説明

多孔質ポリマーコーティングを含む疎油性膜構造体

【課題】衣服用に適した空気透過性の複合膜を提供する。
【解決手段】第1の面17とその反対側の第2の面18を有する空気透過性の疎水性膜16と、前記膜全体に適用された疎油性のコンフォーマルコーティング28と、前記第1の面及び第2面の少なくとも1つの上に適用された多孔質ポリマーコーティング29と、前記多孔質ポリマーコーティング上に適用された粒子のパターン化層40含んでなる膜構造体12。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、一般に複合膜構造体に関し、より特定的には、多孔質ポリマーコーティングが設けられた疎油特性を有する複合多孔質膜に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質膜がその膜を作成する材料によって制限される少なくとも1つの性質を有し得ることは公知である。例えば、限定されることはないが衣服、アパレル、テントの壁、寝袋及び包装材料のような物品に使用される延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)材料から製造された多孔質膜は優れた疎水性を有する。従って、ePTFE膜は比較的低い挑戦(challenge)圧力で防水性であると考えられる。しかし、このePTFE膜はその多孔性のために油を吸収する傾向がある。油の吸収は、膜の一部分が防水性であると考えられなくなる程度に油を吸収した膜の領域の疎水性に影響を及ぼし得る。
【0003】
ePTFE膜を油による汚染から保護するための公知の1つの方法は、ePTFE膜に連続的な親水性フィルムを施してePTFE膜の一面を油から保護することである。しかし、この構造体は空気透過性ではなく、また親水性フィルムは膜を通って湿気を導くことができるように湿気を含有しなければならない。親水性フィルム中に湿気が存在すると衣服は重くなる。親水性フィルムを有する膜を含む衣服を着用する人は、その親水性フィルムが、殊に涼しい環境で湿気にさらされ着用者の身体に対してその湿気を捕捉すると、不快に感じることがある。かかる不快感は着用者により「湿ったべとべとする」感覚と説明されている。かかる不快感は、衣服の内側から湿気を運び去る役割をし得る、衣服を通り抜ける空気又は蒸気の欠如によってさらに悪化し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7247374号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、膜構造体が提供される。この膜構造体は、第1の面及び反対側の第2の面を有する空気透過性の疎水性膜を含んでいる。疎油性のコンフォーマルコーティングが膜全体に設けられている。また、多孔質ポリマーコーティングが膜の第1の面及び/又は第2の面上に設けられている。粒子のパターン化層が多孔質ポリマーコーティング上に設けられている。
【0006】
別の実施形態では、物品が提供される。この物品は第1の層及び第2の層を含んでいる。第1の層は織物を含み、第2の層は第1の面と反対側の第2の面を有する空気透過性の疎水性膜を含んでいる。疎油性のコンフォーマルコーティングが膜全体に設けられている。多孔質ポリマーコーティングが膜の第1の面及び/又は第2の面上に設けられている。粒子のパターン化層が多孔質ポリマーコーティング上に設けられている。
【0007】
さらに別の実施形態では、膜構造体を作成する方法が提供される。第1の面及び反対側の第2の面を有する空気透過性の疎水性膜を準備する。この膜を疎油性のコンフォーマルコーティングで被覆して疎油特性を膜に付与する。膜の第1の面及び/又は第2の面を多孔質ポリマーコーティングで被覆する。粒子のパターン化層を多孔質ポリマーコーティング上に設ける。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、代表的な膜構造体の一部分の拡大概略図である。
【図2】図2は、図1に示した膜構造体の領域2に沿った部分の拡大断面図である。
【図3】図3は、図2に示した膜構造体に設けられた代表的な不連続なパターン化層の拡大図である。
【図4】図4は、図2に示した膜構造体の領域4に沿った分解断面図である。
【図5】図5は、図4に示した膜構造体の拡大端面図である。
