説明

多孔質体を用いた絶縁電線及びその製造方法

【課題】薄肉絶縁層でありながらその発泡度が高く且つその発泡状態が均一で、しかも絶縁電線の生産性が顕著に高い多孔質体を用いた絶縁電線及びその製造方法を提供する。
【解決手段】導体7上に熱硬化型液状無溶剤ワニスを油層とした油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を用いて多孔質体からなる絶縁層6を形成する絶縁電線において、前記熱硬化型液状無溶剤ワニス中の水滴が水溶性ポリマである油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を塗膜としてフィルム化し、フィルム化の後に油層を重合硬化し、硬化後に水滴を乾燥除去することで、多孔質体を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡絶縁電線に係り、特に、多孔質体を用いた絶縁電線及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報機器においては、伝送信号の高速化が進んでおり、これに使用する電線は低誘電率性を重視し、ポリエチレンやふっ素樹脂を押出し発泡成形した発泡絶縁体を用いた電線が用いられている。
【0003】
近年、機器の小型化高密度化が一層進み、使用する電線は、例えば外径0.3mm以下のものが必要になってきている。この細径電線を押出し発泡成形で製造することが技術的に難しくなってきているため、特許文献1〜11に示されるように、気体や発泡剤を含む紫外線硬化樹脂を塗布、紫外線硬化して発泡電線を製造する方法が提案されている。
【0004】
これらの方法は、高速に、効率良く発泡絶縁層を形成する方式としては優れた方法であるが、気泡を成長させながら、絶縁体を形成していくプロセスであり、気泡の成長度合いをコントロールすることが困難であり、発泡度にバラツキが生じ易い欠点があった。なお、絶縁体の発泡度にバラツキが生じた場合は絶縁体の誘電率にバラツキが生じると共に、電線・ケーブルの伝送特性にバラツキが生じ、信号の遅延が生じるという問題が発生する。
【0005】
そこで、特許文献12〜14に示されるように、微細発泡を形成する方法が提案されている。
【0006】
この提案によれば、微細気泡を形成することで、絶縁体の発泡度のバラツキを抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3047686号公報
【特許文献2】特開平7−278333号公報
【特許文献3】特開平7−272662号公報
【特許文献4】特開平7−272663号公報
【特許文献5】特開平7−335053号公報
【特許文献6】特開平8−17256号公報
【特許文献7】特開平8−17257号公報
【特許文献8】特開平7−320506号公報
【特許文献9】特開平9−102230号公報
【特許文献10】特開平11−176262号公報
【特許文献11】特開平11−297142号公報
【特許文献12】特開2004−2812号公報
【特許文献13】特許第3963765号公報
【特許文献14】国際公開番号WO2004/048064パンフレット
【特許文献15】特開平10−36411号公報
【特許文献16】特開2004−91569号公報
【特許文献17】特開2007−332283号公報
【特許文献18】特開2002−145913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献12の方法は、光照射で酸が発生することで分解する化合物を含むポリマを用いて微細気泡を作製する方法であり、酸が発生し導体である金属を腐食させるため、電線・ケーブルの絶縁体に用いることはできない。
【0009】
また、特許文献13、14は、キャストフィルム作製時に加湿状態で有機溶媒を除去しフィルムを形成することで多孔質膜を作る方法であり、製造時間がかかり、電線・ケーブルの製造に適用するには問題がある。
【0010】
また、特許文献15〜18には、エマルションを用いて多孔質体を製造する方法が提案されているが、これらの方法では、気泡が連続気泡(繋がってしまい)となり、圧縮や曲げなどの応力で容易に潰れ変形を起こし、電線・ケーブルの被覆としては問題があると共に電線の静電容量が機械力で変化してしまう等の問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点である絶縁体の発泡度(気泡と樹脂の割合)のバラツキを抑制することであり、薄肉絶縁層でありながらその発泡度が高く且つその発泡状態が均一で、しかも絶縁電線の生産性が顕著に高い多孔質体を用いた絶縁電線及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、導体上に熱硬化型液状無溶剤ワニスを油層とした油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を用いて多孔質体からなる絶縁層を形成する絶縁電線において、前記熱硬化型液状無溶剤ワニス中の水滴が水溶性ポリマである油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を塗膜としてフィルム化し、フィルム化の後に油層を重合硬化し、硬化後に水滴を乾燥除去することで、多孔質体を形成したことを特徴とする多孔質体を用いた絶縁電線である。
