説明

多孔質体及びその製造方法

【課題】ケイフッ化物を使用せず、均一で微細な空孔を有する連続気泡構造の多孔質体とその製造方法を提供する。
【解決手段】エマルジョンを発泡させ、当該発泡させたエマルジョンに、ケイフッ化物を含有しない固化ガスを接触させて固化させ、成形した。また、エマルジョンを発泡させ、当該発泡させたエマルジョンに、ケイフッ化物を含有しない固化ガスを接触させて固化させ、多孔質体を成形する製造方法とした。さらに、当該固化ガスが、酸性ガス、又は加水分解性ガスであることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂の分散体としてのエマルジョンから製造した多孔質体とその製造方法についてであり、さらに詳しく述べると、ケイフッ化物を含まない上記多孔質体とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂の多孔質体は、その特性からクッション、フィルター、電池セパレーター、断熱材、塗布具、吸着剤、洗浄ロール、バススポンジ等に用いられている。また、これらの用途のうち、フィルター、電池セパレーター、分離膜、塗布具など、夾雑物の少ないミクロ構造の均一な多孔質体を要求する分野がある。
【0003】
従来、エマルジョンから連続気泡構造の多孔質体を製造する方法としては、樹脂の分散体であるエマルジョンを発泡し、これに固化剤を加え化学的に固化して多孔質体とする方法、又は、樹脂の分散体であるエマルジョンを発泡し、これに熱を加えて固化して多孔質体とする方法などが知られている。
【特許文献1】特開昭52−71560号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記前者の製造方法の場合、固化剤にケイフッ化ナトリウムを使用する方法が広く利用されているが、ケイフッ化物の使用は環境衛生上好ましくなく、ケイフッ化物の使用削減が求められている。また、この方法では固化時に収縮があり、気孔セルの連なりが長距離に渡って連続せず、長くても数mmにて気孔セル間に裂け目が生じる特性がある。さらに、後者の製造方法の場合、外部より熱を加えて固化させるため、表面と内部とで固化までの時間に差が生じ、生成する気孔セルの大きさに差が生じ均一な空孔をもつ多孔質体を製造することはできない。また、この方法では、厚さが8mmを超える均一な多孔質体は製造することが出来ず、各種用途の要求に完全に応じることはできない。
【0005】
そこで、この発明は、ケイフッ化物を使用せず、均一で微細な空孔を有する連続気泡構造の多孔質体とその製造方法を提供して上記課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の発明者は、ある種のガスが発泡物を固化することを見出し、鋭意研究した結果、この発明を完成したものである。
すなわち、請求項1の発明は、エマルジョンを発泡させ、当該発泡させたエマルジョンに、ケイフッ化物を含有しない固化ガスを接触させて固化させ、成形した多孔質体とした。
【0007】
請求項2の発明は、エマルジョンを発泡させ、当該発泡させたエマルジョンに、ケイフッ化物を含有しない固化ガスを接触させて固化させ、多孔質体を成形する多孔質体の製造方法とした。また、請求項3の発明は、上記固化ガスが酸性ガスである上記請求項2に記載の多孔質体の製造方法とした。さらに、請求項4の発明は、上記固化ガスが加水分解性ガスである上記請求項2に記載の多孔質体の製造方法とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1及び2の各発明によれば、ケイフッ化物を含まず、製造工程においてもケイフッ化物を使用せず、固化ガスを使用して発泡物を固化させるため、環境を保護すると共に、発泡体内部の気泡が微視的に長く連なり、均一な細孔径となり、軽量で微細な空孔を持つ、強度が強い多孔質体が製造することができる。この為、フィルター等の用途にも適し、各種用途の要求にも応じることができる。
【0009】
請求項3及び4の各発明によれば、固化ガスとして酸性ガス又は加水分解性ガスを使用したので、上記請求項のものより、さらに、均一な細孔径となり、軽量で微細な空孔を持つ、強度が強い多孔質体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明において使用するエマルジョンとは、樹脂を分散媒に分散した分散体であり、ラテックスとも呼ばれるものである。また、樹脂とは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、エラストマーである。