【図6】図6は、図4に示した膜構造体を作成する代表的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載する実施形態は、限定されることはないが衣服、アパレル、テントの壁、寝袋及び包装材のような物品と共に使用し得る膜構造体を提供する。ここで、膜構造体は油汚染から保護されると同時に空気透過性で防水性である。より具体的には、本明細書に記載する実施形態は、第1の面と反対側の第2の面を有する空気透過性の疎水性膜を含む膜構造体を含む。疎油性のコンフォーマルコーティングが膜全体に設けられている。多孔質ポリマーコーティングが膜の第1の面及び/又は第2の面上に設けられている。粒子のパターン化層が多孔質ポリマーコーティング上に設けられている。このように、膜構造体は、空気透過性、防水性、通気性及び疎油性のような様々な所望の機能性を有するように処理されている。かかる処理はまた、膜構造体の機械的安定性、摩耗耐久性、表面薬品吸着性、帯電防止性、抗菌性、生体親和性及び汚れ耐性を増強することもできる。
【0010】
図1は、限定されることはないが衣服、アパレル、テントの壁、寝袋及び包装材のような物品に使用することができる複合膜構造体12の代表的な実施形態の概略図である。複合膜構造体12は水蒸気透過を促進し、しかも風よけ性、防水性、かつ空気透過性である。複合膜構造体12はまた、機械的安定性、摩耗耐久性、表面薬品吸着性、帯電防止性、抗菌性、生体親和性及び汚れ耐性も高める。例えば、複合膜構造体12は疎水性で疎油性であり、汗の形態の油を含有する体液のような汚染性物質に対する保護を提供する。
【0011】
代表的な実施形態では、用語「水蒸気透過」は、複合膜構造体12のような構造体を通り抜ける水蒸気の通過を説明するのに使用する。用語「防水性」は、複合膜構造体12が水のような挑戦(challenge)液体により「湿潤」又は「浸潤」されないで、複合膜構造体12を通る挑戦液体の貫通を防止することを説明するために使用する。用語「風よけ性」は、水約0.5インチの差圧低下(differential pressure drop)で約3立方フィート/分(CFM)/1平方フィートを超える空気の貫通を実質的に防止する複合膜構造体12の能力を説明するのに使用するが、構造体12は積層織物を着用する人の快適さレベルを増強促進するある程度の空気透過性を有している。用語「空気透過性」は、比較的に小量、例えば約3CFM/平方フィート未満の空気が通過することを許容する複合膜構造体12の能力を説明するのに使用する。用語「疎油性」は、油、グリース、石けん、洗浄剤又は汗のような体液を吸収することによる汚染に対して抵抗性の材料を説明するのに使用する。
【0012】
複合膜構造体12は、第1の面17及び反対側の第2の面18を有する未処理又は未変性の疎水性膜16を含んでいる。膜16は多孔質、好ましくは微小多孔質であり、複数のフィブリル24により相互に連結された複数の節22の三次元マトリックス又は格子型構造体を有する。膜16は、限定されることはないが延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)又はPTFE織物のような適切な材料から製造される。一実施形態では、ePTFEは少なくとも部分的に焼結されている。一般に、少なくとも部分的に焼結されているフィブリル24の大きさは、フィブリル24の長手方向に対して垂直な方向で見た直径が約0.05ミクロン〜約0.5ミクロンの範囲である。
【0013】
節22及びフィブリル24の表面は、膜16の両面17及び18間で蛇行した通路として完全に膜16を貫通して延びる多数の相互に連結する気孔26を画定する。一実施形態では、膜16の気孔26の平均の大きさSは微小多孔質とみなすのに充分であるが、あらゆる気孔の大きさを使用することができる。1つの代表的な実施形態では、膜16の気孔26に適した平均の大きさSは約0.01ミクロン〜約10ミクロンである。別の実施形態では、気孔26の適切な平均の大きさSは約0.1ミクロン〜約5.0ミクロンである。
【0014】
一実施形態では、膜16を製造するには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉末粒子(DuPontから名称TEFLON(登録商標)微細粉末樹脂として入手可能)と潤滑剤の混合物を押し出す。次に、この押出物をカレンダー加工する。このカレンダー加工した押出物を次に、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの方向に「膨張」又は延伸して、三次元マトリックス又は格子型構造体として節22を連結するフィブリル24を形成する。用語「延伸(膨張した)」とは、永久歪み又は伸びをフィブリル24に導入するためにその材料の弾性限界を越えて充分に延伸したことを意味する意図である。一実施形態では、膜16を加熱又は「焼結」してePTFE材料内の残留応力を低減し最小にする。しかし、代わりの実施形態では、膜16は、その考えられる用途に適当なように焼結しないか、又は部分的に焼結する。
