説明

多孔質体を用いた太陽電池型水耕栽培装置

【課題】 太陽電池を電源とした水耕栽培装置において、雨天時、曇天時、夜間など太陽光が供給されず、ポンプの駆動が停止した状態においても養液中の溶存酸素量を保持すること。
【解決手段】 養液を収容する主容器内部に、空気を保持する多孔質体、ポンプから供給された空気を溜め、浮力によって多孔質体を圧縮し、多孔質体に空気を保持させる外部容器、内部容器からなる溶存酸素保持機構を備えることによって、ポンプ駆動が停止した後においても外部容器に溜められた空気が放出され、さらに空気を含有した多孔質体が養液中に晒され、養液中に空気が溶け出すことによって溶存酸素量を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を電源としてポンプを駆動し、液中で根に空気を供給して植物を育成する太陽電池型水耕栽培装置に関し、特にポンプの駆動が停止した後においても溶存酸素量を保持できる多孔質体を用いた太陽電池型水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培において植物を良好に育成させるには、液肥により根に養分を与えると同時に酸素も与える必要がある。酸素を供給する方法の一つとしてポンプを用いて養液中に空気を送り込み、溶存酸素量を高める方法がある。従来、ポンプで空気を送り込むのにその電源として太陽電池を使用し、一般商用電源を必要としない自立型のエアレーション装置がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、以上の技術によれば、夜間や雨天時、曇天時には十分な発電量が得られず、結果としてポンプが停止することにより養液中の溶存酸素量が低下し、植物の育成に悪影響を及ぼすという問題点があった。
【0004】
本発明は、以上のような従来の問題を解決するためになされたものであって、夜間など太陽電池による発電が無く、ポンプの駆動が停止した後においても養液中の溶存酸素量を保持することを可能とし、植物の良好な育成を実現する太陽電池型水耕栽培装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために以下の特徴を有している。
【0006】
第一発明は、養液を収容する主容器と、養液内に空気を供給するためのポンプと、ポンプに電力を供給するための太陽電池と、空気を保持し、養液との界面から空気を養液中に溶かし、養液の溶存酸素量を保持することができる多孔質体を主容器中に備え、ポンプの駆動が停止した後においても空気を保持した多孔質体によって養液中の溶存酸素量を保持し、植物の根に酸素を供給して植物の成長を促進するようにしたことを特徴とする多孔質体を用いた太陽電池型水耕栽培装置である。
【0007】
また第二発明は、前記第一発明の多孔質体を用いた太陽電池型水耕栽培装置において、前記多孔質体と、上部に空気放出口を備えた外部容器と、外部容器内部に設置される内部容器とで構成され、内部容器に空気が供給された際にその浮力により多孔質体を圧縮し、さらに外部容器に空気が溜まると浮力が低下し、多孔質体がその弾性により元の形状に戻る際、多孔質内部に空気を含有させる機構を備えたことを特徴とする多孔質体を用いた太陽電池型水耕栽培装置である。
【発明の効果】
【0008】
上記第一発明によれば、空気を保持した多孔質体内の空気と主容器に収容された養液との界面において、多孔質体に保持された空気が養液中に溶け込むことによって溶存酸素量を保持することができ、結果として植物の良好な育成を実現することができる。
【0009】
上記第2の発明によれば、ポンプから供給された空気を内部容器に溜め、その浮力によって多孔質体を圧縮させ、さらに外部容器に空気が溜まることによって内部容器の浮力が減少し、多孔質体がその弾性によって元の形状に戻る際に空気を含有させ、ポンプの駆動が停止した後においても外部容器から放出される空気によって溶存酸素量を保持し、さらに空気を保持した多孔質体が養液内に晒されることによって長時間養液中の溶存酸素量を保持することができ、結果として植物の良好な育成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を概略的に示した構成図である。
【図2】多孔質体に空気を保持させる機構の実施形態を例示した斜視図である。
【図3】多孔質体に空気を保持させる過程の実施形態を概略的に示した構成図である。
【図4】実験による植物栽培期間中の養液の溶存酸素量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態を概略的に示した構成図である。図中主容器3は養液を収容するための容器で上部には植物5を定植するための定植床が設けられている。太陽電池2は養液中および溶存酸素保持機構に空気を供給するポンプ1に電力を供給する。