【0011】
熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、スチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、及びそれらの共重合体などが使用できる。
【0012】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、及びそれらの共重合体などが使用できる。
【0013】
ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBR、MBR、CR、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、EPM、EPDM、及びそれらの共重合体などが使用できる。
【0014】
エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、及びそれらの共重合体などが使用できる。
これらのゴム、エラストマー、樹脂は単独で使用することもでき、また、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0015】
分散させる分散媒としては、水、有機溶剤が使用でき、好ましくは水、炭化水素が使用できる。
また、樹脂を分散媒に分散する方法としては、各種の公知の方法が使用でき、例えば、樹脂の原料であるモノマーを分散媒に分散、乳化し、重合する方法を使用することができる。また、樹脂溶液を作成し、分散媒に分散、乳化する方法を使用することが出来る。
また、自然界より植物、動物から得られるエマルジョンを使用することもできる。この例としては、天然ゴムラテックスが挙げられる。
【0016】
上記分散、乳化する場合において、安定剤を使用することができる。安定剤としては、分散剤、乳化剤、界面活性剤が使用でき、アニオン性界面活性剤、高分子界面活性剤、中性界面活性剤が使用できる。これらの界面活性剤の具体例としては、脂肪酸、ロジン酸、ポリカルボン酸、などのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0017】
上記エマルジョンは、固形分濃度を50%以上とすることが、成形する多孔質体に割れや裂けなどの成形不良が少なく好ましい。より好ましくは60%以上である。上限は限定されないが、固形分濃度が75%以上となるとエマルジョンの粘度が高くなり、発泡成形が困難となる。また、輸送などの取り扱いも困難となり好ましくない。
【0018】
上記エマルジョンは、pHを中性からアルカリ性とすることができ、好ましくはアルカリ性とすることができる。pHをこれらの範囲とすることで、微細な細孔をもつ多孔質体を作成することができる。
【0019】
これらのエマルジョンを発泡し、泡状の発泡物とする。
発泡する方法としては、エマルジョンに気体を機械的に撹拌混合する方法、発泡剤を混合し熱や化学反応にて気体を発生させる方法などを使用することができる。発泡に使用する気体は、窒素、酸素、空気が、また発泡剤としては低沸点の炭化水素、過酸化水素が好ましく使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
この様にして製造した発泡物は、固化ガスにて固化する。
固化ガスとしては、酸性ガス、加水分解性ガス、ラジカル反応性ガスが使用できる。
【0021】
酸性ガスとは、水分の存在で酸性を示すガスである。加水分解性ガスとは、加水分解をして酸性物質を発生するガスである。ラジカル反応性ガスとは、ラジカルを発生して反応するガスである。
【0022】
これらのガスの例としては、各種元素の酸化物、硫化物、ハロゲン化物、有機酸、酸化窒素、酸化硫黄、塩素酸、塩化硫黄、塩化チオニル、塩化燐、硫化燐、亜硫酸、炭酸、二硫化炭素、窒素酸、珪酸、蟻酸、塩酸、酢酸、燐酸、青酸、ハロゲン化珪素、ジシラン、ホスゲン、塩化アルキル、塩化アセチル、有機珪素化合物、アルキルハロゲン化シラン、イソシアネート化合物、アルデヒド、カルボン酸、メルカプタン、ジチオ酸、カルバミン酸、キサントゲン酸、ハロゲン、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
