多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法及び多孔質フッ素樹脂薄膜
【課題】膜厚が50μm以下であるような薄膜であっても、均一でかつ大きな延伸を可能にし、均一で微細な孔を有しかつ高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を製造できる方法、及び前記の優れた特徴を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を提供する。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンを主体とするフッ素樹脂よりなり、膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後30℃未満で延伸して多孔質化することを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法、及び、ポリテトラフルオロエチレンを主体としガーレー秒が5000秒以上のフッ素樹脂膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定された後、延伸して多孔質化されたものであり、膜厚が50μm未満であり、かつ平均流量孔径が45nm以下であることを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンを主体とするフッ素樹脂よりなり、膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後30℃未満で延伸して多孔質化することを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法、及び、ポリテトラフルオロエチレンを主体としガーレー秒が5000秒以上のフッ素樹脂膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定された後、延伸して多孔質化されたものであり、膜厚が50μm未満であり、かつ平均流量孔径が45nm以下であることを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター(分離膜)等として有用な多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法、及び、その方法により製造することができる多孔質フッ素樹脂薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を素材とする多孔質膜(多孔質フッ素樹脂膜)は、耐薬品性、耐熱性等に優れるとともに、均一で微細な多孔質構造が得られやすいので、ガス分離膜、液体分離膜等のフィルター等として用いられている。このフィルター等に用いられる多孔質フッ素樹脂膜には、微細な粒子の濾過分別を可能とする微細な孔径、優れた濾過処理効率を得るための高い気孔率、さらに優れた強度等の特性を有することが望まれている。
【0003】
特公昭42−13560号公報(特許文献1)には、このような多孔質フッ素樹脂膜の製造方法として、原料となるPTFEファインパウダーに液状潤滑剤(助剤)を混合して押し固めた後押出し、この押出成形品を長軸方向に延伸して多孔質化し焼成する方法が記載されている。しかし、この方法では、PTFEの一次粒子径は200nm強、二次粒子径は500μm〜1000μm程度で大きく、フィルターの最小孔径はその粒子径に依存する等の理由により、径0.1μm(100nm)未満の微小粒子の除去を可能とする微細な孔を有するフィルターを得ることは困難である。
【0004】
そこで、特開昭53−55379号公報(特許文献2)等では、PTFE粒子の成形品を、一度溶融、収縮させて粒子間隙を消滅させた後、延伸により微細孔を形成する方法が提案されており、この方法により、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするフィルターを得ることができる。しかしながら、この方法によっては、微細孔を有しながら30%以上の高い気孔率(1.58g/cc以下の密度)を得ることは困難であった。
【0005】
特開昭61−146522号公報(特許文献3)には、電離放射線の照射により延伸率を大きくできると記述されており、延伸率を大きくすることにより気孔率の向上が可能になる。しかし、特許文献3の方法によると、延伸率を大きくすれば孔径も大きくなり、微細な孔径を有するフィルターを得ようとする場合は延伸率を上げることができず、その結果気孔率は小さくなる。
【0006】
そこで、これらの問題を解決する方法として、特開2007−77323号公報(特許文献4)には、PTFEを溶融した後徐冷して得られたフッ素樹脂薄膜であって、該PTFEの融解熱量が所定の範囲内にあるもの又は電離放射線の照射等により所定の範囲内に調整したもの、を延伸する方法が開示されている。この方法により、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするとともに、30%を超えるような高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂膜を製造することができる。
【特許文献1】特公昭42−13560号公報
【特許文献2】特開昭53−55379号公報
【特許文献3】特開昭61−146522号公報
【特許文献4】特開2007−77323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フィルターとして用いられる場合、処理効率(流体の透過性)の向上のため、フッ素樹脂膜は薄い方が好ましい。しかし、フッ素樹脂膜が薄膜の場合は、特許文献4等の方法では、延伸率を大きくすると破断が起きやすいとの問題がある。すなわち薄膜の場合は、膜厚のムラが加工精度上相対的に大きくなるので、薄い個所が他の部分よりも先に伸びの限界を超え破断が起きやすい。又、膜厚のムラにより延伸のムラも生じやすく、均一で微細な孔が得られにくくなる。特に膜厚が50μm以下になるとこの問題が顕著になる。近年、さらに微細な粒子の除去を可能とするとともに、より高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜が望まれているが、膜厚が薄い場合、前記の従来技術によってはその製造が困難である。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題を解決し、膜厚が50μm以下であるような薄膜であっても、均一でかつ大きな延伸を可能にし、均一で微細な孔を有しかつ高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を製造できる方法を提供することを課題とする。
【0009】
本発明は、又、前記の方法で製造することができる多孔質フッ素樹脂薄膜であって、PTFEを主体とし、均一で微細な孔を有しかつ高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後、30℃未満で延伸することにより、前記の課題を達成できること、すなわち、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするような微細孔が容易に形成でき、かつ高い気孔率が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
一般にPTFEは、温度が30℃未満であると硬くかつ破断伸びが小さくなり延伸加工性が低くなる傾向がある。そこで従来は、破断伸びが高くなる30℃以上の温度、特に50℃から100℃の間での延伸が好まれていた。しかし、膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後延伸する方法により、30℃未満の低温であっても、十分な延伸加工性が得られること、しかもより微細で均一な孔が得られることを、本発明者は見出し、本発明を完成したのである。
【0012】
本発明は、PTFEを主体とするフッ素樹脂よりなり膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後、30℃未満で延伸して多孔質化することを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法(請求項1)を提供する。
【0013】
ここで、原材料として用いるフッ素樹脂薄膜とは、PTFEを主体とするフッ素樹脂よりなり、実質的に無孔質のものである。より欠陥の少ない多孔質フッ素樹脂薄膜を得るためには、原材料であるフッ素樹脂薄膜も欠陥の少ないものが望まれる。具体的には、ガーレー秒が5000秒以上のフッ素樹脂膜が好ましい。ここでガーレー秒とは、JIS−P8117等記載されている透気度(空気の透過量)を表す数値で、具体的には、100mlの空気が645cm2の面積を通過する時間(秒)を表す。膜が欠陥を有する場合は、その欠陥を通って空気が透過するので、ガーレー秒は小さくなるが、欠陥が少なくなるに従って空気が透過しにくくなり、ガーレー秒は増大する。ガーレー秒が5000秒以上のフッ素樹脂膜は、欠陥がほとんどないものである。従って、このフッ素樹脂膜を延伸して得られた多孔質フッ素樹脂薄膜も、欠陥がほとんどなく均一な系の微細孔からなる。
【0014】
又、原材料として用いるフッ素樹脂薄膜は、膜厚が50μm以下のものである。従来の方法では、PTFEを主体とするフッ素樹脂であっても膜厚が50μm以下の場合は、膜厚のムラにより延伸のムラや破断が起きやすく、又均一で微細な孔が得られにくい。しかし、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後に、30℃未満の低温で延伸することにより、膜厚が50μm以下どころか10μm以下の場合であっても、破断を防ぎながら高い延伸率を達成することができ、かつ均一で微細な孔が得られる。従って、この方法により製造された多孔質フッ素樹脂薄膜は、均一で微細な孔を有するとともに、高い気孔率でありかつ薄膜であるので、分離膜として高い処理能力を有する。
【0015】