【0013】
請求項2の発明は、前記油層としての熱硬化型液状無溶剤ワニスが、紫外線硬化型樹脂の前駆体であり、これを紫外線照射で重合硬化させた請求項1記載の多孔質体を用いた絶縁電線である。
【0014】
請求項3の発明は、前記水溶性ポリマが、アルキルセルロース化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのいずれかである請求項1記載の多孔質体を用いた絶縁電線である。
【0015】
請求項4の発明は、導体上に熱硬化型液状無溶剤ワニスを油層とした油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を用いて多孔質体からなる絶縁層を形成する絶縁電線の製造方法において、前記熱硬化型液状無溶剤ワニス中の水滴が水溶性ポリマである油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を塗膜としてフィルム化し、フィルム化の後に油層を重合硬化し、硬化後に水滴を乾燥除去することで、多孔質体を形成することを特徴とする多孔質体を用いた絶縁電線の製造方法である。
【0016】
請求項5の発明は、前記油層としての熱硬化型液状無溶剤ワニス油層に紫外線硬化型樹脂の前駆体を用い、これを紫外線照射で重合硬化させる請求項4記載の多孔質体を用いた絶縁電線の製造方法である。
【0017】
請求項6の発明は、前記水溶性ポリマに、アルキルセルロース化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのいずれかを用いる請求項4記載の多孔質体を用いた絶縁電線の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の絶縁電線は、薄肉絶縁層でありながらその発泡度が高く且つその発泡状態が均一で、しかも絶縁電線の生産性が顕著に高いものであり、工業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明において、多孔質体を用いた絶縁電線を製造するための塗布硬化乾燥装置を示す図である。
【図2】本発明において、多孔質体を用いた絶縁電線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0021】
本発明は、導体上に熱硬化型液状無溶剤ワニスを油層とした油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を用いて多孔質体からなる絶縁層を形成する絶縁電線において、前記熱硬化型液状無溶剤ワニス中の水滴が水溶性ポリマである油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を塗膜としてフィルム化し、フィルム化の後に油層を重合硬化し、硬化後に水滴を乾燥除去することで、多孔質体を形成した多孔質体を用いた絶縁電線である。
【0022】
また、前記油層としての熱硬化型液状無溶剤ワニスが、紫外線硬化型樹脂の前駆体であり、これを紫外線照射で重合硬化させることが好ましい。
【0023】
水溶性ポリマとしては、アルキルセルロース化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールであることが好ましい。
【0024】
本発明において、油層を形成する熱硬化型液状無溶剤ワニスの基本的構成は、重合性オリゴマ、重合性モノマ、架橋開始剤を含むものである。
【0025】
ここにおいて重合性オリゴマとしては、不飽和結合を有する官能基、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリル基、ビニル基等を2個以上有するものである。これらのものは一部の元素がふっ素置換したものでもよい。
【0026】
このような重合性オリゴマとしては、エポキシアクリレート系オリゴマ、エポキシ化油アクリレート系オリゴマ、ウレタンアクリレート系オリゴマ、ポリエステルウレタンアクリレート系オリゴマ、ポリエーテルウレタンアクリレート系オリゴマ、ポリエステルアクリレート系オリゴマ、ポリエーテルアクリレート系オリゴマ、ビニルアクリレート系オリゴマ、シリコーンアクリレート系オリゴマ、ポリブタジエンアクリレート系オリゴマ、ポリスチレンエチルメタアクリレート系オリゴマ、ポリカーボネートジカルボネート系オリゴマ、不飽和ポリエステル系オリゴマ、ポリエン/チオール系オリゴマ等がある。
【0027】
これらの重合性オリゴマは単独若しくはブレンドして使用することができる。
【0028】
本発明において、重合性モノマとしては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリル基、ビニル基等を2個以上有する重合性モノマである。
【0029】