【0023】
酸性ガスの例としては、塩素酸、硫化燐、亜硫酸、炭酸、窒素酸、珪酸、蟻酸、塩酸、酢酸、燐酸、青酸、カルボン酸、メルカプタンが挙げられる。
加水分解性ガスの例としては、塩素酸、塩化硫黄、塩化チオニル、塩化燐、硫化燐、ハロゲン化珪素、ジシラン、ホスゲン、塩化アルキル、塩化アセチル、有機珪素化合物、アルキルハロゲン化シラン、イソシアネート化合物、アルデヒド、カルボン酸、メルカプタン、ジチオ酸、カルバミン酸、キサントゲン酸が挙げられる。
【0024】
ラジカル反応性ガスの例としては、酸化窒素、酸化硫黄、塩素酸、塩化硫黄、塩化チオニル、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
これらのガスの中でも、炭酸ガス、亜硫酸ガス、酸化窒素ガスは毒性が低く、取り扱いが容易であり好ましく使用できる。
【0025】
固化ガスは発泡物と接触することで、発泡物を固化することができる。
発泡体と固化ガスとの接触方法としては、容器に発泡物を入れガスと接触させる方法をとることができる。また、ガス透過性を有する物質から成る支持体上乃至は型の中に発泡物を入れ、ガスと接触させる方法をとることができる。この様にすることで、発泡物内部まで均一に固化することができ、製造する多孔質体を均一にすることができる。
【0026】
発泡物と固化ガスとを接触させるタイミングとしては、発泡物を作成した直後から接触することができ、酸性ガスは中性の気体、例えば窒素、酸素、空気などにて希釈して使用することが好ましく、希釈倍率は固化ガスの固化力や固化速度によって異なるが、0.5倍から5倍である。
【0027】
また、エマルジョンを発泡する段階において、発泡する際に使用する気体に固化ガスを混合して使用することができる。このような使用方法では、ガスの加水分解にある程度時間が掛かるようにすることが好ましく、その時間は1分間から20分間である。
【0028】
発泡物と固化ガスとの接触において、発泡物の温度を高く保つことがよい。発泡物の温度は20℃から60℃が好ましく、より好ましくは30℃から50℃である。固化ガスの温度は、20℃から70℃が好ましく、より好ましくは30℃から60℃である。固化ガスの温度は発泡物の温度より高いことが好ましい。このような温度にすることにより、固化時の収縮を抑えることができる。
【0029】
固化するとは、発泡時の状態が変化し、粘度が急上昇し発泡物の発泡構造が固定化されることである。この様にして、ケイフッ化物を使用せずに多孔質体が得られる。
【0030】
この発明は、ガスを使用して発泡物を固化するため、発泡体内部の気孔が均一になる特徴がある。またこれは、気孔セルの連なりが長距離になり、ケイフッ化ナトリウムにて固化する方法に見られるようなセル間の裂け目が生じない。このため、強度が大である特徴がある。また、気孔径を利用するフィルター等の用途に適する。
【0031】
この様に、固化ガスにて発泡物を固化して多孔質体を製造できることは、発泡物を形成するエマルジョンの安定剤である界面活性成分が固化ガスにより不活性化し、エマルジョン中の樹脂粒子同士が凝集し固化するものと考えられる。
【0032】
発泡物を製造する原料エマルジョンには添加剤を添加することができる。
添加剤としては、発泡助剤、起泡剤、気泡安定剤、架橋剤、硬化剤、加硫促進剤、触媒、可塑剤、充填剤、滑剤、老化防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤、安定剤、着色剤、付香剤、消臭剤、防腐剤、抗菌剤、防黴剤、固化助剤、pH調整剤、増粘剤、減粘剤、導電剤などが使用できる。
【0033】
これらの添加剤のうち、起泡剤は、界面活性剤が使用でき、脂肪酸、ロジン酸の塩が好ましい。起泡剤はエマルジョン100重量部あたり1から20重量部使用することができる。なお、起泡剤はエマルジョンの安定剤と兼ねることができる。
【0034】