PTFEを主体とするフッ素樹脂は、PTFEを通常50重量%以上含むものである。このフッ素樹脂に含まれる他のフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキル・ビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロ・トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、及びポリビニルフルオライド等の熱可塑性フッ素樹脂を挙げることができる。PTFEを主体としながらも、この例示のフッ素樹脂を含ませることにより、より欠陥が少ないフッ素樹脂薄膜が得られやすくなる。
【0016】
ここで、延伸によって伸びる特性を有する支持体としては、樹脂フィルムの延伸に一般的に使用されている装置、例えばロール延伸機、テンター延伸機又はブロー延伸機により延伸可能な材料からなり、30℃未満で100%以上の破断伸びを有し、延伸による伸びにムラがないフィルム等が挙げられる。中でも好ましくは、30℃未満での破断伸びが150%以上のフィルムであり、さらに好ましくは30℃未満での破断伸びが200%以上のフィルムである。具体的には、各種エラストマー、ポリオレフィン、フッ素樹脂等からなるフィルムや、これらの材料からなる多孔質フィルム等を挙げることができる。
【0017】
前記支持体へフッ素樹脂薄膜を固定する方法は特に限定されない。例えば、粘着剤や接着剤を介して固定する方法、支持体及び/又はフッ素樹脂薄膜を融点以上に加熱して融着する方法を用いることができる。
【0018】
前記支持体へフッ素樹脂薄膜が固定された後、延伸が行われる。延伸は、ロール延伸機、テンター延伸機、ブロー延伸機等の一般的な装置を用いて行うことができる。一軸延伸品、多軸延伸品のどちらでもよい。延伸の程度は、所望の孔径及び気孔率に応じて適宜調整されその範囲は限定されないが、本発明によれば、30℃未満の低温にても、大きな延伸を容易に行うことができ、その結果、高い気孔率が得られる。
【0019】
本発明は、前記延伸を、30℃未満で行うことを特徴とする。前記のように本発明者は、延伸を行う温度が30℃未満であると、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするような微細孔がより容易に形成されることを見出した。さらに、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後に延伸すれば(請求項1の製造方法)、PTFEの延伸加工性が低く従来技術では大きな延伸が困難であった30℃未満でも、高い延伸加工性が得られることを見出し、その結果、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするような微細孔を有するとともに、30%を超える気孔率を有し、優れた濾過処理効率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜をより容易に得ることができる方法を完成したのである。後述のように、この方法によれば、特許文献4に記載の条件に該当しない場合、例えばフッ素樹脂の融解熱量が47.8J/g以上の場合でも、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするような微細孔を有するとともに、30%を超える気孔率を有し、優れた濾過処理効率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を得ることができる。
【0020】
本発明において、多孔質フッ素樹脂薄膜の製造に用いられるフッ素樹脂は、PTFEを主体とするものである。PTFEを主体とするフッ素樹脂は、通常、PTFEを50重量%以上含むものを意味するが、中でも、PTFEを80重量%以上含むものが、PTFEの有する優れた特性がより顕著になるので好ましい(請求項2)。
【0021】
請求項3は、前記フッ素樹脂薄膜が、融解熱量が32J/g以上であるフッ素樹脂よりなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法である。ここで、フッ素樹脂の融解熱量とは、10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱、−10℃/分の速度で365℃から350℃まで冷却、350℃で5分間保持、−10℃/分の速度で350℃から330℃まで冷却、−1℃/分の速度で330℃から305℃まで冷却、及び−50℃/分の速度で305℃から245℃まで冷却、を順次行った後、10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱する際の296〜343℃間の吸熱量である。
【0022】
前記融解熱量の測定は、より具体的には、以下に示す条件で行われる。すなわち、室温から245℃まで50℃/分で加熱し、その後10℃/分で365℃まで加熱する(第一ステップ)。次に、350℃まで−10℃/分の速度で冷却、350℃で5分間保持、350℃から330℃まで−10℃/分の速度で冷却し、さらに330℃から305℃まで−1℃/分の速度で冷却する(第二ステップ)。次に−50℃/分の速度で305℃から245℃まで冷却した後、10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱する(第三ステップ)。この第三ステップにおける296〜343℃間の吸熱量を融解熱量とする。加熱や冷却、吸熱量等の測定は、好ましくは示差走査熱量計を用いて行われ、熱流束示差走査熱量計の測定では、サンプル量は、通常、10mgから20mg程度が好ましい。
【0023】
前記の方法により測定された融解熱量が32J/g以上である場合、フッ素樹脂薄膜の延伸加工性がさらに優れ、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするとともに、30%を超えるような高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜をさらに容易に得ることができるので好ましい。融解熱量が32J/g未満の場合、延伸率とともに孔径が大きくなる傾向が強く、微細な孔が得られにくくなる傾向がある。なお、特許文献4に記載されているような従来技術では、融解熱量が47.8J/g以上の場合、均一な延伸が困難となり均一な孔径が得られにくく、破断が生じやすい問題があった。しかし、本発明によれば、融解熱量が47.8J/g以上の場合であっても均一な延伸が可能となる。この結果、フッ素樹脂の分子量のバラツキやグレード差があっても製品性能のバラツキが抑制されるので、工業的に非常に有用である。
【0024】
なおこの融解熱量は、フッ素樹脂の分子量と相関する。従って、前記の融解熱量の測定方法は、フッ素樹脂の分子量の管理に適用することができ、生産管理に非常に有用である。すなわち、フッ素樹脂の分子量が大きいほど結晶化が進行しにくいので、次に融解させるときの融解熱量が小さくなり、逆に、分子量が小さい程融解熱量が大きくなる。
【0025】
本発明の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法において、前記延伸の後、必要に応じて、支持体と多孔質フッ素樹脂薄膜は分離される。すなわち、多孔質フッ素樹脂薄膜に固定された支持体が除去される(請求項4)。支持体から多孔質化されたフッ素樹脂薄膜を剥離する方法としては、例えば、機械的に剥離する方法、接着剤や粘着剤を介して支持体とフッ素樹脂薄膜が固定されている場合は、接着剤や粘着剤を溶解する溶剤に多孔質フッ素樹脂薄膜が固定された支持体を浸漬して剥離する方法、これらを加熱して接着剤や粘着剤を軟化させて剥離する方法を挙げることができる。
【0026】
本発明は、以下に示すように、前記の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法に加えて、この製造方法により製造することができ、フィルターとして用いられ、微細な粒子の除去を可能にしかつ優れた処理効率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を提供する。
【0027】
請求項5は、ポリテトラフルオロエチレンを主体としガーレー秒が5000秒以上で膜厚が20μm未満のフッ素樹脂膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定された後、30℃未満で延伸して形成された多孔質フッ素樹脂薄膜であって、膜厚が20μm未満であり、かつ平均流量孔径が45nm以下であることを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜である。
【0028】
この多孔質フッ素樹脂薄膜は、PTFEを主体とするフッ素樹脂膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後30℃未満で延伸して多孔質化されたものであり、前記本発明の製造方法により製造することができるものである。前記の本発明の製造方法によれば、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とする多孔質フッ素樹脂薄膜を容易に得ることができるが、フィルターとしてのこの性質は平均流量孔径により表すことができる。本発明の多孔質フッ素樹脂薄膜の平均流量孔径は45nm以下であり、径0.1μm未満の微細粒子を十分に除去できるものであり、又、前記本発明の製造方法により初めて製造することができたものである。
【0029】
この多孔質フッ素樹脂薄膜の原材料であるPTFEを主体とするフッ素樹脂膜は、ガーレー秒が5000秒以上のフッ素樹脂膜である。前記のように、ガーレー秒が5000秒以上のフッ素樹脂膜は、欠陥がほとんどないものであり、従って、このフッ素樹脂膜を延伸して得られた本発明の多孔質フッ素樹脂薄膜も、欠陥がほとんどなく均一な系の微細孔からなる。
【0030】
請求項5の多孔質フッ素樹脂薄膜は、膜厚が20μm未満であることを特徴とする。膜厚が20μm未満であることにより、分離膜としての大きな処理能力が可能になる。
【0031】