本発明において、架橋開始剤は、光により分解してフリーラジカルを生成し、そのフリーラジカルが、重合性オリゴマ、重合性モノマの硬化を開始させる機能を有するものである。このような架橋開始剤としては、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等がある。
【0030】
本発明の水溶性ポリマとしては、水に溶解し、水の粘度を高めることで、エマルションの安定度を高める働きをするものであり、水に溶解するポリマであれば、特に限定するものではない。例えば、ヘドロキシメチルセルロース、ビドロキシエチルセルロース、ビドロキシプロピルセルロースなどの水溶性セルロース化合物や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0031】
エマルションの作製方法:
本発明においてO/W型エマルションの作製方法は、UV硬化樹脂プレポリマと水溶性ポリマを添加した水、界面活性剤を配合した組成物を高速撹拌機で撹拌し乳化させる方法や超音波を用いた乳化装置やガラスフィルターなどの多孔質膜を通過させ乳化させる膜乳化等が考えられ特に限定されない。
【0032】
本発明においては、油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)に、下記のような配合物を必要に応じて適宜配合することができる。即ち、このような配合物としては開始助剤、接着防止剤、チクソ付与剤、充填剤、可塑剤、非反応性ポリマー、着色剤、難燃剤、難燃助剤、軟化防止剤、離型剤、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、沈澱防止剤、増粘剤、帯電防止剤、静電防止剤、防かび剤、防鼠剤、防蟻剤、艶消し剤、ブロッキング防止剤、皮張り防止剤、界面活性剤等である。
【0033】
本発明において紫外線照射源としては、低圧水銀灯、メタルハライドランプ等がある。
【0034】
界面活性剤は、水に溶かしたときに電離してイオン(電荷をもつ原子又は原子団)となるイオン性界面活性剤と、イオンにならない非イオン(ノニオン)界面活性剤に大きく分類される。イオン性界面活性剤はさらに、陰イオン(アニオン)界面活性剤、陽イオン(カチオン)界面活性剤および両性界面活性剤に分類される。
【0035】
このうち本発明では電気的に絶縁性が高いものが望まれるため、非イオン(ノニオン)界面活性剤が望ましい。
【0036】
なお、非イオン(ノニオン)界面活性剤としてはその構造により、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型及びその他に分類されるが本発明では特に限定しないが、以下のタイプのものが挙げられる。
【0037】
エステル型としてはグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルがある。
【0038】
またエーテル型としては高級アルコールやアルキルフェノールなど、水酸基をもつ原料に、主として酸化エチレン(エチレンオキシド)を付加重合したものがある。
【0039】
エステル・エーテル型としては、脂肪酸や多価アルコール脂肪酸エステルに酸化エチレンを付加したものであり、分子中にエステル結合とエーテル結合の両方を持っている。
【0040】
その他にふっ素系の界面活性剤や、シリコーン系の界面活性剤が挙げられる。
【0041】
界面活性剤は、親水性と疎水性の程度を表すパラメータHLBの指標があるが、本発明の場合は、油中に水滴が存在するO/W型のエマルションを作製することが必須であり、一般に、用いられる界面活性剤のHLBは低いものが望ましい。HLBが5以下の界面活性剤が効果が高い。また、界面活性剤の使用量は、電線ケーブルの絶縁特性の関係から、少ないほうが望ましく1%以下が好ましい。
【0042】
絶縁電線の作製方法:
油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を、導体に塗布して塗膜とすると共にフィルム化し、フィルム化後の油層を紫外線硬化させ、硬化後に熱風で乾燥させることで水滴を乾燥除去することで多孔質体からなる絶縁層を有する絶縁電線とすることができる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の多孔質体を用いた絶縁電線の製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
【0044】
実施例1;
(実施例1−1)
イ)重合性オリゴマとして、ウレタンアクリレート系オリゴマ80.0質量部、
ロ)重合性モノマとして、アクリロイル基を有するモノマ20.0質量部、
架橋開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア(登録商標)184チバスペシャリティケミカルズ製)2質量部、
水溶性ポリマとして、信越化学工業社製メチルセルロース 商品名メトローズMCE−400の2質量%水溶液60質量部
の組成物を高速撹拌装置(日本精機製作所製エクセルホモジナイザーED−12)にて10,000RPMで5分間撹拌し、6時間放置し、平均粒径3μmの水滴を有する油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を得た。