【0015】
他の材料及び製造方法を使用して、開放気孔構造を有する適切な膜16を形成することが可能である。例えば、他の適切な材料としては、限定されることはないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、アクリル系及びメタクリル系ポリマー、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース系ポリマー、並びにこれらの組合せがある。多孔質膜を作成するための他の適切な製造方法としては、任意の適切な材料の発泡成形(foaming)、スカイビング(skiving)又はキャスティングがある。
【0016】
ePTFEは優れた疎水性を有するが、親油性ではないことが知られている。すなわち、膜16を作成するのに使われるePTFEは油を吸収することによる汚染に対して感受性である。油を吸収すると、膜16の油で汚染された領域は、その気孔26が水のような挑戦液体(challenge liquid)により容易に濡らされる可能性があるので、「汚れている」と考えられ、膜16はもはや防水性とは考えられない。汚れてしまった膜16の液体浸透抵抗性は、ある挑戦流体又は液体がその膜を「濡らす」ことができる場合、失われたとされ得る。膜16は通常疎水性であるが、挑戦液体が初め膜16の主要な面(major side、外面)に接触しこれを濡らし、その後膜16内の気孔26を画定する表面に接触しこれを濡らす場合、その液体浸透抵抗性を失う。相互に連結する気孔26を画定する表面の進行性の湿潤は、湿潤又は挑戦液体が膜16の反対側の主要な面に到達するまで起こる。挑戦液体が膜16を濡らすことができなければ、液体浸透抵抗性が保持されている。
【0017】
図2は、複合膜構造体12の領域2(図1に示した)に沿った部分の拡大概略断面図である。代表的な実施形態では、第1のコーティング層28と第2のコーティング層29が各々膜16上に形成される。第1のコーティング層28は、膜16の空気透過性を損なうことなく、膜16の疎油性と疎水性を増強し得る疎油性のコンフォーマルコーティングである。例えば、コーティング層28は、膜16の表面エネルギーを低下させて、油及び油性の汚染物質が膜16を濡らし気孔26に入る可能性の低減を促進し得る。コーティング層28はまた、油及び/又は油性の汚染物質の膜16に対する接触角を増大し得る。コーティング層28は合体した疎油性フルオロポリマー固体を含む。
【0018】
コーティング層28は他のフルオロポリマー材料を含んでいてもよいが、幾つかの実施形態ではコーティング層28はフルオロカーボン側鎖をもつアクリル系ポリマーを有するフルオロポリマーを含むコーティング組成物から形成される。これらの側鎖は比較的低い表面張力を有することが判明しているため、これらが膜16から延び出ているのが望ましい。例えば、コーティング層28に使用される疎油性フルオロポリマーは、幾つかの実施形態では、限定されることはないが、E.I.DuPont de Nemours and Company,Wilmington,Delawareから入手可能なZonyl(登録商標)8195、7040、8412及び/又は8300の水系分散液のようなペルフルオロアルキルアクリル系コポリマー及び/又はペルフルオロアルキルメタクリル系コポリマー固体の安定化された水混和性の分散液の形態である。その他の適切なフルオロポリマーとしては、限定されることはないが、フッ素化されたアクリレート、フッ素化されたメタクリレート、フッ素化されたn−アルキルアクリレート及びフッ素化されたn−アルキルメタクリレートがある。幾つかの実施形態では、疎油性フルオロポリマーは、重合反応で使用したアセトン及びエチレングリコール又はその他の水混和性溶媒及び界面活性剤も比較的小量で含有し得る。
【0019】