請求項6は、ガーレー秒が500秒以下であることを特徴とする請求項5に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜である。薄膜が欠陥を含まず均一な系の微細孔からなる場合は、ガーレー秒が小さいほど、フィルターとしての処理能力が大きい(処理効率が高い。)。この多孔質フッ素樹脂薄膜は、ガーレー秒が500秒以下であるので、分離膜として大きな処理能力を有するものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法によれば、膜厚が50μm以下の薄膜であっても、均一で微細な孔を有しかつ高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を製造することができる。この方法により得ることができる本発明の多孔質フッ素樹脂薄膜は、膜厚が50μm以下でありかつ高い気孔率を有し、従ってフィルターとして高い処理効率を示すとともに、均一で微細な孔からなるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本発明を実施するための最良の形態を、具体的に説明する。なお、本発明はこの形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り他の形態へ変更することができる。
【0034】
本発明の製造方法に使用されるフッ素樹脂薄膜、すなわち、PTFEを主体とするフッ素樹脂よりなり膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜は、例えば、PTFEを主体とするフッ素樹脂粉末を分散媒中に分散したフッ素樹脂ディスパージョンを、板上に塗布し、その後、分散媒を乾燥させて製膜し、この皮膜をフッ素樹脂の融点以上に加熱して焼結することにより得ることができる。乾燥と焼結の加熱を同一工程で行ってもよい。
【0035】
フッ素樹脂ディスパージョンの分散媒としては、通常、水等の水性媒体が用いられる。フッ素樹脂粉末とはフッ素樹脂の微粒子の集合体であり、例えば、乳化重合により得ることができる。フッ素樹脂ディスパージョン中のフッ素樹脂粉末の含有量は、20重量%〜70重量%の範囲が好ましい。乾燥は、分散媒の沸点に近い温度又は沸点以上に加熱することにより行うことができる。
【0036】
フッ素樹脂ディスパージョンに用いるフッ素樹脂の分子量としては10万〜500万であることが好ましく、50万〜350万であればより好ましく、50万〜180万であれば更に好ましい。分子量が高すぎると気孔率が低下する傾向があり、分子量が低すぎると、ピンホールを生じる、延伸時に破れ易くなる等の傾向がある。
【0037】
前記の焼結は、フッ素樹脂をその融点以上に加熱して溶融する溶融工程、並びに、溶融された樹脂を、徐冷する工程、又は/及び、313℃以上321℃未満で10分以上保持する工程を含む方法により行うことが好ましい。この方法により得られたフッ素樹脂薄膜を使用すれば、均一な微細孔を有し気孔率の大きい多孔質フッ素樹脂薄膜をさらに容易に得ることができる。
【0038】
フッ素樹脂の融解熱量は、加熱分解や、電離放射線の照射により調整することができる。例えば、融解熱量が32J/g未満のフッ素樹脂に電離放射線を照射して融解熱量を32J/g以上とすることができる。この調整、すなわち、加熱分解や電離放射線の照射は、フッ素樹脂の製膜後や焼結の工程で行うこともできる。例えば、融解熱量が32J/g未満のフッ素樹脂のディスパージョンを製膜し焼結する工程で、加熱分解や電離放射線照射を行い、フッ素樹脂の融解熱量を32J/g以上に調整しても、前記の優れた効果が得られる。
【0039】
本発明の製造方法に用いられる、PTFEを主体とするフッ素樹脂よりなり膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、ボイドやクラック等の欠陥のより少ないものとするための製造方法として、平滑な箔上に、フッ素樹脂粉末を分散媒中に分散したフッ素樹脂ディスパージョンを塗布した後、前記分散媒の乾燥及びフッ素樹脂粉末の焼結を行い、その後、前記平滑な箔を除去する方法を挙げることができる。
【0040】
平滑な箔とは、フッ素樹脂ディスパージョンが塗布される表面に孔や凹凸が観測されない平滑なフィルムである。平滑な箔の厚さの範囲は特に限定されないが、基体上に塗布したフッ素樹脂ディスパージョン上に気泡が入らないように被せる操作が容易に行われるような柔軟性を有する厚さが望ましい。又、薄膜の形成後、平滑な箔の除去を行う場合は、除去が困難とならない厚さが望ましい。例えば、平滑な箔を溶解除去する場合は、容易に溶解除去される厚さが望まれる。平滑な箔の除去の方法は特に限定されないが、平滑な箔が金属箔の場合は酸等により溶解除去する方法が例示される。
【0041】
平滑な箔としては金属箔が好ましい。金属箔は、フッ素樹脂ディスパージョン上に気泡が入らないように被せる操作が容易に行われるような柔軟性を有し、薄膜の形成後酸等による溶解除去が容易である。中でもアルミ箔は、柔軟性及び溶解除去の容易さ、さらには入手の容易さの点でより好適である。
【0042】
ボイドやクラック等の欠陥を低減する効果は、フッ素樹脂ディスパージョンに、高濃度条件でゲル化する水溶性ポリマーを添加することによっても得られる。PTFEのディスパージョンに、前記熱可塑性フッ素樹脂とこの水溶性ポリマーをともに添加することにより、この効果はより顕著になる。
【0043】
この水溶性ポリマーがノニオン性であれば、フッ素樹脂の分散性への影響がないか少ない。従って、水溶性ポリマーとしては、アニオン性、カチオン性よりもノニオン性のものが好ましい。又、このノニオン性の水溶性ポリマーの分子量は1万以上が好ましい。分子量を1万以上とすることにより、乾燥の際、水が完全に除去される前にゲル化して膜を形成するので、水の表面張力に起因するクラックの発生を抑制することができる。該水溶性ポリマーとしては、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、デンプン、アガロース等を挙げることができる。
【0044】
フッ素樹脂を塗布する方法や平滑な箔の膜厚のバラツキや撓みによっては、塗布装置の塗工治具が箔の表面に直接接触して箔表面を傷つけ、結果的にフッ素樹脂薄膜に傷が転写されて表面凹凸の発生や、ピンホールなどの欠陥が発生することがある。そこで、潤滑剤として陰イオン性界面活性剤を0.5mg/ml以上、より好ましく2.5mg/ml以上加えると摩擦係数を低くできるので、表面凹凸やピンホールなどの欠陥の発生を抑制することができる
【0045】
陰イオン性の界面活性剤としては、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・カルボン酸塩などのカルボン酸型、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・スルホン酸塩などの硫酸エステル型、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・リン酸塩などのリン酸エステル型等の界面活性剤を挙げることができる。ただ、陰イオン性の界面活性剤の添加によりフッ素樹脂粉末の分散性が落ちるので、界面活性剤を配合した場合は配合後、沈降、分離等が生じない時間内に生産を完了させるか、常に超音波などの撹拌を加え続けながら生産する方法が好ましい。
【実施例】
【0046】
先ず、以下の実施例、比較例において行った各種測定の方法について説明する。
【0047】
[透気度(ガーレー秒)の測定方法]
JIS P 8117(紙及び板紙の透気度試験方法)に規定のガーレー透気度試験機と同一構造の王研式透気度測定装置(旭精工社製)を用いて測定した。測定結果は、ガーレー秒で表す。
[平均流量孔径の測定方法]
細孔分布測定器(パームポロメータ CFP−1500A:Porous Materials,Inc製)により、液体として、GALWICK(プロピレン,1,1,2,3,3,3酸化ヘキサフッ酸(Porous Materials,Inc製)を用いて、測定した。具体的には、次のようにして求められる。先ず、膜に加えられる差圧と膜を透過する空気流量との関係を、膜が乾燥している場合と膜が液体で濡れている場合について測定し、得られたグラフをそれぞれ、乾き曲線及び濡れ曲線とする。乾き曲線の流量を1/2とした曲線と、濡れ曲線との交点における差圧をP(Pa)とする。次の式により、平均流量孔径を求める。
平均流量孔径d(μm)=cγ/P
ここで、cは定数で2860であり、γは液体の表面張力(dynes/cm)である。
【0048】
[融解熱量の測定方法]
PTFEのサンプルを10mgから20mgを採り、必要に応じてアルミセルに封止する。ここで、PTFEは可能な限り収縮変形できるようにフリーな状態に保つことが重要であるので、セルを潰さないか潰し切らないようにする。
【0049】
このサンプルについて、以下の条件で加熱や冷却を行う。
室温から245℃まで50℃/分で加熱。その後10℃/分で365℃まで加熱する(第一ステップ)。
次に−10℃/分の速度で350℃まで冷却し、350℃で5分間保持する。次に−10℃/分の速度で350℃から330℃まで、−1℃/分の速度で330℃から305℃まで冷却する(第二ステップ)。PTFEの分子量が小さいほど結晶化が促進されやすく、第二ステップでの発熱量が大きくなる傾向がある。次に−50℃/分の速度で305℃から245℃まで冷却する。
次に10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱する(第三ステップ)。
【0050】
0.5sec/回でサンプリングタイムを行い、島津製作所社製熱流束示差走査熱量計DSC−50を使用し吸熱カーブ、発熱カーブを求める。この吸熱、発熱カーブより、吸熱量及び発熱量を求めることができるが、融解熱量は296℃から343℃の区間の吸熱量を積分して求めた値である。
【0051】
[IPAバブリングポイントの測定方法]
PTFE多孔質体をイソプロピルアルコールに含浸し、管壁の孔内をイソプロピルアルコールで充満した後、一方の面より徐々に空気圧を負荷したときに、初めて気泡が反対面より出てくるときの圧力を、IPAバブリングポイントとした。
【0052】
比較例1