【0012】
図2は多孔質体に空気を保持させる機構の実施形態を例示した斜視図であり、外部容器6、内部容器9、多孔質体8から構成されている。外部容器上部には空気放出口7が備えられており、主容器1の底部に固定されている。内部容器7は外部容器の内側、多孔質体8を隔てる位置に設置されている。
【0013】
次に本実施形態における多孔質体8に空気が保持される機構を図3に基づいて説明する。図3は多孔質体に空気を保持させる過程の実施形態を概略的に示した構成図である。初め、ポンプ1より空気が供給されていない状態においては、外部容器6、内部容器9、多孔質体8は養液で満たされている。次に太陽電池による発電が開始し、ポンプ1から空気が供給されると、ポンプに接続されているエアチューブより放出された空気が、内部容器9に溜まり、浮力によって上昇し、多孔質体8を圧縮する。さらに空気が供給されると内部容器9が空気で満たされ、空気が外部容器6に溢れ出し、外部容器6も空気で満たされる。このとき内部容器9の浮力が低下し、内部容器9が沈み、多孔質体8がその弾性によって元の形状に戻り、この過程で多孔質体内部に空気を含有する。
【0014】
さらにこの状態で太陽電池2による発電が停止し、ポンプ1の駆動が停止すると空気放出口7から養液中に空気が放出されることによって、外部容器6内に養液が満たされ、多孔質体8は養液内に晒され、養液内に酸素を供給する。
【実施例】
【0015】
(実験)図1および図2に示した、多孔質体を用いた太陽電池型水耕栽培装置において、養液を収容する主容器3として容量10Lの樹脂製容器を用い、外部容器6として容量2Lの容器、内部容器9として容量1Lの容器を用い、空気放出口7、として外部容器上部にバルブを設置した。また多孔質体として見掛けの密度70kg/m体積0.001mの軟質ポリウレタンフォームを用いた。主容器内に収容する溶液には水道水を用い、植物4としてロシアンプラムをサンプリングし地上部の新鮮重が910g、地中部の新鮮重が190gのものを主容器に定植した。また比較対象として前述の外部容器6、内部容器9、多孔質体8からなる溶存酸素保持機構を備えない太陽電池型水耕栽培装置を用いた。栽培期間中の外気温は25℃に保った。以上2つの対象に対して5時間光を供給し、ポンプを稼働させ、その後光の供給を遮断した後における養液中の溶存酸素量の時間的変化を測定した。実験結果を図4に示す。
【0016】
この実施形態によれば、図4から明らかなように外部容器6、内部容器9、多孔質体8からなる溶存酸素保持機構を備えた太陽電池型水耕栽培装置においてはこの機構を備えない装置と比較すると対象期間を通して溶存酸素量が高くなった。
【0017】
以上の結果から太陽電池型水耕栽培装置において多孔質体8および外部容器6、内部容器9からなる溶存酸素保持機構を備えることによって、太陽電池による発電が停止し、ポンプの駆動が停止した後においても養液の溶存酸素量を高く保つことがきる。
【符号の説明】
【0018】
1 ポンプ
2 太陽電池
3 主容器
4 溶存酸素保持機構
5 植物
6 外部容器
7 空気放出口
8 多孔質体
9 内部容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を育成する水耕栽培装置であって、養液を収容する主容器と、養液内に空気を供給するためのポンプと、ポンプに電力を供給するための太陽電池と、空気を保持し、養液との界面から空気を養液中に溶かし、養液の溶存酸素量を保持することができる多孔質体を主容器中に備え、ポンプの駆動が停止した後においても空気を保持した多孔質体によって養液中の溶存酸素量を保持し、植物の根に酸素を供給して植物の成長を促進するようにしたことを特徴とする多孔質体を用いた太陽電池型水耕栽培装置。
【請求項2】
前記多孔質体と、上部に空気放出口を備えた外部容器と、外部容器の内部に設置された内部容器とで構成され、内部容器に空気が供給された際にその浮力により多孔質体を圧縮し、さらに外部容器に空気が溜まると浮力が低下し、多孔質体がその弾性により元の形状に戻る際、多孔質体内部に空気を含有させる機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の多孔質体を用いた太陽電池型水耕栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−46595(P2013−46595A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199959(P2011−199959)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(511223811)
【Fターム(参考)】