コーティング層28を形成するコーティング組成物は、一実施形態では、コーティング組成物の総重量を基準にして約0.1wt%〜約10wt%の範囲の量の疎油性フルオロポリマーを含む。別の実施形態では、コーティング組成物は、約0.5wt%〜約1.5wt%の範囲の疎油性フルオロポリマーを含む。コーティング組成物は水以外の他の量の溶媒を含み得るが、幾つかの実施形態では、コーティング層28を形成するコーティング組成物は、約40wt%〜約80wt%の量の水以外の溶媒を含む。例えば、幾つかの実施形態では、コーティング組成物は約50wt%〜約75wt%の範囲の量の水以外の溶媒を含む。コーティング組成物は他の量の安定化剤を含み得るが、幾つかの実施形態ではコーティング層28を形成するコーティング組成物は約5wt%〜50wt%の範囲の量の安定化剤を含む。例えば、幾つかの実施形態ではコーティング組成物は約15wt%〜約25wt%の範囲の量の安定化剤を含む。
【0020】
コーティング層28を形成するコーティング組成物は、気孔26がコーティング組成物中の疎油性フルオロポリマー固体で被覆されるように、コーティング組成物が膜16内の気孔26を濡らすことを可能とする表面張力と相対接触角を有する。しかし、幾つかの実施形態では、膜16は、コーティング組成物を膜16に塗布(適用)する前に、溶媒を含有する溶液で濡らされる。かかる実施形態では、コーティング組成物は膜の気孔26を通り抜け、膜16の表面を「濡らす」。幾つかの実施形態では、安定化剤及び/又は溶媒を用いて、疎油性フルオロポリマー固体の分散液を所定の固形分まで希釈する。安定化剤対溶媒の比を上昇させて、コーティング組成物の安定性を上昇させるのが望ましいであろう。しかし、膜16の湿潤及び膜気孔26内へのコーティング組成物の流入を確実にするために十分な溶媒が存在しなければならない。
【0021】
コーティング組成物を膜16に適用塗布して、節22とフィブリル24の表面の実質的に全てが少なくとも部分的に濡れ、かつ膜の気孔26は塞がれないようにする。このコーティング組成物は、膜の気孔26を画定する節22とフィブリル24の表面に接着し合致する。コーティング組成物は、膜16の疎油性を増大させるために、節22又はフィブリル24の表面全体を完全に包み込むか又は連続的である必要はない。その後、コーティング組成物は、疎油性フルオロポリマーが流動し合体するように、また安定化剤と溶媒が除去されるように、膜16を加熱することにより硬化させる。この加熱の間、疎油性フルオロポリマーの熱移動度のため、フルオロポリマーは可動であって、節22とフィブリル24の表面の周辺を流れ、かみ合い、接着することが可能であり、従って合体してコーティング層28を形成することが可能である。また、比較的高温において、疎油性フルオロポリマーの移動度のため、フルオロカーボン側鎖が、節22とフィブリル24の表面から離れる方向に延びるように自身を配向することも可能である。
【0022】
コーティング28は、膜16内の気孔26を画定する節22とフィブリル24の表面に接着し合致する。コーティング28は、膜16の材料の疎油性を改良又は改変して、油、汗中の身体油、脂肪性物質、石けん、洗浄剤様界面活性剤及びその他の汚染性物質のような汚染性物質を吸収することによる汚染に抵抗することを促進する。また、複合膜構造体12は摩擦、接触、折り畳み、曲げ、研磨剤との接触又は洗濯にかけたとき永続的に液体浸透抵抗性のままである。
【0023】
代表的な実施形態では、第2のコーティング29は、膜16がコーティング28で処理された後に膜16の第1の面17上に設けられた多孔質ポリマーコーティングである。或いは、第2のコーティング29は第2の面18及び/又は第1の面17上に設け得る。コーティング29は、面17及び/又は18上に接着することができるポリウレタンのような多孔質ポリウレタンであり得る。コーティング29に、例えば極性基を含ませると、コーティング29の面17及び/又は18上への接着が容易になる。この目的に適した極性基の幾つかのタイプとしては、カルボン酸、アミン、エステル、アミド、ヒドロキシル、ウレタン、尿素及び/又は尿素基を挙げることができる。或いは、非極性(例えば、炭化水素又はフルオロ炭化水素)ポリマーコーティングを使用してもよい。
【0024】