日東電工社製PTFEフィルム膜厚20μm(No.920UL)に電子線を照射し、融解熱量を42J/gに調整した。この膜を370℃で5分間加熱した後、315℃で8時間加熱した。この膜は加熱前よりも長さ方向に収縮し、膜厚は約50μm増大した。次に、この膜を圧延ロールにて膜厚を13μmに加工した。
【0053】
この膜を幅50mmの住友スリーエム社製PTFE粘着テープ(スコッチ5490)に挟んで固定した。次に、この試験体を、引張試験器を用いて、温度60℃で、テープの幅方向に200%延伸(チャック間隔20mm、ストローク40mm)した。これを溶剤(MEK)に漬けてPTFEテープから膜を分離し取り出した。次に延伸された方向とPTFEテープの長さ方向が一致するようにしてこの膜を、再度住友スリーエム社製PTFE粘着テープ(スコッチ5490)に挟んで固定した。これを温度60℃で、テープの幅方向に100%延伸(チャック間隔20mm、ストローク20mm)した。その後、これを溶剤(MEK)に漬けてPTFEテープから膜を分離し取り出した。この膜の延伸後の厚さは9μmだった。又、ガーレー秒は150秒、平均流量孔径は55nmであった。
【0054】
実施例1
融解熱量が50J/gのPTFEディスパージョン30J(三井・デュポンフロロケミカル社製)、MFAラテックス(ソルベイソレクシス社製、PFAディスパージョンD5010)、及びPFAディスパージョン920HP(三井・デュポンフロロケミカル社製)を用いて、MFA/(PTFE+MFA+PFA)(フッ素樹脂固形分の体積比)及びPFA/(PTFE+MFA+PFA)(フッ素樹脂固形分の体積比)が各2%であるフッ素樹脂ディスパージョンを調整した。更に分子量200万のポリエチレンオキサイドを濃度0.003g/ml、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン(花王社製20T)を10mg/mlとなるように添加してフッ素樹脂ディスパージョンを調整した。
【0055】
厚さ50μmのアルミ箔をガラス平板の上に皺がないように広げて固定し、前記フッ素樹脂ディスパージョンを滴下した後、日本ベアリング社製のステンレス鋼製のスライドシャフト(ステンレスファインシャフトSNSF型、外径20mm)を滑らすようにしてフッ素樹脂ディスパージョンをアルミ箔一面に均一になるように伸ばした。この箔を80℃で60分乾燥、250℃で1時間加熱、340℃で1時間加熱の各工程を順次経た後、自然冷却し、アルミは箔上に固定されたフッ素樹脂薄膜を成形させた。フッ素樹脂薄膜が成形される前後のアルミ箔の単位面積あたりの重量差とフッ素樹脂の真比重(2.25g/cm3)より算出したフッ素樹脂薄膜の平均厚さは3μmであった。
【0056】
次に920HPを蒸留水で4倍の容積に薄めたPFAディスパージョンに更に分子量200万のポリエチレンオキサイドを濃度0.003g/ml、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン(花王社製20T)を10mg/mlとなるように添加した4倍希釈のPFAディスパージョンを調整した。
【0057】
アルミは箔上に固定されたフッ素樹脂薄膜をガラス平板の上に皺がないように広げて固定し、前記で得られた4倍希釈のPFAディスパージョンを滴下した後、前記と同じ日本ベアリング社製のステンレス鋼製のスライドシャフトを滑らすようにして4倍希釈のPFAディスパージョンをアルミ箔一面に均一になるように伸ばしながら、水分が乾燥しない間に、孔径0.45μm、厚さ80μmの延伸PTFE多孔質体(住友電工ファインポリマー社製、商品名:ポアフロンFP−045−80)(IPA−BP:150kPa、気孔率:70%、ガーレー秒:9.1秒)を被せた。
【0058】
その後80℃で60分、乾燥、250℃で1時間加熱、320℃で1時間加熱、317.5℃で8時間加熱の各工程を経た後、自然冷却して延伸PTFE多孔質体上にPTFEよりも融点の低い熱可塑性のPFAでフッ素樹脂薄膜が接着され、更にその上にアルミ箔が固定された複合体を得た。次いで、アルミ箔を塩酸によって溶解除去して、試験体を得た。
【0059】
この試験体のガーレー秒は5000秒以上で、フッ素樹脂薄膜側から室温でエタノールを接触させてみたが浸透するような孔は無く、エタノールが浸透しないフッ素樹脂薄膜を含むフッ素樹脂複合体であることが示された。
【0060】
次に引張試験器を用いて、この試験体を、温度25℃、チャック間55mm、ストローク165mm(延伸率300%)で幅方向に延伸した後、更に同じ引張試験器で温度25℃、チャック間55mm、ストローク88mm(延伸率60%)で幅方向と直交する方向へ延伸した。延伸後の多孔質フッ素樹脂複合体のガーレー秒は80秒であった。IPAバブリングポイントは1180kPaであり、平均流量孔径は27nmであった。
【0061】
実施例2
実施例1と、同じ手順、同条件にて同様な試験体を得た。次に引張試験器を用いて、この試験体を、温度15℃、チャック間55mm、ストローク165mm(延伸率300%)で幅方向に延伸した後、更に同じ引張試験器で温度15℃、チャック間55mm、ストローク88mm(延伸率60%)で幅方向と直交する方向へ延伸した。延伸後の多孔質フッ素樹脂複合体のガーレー秒は360秒であった。IPAバブリングポイントは測定限界の3000kPa以上であり、平均流量孔径は測定限界の15nm未満であった。
【0062】
比較例2
日東電工社製PTFEフィルム膜厚20μm(No.920UL)に電子線を照射し、融解熱量を42J/gに調整した。この膜を370℃で5分間加熱した後、315℃で8時間加熱した。この膜は加熱前よりも長さ方向に収縮し、膜厚は約50μmに増大した。次に、この膜を圧延ロールにて膜厚を13μmに加工した。60℃で延伸を試みたところ、100%に満たない延伸率で破断した。
【0063】
比較例3
融解熱量が50J/gのPTFEディスパージョン30J(三井・デュポンフロロケミカル社製)とMFAラテックス(PFAディスパージョンD5010)、および920HPを用いて、MFA/(PTFE+MFA+PFA)(フッ素樹脂固形分の体積比)及びPFA/(PTFE+MFA+PFA)(フッ素樹脂固形分の体積比)が各2%であるフッ素樹脂ディスパージョンを調整し、更に分子量200万のポリエチレンオキサイドを濃度0.003g/ml、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン(花王社製20T)を10mg/mlとなるように添加してフッ素樹脂ディスパージョンを調整した。
【0064】
厚さ50μmのアルミ箔をガラス平板の上に皺がないように広げて固定し、前記フッ素樹脂ディスパージョンを滴下した後、日本ベアリング社製のステンレス鋼製のスライドシャフト(ステンレスファインシャフトSNSF型、外径20mm)を滑らすようにしてフッ素樹脂ディスパージョンをアルミ箔一面に均一になるように伸ばした。この箔を80℃で60分乾燥、250℃で1時間加熱、340℃で1時間加熱、317.5℃で1時間加熱の各工程を経た後、自然冷却し、アルミは箔上に固定されたフッ素樹脂薄膜を成形させた。フッ素樹脂薄膜が成形される前後のアルミ箔の単位面積あたりの重量差とフッ素樹脂の真比重(2.25g/cm3)より算出したフッ素樹脂薄膜の平均厚さは3μmであった。
【0065】
次いで、アルミ箔を塩酸によって溶解除去して、試験体を得た。この試験体について引張試験器を用いて延伸を試みたが、薄すぎて皺になりやすい等取扱いが難しい上、チャックで破れる等して延伸することができなかった。
【0066】
比較例4
実施例1と、同じ手順、同条件にて同様な試験体を得た。次に引張試験器を用いて、この試験体を、温度60℃、チャック間55mm、ストローク165mm(延伸率300%)で幅方向に延伸した後、更に同じ引張試験器で温度60℃、チャック間55mm、ストローク88mm(延伸率60%)で幅方向と直交する方向へ延伸した。延伸後の多孔質フッ素樹脂複合体のガーレー秒は21秒であった。IPAバブリングポイントは745kPaであった、平均流量孔径は55nmであった。
【0067】
フッ素樹脂薄膜の延伸を、支持体に固定せずに行った比較例2、3では、延伸時に、2倍に満たない延伸倍率で破断する、チャックで破れる等の問題が生じ、延伸することができなかった。比較例1、4では、フッ素樹脂薄膜の延伸を、支持体に固定した後行ったが、延伸を60℃で行ったので、平均流量孔径45nm以下の多孔質フッ素樹脂薄膜は得られなかった。一方、フッ素樹脂薄膜の延伸を、支持体に固定した後行い、かつ延伸を30℃未満で行った実施例1、2では、容易に大きな延伸を行うことができ、かつ、特許文献4に記載の条件(融解熱量が、47.8j/g未満)に該当しない融解熱量を有するフッ素樹脂薄膜を用いたにも係わらず、平均流量孔径45nm以下と孔径が小さく、又ガーレー秒が小さい。従って処理能力が大きい(処理効率が高い)多孔質フッ素樹脂薄膜が得られた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター(分離膜)等として有用な多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法、及び、その方法により製造することができる多孔質フッ素樹脂薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を素材とする多孔質膜(多孔質フッ素樹脂膜)は、耐薬品性、耐熱性等に優れるとともに、均一で微細な多孔質構造が得られやすいので、ガス分離膜、液体分離膜等のフィルター等として用いられている。このフィルター等に用いられる多孔質フッ素樹脂膜には、微細な粒子の濾過分別を可能とする微細な孔径、優れた濾過処理効率を得るための高い気孔率、さらに優れた強度等の特性を有することが望まれている。
【0003】
特公昭42−13560号公報(特許文献1)には、このような多孔質フッ素樹脂膜の製造方法として、原料となるPTFEファインパウダーに液状潤滑剤(助剤)を混合して押し固めた後押出し、この押出成形品を長軸方向に延伸して多孔質化し焼成する方法が記載されている。しかし、この方法では、PTFEの一次粒子径は200nm強、二次粒子径は500μm〜1000μm程度で大きく、フィルターの最小孔径はその粒子径に依存する等の理由により、径0.1μm(100nm)未満の微小粒子の除去を可能とする微細な孔を有するフィルターを得ることは困難である。