【0045】
次に、上記で得られたエマルションを用いて図1に示すような、電線導体送出し機1、塗布ダイス2、紫外線ランプ3(メタルハライドランプ1kW)、乾燥機4(250℃熱風方式1秒加熱)、電線巻取り機5(60m/分)からなる塗布硬化乾燥装置を用いて図2に示す絶縁電線8を作製した。
【0046】
ここで導体7は、25μm径の銅線7本の撚線を使用し、絶縁層6の厚さが40μmの絶縁電線8が得られた。得られた電線絶縁体は、平均粒径3μmの気泡が全絶縁体層の体積中で35%を有していた。
【0047】
(実施例1−2)
油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)の保存安定性を調べるため、上記実施例1−1で得られたエマルションを作製後、24時間放置し、平均粒径を測定したところ、平均粒径3μmであり作製直後と同等の粒子径であった。
【0048】
このエマルションを用いて、同様に、図1に示すような、電線導体送出し機1、塗布ダイス2、紫外線ランプ3(メタルハライドランプ1kW)、乾燥機4(250℃熱風方式1秒加熱)、電線巻取り機5(60m/分)からなる塗布硬化乾燥装置を用いて絶縁電線8を作製した。
【0049】
ここで導体7は、25μm径の銅線7本の撚線を使用し、絶縁層6の厚さが40μmの絶縁電線8が得られた。得られた電線絶縁体は、平均粒径3μmの気泡が全絶縁体層の体積中で35%を有しており、エマルション作製後6時間放置した実施例1−1とエマルション作製後24時間放置した実施例1−2とも同等の特性を有していた。
【0050】
実施例2;
(実施例2−1)
イ)重合性オリゴマとして、ウレタンアクリレート系オリゴマ80.0質量部、
ロ)重合性モノマとして、アクリロイル基を有するモノマ20.0質量部、
架橋開始剤としては、1−ビドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア(登録商標)184チバスペシャリティケミカルズ製)2質量部、
水溶性ポリマとして、信越化学工業社製メチルセルロース 商品名メトローズMCE−400の2質量%水溶液40質量部
の組成物を高速撹拌装置(日本精機製作所製エクセルホモジナイザーED−12)にて、10,000RPMで5分間撹拌し6時間放置し、平均粒径12μmの水滴を有する油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を得た。
【0051】
次に、上記で得られたエマルションを用いて図1に示すような、電線導体送出し機1、塗布ダイス2、紫外線ランプ3(メタルハライドランプ1kW)、乾燥機4(250℃熱風方式1秒加熱)、電線巻取り機5(60m/分)からなる塗布硬化乾燥装置を用いて絶縁電線8を作製した。
【0052】
ここで導体7は、25μm径の銅線7本の撚線を使用し、絶縁層6の厚さが40μmの絶縁電線8が得られた。得られた電線絶縁体は、平均粒径3μmの気泡が全絶縁体層の体積中で25%を有していた。
【0053】
(実施例2−2)
油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)の保存安定性を調べるため、上記実施例2−1で得られたエマルションを作製後24時間放置し平均粒径を測定したところ平均粒径12μmであり作製直後と同等の粒子径であった。
【0054】
このエマルションを用いて、同様に、図1に示すような、電線導体送出し機1、塗布ダイス2、紫外線ランプ3(メタルハライドランプ1kW)、乾燥機4(250℃熱風方式1秒加熱)、電線巻取り機5(60m/分)からなる塗布硬化乾燥装置を用いて絶縁電線8を作製した。
【0055】
ここで導体7は、25μm径の銅線7本の撚線を使用し、絶縁層6の厚さが40μmの絶縁電線8が得られた。得られた電線絶縁体は、平均粒径3μmの気泡が全絶縁体層の体積中で25%を有しており、エマルション作製後6時間放置した実施例2−1とエマルション作製後24時間放置した実施例2−2とも同等の特性を有していた。
【0056】
比較例1;
イ)重合性オリゴマとしてウレタンアクリレート系オリゴマ80.0質量部
ロ)重合性モノマとして、アクリロイル基を有するモノマ20.0質量部、
架橋開始剤としては1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア(登録商標)184チバスペシャリティケミカルズ製)2質量部
の組成物をワニスとした。
【0057】
次に、上記で得られたワニスを用いて図1に示す装置、電線導体送出し機1、塗布ダイス2、紫外線ランプ3(メタルハライドランプ1kW)、乾燥機4(20℃熱風方式1秒加熱)、電線巻取り機5(60m/分)からなる塗布硬化乾燥装置を用いて絶縁電線を作製した。
【0058】
ここで導体は、25μm径の銅線7本の撚線を使用し、絶縁層の厚さが40μmの電線が得られた。得られた電線絶縁体は、気泡が見られなかった。
【0059】
比較例2;
(比較例2−1)
