の炭化水素ガス濃度、昇温速度、到達温度を変更してカーボン・コーティングを行った。
【0107】
[比較例9〜12]
同様に、表1のサンプルE,Fを用いて、表3に示す条件で炭素コーティングを施した。
【0108】
(粒子を負極に用いた際の電池特性の評価)
(i)負極スラリーの調製
得られた多孔質シリコン粒子を65質量部、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)を20質量部の比率でミキサーに投入した。さらに結着剤としてスチレンブタジエンラバー(SBR)5質量%のエマルジョン(日本ゼオン(株)製)を固形分換算で5質量部、スラリーの粘度を調整する増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル化学工業(株)製)1質量%溶液を固形分換算で10質量部の割合で混合してスラリーを作製した。
【0109】
(ii)負極の作製
調製したスラリーを自動塗工装置のドクターブレードを用いて、厚さ10μmの集電体用電解銅箔(古河電気工業(株)製、NC−WS)上に25μmの厚みで塗布し、70℃で乾燥させた後、プレスによる調厚工程を経て、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
【0110】
(iii)特性評価
リチウムイオン二次電池用負極と、1mol/LのLiPFを含むエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶液からなる電解液と、金属Li箔対極を用いてリチウムイオン電池を構成し、充放電特性を調べた。特性の評価は、初回の放電容量および50サイクルの充電・放電後の放電容量を測定し、放電容量の維持率を算出することによって行った。放電容量は、シリサイドと、リチウムの吸蔵・放出に有効な活物質Siの総質量を基準として算出した。まず、25℃環境下において、電流値を0.1C、電圧値を0.02Vまで定電流定電圧条件で充電を行い、電流値が0.05Cに低下した時点で充電を停止した。次いで、電流値0.1Cの条件で、金属Liに対する電圧が1.5Vとなるまで放電を行い、0.1C初期放電容量を測定した。なお、1Cとは、1時間で満充電できる電流値である。また、充電と放電はともに25℃環境下において行った。次いで、0.1Cでの充放電速度で上記充放電を50サイクル繰り返した。0.1C初期放電容量に対する、充放電を50サイクル繰り返したときの放電容量の割合を百分率で求め、50サイクル後放電容量維持率とした。
【0111】
評価結果を表2、表3にまとめた。
【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
表に示すとおり、実施例は、比較例に比べて、50サイクル後容量維持率が高く、充放電の繰り返しによる放電容量の低下の割合が小さいので、電池の寿命が長いことが確認された。
【0115】
各実施例においては、負極活物質が、三次元網目構造を持つ多孔質シリコン粒子であるため、充放電時のLiとSiの合金化・脱合金化による膨張・収縮の体積変化が生じても、シリコン複合体粒子の割れや微粉化を生じず、放電容量維持率が高くなることがわかった。
【0116】
比較例1では、サンプルAの多孔質シリコン粒子の平均粒径が0.08μmであり、粒径が小さすぎた。
比較例2では、サンプルBの多孔質シリコン粒子の平均粒径が1100μmであり、粒径が大きすぎた。
比較例3では、サンプルCの空隙率が94%と高すぎた。
比較例4では、メッキ液の流速が遅すぎたため、多孔質シリコン粒子内部へのメッキの析出が少なく、サイクル特性が悪かった。
【0117】
比較例5、6では、メッキ厚さが十分でなかった。
比較例7では、過剰にメッキを行い、メッキ厚さが厚すぎた。
比較例8では、置換メッキを行わない多孔質シリコン粒子であるため、微粉化が進み、サイクル特性が悪かった。
【0118】
比較例9では炭化水素系ガス濃度が十分でなく、比較例10では昇温速度が低く、比較例11では加熱温度が低かったため、炭素層の厚さが十分でなかった。また、比較例12では、炭素コーティング時間が短かったため、炭素層の厚さが十分でなかった。炭素層の厚さが十分でない比較例9〜12では、サイクル特性が悪かった。
【0119】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明に係る多孔質シリコン粒子は、リチウムイオン電池の負極に用いられるだけでなく、リチウム・イオン・キャパシタの負極、太陽電池、発光材料、フィルター用素材としても用いられることができる。
【符号の説明】
【0121】
1、1a、1b………多孔質シリコン粒子
3………空孔
5………シリコン微粒子
7a、7b………導電性元素の単体または合金
7c………導電性元素(炭素)の単体
8………多孔質シリコン粒子
9………フィルター
11………メッキ液
13………炉
15………ヒーター
17………炭化水素系ガス
18………多孔質シリコン粒子
19………卑な元素
20………メッキ液
21………リチウムイオン二次電池
23………正極