【0004】
そこで、特開昭53−55379号公報(特許文献2)等では、PTFE粒子の成形品を、一度溶融、収縮させて粒子間隙を消滅させた後、延伸により微細孔を形成する方法が提案されており、この方法により、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするフィルターを得ることができる。しかしながら、この方法によっては、微細孔を有しながら30%以上の高い気孔率(1.58g/cc以下の密度)を得ることは困難であった。
【0005】
特開昭61−146522号公報(特許文献3)には、電離放射線の照射により延伸率を大きくできると記述されており、延伸率を大きくすることにより気孔率の向上が可能になる。しかし、特許文献3の方法によると、延伸率を大きくすれば孔径も大きくなり、微細な孔径を有するフィルターを得ようとする場合は延伸率を上げることができず、その結果気孔率は小さくなる。
【0006】
そこで、これらの問題を解決する方法として、特開2007−77323号公報(特許文献4)には、PTFEを溶融した後徐冷して得られたフッ素樹脂薄膜であって、該PTFEの融解熱量が所定の範囲内にあるもの又は電離放射線の照射等により所定の範囲内に調整したもの、を延伸する方法が開示されている。この方法により、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするとともに、30%を超えるような高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂膜を製造することができる。
【特許文献1】特公昭42−13560号公報
【特許文献2】特開昭53−55379号公報
【特許文献3】特開昭61−146522号公報
【特許文献4】特開2007−77323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フィルターとして用いられる場合、処理効率(流体の透過性)の向上のため、フッ素樹脂膜は薄い方が好ましい。しかし、フッ素樹脂膜が薄膜の場合は、特許文献4等の方法では、延伸率を大きくすると破断が起きやすいとの問題がある。すなわち薄膜の場合は、膜厚のムラが加工精度上相対的に大きくなるので、薄い個所が他の部分よりも先に伸びの限界を超え破断が起きやすい。又、膜厚のムラにより延伸のムラも生じやすく、均一で微細な孔が得られにくくなる。特に膜厚が50μm以下になるとこの問題が顕著になる。近年、さらに微細な粒子の除去を可能とするとともに、より高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜が望まれているが、膜厚が薄い場合、前記の従来技術によってはその製造が困難である。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題を解決し、膜厚が50μm以下であるような薄膜であっても、均一でかつ大きな延伸を可能にし、均一で微細な孔を有しかつ高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を製造できる方法を提供することを課題とする。
【0009】
本発明は、又、前記の方法で製造することができる多孔質フッ素樹脂薄膜であって、PTFEを主体とし、均一で微細な孔を有しかつ高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後、30℃未満で延伸することにより、前記の課題を達成できること、すなわち、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするような微細孔が容易に形成でき、かつ高い気孔率が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
一般にPTFEは、温度が30℃未満であると硬くかつ破断伸びが小さくなり延伸加工性が低くなる傾向がある。そこで従来は、破断伸びが高くなる30℃以上の温度、特に50℃から100℃の間での延伸が好まれていた。しかし、膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後延伸する方法により、30℃未満の低温であっても、十分な延伸加工性が得られること、しかもより微細で均一な孔が得られることを、本発明者は見出し、本発明を完成したのである。
【0012】
本発明は、PTFEを主体とするフッ素樹脂よりなり膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後、30℃未満で延伸して多孔質化することを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法(請求項1)を提供する。
【0013】
ここで、原材料として用いるフッ素樹脂薄膜とは、PTFEを主体とするフッ素樹脂よりなり、実質的に無孔質のものである。より欠陥の少ない多孔質フッ素樹脂薄膜を得るためには、原材料であるフッ素樹脂薄膜も欠陥の少ないものが望まれる。具体的には、ガーレー秒が5000秒以上のフッ素樹脂膜が好ましい。ここでガーレー秒とは、JIS−P8117等記載されている透気度(空気の透過量)を表す数値で、具体的には、100mlの空気が645cm2の面積を通過する時間(秒)を表す。膜が欠陥を有する場合は、その欠陥を通って空気が透過するので、ガーレー秒は小さくなるが、欠陥が少なくなるに従って空気が透過しにくくなり、ガーレー秒は増大する。ガーレー秒が5000秒以上のフッ素樹脂膜は、欠陥がほとんどないものである。従って、このフッ素樹脂膜を延伸して得られた多孔質フッ素樹脂薄膜も、欠陥がほとんどなく均一な系の微細孔からなる。
【0014】
又、原材料として用いるフッ素樹脂薄膜は、膜厚が50μm以下のものである。従来の方法では、PTFEを主体とするフッ素樹脂であっても膜厚が50μm以下の場合は、膜厚のムラにより延伸のムラや破断が起きやすく、又均一で微細な孔が得られにくい。しかし、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後に、30℃未満の低温で延伸することにより、膜厚が50μm以下どころか10μm以下の場合であっても、破断を防ぎながら高い延伸率を達成することができ、かつ均一で微細な孔が得られる。従って、この方法により製造された多孔質フッ素樹脂薄膜は、均一で微細な孔を有するとともに、高い気孔率でありかつ薄膜であるので、分離膜として高い処理能力を有する。
【0015】
PTFEを主体とするフッ素樹脂は、PTFEを通常50重量%以上含むものである。このフッ素樹脂に含まれる他のフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキル・ビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロ・トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、及びポリビニルフルオライド等の熱可塑性フッ素樹脂を挙げることができる。PTFEを主体としながらも、この例示のフッ素樹脂を含ませることにより、より欠陥が少ないフッ素樹脂薄膜が得られやすくなる。
【0016】
ここで、延伸によって伸びる特性を有する支持体としては、樹脂フィルムの延伸に一般的に使用されている装置、例えばロール延伸機、テンター延伸機又はブロー延伸機により延伸可能な材料からなり、30℃未満で100%以上の破断伸びを有し、延伸による伸びにムラがないフィルム等が挙げられる。中でも好ましくは、30℃未満での破断伸びが150%以上のフィルムであり、さらに好ましくは30℃未満での破断伸びが200%以上のフィルムである。具体的には、各種エラストマー、ポリオレフィン、フッ素樹脂等からなるフィルムや、これらの材料からなる多孔質フィルム等を挙げることができる。
【0017】
前記支持体へフッ素樹脂薄膜を固定する方法は特に限定されない。例えば、粘着剤や接着剤を介して固定する方法、支持体及び/又はフッ素樹脂薄膜を融点以上に加熱して融着する方法を用いることができる。
【0018】
前記支持体へフッ素樹脂薄膜が固定された後、延伸が行われる。延伸は、ロール延伸機、テンター延伸機、ブロー延伸機等の一般的な装置を用いて行うことができる。一軸延伸品、多軸延伸品のどちらでもよい。延伸の程度は、所望の孔径及び気孔率に応じて適宜調整されその範囲は限定されないが、本発明によれば、30℃未満の低温にても、大きな延伸を容易に行うことができ、その結果、高い気孔率が得られる。
【0019】
本発明は、前記延伸を、30℃未満で行うことを特徴とする。前記のように本発明者は、延伸を行う温度が30℃未満であると、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするような微細孔がより容易に形成されることを見出した。さらに、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後に延伸すれば(請求項1の製造方法)、PTFEの延伸加工性が低く従来技術では大きな延伸が困難であった30℃未満でも、高い延伸加工性が得られることを見出し、その結果、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするような微細孔を有するとともに、30%を超える気孔率を有し、優れた濾過処理効率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜をより容易に得ることができる方法を完成したのである。後述のように、この方法によれば、特許文献4に記載の条件に該当しない場合、例えばフッ素樹脂の融解熱量が47.8J/g以上の場合でも、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするような微細孔を有するとともに、30%を超える気孔率を有し、優れた濾過処理効率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を得ることができる。
【0020】