コーティング29はビニルポリマーも含み得る。ビニルポリマーを合成することができる原料のビニルモノマー単位の代表的なものとしては、限定されることはないが、スチレン(例えば、ポリスチレン又はスチレンのコポリマー)、酢酸ビニル(例えば、ポリ(酢酸ビニル)又は酢酸ビニルのコポリマー)、エチレン(例えば、ポリエチレン又はエチレンのコポリマー)、プロピレン(例えば、ポリプロピレン又はプロピレンのコポリマー)、ビニルトルエン(例えば、ポリビニルトルエン又はビニルトルエンのコポリマー)、塩化ビニルのような塩素を含有するビニルモノマー(例えば、ポリ(塩化ビニル)又は塩化ビニルのコポリマー)及び/又はフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシビニルモノマー及びフッ化ビニリデンのようなフッ素を含有するビニルモノマー(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン))、並びにかかるモノマーの任意のポリマー又はコポリマーがある。ビニルポリマーはホモポリマーであることができるか、或いは、2種以上の異なるタイプのビニルモノマー(単位)から誘導されたコポリマーであることができる。本発明で考えられるいろいろな種類のコポリマーの幾つかの例としては、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ランダムコポリマー及びこれらの組合せがある。ビニルポリマーの少なくとも一部分がアクリレート基を含有する1種以上のモノマーから誘導され得る。一実施形態では、ビニルポリマーは非アクリレート単位及びアクリレート単位の両方からなる。別の実施形態では、ビニルポリマーは完全にアクリレート単位から構成され、ここでアクリレート単位は全てが化学的に同一であってもよいし(すなわち、ホモポリマー)、又は化学的に異なっていてもよい(すなわち、コポリマー、ターポリマー又はより高次のポリマー系)。
【0025】
一実施形態では、コーティング29は、例えばフィルムとして予め成形され、膜16上にすぐに適用できる固体形態であり得る。本明細書で使用する場合、組成物の「固体形態」という用語は、流動せず、局在化された圧力により凹むことができず、かつ典型的な(標準)条件下でその形態を厳格に保つ、組成物の1つの形態を意味するために使用する。組成物は熱可塑性又は熱硬化性材料の性質を有することができる。或いは、コーティング29は、膜16上にコーティング29を適用する前又はその間非固体形態(例えば、液体又はペースト)であることができる。しかし、コーティング29は、固体形態でないとき、化学的変化により固化可能であるという性質を有する。本明細書に記載する場合、「化学的変化」は、放射線、熱、又は化学的硬化のような工程により提供することができるコーティング29の化学結合構造の変化である。従って、コーティング29が非固体状態にある場合、固化を可能にするのに適当な化学的機能性を保有する。固化プロセスはまた、コーティング29(又はその溶液)の膜16上での単なる乾燥を含むこともできる。
【0026】
図3は、膜構造体12(図1及び2に示した)に適用された複数の粒子とポリマー結合材から形成された不連続なパターン化層40の拡大図である。図4は、領域4(図2に示されている)に沿った膜構造体12の分解断面図であり、膜構造体12上に形成された不連続なパターン化層20を図解している。代表的な実施形態では、パターン化層40を形成するのに使用される粒子は、その最終用途に応じて複合膜構造体12に特定の機能を付与するように選択される。例えば、幾つかの実施形態では、粒子は耐摩耗性、表面化学吸着、美的特性及びタッチアンドフィール特性を提供するように選択される。適切な粒子としては、限定されることはないが、酸化チタン粒子、二酸化ジルコニウム粒子、酸化亜鉛粒子、炭素粒子、活性炭粒子及びこれらの混合物を挙げることができる。代表的な実施形態では、粒子は、膜16に対する粒子の結合を促進するポリマー結合材中に分散させる。適切なポリマー結合材としては、限定されることはないが、ポリウレタンポリマー、セルロース系ポリマー、ポリアクリレートポリマー、ポリアルコールポリマー、ポリグリコールポリマー及びこれらの混合物を挙げることができる。ポリマー結合材は、膜16上に付着させた後硬化させる。硬化温度は使用するポリマー結合材によって変わる。一実施形態では、ポリマー結合材は、約80℃〜約180℃、別の実施形態では100℃〜約150℃の範囲の温度で硬化させる。
【0027】