イ)重合性オリゴマとして、ウレタンアクリレート系オリゴマ80.0質量部、
ロ)重合性モノマとして、アクリロイル基を有するモノマ20.0質量部、
架橋開始剤としては、1−ビドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア(登録商標)184チバスペシャリティケミカルズ製)2質量部、
水60質量部
の組成物を高速撹拌装置(日本精機製作所製エクセルホモジナイザーED−12)にて10,000RPMで5分間撹拌し、6時間放置し、平均粒径10μmの水滴を有する油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を得た。
【0060】
次に、上記で得られたエマルションを用いて図1に示すような、電線導体送出し機1、塗布ダイス2、紫外線ランプ3(メクルハライドランプ1kW)、乾燥機4(250℃熱風方式1秒加熱)、電線巻取り機5(60m/分)からなる塗布硬化乾燥装置を用いて絶縁電線を作製した。ここで導体は、25μm径の銅線7本の撚線を使用し、絶縁層の厚さが40μmの絶縁電線が得られた。
【0061】
得られた電線絶縁体は、平均粒径12μmの気泡が全絶縁体層の体積中で35%を有していた。
【0062】
(比較例2−2)
油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)の保存安定性を調べるため、 上記で得られたエマルションを作製後24時間放置し平均粒径を測定したところ平均粒径20μmであり、作製後6時間放置した比較例2−1と比べ粒子の会合のため巨大化が確認された。
【0063】
このエマルションを用いて、同様に、図1に示すような、電線導体送出し機1、塗布ダイス2、紫外線ランプ3(メタルハライドランプ1kW)、乾燥機4(250℃熱風方式1秒加熱)、電線巻取り機5(60m/分)からなる塗布硬化乾燥装置を用いて絶縁電線を作製した。
【0064】
ここで導体は、25μm径の銅線7本の撚線を使用し、絶縁体層の厚さが40μmの絶縁電線が得られた。得られた電線絶縁体は、平均粒径20μmの気泡が全絶縁体層の体積中で35%を有しており、また、絶縁体の一部が露出する部分が発生する問題点が発現した。このように比較例2−2では、エマルション作製後に僅か1日でエマルションを粒径の変化が生じ、安定したものが得られないことがわかった。
【符号の説明】
【0065】
1 電線導体送出し機
2 塗布ダイス
3 紫外線ランプ
4 乾燥機
5 電線巻取り機
6 導体
7 絶縁層
8 絶縁電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に熱硬化型液状無溶剤ワニスを油層とした油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を用いて多孔質体からなる絶縁層を形成する絶縁電線において、前記熱硬化型液状無溶剤ワニス中の水滴が水溶性ポリマである油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を塗膜としてフィルム化し、フィルム化の後に油層を重合硬化し、硬化後に水滴を乾燥除去することで、多孔質体を形成したことを特徴とする多孔質体を用いた絶縁電線。
【請求項2】
前記油層としての熱硬化型液状無溶剤ワニスが、紫外線硬化型樹脂の前駆体であり、これを紫外線照射で重合硬化させた請求項1記載の多孔質体を用いた絶縁電線。
【請求項3】
前記水溶性ポリマが、アルキルセルロース化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのいずれかである請求項1記載の多孔質体を用いた絶縁電線。
【請求項4】
導体上に熱硬化型液状無溶剤ワニスを油層とした油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を用いて多孔質体からなる絶縁層を形成する絶縁電線の製造方法において、前記熱硬化型液状無溶剤ワニス中の水滴が水溶性ポリマである油中水滴型エマルション(O/Wエマルション)を塗膜としてフィルム化し、フィルム化の後に油層を重合硬化し、硬化後に水滴を乾燥除去することで、多孔質体を形成することを特徴とする多孔質体を用いた絶縁電線の製造方法。
【請求項5】
前記油層としての熱硬化型液状無溶剤ワニス油層に紫外線硬化型樹脂の前駆体を用い、これを紫外線照射で重合硬化させる請求項4記載の多孔質体を用いた絶縁電線の製造方法。
【請求項6】
前記水溶性ポリマに、アルキルセルロース化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのいずれかを用いる請求項4記載の多孔質体を用いた絶縁電線の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−198845(P2010−198845A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41051(P2009−41051)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】