本発明において、多孔質フッ素樹脂薄膜の製造に用いられるフッ素樹脂は、PTFEを主体とするものである。PTFEを主体とするフッ素樹脂は、通常、PTFEを50重量%以上含むものを意味するが、中でも、PTFEを80重量%以上含むものが、PTFEの有する優れた特性がより顕著になるので好ましい(請求項2)。
【0021】
請求項3は、前記フッ素樹脂薄膜が、融解熱量が32J/g以上であるフッ素樹脂よりなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法である。ここで、フッ素樹脂の融解熱量とは、10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱、−10℃/分の速度で365℃から350℃まで冷却、350℃で5分間保持、−10℃/分の速度で350℃から330℃まで冷却、−1℃/分の速度で330℃から305℃まで冷却、及び−50℃/分の速度で305℃から245℃まで冷却、を順次行った後、10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱する際の296〜343℃間の吸熱量である。
【0022】
前記融解熱量の測定は、より具体的には、以下に示す条件で行われる。すなわち、室温から245℃まで50℃/分で加熱し、その後10℃/分で365℃まで加熱する(第一ステップ)。次に、350℃まで−10℃/分の速度で冷却、350℃で5分間保持、350℃から330℃まで−10℃/分の速度で冷却し、さらに330℃から305℃まで−1℃/分の速度で冷却する(第二ステップ)。次に−50℃/分の速度で305℃から245℃まで冷却した後、10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱する(第三ステップ)。この第三ステップにおける296〜343℃間の吸熱量を融解熱量とする。加熱や冷却、吸熱量等の測定は、好ましくは示差走査熱量計を用いて行われ、熱流束示差走査熱量計の測定では、サンプル量は、通常、10mgから20mg程度が好ましい。
【0023】
前記の方法により測定された融解熱量が32J/g以上である場合、フッ素樹脂薄膜の延伸加工性がさらに優れ、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とするとともに、30%を超えるような高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜をさらに容易に得ることができるので好ましい。融解熱量が32J/g未満の場合、延伸率とともに孔径が大きくなる傾向が強く、微細な孔が得られにくくなる傾向がある。なお、特許文献4に記載されているような従来技術では、融解熱量が47.8J/g以上の場合、均一な延伸が困難となり均一な孔径が得られにくく、破断が生じやすい問題があった。しかし、本発明によれば、融解熱量が47.8J/g以上の場合であっても均一な延伸が可能となる。この結果、フッ素樹脂の分子量のバラツキやグレード差があっても製品性能のバラツキが抑制されるので、工業的に非常に有用である。
【0024】
なおこの融解熱量は、フッ素樹脂の分子量と相関する。従って、前記の融解熱量の測定方法は、フッ素樹脂の分子量の管理に適用することができ、生産管理に非常に有用である。すなわち、フッ素樹脂の分子量が大きいほど結晶化が進行しにくいので、次に融解させるときの融解熱量が小さくなり、逆に、分子量が小さい程融解熱量が大きくなる。
【0025】
本発明の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法において、前記延伸の後、必要に応じて、支持体と多孔質フッ素樹脂薄膜は分離される。すなわち、多孔質フッ素樹脂薄膜に固定された支持体が除去される(請求項4)。支持体から多孔質化されたフッ素樹脂薄膜を剥離する方法としては、例えば、機械的に剥離する方法、接着剤や粘着剤を介して支持体とフッ素樹脂薄膜が固定されている場合は、接着剤や粘着剤を溶解する溶剤に多孔質フッ素樹脂薄膜が固定された支持体を浸漬して剥離する方法、これらを加熱して接着剤や粘着剤を軟化させて剥離する方法を挙げることができる。
【0026】
本発明は、以下に示すように、前記の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法に加えて、この製造方法により製造することができ、フィルターとして用いられ、微細な粒子の除去を可能にしかつ優れた処理効率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を提供する。
【0027】
請求項5は、ポリテトラフルオロエチレンを主体としガーレー秒が5000秒以上で膜厚が20μm未満のフッ素樹脂膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定された後、30℃未満で延伸して形成された多孔質フッ素樹脂薄膜であって、膜厚が20μm未満であり、かつ平均流量孔径が45nm以下であることを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜である。
【0028】
この多孔質フッ素樹脂薄膜は、PTFEを主体とするフッ素樹脂膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後30℃未満で延伸して多孔質化されたものであり、前記本発明の製造方法により製造することができるものである。前記の本発明の製造方法によれば、径0.1μm未満の微細粒子の除去を可能とする多孔質フッ素樹脂薄膜を容易に得ることができるが、フィルターとしてのこの性質は平均流量孔径により表すことができる。本発明の多孔質フッ素樹脂薄膜の平均流量孔径は45nm以下であり、径0.1μm未満の微細粒子を十分に除去できるものであり、又、前記本発明の製造方法により初めて製造することができたものである。
【0029】
この多孔質フッ素樹脂薄膜の原材料であるPTFEを主体とするフッ素樹脂膜は、ガーレー秒が5000秒以上のフッ素樹脂膜である。前記のように、ガーレー秒が5000秒以上のフッ素樹脂膜は、欠陥がほとんどないものであり、従って、このフッ素樹脂膜を延伸して得られた本発明の多孔質フッ素樹脂薄膜も、欠陥がほとんどなく均一な系の微細孔からなる。
【0030】
請求項5の多孔質フッ素樹脂薄膜は、膜厚が20μm未満であることを特徴とする。膜厚が20μm未満であることにより、分離膜としての大きな処理能力が可能になる。
【0031】
請求項6は、ガーレー秒が500秒以下であることを特徴とする請求項5に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜である。薄膜が欠陥を含まず均一な系の微細孔からなる場合は、ガーレー秒が小さいほど、フィルターとしての処理能力が大きい(処理効率が高い。)。この多孔質フッ素樹脂薄膜は、ガーレー秒が500秒以下であるので、分離膜として大きな処理能力を有するものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法によれば、膜厚が50μm以下の薄膜であっても、均一で微細な孔を有しかつ高い気孔率を有する多孔質フッ素樹脂薄膜を製造することができる。この方法により得ることができる本発明の多孔質フッ素樹脂薄膜は、膜厚が50μm以下でありかつ高い気孔率を有し、従ってフィルターとして高い処理効率を示すとともに、均一で微細な孔からなるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本発明を実施するための最良の形態を、具体的に説明する。なお、本発明はこの形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り他の形態へ変更することができる。
【0034】
本発明の製造方法に使用されるフッ素樹脂薄膜、すなわち、PTFEを主体とするフッ素樹脂よりなり膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜は、例えば、PTFEを主体とするフッ素樹脂粉末を分散媒中に分散したフッ素樹脂ディスパージョンを、板上に塗布し、その後、分散媒を乾燥させて製膜し、この皮膜をフッ素樹脂の融点以上に加熱して焼結することにより得ることができる。乾燥と焼結の加熱を同一工程で行ってもよい。
【0035】
フッ素樹脂ディスパージョンの分散媒としては、通常、水等の水性媒体が用いられる。フッ素樹脂粉末とはフッ素樹脂の微粒子の集合体であり、例えば、乳化重合により得ることができる。フッ素樹脂ディスパージョン中のフッ素樹脂粉末の含有量は、20重量%〜70重量%の範囲が好ましい。乾燥は、分散媒の沸点に近い温度又は沸点以上に加熱することにより行うことができる。
【0036】
フッ素樹脂ディスパージョンに用いるフッ素樹脂の分子量としては10万〜500万であることが好ましく、50万〜350万であればより好ましく、50万〜180万であれば更に好ましい。分子量が高すぎると気孔率が低下する傾向があり、分子量が低すぎると、ピンホールを生じる、延伸時に破れ易くなる等の傾向がある。
【0037】
前記の焼結は、フッ素樹脂をその融点以上に加熱して溶融する溶融工程、並びに、溶融された樹脂を、徐冷する工程、又は/及び、313℃以上321℃未満で10分以上保持する工程を含む方法により行うことが好ましい。この方法により得られたフッ素樹脂薄膜を使用すれば、均一な微細孔を有し気孔率の大きい多孔質フッ素樹脂薄膜をさらに容易に得ることができる。
【0038】
フッ素樹脂の融解熱量は、加熱分解や、電離放射線の照射により調整することができる。例えば、融解熱量が32J/g未満のフッ素樹脂に電離放射線を照射して融解熱量を32J/g以上とすることができる。この調整、すなわち、加熱分解や電離放射線の照射は、フッ素樹脂の製膜後や焼結の工程で行うこともできる。例えば、融解熱量が32J/g未満のフッ素樹脂のディスパージョンを製膜し焼結する工程で、加熱分解や電離放射線照射を行い、フッ素樹脂の融解熱量を32J/g以上に調整しても、前記の優れた効果が得られる。
【0039】
本発明の製造方法に用いられる、PTFEを主体とするフッ素樹脂よりなり膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、ボイドやクラック等の欠陥のより少ないものとするための製造方法として、平滑な箔上に、フッ素樹脂粉末を分散媒中に分散したフッ素樹脂ディスパージョンを塗布した後、前記分散媒の乾燥及びフッ素樹脂粉末の焼結を行い、その後、前記平滑な箔を除去する方法を挙げることができる。