25………負極
27………セパレータ
29………非水系電解質
31………正極端子
33………正極リード
35………負極リード
37………電池缶
39………封口体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する空孔を有し、三次元網目構造を有する多孔質シリコン粒子であって、
前記空孔が、前記多孔質シリコン粒子を貫通し、
前記空孔内に、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cのいずれか1つ以上の導電性元素の単体又は合金を有する
ことを特徴とする多孔質シリコン粒子。
【請求項2】
前記導電性元素の単体又は合金が、前記空孔内の表面の少なくとも一部を被覆することを特徴とする請求項1に記載の多孔質シリコン粒子。
【請求項3】
前記導電性元素の単体又は合金が、前記空孔内の少なくとも一部に充填されていることを特徴とする請求項1に記載の多孔質シリコン粒子。
【請求項4】
前記多孔質シリコン粒子内に、As、Ba、C、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Er、Fe、Gd、Hf、Lu、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、P、Pd、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素とのシリサイドを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質シリコン粒子。
【請求項5】
前記多孔質シリコン粒子の平均粒径が、0.1μm〜1000μmであり、
前記多孔質シリコン粒子の平均空隙率が、15〜93%であり、
前記多孔質シリコン粒子の平均空孔径が、5nm〜2μmであり、
前記多孔質シリコン粒子の平均粒径と平均空孔径の比が、5以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多孔質シリコン粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔質シリコン粒子が負極活物質として用いられることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項7】
リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、
請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、
前記正極と前記負極との間に配置されるセパレータとを有し、
リチウムイオン伝導性を有する電解質中に、前記正極、前記負極および前記セパレータとが配設されることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
連続する空孔を有し、三次元網目構造を有する多孔質シリコン粒子の前記空孔内部に、Cu、Ni、Sn、Zn、Ag、Cのいずれか1つ以上の導電性元素の単体又は合金を析出させる
ことを特徴とする多孔質シリコン粒子の製造方法。
【請求項9】
前記多孔質シリコン粒子の空孔内の少なくとも一部に、Cu、Ni、Sn、Zn、Agのいずれか1つ以上の導電性元素で無電解メッキを行い、前記導電性元素を析出させることを特徴とする請求項8に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
【請求項10】
前記多孔質シリコン粒子が、Cu、Ni、Sn、Zn、Agのいずれか1つ以上の導電性元素よりも析出電位が卑な元素を1原子%以上含み、
前記卑な元素を、前記導電性元素で置換する置換メッキを行い、
前記多孔質シリコン粒子の空孔内の少なくとも一部に、前記導電性元素を析出させることを特徴とする請求項8に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
【請求項11】
前記多孔質シリコン粒子を、フィルター上に置き、
前記無電解メッキまたは前記置換メッキを、平均流速0.1cm/秒以上の流れ場で行うことを特徴とする請求項9または10に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
【請求項12】
前記多孔質シリコン粒子を、10体積%以上の炭化水素系ガスを含有する雰囲気中で、100K/分以上の昇温速度で600℃以上に加熱し、前記空孔内で、前記炭化水素系ガスを熱分解させることで、前記多孔質シリコン粒子の前記空孔内の少なくとも一部に、炭素を析出させることを特徴とする請求項8に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−84521(P2012−84521A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202789(P2011−202789)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】