これらの添加剤のうち、固化助剤とは固化を速めたり、固化時の泡を安定化するもので、金属酸化物、塩、酸、溶剤、界面活性剤などが使用でき,好ましくは酸化亜鉛、塩酸塩、酢酸塩、アルコール、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、シリコン系界面活性剤が使用できる。これらのうち、酸性ガスを使用する場合には、酸性ガスとの共通アニオン塩が好ましく使用できる。
【0035】
固化ガスに炭酸ガスを使用する場合の固化助剤の例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムを挙げることが出来る。これらの固化助剤は、単独で使用することができ、また、2つ以上を組み合わせて使用することができる。固化助剤はエマルジョン100重量部あたり、0.1重量部から10重量部使用することができる。
【0036】
この様に、各種添加剤を添加した原料エマルジョンのpHは、未発泡状態にて、6.5から13とすることができ、好ましくは7から12.5とすることができ、より好ましくは8から12とすることができる。
このような範囲に調整することによって、均一な気孔の多孔質体を製造することができる。
【0037】
この様にして固化して作成した多孔質体は、必要に応じて原料としたエマルジョンや液状高分子体に含まれる分散媒、溶媒などを除去する。その方法としては、洗浄、乾燥などの方法が使用できる。
また、分散媒等の除去に前後して、固化した発泡物を架橋しゴム弾性を付与したり、硬化させ樹脂化したり耐水性を付与したりすることができる。
以上のようにして、この発明の多孔質体を製造することができる。
【実施例1】
【0038】
原料エマルジョンとして、天然ゴムラテックス(固形分濃度60%)を用意した。このエマルジョンの固形分100重量部に対し、起泡剤(オレイン酸カリウム)1.5重量部、 固化助剤(炭酸アンモニウム)1.0部、架橋剤(硫黄) 1.5重量部、加硫促進剤(EZ) 1.5重量部、気泡安定剤(トリメンベース) 0.5重量部、固化助剤(酸化亜鉛)3.0重量部を添加し混合した。この混合物のpHは10、温度を40℃とした。これを調理用電動ミキサーにて撹拌し空気にて起泡し発泡物とした。
【0039】
そして、上記発泡物を通気性のシート上へ10cmの厚さに乗せ、炭酸ガスと空気の体積比1:1の混合ガス(温度45℃)で満たした箱に入れた。この後5分で発泡物は流動性がなくなり固化した。この後、蒸気にて1時間、100℃に加温し加硫を行った。固化した発泡物はゴム弾性が付与された多孔質体となった。水洗、乾燥を行い最終製品とした。この多孔質体は、見かけ比重0.12g/cm、平均空孔径100μm、の微細構造であった。平均気孔連続長は、10mm以上であった。
【実施例2】
【0040】
原料エマルジョンとして、NBRラテックス(日本ゼオン製LX−531B、固形分濃度66%)を用意した。このエマルジョンの固形分100重量部に対し、架橋剤(硫黄) 1.5重量部、加硫促進剤(EZ) 1.5重量部、気泡安定剤(トリメンベース) 1.0重量部、固化助剤(酸化亜鉛)3.0重量部、及び空気(比重と成る量)をピンミキサーにて撹拌混合し起泡し発泡物を作成した。
【0041】
この発泡物を深さ20cmの筒状の容器に半分入れ、次いで亜硫酸ガスを導入した。この後、発泡物は流動性がなくなり固化した。この後、蒸気にて1時間、100℃に加温し加硫を行った。固化した発泡物はゴム弾性が付与された多孔質体となった。容器から取り出し水洗、乾燥を行い最終製品とした。
この多孔質体は、見かけ比重0.14g/cm、平均空孔径120μm、の微細構造であった。平均気孔連続長は、10mm以上であった。
【実施例3】
【0042】
原料エマルジョンとして、ウレタンエマルジョン(アデカボンタイター(登録商標)、アニオン性、固形分濃度65%)を用意した。このエマルジョン100重量部に架橋剤(アデカボンタイターHUX-XW)6重量部を添加しこれを撹拌羽根付きの密閉容器に入れ、つづいて加水分解性ガス(塩化珪素)を入れ30秒間撹拌起泡した。起泡後撹拌を止め静置した。静置後1分にて固化した。この後100℃にて1時間加熱し容器から取り出し最終製品とした。
この多孔質体は、見かけ比重0.14g/cm、平均空孔径200μm、の微細構造であった。平均気孔連続長は、10mm以上であった。
【0043】