【0040】
平滑な箔とは、フッ素樹脂ディスパージョンが塗布される表面に孔や凹凸が観測されない平滑なフィルムである。平滑な箔の厚さの範囲は特に限定されないが、基体上に塗布したフッ素樹脂ディスパージョン上に気泡が入らないように被せる操作が容易に行われるような柔軟性を有する厚さが望ましい。又、薄膜の形成後、平滑な箔の除去を行う場合は、除去が困難とならない厚さが望ましい。例えば、平滑な箔を溶解除去する場合は、容易に溶解除去される厚さが望まれる。平滑な箔の除去の方法は特に限定されないが、平滑な箔が金属箔の場合は酸等により溶解除去する方法が例示される。
【0041】
平滑な箔としては金属箔が好ましい。金属箔は、フッ素樹脂ディスパージョン上に気泡が入らないように被せる操作が容易に行われるような柔軟性を有し、薄膜の形成後酸等による溶解除去が容易である。中でもアルミ箔は、柔軟性及び溶解除去の容易さ、さらには入手の容易さの点でより好適である。
【0042】
ボイドやクラック等の欠陥を低減する効果は、フッ素樹脂ディスパージョンに、高濃度条件でゲル化する水溶性ポリマーを添加することによっても得られる。PTFEのディスパージョンに、前記熱可塑性フッ素樹脂とこの水溶性ポリマーをともに添加することにより、この効果はより顕著になる。
【0043】
この水溶性ポリマーがノニオン性であれば、フッ素樹脂の分散性への影響がないか少ない。従って、水溶性ポリマーとしては、アニオン性、カチオン性よりもノニオン性のものが好ましい。又、このノニオン性の水溶性ポリマーの分子量は1万以上が好ましい。分子量を1万以上とすることにより、乾燥の際、水が完全に除去される前にゲル化して膜を形成するので、水の表面張力に起因するクラックの発生を抑制することができる。該水溶性ポリマーとしては、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、デンプン、アガロース等を挙げることができる。
【0044】
フッ素樹脂を塗布する方法や平滑な箔の膜厚のバラツキや撓みによっては、塗布装置の塗工治具が箔の表面に直接接触して箔表面を傷つけ、結果的にフッ素樹脂薄膜に傷が転写されて表面凹凸の発生や、ピンホールなどの欠陥が発生することがある。そこで、潤滑剤として陰イオン性界面活性剤を0.5mg/ml以上、より好ましく2.5mg/ml以上加えると摩擦係数を低くできるので、表面凹凸やピンホールなどの欠陥の発生を抑制することができる
【0045】
陰イオン性の界面活性剤としては、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・カルボン酸塩などのカルボン酸型、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・スルホン酸塩などの硫酸エステル型、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・リン酸塩などのリン酸エステル型等の界面活性剤を挙げることができる。ただ、陰イオン性の界面活性剤の添加によりフッ素樹脂粉末の分散性が落ちるので、界面活性剤を配合した場合は配合後、沈降、分離等が生じない時間内に生産を完了させるか、常に超音波などの撹拌を加え続けながら生産する方法が好ましい。
【実施例】
【0046】
先ず、以下の実施例、比較例において行った各種測定の方法について説明する。
【0047】
[透気度(ガーレー秒)の測定方法]
JIS P 8117(紙及び板紙の透気度試験方法)に規定のガーレー透気度試験機と同一構造の王研式透気度測定装置(旭精工社製)を用いて測定した。測定結果は、ガーレー秒で表す。
[平均流量孔径の測定方法]
細孔分布測定器(パームポロメータ CFP−1500A:Porous Materials,Inc製)により、液体として、GALWICK(プロピレン,1,1,2,3,3,3酸化ヘキサフッ酸(Porous Materials,Inc製)を用いて、測定した。具体的には、次のようにして求められる。先ず、膜に加えられる差圧と膜を透過する空気流量との関係を、膜が乾燥している場合と膜が液体で濡れている場合について測定し、得られたグラフをそれぞれ、乾き曲線及び濡れ曲線とする。乾き曲線の流量を1/2とした曲線と、濡れ曲線との交点における差圧をP(Pa)とする。次の式により、平均流量孔径を求める。
平均流量孔径d(μm)=cγ/P
ここで、cは定数で2860であり、γは液体の表面張力(dynes/cm)である。
【0048】
[融解熱量の測定方法]
PTFEのサンプルを10mgから20mgを採り、必要に応じてアルミセルに封止する。ここで、PTFEは可能な限り収縮変形できるようにフリーな状態に保つことが重要であるので、セルを潰さないか潰し切らないようにする。
【0049】
このサンプルについて、以下の条件で加熱や冷却を行う。
室温から245℃まで50℃/分で加熱。その後10℃/分で365℃まで加熱する(第一ステップ)。
次に−10℃/分の速度で350℃まで冷却し、350℃で5分間保持する。次に−10℃/分の速度で350℃から330℃まで、−1℃/分の速度で330℃から305℃まで冷却する(第二ステップ)。PTFEの分子量が小さいほど結晶化が促進されやすく、第二ステップでの発熱量が大きくなる傾向がある。次に−50℃/分の速度で305℃から245℃まで冷却する。
次に10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱する(第三ステップ)。
【0050】
0.5sec/回でサンプリングタイムを行い、島津製作所社製熱流束示差走査熱量計DSC−50を使用し吸熱カーブ、発熱カーブを求める。この吸熱、発熱カーブより、吸熱量及び発熱量を求めることができるが、融解熱量は296℃から343℃の区間の吸熱量を積分して求めた値である。
【0051】
[IPAバブリングポイントの測定方法]
PTFE多孔質体をイソプロピルアルコールに含浸し、管壁の孔内をイソプロピルアルコールで充満した後、一方の面より徐々に空気圧を負荷したときに、初めて気泡が反対面より出てくるときの圧力を、IPAバブリングポイントとした。
【0052】
比較例1
日東電工社製PTFEフィルム膜厚20μm(No.920UL)に電子線を照射し、融解熱量を42J/gに調整した。この膜を370℃で5分間加熱した後、315℃で8時間加熱した。この膜は加熱前よりも長さ方向に収縮し、膜厚は約50μm増大した。次に、この膜を圧延ロールにて膜厚を13μmに加工した。
【0053】
この膜を幅50mmの住友スリーエム社製PTFE粘着テープ(スコッチ5490)に挟んで固定した。次に、この試験体を、引張試験器を用いて、温度60℃で、テープの幅方向に200%延伸(チャック間隔20mm、ストローク40mm)した。これを溶剤(MEK)に漬けてPTFEテープから膜を分離し取り出した。次に延伸された方向とPTFEテープの長さ方向が一致するようにしてこの膜を、再度住友スリーエム社製PTFE粘着テープ(スコッチ5490)に挟んで固定した。これを温度60℃で、テープの幅方向に100%延伸(チャック間隔20mm、ストローク20mm)した。その後、これを溶剤(MEK)に漬けてPTFEテープから膜を分離し取り出した。この膜の延伸後の厚さは9μmだった。又、ガーレー秒は150秒、平均流量孔径は55nmであった。
【0054】
実施例1
融解熱量が50J/gのPTFEディスパージョン30J(三井・デュポンフロロケミカル社製)、MFAラテックス(ソルベイソレクシス社製、PFAディスパージョンD5010)、及びPFAディスパージョン920HP(三井・デュポンフロロケミカル社製)を用いて、MFA/(PTFE+MFA+PFA)(フッ素樹脂固形分の体積比)及びPFA/(PTFE+MFA+PFA)(フッ素樹脂固形分の体積比)が各2%であるフッ素樹脂ディスパージョンを調整した。更に分子量200万のポリエチレンオキサイドを濃度0.003g/ml、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン(花王社製20T)を10mg/mlとなるように添加してフッ素樹脂ディスパージョンを調整した。
【0055】
厚さ50μmのアルミ箔をガラス平板の上に皺がないように広げて固定し、前記フッ素樹脂ディスパージョンを滴下した後、日本ベアリング社製のステンレス鋼製のスライドシャフト(ステンレスファインシャフトSNSF型、外径20mm)を滑らすようにしてフッ素樹脂ディスパージョンをアルミ箔一面に均一になるように伸ばした。この箔を80℃で60分乾燥、250℃で1時間加熱、340℃で1時間加熱の各工程を順次経た後、自然冷却し、アルミは箔上に固定されたフッ素樹脂薄膜を成形させた。フッ素樹脂薄膜が成形される前後のアルミ箔の単位面積あたりの重量差とフッ素樹脂の真比重(2.25g/cm3)より算出したフッ素樹脂薄膜の平均厚さは3μmであった。
【0056】
次に920HPを蒸留水で4倍の容積に薄めたPFAディスパージョンに更に分子量200万のポリエチレンオキサイドを濃度0.003g/ml、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン(花王社製20T)を10mg/mlとなるように添加した4倍希釈のPFAディスパージョンを調整した。
【0057】
アルミは箔上に固定されたフッ素樹脂薄膜をガラス平板の上に皺がないように広げて固定し、前記で得られた4倍希釈のPFAディスパージョンを滴下した後、前記と同じ日本ベアリング社製のステンレス鋼製のスライドシャフトを滑らすようにして4倍希釈のPFAディスパージョンをアルミ箔一面に均一になるように伸ばしながら、水分が乾燥しない間に、孔径0.45μm、厚さ80μmの延伸PTFE多孔質体(住友電工ファインポリマー社製、商品名:ポアフロンFP−045−80)(IPA−BP:150kPa、気孔率:70%、ガーレー秒:9.1秒)を被せた。
【0058】
