説明

多孔質基材処理組成物

【課題】石材など多孔質基材に対して優れた表面の防汚性を付与する多孔質基材処理組成物の提供。
【解決手段】炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基またパーフルオロエーテル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸基含有不飽和化合物、オキシアルキレン基含有(メタ)アクリル酸エステル、および含ケイ素不飽和化合物から導かれる共重合体を含有する多孔質基材処理組成物。該組成物は、通常、溶媒を含む液状形態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質基材、特には建築用石材などの多孔質基材に対して防汚性を付与する多孔質基材処理組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリフルオロアルキル基を含有する化合物の重合体またはこれと他の化合物との共重合体を含む有機溶媒溶液または水性分散液で基材表面を処理し、撥水撥油性それによる防汚性を付与することが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。この撥水撥油性は、ポリフルオロアルキル基の表面配向により基材表面の表面エネルギーが低くなることに起因すると考えられている。このポリフルオロアルキル基の表面配向性は、ポリフルオロアルキル基がパーフルオロアルキル基であっても、短い基では弱く、したがって上記表面エネルギー低下能は劣る。具体的に、炭素数6以下の弱いパーフルオロアルキル基を含有する化合物から導かれる重合体による多孔質基材表面への撥水撥油性は十分ではなく、防汚性の付与は十分ではなかった。そのため、撥水撥油剤用途では、従来、ポリフルオロアルキル基の表面配向に効果的な炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を含有する化合物の重合体が使用されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−118882号公報
【特許文献2】特開平2−147601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、石材などの多孔質基材の表面に、充分な撥水撥油性を付与し、それによって優れた防汚性を付与する、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロエーテル基を含有する化合物から導かれる共重合体を含む多孔質基材処理組成物を提供する事に有る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロエーテル基を含有する化合物であっても、これと特定のエチレン性二重結合を有する他の化合物との共重合体、具体的に他の化合物としてのカルボン酸基含有不飽和化合物、オキシアルキレン基含有(メタ)アクリル酸エステルおよび含ケイ素不飽和化合物との4元共重合体は、充分な撥水撥油性付与能、それによる防汚性付与能を有することを見出した。したがって、本発明は、下式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸基含有不飽和化合物、オキシアルキレン基含有(メタ)アクリル酸エステル、および含ケイ素不飽和化合物から導かれる共重合体を含有する、多孔質基材処理組成物である。
【0006】
CH=CR−COO−(CH)n−R (I)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロエーテル基。
:0〜3の整数。
:水素原子またはメチル基。
【0007】
前記共重合体において、カルボン酸基含有不飽和化合物としては、下式(II)で表されるものが好ましい。
CH=C(R)−CO(R−CO)n−OH (II)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:水素原子またはメチル基。
:メチレン基またはエチレン基。
:0または1。
【0008】
前記共重合体において、オキシアルキレン基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、下式(III)で表されるものが好ましい。
CH=C(R)−COO−(RO)n−R (III)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:水素原子またはメチル基。
:炭素数2〜6のアルキレン基。
:水素原子またはメチル基。
:1〜50の整数。
【0009】
前記共重合体において、含ケイ素不飽和化合物としては、下式(IV)で表されるものが好ましい。
CH=C(R)−(COO)n−(CH)n−SiR10 (IV)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:水素原子またはメチル基。
、R、R10:それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、OH基、またはフェニル基。
:0または1。
:0〜6の整数。
【0010】
前記多孔質基材としては石材が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多孔質基材処理組成物で処理する事により、多孔質基材へ優れた防汚性を付与する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の多孔質基材処理剤組成物中に含まれる共重合体は、下式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル(以下、化合物(1)と記す。)、カルボン酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、オキシアルキレン基含有(メタ)アクリル酸エステル、および含ケイ素不飽和化合物を共重合してなるものである。
CH=CR−COO−(CH)n−R (I)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロエーテル基。
:0〜3の整数。
:水素原子またはメチル基。
【0013】