図4も参照して、膜16が疎油性に処理された膜となるように膜16上に第1のコーティング層28を設けた後、疎油性に処理された膜の上に第2のコーティング29を設ける。パターン化層40を膜16の第1の面17上に形成する。或いは、パターン化層40は、第2のコーティング29が設けられた膜16の第1の面17及び/又は第2の面18(図1と2に示した)の上に形成される。より具体的には、不連続なパターン化層40は第2のコーティング29上に設けられる。代表的な実施形態では、パターン化層40は、限定されることはないが印刷などによって、コーティング29上に設けられる。パターン化層40は、公知の印刷プロセス、例えば、限定されることはないが転写、ローラー印刷、乾燥印刷、フレキソ印刷、グラビアスクリーン印刷及びこれらの組合せによってコーティング29上に印刷し得る。代表的な実施形態では、任意のパターン(すなわち、規則的、不規則及び/又は不連続)をコーティング29の表面積の少なくとも30%の上に設置及び/又は印刷し得る。
【0028】
図5は、膜構造体12の拡大端面図であり、織物層44を膜16上に積層し得ることを図解している。例えば、織物層44は膜16の第2の面18上に積層し得る。或いは、織物層44は膜16の第1の面17(図1、2及び4に示す)及び/又は第2の面18上に積層し得る。織物層44と膜16の組合せは、限定されることはないが衣服、アパレル、テントの壁、寝袋及び包装材のような物品を形成するのに使用し得る。疎油性の印刷された膜16を使用して、いろいろなアパレル用途、例えば2−層で裏地のないジャケット、パンツ及びシャツのライナー/裏打ち層の必要性を排除し得る。織物層44は、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、エラストマー、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、綿及びアラミドの1種以上から形成された繊維から構成される、製織、不織の、又は編んだファブリック(織物)から形成し得る。
【0029】
図6は、膜構造体12(図1、2、4及び5に示した)のような膜構造体を作成する代表的な方法のフローチャート(600)である。代表的な実施形態では、第1の面17(図1、2及び4に示した)と第2の面18(図1、2及び5に示した)を有する空気透過性の疎水性膜16(図1、2、3、4及び5に示した)を準備する(602)。膜16の表面を疎油性のコンフォーマルコーティング28(図2及び4に示した)で被覆して(604)、膜16に疎油特性を付与する。膜16の第1の面17及び/又は第2の面18を多孔質ポリマーコーティング29(図2及び4に示した)で被覆する(606)。粒子のパターン化層を多孔質ポリマーコーティング29上に印刷などで設けて(608)パターン化層40(図3、4及び5に示した)を形成する。
【0030】
本明細書に記載した実施形態は、限定されることはないが衣服、アパレル、テントの壁、寝袋及び包装材のような物品と共に使用し得る膜構造体を提供し、ここで膜構造体は油汚染から保護され、同時に空気透過性で防水性である。より具体的には、本明細書に記載した実施形態は第1の面及び反対側の第2の面を有する空気透過性の疎水性膜を含む膜構造体を含んでいる。疎油性のコンフォーマルコーティングが膜全体に設けられる。多孔質ポリマーコーティングが、膜の第1の面及び/又は第2の面上に設けられる。粒子のパターン化層が多孔質ポリマーコーティングの上に設けられる。このように、膜構造体は、空気透過性、防水性、通気性及び疎油性のような様々な所望の機能性を有するように処理される。かかる処理により、膜構造体は、増強された機械的安定性、摩耗耐久性、表面薬品吸着性、帯電防止性、抗菌性、生体親和性及び汚れ耐性を有することもできる。
【0031】
以上、膜構造体及び方法の代表的な実施形態を詳細に説明した。これらの膜構造体及び方法は本明細書に記載した特定の実施形態に限定されることはなく、むしろ、これらの構造体の構成要素及び/又はこれらの方法の工程は本明細書に記載した他の構成要素及び/又は工程から独立して別々に利用し得る。例えば、この系は他の構造体及び方法と組み合わせても使用し得、本明細書に記載した構造体を用いた実施のみに限定されない。むしろ、代表的な実施形態は多くの他の用途に関連して実施し利用することができる。
【0032】
本発明の様々な実施形態の特定の特徴が幾つかの図面に示されており、他の図面に示されていないことがあるが、これは単に便宜上のためである。本発明の原理に従って、1つの図面の任意の特徴を、任意の他の図面の任意の特徴と組み合わせて参照し及び/又は特許請求し得る。
【0033】