その後80℃で60分、乾燥、250℃で1時間加熱、320℃で1時間加熱、317.5℃で8時間加熱の各工程を経た後、自然冷却して延伸PTFE多孔質体上にPTFEよりも融点の低い熱可塑性のPFAでフッ素樹脂薄膜が接着され、更にその上にアルミ箔が固定された複合体を得た。次いで、アルミ箔を塩酸によって溶解除去して、試験体を得た。
【0059】
この試験体のガーレー秒は5000秒以上で、フッ素樹脂薄膜側から室温でエタノールを接触させてみたが浸透するような孔は無く、エタノールが浸透しないフッ素樹脂薄膜を含むフッ素樹脂複合体であることが示された。
【0060】
次に引張試験器を用いて、この試験体を、温度25℃、チャック間55mm、ストローク165mm(延伸率300%)で幅方向に延伸した後、更に同じ引張試験器で温度25℃、チャック間55mm、ストローク88mm(延伸率60%)で幅方向と直交する方向へ延伸した。延伸後の多孔質フッ素樹脂複合体のガーレー秒は80秒であった。IPAバブリングポイントは1180kPaであり、平均流量孔径は27nmであった。
【0061】
実施例2
実施例1と、同じ手順、同条件にて同様な試験体を得た。次に引張試験器を用いて、この試験体を、温度15℃、チャック間55mm、ストローク165mm(延伸率300%)で幅方向に延伸した後、更に同じ引張試験器で温度15℃、チャック間55mm、ストローク88mm(延伸率60%)で幅方向と直交する方向へ延伸した。延伸後の多孔質フッ素樹脂複合体のガーレー秒は360秒であった。IPAバブリングポイントは測定限界の3000kPa以上であり、平均流量孔径は測定限界の15nm未満であった。
【0062】
比較例2
日東電工社製PTFEフィルム膜厚20μm(No.920UL)に電子線を照射し、融解熱量を42J/gに調整した。この膜を370℃で5分間加熱した後、315℃で8時間加熱した。この膜は加熱前よりも長さ方向に収縮し、膜厚は約50μmに増大した。次に、この膜を圧延ロールにて膜厚を13μmに加工した。60℃で延伸を試みたところ、100%に満たない延伸率で破断した。
【0063】
比較例3
融解熱量が50J/gのPTFEディスパージョン30J(三井・デュポンフロロケミカル社製)とMFAラテックス(PFAディスパージョンD5010)、および920HPを用いて、MFA/(PTFE+MFA+PFA)(フッ素樹脂固形分の体積比)及びPFA/(PTFE+MFA+PFA)(フッ素樹脂固形分の体積比)が各2%であるフッ素樹脂ディスパージョンを調整し、更に分子量200万のポリエチレンオキサイドを濃度0.003g/ml、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン(花王社製20T)を10mg/mlとなるように添加してフッ素樹脂ディスパージョンを調整した。
【0064】
厚さ50μmのアルミ箔をガラス平板の上に皺がないように広げて固定し、前記フッ素樹脂ディスパージョンを滴下した後、日本ベアリング社製のステンレス鋼製のスライドシャフト(ステンレスファインシャフトSNSF型、外径20mm)を滑らすようにしてフッ素樹脂ディスパージョンをアルミ箔一面に均一になるように伸ばした。この箔を80℃で60分乾燥、250℃で1時間加熱、340℃で1時間加熱、317.5℃で1時間加熱の各工程を経た後、自然冷却し、アルミは箔上に固定されたフッ素樹脂薄膜を成形させた。フッ素樹脂薄膜が成形される前後のアルミ箔の単位面積あたりの重量差とフッ素樹脂の真比重(2.25g/cm3)より算出したフッ素樹脂薄膜の平均厚さは3μmであった。
【0065】
次いで、アルミ箔を塩酸によって溶解除去して、試験体を得た。この試験体について引張試験器を用いて延伸を試みたが、薄すぎて皺になりやすい等取扱いが難しい上、チャックで破れる等して延伸することができなかった。
【0066】
比較例4
実施例1と、同じ手順、同条件にて同様な試験体を得た。次に引張試験器を用いて、この試験体を、温度60℃、チャック間55mm、ストローク165mm(延伸率300%)で幅方向に延伸した後、更に同じ引張試験器で温度60℃、チャック間55mm、ストローク88mm(延伸率60%)で幅方向と直交する方向へ延伸した。延伸後の多孔質フッ素樹脂複合体のガーレー秒は21秒であった。IPAバブリングポイントは745kPaであった、平均流量孔径は55nmであった。
【0067】
フッ素樹脂薄膜の延伸を、支持体に固定せずに行った比較例2、3では、延伸時に、2倍に満たない延伸倍率で破断する、チャックで破れる等の問題が生じ、延伸することができなかった。比較例1、4では、フッ素樹脂薄膜の延伸を、支持体に固定した後行ったが、延伸を60℃で行ったので、平均流量孔径45nm以下の多孔質フッ素樹脂薄膜は得られなかった。一方、フッ素樹脂薄膜の延伸を、支持体に固定した後行い、かつ延伸を30℃未満で行った実施例1、2では、容易に大きな延伸を行うことができ、かつ、特許文献4に記載の条件(融解熱量が、47.8j/g未満)に該当しない融解熱量を有するフッ素樹脂薄膜を用いたにも係わらず、平均流量孔径45nm以下と孔径が小さく、又ガーレー秒が小さい。従って処理能力が大きい(処理効率が高い)多孔質フッ素樹脂薄膜が得られた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンを主体とするフッ素樹脂よりなり膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後、30℃未満で延伸して多孔質化することを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法。
【請求項2】
ポリテトラフルオロエチレンを主体とするフッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンを80重量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法。
【請求項3】
融解熱量を、10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱、−10℃/分の速度で365℃から350℃まで冷却、350℃で5分間保持、−10℃/分の速度で350℃から330℃まで冷却、−1℃/分の速度で330℃から305℃まで冷却、及び−50℃/分の速度で305℃から245℃まで冷却、を順次行った後、10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱する際の296〜343℃間の吸熱量としたとき、前記フッ素樹脂薄膜が、融解熱量が32J/g以上であるフッ素樹脂よりなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記延伸の後、前記支持体と多孔質フッ素樹脂薄膜を分離し前記支持体を除去する工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法。
【請求項5】
ポリテトラフルオロエチレンを主体としガーレー秒が5000秒以上で膜厚が20μm未満のフッ素樹脂膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定された後、30℃未満で延伸して形成された多孔質フッ素樹脂薄膜であって、膜厚が20μm未満であり、かつ平均流量孔径が45nm以下であることを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜。
【請求項6】
ガーレー秒が500秒以下であることを特徴とする請求項5に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜。
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンを主体とするフッ素樹脂よりなり膜厚が50μm以下のフッ素樹脂薄膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定した後、30℃未満で延伸して多孔質化することを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法。
【請求項2】
ポリテトラフルオロエチレンを主体とするフッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンを80重量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法。
【請求項3】
融解熱量を、10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱、−10℃/分の速度で365℃から350℃まで冷却、350℃で5分間保持、−10℃/分の速度で350℃から330℃まで冷却、−1℃/分の速度で330℃から305℃まで冷却、及び−50℃/分の速度で305℃から245℃まで冷却、を順次行った後、10℃/分の速度で245℃から365℃まで加熱する際の296〜343℃間の吸熱量としたとき、前記フッ素樹脂薄膜が、融解熱量が32J/g以上であるフッ素樹脂よりなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記延伸の後、前記支持体と多孔質フッ素樹脂薄膜を分離し前記支持体を除去する工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜の製造方法。
【請求項5】
ポリテトラフルオロエチレンを主体としガーレー秒が5000秒以上で膜厚が20μm未満のフッ素樹脂膜を、延伸によって伸びる特性を有する支持体に固定された後、30℃未満で延伸して形成された多孔質フッ素樹脂薄膜であって、膜厚が20μm未満であり、かつ平均流量孔径が45nm以下であることを特徴とする多孔質フッ素樹脂薄膜。
【請求項6】
ガーレー秒が500秒以下であることを特徴とする請求項5に記載の多孔質フッ素樹脂薄膜。
【公開番号】特開2010−94579(P2010−94579A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265387(P2008−265387)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
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