上記式中、Rは、炭素数が1〜6のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロエーテル基である。パーフルオロアルキル基とは、炭素数が1〜6のアルキル基の全ての水素原子がフッ素置換された基であり、直鎖構造または分岐構造のいずれであってもよい。また、パーフルオロエーテル基とは、前記パーフルオロアルキル基中および結合末端の少なくとも1箇所以上の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基を意味する。良好な防汚性を発揮することから、Rとしてはパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0014】
化合物(1)の具体例としては以下のものが挙げられる。
CH=CH−COO−(CH−CF
CH=CH−COO−(CH−C
CH=CH−COO−(CH−C
CH=CH−COO−(CH−C13
CH=C(CH)−COO−(CH−CF
CH=C(CH)−COO−(CH−C
CH=C(CH)−COO−(CH−C
CH=C(CH)−COO−(CH−C13
【0015】
共重合体における、化合物(1)の比率は、30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。化合物(1)の比率が30質量%以上だと撥水撥油性が十分発揮され、多孔質基材表面に優れた防汚性を付与できる。また、90質量%以下であると、炭化水素系溶媒への溶解性が向上する。化合物(1)は1種類だけでも、2種類以上用いても構わない。2種類以上用いた場合、その合計量が上記範囲に含まれることが好ましい。
【0016】
本発明において、カルボン酸基含有不飽和化合物(以下、化合物(2)と記す。)は、上記化合物(1)と共重合可能なカルボン酸基含有化合物であればよく、下式(II)で示される(メタ)アクリル酸またはカルボン酸基含有(メタ)アクリル酸が挙げられる。
CH=C(R)−CO(R−CO)n−OH (II)
式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、メチレン基またはエチレン基である。nは、0または1である。
【0017】
化合物(2)の具体例としては、以下のアクリル酸、メタクリル酸が好ましく挙げられる。
CH=CH−COOH
CH=C(CH)−COOH
【0018】
共重合体における、化合物(2)の比率は、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。1質量%以上だと基材への密着性が向上し、30質量%以下だと充分な撥水撥油性を発揮し多孔質基材表面に優れた防汚性を付与できる。化合物(2)は1種類だけでも、2種類以上用いても構わない。2種類以上用いた場合、その合計量が上記範囲に含まれることが好ましい。
【0019】
本発明において、オキシアルキレン基含有(メタ)アクリル酸エステル(以下、化合物(3)と記す。)としては、下式(III)で示される化合物が挙げられる。
CH=C(R)−COO−(RO)n−R (III)
式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2〜6のアルキレン基である。このアルキレン基は直鎖構造又は分岐構造のいずれであってもよい。アルコール系溶媒への溶解性が良好になることから、炭素数3のアルキレン基が好ましい。
は、水素原子またはメチル基であり、nは、1〜50の整数である。
【0020】
化合物(III)の具体例としては以下のものが挙げられる。
CH=CH−COO−(CHCH(CH)O)n−H
CH=C(CH)−COO−(CHCH(CH)O)n−H
CH=CH−COO−(CHCH(CH)O)n−CH
CH=C(CH)−COO−(CHCH(CH)O)n−CH
【0021】
共重合体における、化合物(3)の比率は、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。5質量%以上だとアルコール系溶媒への溶解性が悪くなり、50質量%だと充分な撥水撥油性を発揮し多孔質基材表面に優れた防汚性を付与できる。化合物(3)は1種類だけでも、2種類以上用いても構わない。2種類以上用いた場合、その合計量が上記範囲に含まれることが好ましい。
【0022】
本発明において、含ケイ素不飽和化合物(以下、化合物(4)と記す。)としては、下式(IV)で示される含ケイ素(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
CH=C(R)−(COO)n−(CH)n−SiR10 (IV)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:水素原子またはメチル基。
、R、R10:それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、OH基、またはフェニル基。
:0または1。
:0〜6の整数。
【0023】
化合物(4)の具体例としては、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルフェニルメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリシラノール、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルフェニルジヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルフェニルメチルヒドロキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0024】
共重合体における、化合物(4)の比率は、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜1.9質量%がより好ましい。0.1質量%以上だと基材への密着性が向上し、5質量%以下だと撥油性に悪影響を及ぼさず、多孔質基材表面に優れた防汚性を付与できる。化合物(4)は1種類だけでも、2種類以上用いても構わない。2種類以上用いた場合、その合計量が上記範囲に含まれることが好ましい。
【0025】
本発明の共重合体において、化合物(1)〜(4)に加えて、その他の不飽和化合物を用いることも可能である。共重合体におけるその他の化合物の比率は、0〜50質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましい。
【0026】