比較例1は、実施例1と同様に操作したが、炭酸ガスを使用せずケイフッ化ナトリウムを使用した。原料エマルジョンとして、天然ゴムラテックス(固形分濃度60%)を用意した。このエマルジョンの固形分100重量部に対し、起泡剤(オレイン酸カリウム)1.5重量部、 固化助剤(炭酸アンモニウム)1.0部、架橋剤(硫黄) 1.5重量部、加硫促進剤(EZ) 1.5重量部、気泡安定剤(トリメンベース) 0.5重量部、固化助剤(酸化亜鉛)3.0重量部を添加し混合した。これを調理用電動ミキサーにて撹拌し空気にて起泡し発泡物とした。
【0044】
さらにこの気泡物にケイフッ化ナトリウムを加え撹拌した。ケイフッ化ナトリウムの混合開始から5分で発泡物は流動性がなくなり固化した。この後、蒸気にて1時間、100℃に加温し加硫を行った。固化した発泡物はゴム弾性が付与された多孔質体となった。水洗、乾燥を行い最終製品とした。
得られた多孔質体は、見かけ比重0.12g/cm、平均空孔径250μであった。平均気孔連続長は1mmであった。
【0045】
比較例2は、実施例1、比較例1と同様に操作したが、固化ガスもケイフッ化ナトリウムも使用しなかった。この気泡物は30分後にも固化せず、泡がしだいに消えていった。固化した発泡体は得られなかった。
【0046】
比較例3は、実施例1と同様に操作したが、ケイフッ化ナトリウム(3.0重量部)をピンミキサーにて混合し、亜硫酸ガスは使用しなかった。
ケイフッ化ナトリウムの混合開始から5分で発泡物は流動性がなくなり固化した。得られた多孔質体は、みかけ比重0.14g/cm、平均空孔径250μであった。平均気孔連続長は2mmであった。
【0047】
これらの実施例1乃至3及び比較例1乃至3の結果をまとめると以下の通りである。
見かけ比重(g/cm) 平均空孔径(μm) 平均気孔連続長(mm)
実施例1(○) 0.12 100 10以上
実施例2(○) 0.14 120 10以上
実施例3(○) 0.14 200 10以上
比較例1(×) 0.12 250 1
比較例2(*) 固化した発泡体は得られず
比較例3(×) 0.14 250 2
上記(○)は、ケイフッ化物を使用せず、固化ガスを使用したことを示し、上記(×)は、ケイフッ化物を使用し、固化ガスを使用しなかったことを示し、(*)は、ケイフッ化物及び固化ガスの双方を使用しなかったことを示す。
【0048】
この様に、実施例1乃至3から得られた多孔質体は、ケイフッ化物を使用せずに成形されたものであり、発泡体内部の気泡が微視的で連なりが長く、均一な細孔径となり、軽量で微細な空孔を持ち、強度が強いものであった。一方、比較例1及び3から得られた多孔質体は、発泡体内部の気泡が微視的ではなく、連なりが短く、軽量で微細な空孔を持つものではなく、強度は強いものではなかった。
【0049】
なお、上記実施例1乃至3、及び比較例1及び3における測定方法は、以下のものである。
見かけ比重は、多孔質体より直方体を切出し、その重量[g] を見かけの体積[cm]にて除して算出した。
平均空孔径は、多孔質体の切断断面の拡大写真より、空孔の直径を測定した。空孔が球状であれば、球の直径を測定した。
気孔連続長は、多孔質体の切断断面の拡大写真より、測定点から任意の直線を引いたとき、気孔セルの連なりが連続する最大長を求めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョンを発泡させ、当該発泡させたエマルジョンに、ケイフッ化物を含有しない固化ガスを接触させて固化させ、成形したことを特徴とする、多孔質体。
【請求項2】
エマルジョンを発泡させ、当該発泡させたエマルジョンに、ケイフッ化物を含有しない固化ガスを接触させて固化させ、多孔質体を成形することを特徴とする、多孔質体の製造方法。
【請求項3】
上記固化ガスが酸性ガスであることを特徴とする、上記請求項2に記載の多孔質体の製造方法。
【請求項4】
上記固化ガスが加水分解性ガスであることを特徴とする、上記請求項2に記載の多孔質体の製造方法。


【公開番号】特開2007−9110(P2007−9110A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193771(P2005−193771)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(392003018)雪ヶ谷化学工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】