本明細書の詳細な説明では例を使用して、最良の態様を含めて本発明を開示し、また当業者が本発明を実施し、例えばあらゆる装置又は系を作成し使用し、かつ組み込まれた任意の方法を実施できるようにした。本発明の特許性のある範囲は特許請求の範囲に規定されており、当業者には自明の他の例を包含し得る。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有するか、又は特許請求の範囲の文言と実質的な差のない等価な構造要素を含む場合、本発明の範囲内に入るものである。
【符号の説明】
【0034】
12 複合膜構造体
16 膜
17 第1の面
18 第2の面
20 不連続なパターン化層
22 節
24 フィブリル
26 気孔
28 コーティング層
29 第2のコーティング
40 パターン化層
44 織物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面(17)及び反対側の第2の面(18)を含む空気透過性の疎水性膜(16)と、
前記膜全体に適用された疎油性のコンフォーマルコーティング(28)と、
前記膜の前記第1の面及び前記第2の面の少なくとも1つの上に適用された多孔質ポリマーコーティング(29)と、
前記多孔質ポリマーコーティング上に適用された粒子のパターン化層(40)と
を含んでなる膜構造体(12)。
【請求項2】
前記疎油性のコンフォーマルコーティング(28)が疎油特性を有するフルオロポリマーからなる、請求項1記載の膜構造体(12)。
【請求項3】
前記多孔質ポリマーコーティング(29)が多孔質ポリウレタンからなる、請求項1記載の膜構造体(12)。
【請求項4】
前記粒子のパターン化層(40)が転写、ローラー印刷、乾燥印刷、フレキソ印刷及びグラビアスクリーン印刷の少なくとも1つにより前記多孔質ポリマーコーティング(29)上に適用される、請求項1記載の膜構造体(12)。
【請求項5】
前記粒子のパターン化層(40)が酸化チタン粒子、二酸化ジルコニウム粒子、酸化亜鉛粒子、炭素粒子及び活性炭粒子の少なくとも1つを含む、請求項1記載の膜構造体(12)。
【請求項6】
前記粒子のパターン化層(40)がさらに、ポリウレタンポリマー、セルロース系ポリマー、ポリアクリレートポリマー、ポリアルコールポリマー及びポリグリコールポリマーの少なくとも1つからなるポリマー結合材を含む、請求項1記載の膜構造体(12)。
【請求項7】
前記膜(16)がポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、アクリル系、メタクリル系、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、製織PTFE及び不織PTFEの少なくとも1つを含む、請求項1記載の膜構造体(12)。
【請求項8】
延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から製造された、第1の面(17)及び反対側の第2の面(18)を含む空気透過性の疎水性膜(16)と、
前記膜全体に適用された、約0.5wt%〜約1.5wt%の範囲の疎油性フルオロポリマー及び約50wt%〜約75wt%の範囲の量の溶媒を含む疎油性のコンフォーマルコーティング(28)と、
前記膜の前記第1の面に適用された極性の多孔質ポリマーコーティング(29)と、
前記多孔質ポリマーコーティングの表面積の少なくとも30%に適用された粒子のパターン化層(40)と
を含んでなる膜構造体(12)。
【請求項9】
第1の層(44)及び第2の層を含み、前記第1の層が織物からなり、前記第2の層(12)が、第1の面(17)及び反対側の第2の面(18)を含む空気透過性の疎水性膜(16)と、前記膜の全体に適用された疎油性のコンフォーマルコーティング(28)と、前記膜の前記第1の面及び前記第2の面の少なくとも1つの上に適用された多孔質ポリマーコーティング(29)と、前記多孔質ポリマーコーティング上に適用された粒子のパターン化層(40)とを含んでなる、物品。
【請求項10】
前記疎油性のコンフォーマルコーティング(28)が疎油特性を有するフルオロポリマーからなる、請求項9記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95135(P2013−95135A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−92563(P2012−92563)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】