その他の不飽和化合物としては、炭素数1〜18の(メタ)アクリル酸エステルや、反応性を有する官能基を含む化合物、例えば、マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸等の酸無水物不飽和化合物、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基含有化合物、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有化合物、アクロレイン等のアルデヒド基含有化合物、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
共重合体は、上記化合物(1)〜(4)の共重合体を得ることができれば、何れの製造方法でも良いが、通常は溶液重合や塊状重合などの液相重合方法が好ましい。また反応条件も任意に選択可能である。重合方法は溶液重合が好ましい。
重合に用いられる溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒など親水性溶媒であれば何れの溶媒も使用可能である。
【0028】
本発明の多孔質基材処理組成物は、通常、上記共重合体および必要に応じて任意成分を、適当な溶媒中に任意の割合で含む液状組成物である。この液状組成物を、上記溶液重合の重合溶媒に最終的組成物の溶媒を用いれば重合後に直接、またはそれの希釈により得ることが出来る。また重合後に再沈等の精製を行うことも可能である。
本発明の多孔質基材処理組成物における、共重合体の濃度は、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%がより好ましい。
【0029】
本発明組成物は、上記共重合体とともに、任意に、石材内部に吸水防止層を形成しうるシラン成分を含んでいても良い。このシラン成分としては、下式(V)で表されるアルキルアルコキシシランが挙げられる。
11−Si−X4−n6 (V)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
11:炭素数1〜18のアルキル基。
X:加水分解性アルコキシ基。
:1〜3の整数。
【0030】
式(V)で表されるアルキルアルコキシシランとしては、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
本発明の多孔質基材処理組成物における、アルキルアルコキシシランの濃度は、0.1〜20質量%が好ましく、1.0〜10質量%がより好ましい。
【0032】
上記シラン成分として、式(V)で表されるアルキルアルコキシシランに加えて、式(VI)で表されるアルキルシリケート及び、これらのオリゴマーを併用しても石材内部へ吸水防止層を形成させることができる。
Si−(OR12 (VI)
ただし、式中のR12は炭素数1〜18のアルキル基を表す。
【0033】
式(VI)で表されるアルキルシリケートとしては、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケート、またはこれらのオリゴマー等が挙げられる。
【0034】
本発明の多孔質基材処理組成物における、アルキルシリケート及び、これらのオリゴマーの濃度は、0.1〜20質量%が好ましく、1.0〜10質量%がより好ましい。
【0035】
本発明の多孔質基材処理組成物が上記シラン成分の加水分解を含む場合には、通常、シラン成分の加水分解を促進する触媒を含む。この触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ブチル錫トリ−2−エチルヘキソエートなどの有機錫化合物や、テトラブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、オルガノシロキサンチタンなどの有機チタン化合物や、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸や、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸等の有機酸などの酸性触媒、これら無機酸及び有機酸の第4級アンモニウム塩及びアミン塩が単独もしくは複数にて使用される。
本発明の多孔質基材処理組成物における、触媒の濃度は、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。
【0036】
本発明の多孔質基材処理組成物は、上記のとおり、通常、上記共重合体および必要に応じて任意成分を、適当な溶媒中に任意の割合で含む液状組成物である。使用できる溶媒に特に制限はなく、共重合体等を溶媒に溶解または分散できるものであれば有機溶媒でも水でも構わないが、これらの多孔質基材処理組成物を安定に溶解できるものが望ましい。そのような溶媒として、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、シリコーン系溶媒、フッ素系溶媒等を用いることができる。中でも、オキシアルキレン基含有(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合に共重合体の溶解性が良好になるアルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。またこれらの溶媒と相溶性のあるものとの混合溶媒も用いることができる。
【0037】
本発明の多孔質基材処理組成物を水分散液として得る場合には、重合後に得られた反応液を、アンモニウム、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの塩基を含む水で中和した後、重合溶媒を留去することで、透明な共重合体の水溶液を得ることができる。中和にはアルカリ金属カチオンを用いても良い。
乳化剤を用いて乳化液とすることも可能である。またこの時、式(V)および式(VI)で表されるアルキルアルコキシシランやアルキルシリケート及び、これらのオリゴマーは乳化して用いることが好ましい。乳化は公知の方法で行うことができ、乳化剤を使用することができる。乳化剤は特に限定されない。
【0038】
本発明の多孔質基材処理組成物は、上記の他、更に、添加剤を含有する事ができる。このような添加剤としては特に限定されず、例えば、顔料、防腐剤、抗菌剤、難燃剤、表面調製剤、硬化触媒、粘度調製剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、消泡剤等のような通常用いられる公知の添加剤等を挙げることができる、またこれらの添加量も特に限定されず、通常の添加量を採用する事ができる。
【0039】
本発明の多孔質基材処理組成物の塗布方法は特に限定されず、例えばスプレー、刷毛塗装、ローラーコーター等による塗装、浸漬法等を適宜採用することができる。処理基材における本発明の組成物の膜厚は特に限定されるものではない。
【0040】
本発明の多孔質基材処理組成物は基材表面に撥水撥油性を付与することができることから、多孔質基材の防汚処理剤として用いることが好ましい。
本発明の多孔質基材処理組成物を適用することができる多孔質基材としては、石材、コンクリート、木材等が挙げられる。中でも石材が好ましく、花崗岩、御影石、大理石等に代表される天然石が特に好ましい。
【実施例】
【0041】
次に実施例を用いて本発明を説明するが、これは本発明を限定するものではない。
(調製例1)共重合体の製造
CH=C(CH)−COO−(CH−C13を41.04g、メタクリル酸(和光純薬製)を8.80g、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油製ブレンマーPP−1000)を16.93g、ビニルトリエトキシシラン(信越化学製KBE−1003)を0.94g、イソプロピルアルコール(和光純薬社製)を131.46g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製)0.82gを250mLアンプル瓶に入れて、窒素パージして、密栓した。アンプル瓶を恒温槽しんとう器で攪拌し、65℃で、15時間重合反応を行った。ガスクロマトグラフィーにより求めた反応率は90%以上であった。得られた共重合体溶液は、固形分濃度35質量%であった。
【0042】
(比較調製例1)比較重合体の製造方法
CH=C(CH)−COO−(CH−C13を3.42g、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油製ブレンマーPP−1000)を1.59g、ビニルトリエトキシシラン(信越化学製KBE−1003)を0.09g、イソプロピルアルコール(和光純薬社製)を10.79g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製)0.07gを25mLアンプル瓶に入れて、窒素パージして、密栓した。アンプル瓶を恒温槽しんとう器で攪拌し、65℃で、15時間重合反応を行った。ガスクロマトグラフィーにより求めた反応率は90%以上であった。得られた共重合体溶液は、固形分濃度35質量%であった。
【0043】
(比較調製例2)比較重合体の製造方法
CH=C(CH)−COO−(CH−C13を4.27g、メタクリル酸(和光純薬製)を0.71g、ビニルトリエトキシシラン(信越化学製KBE−1003)を0.10g、テトラヒドロフラン(和光純薬社製)を9.85g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製)0.08gを25mLアンプル瓶に入れて、窒素パージして、密栓した。アンプル瓶を恒温槽しんとう器で攪拌し、65℃で、15時間重合反応を行った。ガスクロマトグラフィーにより求めた反応率は90%以上であった。得られた共重合体溶液は、固形分濃度35質量%であった。
【0044】
(実施例1)
調製例1で得られた共重合体溶液を固形分濃度が2.5質量%となるようにイソプロピルアルコールで希釈して処理液を得た。続いて前記処理液を、天然石(インパラブラック)に処理し、室温で24時間以上放置をした後に表面を布で拭取り、防汚性試験を行った。なお、前記処理は、前記処理液をスポンジに染み込ませ、石材表面に塗り伸ばす方法で行った。
【0045】
(比較例1)
比較調製例1で得られた共重合体溶液を固形分濃度が2.5質量%となるようにイソプロピルアルコールで希釈して処理液を得た。続いて前記処理液を、実施例1と同様に天然石(インパラブラック)に処理し、室温で24時間以上放置をした後に表面を布で拭取り、防汚性試験を行った。
【0046】
(比較例2)
比較調製例2で得られた共重合体溶液を固形分濃度が2.5質量%となるようにイソプロピルアルコールで希釈したが、透明な均一溶液を得ることはできなかった。
【0047】
(防汚性試験)
処理後の石材表面に水道水、醤油、ソース、オレンジジュース、オリーブオイル、コーヒーを1mL滴下し、24時間後の様子を目視で確認し、以下の方法により評価を行った。評価結果を表1に記載した。
0=染みが濃くて大きい
1=染みが濃くて、小さい
2=染みが薄い
3=染みがない
【0048】
【表1】

【0049】
表1より、本発明の多孔質基材処理組成物で処理した実施例は、汚れの種類を問わず、高い防汚性を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸基含有不飽和化合物、オキシアルキレン基含有(メタ)アクリル酸エステル、および含ケイ素不飽和化合物から導かれる共重合体を含有する、多孔質基材処理組成物:
CH=CR−COO−(CH)n−R (I)
式中、
:炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロエーテル基、
:0〜3の整数、
:水素原子またはメチル基。
【請求項2】
前記カルボン酸基含有不飽和化合物が下式(II)で表される、請求項1に記載の多孔質基材処理組成物:
CH=C(R)−CO(R−CO)n−OH (II)
式中、
:水素原子またはメチル基、
:メチレン基またはエチレン基、
:0または1。
【請求項3】
オキシアルキレン基含有(メタ)アクリル酸エステルが下式(III)で表される、請求項1または2に記載の多孔質基材処理組成物:
CH=C(R)−COO−(RO)n−R (III)
式中、
:水素原子またはメチル基、
:炭素数2〜6のアルキレン基、
:水素原子またはメチル基、
:1〜50の整数。
【請求項4】
含ケイ素不飽和化合物が下式(IV)で表される、請求項1、2または3に記載の多孔質基材処理組成物:
CH=C(R)−(COO)n−(CH)n−SiR10 (IV)
式中、
:水素原子またはメチル基、
、R、R10:それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、OH基、またはフェニル基、
:0または1、
:0〜6の整数。
【請求項5】
多孔質基材が石材である、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質基材処理組成物。

【公開番号】特開2010−90286(P2010−90286A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262010(P2008−262010)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000108030)AGCセイミケミカル株式会社 (130)
【Fターム(参考)】